(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)及び(b)の各々が少なくとも2回投与され、その後、患者に、(b)のさらなる投与なしに(a)を投与する維持相が続くことを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【背景技術】
【0003】
トポイソメラーゼIは、細胞増殖において重要且つ決定的な役割を果たす酵素である。詳細には、トポイソメラーゼIは、複製及び転写の間のDNAのアンコイリングを触媒する。Pommier et al.(1998)Biochim.Biophys.Acta.1400(1−3):83−105及びWang(1996)Annu.Rev.Biochem.65:635−92を参照のこと)。従って、この酵素を阻害することによって高増殖細胞が優先的に標的化され、増殖不能となる。そのため、この酵素は、特にヒト癌において、化学療法剤の極めて魅力的な標的である。
【0004】
トポイソメラーゼIの活性は、主にセリン残基におけるリン酸化によって調節され[Turman et al.(1993)Biochem.Med.Metab.Biol.50(2):210−25;Coderoni et al.(1990)Int.J.Biochem.22(7):737−46;Kaiserman et al.(1988)Biochemistry 27(9):3216−22;Samuels et al.(1992)J.Biol.Chem.267(16):1156−62)]、酵素とDNAとの間の最初の複合体形成に必要であると思われる(Coderoni et al.(1990)Int.J.Biochem.22(7):737−46)。
【0005】
ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(「PARP」)酵素ファミリーは、DNAに結合して一本鎖切断(「ニック」として知られる)を修復することにより、DNA完全性の維持において決定的な役割を果たす。PARP1は種々の癌で過剰発現し、その発現は、癌、特に乳癌における全体的な予後と関連付けられている。PARP阻害薬は、PARPに結合し、それによりそのDNA修復活性を阻害するとともにDNAからのPARPの遊離を妨げると考えられる。PARP1、及び関連するアイソフォームPARP2の活性の阻害は、幾つかの癌で臨床活性を示している。Kunmar et al.(2012)BMC Medicine 10(25):1−5。
癌に罹患している患者の治療には、トポイソメラーゼI阻害薬、PARP阻害薬の両方及び他の抗新生物剤が提案されており、奏効の程度は様々であるが、米国における死亡は4例中1例が癌に起因する。Siegel et al.(2013)CA Cancer J.Clin.63:11−30。多くの場合に単一の抗新生物剤が関わる治療レジメンが求められるが、既知の抗新生物剤の併用も同様に極めて有効であり得る。従って、(特に)併用ストラテジーが有効性の増強を示す治療レジメンを提供することが、依然として必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈上特に明確に指示されない限り複数の指示対象が含まれる。
【0012】
本発明の記載及び特許請求の範囲においては、以下に記載する定義に従い以下の用語を使用する。
【0013】
「水溶性非ペプチドポリマー」は、室温で水に対して少なくとも35%(重量基準)可溶であり、好ましくは70%超(重量基準)、より好ましくは95%超(重量基準)可溶であるポリマーを指す。典型的には、「水溶性」ポリマーの未ろ過水溶液調製物は、ろ過後の同じ溶液によって透過される光の量の少なくとも75%、より好ましくは少なくとも95%を透過する。しかしながら、水溶性ポリマーは水に対して少なくとも95%(重量基準)可溶であるか又は水に対して完全に可溶であることが最も好ましい。「非ペプチド性」であることに関して、ポリマーは、それが有するアミノ酸残基が35%未満(重量基準)であるとき非ペプチド性である。
【0014】
用語「単量体」、「単量体サブユニット」及び「単量体ユニット」は、本明細書では同義的に使用され、ポリマーの基本構造単位の1つを指す。ホモポリマーの場合、単一の繰り返し構造単位がポリマーを形成する。コポリマーの場合、2つ以上の構造単位が−あるパターンで又はランダムに−繰り返すことでポリマーを形成する。本発明との関連において使用される好ましいポリマーはホモポリマーである。水溶性非ペプチドポリマーは、連続的に結合された1つ以上の単量体を含んで単量体の鎖を形成する。
【0015】
