【文献】
鎌田功穂 他,SiC単結晶膜中欠陥の高分解能非破壊観察法の開発,電力中央研究所 研究報告書,2005年 9月,No.Q04023,pp.i-iv, 1-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0047】
<第1の形態>
以下に、本発明を実施するための第1の形態について、説明する。
【0048】
本発明に係る欠陥検査方法は、
ワイドギャップ半導体基板に生じた欠陥を検査する方法であって、
ワイドギャップ半導体基板に向けて励起光を照射し、
励起光がワイドギャップ半導体基板に照射されることで発せられた可視光領域のフォトルミネッセンス光を撮像し、
撮像された可視光領域のフォトルミネッセンス光を含む画像における、
ワイドギャップ半導体基板の検査対象とする欠陥が含まれている部位から発せられる光の強度と、当該ワイドギャップ半導体基板の当該検査対象とする欠陥が含まれていない部位から発せられる光の強度との違いに基づいて、当該ワイドギャップ半導体基板に生じた欠陥の検査を行うものである。
【0049】
また、本発明に係る欠陥検査装置は、励起光照射部と、蛍光撮像部と、欠陥検出部とを備えて構成されている。
励起光照射部は、ワイドギャップ半導体基板に向けて励起光を照射するものである。
蛍光撮像部は、励起光がワイドギャップ半導体基板に照射されることで発せられた可視光領域のフォトルミネッセンス光を撮像するものである。
欠陥検出部は、撮像された可視光領域のフォトルミネッセンス光を含む画像における、
ワイドギャップ半導体基板の検査対象とする欠陥が含まれている部位から発せられる光の強度と、当該ワイドギャップ半導体基板の当該検査対象とする欠陥が含まれていない部位から発せられる光の強度との違いに基づいて、当該ワイドギャップ半導体基板に生じた欠陥を検出するものである。
【0050】
なお、第1の形態を具現化するには、下述する第2〜第5の形態を例示できる。
【0051】
このような欠陥検査方法および欠陥検査装置であれば、ワイドギャップ半導体基板に向けて励起光を照射し、可視光領域の光に感度特性を具備したカラーカメラ又は白黒カメラを用いて撮像することで、可視光領域のフォトルミネッセンス光の強度の違いから、ワイドギャップ半導体基板に検査対象とする欠陥が有るか無いかを検査することが可能となる。
【0052】
また、上述の欠陥検査方法および欠陥検査装置において、ワイドギャップ半導体基板の検査対象とする欠陥が含まれている部位から発せられる可視光領域の特定波長のフォトルミネッセンス光の強度と、当該ワイドギャップ半導体基板の当該検査対象とする欠陥が含まれていない部位から発せられる可視光領域の特定波長の光の強度との違いに基づいて、当該ワイドギャップ半導体基板に生じた欠陥を検出する構成としても良い。
【0053】
このような欠陥検査方法および欠陥検査装置であれば、ワイドギャップ半導体基板に向けて励起光を照射し、可視光領域の光に感度特性を具備したカラーカメラ又は白黒カメラを用いて撮像することで、可視光領域の特定波長のフォトルミネッセンス光の強度の違いから、検査対象とする特定の種類の欠陥に着目して検査することが可能となる。
【0054】
また、上述の欠陥検査方法および欠陥検査装置において、上述の欠陥を検出する構成に代えて又は加えて、ワイドギャップ半導体基板の検査対象とする欠陥が含まれている部位から発せられる可視光領域の特定波長のフォトルミネッセンス光の強度と、当該ワイドギャップ半導体基板の当該検査対象とする欠陥が含まれていない部位から発せられる可視光領域の特定波長の光の強度との違いに基づいて、当該ワイドギャップ半導体基板に生じた欠陥の種類を分類する構成を有しても良い。
【0055】
このような欠陥検査方法および欠陥検査装置であれば、ワイドギャップ半導体基板に向けて励起光を照射し、可視光領域の光に感度特性を具備したカラーカメラ又は白黒カメラを用いて撮像することで、可視光領域の特定波長のフォトルミネッセンス光の強度の違いから、欠陥の種類を分類することが可能となる。
【0056】
<第2の形態>
以下に、本発明を実施するための第2の形態について、図を用いながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態における検査装置の構成全体を模式的に示した図である。
本発明に係る欠陥検査装置101は、励起光照射部102と、蛍光撮像部103と、欠陥検出部104とを備えて構成されている。この欠陥検査装置101は、検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wに向けて励起光を照射し、検査対象となる部位から発せられたフォトルミネッセンス光を撮像し、撮像されたフォトルミネッセンス光の色情報に基づいて、欠陥を検出したり、欠陥の種類を分類するものである。また、欠陥検査装置101には、検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wを所定の姿勢で保持する基板保持部109が備えられている。
【0057】
励起光照射部102は、ワイドギャップ半導体基板Wに向けて励起光L101を照射するものである。具体的には、励起光照射部102は、励起光L101の元になる光エネルギーを発生させる光源(図示せず)を備えている。励起光L101の波長成分は、検査対象となる基板や欠陥の種類に応じて適宜決定すれば良く、SiC基板上に成長させたエピタキシャル層に生じた欠陥を検査対象とする場合、375nm以下(いわゆる紫外光)とする。より具体的には、励起光照射部102の光源として、発光波長成分が375nm以下のLED(いわゆる、UV−LED)を用いて励起光L101を照射する。
【0058】
蛍光撮像部103は、励起光照射部102から照射された励起光L101がワイドギャップ半導体基板Wに照射されることで発せられたフォトルミネッセンス光L102を撮像するものである。具体的には、蛍光撮像部103は、カラーカメラ130とレンズ131を備えている。
【0059】
カラーカメラ130は、フォトルミネッセンス光L102の波長成分をカラー画像として撮像し、外部へ映像信号(アナログ信号)や映像データ(デジタル信号)を出力するものである。カラーカメラ130は、カラーフィルタ134とイメージセンサ135を備えている。
【0060】
カラーフィルタ134は、ワイドギャップ半導体基板Wから発せられたフォトルミネッセンス光L102の波長成分の内、透過する光の波長成分を、異なる特定の波長帯域毎にフィルタリングするものである。具体的には、カラーフィルタ134は、異なる色に着色された半透明の薄膜を平面上に交互に配置されたものが例示できる。より具体的には、カラーフィルタ134として、赤色・緑色・青色が格子状に配列されたもの(いわゆる、RGBカラーフィルタ)が例示できる。
【0061】
イメージセンサ135は、受光した光エネルギーを時系列処理して、逐次電気信号に変換するものである。多数の受光素子が2次元配列されたCCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサなどが例示できる。
【0062】
レンズ131は、ワイドギャップ半導体基板Wの検査対象となる部位の平面像をイメージセンサ135に投影・結像させるものである。
【0063】
欠陥検出部104は、蛍光撮像部103で撮像したカラー画像の色情報に基づいて、ワイドギャップ半導体基板Wに生じた欠陥を検出するものである。具体的には、カラーカメラ130から出力された映像信号(アナログ信号)や映像データ(デジタル信号)を入力し、背景となる欠陥のない領域の色情報とは異なる色情報の領域部分を抽出し、その領域部分に欠陥があると判定する。
具体的には、欠陥検出部104は、画像処理装置(ハードウェア)とその実行プログラム(ソフトウェア)により構成することができる。
【0064】
[欠陥の種類]
図2は、検査対象となる欠陥の種類を模式的に表した斜視図である。
ここでは、ワイドギャップ半導体基板Wに生じた欠陥の種類として、SiC基板上に形成させたエピタキシャル層の内部や、SiC基板とエピタキシャル層の界面に生じた種々の欠陥が例示されている。
【0065】
なお、本発明の検査対象となる欠陥としては、エピタキシャル層に内在する基底面転位E101、エピタキシャル層に内在する積層欠陥E102、SiC基板とエピタキシャル層の界面にある転位(つまり、界面転位)E10が代表的に挙げられる。また、積層欠陥E102は、1SSF〜4SSF等の欠陥種類に細分類することができる。
【0066】
図3は、本発明により撮像された各種欠陥のカラー画像を模式的に表したイメージ図である。実際に撮像されたものはカラー画像であり、欠陥種類毎に色情報が異なっている。ここでは、カラー画像について白黒で代用説明を行う都合上、色情報の違いは、適宜ハッチングの種類を変えつつ、フォトルミネッセンス光の視覚的表現及び主な波長成分を併記して表現している。
【0067】
蛍光撮像部103で撮像される基底面転位E101は茶褐色(主波長:750nm以上)で撮像される。積層欠陥E102は、欠陥種類によりそれぞれフォトルミネッセンス光の波長成分が異なり、1SSFであれば紫色(主波長:420nm)、2SSFであれば青色がかった緑色(主波長:500nm)、3SSFであれば緑色がかった青色(主波長:480nm)、4SSFであれば青色(主波長:460nm)で撮像される。界面にある転位E103は暗い濃灰色ないし黒色で撮像される。
【0068】
なお、欠陥のない領域については、濃緑色(主波長:530nm)で撮像される。
【0069】
つまり、ワイドギャップ半導体基板Wに欠陥が生じていれば、上述の様に、欠陥種類毎に発光波長が異なるため、各々異なった色で撮像できる。そこで、欠陥検出部104では、これらカラー画像内の色情報の違いがある領域部分を検出し、特定の種類の欠陥があるかないかや、なんらかの欠陥が存在するかどうかといった、いわゆる欠陥の有無検出を行うことができる。
【0070】
さらに、欠陥検出部104は、検出した欠陥について、さらに欠陥種類別に分類する欠陥分類部を備えた構成としても良い。欠陥分類部は、欠陥があるとされた領域部分のカラー画像の色情報に基づいて、その欠陥が、さらにどのような欠陥種類であるかを分類するものである。具体的には、欠陥分類部は、欠陥検出部104を構成する画像処理装置(ハードウェア)に組み込まれた、実行プログラム(ソフトウェア)により構成することができる。
【0071】
より具体的には、欠陥分類部は、カラーカメラで撮像したカラー画像内の色情報の違いがある領域部分を検出した後、当該領域部分が茶褐色(主波長:750nm以上)であれば基底面転位E101、紫色(主波長:420nm)ないし青色がかった緑色(主波長:500nm)であれば積層欠陥E102、濃灰色ないし黒色であれば界面にある転位E103に分類する。
【0072】
さらに、積層欠陥E102については、紫色(主波長:420nm)であれば1SSF、青色がかった緑色(主波長:500nm)であれば2SSF、緑色がかった青色(主波長:480nm)であれば3SSF、青色(主波長:460nm)であれば4SSFに細分類しても良い。
【0073】
なお上述では、カラー画像の色情報の違いとして、主に色合い(色相:Hueとも言う)の違いについて説明した。しかし、これに限らず、明度(Value)や彩度(Saturation)を含めて判断しても良い。
