(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピペットチップ温調部は、少なくとも前記ピペットチップの先端部分を収容可能な筐体の内部空間を前記熱源から放出される温風によって加温し、且つ前記筐体の一部に前記ピペットチップの昇降移動を許容する開口部を有するものであり、
前記ピペットノズルを所定の加温位置に位置付けた状態で、少なくとも前記ピペットチップの先端部分が前記筐体内部に収容され、前記ピペットノズルを前記加温位置から降下させた場合に、少なくとも前記ピペットチップの先端が前記開口部を通じて前記筐体の外部に位置付けられるように構成している請求項1に記載の温調システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1記載の発明によれば、カートリッジの収容槽に収容されている液体(試薬類)を目標の温度まで昇温することができるものの、昇温された液体をピペットチップの先端からピペットチップ内に吸引した時点以降、液体はピペットチップの温度に影響を受ける。したがって、ピペットチップ自体の温度と、昇温されている液体との温度差が大きいほど、液体である試薬類の温度降下の程度が大きくなり、目標とする反応温度で試薬類と検体を反応させることが困難になり、分析精度が低下するおそれがある。
【0007】
一方、特許文献2記載の発明によれば、箱状の加温装置内で加温された気体およびピペットチップを介して、ピペットチップ内の液体を加温処理することができるものの、反応容器を加温することはできないため、加温処理されたピペットチップ内の液体を反応容器内に注入した際に、注入された液体は、反応容器の温度に影響を受ける。したがって、反応容器の温度と、加温処理された液体との温度差が大きいほど、液体の温度降下の程度が大きくなり、目標の反応温度で試薬類と検体を反応させることが困難になり、分析精度が低下するおそれがある。
【0008】
そこで、特許文献1記載の技術と、特許文献2記載の技術とを組み合わせて、収容槽が形成されているカートリッジを保持するステージとピペットチップの両方を加温する態様にすれば、上述の各文献記載の構成で生じるそれぞれの不具合を解消できるとも考えられる。
【0009】
しかしながら、このような態様を想定した場合であっても、箱状の加温装置に挿入した状態で加温したピペットチップを加温装置から抜き出すと、その時点以降、ピペットチップの温度は使用環境温度の影響を受けて徐々に低下する。特に、引用文献2記載の構成であれば、同文献の第3図に示されているようにピペットチップを加温装置から抜き出す場合に、ピペットチップを上方へ移動させる必要があり、さらに、ピペットチップを、平面視において加温装置と重ならない位置まで水平移動させてから、反応容器に対して液体の分注処理が行える位置まで降下させる必要があるため、ピペットチップを加温装置から抜き出して直ぐに液体の分注処理を行うことができない。その結果、加温装置によって直接または間接的に加温処理されたピペットチップ内の液体(試料)の温度は、所定の反応容器に注入される時点までに低下してしまう。
【0010】
また、上述の想定した態様であれば、箱状の加温装置内で加温された状態で加温装置から抜き出した1本のピペットチップで液体の分注処理や撹拌処理等を複数回行う場合、処理回数が多くなるほど、ピペットチップを加温装置内に戻さない限り、使用環境温度の影響を受けてピペットチップの温度が低下する程度も大きくなり、ピペットチップ内の液体もピペットチップの温度に影響されて、たとえステージを加温して反応容器の温度を目標の反応温度に設定したとしても、目標の反応温度で試薬類と検体を反応させることが困難になり、分析精度が低下するおそれがある。
【0011】
なお、引用文献2には、ピペットノズルのうちピペットチップが装着される部分の内部にヒータを設け、このヒータによって加温する態様が開示されている。しかしながら、このような態様は、ヒータが内蔵された専用のピペットノズルを必要とし、分析現場で多用されている既知のピペットノズル(ヒータが内蔵されていない通常のピペットノズル)をそのまま使用することができないため、汎用性に欠ける。
