特許第6758199号(P6758199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6758199固体電解質及びポリマー材料の層を含む全固体電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758199
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】固体電解質及びポリマー材料の層を含む全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20200910BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20200910BHJP
   H01M 10/056 20100101ALI20200910BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20200910BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20200910BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20200910BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20200910BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20200910BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20200910BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20200910BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   H01M10/058
   H01M10/0585
   H01M10/056
   H01M4/13
   H01M4/139
   H01M4/48
   H01M4/485
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/58
   H01M4/66 A
【請求項の数】27
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-575464(P2016-575464)
(86)(22)【出願日】2015年7月1日
(65)【公表番号】特表2017-529645(P2017-529645A)
(43)【公表日】2017年10月5日
(86)【国際出願番号】FR2015051819
(87)【国際公開番号】WO2016001588
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2018年6月12日
(31)【優先権主張番号】1456272
(32)【優先日】2014年7月1日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514110783
【氏名又は名称】アイ テン
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギャバン ファビアン
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−500597(JP,A)
【文献】 特開2010−186626(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/064779(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 4/13
H01M 4/139
H01M 4/48
H01M 4/485
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 4/58
H01M 4/66
H01M 10/056
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのアノードの材料を含む層(ここでは「アノード材料層」と呼ばれる)を、好ましくは、金属シート、金属片、金属化絶縁シート、金属化絶縁片、金属化絶縁フィルムから選択される導電性基板に堆積させることにより、前記導電性基板又はその導電性の構成要素をアノードの集電体として機能させることができる工程と、
b)工程a)と工程b)とは順序を逆にできるという理解の下、少なくとも1つのカソードの材料を含む層(ここでは「カソード材料層」と呼ばれる)を、好ましくは、金属シート、金属片、金属化絶縁シート、金属化絶縁片、金属化絶縁フィルムから選択される導電性基板に堆積させることにより、前記導電性基板又はその導電性の構成要素をカソードの集電体として機能させることができる工程と、
c)工程a)及び/又は工程b)で得られた少なくとも1つの層において、少なくとも1つの固体電解質層(ここでは「電解質材料層と呼ぶ」)を含む層を堆積させる工程と、
d)10μm未満、好ましくは5μm未満、更により好ましくは2μm未満の厚さを有するイオン性原子団を有する架橋型のポリマー材料の層を、
− 固体電解質材料層で被覆されたアノード材料層及び/又は固体電解質材料層で被覆された若しくは被覆されていないカソード材料層に、
− 又は、固体電解質材料層で被覆されたカソード材料層及び/又は固体電解質材料層で被覆された若しくは被覆されていないアノード材料層に堆積させる工程と、
e)そのスタックが、工程c)で得られた少なくとも1つの固体電解質及び工程d)で得られた少なくとも1つの架橋型のポリマー材料層を有する、ということが理解されているものとして、工程a)、工程c)又は工程d)で得られたアノード材料層を、工程b)、工程c)又は工程d)で得られたカソード材料層に、表面同士を合わせて連続して積み重ねる工程と、
f)全固体の薄層の電池を得るために、工程e)で得られたスタックの熱処理及び/又は機械的圧縮を行う工程と、
を含む一連の工程を含む全固体の薄層の電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、架橋型の前記ポリマー材料はポリメチルメタクリレート、ポリアミン、ポリイミド、又はポリシロキサンから選択することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記ポリマー材料のイオン性原子団は、以下より選択するカチオン:イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム、n−プロピル−n−メチルピロリジニウム(PYR13とも呼ばれる)若しくはn−ブチル−n−メチルピロリジニウム(PYR14とも呼ばれる)などのピロリジニウム、アンモニウム、ホスホニウム又はスルホニウム;
及び/又は以下より選択されるアニオン:ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、又はn−(ノナフルオロブタン−スルホニル)−n−(トリフルオロメタンスルホニル)−イミド、
であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法おいて、架橋型の前記ポリマー材料は、1つ以上の熱的又は光化学的に重合することが可能な原子団を含むモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はプレポリマーの混合物の重合工程によって得られ、前記モノマー及び/又はオリゴマー及び/又はプレポリマーの混合物は、前記イオン性原子団をグラフト可能な1つ以上の反応性原子団を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記熱的及び/又は光化学的重合は前記アノード、カソード及び/又は電解質層で直接行うことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法おいて、前記イオン性原子団を有する架橋型の前記ポリマー材料の堆積は、ディップコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、ドクターブレード、エレクトロスプレー又は電気泳動法の少なくとも1つを用いて行うことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法おいて、固体の前記アノード、カソード及び電解質層は、
(i)物理蒸着(PVD)、より具体的には、真空蒸着、レーザーアブレーション、イオンビーム、又はカソードスパッタリング、
(ii)化学蒸着(CVD)、より具体的には、プラズマCVD(PECVD)、レーザーアシストCVD(LACVD)又はエアロゾルアシストCVD(AA−CVD)、
(iii)エレクトロスプレー、
(iv)電気泳動法、
(v)エアロゾル沈着、
(vi)ゾルゲル法、
(vii)ディッピング、より具体的にはディップコーティング、スピンコーティング、又はラングミュア−ブロジェット法、
の技術の少なくとも1つを使用して堆積させることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法おいて、前記アノード、カソード及び電解質層は、エレクトロスプレー、電気泳動法、エアロゾルの使用、又はディッピングによって堆積させ、好ましくはすべて電気泳動法によって堆積させることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法おいて、前記アノード及び/又はカソード材料層はまた、導電性材料、及び特に電解質フィルムを製造するのに使用するタイプのグラファイト、及び/又はリチウムイオン伝導性材料のナノ粒子、又はイオン性原子団を有する架橋型の固体ポリマー材料を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法おいて、前記アノード及び/又はカソード及び/又は電解質層は、エレクトロスプレー、電気泳動法、エアロゾル沈着及びディッピング、のうちの少なくとも1つを使用して、それぞれアノード、カソード又は電解質材料のナノ粒子の堆積によって製造することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記アノード、カソード、及び電解質材料のナノ粒子の層はすべて電気泳動法によって堆積することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法おいて、前記熱処理は、50℃〜300℃、好ましくは100℃〜200℃の温度で実施し、及び/又は組み立てられる層の機械的圧縮は、10MPa〜100MPa、好ましくは20MPa〜50MPaで実施することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の方法おいて、前記アノード材料層a)は、