【0074】
そして、本発明に係る欠陥検査装置101を用いることにより、このような欠陥の有無検出や、欠陥種類の分類を確実に行うことができ、従来技術で行う場合と比較して装置構成を簡単にできる。
【0075】
[検査対象となる基板]
上述では、検査対象となるワイドギャップ半導体基板の一類型として、SiC基板上にエピタキシャル層を成長させたものを例示し、このエピタキシャル層の内部、およびSiC基板との界面に生じた欠陥を検査する形態を示した。
しかし、ワイドギャップ半導体としては、SiC基板に限定されず、GaNなどの半導体からなる基板であっても良い。そして、検査対象となる基板の材料に応じて、照射する励起光L101の波長は適宜設定すれば良い。そして、検査対象となる基板の材料、励起光の波長L101および欠陥種類に対するフォトルミネッセンス光L102の特性に応じて、欠陥種類を分類するための色情報は適宜設定すれば良い。
【0076】
また、本発明に係る欠陥検査装置101は、ワイドギャップ半導体基板上に形成させたエピタキシャル層に生じた欠陥のみならず、ワイドギャップ半導体基板を構成する材料そのものに生じた欠陥の検査にも適用することができる。
【0077】
[光源のバリエーション]
上述では、励起光照射部102の光源として、UV−LEDを用いて励起光L101を照射する構成を例示した。しかし、この様な構成に限らず、レーザ発振器やレーザダイオード、ハロゲンランプ等を用いた構成でも良い。例えば、レーザ発振器やレーザダイオードを用いる場合であれば、YAGレーザやYVO4レーザとTHGとを組み合わせた、いわゆるUVレーザを用いて励起光L101を照射する。一方、ハロゲンランプやメタルハライドランプ、水銀ランプ等の白色光源を用いる場合であれば、励起光L101の波長成分を通過させてそれ以外の波長成分を吸収もしくは反射させるUV透過フィルターやダイクロイックミラーなどを用いて、励起光L101を照射する。
【0078】
[カラーカメラのバリエーション]
上述では、カラーカメラ130として、多数の受光素子が2次元配列された、いわゆるエリアセンサーカメラを例示した。しかし、この様な構成に限らず、多数の受光素子が直線上に配列された、ラインセンサーカメラを用いる構成でも良い。この場合は、ラインセンサーの各受光素子が配列されている方向と交差する方向(望ましくは直交する方向)に、カラーカメラ130とワイドギャップ半導体基板Wとを相対移動させながら、連続して画像を取得する構成とする。
【0079】
なお、カラーカメラ130とワイドギャップ半導体基板Wとを相対移動させる構成として、次のような構成が例示できる。
1)励起光照射部102とカラーカメラ130とを固定したまま、アクチュエータやスライダー機構により、ワイドギャップ半導体基板Wを載置した基板保持部109を移動させる。
2)ワイドギャップ半導体基板Wを載置した基板保持部109を固定したまま、励起光照射部102とカラーカメラ130とを同時に一体で移動させる。
【0080】
また、上述では、カラーフィルタ134の具体例として、RGBカラーフィルタ(つまり、原色系フィルタ)を例示したが、CYMカラーフィルタ(つまり、補色系フィルタ)であっても良い。また、カラーカメラは、複数色が平面上に交互に配列されたカラーフィルタとイメージセンサを備えたもの(いわゆる、単板式のカラーカメラ)のほか、白色光を赤色・緑色・青色の光に分光する分光素子と、色別けされた光を各々撮像する複数のイメージセンサを備えたもの(いわゆる、3板式カラーカメラ)であっても良い。
また、上述では3色のカラーフィルタを備えた単板式のカラーカメラや、3板式のカラーカメラを例示したが、2色や4色以上にフィルタリング又は分光した光を撮像するものでも良い。
【0081】
<第3の形態>
以下に、本発明を実施するための第3の形態について、図を用いながら説明する。なお、装置構成を示す各図においては、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、XY平面を水平面、Z方向を鉛直方向とする。特にZ方向は矢印の方向を上、その逆方向を下と表現する。
【0082】
図4は、本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図であり、
図4には、本発明に係る欠陥検査装置201の全体構成が示されている。欠陥検査装置201は、検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wに向けて励起光を照射し、検査対象となる部位から発せられたフォトルミネッセンス光を通過特性の異なるフィルタを用いて画像を2種類以上撮像し、これら見え方の異なる2種類以上の画像の明暗情報の組合せに基づいて、欠陥を検出したり、欠陥種類を分類するものである。具体的には、欠陥検査装置201は、励起光照射部202と、蛍光撮像フィルタ部203と、蛍光撮像フィルタ切替部204と、蛍光撮像部205と、欠陥検出部206とを備えて構成されている。また、欠陥検査装置201には、検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wを所定の姿勢で保持する基板保持部209が備えられている。
【0083】
励起光照射部202は、ワイドギャップ半導体基板Wに向けて励起光L201を照射するものである。具体的には、励起光照射部202は、励起光L201の元になる光エネルギーを発生させる光源(図示せず)を備えている。励起光L201の波長成分は、検査対象となる基板や欠陥種類に応じて適宜決定すれば良く、SiC基板上に成長させたエピタキシャル層に生じた欠陥を検査対象とする場合、375nm以下(いわゆる紫外光)とする。より具体的には、励起光照射部202の光源として、発光波長成分が375nm以下のLED(いわゆる、UV−LED)を用いて励起光L201を照射する。
【0084】
蛍光撮像フィルタ部203は、通過する光の波長成分がそれぞれ異なる、複数の蛍光撮像フィルタを備えて構成されている。具体的には、蛍光撮像フィルタ部203は、第1蛍光撮像フィルタと、第2蛍光撮像フィルタとを備えて構成されている。第1蛍光撮像フィルタは、蛍光撮像部205でまず初めに撮像する際に用いるフィルタであり、第2蛍光撮像フィルタは、その後に蛍光撮像部205で撮像する際に用いるフィルタである。
【0085】
第1蛍光撮像フィルタは、欠陥候補を抽出するための蛍光撮像フィルタであり、広範囲に散在する欠陥および欠陥の可能性が高い部位を、迅速かつ高い確率で抽出するものである。まず最初にこのフィルタを用いて撮像することで、迅速に欠陥候補を抽出することができる。第1蛍光撮像フィルタとして、例えばAフィルタ231を備えた構成とする。
【0086】
第2蛍光撮像フィルタは、特定の種類の欠陥であるかどうかを判別するための蛍光撮像フィルタである。このフィルタは、特定の部位(本発明では、第1蛍光撮像フィルタを用いて撮像した画像から抽出された欠陥候補)について、特定の種類の欠陥かどうか、第1蛍光撮像フィルタよりも高い精度で判別を行うものである。第2蛍光撮像フィルタとしては、1つないし複数のフィルタを備えて構成することができ、例えばBフィルタ232〜Fフィルタ236を備えた構成とする。
【0087】
Aフィルタ231〜Fフィルタ236は、励起光L201の波長成分を減衰させつつ、ワイドギャップ半導体基板Wから発せられたフォトルミネッセンス光L202の波長成分の内、特定の波長成分の光を帯域通過させるものであり、それぞれ通過させる波長成分が異なる。ここでは、Aフィルタ231〜Fフィルタ236を通過した光を総じて、フィルタリングされた光L203と呼ぶ。
【0088】
より具体的には、Aフィルタ231は、波長:385〜610nmの波長成分の光を通過させ、それ以外の光を減衰させるバンドパスフィルタである。
Bフィルタ232は、波長:750nm以上の波長成分の光を通過させ、それ以外の光を減衰させるバンドパスフィルタである。
Cフィルタ233は、主波長:420nm付近の波長成分の光を通過させ、それ以外の光を減衰させるバンドパスフィルタである。
Dフィルタ234は、主波長:460nm付近の波長成分の光を通過させ、それ以外の光を減衰させるバンドパスフィルタである。
Eフィルタ235は、主波長:480nm付近の波長成分の光を通過させ、それ以外の光を減衰させるバンドパスフィルタである。
Fフィルタ236は、主波長:500nm付近の波長成分の光を通過させ、それ以外の光を減衰させるバンドパスフィルタである。
【0089】
蛍光撮像フィルタ切替部204は、蛍光撮像フィルタ部203のAフィルタ231〜Fフィルタ236の内、いずれのフィルタを使用するかを選択して切り替えるものである。具体的には、蛍光撮像フィルタ切替部204は、ターレット241と、回転機構242とを含んで構成されている。
【0090】
ターレット241は、複数のフィルタを装着し固定するものである。具体的には、ターレット241は、後述する蛍光撮像部205のレンズ251前方(つまり、基板W側)に配置されており、円盤状の板材に6箇所の開口部が設けられており、各開口部にはAフィルタ231〜Fフィルタ236が取り付けられている。
【0091】
回転機構242は、ターレット241を所定の角度回転させ、所定の位置で静止させるものである。具体的には、回転機構242は、ステッピングモータやサーボモータなどを備えて構成されており、Aフィルタ231〜Fフィルタ236の内、いずれのフィルタをレンズ251の前方に配置するかを選択して切り替える。
【0092】
蛍光撮像部205は、蛍光撮像フィルタ部203の蛍光撮像フィルタを通過した特定の波長成分の光(つまり、Aフィルタ231〜Fフィルタ236のいずれかを通過して、フィルタリングされた光)L203を撮像するものである。具体的には、蛍光撮像部205は、撮像カメラ250とレンズ251を備えている。
【0093】
撮像カメラ250は、受光した光をモノクロの濃淡画像として撮像し、外部へ映像信号(アナログ信号)や映像データ(デジタル信号)を出力するものである。撮像カメラ250は、イメージセンサ255を備えている。
【0094】
イメージセンサ255は、受光した光エネルギーを時系列処理して、逐次電気信号に変換するものである。多数の受光素子が2次元配列されたCCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサなどが例示できる。
【0095】
レンズ251は、ワイドギャップ半導体基板Wの検査対象となる部位の平面像をイメージセンサ255に投影し結像させるものである。
【0096】
欠陥検出部206は、使用する蛍光撮像フィルタを切り替えて蛍光撮像部205で撮像した、2種類以上の画像の明暗の組合せに基づいて、ワイドギャップ半導体基板Wに生じた欠陥を検出するものである。具体的には、欠陥検出部206は、撮像カメラ250から出力された映像信号(アナログ信号)や映像データ(デジタル信号)を入力し、背景となる欠陥の無い領域の明暗情報(例えば輝度レベル)とは異なる明暗情報の領域部分を抽出し、その領域部分に欠陥があると判定する。より具体的には、欠陥検出部206は、画像処理装置(ハードウェア)とその実行プログラム(ソフトウェア)により構成することができる。
【0097】
[欠陥の種類]
図5は、検査対象となる欠陥の種類を模式的に表した斜視図である。