【0012】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、主たる目的は、ピペットチップによって吸排される試薬類や検体等の液体と反応容器とを反応に適した温度に加温することができ、ピペットチップの先端を通じた液体の分注処理を実施する時点までに、ピペットチップの先端を通じて吸排される試薬類などの液体の温度がピペットチップ内で低下する事態を防止して、ピペットチップの先端を通じて行う液体の分注処理、撹拌処理あるいは送液処理時に使用環境温度影響を受け難い温調システム(温調装置)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明は、ピペットノズル及び反応容器を用いて試料を分析する分析装置に適用される温調システムに関するものである。そして、本発明に係る温調システムは、ピペットノズルに装着されて液体を吸引または排出するピペットチップを加温するピペットチップ温調部と、反応容器を加温する反応容器温調部とを備え、ピペットチップ温調部として、所定の加温位置に位置付けられた前記ピペットノズルのうち少なくともピペットチップの先端部分を熱源から放出される温風によって集中的に加温するものを適用し、ピペットノズルを加温位置から降下させることで、ピペットチップの先端が反応容器に到達可能に構成していることを特徴としている。
【0014】
このような本発明に係る温調システムによれば、ピペットノズルを加温位置に位置付けた状態で、少なくともピペットチップの先端部分を熱源から放出される温風で集中的(集約的)に加温して、少なくともピペットチップの先端部分を目標とする温度付近まで加温することができる。したがって、本発明に係る温調システムでは、ピペットチップの先端から試薬類などの液体を吸引すると、加温されたピペットチップ内に吸引された試薬類などの液体も加温されることになる。また、本発明によれば、ピペットノズルを加温位置から降下させると、その時点以降、使用環境温度の影響を受けることになるが、再度ピペットノズルを加温位置に移動させることで、ピペットチップ及びピペットチップ内の液体を温風で加温することができる。
【0015】
そして、本発明に係る温調システムによれば、ピペットノズルを加温位置から直下に降下させた状態で、反応容器に到達可能なピペットチップの先端から、ピペットチップ内で加温された試薬類などの液体を、反応容器温調部によって加温された反応容器に吐出することが可能であり、反応容器における反応効率の安定化を図ることができる。すなわち、本発明に係る温調システムであれば、ピペットチップによって反応容器に吐出する試薬類や検体等の液体と反応容器の両方を、目標とする反応温度に近い温度に保つことができ、分析装置による検出結果の精度を向上させるとともに反応効率を安定化させることができる。なお、本発明において、「ピペットチップの先端が反応容器に到達」とは、「ピペットチップの先端が反応容器の一部に到達」してればよく、「ピペットチップの先端が反応容器の底面に非接触で近接する位置に到達」している状態や、「反応容器に液体が収容されている場合に、ピペットチップの先端が反応容器内の液体の表面(液面)に接触する位置に到達」している状態、これらを包含する概念である。
【0016】
また、本発明において、「所定の加温位置」は適宜選択・設定された位置であり、特に限定されない。「所定の加温位置」を原点位置に設定した場合には、ピペットノズルを原点位置に位置付けた状態で少なくともピペットチップの先端部分がピペットチップ温調部によって集中的(集約的)に加温される構成になりピペットノズルの加温位置を「原点位置」とは異なる専用の位置に設定した構成と比較して、ピペットチップをピペットチップ温調部で加温するために必要なピペットノズルの作動制御の単純化を図ることが可能である。
【0017】
このように、本発明に係る温調システムを採用すれば、ピペットチップ温調部で加温したピペットノズルを加温位置から降下させた状態で、ピペットチップの先端を通じて反応容器に対して行う液体の分注処理、撹拌処理、あるいは送液処理を実施することにより、ピペットチップ温調部で加温されたピペットチップ内の液体の温度が、反応容器に注入される時点までに環境温度の影響を受けて大幅に低下してしまう事態を防止・抑制することができる。
【0018】
したがって、本発明に係る分析装置の温調システムによれば、1本のピペットチップを用いてその先端を通じた液体の分注処理、撹拌処理、あるいは送液処理を行う回数が多くなっても、各処理が終わる毎にピペットノズルを加温位置に戻すことで、ピペットチップ及びピペットチップ内の液体を加温することができ、使用環境温度の影響を受けて低下したピペットチップ内の液体が分注、撹拌、あるいは送液される事態を回避することができ、反応容器を反応容器温調部で加温していることと相俟って、目標の反応温度で試薬類と検体を反応させることができ、分析精度が向上する。
【0019】
さらにまた、本発明に係る温調システムは、加温機能を備えた専用のピペットノズルを用いることなく、分析現場で多用されている既知のピペットノズルをそのまま使用することができ、汎用性及び実用性においても優れている。