「PEG」又は「ポリエチレングリコール」は、本明細書で使用されるとき、任意の水溶性ポリ(エチレンオキシド)を包含することが意図される。特に指示されない限り、「PEGポリマー」又はポリエチレングリコールは、実質的に全ての(好ましくは全ての)単量体サブユニットがエチレンオキシドサブユニットであるものであり、しかしながらポリマーは、例えばコンジュゲーション用に、個別のエンドキャッピング部分又は官能基を含有してもよい。本発明で使用されるPEGポリマーは、1つ又は複数の末端酸素が例えば合成変換中に置換されたか否かに応じて、以下の2つの構造のうちの一方を含み得る:「−(CH
2CH
2O)
n−」又は「−(CH
2CH
2O)
n−1CH
2CH
2−」。前述のとおり、PEGポリマーについては、変量(n)は約3〜4000の範囲であり、末端基及びPEG全体の構造は様々であり得る。
【0016】
ポリマーの幾何学的配置又は全体構造に関して「分枝状」は、分岐点から延在する2つ以上のポリマー「アーム」を有するポリマーを指す。
【0017】
「生理学的に切断可能な」又は「加水分解性の」又は「分解性の」結合とは、生理学的条件下で水と反応する(即ち加水分解される)比較的不安定な結合である。結合が水中で加水分解する傾向は、所与の分子内で2つの原子をつなぐ一般的な種類の結合に依存するのみならず、それらの原子に結合した置換基にもまた依存し得る。加水分解に不安定な又は弱い適切な結合としては、限定はされないが、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、オリゴヌクレオチド、チオエステル、及びカーボネートが挙げられる。
【0018】
「酵素分解性の結合」は、1つ以上の酵素により分解を受ける結合を意味する。
【0019】
「安定な」結合(linkage)又は結合(bond)は、水中で実質的に安定な化学結合、即ち、長期間にわたり生理学的条件下でいかなる認め得る程度の加水分解も受けない結合を指す。加水分解に安定な結合の例としては、限定はされないが、以下が挙げられる:炭素−炭素結合(例えば脂肪族鎖中の)、エーテル類、アミド類、ウレタン類、アミン類など。概して、安定な結合は、生理学的条件下で1日約1〜2%未満の加水分解速度を呈するものである。代表的な化学結合の加水分解速度は、多くの標準的な化学テキストブックを参照することができる。
【0020】
「実質的に」又は「本質的に」とは、ほぼ全体的にまたは完全に、例えば、ある所与の分量の95%以上、より好ましくは97%以上、さらにより好ましくは98%以上、さらにより好ましくは99%以上、なおもさらにより好ましくは99.9%以上を意味し、99.99%以上が最も好ましい。
【0021】
「薬学的に許容可能な賦形剤」又は「薬学的に許容可能な担体」は、患者に有意な有害毒性効果を引き起こさない本発明の組成物に含まれ得る成分を指す。
【0022】
用語「患者」は、本明細書に記載されるとおりの本発明の化合物の投与によって予防又は治療することのできる病態に罹患しているか、又はそれに罹り易い生物を指し、ヒト及び動物の両方を含む。ある場合には(乳癌に罹患している患者を治療する方法など)、患者は好ましくはヒト成人である。さらに他の場合には(ユーイング肉腫に罹患している患者を治療する方法など)、患者は好ましくは年齢が3〜22歳の範囲であり、ヒト小児及びヒト若年成人を含む。
【0023】
上記に指摘したとおり、本発明は、(特に)(a)PARP阻害薬のPARP阻害量を患者に投与するステップと;(b)長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬のトポイソメラーゼI阻害量を患者に投与するステップとを含む方法に関する。投与するステップ(a)及び(b)に関して、これらの投与するステップはいずれの順番で(並びに同時に)実施してもよく、この点に関して本発明は限定されない。本発明の1つ以上の実施形態において、投与するステップ(a)は投与するステップ(b)の前に行われ得る。本発明の1つ以上の実施形態において、投与するステップ(b)は投与するステップ(a)の前に行われ得る。1つ以上の実施形態において、投与するステップ(a)及び(b)の両方が同時に行われ得る。さらに、1つ以上の実施形態において、ステップ(a)及び/又は(b)は反復投与され得る。
【0024】