ここでは、ワイドギャップ半導体基板Wに生じた欠陥の種類として、SiC基板上に形成させたエピタキシャル層の内部や、SiC基板とエピタキシャル層の界面に生じた種々の欠陥が例示されている。
【0098】
なお、本発明の検査対象となる欠陥としては、エピタキシャル層に内在する基底面転位E201、エピタキシャル層に内在する積層欠陥E202、SiC基板とエピタキシャル層の界面にある転位(つまり、界面転位)E203,E204が代表的に挙げられる。なお、基底面転位E201、界面転位E203,E204は、総じて「転位欠陥」と呼ばれる。一方、積層欠陥E202は、単に「積層欠陥」と呼ばれるが、さらに1SSF〜4SSF等の欠陥種類に細分類することができる。
【0099】
図6は、本発明により撮像された各種欠陥の濃淡画像を模式的に表したイメージ図である。
図6には、
図5に示したワイドギャップ半導体基板Wに生じた欠陥を撮像した際の、濃淡画像イメージが示されている。
【0100】
ワイドギャップ半導体基板Wから発せられるフォトルミネッセンス光L202は、「転位欠陥」も「積層欠陥」も無い場合、バンド端発光による波長成分(主に、385〜395nm)と、D−Aペア発光による波長成分(主に、450〜700nm)が含まれる。
【0101】
一方、ワイドギャップ半導体基板Wに「転位欠陥」があれば、当該転位欠陥部位から発せられるフォトルミネッセンス光L202は、主に610nm以上の波長の光、特に750nm前後の波長の光が放出される。
【0102】
一方、ワイドギャップ半導体基板Wに「積層欠陥」があれば、当該積層欠陥部位からは、積層欠陥の欠陥種類に応じて、1SSFなら波長420nm付近、2SSFなら波長500nm付近、3SSFなら波長480nm付近、4SSFなら波長460nm付近のフォトルミネッセンス光が、主に放出される。
【0103】
そして、蛍光撮像フィルタ部203のAフィルタ231〜Fフィルタ236の内、いずれを用いるかを、蛍光撮像フィルタ切替部204にて切り替えることで、蛍光撮像部205の撮像カメラ250で撮像されたワイドギャップ半導体基板Wの各種欠陥は、以下の様な画像として撮像される。(
図6参照)
【0104】
Aフィルタ231を用いて撮像した場合、欠陥の無い領域が灰色で撮像され、基底面転位E1と界面にある転位E203,E204は、それよりも輝度レベルが低い、黒色ないし濃い灰色で撮像される。一方、積層欠陥E202は、欠陥の無い領域よりも輝度レベルが高い、薄い灰色ないし白色で撮像される。
【0105】
Bフィルタ232を用いて撮像した場合、欠陥の無い領域が黒色ないし濃い灰色で撮像され、基底面転位E201は、それよりも輝度レベルが高い、灰色ないし薄い灰色で撮像される。界面にある転位E203,E204は、欠陥の無い領域と同程度の輝度レベルか、それよりも輝度レベルがやや高い、黒色ないし濃い灰色で撮像される。
【0106】
Cフィルタ233を用いて撮像した場合、欠陥の無い領域が黒色ないし濃い灰色で撮像され、積層欠陥E202の内、1SSFについては、それよりも輝度レベルが高い、灰色ないし薄い灰色で撮像される。
【0107】
Dフィルタ234を用いて撮像した場合、欠陥の無い領域が黒色ないし濃い灰色で撮像され、積層欠陥E202の内、4SSFについては、それよりも輝度レベルが高い、灰色ないし薄い灰色で撮像される。
【0108】
Eフィルタ235を用いて撮像した場合、欠陥の無い領域が黒色ないし濃い灰色で撮像され、積層欠陥E202の内、3SSFについては、それよりも輝度レベルが高い、灰色ないし薄い灰色で撮像される。
【0109】
Fフィルタ236を用いて撮像した場合、欠陥の無い領域が黒色ないし濃い灰色で撮像され、積層欠陥E202の内、2SSFについては、それよりも輝度レベルが高い、灰色ないし薄い灰色で撮像される。
【0110】
そこで、欠陥検出部206では、画像処理装置とその実行プログラムにより、これら濃淡画像内の明暗情報の違いがある領域部分を検出し、撮像された2種類以上の画像の明暗情報の組合せに基づいて、特定の種類の欠陥が有るか無いかや、なんらかの欠陥が存在するかどうかといった、いわゆる欠陥の有無検出を行うように構成しておく。
【0111】
さらに、欠陥検出部206は、検出した欠陥について、さらに欠陥種類別に分類する欠陥分類部を備えた構成としても良い。欠陥分類部は、欠陥があるとされた領域部分の濃淡画像の明暗情報に基づいて、その欠陥が、さらにどのような欠陥種類であるかを分類するものである。具体的には、欠陥分類部は、欠陥検出部206を構成する画像処理装置(ハードウェア)に組み込まれた、実行プログラム(ソフトウェア)により構成することができる。
【0112】
より具体的には、欠陥分類部は、撮像カメラ250で撮像した濃淡画像内の明暗情報の違いがある領域部分を検出した後、次の様にして、欠陥種類を分類する。
【0113】
[欠陥検出/分類フロー]
図7は、本発明を具現化する形態の一例における欠陥検査の一例を示すフロー図である。
図7には、欠陥検査装置201にて検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wの欠陥検査を行う際の、一連のフローが例示されている。
【0114】
まず、欠陥検査を行う基板Wを基板保持部209に置く(ステップs101)。そして、蛍光撮像フィルタ切替部204のターレット241を回転させて、蛍光撮像フィルタ部203の第1蛍光撮像フィルタとして機能するAフィルタ231に切り替える(ステップs102)。そして、この状態で、蛍光撮像部205にて撮像を行い、画像を取得する(ステップs103)。
【0115】
そして、取得した画像の明暗情報から、欠陥候補を抽出し(ステップs104)、当該欠陥候補が「転位欠陥候補」であるか、「積層欠陥候補」であるかを判別する(ステップs105)。
【0116】
このステップs105では、周囲の領域に対して輝度レベルが低い部位があれば、当該部位を「転位欠陥候補」と判別し、周囲の領域に対して輝度レベルが高い部位があれば、当該部位を「積層欠陥候補」と判別する。
【0117】
ステップs105にて、当該欠陥候補が「転位欠陥候補」と判別されれば、蛍光撮像フィルタ切替部204のターレット241を回転させて、蛍光撮像フィルタ部203の第2蛍光撮像フィルタとして機能するBフィルタ232に切り替える(ステップs110)。そして、この状態で、蛍光撮像部205にて撮像を行い、「転位欠陥候補」と判別された部位が含まれるように画像を取得する(ステップs111)。
【0118】
Bフィルタ232を用いて取得した画像に含まれる転位欠陥候補部位の輝度レベルが、予め設定しておいた基準となる輝度レベル(いわゆる、閾値)と対比して、それよりも高いかどうかを判定する(ステップs112)。この判定で、欠陥候補部位の輝度レベルが、基準となる輝度レベルよりも高ければ、当該欠陥候補部位を「基底面転位」と判定し(ステップs113)、基準となる輝度レベルよりも低ければ、当該欠陥候補部位を「界面にある転位」と判定する(ステップs114)。
【0119】
一方、上述のステップs105にて、欠陥候補が「積層欠陥候補」と判別されれば、蛍光撮像フィルタ切替部204のターレット241を回転させて、蛍光撮像フィルタ部203の第2蛍光撮像フィルタとして機能するCフィルタ233に切り替える(ステップs120)。そして、この状態で、蛍光撮像部205にて撮像を行い、「積層欠陥候補」と判別された部位が含まれるように画像を取得する(ステップs121)。
【0120】
Cフィルタ233を用いて取得した画像に含まれる欠陥候補部位の輝度レベルが、周囲の欠陥の無い領域よりも高いかどうかを判定する(ステップs122)。ここで、欠陥候補部位の輝度レベルが、周囲の欠陥の無い領域よりも高いと判定されれば、当該欠陥候補部位を「1SSFの積層欠陥」と判定し(ステップs123)、一連の処理を終える。
【0121】
一方、上述のステップs122にて、欠陥候補部位の輝度レベルが、周囲の欠陥の無い領域と同等と判定されれば、そのまま処理を終えるか、必要に応じて、後述する次の処理A(ステップ130)を行う。
【0122】
なお、Bフィルタ232を用いて上述の処理ステップs111〜s112を行い、転位欠陥が有るかどうかを検出することは、従来技術を応用したものである。しかし、その前にAフィルタ231を用いて処理ステップs102〜s105を行い、ワイドギャップ半導体基板Wに点在する転位欠陥候補を抽出することや、その後にBフィルタ232に切り替えて、処理ステップs111〜s112を行う点で相違する。
【0123】
従来技術では、確実な検査結果を得るために、検査する為にの画像を時間を掛けて取得していた。そして、ワイドギャップ半導体基板Wのどこに転位欠陥が有るか不明なため、転位欠陥が無い領域を含む基板Wの全域に対して、時間を掛けて画像を取得して検査していた。これに対し、本発明によれば、第1蛍光撮像フィルタを用いて欠陥候補を短時間で抽出することができ、その後、必要最小限の欠陥候補部位についてのみ、時間のかかる処理ステップs111〜s112を行えば良いので、迅速かつ確実に、転位欠陥の検出や欠陥種類の分類を行うことが可能となる。
【0124】
さらに、本発明によれば、積層欠陥(上述では1SSFの積層欠陥を例示)についても検出することができる。つまり、迅速かつ確実に特定の種類の欠陥を検査すること、又は欠陥の種類を分類することができる。
【0125】
[欠陥の検出/分類のバリエーション]
上述のステップs101〜s114の処理を適宜行うことで、単なる「転位欠陥」のみならず、「基底面転位」や「界面にある転位」を特定した検出や有無の検査をしたり、「転位欠陥」の細分類をすることができる。
【0126】
さらに、転位欠陥のみならず、処理ステップs105で積層欠陥候補を抽出し、処理ステップs120〜s123を行うことにより、1SSFの積層欠陥の検出を行うことが可能である。或いは、以下の処理Aを行うことで、積層欠陥が1SSF〜4SSFのいずれであるか細分類することも可能である。
【0127】
図8は、本発明を具現化する形態の一例における欠陥検査の別の一例を示すフロー図である。
図8には、
図7を用いて説明した処理フローにおける、処理A(ステップs130)の詳細なフローが例示されている。処理Aは、上述の処理ステップs105で「積層欠陥候補」と判別された部位の内、上述の処理ステップs122で「1SSFの積層欠陥」と判定されなかったものについて、Dフィルタ234〜Fフィルタ236を用いて、2SSF〜4SSFのいずれの積層欠陥であるかを細分類するものである。
【0128】
まず、蛍光撮像フィルタ切替部204のターレット241を回転させて、蛍光撮像フィルタ部203の第2蛍光撮像フィルタとして機能するフィルタを、Dフィルタ234に切り替える(ステップs200)。そして、この状態で、蛍光撮像部205にて撮像を行い、「積層欠陥候補」と判別された部位が含まれるように画像を取得する(ステップs201)。
【0129】
Dフィルタ234を用いて取得した画像に含まれる欠陥候補部位の輝度レベルが、周囲の欠陥の無い領域よりも高いかどうかを判定する(ステップs202)。ここで、欠陥候補部位の輝度レベルが、周囲の欠陥の無い領域よりも高いと判定されれば、当該欠陥候補部位を「4SSFの積層欠陥」と判定し(ステップs203)、一連の処理を終える。
【0130】