(ii)リン酸鉄リチウム(典型的な化学式はLiFePO);
(iii)ケイ素とスズとの混合の酸窒化物(典型的な化学式はSiSn、ここでa>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4、及び0<z≦3)(SiTONとも呼ばれる)、及び、特にSiSn0.871.21.72;及び、典型的な化学式がSiSnである酸窒化物−炭化物、ここでa>0、b>0、a+b≦2、0<c<10,0<y<24,0<z<17;及び、SiSn、ここでXはF,Cl,Br,I,S,Se,Te,P,As,Sb,Bi,Ge,Pbの元素のうち少なくとも1つ、及びa>0,b>0,a+b>0,a+b≦2,0<c<10,0<y<24及び0<z<17;及びSiSn、ここでXはF,Cl,Br,I,S,Se,Te,P,As,Sb,Bi,Ge,Pbの元素のうち少なくとも1つ、及びa>0,b>0,a+b≦2,0<y≦4及び0<z≦3;
(iv)Si(x=3及びy=4のもの)、Sn(x=3及びy=4のもの)、Zn(x=3及びy=4のもの)のタイプの窒化物;
(v)酸化物SnO,LiTi12,SnB0.60.42.9及びTiO
より選択する材料から製造することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の方法おいて、前記カソード材料層b)は、
(i)酸化物LiMn,LiCoO,LiNiO,LiMn1.5Ni0.5,LiMn1.5Ni0.5−x(ここでXはAl,Fe,Cr,Co,Rh,Nd、他の希土類元素から選択され、及び0<x<0.1),LiFeO,LiMn1/3Ni1/3Co1/3
(ii)リン酸塩LiFePO,LiMnPO,LiCoPO,LiNiPO,Li(PO;LiMM’POの化学式のリン酸塩であってM及びM’(M≠M’)はFe,Mn,Ni,Co,Vから選択する;
(iii)以下のカルコゲン化物を全リチウム化したもの:V,V,TiS,CuS、CuS
より選択するカソードの材料から製造することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の方法おいて、前記電解質材料層c)は、
− 以下の化学式のガーネット:
Li(TO、ここで、
− Aは、酸化数+IIのカチオンを表し、好ましくはCa,Mg,Sr,Ba,Fe,Mn,Zn,Y,Gdであり;また、
− Aは、酸化数+IIIのカチオンを表し、好ましくはAl,Fe,Cr,Ga,Ti,Laであり;また、
− (TO)は、Tが酸化数+IVの原子であり、酸素原子によって形成される四面体の中心に位置するアニオンを表し、TOは好ましくはシリケート又はジルコネートアニオンであり、ここで、酸化数+IVの元素Tのすべて又は一部は、Al,Fe,As,V,Nb,In,Taなどの酸化数+III又は+Vの原子で置換することができるということが理解されているものとし;
− 以下が理解されているものとする:dは2〜10、好ましくは3〜9、更により好ましくは4〜8であり、xは3であるが、2.6〜3.4(好ましくは2.8〜3.2)であってもよい;yは2であるが、1.7〜2.3(好ましくは1.9〜2.1)であってもよい;そして、zは3であるが、2.9〜3.1であってもよい;
− 好ましくは以下より選択するガーネット:LiLaZr12;LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12、ここでM=Nb又はTa又はその2つの化合物の混合物;Li7−xBaLa3−x12、ここで0≦x≦1及びM=Nb又はTa又はその2つの化合物の混合物;Li7−xLaZr2−x12、ここで0≦x≦2及びM=Al,Ga又はTa又はその2つ若しくは3つの化合物の混合物;
− 好ましくは以下より選択するリン酸リチウム:LiPO;Li(Sc2−x)(PO、ここでM=Al又はY及び0≦x≦1;Li1+x(Sc)2−x(PO、ここでM=Al,Y,Ga又はその3つの化合物の混合物、及び0≦x≦0.8;Li1+x(Ga1−ySc2−x(PO、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1及びM=Al又はY又はその2つの化合物の混合物;Li1+x(Ga)2−x(PO、ここでM=Al,Y又はその2つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;Li1+xAlTi2−x(PO、ここで0≦x≦1,又はLi1+xAlGe2−x(PO、ここで0≦x≦1;又はLi1+x+z(Ge1−yTi2−xSi3−z12、ここで0≦x≦0.8及び0≦y≦1.0及び0≦z≦0.6及びM=Al,Ga又はY又はその2つ若しくは3つの化合物の混合物;Li3+y(Sc2−x)Q3−y12、ここでM=Al及び/又はY並びにQ=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8及び0≦y≦1;又はLi1+x+ySc2−x3−y12、ここでM=Al,Y,Ga又はその3つの化合物の混合物並びにQ=Si及び/又はSe,0≦x≦0.8及び0≦y≦1;又はLi1+x+y+z(Ga1−ySc2−x3−z12、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1;0≦z≦0.6、ここでM=Al又はY又はその2つの化合物の混合物並びにQ=Si及び/又はSe;又はLi1+x2−x12、ここで0≦x≦1並びにN=Cr及び/又はV,M=Se,Sn,Zr,Hf,Se若しくはSi,若しくはこれらの化合物の混合物;
− 好ましくは以下より選択するホウ酸リチウム:Li(Sc2−x)(BO、ここでM=Al又はY及び0≦x≦1;Li1+x(Sc)2−x(BO、ここでM=Al,Y,Ga又はその3つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;0≦y≦1;Li1+x(Ga1−ySc2−X(BO、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1及びM=Al又はY;Li1+x(Ga)2−x(BO、ここでM=Al,Y又はその2つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;0≦y≦1;LiBO,LiBO−LiSO,LiBO−LiSiO,LiBO−LiSiO−LiSO
− 好ましくは以下より選択する酸窒化物:LiPO4−x2x/3,LiSiO4−x2x/3,LiGeO4−x2x/3、ここで0<x<4又はLiBO3−x2x/3、ここで0<x<3;リチウム、リン又は酸窒化ホウ素(LiPON及びLIBONと呼ばれる)をベースにした材料はまたリン酸リチウムにケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウム、又はアルミニウム、ホウ素、硫黄、及び/若しくはケイ素の組み合わせ、並びにホウ素を含むことができる;
− 好ましくは以下より選択する酸化リチウム:LiLaZr12又はLi5+xLa(ZrX,2−x)O12、ここでA=Sc,Y,Al,Ga及び1.4≦x≦2又はLi0.35La0.55TiO
− 好ましくは以下より選択するケイ酸塩:LiSi,LiSiO,LiSi,LiAlSiO,LiSiO,LiAlSi
より選択する電解質材料から製造することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の方法おいて、少なくとも1つのセラミック、ガラス、又はガラスセラミック材料の封入層の堆積によって、工程f)で得られる前記電池を封入する工程g)を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法おいて、前記アノード及びカソードの端子は、ニッケルの副層及び/又は金属粒子で満たされたエポキシ樹脂の副層に任意で堆積させた、好ましくはスズ層の堆積によって、切断した部分の金属化により製造することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれかに記載の方法おいて、電解質材料の前記ナノ粒子のサイズは、100nm未満、好ましくは30nm未満であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の方法おいて、前記導電性基板は、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、チタン又はニッケル、好ましくはニッケルでできており、任意で、金、白金、パラジウム、バナジウム、コバルト、ニッケル、マンガン、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、チタン、パラジウム、ジルコニウム、タングステン又はこれらの金属の少なくとも1つを含む任意の合金、の金属から選択する貴金属で被覆することを特徴とする方法。
【請求項20】
a)少なくとも1つのアノードの材料を含む層(ここでは「アノード材料層」と呼ばれる)が、好ましくは、金属シート、金属片、金属化絶縁シート、金属化絶縁片、金属化絶縁フィルムから選択される導電性基板に堆積され、前記導電性基板又はその導電性の構成要素をアノードの集電体として機能させることができ、
b)少なくとも1つのカソードの材料を含む層(ここでは「カソード材料層」と呼ばれる)が、好ましくは、金属シート、金属片、金属化絶縁シート、金属化絶縁片、金属化絶縁フィルムから選択される導電性基板に堆積され、前記導電性基板又はその導電性の構成要素をカソードの集電体として機能させることができ、
c)前記少なくとも1つのアノード材料層上および/または前記1つのカソード材料層上に堆積された少なくとも1つの固体電解質層(ここでは「電解質材料層と呼ぶ」)を含む層を有し、
d)10μm未満、好ましくは5μm未満、更により好ましくは2μm未満の厚さを有するイオン性原子団を有する架橋型のポリマー材料の層が、
− 固体電解質材料層で被覆された前記アノード材料層及び/又は場合によって固体電解質材料層で被覆された前記カソード材料層に、
− 又は、固体電解質材料層で被覆されたカソード材料層及び/又は場合によって固体電解質材料層で被覆されたアノード材料層に堆積され、
e)全固体の薄層の電池が、少なくとも1つの固体電解質層及び少なくとも1つの架橋型のポリマー材料層を有する、ということが理解されているものとして、上記a)、c)又はd)のアノード材料層が、上記b)、c)又はd)のカソード材料層に、表面同士を合わせて連続して積み重ねられている、
全固体の薄層の電池。
【請求項21】
請求項20に記載の電池であって、前記カソードの表面容量は前記アノードの表面容量以上であることを特徴とする電池。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の電池であって、前記カソード及びアノードの層のスタックは、横方向にオフセットされていることを特徴とする電池。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれかに記載の電池であって、少なくとも1つの封入層、好ましくはセラミック、ガラス又はガラスセラミック層を含むことを特徴とする電池。