【0020】
本発明では、所定の加温位置に位置付けられたピペットノズルのうち少なくともピペットチップの先端部分を集中的(集約的)に加温するピペットチップ温調部として、少なくともピペットチップの先端部分を収容可能な筐体の内部空間を熱源から放出される温風によって加温し、且つ筐体の一部にピペットチップの昇降移動を許容する開口部を有するものを適用することができる。この場合、ピペットノズルを加温位置に位置付けた状態で、少なくともピペットチップの先端部分がピペットチップ温調部の筐体内部に収容されることにより、筐体内の温風でピペットチップの先端部分を目標とする温度付近まで加温することができる。また、ピペットノズルを加温位置から降下させた場合に、少なくともピペットチップの先端が開口部を通じて筐体の外部に位置付けられるように構成すれば、反応容器に対するピペットチップのアクセスに支障を来すことがない。
【0021】
上述の「開口部」は、ピペットチップの昇降移動を許容する条件を満たすものであれば、形状や寸法は特に限定されない。なお、「ピペットチップの昇降移動」は、ピペットノズルの昇降移動に伴うものである。筐体内の加温効率を高める開口部の一例として、ピペットチップが挿通可能(挿抜可能)な挿通孔を挙げることができる。
【0022】
特に、本発明に係る分析装置の温調システムでは、反応容器をピペットチップ温調部の近傍に配置することによって、ピペットチップ温調部から放出される温風に反応容器が晒されるように構成することができる。このような構成であれば、ピペットチップ温調部から放出される温風によって、反応容器周辺の雰囲気温度を当該温風の温度と同程度に保つことができる。その結果、ピペットノズルを加温位置から降下させた状態においても、ピペットチップは、温風で加温された雰囲気下に配置されることになり、使用環境温度の影響を受け難く、好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ピペットノズルを加温位置に位置付けることで、ピペットチップ及びピペットチップ内の液体をピペットチップ温調部で加温することができ、ピペットノズルを加温位置から降下させて、ピペットチップの先端を通じた液体の分注処理、撹拌処理、あるいは送液処理を行うことによって、これらの処理時にピペットチップ内の液体が環境温度影響を受けて低下する事態を防止するとともに、ピペットチップ内の液体を、反応容器温調部によって加温された反応容器に吐出することで、反応容器における反応効率の安定化を図ることが可能な分析装置の温調システム(温調装置)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
本実施形態に係る温調システムXは、例えば
図1に示す分析装置1に適用されるものである。分析装置1は、試薬類や試料(検体)が収容された容器(以下、検査カートリッジ2)と、試薬類と検体とを反応させる反応容器3と、これら検査カートリッジ2内の試薬類や検体を吸引、吐出、あるいは撹拌するために使用されるピペットチップ51とを用いて検体を分析する装置である。
【0027】
本実施形態における検査カートリッジ2は、標識抗体や洗浄液など必要な試薬類が個別に収容槽21にプリパッケージされた容器である。この検査カートリッジ2は、被検出物質を含む検体を所定の収容槽21に予め分注した状態で分析装置1のステージ4(
図2参照)に架設される。検体としては、例えば、血液や血清、血漿、尿、鼻孔液、唾液、精液等が挙げられる。また、被検出物質としては、核酸(DNAやRNAなど)、タンパク質(ポリペプチドやオリゴペプチドなど)、アミノ酸、糖質、脂質及びこれらの修飾分子等を挙げることができる。
【0028】
図1に模式的に示す検査カートリッジ2及び反応容器3は、共通のステージ4に架設される。本実施形態では、反応容器3を検査カートリッジ2に搭載し、その状態で検査カートリッジ2をステージ4にセットしている。ステージ4は、
図1及び
図2に示すように、例えばスライドベース41上に固定されている。ステージ駆動部(図示省略)によってスライドベース41をリニアガイド部42に沿って水平移動させると、ステージ4は検査カートリッジ2を保持した状態で水平移動する。
【0029】
反応容器3は、液体を収容可能な収容部31を有し、収容部31の上方開口部から挿入したピペットチップ51の先端511を通じて収容部31に液体が注入されたり、除去されたりするものである。
【0030】