一方、上述のステップs202にて、欠陥候補部位の輝度レベルが、周囲の欠陥の無い領域と同等と判定されれば、そのまま処理を終えるか、必要に応じて、次の処理を行う。
【0131】
次に、蛍光撮像フィルタ切替部204のターレット241を回転させて、蛍光撮像フィルタ部203の第2蛍光撮像フィルタとして機能するフィルタを、Eフィルタ235切り替える(ステップs210)。そして、この状態で、蛍光撮像部205にて撮像を行い、「積層欠陥候補」と判別された部位が含まれるように画像を取得する(ステップs211)。
【0132】
Eフィルタ235を用いて取得した画像に含まれる欠陥候補部位の輝度レベルが、周囲の欠陥の無い領域よりも高いかどうかを判定する(ステップs212)。ここで、欠陥候補部位の輝度レベルが、周囲の欠陥の無い領域よりも高いと判定されれば、当該欠陥候補部位を「3SSFの積層欠陥」と判定し(ステップs213)、一連の処理を終える。
【0133】
一方、上述のステップs212にて、欠陥候補部位の輝度レベルが、周囲の欠陥の無い領域と同等と判定されれば、そのまま処理を終えるか、必要に応じて、次の処理を行う。
【0134】
次に、蛍光撮像フィルタ切替部204のターレット241を回転させて、蛍光撮像フィルタ部203の第2蛍光撮像フィルタとして機能するフィルタを、Fフィルタ236切り替える(ステップs220)。そして、この状態で、蛍光撮像部205にて撮像を行い、「積層欠陥候補」と判別された部位が含まれるように画像を取得する(ステップs221)。
【0135】
Fフィルタ236を用いて取得した画像に含まれる欠陥候補部位の輝度レベルが、周囲の欠陥の無い領域よりも高いかどうかを判定する(ステップs222)。ここで、欠陥候補部位の輝度レベルが、周囲の欠陥の無い領域よりも高いと判定されれば、当該欠陥候補部位を「2SSFの積層欠陥」と判定し(ステップs223)、一連の処理を終える。
【0136】
一方、上述のステップs222にて、欠陥候補部位の輝度レベルが、周囲の欠陥の無い領域と同等と判定されれば、そのまま処理を終えるか、必要に応じて、次の処理Bを行う。次の処理Bとしては、その他の積層欠陥と判定したり、人手による細分類が必要な旨の通知したり、エラーとする処理などが例示でき、適宜実行プログラムに登録しておく。
【0137】
本発明に係る欠陥検査装置201は、この様な処理Aを行うことにより、1SSF〜4SSFのいずれかの積層欠陥を検出したり、1SSF〜4SSFのいずれかの積層欠陥の有無を検査したり、上述の処理ステップs105で「積層欠陥候補」と判別された部位について、1SSF〜4SSFのいずれの積層欠陥であるかを細分類したりすることができる。
【0138】
そのため、欠陥検査装置201によれば、第1蛍光撮像フィルタを用いて積層欠陥候補を短時間で抽出することができ、その後、必要最小限の積層欠陥候補部位についてのみ、時間のかかる処理ステップs121〜s123、s130を行えば良いので、迅速かつ確実に、特定の積層欠陥の検出や積層欠陥の細分類を行うことが可能となる。
【0139】
[蛍光撮像フィルタ部のバリエーション]
上述では、蛍光撮像フィルタ部203の第1蛍光撮像フィルタとして、Aフィルタ231を用いる例を示した。Aフィルタ231は、385〜610nmの波長成分の光を通過させ、それ以外の光を減衰させるバンドパスフィルタであるため、ワイドギャップ半導体基板Wのバンド端発光やD−Aペア発光による波長成分の光を効率よく通過させつつ、転位欠陥部位から発せられるフォトルミネッセンス光の波長成分(750nm以上)の光を確実に減衰させることができる。そのため、撮像カメラ240で撮像される白黒の濃淡画像のコントラストを極めて高くすることができ、より好ましい。
【0140】
しかし、蛍光撮像フィルタ部203の第1蛍光撮像フィルタは、この様な特性を備えたAフィルタ231に限らず、異なる波長通過特性を備えた、A’フィルタや、A”フィルタ等を用いる構成としても良い。
【0141】
具体的には、A’フィルタは、385〜750nmの波長成分の光を通過させ、それ以外の光を減衰させるバンドパスフィルタである。この様な特性のA’フィルタを用いれば、ワイドギャップ半導体基板Wのバンド端発光やD−Aペア発光による波長成分の光を効率よく通過させつつ、転位欠陥部位から発せられるフォトルミネッセンス光の波長成分(750nm以上)の光を実質的に減衰させることができる。そのため、撮像カメラ240で撮像される白黒の濃淡画像のコントラストを高くすることができ、好ましい。
【0142】
一方、A”フィルタは、385〜395nmの波長成分の光を通過させ、それ以外の光を減衰させるバンドパスフィルタである。ワイドギャップ半導体基板Wの結晶構造によっては、結晶欠陥が無い領域からのフォトルミネッセンス光L202として、バンド端発光による波長成分(主に、385〜395nm)が多く含まれる場合がある。そのような場合には、385〜395nmの波長成分の光を通過させ、それ以外の光を減衰させる、A”フィルタを用いることが好ましい。そうすれば、結晶欠陥がある場合に含まれるフォトルミネッセンス光を確実に減衰させることができるので、撮像カメラ240で撮像される白黒の濃淡画像のコントラストを極めて高くすることができる。
【0143】
なお、蛍光撮像フィルタ部203は、
図4に示す様にレンズ251の前方(つまり、基板W側)に配置しても良いし、レンズ251を構成する光学素子群の光路中に配置しても良い。
【0144】
[検査対象となる基板]
上述では、検査対象となるワイドギャップ半導体基板の一類型として、SiC基板上にエピタキシャル層を成長させたものを例示し、このエピタキシャル層内ないしSiC基板との界面に生じた欠陥を検査する形態を示した。
【0145】
しかし、ワイドギャップ半導体としては、SiC基板に限定されず、GaNなどの半導体からなる基板であっても良い。そして、検査対象となる基板の材料に応じて、照射する励起光L201の波長は適宜設定すれば良い。そして、検査対象となる基板の材料、励起光の波長L201および欠陥種類に対するフォトルミネッセンス光L202の特性に応じて、欠陥種類を分類するための明暗情報は適宜設定すれば良い。
【0146】
また、本発明に係る欠陥検査装置201は、ワイドギャップ半導体基板上に形成させたエピタキシャル層に生じた欠陥のみならず、ワイドギャップ半導体基板を構成する材料そのものに生じた欠陥の検査にも適用することができる。
【0147】
[光源のバリエーション]
上述では、励起光照射部202の光源として、UV−LEDを用いて励起光L201を照射する構成を例示した。しかし、この様な構成に限らず、レーザ発振器やレーザダイオード、キセノンランプ等を用いた構成でも良い。例えば、レーザ発振器やレーザダイオードを用いる場合であれば、YAGレーザやYVO4レーザとTHGとを組み合わせた、いわゆるUVレーザを用いて励起光L201を照射する。一方、キセノンランプやメタルハライドランプ、水銀キセノンランプ、水銀ランプ等の白色光源を用いる場合であれば、励起光L201の波長成分を通過させてそれ以外の波長成分を吸収もしくは反射させるUV透過フィルターやダイクロイックミラーなどを用いて、励起光L201を照射する。
【0148】
[撮像カメラのバリエーション]
上述では、撮像カメラ250として、多数の受光素子が2次元配列された、いわゆるエリアセンサーカメラを例示した。しかし、この様な構成に限らず、多数の受光素子が直線上に配列された、ラインセンサーカメラを用いる構成でも良い。この場合は、ラインセンサーの各受光素子が配列されている方向と交差する方向(望ましくは直交する方向)に、撮像カメラ250とワイドギャップ半導体基板Wとを相対移動させながら、連続して画像を取得する構成とする。
【0149】
なお、撮像カメラ250とワイドギャップ半導体基板Wとを相対移動させる構成として、次のような構成が例示できる。
【0150】
1)励起光照射部202と撮像カメラ250とを固定したまま、アクチュエータやスライダー機構により、ワイドギャップ半導体基板Wを載置した基板保持部209を移動させる。
【0151】
2)ワイドギャップ半導体基板Wを載置した基板保持部209を固定したまま、励起光照射部2と撮像カメラ250とを同時に一体で移動させる。
【0152】
[レンズのバリエーション]
上述では、1種類のレンズ251を用いて、第1蛍光撮像フィルタおよび第2蛍光撮像フィルタを切り替えて撮像する構成を例示した。しかし、2種類以上のレンズを備え、それらレンズがレボルバー機構や手作業による段取り替えなどにより、交換可能な構成としても良い。例えば、最初に、第1蛍光撮像フィルタを用いて撮像する際は、一度に広範囲を撮像できる低倍率のレンズを用いて撮像し、欠陥候補の抽出を行う。その後、第2蛍光撮像フィルタを用いて撮像する際に、拡大して撮像できる高倍率のレンズを用いて撮像し、欠陥種類の判定を行う。
【0153】
[蛍光撮像フィルタのバリエーション]
なお、上述では、蛍光撮像フィルタ部203には、第1蛍光撮像フィルタとして機能するAフィルタ231並びに、第2蛍光撮像フィルタとして機能するBフィルタ232〜Fフィルタ236が備えられ、その内いずれのフィルタを用いるか、蛍光撮像フィルタ切替部204にて選択して切り替える構成を示した。しかし、基底面転位E201と、界面にある転位E203とを分類する場合であれば、Aフィルタ231とBフィルタ232を備えた構成であれば足りる。
【0154】
一方、積層欠陥E202のうち、1SSF〜4SSFのいずれか特定の欠陥種類を検出する場合であれば、Aフィルタ231と、Cフィルタ233〜Fフィルタ236のいずれか1つを備えた構成とすれば良い。
【0155】
つまり、用いるフィルタは、第1〜第6まで全てのフィルタを備える必要はなく、検査対象となる欠陥の種類に対応させて、適宜選定すれば良い。蛍光撮像フィルタのバリエーションが2種類以上あれば、簡単な構成にも関わらず、迅速かつ確実に、特定の種類の欠陥を検出したり、欠陥種類の分類をすることができる。
【0156】
なお、蛍光撮像フィルタ切替部204は、Aフィルタ231とBフィルタ232を上述の様な回転移動にて切り替える方式のほか、直線移動にて切り替える方式でも良い。また、モータを用いずに手動にて回転させ、所定の位置で静止させる構成としても良い。或いは、撮像に用いる各フィルタを手作業にて交換(いわゆる、段取り替え)を行う構成としても良い。
【0157】
[欠陥判定のバリエーション]
なお、上述のステップs105では、周囲の領域に対して輝度レベルが低い部位か、輝度レベルが高い部位かによって、「転位欠陥候補」であるか、「積層欠陥候補」であるかを判別していた。しかし、この様な形態に限らず、予め設定しておいた基準の輝度レベル(いわゆる、閾値)と対比して、それよりも輝度レベルが低ければ「転位欠陥候補」とし、それよりも輝度レベルが高ければ「積層欠陥候補」としても良い。また、基準の輝度レベルは、1つのみならず、それぞれの欠陥候補に応じて異なる基準レベルとしても良い。さらに、それら基準レベルは、上下限値(いわゆる、閾値の範囲)を設定しても良い。
同様に、上述のステップs122〜123において、欠陥候補部位について、予め設定しておいた基準の輝度レベル(いわゆる、閾値)と対比して、それよりも輝度レベルが高ければ「1SSFの積層欠陥」と判定しても良い。
【0158】
<第4の形態>
以下に、本発明を実施するための第4の形態について、図を用いながら説明する。