【請求項24】
請求項23に記載の電池であって、上記の封入層に堆積させた第2の封入層を含み、前記第2の封入層は好ましくはシリコーンであることを特徴とする電池。
【請求項25】
請求項23又は24に記載の電池であって、前記電池は金属化された部分を含み、前記少なくとも1つの封入層は、前記電池の6つの面のうちの4つの面を完全に覆い、前記電池の接続を意図した前記金属化された部分の下に位置する残りの2つの面を部分的に覆うことを特徴とする電池。
【請求項26】
請求項20〜25のいずれかに記載の電池であって、前記カソード及びアノードの集電体がそれぞれ露出した端子を含むことを特徴とする電池。
【請求項27】
請求項26に記載の電池であって、前記アノード及びカソードの接続部は、前記アノード材料層と前記カソード材料層のスタックにおいて反対側に位置することを特徴とする電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池、特にリチウムイオン電池の分野に関する。より具体的には、全固体リチウムイオン電池(「Li−イオン電池」)及びそのような電池を製造するための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数多くの論文及び特許において、リチウムイオン電池(Li−イオン電池)を製造する多くの態様が知られている。2002年に出版された「Advances in Lithium−Ion Batteries」(W. van Schalkwijk,B. Scrosati編)(Kluever Academic/Plenum Publishers)には、その状況について良い総説が与えられている。Li−イオン電池の電極は、当業者に知られている印刷技術又は溶着技術、特にロールコーティング、ドクターブレード又はテープ成形によって製造することができる。
【0003】
平面構造を有する全固体薄層Li−イオン電池、すなわち本質的には基本的な電池セルを形成する、電解質層によって分離されたアノード層及びカソード層の3層1組から構成されるもの、もまた知られている。
【0004】
それらは、金属リチウムアノード及び電解質としてリチウムリン酸窒化物フィルムを使用する。しかしながら、充電及び放電段階におけるリチウムアノードの体積の著しい変動は、封入(encapsulation)のタイトさを失う危険性無しに電池を適切に封入する(encapsulate)ことを極めて困難にする。
【0005】
もっと最近になって、薄層のスタック(積層体)からなる新しい全固体電池の設計が提案されている。これらの電池は、基本セルが並列に接続され固定され一体に組み立てられて構成されている。これらの電池は、封入の有効性を保証する寸法的に安定なアノードを使用し、平面の構造設計よりも良好な表面エネルギー密度の三次元構造を製造することを可能にする。そのような電池は、文献WO 2013/064779 A1又はWO 2012/064777 A1に記載されている。これらの文献に記載されている電池は、時間が経過しても電池の良好な安定性を保証するために、電極層に空孔が無く、有機溶媒系の液体電解質を含有しておらず、その構造は全固体の薄い層からなる。WO 2013/064779 A1又はWO 2012/064777 A1の文献にも記載されているこれらの電池を製造する方法は、多層で薄い層、従って抵抗が無い組立体を製造することを可能にし、電力性能を保存することを可能にするので、多くの利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、場合によっては、そのような電池を製造する方法は、特に電解質について、使用される材料に応じていくつかの制限があることがある。実際、イオン導電性ガラスを用いるのは困難である可能性がある。例えば、LiPON又はホウ酸リチウムなどの固体電解質は、一般に約250℃〜300℃の比較的低いガラス転移温度を有する:従って、異なる層の加圧焼鈍による電池の組み立て工程中、電解質材料は、部分的結晶化により、そのイオン導電性に変更を加える可能性がある。同様に、固体リチウムリン系の電解質が使用される場合、電解質の性能を最適化するために、電解質の化学組成でアノード及びカソードと接触するものを異なるものにすることは有益であり得る。
【0007】
しかしながら、電極の各面上に堆積させられた2つのリチウムリン系電解質配合物を使用することは、組み立てられる2つの電解質層の間の境界面における新たな相の出現をもたらし、それ故、導電性が変更し得る。
【0008】
同様に、固体LiLaZr12(LLZOと呼ばれる)電解質は、良好なイオン伝導体であり、アノード及びカソードとの接触において非常に安定である。しかし、その高い耐熱性はときに、電極との境界面に相互拡散現象を生じさせることなしに、低温で電極を互いに電解質層を介して溶解させることを難しくする。
【0009】
本発明の第1の目的は、組み立てられる2つの電解質層の間の境界面に相の出現をもたらさない全固体薄層電池を製造する方法を提案することである。
【0010】
本発明の他の目的は、電極の境界面で相互拡散現象を引き起こさずに低温で電池を製造する方法を提案することである。
【0011】
本発明の別の目的は、比較的簡単な方法によって工業的レベルで実施することができる薄層電池を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の目的は以下の一連の工程を含む、全固体薄層電池を製造する方法に関する。
【0013】
a)少なくとも1つのアノード材料を含む層(ここでは「アノード材料層」とよぶ)をその導電性基板上に堆積させる。導電性基板は、好ましくは、金属シート、金属片(a metal strip)、金属化絶縁シート(a metallized insulating sheet)、金属化絶縁片(a metallized insulating strip)、金属化絶縁フィルム(a metallized insulating film)、によって形成される群から選択され、前記導電性基板又はその導電性の構成要素は、アノード集電体として機能させることができる。
【0014】
b)工程a)と工程b)とは順序を逆にすることができるという理解の下、少なくとも1つのカソード材料を含む層(ここでは「カソード材料層」とよばれる)をその導電性基板上に堆積させる。導電性基板は、好ましくは、金属シート、金属片、金属化絶縁シート、金属化絶縁片、金属化絶縁フィルムによって形成される群から選択され、前記導電性基板又はその導電性の構成要素は、カソード集電体として機能させることができる。
【0015】
c)工程a)及び/又は工程b)で得られた少なくとも1つの層において、少なくとも1つの固体電解質層(ここでは「電解質材料層と呼ぶ」)を含む層を堆積させる。
【0016】
d)10μm未満、好ましくは5μm未満、更により好ましくは2μm未満の厚さを有するイオン性原子団を有する架橋ポリマー材料の層を、以下の層上に堆積させる:
− 固体電解質材料層で被覆されたアノード材料層及び/又は固体電解質材料層で被覆された若しくは被覆されていないカソード材料層;
− 又は、固体電解質材料層で被覆されたカソード材料層及び/又は固体電解質材料層で被覆された若しくは被覆されていないアノード材料層。
【0017】
e)工程a)、工程c)又は工程d)で得られたアノード材料層と、工程b)、工程c)又は工程d)で得られたカソード材料層とを、表面同士を合わせて連続して積み重ねる。ここで、そのスタックは、工程c)で得られた少なくとも1つの固体電解質及び工程d)で得られた少なくとも1つの架橋ポリマー材料層を有すると理解されているものとする。
【0018】
f)全固体薄層電池を得るために、工程e)で得られたスタックの熱処理及び/又は機械的圧縮を行う。
【0019】
上記の架橋ポリマーは、好ましくは、ポリメチルメタクリレート、ポリアミン、ポリイミド又はポリシロキサンから選択する。
【0020】
好ましくは、ポリマー材料のイオン性の原子団は、以下より選択するカチオン:イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム、n−プロピル−n−メチルピロリジニウム(PYR13とも呼ばれる)又はn−ブチル−n−メチルピロリジニウム(PYR14とも呼ばれる)などのピロリジニウム、アンモニウム、ホスホニウム又はスルホニウム;及び/又は以下より選択するアニオンである:ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、若しくはn−(ノナフルオロブタンスルホニル)−n−(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
【0021】
特定の実施形態では、上記の架橋ポリマー材料は、1つ以上の熱的又は光化学的に重合することが可能な原子団を有するモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はプレポリマー(pre−polymers)の混合物の重合工程によって得る。前記モノマー及び/又はオリゴマー及び/又はプレポリマーの混合物は、前記イオン性の原子団をグラフトすることが可能な1つ以上の反応性原子団を有する。
【0022】
好ましくは、熱的及び/又は光化学的重合は、アノード、カソード及び/又は電解質層上で直接行う。
【0023】
イオン性原子団を有する架橋ポリマー材料の堆積は、ディップコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、ドクターブレード、エレクトロスプレー又は電気泳動法の少なくとも1つを用いて行うことが好ましい。
【0024】
ポリマー材料層の厚さは、10μm未満、好ましくは5μm未満、更により好ましくは2μm未満であり、0.5μm〜1μmであることが好ましい。
【0025】
前記固体アノード、カソード及び電解質層は、以下の技術の少なくとも1つを使用して堆積させる。
【0026】
(i)物理蒸着(PVD)、より具体的には、真空蒸着、レーザーアブレーション、イオンビーム、又はカソードスパッタリング(cathode sputtering)、
(ii)化学蒸着(CVD)、より具体的には、プラズマCVD(PECVD)、レーザーアシストCVD(LACVD)又はエアロゾルアシストCVD(AA−CVD)、
(iii)エレクトロスプレー、
(iv)電気泳動法、
(v)エアロゾル沈着、
(vi)ゾルゲル法、
(vii)ディッピング、より具体的にはディップコーティング、スピンコーティング、又はラングミュア−ブロジェット法。
【0027】
好ましくは、アノード、カソード及び電解質層は、エレクトロスプレー、電気泳動法、エアロゾルの使用、又はディッピングによって堆積させ、好ましくはすべて電気泳動法によって堆積させる。
【0028】