PARP阻害薬のPARP阻害量を患者に投与するステップが、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬のトポイソメラーゼI阻害量を患者に投与するステップの前に行われる場合、PARP阻害薬を投与した後、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬の投与までに経過する時間の長さは、好ましくは以下の範囲の1つ以内である:約1分〜約60日;約1分〜約30日;約1分〜約21日;約10分〜約21日;約20分〜約21日;約30分〜約21日;約40分〜約21日;約60分〜約21日;約2時間〜約21日;約4時間〜約21日;約6時間〜約21日;約8時間〜約21日;約10時間〜約21日;約12時間〜約21日;約1日〜約21日;約2日〜約21日;約3日〜約21日;約4日〜約21日;約5日〜約21日;約6日〜約21日;約7日〜約21日;約8日〜約21日;約9日〜約21日;約10日〜約21日;約14日〜約21日;約1分〜約14日;約10分〜約14日;約20分〜約14日;約30分〜約14日;約40分〜約14日;約60分〜約14日;約2時間〜約14日;約4時間〜約14日;約6時間〜約14日;約8時間〜約14日;約10時間〜約14日;約12時間〜約14日;約1日〜約14日;約2日〜約14日;約3日〜約14日;約4日〜約14日;約5日〜約14日;約6日〜約14日;約7日〜約14日;約8日〜約14日;約9日〜約14日;約10日〜約14日;約1分〜約8日;約10分〜約8日;約20分〜約8日;約30分〜約8日;約40分〜約8日;約60分〜約8日;約2時間〜約8日;約4時間〜約8日;約6時間〜約8日;約8時間〜約8日;約10時間〜約8日;約12時間〜約8日;約1日〜約8日;約2日〜約8日;約3日〜約8日;約4日〜約8日;約5日〜約8日;約6日〜約8日;6日〜約15日;約13日〜約22日;約20日〜約22日;約20日〜約29日;約27日〜約30日;約27日〜約45日;及び約45日〜約75日。
【0025】
長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬のトポイソメラーゼI阻害量を患者に投与するステップが、PARP阻害薬のPARP阻害量を患者に投与する前に行われる場合、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬を投与した後、PARP阻害薬の投与までに経過する時間の長さは、好ましくは以下の範囲の1つ以内である:約1分〜約60日;約1分〜約30日;約1分〜約21日;約10分〜約21日;約20分〜約21日;約30分〜約21日;約40分〜約21日;約60分〜約21日;約2時間〜約21日;約4時間〜約21日;約6時間〜約21日;約8時間〜約21日;約10時間〜約21日;約12時間〜約21日;約1日〜約21日;約2日〜約21日;約3日〜約21日;約4日〜約21日;約5日〜約21日;約6日〜約21日;約7日〜約21日;約8日〜約21日;約9日〜約21日;約10日〜約21日;約14日〜約21日;約1分〜約14日;約10分〜約14日;約20分〜約14日;約30分〜約14日;約40分〜約14日;約60分〜約14日;約2時間〜約14日;約4時間〜約14日;約6時間〜約14日;約8時間〜約14日;約10時間〜約14日;約12時間〜約14日;約1日〜約14日;約2日〜約14日;約3日〜約14日;約4日〜約14日;約5日〜約14日;約6日〜約14日;約7日〜約14日;約8日〜約14日;約9日〜約14日;約10日〜約14日;約1分〜約8日;約10分〜約8日;約20分〜約8日;約30分〜約8日;約40分〜約8日;約60分〜約8日;約2時間〜約8日;約4時間〜約8日;約6時間〜約8日;約8時間〜約8日;約10時間〜約8日;約12時間〜約8日;約1日〜約8日;約2日〜約8日;約3日〜約8日;約4日〜約8日;約5日〜約8日;約6日〜約8日;6日〜約15日;約13日〜約22日;約20日〜約22日;約20日〜約29日;約27日〜約30日;約27日〜約45日;及び約45日〜約75日。
【0026】
本発明の1つ以上の実施形態においては、初期相、二重相、及び次に維持相が続く。癌に罹患している患者の治療方法の初期相では、初期相は、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬とPARP阻害薬とが互いに24時間以内に患者に投与されることを表す。その後、癌に罹患している患者の治療方法の二重相では、二重相は、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬及びPARP阻害薬の投与が定期的に投与される(例えば、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬が週2回〜月1回投与され、及びPARP阻害薬が毎日投与される)ことを表す。二重相は、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬の1回の投与、2回の投与、3回の投与、4回の投与、5回の投与、6回の投与、7回の投与、8回の投与、9回の投与、10回の投与、11回の投与又は12回の投与にわたり続き得る。二重相に続いて維持相が現れ、ここではPARP阻害薬のみが投与される。従って、例えば、本発明の1つ以上の実施形態において、(a)PARP阻害薬のPARP阻害量を患者に投与するステップ及び(b)長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬のトポイソメラーゼI阻害量を患者に投与するステップは少なくとも2回行われ、それに維持相が続き、ここでは患者に、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬のさらなる投与なしにPARP阻害薬のPARP阻害量が投与される。