図9は、本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す側面図である。
本発明に係る転位欠陥検査装置301は、励起光照射部302と、蛍光撮像フィルタ部303と、蛍光撮像部304と、転位欠陥検出部305とを備えて構成されている。この転位欠陥検査装置301は、検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wに向けて励起光L301を照射し、検査対象となる部位から発せられたフォトルミネッセンス光L302の内、特定の波長成分の光L303を撮像し、撮像された光の強弱に基づいて、転位欠陥を検出するものである。また、転位欠陥検査装置301には、検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wを所定の姿勢で保持する基板保持部309が備えられている。
【0159】
励起光照射部302は、ワイドギャップ半導体基板Wに向けて励起光L301を照射するものである。具体的には、励起光照射部302は、励起光L301の元になる光エネルギーを発生させる光源(図示せず)を備えている。励起光L301の波長成分は、検査対象となる基板や転位欠陥の種類に応じて適宜決定すれば良く、SiC基板上に成長させたエピタキシャル層に生じた転位欠陥を検査対象とする場合、375nm以下(いわゆる紫外光)とする。より具体的には、励起光照射部302の光源として、発光波長成分が375nm以下のLED(いわゆる、UV−LED)を用いて励起光L301を照射する。
【0160】
蛍光撮像フィルタ部303は、励起光L301の波長成分を減衰させつつ、励起光L301がワイドギャップ半導体基板Wに照射されることで発せられたフォトルミネッセンス光L302の波長成分の内、特定の波長成分の光L303を帯域通過させるものである。具体的には、蛍光撮像フィルタ303は、後述する撮像カメラ340の前方(つまり、基板W側)に取り付けられており、特定の波長帯域の光を通過させつつ、それ以外の波長帯域の光を吸収または反射により減衰させる、バンドパスフィルタにて構成されている。より具体的には、蛍光撮像フィルタ部303は、波長:385〜750nmの波長成分の光を通過させ、それ以外の光を減衰させるバンドパスフィルタで構成する。
【0161】
蛍光撮像部304は、蛍光撮像フィルタを通過した、特定の波長成分の光L303を撮像するものである。具体的には、蛍光撮像部304は、撮像カメラ340とレンズ341を備えている。
【0162】
撮像カメラ340は、フォトルミネッセンス光L302の波長成分を白黒の濃淡画像として撮像し、外部へ映像信号(アナログ信号)や映像データ(デジタル信号)を出力するものである。撮像カメラ340は、イメージセンサ345を備えている。
【0163】
イメージセンサ345は、受光した光エネルギーを時系列処理して、逐次電気信号に変換するものである。具体的には、イメージセンサ345は、多数の受光素子が2次元配列されたCCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサなどが例示でき、蛍光撮像フィルタ部303を通過した特定の波長帯域の光L303の強弱に対応した輝度信号が出力される。
【0164】
レンズ341は、ワイドギャップ半導体基板Wの検査対象となる部位の平面像をイメージセンサ345に投影・結像させるものである。そして、レンズ341の前方(つまり、基板W側)に、蛍光撮像フィルタ部303が取り付けられている。
【0165】
ワイドギャップ半導体基板Wから発せられるフォトルミネッセンス光L302は、転位欠陥がない場合、バンド端発光による波長成分(主に、385〜395nm)と、D−Aペア発光による波長成分(主に、450〜700nm)が主になる。一方、転位欠陥があれば、フォトルミネッセンス光L302には、610nm以上の波長の光、特に750nm前後の波長の光が主になる。そのため、蛍光撮像フィルタ部303を通過した特定の波長帯域の光L303の強度は、転位欠陥がなければ強まり、転位欠陥があれば弱まる。そのため、転位欠陥が無い領域の一部に転位欠陥が存在すると、その部分が周囲よりも暗い、白黒の濃淡画像として撮像カメラ340で撮像される。
【0166】
転位欠陥検出部305は、蛍光撮像部304で撮像した白黒の濃淡画像に基づいて、ワイドギャップ半導体基板Wに生じた転位欠陥を検出するものである。具体的には、撮像カメラ40から出力された映像信号(アナログ信号)や映像データ(デジタル信号)を入力し、背景となる転位欠陥のない領域の輝度情報と異なる輝度情報の領域部分を抽出し、その輝度情報の違いに応じて、その領域部分に転位欠陥があると判定する。
【0167】
具体的には、転位欠陥検出部305は、画像処理装置(ハードウェア)とその実行プログラム(ソフトウェア)により構成することができる。
【0168】
図10は、ワイドギャップ半導体基板に生じる各種欠陥を模式的に表した斜視図である。
図10には、ワイドギャップ半導体基板Wの代表例として、SiC基板上にエピタキシャル層を成長形成させたものを示している。本発明により検出対象とする転位欠陥として、基底面転位E301、マイクロパイプE302、貫通らせん転位E303、貫通刃状転位E304や、界面にある転位E305,E306が例示できる。なお、
図10には、転位欠陥のほか、本発明では検出しない他の欠陥(例えば、積層欠陥J301など)が例示されている。
【0169】
図11は、本発明により撮像された転位欠陥の濃淡画像と、従来技術によるものとを比較したイメージ図である。従来技術であるPL法によると、何らかの欠陥があれば、その部分が明画像として表れていた。ただし、この様な画像を取得するために時間を要していた。
【0170】
これに対し、本発明に係る蛍光撮像部304で撮像される各転位欠陥E301〜E306は、暗い濃灰色ないし黒色で撮像される。一方、転位欠陥のない領域については、薄い灰色ないし灰色で撮像される。
【0171】
つまり、本発明に係る転位欠陥検査装置301を用いることで、ワイドギャップ半導体基板Wに転位欠陥が生じていれば、その部分が周囲よりも暗い(つまり、輝度が小さい)状態で撮像できる。そこで、転位欠陥検出部305では、これら白黒の濃淡画像内の輝度の違いがある領域部分を検出し、転位欠陥の有無検出を行うことができる。
【0172】
そして、本発明に係る転位欠陥検査装置301を用いることにより、転位欠陥の有無検出などの検査を迅速に行うことができ、従来技術で行う場合と比較して装置構成を簡単にできる。
【0173】
[別の形態]
転位欠陥検出部305は、輝度情報に対して閾値を設定し、その条件で検出されたものを全てを転位欠陥として検出することができる。このとき設定する、閾値が不適切であると、過検出や検出漏れとなる可能性があるため、閾値を厳密に設定したり、適宜変更が必要になったりする場合がある。また、検査する際に作業者の衣服やマスクなどから発生したホコリなどの有機物が基板Wの表面に付着すると、有機物からフォトルミネッセンス光を発する。後から付着したホコリなどは、後の洗浄工程で除去されるものであったとしても、検査結果に含まれてしまうため、検出対象から除きたい場合がある。
【0174】
そのため、本発明を実施する上で、上述の転位欠陥検出部305を備えた転位欠陥検査装置301に代えて、転位欠陥検出部305Bを備えた転位欠陥検査装置301Bとすることが、より好ましい。
【0175】
図12は、本発明を具現化する形態の別の一例の全体構成を示す側面図である。
本発明に係る転位欠陥検査装置301Bは、励起光照射部302と、蛍光撮像部304と、蛍光撮像フィルタ部303と、転位欠陥検出部305Bとを備えて構成されている。なお、励起光照射部302と、蛍光撮像部304と、蛍光撮像フィルタ部303については、上述と同様の構成のため、詳細な説明は省略する。
【0176】
転位欠陥検出部305Bは、欠陥候補抽出部351と、欠陥候補形状識別部352と、欠陥判別部353とを含んで構成されている。
【0177】
欠陥候補抽出部351は、蛍光撮像部304で撮像された画像内の、基準レベルよりも低い輝度レベルの部位を欠陥候補として抽出するものである。この基準レベルは、欠陥候補がより多く見つかるような閾値を設定しておくことが好ましい。
【0178】
欠陥候補形状識別部352は、欠陥候補抽出部351で抽出した欠陥候補の形状を識別するものである。転位欠陥の検査では、検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wのオフ角θが既知であるため、欠陥の形状(つまり、欠陥の大きさや長さ)については、ある程度予想がつく。そのため、欠陥候補形状識別部352では、予め想定される形状によるフィルタリング処理をおこなう。
【0179】
欠陥判別部353は、欠陥候補形状識別部352で識別された欠陥候補の形状に基づいて、当該欠陥候補がワイドギャップ半導体基板Wに生じた転位欠陥であるかどうかを判別するものである。
【0180】
転位欠陥検出部305Bを備えた転位欠陥検査装置301Bは、この様な構成をしているため、形状によるフィルタリング処理を併用することで、欠陥を検出するための閾値を厳密に設定することなく、誤検出や検出漏れを防ぐことができる。また、ホコリなどの特異な形状のものについては、検出結果から除くことができる。
【0181】
[蛍光撮像フィルタ部のバリエーション]
なお、蛍光撮像フィルタ部303は、上述の波長帯域の光を通過させ、それ以外の光を減衰させる構成に限らず、下述のような構成であっても良い。
【0182】
例えば、385〜610nmの波長成分の光を通過させ、それ以外の光を減衰させる、バンドパスフィルタで構成することが好ましい。そうすれば、転位欠陥がある場合に含まれる610nm以上のフォトルミネッセンス光を減衰させることができるので、撮像カメラ340で撮像される白黒の濃淡画像のコントラストを高めることができる。
【0183】
なお、ワイドギャップ半導体基板Wの結晶構造によっては、転位欠陥が無い領域からのフォトルミネッセンス光L302として、バンド端発光による波長成分(主に、385〜395nm)が多く含まれる場合がある。そのような場合には、蛍光撮像フィルタ部303は、385〜395nmの波長成分の光を通過させ、それ以外の光を減衰させる、バンドパスフィルタで構成することが好ましい。そうすれば、転位欠陥がある場合に含まれるフォトルミネッセンス光を確実に減衰させることができるので、撮像カメラ340で撮像される白黒の濃淡画像のコントラストを極めて高くすることができる。
なお、蛍光撮像フィルタ部303は、
図9に示す様な配置(つまり、レンズ341と基板Wの間に配置)しても良いし、レンズ341を構成する光学素子群の光路中や、レンズ341と撮像カメラ340の間に配置しても良い。
【0184】
[検査対象となる基板]
上述では、検査対象となるワイドギャップ半導体基板の一類型として、SiC基板上にエピタキシャル層を成長させたものを例示し、このエピタキシャル層内ないしエピタキシャル層とSiC基板との界面に生じた転位欠陥を検査する形態を示した。
【0185】
しかし、ワイドギャップ半導体としては、SiC基板に限定されず、GaNなどの半導体からなる基板であっても良い。そして、検査対象となる基板の材料に応じて、照射する励起光L301の波長は適宜設定すれば良い。そして、検査対象となる基板の材料、励起光L301の波長および転位欠陥に対するフォトルミネッセンス光L302の特性に応じて、輝度信号の閾値は適宜設定すれば良い。