特定の実施形態では、アノード及び/又はカソード材料の層は、導電性材料、及び特に電解質フィルムを製造するのに使用するタイプのグラファイト、及び/又はリチウムイオン伝導性材料のナノ粒子、又はイオン性原子団を有する架橋固体ポリマー材料を含む。
【0029】
好ましくは、アノード及び/又はカソード及び/又は電解質層は、以下の技術のうちの少なくとも1つを使用して、それぞれアノード、カソード又は電解質材料のナノ粒子の堆積によって製造する:エレクトロスプレー、電気泳動法、エアロゾル沈着及びディッピング。より具体的には、アノード、カソード及び電解質材料のナノ粒子の層はすべて、電気泳動法によって堆積させる。
【0030】
本発明によれば、熱処理は、50℃〜300℃、好ましくは100℃〜200℃の温度で実施し、及び/又は組み立てられる層の機械的圧縮は、10MPa〜100MPa、好ましくは20MPa〜50MPaで実施する。
【0031】
アノード材料層a)は以下より選択される材料から製造する:
(i)酸窒化スズ(典型的な化学式はSnO)、
(ii)リン酸鉄リチウム(典型的な化学式はLiFePO)、
(iii)ケイ素とスズとの混合の酸窒化物(典型的な化学式はSiSn、ここでa>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4、及び0<z≦3)(SiTONとも呼ばれる)、及び、特にSiSn0.871.21.72;及び、典型的な化学式がSiSnである酸窒化物、ここでa>0、b>0、a+b≦2、0<c<10、0<y<24、0<z<17;及び、SiSn、ここでXはF,Cl,Br,I,S,Se,Te,P,As,Sb,Bi,Ge,Pbの元素のうち少なくとも1つ、及びa>0、b>0、a+b>0、a+b≦2、0<c<10、0<y<24及び0<z<17;及びSiSn、ここでXはF,Cl,Br,I,S,Se,Te,P,As,Sb,Bi,Ge,Pbの元素のうち少なくとも1つ、及びa>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4及び0<z≦3、
(iv)Si(特にx=3及びy=4のもの),Sn(特にx=3及びy=4のもの),Zn(特にx=3及びy=4のもの),Li3−xN(M=Co,Ni,Cuのもの)、のタイプの窒化物、
(v)酸化物SnO,LiTi12,SnB0.60.42.9及びTiO
【0032】
カソード材料層b)は以下から選択されるカソード材料から製造する。
【0033】
(i)酸化物LiMn,LiCoO,LiNiO,LiMn1.5Ni0.5,LiMn1.5Ni0.5−x(ここでXはAl,Fe,Cr,Co,Rh,Nd、及び他の希土類元素から選択され、及び0<x<0.1),LiFeO,LiMn1/3Ni1/3Co1/3
【0034】
(ii)リン酸塩LiFePO,LiMnPO,LiCoPO,LiNiPO,Li(PO,及びLiMM’POの化学式のリン酸塩であってM及びM’(M≠M’)はFe,Mn,Ni,Co,Vから選択する。
【0035】
(iii)以下のカルコゲン化物を全リチウム化したもの:V,V,TiS,酸硫化チタン(TiO),酸硫化タングステン(WO),CuS,CuS
【0036】
電解質材料層c)は、以下より選択される電解質材料から製造する:
− 以下の化学式のガーネット
Li(TO、ここで、
− Aは、酸化数+IIのカチオンを表し、好ましくはCa,Mg,Sr,Ba,Fe,Mn,Zn,Y,Gd;また、
− Aは、酸化数+IIIのカチオンを表し、好ましくはAl,Fe,Cr,Ga,Ti,La;また、
− (TO)は、Tが酸化数+IVの原子であり、酸素原子によって形成される四面体の中心に位置するアニオンを表し、TOはシリケート又はジルコネートアニオンであることが好ましい。ここで、酸化数+IVの元素Tのすべて又は一部は、Al,Fe,As,V,Nb,In,Taなどの酸化数+III又は+Vの原子で置換することができるということが理解されているものとする;
− 以下が理解されているものとする:dは2〜10、好ましくは3〜9、更により好ましくは4〜8であり、xは3であるが、2.6〜3.4(好ましくは2.8〜3.2)であってもよい。yは2であるが、1.7〜2.3(好ましくは1.9〜2.1)であってもよい。zは3であるが、2.9〜3.1であってもよい;
− 好ましくは以下より選択するガーネット:LiLaZr12;LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12、ここでM=Nb又はTa又はその2つの化合物の混合物;Li7−xBaLa3−x12、ここで0≦x≦1及びM=Nb又はTa又はその2つの化合物の混合物;Li7−xLaZr2−x12、ここで0≦x≦2及びM=Al,Ga,Ta又はその2つ若しくは3つの化合物の混合物;
− 好ましくは以下より選択するリン酸リチウム:LiPO;Li(Sc2−x)(PO、ここでM=Al又はY及び0≦x≦1;Li1+x(Sc)2−x(PO、ここでM=Al,Y,Ga又はその3つの化合物の混合物、及び0≦x≦0.8;Li1+x(Ga1−ySc2−x(PO、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1及びM=Al又はY又はその2つの化合物の混合物;Li1+x(Ga)2−x(PO、ここでM=Al,Y又はその2つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;Li1+xAlTi2−x(PO、ここで0≦x≦1,又はLi1+xAlGe2−x(PO、ここで0≦x≦1;又はLi1+x+z(Ge1−yTi2−xSi3−z12、ここで0≦x≦0.8及び0≦y≦1.0及び0≦z≦0.6及びM=Al,Ga又はY又はその2つ若しくは3つの化合物の混合物;Li3+y(Sc2−x)Q3−y12、ここでM=Al及び/又はY並びにQ=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8及び0≦y≦1;又はLi1+x+ySc2−x3−y12、ここでM=Al,Y,Ga又はその3つの化合物の混合物並びにQ=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8及び0≦y≦1;又はLi1+x+y+z(Ga1−ySc2−x3−z12、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1;0≦z≦0.6、ここでM=Al又はY又はその2つの化合物の混合物並びにQ=Si及び/又はSe;又はLi1+x2−x12、ここで0≦x≦1並びにN=Cr及び/又はV、M=Se,Sn,Zr,Hf,Se若しくはSi、又はこれらの化合物の混合物;
− 好ましくは以下より選択するホウ酸リチウム:Li(Sc2−x)(BO、ここでM=Al又はY及び0≦x≦1;Li1+x(Sc)2−x(BO、ここでM=Al,Y,Ga又はその3つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;0≦y≦1;Li1+x(Ga1−ySc2−X(BO、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1及びM=Al又はY;Li1+x(Ga)2−x(BO、ここでM=Al,Y又はその2つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;0≦y≦1;LiBO,LiBO−LiSO,LiBO−LiSiO,LiBO−LiSiO−LiSO
− 好ましくは以下より選択する酸窒化物:LiPO4−x2x/3,LiSiO4−x2x/3,LiGeO4−x2x/3、ここで0<x<4又はLiBO3−x2x/3、ここで0<x<3;リチウム、リン又は酸窒化ホウ素(LiPON及びLIBONと呼ばれる)をベースにした材料はまたリン酸リチウムにケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウム、又はアルミニウム、ホウ素、硫黄、及び/若しくはケイ素の組み合わせ、並びにホウ素を含むことができる;
− 好ましくは以下より選択する酸化リチウム:LiLaZr12又はLi5+xLa(ZrX,2−x)O12、ここでA=Sc,Y,Al,Ga及び1.4≦x≦2若しくはLi0.35La0.55TiO
− 好ましくは以下より選択するケイ酸塩:LiSi,LiSiO,LiSi,LiAlSiO,LiSiO,LiAlSi
【0037】
著しい還元電位(significantly reducing potentials)で機能するアノードと接触して安定な電解質材料層c)は、以下から選択する電解質材料から製造する。
【0038】
− 以下のガーネット:
Li(TO、ここで、
− Aは、酸化数+IIのカチオン、好ましくはCa,Mg,Sr,Ba,Fe,Mn,Zn,Y,Gdを表し、
− Aは、酸化数+IIIのカチオン、好ましくはAl,Fe,Cr,Ga,Ti,Laを表し、
− (TO)は、Tが酸化数+IVであり、酸素原子によって形成される四面体の中心に位置する原子を表し、またTOはケイ酸アニオン又はジルコン酸アニオンであることが好ましい。ここで酸化数+IVの元素Tのすべて又はいくつかは、Al,Fe,As,V,Nb,In,Taなどの酸化数+III又は+Vの原子で置換することができることが理解されているものとする;
− 以下のことが理解されているものとする。dは2〜10であり、好ましくは3〜9、更により好ましくは4〜8;xは3であるが2.6〜3.4(好ましくは2.8〜3.2)であってもよい;yは2であるが1.7〜2.3(好ましくは1.9〜2.1)であってもよい;またzは3であるが2.9〜3.1であってもよい;
− 好ましくは以下より選択するガーネット:LiLaZr12;LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12、ここでM=Nb又はTa又はその2つの化合物の混合物;Li7−xBaLa3−x12、ここで0≦x≦1及びM=Nb又はTa又はその2つの化合物の混合物;Li7−xLaZr2−x12、ここで0≦x≦2及びM=Al,Ga又はTa又はその2つ若しくは3つの化合物の混合物;
− 好ましくは以下より選択するリン酸リチウム:LiPO;Li(Sc2−x)(PO、ここでM=Al又はY及び0≦x≦1;Li1+x(Sc)2−x(PO、ここでM=Al,Y,Ga又はその3つの化合物の混合物、及び0≦x≦0.8;Li1+x(Ga1−ySc2−x(PO、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1及びM=Al又はY又はその2つの化合物の混合物;Li1+x(Ga)2−x(PO、ここでM=Al,Y又はその2つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;Li1+xAlTi2−x(PO、ここで0≦x≦1,又はLi1+xAlGe2−x(PO、ここで0≦x≦1;又はLi1+x+z(Ge1−yTi2−xSi3−z12、ここで0≦x≦0.8及び0≦y≦1.0及び0≦z≦0.6及びM=Al,Ga又はY又はその2つ若しくは3つの化合物の混合物;Li3+y(Sc2−x)Q3−y12、ここでM=Al及び/又はY並びにQ=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8及び0≦y≦1;又はLi1+x+ySc2−x3−y12、ここでM=Al,Y,Ga又はその3つの化合物の混合物並びにQ=Si及び/又はSe,0≦x≦0.8及び0≦y≦1;又はLi1+x+y+z(Ga1−ySc2−x3−z12、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1;0≦z≦0.6、ここでM=Al又はY又はその2つの化合物の混合物並びにQ=Si及び/又はSe;又はLi1+x2−x12、ここで0≦x≦1並びにN=Cr及び/又はV、M=Se,Sn,Zr,Hf,Se又はSi、又はこれらの化合物の混合物;