【0027】
本明細書に記載される方法は、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬の投与を含む。これに関して、本発明は、トポイソメラーゼI阻害薬が長時間作用型である限り、いかなる特定のトポイソメラーゼI阻害薬にも限定されるものではない。トポイソメラーゼ阻害薬の実効半減期が以下の範囲の1つ以上を満たすとき、トポイソメラーゼI阻害薬は長時間作用型である:約5日〜約60日;約9日〜約60日;約13日〜約60日;約21日〜約60日;約28日〜約60日;約35日〜約60日;約42日〜約60;及び約49日〜約60日。トポイソメラーゼI阻害薬などの薬物の実効半減期に関して、一部のトポイソメラーゼI阻害薬はSN−38に代謝され、SN−38はトポイソメラーゼIの阻害活性に一次的に関与し得るものである。そのため、SN−38に代謝されるこうしたトポイソメラーゼI阻害薬は、多くの場合にその半減期を(初期に投与されたトポイソメラーゼI阻害薬の消失よりむしろ)SN−38の消失の観点で記述する。従って、本明細書で使用されるとき、トポイソメラーゼI阻害薬物の「実効」半減期は、トポイソメラーゼIの阻害活性に最も大きく関与する実体−当初投与された薬物であるか、それとも当初投与された薬物の代謝産物であるかに関わらず−の半減期である。例として、文献の報告によれば、イリノテカンの実効半減期(SN−38の消失に基づく)は約2日であり、一方、トポイソメラーゼ阻害薬ポリマーコンジュゲートの実効半減期(この場合もSN−38の消失に基づく)は約50日である。それぞれKehrer et al.(2000)Clin.Can.Res.6:3451−3458及びGayle S.Jameson et al.(2013)Clin.Can.Res.19:268−278を参照のこと。
【0028】
長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬の例示的且つ非限定的な例としては、以下の式により包含される化合物:
C−[CH
2−O−(CH
2CH
2O)
n−CH
2−Term]
4、
[式中、nは、それぞれの場合に、5〜150の値(例えば約113)を有する整数であり;及びTermは、それぞれの場合に、−OH、−C(O)OH、
【化1】
、及び−NH−CH
2−C(O)−O−Irino(式中、Irinoはイリノテカンの残基であり、且つ、かかる化合物の組成中、少なくとも90%がIrinoであり、残りの10%は、−OH、−C(O)OH、
【化2】
からなる群から選択される)からなる群から選択される]、及びその薬学的に許容可能な塩(混合塩を含む)が挙げられる。これら及び他の化合物及び組成物が、国際公開第2011/063156号パンフレットに記載されている。
【0029】
長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬のさらなる例示的且つ非限定的な例としては、以下の式:
【化3】
[式中、
Rは、3〜150個の炭素原子を有する有機ラジカルであり、
Qはリンカーであり、ここでRは、Qと一緒になってR(−Q−)
qを形成するとき、POLY
1に対する結合点を形成するようにそれぞれ「q個」のヒドロキシル又はチオールプロトン除去後のポリオール又はポリチオールの残基であり、
POLY
1は、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシルアルキル−メタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキル−メタクリレート)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、及びこれらのコポリマー又はターポリマーからなる群から選択される水溶性非ペプチドポリマーであり、
Dは、その10環位、11環位又は20環位で結合したカンプトテシンであり、及び
qは、3〜50の値を有する]
により包含される化合物、及びその薬学的に許容可能な塩(混合塩を含む)が挙げられる。例えば、以下のペンタエリスリトール系マルチアーム構造:
【化4】
[式中、各nは、40〜約500の範囲(例えば、約113及び約226)の整数である]が、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬及びその薬学的に許容可能な塩(混合塩を含む)である例示的且つ非限定的な化合物である。上記及び他の化合物が米国特許第7,744,861号明細書に記載され、「イリノテカンのペンタエリスリトール系マルチアームポリマーコンジュゲート」又は「PBMAPCI」と見なされる。