【0186】
また、本発明に係る転位欠陥検査装置301は、ワイドギャップ半導体基板上に形成させたエピタキシャル層に生じた転位欠陥のみならず、ワイドギャップ半導体基板を構成する材料そのものに生じた転位欠陥の検査にも適用することができる。
【0187】
[光源のバリエーション]
上述では、励起光照射部302の光源として、UV−LEDを用いて励起光L301を照射する構成を例示した。しかし、この様な構成に限らず、レーザ発振器やレーザダイオード、キセノンランプ等を用いた構成でも良い。例えば、レーザ発振器やレーザダイオードを用いる場合であれば、YAGレーザやYVO4レーザとTHGとを組み合わせた、いわゆるUVレーザを用いて励起光L301を照射する。一方、キセノンランプやメタルハライドランプ、水銀キセノンランプ、水銀ランプ等の白色光源を用いる場合であれば、励起光L301の波長成分を通過させてそれ以外の波長成分を吸収もしくは反射させるUV透過フィルターやダイクロイックミラーなどを用いて、励起光L301を照射する。
【0188】
<第5の形態>
以下に、本発明を実施するための第5の形態について、図を用いながら説明する。
なお、各図では、水平方向をx方向、y方向と表現し、xy平面に垂直な方向(つまり、重力方向)をz方向と表現する。
【0189】
図13は、本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図であり、欠陥検査装置1を構成する各部の配置が概略的に記載されている。
【0190】
本発明に係る欠陥検査装置401は、励起光照射部402と、光分岐部403と、第1撮像部404と、第2撮像部405と、欠陥検査部406とを備えて構成されている。この欠陥検査装置401は、検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wに向けて励起光L401を照射し、検査対象となる部位から発せられたフォトルミネッセンス光L402を分岐し、各々撮像された画像の濃淡情報と色情報との組合せに基づいて、各種欠陥の検出を行うものである。また、欠陥検査装置401には、検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wを所定の姿勢で保持する基板保持部408と、検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wの像を投影・結像させるためのレンズ部409が備えられている。
【0191】
励起光照射部402は、ワイドギャップ半導体基板Wに向けて励起光L401を照射するものである。具体的には、励起光照射部402は、励起光L401の元になる光エネルギーを発生させる光源(図示せず)を備えている。励起光L401の波長成分は、検査対象となる基板や欠陥の種類に応じて適宜決定すれば良く、SiC基板上に成長させたエピタキシャル層に生じた各種欠陥を検査対象とする場合、375nm以下(いわゆる紫外光)とする。より具体的には、励起光照射部402の光源として、発光波長成分が365nm前後のLED(いわゆる、UV−LED)を用いて励起光L401を照射する。
【0192】
光分岐部403は、励起光L401が照射され、検査対象となる部位から発せられたフォトルミネッセンス光L402を、第1分岐光L403と第2分岐光L404に分岐するものである。具体的には、光分岐部403は、後述する撮像カメラ440の前方(つまり、基板W側)に取り付けられたダイクロイックミラー430で構成する。ダイクロイックミラー430は、二色鏡とも呼ばれ、表面側430sには、第1分岐光L403を通過させつつ第2分岐光L404を反射させるコーティングが予め施されている。そのため、ダイクロイックミラー430の表面側430sに入射したフォトルミネッセンス光L402のうち、第1分岐光L403は通過して裏面側430bから出射され、第2分岐光L404は表面側430sで反射される。つまり、光分岐部403では、第1分岐光L403及び第2分岐光L404に分岐される。
【0193】
より具体的には、ダイクロイックミラー430の表面側430sに施されるコーティングは、誘電体の多層膜であり、分岐の基準とされる光の波長が600nmとなるように設計されている。つまり、ダイクロイックミラー430の裏面側430bから出射される第1分岐光L403は、600nmよりも長波長側の波長帯域の光であり、ダイクロイックミラー430の表面側430sで反射される第2分岐光L404は、600nmよりも短波長側の波長帯域の光である。
【0194】
第1撮像部404は、光分岐部403で分岐された第1分岐光L403を白黒画像として撮像するものである。具体的には、第1撮像部404は、白黒撮像カメラ440を備えている。
【0195】
白黒撮像カメラ440は、第1分岐光L403を白黒の濃淡画像として撮像し、外部へ映像信号(アナログ信号)や映像データ(デジタル信号)を出力するものである。白黒撮像カメラ440は、イメージセンサ445を備えている。
【0196】
イメージセンサ445は、受光した光エネルギーを時系列処理して、逐次電気信号に変換するものである。具体的には、イメージセンサ445は、多数の受光素子が2次元配列されたCCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサなどが例示でき、第1分岐光L403の強弱に対応した輝度信号が出力される。
【0197】
なお、白黒撮像カメラ440は、鮮明な画像を取得し、取得した画像から欠陥を抽出するために、いわゆる高感度対応のイメージセンサ445を備えたものを選択することが好ましい。
【0198】
第2撮像部40405は、光分岐部3で分岐された第2分岐光L404をカラー画像として撮像するものである。具体的には、第2撮像部405は、カラー撮像カメラ450を備えている。
【0199】
カラー撮像カメラ450は、第2分岐光L404をカラー画像として撮像し、外部へ映像信号(アナログ信号)や映像データ(デジタル信号)を出力するものである。カラー撮像カメラ450は、カラーフィルタ454とイメージセンサ455を備えている。
【0200】
カラーフィルタ454は、第2分岐光L404の内、透過する光の波長成分を、異なる特定の波長帯域毎にフィルタリングするものである。具体的には、カラーフィルタ454は、異なる色に着色された半透明の薄膜を平面上に交互に配置されたものが例示できる。より具体的には、カラーフィルタ454として、赤色・緑色・青色が格子状に配列されたもの(いわゆる、RGBカラーフィルタ)が例示できる。
【0201】
イメージセンサ455は、カラーフィルタ454を通過して受光した光エネルギーを時系列処理して、逐次電気信号に変換するものである。具体的には、イメージセンサ455は、多数の受光素子が2次元配列されたCCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサなどが例示でき、第2分岐光L404の色情報(つまり、色合いや輝度の強弱に対応した信号)が出力される。
【0202】
なお、カラー撮像カメラ450は、欠陥候補の検出が目的ではなく、欠陥候補として抽出された部位の色情報を取得することが目的であるため、一般的な感度特性のイメージセンサ445を備えたものを選択することができる。
【0203】
レンズ部409は、ワイドギャップ半導体基板Wの検査対象となる部位の平面像を、白黒撮像カメラ440のイメージセンサ445及びカラー撮像カメラ450のイメージセンサ455に投影・結像させるものである。具体的には、レンズ部409は、対物レンズ490と、結像レンズ491,492を備えている。また、レンズ部409には、蛍光撮像フィルタ部を備えている。
【0204】
この蛍光撮像フィルタ部は、励起光L401の波長成分を吸収又は反射させて減衰させつつ、検査対象となる部位から発せられたフォトルミネッセンス光L402の波長成分を通過させるものである。具体的には、蛍光撮像フィルタ部は、対物レンズ490の表面に施されたコーティング膜にて構成することができる。
【0205】
基板保持部408は、検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wを所定の姿勢で保持するものであり、負圧吸着プレートや静電吸着プレート、把持チャック機構などにより基板Wを保持するものが例示できる。なお、基板保持部408とレンズ部409は、互いに所定の距離が保たれるよう、装置フレームや固定金具などに取り付けられている。
【0206】
欠陥検査部406は、第1撮像部404で撮像した白黒画像の濃淡情報(例えば、輝度値)と、第2撮像部405で撮像したカラー画像の色情報との組合せに基づいて、ワイドギャップ半導体基板Wに生じた各種欠陥を検査するものである。具体的には、欠陥検査部406は、画像処理機能を備えたコンピュータ(ハードウェア)とその実行プログラム(ソフトウェア)により構成されている。
【0207】
より具体的には、欠陥検査部406は、白黒撮像カメラ440とカラー撮像カメラ450とから出力されたそれぞれの映像信号(アナログ信号)や映像データ(デジタル信号)が入力されると、白黒画像の濃淡情報に基づいて欠陥候補を抽出し、各欠陥候補が基底面転位かどうか、積層欠陥かどうかを判定する。ここで積層欠陥であると判定されたものについては、カラー画像の色情報に基づいてどのような欠陥種類であるかを細分類する。
【0208】
[欠陥の種類]
図14は、検査対象となる欠陥の種類を模式的に表した斜視図である。
ここでは、ワイドギャップ半導体基板Wに生じた欠陥の種類として、SiC基板上に形成させたエピタキシャル層の内部に生じた種々の欠陥が例示されている。また、ワイドギャップ半導体基板Wに形成されたエピタキシャル層の基底面Bが、破線で示されている。また、図では、欠陥の成長方向は、x方向と所定の角度をなす、基底面Bに沿う方向として示されている。
【0209】
本発明の検査対象となる欠陥としては、エピタキシャル層に内在する基底面転位E401や、エピタキシャル層に内在する積層欠陥E402が代表的に挙げられる。なお、積層欠陥E40は、単に「積層欠陥」と呼ばれるが、さらに1SSF〜4SSF等の欠陥種類に細分類することができる。なお、1SSFは、シングル・ショックレイ・スタッキング・フォルト(Single Shockley Stacking Fault)とも呼ばれる。同様に、2SSFはダブル・ショックレイ・スタッキング・フォルト(Double Shockley Stacking Fault)、3SSFはトリプル・ショックレイ・スタッキング・フォルト(Triple Shockley Stacking Fault)、4SSFはクアドラプル・ショックレイ・スタッキング・フォルト(Quadruple Shockley Stacking Fault)とも呼ばれる。
【0210】
図15は、検査対象となる基板および各種欠陥の蛍光発光特性を示す図であり、横軸に波長、縦軸に蛍光発光の強度の一例が示されている。
【0211】
ワイドギャップ半導体基板Wから発せられるフォトルミネッセンス光L402は、「基底面転位」も「積層欠陥」も無い場合、バンド端発光による波長成分(主に、385〜395nm)と、不純物準位の発光(いわゆる、D−Aペア発光)による波長成分(主に、450〜700nm)が含まれる。