− 好ましくは以下より選択するホウ酸リチウム:Li(Sc2−x)(BO、ここでM=Al又はY及び0≦x≦1;Li1+x(Sc)2−x(BO、ここでM=Al,Y,Ga又はその3つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;0≦y≦1;Li1+x(Ga1−ySc2−X(BO、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1及びM=Al又はY;Li1+x(Ga)2−x(BO、ここでM=Al,Y又はその2つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;0≦y≦1;LiBO,LiBO−LiSO,LiBO−LiSiO,LiBO−LiSiO−LiSO
− 好ましくは以下より選択する酸窒化物:LiPO4−x2x/3,LiSiO4−x2x/3,LiGeO4−x2x/3、ここで0<x<4又はLiBO3−x2x/3、ここで0<x<3;リチウム、リン若しくは酸窒化ホウ素(LiPON及びLIBONと呼ばれる)をベースにした材料はまたリン酸リチウムにケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウム、又はアルミニウム、ホウ素、硫黄、及び/若しくはケイ素の組み合わせ、並びにホウ素含むことができる;
− 好ましくは以下より選択する酸化リチウム:LiLaZr12又はLi5+xLa(ZrX,2−x)O12、ここでA=Sc,Y,Al,Ga及び1.4≦x≦2又はLi0.35La0.55TiO
− 好ましくは以下より選択するケイ酸塩:LiSi,LiSiO,LiSi,LiAlSiO,LiSiO,LiAlSi
【0039】
これらの電解質は、全てのアノードの化学組成物と共に使用することができる。
【0040】
イオン性原子団を有する架橋ポリマー材料の層を、固体電解質材料層で被覆されたアノード(カソード)材料層及び/又は固体電解質で被覆された若しくは被覆されていないカソード(アノード)材料層に添加することによって、アノードと接触して安定な前記電解質材料層c)を、カソードと専ら接触するであろう他の固体電解質配合物と結合させることが可能である。カソードと接触するときのみにおいて安定なこれらの電解質は、Li3xLa2/3−x1/3−xTiO,La2/3−xSr1/3−xLiTiO及びLa2/3Li1/3−xTi1−xAlの組成式のペロブスカイトであり、ここで□はその構造中に存在する空孔を表す。従って、Li3xLa2/3−x1/3−xTiOの場合、その組成物は、2/3−x〜1/3−x、0<x<0.20、好ましくは0<x<0.16で変化することができるランタン空孔を含む;La2/3−xSr1/3−xLiTiOの場合、その組成物はストロンチウム空孔を含み、該組成物中のストロンチウムの割合はx〜1/3−xで変化することができ、0<x<0.20、好ましくは0<x<0.16である;La2/3Li1/3−xTi1−xAlの場合、その組成物はリチウム空孔を含み、その組成物中のリチウムの割合はx〜1/3−xの間で変化することができ、0<x<0.20、好ましくは0<x<0.16である。特定の実施形態では、本方法はまた、少なくとも1つのセラミック、ガラス、又はガラスセラミック材料の封入層の堆積によって、工程f)で得られる電池を封入する工程g)を含む。
【0041】
アノード及びカソード端子は、ニッケルの副層上及び/又は金属粒子で満たされたエポキシ樹脂の副層上に任意で堆積させた、好ましくはスズ層の堆積による、切断面の金属化により製造することが好ましい。
【0042】
好ましくは、電解質材料のナノ粒子のサイズは、100nm未満、好ましくは30nm未満である。
【0043】
導電性基板は、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、チタン又はニッケル、好ましくはニッケルでできており、任意で以下の金属から選択される貴金属で被覆される:金、白金、パラジウム、バナジウム、コバルト、ニッケル、マンガン、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、チタン、パラジウム、ジルコニウム、タングステン又はこれらの金属の少なくとも1つを含む任意の合金。
【0044】
本発明の他の目的は、本発明の方法によって得ることができる電池に関する。
【0045】
カソードの表面容量はアノードの表面容量以上であることが好ましい。
【0046】
好ましい実施形態では、カソード層及びアノード層のスタックは、横方向にオフセット(補正)(offset)されている。
【0047】
電池は、少なくとも1つの封入層、好ましくはセラミック、ガラス又はガラスセラミック層を含むことが好ましい。更に好ましくは、電池は、前記第1封入層上に堆積させた第2封入層を含み、前記第2封入層は好ましくはシリコーンである。
【0048】
好ましくは、前記少なくとも1つの封入層は、前記電池の6つの面のうちの4つの面を完全に覆い、電池の接続部を意図した金属化された部分の下に位置する残りの2つの面を部分的に覆う。
【0049】
好ましい実施形態においては、電池はカソード及びアノード集電体がそれぞれ露出した端子を含む。
【0050】
好ましくは、上記のアノード接続部及びカソード接続部は、スタックにおいて反対側に配置する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、本発明の実施例の電池を循環させたときの充電放電曲線を示す。
図2図2は、本発明の実施例の電池のサイクル間の容量変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本発明においては、「電気泳動堆積」又は「電気泳動法による堆積」は、液体媒体中に予め懸濁した粒子を、好ましくは導電性基板上に堆積させる方法によって、堆積させた層を意味する。その懸濁液中にある2つの電極間に電場を作用させることによって、その粒子の基板表面への移動が起こる。ここで、一方の電極は堆積が起こる導電性基板であり、他方の電極(対向電極)は液相に配置されている。粒子懸濁液のゼータ電位が適切な値であるとき、並びに/又は、特定の熱的及び/若しくは機械的高密度化処理の後、基板上に粒子のいわゆる「高密度」堆積が形成される。この堆積は当業者であれば認識可能な特定の構造を有しており、当業者であれば他の技術によって得られた堆積と区別することができる。
【0053】
本発明においては、粒子のサイズは、その最大寸法を意味する。従って、「ナノ粒子」は、寸法の少なくとも1つが100nmより小さい粒子である。粉末又は粒子群の「粒子サイズ」又は「平均粒子サイズ」はD50として与えられる。
【0054】
「全固体」電池は、液相材料を含まない電池である。
【0055】
電極の「表面容量」は、電極にインサーション可能なリチウムイオンの量(mA.h/cmとして表される)を意味する。
【0056】
本発明においては、ガーネット型化合物を、特に電解質として使用することができる。ここで、そのイオン伝導性はリチウムイオンによって保証される。ガーネットの化学組成は、その基本的な組成式Li(TOを構成する異なる原子の同形置換(isomorphic substitution)に応じて変わり得る。この式において、Liはリチウムカチオンを表す。dは、2〜10、好ましくは3〜9、更により好ましくは4〜8である。この式において、Aは、擬立方晶配位部位(the pseudocubic coordination site)8における酸化数+IIのカチオンを表す。xは典型的には3であるが、化学量論的な偏差を有していてもよい。Aは、例えば、C,Mg,Sr,Ba,Fe,Mn,Zn,Y,Gdであってもよい。Aは、八面体配位部位6における酸化数+IIIのカチオンを表す。yは、典型的には2であるが、化学量論的な偏差が存在し得る。Aは、例えば、Al,Fe,Cr,Ga,Ti,Laであってもよい。A及びAは同じカチオンを表すことができる。TOは、4つの酸素原子が四面体を形成し、カチオンTがその四面体の中心にあるアニオンを表す;Tは主として酸化数+IVのカチオン、主にケイ素を表す。この最後の場合、TOはケイ酸アニオン(SiO4−を表す。これらのガーネットはネソケイ酸塩であると考えられ、その構造はSiO四面体が、その頂点によって八面体Aに結びつくようにして形成された三次元的ネットワーク構造によって説明できる。形成された空洞は、歪んだ立方体形状A(十二面体)を有する。各々の四面体は4つの異なる八面体とその頂点を共有する。各々の八面体は頂点で6つの異なる四面体に、辺で6つの十二面体につながっている。各々の12面体は、4つの他の12面体、4つの八面体、及び2つの4面体とその辺を共有する。その辺のうち2つだけは共有されない。Tはまた、カチオンZr4+であってもよい。酸化数+IVの元素Tの全部又は一部は、酸化数+III又は+VのAl,Fe,As,V,Nb,In,Ta,Zrなどの原子で置換してもよい;これは、組成式Li(TO中の酸素のモル量の変化を引き起こす可能性がある。この組成式において、原子A、A、T及びOは、同形置換してもよい。この同形置換は、異なるタイプであってもよく、主に2つのタイプであってもよい:いくつかの原子がそれと同じ個数だけ、同じ価数で異なる原子(いわゆる第1種同形)で置換されてもよく、1個の原子が、同等のイオン半径であり価数が1異なる原子1個(いわゆる異原子価置換による、いわゆる第2種同形)で置換されてもよい;この第2の場合、電気的中性は、結晶ネットワークにおける対応する置換によって、又は空孔によって、又は移動性格子間イオン(アニオン又はカチオン)によって保証される。この移動性格子間イオンはリチウムであってもよい。上記の組成式において、zは、通常、3に等しいか又は3に近い。酸素原子のごく一部は、任意に、水素原子(OではなくOH基)に結合していてもよい。原子団(TO)のごく一部もOH基で置換することができる。この場合は(TOではなく(TO3−p(OH)4pと表すべきである。酸素は、少なくとも部分的に2価又は3価のアニオン(例えば、N3−)によって置換されていてもよい。
【0057】