反応容器3の収容部31には、分析対象の物質を含む検体、および分析対象の物質と抗原抗体反応を起こす物質を含む試薬類(反応試薬)が分注される。そして、分注処理後、反応容器3内で生じた反応の結果として生じる凝集や発色、蛍光などの有無や程度に関する情報を、適宜の手段で取得し、取得したデータを用いて検体の成分の分析を行うことが可能である。
【0031】
分析装置1は、
図1に示すように、反応容器3の収容部31に液の吸排を行う送液部5と、送液部5の作動を制御する制御部6とを少なくとも備えている。送液部5は、先端にピペットチップ51が装着されるピペットノズル52と、ピペットノズル52に接続されたポンプ53と、ピペットノズル52を昇降移動させるノズル駆動部54とを有する。なお、
図1ではステージ4、送液部5及び制御部6以外に分析装置1が備える各部は省略している。
【0032】
ポンプ53は、シリンジ531と、シリンジ531内を往復動作可能なプランジャ532とを備え、駆動モータ(例えばステッピングモータ)を含む図示しないポンプ53駆動部によってプランジャ532を往復運動させるものである。このようなプランジャポンプ53を例えば配管55を介してピペットノズル52に接続した状態で、プランジャ532を往復運動させることによって、外部の液体をピペットチップ51内に吸入させたり、ピペットチップ51内の液体を外部に排出する処理を定量的に行うことができる。また、ピペットチップ51の先端511を、反応容器3の収容部31の底面に近接させた状態で、シリンジ531に対するプランジャ532の往復動作を繰り返すことで、収容部31内の液体を攪拌し、液体の濃度の均一化や反応の促進等を図ることができる。ポンプ53の駆動をステッピングモータで行うことにより、ピペットチップ51の送液量や送液速度を管理することが可能であり、反応容器3の収容部31内の残液量を管理することも可能になる。
【0033】
ノズル駆動部54は、例えば、ソレノイドアクチュエータやステッピングモータによってピペットノズル52を軸方向(本実施形態では鉛直方向)に自在に移動させるものである。
【0034】
このようなピペットノズル52、ポンプ53及びノズル駆動部54を備えた送液部5によって、反応容器3の収容部31内に検体を排出して注入したり、収容部31内から液体を吸引して除去することができる。本実施形態では、
図2に示すように、送液部5を構成する各部をユニット化し、サンプラユニット5Uとして取り扱えるように構成している。なお、
図2ではポンプ53等を省略している。
【0035】
そして、本実施形態に係る温調システムXは、
図1及び
図2に示すように、ピペットチップ51を加温するピペットチップ温調部7と、反応容器3を加温する反応容器温調部8とを備えている。
【0036】
反応容器温調部8は、ステージ4を加温するステージ温調用ヒータ81を用いて構成している。ステージ温調用ヒータ81によってステージ4を加温することにより、ステージ4上に配置されている反応容器3を加温することができる。本実施形態では、ステージ温調用ヒータ81によって加温されるステージ4の温度を適宜のセンサで検知可能に構成している。
【0037】
ピペットチップ温調部7は、所定の加温位置に位置付けられたピペットノズル52のうち少なくともピペットチップ51の先端部分を熱源72から放出される温風によって集中的(集約的)に加温するものである。本実施形態にかかるピペットチップ温調部7は、
図1〜
図3に示すように、少なくともピペットチップ51の先端部分を収容可能な筐体71と、筐体71の内部に配置した熱源72と、熱源72から放出される温風を所定方向に送るファン73とを備え、筐体71の内部空間を熱源72から放出される温風によって加温するものである。筐体71は、箱状をなし、内部空間を外部から仕切る外壁のうち上壁711及び下壁712に、ピペットチップ51の昇降移動を許容する開口部を形成している。本実施形態のピペットチップ温調部7では、開口部として、ピペットチップ51が挿通可能な挿通孔(上側挿通孔713、下側挿通孔714)を適用している。本実施形態では、筐体71を、上方が大きく開口した有底の筐体本体715と、筐体本体715の上方開口部を閉鎖する位置に配置した天板716とを用いて構成している。筐体71の上側挿通孔713は、天板716に形成した丸孔であり、筐体71の下側挿通孔714は、筐体本体715の底部に形成した丸孔である。これら上側挿通孔713及び下側挿通孔714は鉛直方向(ピペットノズル52の昇降移動方向)に対向する位置関係にある。
【0038】
そして、ピペットチップ温調部7は、上側挿通孔713及び下側挿通孔714を通じて筐体71の内部空間に挿入されたピペットチップ51に対して、熱源72から放出される温風を当てることで、ピペットチップ51を加温することができる。なお、筐体71の内部には、筐体71内の温度を検知可能なセンサ717(例えばサーミスタ)や放熱フィン718を配置している(