【0212】
一方、ワイドギャップ半導体基板Wに「基底面転位」があれば、当該基底面転位部位から発せられるフォトルミネッセンス光L402は、主に610nm以上の波長の光、特に750nm前後の波長の光が放出される。
【0213】
一方、ワイドギャップ半導体基板Wに「積層欠陥」があれば、当該積層欠陥部位からは、積層欠陥の欠陥種類に応じて、1SSFなら波長420nm付近、2SSFなら波長500nm付近、3SSFなら波長480nm付近、4SSFなら波長460nm付近のフォトルミネッセンス光が、主に放出される。また、前記以外にも、波長600nm以下のフォトルミネッセンス光を放出する積層欠陥が確認されている。
【0214】
そして、上述の欠陥検査装置401では、ワイドギャップ半導体基板Wから発せられるフォトルミネッセンス光L402が光分岐部403で分岐され、分岐の基準波長である600nmよりも長波長側の波長帯域の光が第1分岐光L403として第1撮像部404で撮像され、分岐の基準波長である600nmよりも短波長側の波長帯域の光が第2分岐光L404として第2撮像部405で撮像される。
【0215】
図16は、本発明により撮像された各種欠陥の白黒画像とカラー画像を模式的に表したイメージ図であり、第1撮像部404にて撮像された白黒画像での各種欠陥の濃淡画像イメージと、第2撮像部405にて撮像されたカラー画像での各種欠陥の見え方が示されている。さらに、比較のため、従来技術で撮像された画像での各種欠陥の濃淡画像イメージも示されている。なお、第2撮像部405にて実際に撮像されたものはカラー画像であり、欠陥種類毎に色情報が異なっている。ここでは、カラー画像について白黒で代用説明を行う都合上、色情報の違いは、適宜ハッチングの種類を変えつつ、フォトルミネッセンス光の視覚的表現及び主な波長成分を併記して表現している。
【0216】
第1撮像部404では、光分岐部403で分岐された第1分岐光L403が白黒の濃淡画像として撮像される。そのため、各種欠陥がなければD−Aペア発光による波長成分が強まり、各種欠陥があれば当該波長成分の発光強度は弱まる。このとき、基底面転位E401があれば、波長が610nm以上、特に750nm前後の波長の光の強度が強くなるため、撮像した画像内では、基底面転位E401がある領域が、その領域の周囲よりも輝度が強くなる。一方、積層欠陥E402があれば、D−Aペア発光による波長成分(実際に撮像される波長帯域は、600〜700nm)の光が弱くなるため、撮像した画像内では、積層欠陥E402がある領域が、その領域の周囲よりも輝度が弱くなる。
【0217】
つまり、各種欠陥が無い領域の一部に各種欠陥が存在する場合、欠陥が無い領域が灰色に見える様に撮像条件を設定することで、基底面転位E401があればその部分が周囲よりも明るい白黒の濃淡画像として、積層欠陥E402があればその部分が周囲よりも暗い白黒の濃淡画像として撮像される。
【0218】
そのため、欠陥検査部406では、先ず、第1撮像部404で撮像された白黒画像に対して画像処理を行い、背景となる各種欠陥のない領域の輝度情報と異なる輝度情報の領域部分を抽出し、その輝度情報の違いに応じて、その領域部分に何らかの欠陥候補があると判定する。例えば、この欠陥候補と判定した部分が、背景よりも輝度が明るければ基底面転位の欠陥として、背景よりも輝度が暗ければ積層欠陥候補として抽出する。
【0219】
一方、第2撮像部405では、光分岐部403で分岐された第2分岐光L404がカラー画像として撮像される。そのため、各種欠陥がなければ、バンド端発光による波長成分(つまり、385〜395nm)やD−Aペア発光による波長成分(つまり、450〜600nm)が強まり、各種欠陥があれば当該波長成分の発光強度は弱まる。このとき、欠陥が積層欠陥E402であれば、欠陥種類によりそれぞれフォトルミネッセンス光の波長成分が異なり、1SSFであれば紫色(主波長:420nm)、2SSFであれば青色がかった緑色(主波長:500nm)、3SSFであれば緑色がかった青色(主波長:480nm)、4SSFであれば青色(主波長:460nm)で撮像される。一方、当該欠陥が基底面転位E401であれば、D−Aペア発光による波長成分(実際に撮像される波長帯域は、450〜600nm)の光が弱くなり、基底面転位E401による発光波長の光は光分岐部403でカットされているため、撮像した画像内の基底面転位E401がある領域は、濃灰色ないし黒色で撮像される。なお、欠陥の無い領域については、濃緑色で撮像される。
【0220】
そのため、欠陥検査部406は、第2撮像部405で撮像されたカラー画像に対して画像処理を行い、上述の白黒画像に基づいて積層欠陥候補として抽出された部位に対応する部位ついて、色情報(例えば、色合いや輝度の強弱)を取得する。そして、この部位の色情報が、紫色(主波長:420nm)に対応するものであれば1SSF、青色がかった緑色(主波長:500nm)であれば2SSF、緑色がかった青色(主波長:480nm)であれば3SSF、青色(主波長:460nm)であれば4SSFの積層欠陥と判定し、それぞれ細分類する。また、これら以外の発光波長であって、波長600nm以下のフォトルミネッセンス光を放出するものも、積層欠陥と考えられるものが存在するため、このような欠陥は、種類を特定しない積層欠陥として細分類したり、発光波長と紐づけした「波長Xnmで蛍光発光する積層欠陥」などと定義して細分類しても良い。
【0221】
つまり、ワイドギャップ半導体基板Wに欠陥が生じていれば、上述の様に、欠陥種類毎に発光波長が異なるため、フォトルミネッセンス光L402の波長帯域を分岐し、各々を白黒画像とカラー画像で撮像し、白黒画像の濃淡情報とカラー画像の色情報との組合せに基づいて、欠陥検査部406において欠陥の検出や欠陥種類の分類を行うことができる。
【0222】
そのため、本発明に係る欠陥検査装置401を用いることにより、このような欠陥の検出や、欠陥種類の分類を確実に行うことができ、従来技術で行う場合と比較して簡単な装置構成にもかかわらず、従来よりも迅速かつ確実に、欠陥の検査ができる。
【0223】
[別の形態]
なお上述では、欠陥検査部406にて、白黒画像の濃淡情報に基づいて欠陥候補を抽出し、各欠陥候補が基底面転位かどうか、積層欠陥かどうかを判定する構成を例示した。しかし、本発明に係る欠陥検査部は、基底面転位かどうかの判定処理を省いても良く、各欠陥候補が積層欠陥かどうかを判定したり、その積層欠陥をさらに細分類したりする構成であっても良い。
【0224】
[別の形態]
また、本発明を具現化するために、上述の欠陥検査部406を備えた欠陥検査装置401に代えて、欠陥検査部406Bを備えた構成の欠陥検査装置401Bであっても良い。
【0225】
図17は、本発明を具現化する別の形態の一例の全体構成を示す概略図であり、欠陥検査装置401Bを構成する各部の概略的な配置と、欠陥検査部406Bのブロック図が複合的に記載されている。
【0226】
欠陥検査装置401Bは、励起光照射部402と、光分岐部403と、第1撮像部404と、第2撮像部405と、欠陥検査部406Bとを備えて構成されている。なお、励起光照射部402と、光分岐部403と、第1撮像部404と、第2撮像部405は、上述と同様の構成にすることができるため、詳細な説明は省略する。
【0227】
欠陥検査部406Bは、第1撮像部404で撮像した白黒画像に対して画像処理を行い、欠陥候補を抽出した後、当該欠陥候補が積層欠陥かどうかを判別し、積層欠陥と判別されれば、さらに欠陥種類を細分類することで、ワイドギャップ半導体基板Wに生じた各種欠陥を検査するものである。
【0228】
欠陥検査部406Bは、具体的には、欠陥候補抽出部461と、欠陥判別部462と、欠陥種類分類部463を備えている。より具体的には、欠陥検査部406Bならびに欠陥検査部406Bを構成する各部は、画像処理機能を備えたコンピュータ(ハードウェア)とその実行プログラム(ソフトウェア)により構成されている。
【0229】
欠陥候補抽出部461は、第1撮像部404で撮像された画像の濃淡差からエッジ抽出して欠陥候補の外縁を検出し、当該外縁で囲まれた部位を欠陥候補として抽出するものである。具体的には、欠陥候補抽出部461は、周囲よりも輝度が低い部分を検出し(いわゆる、エッジ検出処理を行い)、当該エッジが連なった部位ないし当該エッジで囲まれた領域を欠陥候補として抽出する。また、欠陥候補抽出部461は、周囲よりも輝度が高い部分を検出し、上述と同様にして欠陥候補を抽出する。
【0230】
図18は、本発明を具現化する別の形態の一例における欠陥候補の判別の考え方を示すイメージ図であり、
図14にて例示した基底面転位E401と、積層欠陥E402を第1撮像部404で撮像した画像が示されている。さらに
図18には、欠陥候補抽出部461にてエッジ抽出された、底面転位E401のエッジE401eと、積層欠陥E402のエッジE402eが、白黒の破線で示されている。
【0231】
欠陥判別部462は、欠陥候補の形状情報に基づいて当該欠陥候補が積層欠陥かどうかを判別するものである。具体的には、欠陥判別部462は、欠陥候補のx方向の長さLxと、y方向の長さLyに基づいて、欠陥候補が積層欠陥かどうかを判別する。より具体的には、欠陥判別部462では、欠陥候補のx方向の長さLxとy方向の長さLyの比率や、y方向の長さLyがいくら以上あるかなどの閾値を予め定義しておき、この閾値を基準に、欠陥候補が積層欠陥かどうかを判別する。なお、検査対象のワイドギャップ半導体基板Wに内在する各種欠陥の成長方向は、未検査状態の外観からは判別できないが、エピタキシャル層の形成時の基板の結晶方位や、他の検査済基板で検出した欠陥の形状などから予測が可能である。なお、基板の結晶方位は、基板のオリエンテーションフラットを基準として同じであるため、予め欠陥の成長方向を予測しておき、その方向を揃えて撮像することで、欠陥候補に対して積層欠陥かどうかを判別する処理に要する時間が短縮できる。
【0232】
欠陥種類分類部463は、欠陥判別部462で積層欠陥と判別された部位について、第2撮像部405で撮像されたカラー画像の色情報に基づいて欠陥種類を細分類するものである。具体的には、欠陥判別部462にて積層欠陥と判別された部位に対して、第2撮像部405で撮像されたカラー画像における、当該部位の撮像位置に対応する部位の色情報を取得し、その色情報に基づいて欠陥種類を細分類する。具体的な欠陥種類の細分類としては、上述と同様、1SSF〜4SSFに細分類したり、発光波長と紐づけした「波長Xnmで蛍光発光する積層欠陥」などと定義して細分類することができる。
【0233】
欠陥検査装置401Bは、このような構成の欠陥検査部406Bを備えているため、白黒画像に基づいて欠陥候補を抽出し、当該欠陥候補が積層欠陥かどうかを迅速かつ確実に判別することができる。そして、積層欠陥については、カラー画像の色情報に基づいて、欠陥種類を細分類するため、カラー画像のみによる検査よりも迅速な検査が可能となる。そのため、積層欠陥の細分類に要する時間は、従来方法よりも短くて済み、検出精度や有無検知の確実性が向上する。
【0234】
[別の形態]
なお上述では、カラー画像の色情報の違いとして、主に色合い(色相:Hueとも言う)の違いについて説明した。しかし、これに限らず、明度(Value)や彩度(Saturation)を含めて判断しても良い。