移動性リチウムイオンを有するガーネットベースのイオン伝導体は、例えばWO 2005/085138、WO 2009/003695及びWO 2010/090301に記載されている。リチウムイオンは、結晶部位を占め、また、格子間位置にも存在し得る。
【0058】
本発明において、前記ガーネットタイプの化合物は好ましくは以下より選択する:
− LiLaZr12
− LiLaBaTa12
− Li5.5LaNb1.75In0.2512
− LiLa12、ここでM=Nb又はTa又はそれら2つの化合物の混合物;
− Li7−xBaLa3−x12、ここで0≦x≦1及びM=Nb又はTa又はこれら2つの化合物の混合物;
− 及び、Li7−xLaZr2−x12、ここで0≦x≦2及びM=Al,Ga又はTa又はその2つ若しくは3つの化合物の混合物。
【0059】
(詳細な説明)
本発明の発明者は、前述の欠点に対処するために、燃焼の危険性無しに加熱できるように有機溶媒を含まない全固体電池を製造する新しい方法を開発した。その目的は、イオン性原子団を有する架橋ポリマー材料の少なくとも1つの層を含む薄層電池を製造する方法の実施によって達成される。本発明による方法によって得られる電池は、良好なエネルギー及び電力密度を有する電池を得るために、従来の薄層電池の平面構造とは対照的に、多層構造を有する。更に、これらの電池を得るための方法により、結果として得られる電池を構成する電極の表面容量を低下させることなく、比較的低温、すなわち300℃未満の温度で電池層の集合体(an assembly)を製造することができるようになる。「全固体」電池を製造するには、特に封止部又は電極の変形の制限に関して、電池の挙動を信頼できるものにするために、寸法的に安定した材料の使用が必要である。
【0060】
固体アノード、カソード及び電解質層は、以下の技術の1つを使用して堆積させる。
【0061】
i)物理蒸着(PVD)、より具体的には真空蒸着、レーザーアブレーション、イオンビーム、カソードスパッタリング、
ii)化学蒸着(CVD)、より具体的にはプラズマCVD(PECVD)、レーザーアシストCVD(LACVD)又はエアロゾルアシストCVD(AA−CVD)、
iii)エレクトロスプレー、
iv)電気泳動法、
v)エアロゾル沈着、
vi)ゾルゲル法、
vii)ディッピング、より具体的にはディップコーティング、スピンコーティング、又はラングミュア−ブロジェット法。
【0062】
本発明によると、固体アノード、カソード及び電解質層は、好ましくは、電気泳動法によって堆積させる。粒子の電気泳動堆積は、堆積が生成する基板と対向電極との間に電場を作用させ、コロイド懸濁液の荷電粒子を移動させて基板上に堆積させることによって行う。上記の粒子とともに表面に堆積させるバインダ及び他の溶媒が存在していないことにより、非常にコンパクトな堆積物を得ることが可能になる。電気泳動堆積により得られるコンパクトさは、乾燥工程中の堆積物における亀裂又は他の欠陥の出現の危険性を抑え、そして防ぎさえもする。更に、堆積の速度は、作用する電場及び懸濁液の粒子の電気泳動の移動度によって速くすることができる。
【0063】
本発明によると、全固体電池を製造する方法はアノード材料層の堆積の工程a)を含む。アノード材料層の材料は好ましくは以下の材料から選択する:
i)酸窒化スズ(典型的な化学式はSnO);
ii)リン酸鉄リチウム(典型的な化学式はLiFePO);
iii)ケイ素とスズとの混合の酸窒化物(典型的な化学式はSiSn、ここでa>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4、0<z≦3)(SiTONとも呼ばれる)、及び、特にSiSn0.871.21.72;及び、SiSnの酸窒化物、ここで、a>0、b>0、a+b≦2、0<c−10、0<y<24、0<z<17;SiSn、ここでXはF,Cl,Br,I,S,Se,Te,P,As,Sb,Bi,Ge,Pbの元素のうち少なくとも1つ、及び、a>0、b>0、a+b>0、a+b≦2、0<c<10、0<y<24及び0<z<17;及びSiSn、ここでXはF,Cl,Br,I,S,Se,Te,P,As,Sb,Bi,Ge,Pbの元素のうち少なくとも1つ、及びa>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4及び0<z≦3;
iv)Si(特にx=3及びy=4)、Sn(特にx=3及びy=4)、Zn(特にx=3及びy=4)、Li3−xN(ここでM=Co,Ni,Cu)のタイプの窒化物;
v)酸化物SnO,LiTi12,SnB0.60.42.9及びTiO
【0064】
アノード層を製造するためのLi12は特に好ましい。更に、Li12は、ホスト材料を変形させることなくリチウムイオンを可逆的にインサーションするリチウムインサーション材料である。
【0065】
本発明によれば、全固体電池の製造方法は、カソード材料層を堆積させる工程b)を含む。カソード材料層は、好ましくは電気泳動法により製造する。カソード材料層のための材料は、好ましくは以下の材料から選択する。
【0066】
i)酸化物LiMn,LiCoO,LiNiO,LiMn1.5Ni0.5,LiMn1.5Ni0.5−x(ここでXはAl,Fe,Cr,Co,Rh,Nd、及び他の希土類元素から選択され、0<x<0.1),LiFeO,LiMn1/3Ni1/3Co1/3
ii)リン酸化物LiFePO,LiMnPO,LiCoPO,LiNiPO,Li(PO
iii)以下のカルコゲン化物を全リチウム化したもの:V,V,TiS,酸硫化チタン(TiO)、酸硫化タングステン(WO)、CuS,CuS
【0067】
金属基板、好ましくはニッケル上に堆積させたLiMn薄層からなるカソード電極は、好ましくは真空技術又はドライルーム(実装するのに非常に高価な装置である)を使用せずに製造する。実際、LiMn1.5Ni0.5と同様、LiMnは、空気に対して自然発生的な影響を受けにくい。しかしながら、長期間空気に曝すことは避けることが推奨される。電極の製造中にカソード材料を空気へ曝すことの影響は、比較的短い実施時間に関しては無視できる。
【0068】
アノード又はカソードを製造するためには、上述した導電性材料のナノ粒子、及び特に電解質フィルム(以下に記載)を製造するために用いられるタイプのグラファイト、及び/又はイオン伝導性材料のナノ粒子、又はイオン性原子団を有する架橋ポリマー材料を添加することが可能である。
【0069】
好ましくは、アノード及びカソード材料層の堆積は、アノード及びカソード材料ナノ粒子の電気泳動堆積によってそれぞれ行う。
【0070】
好ましくは、アノード及びカソード材料ナノ粒子の層の堆積は、金属基板上で直接行う。小さなナノ粒子サイズ、すなわち100nm未満、については、アノード、カソード及び電解質層の堆積は、エレクトロスプレー、電気泳動法、エアロゾル沈着又はディッピングによって行う。好ましくは、アノード、カソード及び電解質層はすべて電気泳動法によって堆積させる。本発明による方法のこの特定の実施形態は、特に、電気泳動堆積工程、乾燥工程及び/又は低温の熱処理工程中のナノ粒子層の自己焼結によって、高密度でコンパクトなナノ粒子層を得ることを可能にする。更に、アノード又はカソード材料ナノ粒子の層の電気泳動堆積がコンパクトであるため、インク又は液体から製造されたナノ粒子層とは異なり、乾燥後の層のひび割れの危険性が低減する。インク又は液体から製造されたナノ粒子層は、乾燥抽出物含量が低くその堆積物が大量の溶媒を含み、乾燥後に堆積物に亀裂が生じるため、電池の動作に障害が生じる。
【0071】
本発明によれば、アノード又はカソード材料のナノ粒子の層の堆積は、その導電性基板上に直接行う。その導電性基板は、好ましくはニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン又は銅から選択される金属導電性基板である。好ましい実施形態では、アノード又はカソード材料のナノ粒子層の堆積はニッケル基板上で行う。基板の厚さは10μm未満、好ましくは5μm未満である。
【0072】
導電性基板は、シートの形態で使用することができ、任意で、プレカット電極パターン(pre−cut electrode patterns)を含むシート、又は細長い片(strips)の形態で使用することができる。電極との電気的接触の質を改善するために、基板は、好ましくは、金、クロム、ステンレス鋼、パラジウム、モリブデン、チタン、タンタル又は銀から選択される金属又は金属合金で被覆してもよい。
【0073】
本発明によれば、アノード又はカソード材料のナノ粒子層をその導電性基板上に直接、例えば電気泳動法によって堆積させることにより、高密度なナノ結晶構造の層を得ることが可能になる。しかしながら、粒子境界(grain boundaries)が形成される可能性があり、これは特定の場合に電極の厚みにおいてリチウムイオンの拡散の運動(kinetics)を制限し得る、アモルファスと結晶材料との間の特定の構造を有する層の形成につながる。従って、電池電極の電力及びそのライフサイクル(寿命)(the life cycle)が影響を受ける可能性がある。好ましくは、電池の性能を向上させるために、結晶性改善のための再結晶化熱処理を行い、電極(アノード及び/又はカソード)の電力を強化するために任意で電極を圧密化する(consolidated)。
【0074】
アノード及び/又はカソード層の再結晶化熱処理は、300℃〜1000℃、好ましくは400℃〜800℃、更により好ましくは500℃〜700℃の温度で行う。熱処理は、アノード及び/又はカソード層の堆積の工程a)及び/又は工程b)の後で、電解質層の堆積の工程c)の前に行わなければならない。
【0075】
本発明によれば、電池の製造方法は、電解質材料層の堆積の工程c)を含む。電解質材料層の堆積は、アノード材料層及び/又はカソード材料層上で行う。
【0076】
アノード及び/又はカソード層上の固体電解質層の堆積によって、電気化学セルの内部短絡からの保護が可能になる。また、製造が簡単な、寿命の長い全固体電池の製造が可能になる。電解質材料層の堆積は、好ましくは電気泳動法により行う。
【0077】
より具体的には、電解質材料は、好ましくは以下の材料から選択する:
− 工程a)及び/又は工程b)で得られた層上において:
−− 以下のガーネット:
Li(TO、ここで、
− Aは、酸化数+IIのカチオン、好ましくはCa,Mg,Sr,Ba,Fe,Mn,Zn,Y,Gdを表し、
− Aは、酸化数+IIIのカチオン、好ましくはAl,Fe,Cr,Ga,Ti,Laを表し、
− (TO)は、Tが酸化数+IVであり、酸素原子によって形成される四面体の中心に位置する原子であるアニオンを表し、またTOは好ましくはケイ酸アニオン又はジルコン酸アニオンを表す。ここで酸化数+IVの元素Tのすべて又はいくつかは、Al,Fe,As,V,Nb,In,Taなどの酸化数+III又は+Vの原子で置換することができることが理解されているものとする;
− 以下のことが理解されているものとする。dは2〜10であり、好ましくは3〜9、更により好ましくは4〜8;xは3であるが2.6〜3.4(好ましくは2.8〜3.2)であってもよい;yは2であるが1.7〜2.3(好ましくは1.9〜2.1)であってもよい;またzは3であるが2.9〜3.1であってもよい;