【0030】
長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬のさらなる例示的且つ非限定的な例としては、以下の式
【化5】
[式中、各(n)は約28〜約341の正の整数であり、各SN38はSN−38の残基である]により包含される化合物が挙げられる。これら及び他の化合物が、国際公開第2007/092646号パンフレット、Sapra et al.Abstract 145、表題「乳癌及び結腸直腸癌の異種移植モデルにおける新規ポリ(エチレン−グリコール)コンジュゲート型SN38コンジュゲートの顕著な治療有効性(Marked therapeutic efficacy of a novel poly(ethylene−glycol)conjugated SN38 conjugate in xenograft models of breast and colorectal cancers)」、Patnaik et al.(2009)AACR−NCI−EORTCで発表されたポスターC221に記載される。
【0031】
本明細書に記載される方法には、PARP阻害薬の投与が関わる。この点に関し、本発明はいかなる特定のPARP阻害薬にも限定されない。例示的PARP阻害薬として、PARP阻害薬は、ルカパリブ、オラパリブ、ベリパリブ、MK−4827、BMN 673、CEP−9722、及びE7016からなる群から選択される1つであってよい。
【0032】
所与の化合物がPARP阻害薬として作用し得るかどうかを決定するためのアッセイは、当業者による常法の実験を通じて決定することができる。
【0033】
本明細書に記載される方法において、PARP阻害薬はPARP阻害量で患者に投与される。当業者は、所与のPARP阻害薬が臨床的に有意味なPARP阻害をもたらすためにどの程度で十分であるかを決定することができる。例えば、当業者は文献を参照し、及び/又は一連の漸増量のPARP阻害薬を投与して、いずれの量が臨床的に有意味なPARP阻害をもたらすかを決定することができる。
【0034】
しかしながら、1つ以上の場合において、PARP阻害量は以下の範囲の1つ以上により包含される量である:約0.01mg/kg〜約1000mg/kg;約0.1mg/kg〜約1000mg/kg;約2mg/kg〜約900mg/kg;約3mg/kg〜約800mg/kg;約4mg/kg〜約700mg/kg;約5mg/kg〜約600mg/kg;約6mg/kg〜約550mg/kg;約7mg/kg〜約500mg/kg;約8mg/kg〜約450mg/kg;約9mg/kg〜約400mg/kg;約5mg/kg〜約200mg/kg;約2mg/kg〜約150mg/kg;約5mg/kg〜約100mg/kg;約10mg/kg〜約100mg/kg;及び約10mg/kg〜約60mg/kg。
【0035】
本明細書に記載される方法において、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬はトポイソメラーゼI阻害量で患者に投与される。当業者は、所与のトポイソメラーゼI阻害薬が臨床的に有意味なトポイソメラーゼI阻害をもたらすためにどの程度で十分であるかを決定することができる。例えば、当業者は文献を参照し、及び/又は一連の漸増量のトポイソメラーゼ阻害薬を投与して、いずれの量が臨床的に有意味なトポイソメラーゼI阻害をもたらすかを決定することができる。
【0036】
しかしながら、1つ以上の場合において、トポイソメラーゼI阻害量は(特にイリノテカンのペンタエリスリトール系マルチアームポリマーコンジュゲートに関して)、以下の範囲の1つ以上により包含される量である:約1mg/m
2〜約1000mg/m
2体表面;約2mg/m
2〜約900mg/m
2体表面;約3mg/m
2〜約800mg/m
2体表面;約4mg/m
2〜約700mg/m
2体表面;約5mg/m
2〜約600mg/m
2体表面;約6mg/m
2〜約550mg/m
2体表面;約7mg/m
2〜約500mg/m
2体表面;約8mg/m
2〜約450mg/m
2体表面;約9mg/m
2〜約400mg/m
2体表面;約10mg/m
2〜約350mg/m
2体表面;約20mg/m
2〜約200mg/m
2体表面;約30mg/m
2〜約200mg/m
2体表面;約40mg/m
2〜約270mg/m
2体表面;及び約50mg/m
2〜約240mg/m
2体表面。
【0037】