【0235】
また、上述の欠陥検査装置401,401Bでは、欠陥検査部406,406Bが、カラー画像の色情報に基づいてどのような欠陥種類であるかを細分類するかを行う形態を例示した。しかし、本発明にかかる欠陥検査装置の別の形態として、積層欠陥の種類を特定せず、単なる「積層欠陥」として検出する形態や、発光波長を紐付けした「波長Xnmで蛍光発光する積層欠陥」として検出する形態であっても良い。
【0236】
[別の形態]
また上述では、欠陥検査部406Bの欠陥候補抽出部461で抽出された欠陥候補が、積層欠陥E402かどうかを判別する欠陥判別部462が備えられた構成を示した。しかし、本発明に係る欠陥検査部は、欠陥候補を先ず基底面転位E401かどうか判別し、基底面転位E401でないと判別された欠陥候補について、積層欠陥E402かどうかを判別する構成であっても良い。或いは、欠陥候補を先ず積層欠陥E402かどうかを判別し、積層欠陥E402でないと判別された欠陥候補について、基底面転位E401かどうか判別する構成であっても良い。或いは、欠陥候補について、一度に基底面転位E401か積層欠陥E402かどうかを判別する構成であっても良い。
【0237】
具体的には、欠陥候補が基底面転位E401かどうかを判別する手順としては、欠陥候補のx方向の長さLxと、y方向の長さLyに基づいて、欠陥候補が基底面転位E401かどうかを判別する。より具体的には、基底面転位E401かどうかを判定する際、欠陥候補のx方向の長さLxがいくら以上であるとか、欠陥候補のy方向の長さLyがいくら以下であるとか、これら長さLxとLyの比率の範囲など、経験的または統計的に把握している閾値を予め定義しておき、この閾値を基準に、欠陥候補が基底面転位E401かどうかを判別する。
【0238】
また上述では、欠陥検査装置401,401Bの欠陥検査部406,406Bにおいて、欠陥候補が基底面転位E401かどうか、積層欠陥E402かどうかを判別する例として、欠陥候補のx,y方向の長さLx,Lyや比率により判別する手順を示したが、欠陥候補に対して矩形フィッティング処理を行い、矩形フィッティングさせた領域のx方向長さLxとy方向の長さLyや、その比率により判別しても良い。或いは、矩形フィッティングさせた領域内の輝度分散値を算出し、それが予め設定した閾値よりも小さければ基底面転位E401と判別し、閾値よりも大きければ積層欠陥E402と判別しても良い。これは、基底面転位E401がほぼ直線上であるため、矩形フィッティングさせた領域内の輝度分散値が小さくなるためである。一方、積層欠陥E402の場合、三角形や台形の形状をしているため、矩形フィッティングさせると、領域内に欠陥の無い部位も含まれるため、輝度分散値が大きくなる。つまり、輝度分散値に対する閾値を適宜設定することで、欠陥候補に対して基底面転位E401か積層欠陥E402かを判別することができる。
【0239】
[光分岐部のバリエーション]
上述では、第1分岐光L403と第2分岐光L404に分岐する類型として、分岐の基準とされる波長を600nmとして、それよりも長波長側または単波長側の波長帯域の光に分岐する例を示した。
【0240】
図19は、分岐の基準となる波長と、分岐された光の透過分光特性の例を示す説明図であり、波長600nmを分岐の位準として、第1分岐光L403と第2分岐光L404の透過分光特性について、いくつかの例が示されている。例えば、
図19(a)には、第1分岐光L403と第2分岐光L404が、波長600nmの波長成分が50%となり、一部オーバーラップするように分光される形態が示されている。一方、
図19(b)には、波長600nmの波長成分が0%となるように分光される形態が示されている。一方、
図19(c)には、波長600nm前後の波長成分が0%となるように分光される形態が示されている。
【0241】
この分岐の基準となる波長や、波長帯域のオーバーラップの有無については、ダイクロイックミラー430の表面側430sに施した誘電体の多層膜の材質や膜厚などの成膜条件を適宜設定することで決定することができる。
【0242】
なお上述では、ダイクロイックミラー430の表面側430sに誘電体の多層膜をコーティングした例を示したが、他の材質や種類のコーティングであっても良く、入射した光のうち、一部の波長帯域の光を透過させ、別の一部の波長帯域の光を反射または吸収するものであれば良い。
【0243】
また上述では、光分岐部403の具体例として、ダイクロイックミラー430にて構成した例を示した。しかし、この構成に限らず、ダイクロイックミラー430に代えて、ダイクロイックプリズムを備えた構成としても良い。或いは、ダイクロイックミラー430に代えて、ハーフミラーやビームスプリッタで分岐した後、それぞれ分岐された光を透過波長特性の異なるカラーフィルタにて所定の波長帯域の光を通過させる構成としても良い。
【0244】
なお、光分岐部403は、ダイクロイックミラー430やダイクロイックプリズムを用いた構成とすれば、同時に2種類の光に分岐することができ、特定の波長のエネルギー減衰(いわゆる、ロス)が少ないため、フォトルミネッセンス光L402が微弱な場合でも、第1撮像部404,第2撮像部405での撮像に必要な光の光量、ひいては欠陥検査に必要な撮像画像の輝度を確保できるため、より好ましいと言える。
【0245】
しかし、フォトルミネッセンス光L402の光量(つまり、欠陥検査に必要な撮像画像の輝度)がある程度確保できる場合であれば、光分岐部は、ブロードな波長帯域の光を、単にハーフミラーにより光量を均等ないし一定の割合で分岐する構成(いわゆる、光量分岐)であっても良い。この場合、第1分岐光と第2分岐光は、波長帯域が概ね同じであっても良いし、適宜一部の波長帯域を減衰させるフィルタなどを用いて、個々にフィルタリングしても良い。
【0246】
また上述では、第1分岐光L403が光分岐部403を通過し、第2分岐光L404が光分岐部403で反射される構成を示したが、逆の構成でも良く、光分岐部の反射波長特性や透過波長特性は、適宜設定すれば良い。
【0247】
なお上述では、蛍光撮像フィルタ部として、レンズ部409の対物レンズ490の表面に施されたコーティング膜で構成された例を示した。しかしこの様な構成に限らず、対物レンズ490と光分岐部403との間に、UVカットフィルタが配置された構成としても良い。或いは、光分岐部403とイメージセンサ445,455と間に、UVカットフィルタが配置された構成としても良い。このUVカットフィルタは、励起光L401に含まれる波長成分(上述の場合は、紫外線領域の光。特に波長385nm以下の光)を吸収または反射して減衰させるものである。或いは、ダイクロイックプリズムやビームスプリッタを用いた構成にあっては、これら光学素子の入射面に施されたコーティング膜にて蛍光撮像フィルタ部を構成しても良い。
【0248】
[検査対象となる基板]
上述では、検査対象となるワイドギャップ半導体基板の一類型として、SiC基板上にエピタキシャル層を成長させたものを例示し、このエピタキシャル層の内部に生じた基底面転位E401や積層欠陥E402を検査する形態を示した。
【0249】
しかし、ワイドギャップ半導体としては、SiC基板に限定されず、GaNなどの他の半導体からなる基板であっても良い。そして、検査対象となる基板の材料に応じて、照射する励起光L401の波長は適宜設定すれば良い。そして、検査対象となる基板の材料、励起光L401の波長および基底面転位E401に対するフォトルミネッセンス光L402の特性に応じて、光分岐部403における分岐の基準となる波長や、欠陥検査部405における白黒画像の濃淡情報に対する輝度信号の閾値や濃淡差からエッジ抽出するパラメータ、カラー画像に対する色情報と積層欠陥の欠陥種類の紐付けなど、適宜設定すれば良い。
【0250】
また、本発明に係る欠陥検査装置401は、ワイドギャップ半導体基板上に形成させたエピタキシャル層に生じた欠陥のみならず、ワイドギャップ半導体基板を構成する材料そのものに生じた欠陥の検査にも適用することができる。
【0251】
[光源のバリエーション]
上述では、励起光照射部402の光源として、UV−LEDを用いて励起光L401を照射する構成を例示した。しかし、この様な構成に限らず、レーザ発振器やレーザダイオード、キセノンランプ等を用いた構成でも良い。例えば、レーザ発振器やレーザダイオードを用いる場合であれば、YAGレーザやYVO4レーザとTHGとを組み合わせた、いわゆるUVレーザを用いて励起光L401を照射する。一方、キセノンランプやメタルハライドランプ、水銀キセノンランプ、水銀ランプ等の白色光源を用いる場合であれば、励起光L401の波長成分を通過させてそれ以外の波長成分を吸収もしくは反射させるUV透過フィルタやダイクロイックミラーなどを用いて、励起光L401を照射する。
【0252】
[撮像カメラのバリエーション]
上述では、白黒撮像カメラ440及びカラー撮像カメラ450として、多数の受光素子が2次元配列された、いわゆるエリアセンサーカメラを例示した。しかし、この様な構成に限らず、多数の受光素子が直線上に配列された、ラインセンサーカメラを用いる構成でも良い。この場合は、ラインセンサーの各受光素子が配列されている方向と交差する方向(望ましくは直交する方向)に、励起光照射部402、レンズ部409、光分岐部403、第1撮像部404及び第2撮像部405で構成される検査用ユニットと、ワイドギャップ半導体基板Wを保持する基板保持部408とを相対移動させながら、連続して画像を取得する構成とする。
【0253】
なお、これら検査ユニットとワイドギャップ半導体基板Wとを相対移動させる構成として、次のような構成が例示できる。
【0254】
1)検査ユニットを構成する各部はそれぞれ相対位置関係を一定に保ったまま、アクチュエータやスライダー機構により、ワイドギャップ半導体基板Wを載置した基板保持部408を移動させる。
【0255】
2)ワイドギャップ半導体基板Wを載置した基板保持部408を固定したまま、検査ユニットを構成する各部を同時に一体で移動させる。
【0256】
また、上述では、カラーフィルタ454の具体例として、RGBカラーフィルタ(つまり、原色系フィルタ)を例示したが、CYMカラーフィルタ(つまり、補色系フィルタ)であっても良い。また、カラーカメラは、複数色が平面上に交互に配列されたカラーフィルタとイメージセンサを備えたもの(いわゆる、単板式のカラーカメラ)のほか、白色光を赤色・緑色・青色の光に分光する分光素子と、色別けされた光を各々撮像する複数のイメージセンサを備えたもの(いわゆる、3板式カラーカメラ)であっても良い。
【0257】
また、上述では3色のカラーフィルタを備えた単板式のカラーカメラや、3板式のカラーカメラを例示したが、2色や4色以上にフィルタリング又は分光した光を撮像するものでも良い。
【0258】
[レンズ部のバリエーション]
上述では、レンズ部409として、ワイドギャップ半導体基板Wと光分岐部403との間に配置した対物レンズ490と、光分岐部403と第1撮像部404および第2撮像部405の間に配置した結像レンズ491,492を備えた構成を示した。しかし、この様な構成に限らず、結像レンズ491,492を省いて対物レンズのみで結像させる構成や、対物レンズ490を省いて結像レンズのみで結像させる構成であっても良い。