− 好ましくは以下より選択するガーネット:LiLaZr12;LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12、ここでM=Nb又はTa又はその2つの化合物の混合物;Li7−xBaLa3−x12、ここで0≦x≦1及びM=Nb又はTa又はその2つの化合物の混合物;Li7−xLaZr2−x12、ここで0≦x≦2及びM=Al,Ga又はTa又はその2つ若しくは3つの化合物の混合物;
− 好ましくは以下より選択するリン酸リチウム:LiPO;Li(Sc2−x)(PO、ここでM=Al又はY及び0≦x≦1;Li1+x(Sc)2−x(PO、ここでM=Al,Y,Ga又はその3つの化合物の混合物、及び0≦x≦0.8;Li1+x(Ga1−ySc2−x(PO、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1及びM=Al又はY又はその2つの化合物の混合物;Li1+x(Ga)2−x(PO、ここでM=Al,Y又はその2つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;Li1+xAlTi2−x(PO、ここで0≦x≦1、又はLi1+xAlGe2−x(PO、ここで0≦x≦1;又はLi1+x+z(Ge1−yTi2−xSi3−z12、ここで0≦x≦0.8及び0≦y≦1.0及び0≦z≦0.6及びM=Al,Ga又はY又はその2つ若しくは3つの化合物の混合物;Li3+y(Sc2−x)Q3−y12、ここでM=Al及び/又はY並びにQ=Si及び/又はSe,0≦x≦0.8及び0≦y≦1;又はLi1+x+ySc2−x3−y12、ここでM=Al,Y,Ga又はその3つの化合物の混合物並びにQ=Si及び/又はSe,0≦x≦0.8及び0≦y≦1;又はLi1+x+y+z(Ga1−ySc2−x3−z12、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1;0≦z≦0.6、ここでM=Al又はY又はその2つの化合物の混合物並びにQ=Si及び/又はSe;又はLi1+x2−x12、ここで0≦x≦1並びにN=Cr及び/又はV、M=Se,Sn,Zr,Hf,Se又はSi又はこれらの化合物の混合物;
− 好ましくは以下より選択するホウ酸リチウム:Li(Sc2−x)(BO、ここでM=Al又はY及び0≦x≦1;Li1+x(Sc)2−x(BO、ここでM=Al,Y,Ga又はその3つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;0≦y≦1;Li1+x(Ga1−ySc2−X(BO、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1及びM=Al又はY;Li1+x(Ga)2−x(BO、ここでM=Al,Y又はその2つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;0≦y≦1;LiBO,LiBO−LiSO,LiBO−LiSiO,LiBO−LiSiO−LiSO
− 好ましくは以下より選択する酸窒化物:LiPO4−x2x/3,LiSiO4−x2x/3,LiGeO4−x2x/3、ここで0<x<4又はLiBO3−x2x/3、ここで0<x<3;リチウム、リン若しくは酸窒化ホウ素(LiPON及びLIBONと呼ばれる)をベースにした材料はまたリン酸リチウムにケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウム、又はアルミニウム、ホウ素、硫黄、及び/若しくはケイ素の組み合わせ、並びにホウ素を含むことができる;
− 好ましくは以下より選択する酸化リチウム:LiLaZr12又はLi5+xLa(ZrX,2−x)O12、ここでA=Sc,Y,Al,Ga及び1.4≦x≦2若しくはLi0.35La0.55TiO
− 好ましくは以下より選択するケイ酸塩:LiSi,LiSiO,LiSi,LiAlSiO,LiSiO,LiAlSi
【0078】
好ましくは、電解質材料層が工程b)で得られる層上にのみ堆積させるとき、以下より選択する電解質材料層を堆積させる:
− Li(Sc2−x)(PO、ここでM=Al若しくはY及び0≦x≦1;又は
− Li1+x(Sc)2−x(PO、ここでM=Al,Y,Ga若しくはその2つ若しくは3つの化合物の混合物、及び0≦x≦0.8;0≦y≦1.0;又は
− Li1+x(Ga)2−x(PO、ここでM=Al,Y若しくはその2つのMの化合物の混合物、及び0≦x≦0.8;0≦y≦1.0;又は
− Li1+x(Ga1−ySc2−x(PO、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1.0及びM=Al若しくはY;若しくはその2つの化合物の混合物;又は
− Li1+xAlTi2−x(PO、ここで0≦x≦1;又は
− Li1+xAlGe2−x(PO、ここで0≦x≦1;又は
− Li1+x+z(Ge1−yTi2−xSi3−z12、ここで0≦x≦0.8及び0≦y≦1.0及び0≦z≦0.6及びM=Al,Ga若しくはY若しくは2つ又は3つの化合物の混合物;又は
− 以下より選択される酸化リチウム:LiLaZr12又はLi5+xLa(ZrX,2−x)O12、ここでA=Sc,Y,Al,Ga及び1.4≦x≦2,Li0.35La0.55TiO又はLi0.5La0.5TiO
− 好ましくは以下より選択するホウ酸化リチウム:Li(Sc2−x)(BO、ここでM=Al又はY及び0≦x≦1;Li1+x(Sc)2−x(BO、ここでM=Al,Y,Ga若しくはその3つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;0≦y≦1;Li1+x(Ga1−ySc2−X(BO、ここで0≦x≦0.8;0≦y≦1及びM=Al又はY;Li1+x(Ga)2−x(BO、ここでM=Al,Y又はその2つの化合物の混合物、及び0≦x≦0.8;0≦y≦1;LiBO,LiBO−LiSO,LiBO−LiSiO,LiBO−LiSiO−LiSO
− 好ましくは以下より選択する酸窒化物:LiPO4−x2x/3,LiSiO4−x2x/3,LiGeO4−x2x/3、ここで0<x<4又はLiBO3−x2x/3、ここで0<x<3;リチウム、リン、又は酸窒化ホウ素をもとにした材料(LiPON及びLIBONと呼ばれる)はまたリン酸リチウムに、ケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウム、又はアルミニウム、ホウ素、硫黄及び/若しくはケイ素の組み合わせ、並びにホウ素を含むことができる;
− 好ましくは以下より選択するケイ酸塩:LiSi,LiSiO,LiSi,LiAlSiO,LiSiO,LiAlSi
【0079】
好ましくは、固体電解質層は、電気絶縁性の電解質材料のナノ粒子の電気泳動堆積によって製造する。得られる層は局所的な欠損(欠陥)の無い完全な被覆をもたらす。電流堆積密度(the current deposition densities)は、より絶縁性の低い領域、特に、欠損(欠陥)が存在し得る領域に集中する。
【0080】
電解質層に欠損(欠陥)が無いことにより、クリープ短絡の出現、過度の自己放電、又は電池セルの破損さえもが防止される。
【0081】
本発明による方法によって得られる電池の性能は、部分的には電解質材料の結晶構造によるものである。良好な電池性能を得るためには、アモルファスガラス又はナノ結晶構造の電解質を得ることが好ましい。従って、堆積後の電解質材料の粒径の成長を防止し、境界面での反応を防止するために、電池の組立は高温、すなわち300℃を超える温度で実施してはならない。
【0082】
本発明によれば、電解質材料層の堆積の後、以下の層上において、イオン性原子団を有する架橋ポリマー材料の層を製造する:
− 固体電解質材料層で被覆されたアノード材料層上において、及び/又は固体電解質材料層で被覆された若しくは被覆されていないカソード材料層上において;
− 又は、固体電解質材料層で被覆されたカソード材料層上において、及び/又は固体電解質材料層で被覆された若しくは被覆されていないアノード材料層上において。
【0083】
好ましくは、架橋ポリマー材料は、以下に記載のカチオン性原子団を有するあらゆるタイプのポリマーから選択する。より具体的には、架橋ポリマー材料は、ポリメチルメタクリレート、ポリアミン、ポリイミド又はポリシロキサンから選択する。好ましくは、ポリマー材料のイオン性原子団は、以下のカチオンから選択する:イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム、n−プロピル−n−メチルピロリジニウム(PYR13とも呼ばれる)若しくはn−ブチル−n−メチルピロリジニウム(PYR14とも呼ばれる)などのピロリジニウム、アンモニウム、ホスホニウム又はスルホニウム;及び/又は以下のアニオンから選択する:ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、若しくはn−(ノナフルオロブタンスルホニル)−n−(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化学式はC12NO、IM14とも呼ばれる)。そのようなアニオンを使用することにより、空気及び水分への暴露に対する耐性の良好な特性を維持することが可能になり、それによって工業的実施が単純化され、電池の寿命の点で良好な性能を保証できるようになる。更に、イオン性原子団を有する架橋ポリマー材料の層は、短絡及び溶媒の発火の危険から電池を保護することによって、電池の安全性及び寿命を保証することを可能にする。実際、これらのポリマー材料は全固体であり、液体電解質又は溶媒に溶解した電解質を含まない。更に、これらの架橋ポリマー材料は、有機溶媒の蒸発又は発火の危険が無いので、高温に耐性がある。
【0084】
本発明による方法の一実施形態では、イオン性原子団を有する架橋ポリマー材料は、ディップコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、ドクターブレード、エレクトロスプレー又は電気泳動法によって直接堆積させる。このために、ポリマー材料を最初に適切な溶媒に溶解し、アノード、カソード及び/又は電解質層上に溶解したポリマー材料を堆積させ、次いで溶媒を除去する前にポリマー材料層を乾燥させる。
【0085】
好ましくは、架橋ポリマー材料の堆積は、最終的な電池の短絡を引き起こす可能性がある層の欠陥を制限するために、電気泳動法によって行う。電気泳動法による堆積は、高密度でコンパクトな層を得ることを可能にする。更に、電気泳動堆積は、乾燥抽出物が少ないインク又は流体によって製造される層とは異なり、乾燥後の層のひび割れの危険性の抑制を可能にする。そのような層は、堆積物が大量の溶媒を含み、乾燥後に亀裂が生じるため、電池の動作に障害が生じる。
【0086】