念のために言えば、PARP阻害薬のPARP阻害量及び長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬のトポイソメラーゼI阻害量に関して本明細書で使用されるとき、阻害の量及び程度は広く異なり、患者の治療においては併用がなおも有用であり得る。例えば、PARPを最小限のみ阻害するPARP阻害薬の量は、本明細書で使用されるとき、特許請求される本発明の方法が臨床的に意味のある応答を生じさせる限りにおいてなおもPARP阻害量であり得る。同様に、トポイソメラーゼIを十分に長期間にわたり最小限のみ阻害する長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬の量は、特許請求される本発明の方法が臨床的に意味のある応答を生じさせる限りにおいてなおも長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬であり得る。ある場合には、(例えば)相乗的応答に起因して、トポイソメラーゼI阻害の存在下ではPARPの阻害は最小限のみ要求され得るに過ぎない。さらに他の場合には、(例えば)相乗的応答に起因して、PARP阻害の存在下ではトポイソメラーゼIの阻害は最小限のみ要求され得るに過ぎない。従って、PARP阻害薬のPARP阻害量及び長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬のトポイソメラーゼI阻害量は、特許請求される本発明に関連して広範囲にわたり、かかる量は、単剤療法に関連して所与の酵素を単独で阻害することが必要な場合のように、薬物の量のみに基づくことはできない。
【0038】
実際の投与用量は、対象の年齢、体重、及び全身状態並びに治療下の病態の重症度、医療専門家の判断、及び投与されるコンジュゲートに応じて異なることになる。
【0039】
任意の所与の長時間作用型トポイソメラーゼI及びPARP阻害薬の単位投薬量は、臨床医の判断、患者の必要性などに応じて種々の投薬スケジュールで投与することができる。具体的な投薬スケジュールは当業者であれば分かり、又は常法を用いて実験的に決定することができる。例示的投薬スケジュールとしては、限定なしに、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回、及びそれらの任意の組み合わせの投与が挙げられる。臨床的有益性がもはや実現しなくなったところで、投薬は(療法におけるその時点で単剤か又は併用かに関わらず)中止される。
【0040】
治療コースに関連する時間の長さに関して、典型的な治療コースは、臨床医の判断、患者の必要性などに応じて異なることになる。特許請求される方法における治療コースに関連する例示的な時間の長さとしては、以下が挙げられる:約1週間;2週間;約3週間;約4週間;約5週間;約6週間;約7週間;約8週間;約9週間;約10週間;約11週間;約12週間;約13週間;約14週間;約15週間;約16週間;約17週間;約18週間;約19週間;約20週間;約21週間;約22週間;約23週間;約24週間;約7ヵ月;約8ヵ月;約9ヵ月;約10ヵ月;約11ヵ月;約12ヵ月;約13ヵ月;約14ヵ月;約15ヵ月;約16ヵ月;約17ヵ月;約18ヵ月;約19ヵ月;約20ヵ月;約21ヵ月;約22ヵ月;約23ヵ月;約24ヵ月;約30ヵ月;約3年;約4年及び約5年。この時間の中で、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬又はPARP阻害薬の一方が他方の薬剤なしに(本明細書に記載されるとおりの併用療法の一環としてトポイソメラーゼI阻害薬及びPARP阻害薬の両方が投与される限りにおいて)投与され得ることが理解される。
【0041】
本発明は、(特に)本化合物による治療に応答する病態に罹患している患者の治療に有用な方法を提供する。例えば、患者は、個別の薬剤単独にも、また併用にも応答し得るが、併用に対する応答性がより高い。さらなる例として、患者は個別の薬剤の1つに対して非応答性であり得るが、併用には応答する。さらに別の例として、患者は個別の薬剤のいずれか単独に対して非応答性であり得るが、併用には応答する。
【0042】
本方法は、所与のトポイソメラーゼ阻害薬の治療有効量を投与するステップを含む。肺内、鼻内、頬側、直腸、舌下、経皮、及び非経口など、他の投与方法もまた企図される。本明細書で使用されるとき、用語「非経口」には、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、心臓内、くも膜下腔内、及び筋肉内注射、並びに点滴注射が含まれる。
【0043】
PARP阻害薬及び長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬が患者に投与される本明細書に記載される方法は、この手法によって治癒又は予防し得る任意の病態の治療に用いられ得る。例示的病態は、癌、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫及び白血病である。