図3参照)。温度ヒューズを搭載した放熱フィン718は、安全装置として機能する。また、ファン73は、筐体71の内部空間に配置することもできるが、本実施形態では、ファン73を筐体71の外部であって、且つ筐体71の外壁(図示例では側壁)に形成したファン用開口部719に臨む位置に固定し、熱源72から放出される温風をファン73によって所定方向に送ることができるように設定している。筐体71の内部に配置する部品を最小限に留めることで、筐体71の内部空間の狭小化を図り、温風によって筐体71の内部空間を予め設定されている所定の目標温度に昇温・保温する処理を効率良く行うことができる。
【0039】
ピペットチップ温調部7は、筐体71にブラケット74を固定した状態でユニット化されている。そして、ブラケット74をサンプラユニット5Uに取り付けることで、ピペットチップ温調部7をサンプラユニット5Uに固定することができる(
図2参照)。
【0040】
本実施形態では、反応容器3の近傍にピペットチップ温調部7を配置している。具体的には、
図4に示すように、ピペットチップ温調部7の下端(筐体71の底)から反応容器3の上面までの離間距離(同図において「L」で示す距離)を、例えば5mm程度に設定している。
【0041】
このようなレイアウトを採用したことによって、
図4に示すように、反応容器3が、筐体71の挿通孔(特に下側挿通孔714)を通じて筐体71の内部から外部に放出される温風に晒されることになる。同図では、ピペットチップ温調部7の熱源72から発生する温風の流れを相対的に太い矢印で模式的に示している。
【0042】
制御部6は、例えば、演算装置、制御装置、記憶装置、入力装置及び出力装置等を含む公知のコンピュータやマイコンなどによって構成され、送液部5、ピペットチップ温調部7、反応容器温調部8を含む分析装置1の各部の作動を所定のプログラムに従って制御するものである。制御部6は、ピペットチップ温調部7を構成する筐体71内の温度をセンサ717から取得するピペットチップ温度取得部61と、反応容器2の温度を図示しないセンサから取得する反応容器温度取得部62とを備えている。本実施形態では、ステージ4の温度を取得することで反応容器2の温度を間接的に取得するように構成している。
【0043】
本実施形態に係る分析装置1の温調システムXは、分析装置1による被検出物質の検出処理の実行中、制御部6による反応容器温調部8及びピペットチップ温調部7の温調制御を実行する。制御部6は、適宜のタイミングでピペットチップ温度取得部61、反応容器温度取得部62による温度取得処理を行い、取得した温度に基づいて、ピペットチップ温調部7によるピペットチップ温調温度と、反応容器温調部8による反応容器温調目標温度(ステージ温調目標温度)を、予め設定されているピペットチップ温調目標温度、反応容器温調目標温度(ステージ温調目標温度)に近付けるように温調制御する。ピペットチップ温調温度と反応容器温調目標温度(ステージ温調目標温度)は、同じであってもよいが、異ならせてもよい。例えば、反応容器温調目標温度(ステージ温調目標温度)を、試薬の反応温度に応じて設定したり、ピペットチップ温調目標温度を、所定温度の液体をピペットチップが吸排する時、温度が下がらない効果を期待でき、且つ、試薬への悪影響やピペットチップ自身の熱変形を回避可能な温度に設定することができる。
【0044】
本実施形態の温調システムXは、
図2及び
図4に示すように、ピペットノズル52を所定の加温位置に位置付けた状態で、少なくともピペットチップ51の先端部分が筐体71の内部に収容されるように構成されている。具体的には、ピペットノズル52を加温位置に位置付けた状態では、ピペットチップ51の先端511が筐体71の下側挿通孔714内に位置付けられ、ピペットチップ51のうち先端から所定寸法分までの領域(先端部分)が筐体71の内部に配置されるように設定している。本実施形態では、ピペットノズル52の原点位置を「加温位置」に設定している。したがって、ピペットノズル52を原点位置で待機させることによって、筐体71の内部でピペットチップ51の先端部分を加温することができる。
【0045】
また、本実施形態では、ピペットノズル52を加温位置に位置付けた状態で、ピペットチップ51の先端511と下側挿通孔714の間には所定の隙間が形成され、ピペットチップ51と上側挿通孔713の間にも所定の隙間が形成され、ピペットチップ51が筐体71に接触しないように設定している。このようなピペットチップ51と挿通孔(上側挿通孔713、下側挿通孔714)との隙間から、筐体71内の温風が筐体71の外部に噴き出し、筐体71の周辺温度を、筐体71の内部温度と同程度に保つことができる(