本発明による方法の他の実施形態では、1つ以上の重合可能な原子団を有するモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はプレポリマーを堆積させる。好ましくは、1つ以上の反応性原子団を含むプレポリマーを堆積させ、イオン性原子団のグラフトを可能にする。重合は、アノード、カソード又は電解質層上に直接、熱的及び/又は光化学的に行う。典型的には、重合は、例えばベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド又はアゾイソブチロニトリルから選択される熱反応開始剤(a thermal initiator)、及び/又は、例えばベンゾイン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン又は2,2−ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノンから選択される光化学反応開始剤(a photochemical initiator)の存在化で行う。
【0087】
イオン性原子団を有する架橋ポリマー材料の堆積は、電解質のイオン伝導度をかなり増加させることを可能にする。更に、これらの材料は、比較的不燃性であり、高温に耐性があり、蒸気圧が無視できるほど小さい。従って、イオン性原子団を有する架橋ポリマー層は、前記電池の組み立て工程の間に熱処理及び/又は極端な機械的圧縮を用いることなく、薄層三次元電池を製造することを可能にする。
【0088】
実際、イオン性原子団を有する架橋ポリマー材料の少なくとも1つの層の製造は、低温、すなわち300℃を超えない温度、好ましくは200℃、更により好ましくは150℃の温度で電極を組み立てることを可能にする。好ましくは、イオン性液体、PYR 13、PYR 14及び/又はリチウム塩を、イオン性原子団を有する前記架橋ポリマーに溶解してもよい。イオン性液体、PYR 13、PYR 14及び/又はリチウム塩の添加は、電気化学的性能のために有益であり、この添加によって、伝導性が改善されることが可能となるだけでなく、ポリマーフィルムの剛性を低下させることも可能にする。この添加がなければ、ポリマーフィルムは非常に壊れやすいままとなる。
【0089】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、電極(アノード及びカソード)は、製造される電池の寸法の切れ目を生成するために、切断パターンに従って「打ち抜く」。電極の打ち抜きは電解質層の堆積工程c)の後、又はイオン性原子団を有する架橋ポリマー材料の堆積工程d)の後に行う。これらのパターンは、隣接する(例えばU字形の)3つの切れ目を含み、これによって電池の寸法が決まる。構成物の封入に必要な物質が通過できることを確実にするために、非切断部に第2の切れ目(スロット)(slot)を形成してもよい。次に、複数の基本セルのスタックを形成するために、アノード電極とカソード電極とが交互に積み重ねる。アノード及びカソードの切断パターンは、「ヘッドトゥテール(head−to−tail)」構成で配置する。
【0090】
本発明による方法の他の特定の実施形態では、電解質層の堆積工程c)の前に電極を切断し、電極の縁を電解質フィルムによって覆い、それ故電極が大気との接触から保護され、電池の寿命を向上させることができる。他の代替の実施形態では、アノード及びカソード層の堆積工程a)及び工程b)の前に基板上に切れ目を生成し、電極の縁を電解質フィルムによって覆うことが可能になる。この特定の実施形態は、電解質材料のナノ粒子の層を堆積させる前に電極の縁を覆い、それにより、特に電解質層が水分に対して安定な材料からなる場合に、封入フィルムを電極の周りに容易に生成させることができる、という利点を有する。電極の側端部を覆うことによってまた、セルの短絡の危険性を低減することも可能になる。
【0091】
最後に、本発明による方法の本質的な工程は、全固体薄層電池を得るために、上記で得られたスタックの熱処理及び/又は機械的圧縮を含む。熱処理は、50〜300℃、好ましくは100〜200℃の温度で行う。好ましくは、熱処理の温度は200℃を超えない。好ましくは、組み立てられる層の機械的圧縮は、10〜100MPa、好ましくは20〜50MPaの圧力で行う。
【0092】
特定の実施形態では、電池セルを大気から確実に保護するために、上記のスタック工程の後、そして端子を追加する前、薄い封入層を堆積させることによって、前記スタックを封入することが好ましい。封入層は、バリア層としての機能を果たすために、化学的に安定で、高温に耐性があり、大気に対して不透過でなければならない。好ましくは、前記薄い封入層は、例えば、酸化物、窒化物、リン酸塩、酸窒化物又はシロキサン形態であり得るポリマー、セラミック、ガラス又はガラスセラミックからなる。更に好ましくは、この封入層は、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂で被覆する。
【0093】
封入層は、好ましくは化学蒸着(CVD)によって堆積させることができ、これにより接触可能な全てのスタック表面の被覆が可能となる。従って、封入は、スタック上に直接的に実施することができ、浸透可能な空洞(空孔)(the available cavities)のすべてを被覆することができる。好ましくは、電池セルの外部環境からの保護を高めるために、第2封入層を上記の第1封入層上に堆積させることができる。典型的には、前記第2層の堆積は、シリコーン含浸によって行うことができる。そのような材料は、それが高温に耐えるという事実に基づいて選択し、従って、封入材料のガラス転移を起こすこと無く電子カード(基盤)(electronic cards)上で溶接して電池を容易に組み立てることができる。
【0094】
好ましくは、電池の封入は、前記スタックの6面のうちの4面に対して行う。封入層はスタックの外面を取り囲む。それによる外気からの保護がされていない残りの部分は、端子によって得られる層により確実に保護される。
【0095】
好ましくは、カソード及びアノード接続は横方向にオフセットされている。これによって、これらの端部での短絡の発生を防止するために、封入層が誘電性の層として作用することが可能となる。
【0096】
一度スタックを作製し、スタックを封入する場合には封入工程後に、カソード又はアノード集電体のそれぞれ露出した(封入層で被覆されていない)部分に端子(電気的接点)を追加する。これらの接触領域は、電流を集めるためにスタックにおいて反対側に位置させてもよいが、隣接する側面にも位置させてもよい。
【0097】
端子を製造するために、前記スタックは、任意で被覆され、電池の接続部(+)及び(−)の切断面各々を露出させ、単一の電池部品を得ることが可能となるような切断面で切断する。次に、接続部は、当業者に知られているプラズマ堆積技術によって、並びに/又は(銀で満たされた)導電性エポキシ樹脂及び/若しくは溶融スズ浴に浸漬することによって、金属化させることができる。端子は、各端部に交互に正及び負の電気接続を確立することを可能にする。これらの端子は、異なる電池要素の間で並列に電気的接続を生成することを可能にする。このため、一端には(+)接続のみが出現し、他端では(−)接続が可能になる。
【0098】
この電池は全固体であり、アノード材料としてリチウムインサーション材料を使用するので、再充電工程中の金属リチウムデンドライトが形成する危険性は無く、リチウムアノードのインサーション容量は制限される。
【0099】
更に、本発明による電池の良好なサイクル性能を保証するために、カソードの表面容量がアノードの表面容量以上である電池設計が好ましい。
【0100】
電池を形成する層が全固体であるので、アノードが完全に充電されているとき、リチウムデンドライトの形成の危険性はもはや無い。従って、そのような電池設計によって、過剰な電池セルの作製を回避できる。
【0101】
更に、アノードの表面容量以上のカソード表面容量を有するそのような電池の製造は、サイクル数として表される寿命の観点で、性能を向上させることを可能にする。実際、電極が高密度で全固体であるため、粒子間の電気的接触が失われる危険性は無い。更に、電解質又は電極の空孔に金属リチウムが沈殿する危険性も無くなり、最終的にはカソード材料の結晶構造が劣化する虞も無くなる。
【実施例】
【0102】
アノード材料の懸濁液は、LiTi12を粉砕し、そして数ppmのクエン酸を含む10g/lの無水エタノール中に分散させることにより得た。
【0103】
カソード材料の懸濁液は、LiMnを粉砕し、そして25g/lの無水エタノール中に分散させることにより得た。次いで、カソード懸濁液はアセトン中で5g/lの濃度に希釈した。
【0104】
セラミック電解質材料の懸濁液は、LiAl0.4Sc1.6(POの粉末を粉砕し、そして5g/lの無水エタノール中に分散させることにより得た。
【0105】
これらの懸濁液の全てについて、上記の粉砕は、100nm未満の粒子サイズを有する安定な懸濁液を得るために行った。
【0106】
アノードは、上記の予め調製された懸濁液中に含まれるLiTi12ナノ粒子の電気泳動堆積によって調製した。LiTi12の薄いフィルム(約1μm)を基板の2つの面上に堆積させた。そして、これらの負極を600℃で熱処理した。
【0107】
カソードは、LiMn懸濁液からの電気泳動堆積によって同じ方法で調製した。LiMnの薄いフィルム(約1μm)を基板の2つの面上に堆積させた。そして、それらの正極を600℃で処理した。
【0108】
熱処理後、電気泳動堆積により、アノードとカソードとをセラミック電解質層LiAl0.4Sc1.6(POで被覆した。上記のLASPの厚さは各電極上で約500nmであった。そしてこれらの電解質フィルムを熱処理により乾燥させた。
【0109】
電池セルの集合体を製造するために使用されたポリマー配合物は、イオン液体1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート[BMIm][BF4](質量比約3:7)とリチウム塩(リチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド又はLiTFSI)とを含んだポリエチレングリコールモノメチルアクリレートで構成されていた。光開始剤(約1質量%)、この場合は2,2'−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(Irgacure TM 651、Ciba−Geigy)、を添加した。架橋構造は、アルゴン雰囲気中、周囲温度で366nmの紫外光を10分間照射することにより得た。
【0110】
固体電解質フィルムで被覆された電極は、次いで、ディップコーティング(浸漬後乾燥)によって、イオン性液体ポリマーの微細層(a fine layer)で被覆した。次いで、多層スタックを得るために、アノード及びカソードのスタックを製造した。その集合体は、製造のために、100℃で15分間加圧状態に保った。
【0111】
このようにして得た電池を、2〜2.7Vで循環させた。図1及び図2は、得られた充放電曲線を示す。
図1
図2