【0044】
本明細書で参照される全ての論文、書籍、特許、特許公報及び他の刊行物は、全体として参照により援用される。本明細書の教示と参照によって援用される技術との間に矛盾が生じた場合、本明細書の教示及び定義の意味が(特に本明細書に添付される特許請求の範囲で使用される用語に関して)優先されるものとする。例えば、本願及び参照によって援用される刊行物が同じ用語を別様に定義する場合、その定義が位置付けられる文書の教示の範囲内でその用語の定義が保持されるものとする。
【実施例】
【0045】
本発明は特定の好ましい具体的な実施形態を伴い記載されているが、前述の記載並びに以下の例は例示することを意図するもので、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本発明の範囲内にある他の態様、利点及び変形例は、本発明が関係する技術分野の当業者に明らかであろう。
【0046】
実施例1
PBMAPCI及びルカパリブ単独及び併用治療によるMX−1ヒト乳癌モデルの腫瘍増殖遅延
ヒト乳癌の有効性モデルにおける併用試験では、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬であるイリノテカンのペンタエリスリトール系マルチアームポリマーコンジュゲート(「PBMAPCI」、Nektar Therapeutics、San Francisco CAから入手)と、ルカパリブ(Selleck Chemicals、Houston TX)とを使用した。
【0047】
BRCA1欠損ヒト乳癌細胞株MX−1由来の癌性細胞を雌マウスに皮下注射した。腫瘍が約100mm
3(63〜196mm
3)のサイズに達したところで動物(n=10匹/群)を無作為化して、以下のとおりの種々の治療群に分けた:対照;単剤ルカパリブ、30及び150mg/kg;単剤PBMAPCI、10及び50mg/kg;及び4つの併用群。表1に治療レジメンを表形式で提供する。
【0048】
【表1】
【0049】
ルカパリブはqd×21で強制経口投与し、及びPBMAPCIはq7d×4で静脈内投与し、治療は1日目に開始した。エンドポイント(2000mm
3の腫瘍容積又は88日目)を満たすまで、動物の体重、臨床所見及び腫瘍容積を週2回モニタした。
【0050】
有効性は腫瘍増殖遅延及び退縮応答率で測定した。
【0051】
この試験の結果を
図1及び表2に提供する。
図1において明らかになるとおり、乳癌細胞株はBRCA1欠損状態であるにも関わらず、単剤ルカパリブは(試験した30mg/kg及び150mg/kg投薬量の両方で)ごく僅かのみ有効であった。PBMAPCIは10mg/kgレベルで中程度の有効性を示し、50/mg/kgレベルで完全な退縮を示した。しかしながら、両薬剤の併用は相乗作用を示し、全10匹の動物の腫瘍が治療開始14日後までに無腫瘍状態まで退縮した。
【0052】
表2において明らかになるとおり、PBMAPCIとルカパリブとの併用は、両薬剤ともに最低用量であっても持続的で完全な応答によって実証される顕著な相乗作用を示した。さらに、いずれの薬剤についても用量減量は不要であると思われる。PBMAPCIとルカパリブとの併用は、概して全ての用量レベルで良好に忍容され、臨床徴候及び体重減少はなかったが、但し150mg/kgのルカパリブと50mg/kgのPBMAPCIとの併用は例外で、この場合には個々の動物が最大15%の体重減少を示した(群の平均体重減少は約6%に過ぎなかった)。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例2
ヒト肺小細胞癌モデルにおけるPBMAPCIとBMN 673とを併用した治療の有効性
ヒト乳癌の有効性モデルにおける併用試験では、長時間作用型トポイソメラーゼI阻害薬であるイリノテカンのペンタエリスリトール系マルチアームポリマーコンジュゲート(「PBMAPCI」、Nektar Therapeutics、San Francisco CAから入手)と、BMN 673(BioMarin、San Rafael CA)とを使用した。
【0055】
NCI−H1048ヒト肺小細胞癌株由来の癌性細胞をBALB/cヌードマウスに注射した。腫瘍が約100mm
3〜200mm
3のサイズに達したところで動物(n=10匹/群)を無作為化して、表3に特定されるとおりの治療群に分け、示されるとおりの被験物質を投与した。マウスは被験物質の投与時点で体重が20gを上回るものとし、試験期間中にわたり毎日確認し、腫瘍サイズ及び体重を週2回確認した。20%を超える体重減少を示した動物については、被験物質を投与しない「休薬期間」を与えた。
【0056】
【表3】
【0057】
試験の間に計測された8つの異なる治療群の各々に関する平均体重、相対体重変化及び腫瘍容積をそれぞれ
図2、
図3及び
図4に提示する。