図4参照)。
【0046】
そして、ピペットチップ51内に検査カートリッジ2の液体を吸入する際には、制御部6によってノズル駆動部54を駆動させてピペットノズル52を加温位置から降下させる。この時点までに、制御部6によってステージ駆動部(図示省略)を駆動させて、吸入対象の液体が収容されている収容槽21がピペットノズル52の直下となる位置にステージ4を移動させておく。ピペットノズル52を加温位置から所定距離降下させて停止させた状態で、制御部6によってポンプ53を駆動させてピペットノズル52の先端、つまりピペットチップ51の先端511から吸入対象の液体を吸引する。ここで、ステージ4は、反応容器温調部8であるステージ温調用ヒータ81で加温されるため、ステージ4上において検査カートリッジ2内に収容されている吸入対象の液体も加温される。
【0047】
ピペットチップ51内に吸入された液体は、ピペットチップ51の先端部分で保持される。この状態で、制御部6によってノズル駆動部54を駆動させてピペットノズル52を加温位置に戻す。ピペットノズル52を加温位置から降下させた時点から加温位置に戻すまでの間、ピペットチップ51の先端部分は、ピペットチップ温調部7の筐体71から抜け出した状態であるため、筐体71の外部周辺温度に影響されて温度低下する。
【0048】
しかしながら、本実施形態に係る温調システムXは、ピペットチップ51と挿通孔(上側挿通孔713、下側挿通孔714)との隙間から筐体71の外部に噴き出す筐体71内の温風によって、筐体71の周辺温度を筐体71の内部温度と同程度に保つことで、ピペットノズル52を加温位置から降下させた時点から加温位置に戻すまでの間にピペットチップ51の先端部分が温度低下する程度を低減することができる。
【0049】
そして、ピペットノズル52を加温位置に戻すと、ピペットチップ51の先端部分が筐体71内に配置され、ピペットチップ温調部7によって加温され、ピペットチップ51内の液体も加温される。特に、ピペットノズル52を加温位置に戻した状態で、ピペットチップ51内に保持された液体の表面(液面)がピペットチップ温調部7の筐体71の上壁711(上側挿通孔713)よりも低位であれば、ピペットチップ51内の液体の全量が筐体71内の加温空間に存在することになり、液体を効率良く加温することができる。
【0050】
本実施形態では、ピペットノズル52を加温位置に戻すと同時に、またはピペットノズル52を加温位置に戻した後に、制御部6によってステージ駆動部を駆動させて、ピペットチップ51内に保持している液体の吐出先、具体的には検査カートリッジ2の槽21または反応容器3の収容部31がピペットノズル52の直下となる位置にステージ4を移動させる。そして、
図5に示すように、ピペットノズル52を加温位置から所定距離降下させて停止させた状態で、制御部6によってポンプ53を駆動させてピペットノズル52の先端、つまりピペットチップ51の先端511からピペットチップ51内の液体を吐出先に向かって吐出する。吐出時の液体の温度(吐出液温度)は、ピペットチップ温調部7の設定目標温度に近い温度である。これは、液体吐出処理の直前までピペットチップ温調部7の筐体71内でピペットチップ51及び液体が加温されていたことや、ピペットチップ51の先端部分が筐体71から抜け出した状態でもピペットチップ51の余熱でピペットチップ51内の液体が加温されていること、さらには、ピペットチップ51と挿通孔(上側挿通孔713、下側挿通孔714)との隙間から筐体71の外部に噴き出す温風によって筐体71の周辺温度が筐体71内部と近い温度に保たれていること、これらの条件を全てまたは1つでも満たすことで、吐出液温度を目標とする反応に適した温度(反応目標温度)付近にコントロールしていることを意味する。
【0051】
本実施形態に係る温調システムXは、反応容器温調部8であるステージ温調用ヒータ81でステージ4を加温しているため、ステージ4上において検査カートリッジ2の各槽21及び反応容器3の収容部31も加温されている。
【0052】
したがって、ピペットチップ温調部7によって温調されたピペットチップ51内の液体を、反応容器温調部8(ステージ温調用ヒータ81)によって温調された反応容器3の収容部31に向かって吐出した場合には、分析装置1の使用環境温度が10℃〜30℃であっても、反応容器3の収容部31における反応を、使用環境温度の影響を受けずに行うことができ、安定した反応結果を得ることができる。
【0053】
このように、本実施形態に係る温調システムXによれば、ピペットノズル52を加温位置に位置付けた状態で、少なくともピペットチップ51の先端部分を熱源72から放出される温風で集中的(集約的)に加温して、少なくともピペットチップの先端部分を目標とする温度付近まで加温することができる。具体的には、ピペットノズル52を加温位置に位置付けた状態で、少なくともピペットチップ51の先端部分がピペットチップ温調部7の筐体71内部に収容されることにより、筐体71内の温風でピペットチップ51を目標とする温度付近まで加温することができる。そして、本実施形態に係る温調システムXでは、ピペットノズル52を加温位置から直下に降下させた場合に、少なくともピペットチップ51の先端部分が挿通孔(下側挿通孔714)を通じて筐体71の外部に位置付けられるように構成しているため、ピペットノズル52を加温位置から降下させた状態で、ピペットチップ51の先端511から試薬類などの液体を吸引すると、加温されたピペットチップ51内に吸引された試薬類などの液体も加温されることになる。また、ピペットチップ51内に液体を吸入して保持した状態で、ピペットノズル52を加温位置に位置付けることで、ピペットチップ51を再び加温することができ、ピペットチップ51内の液体も加温される。
【0054】
このような本実施形態に係る温調システムXによれば、ピペットノズル52を加温位置から降下させることで、ピペットチップ51の先端が反応容器3に到達可能に構成し、挿通孔(下側挿通孔714)を通じて筐体71の外部に位置付けられるピペットチップ51の先端511から、ピペットチップ51内で加温された試薬類などの液体を、反応容器温調部8によって加温された反応容器3に吐出することで、反応容器3における反応効率の安定化を図ることができる。すなわち、本実施形態発明に係る温調システムXは、ピペットチップ51によって吸排される試薬類や検体等の液体と反応容器3の両方を、目標とする反応温度に近い温度に保つことが可能であり、目標の反応温度で試薬類と検体を反応させることができ、分析装置1による検出結果の精度を向上させるとともに反応効率を安定化させることができる。
【0055】
したがって、本実施形態に係る分析装置1の温調システムXによれば、反応容器3が搭載された1個の検査カートリッジ2に対して1本のピペットチップ51を使い回して検査を行う場合に、ピペットチップ51の先端511を通じた液体吸排処理、撹拌処理を行う回数が多くなっても、液体吸排処理、撹拌処理が終わる毎にピペットノズル52を加温位置に戻すことで、ピペットチップ51及びピペットチップ51内の液体を加温することができ、ピペットチップ51内の液体が使用環境温度の影響を受けて低下した状態で吸排処理、撹拌処理に供される事態を回避することができる。
【0056】
さらにまた、本実施形態に係る温調システムXは、加温機能が付与された専用のピペットノズルを用いることなく、分析現場で多用されている既知のピペットノズル52をそのまま使用することができ、汎用性及び実用性においても優れている。
【0057】
加えて、本実施形態に係る温調システムXは、加温位置を「ピペットノズル52の原点位置」に設定しているため、ピペットノズル52を原点位置に位置付けた状態で少なくともピペットチップ51の先端部分がピペットチップ温調部7の筐体71内部に収容される構成になり、ピペットチップ51の先端部分が筐体71内部に収容されるピペットノズル52の位置を「原点位置」とは異なる専用の位置に設定した構成と比較して、ピペットチップ51をピペットチップ温調部7によって加温するために必要なピペットノズル52の作動制御の単純化を図ることが可能である。
【0058】
特に、本実施形態に係る分析装置1の温調システムXでは、反応容器3をピペットチップ温調部7の近傍に配置しているため、筐体71の挿通孔713,714を通じて筐体71の外部に噴き出す温風で反応容器3周辺の雰囲気温度を筐体71内の温度と同程度に保つことができる。その結果、ピペットノズル52を加温位置から降下させた状態においても、ピペットチップ51は、温風で加温された雰囲気下に配置されることになり、使用環境温度の影響を受け難くなる。また、本実施形態では、ピペットチップ51の昇降移動を許容する条件を満たすように筐体71に形成される開口部として、ピペットチップ51が挿通可能(挿抜可能)な挿通孔713,714を適用しているため、筐体71内の加温効率が高く、加温に要するエネルギー消費量を低減することができる。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る温調システムXを分析装置に適用することで、試薬と試料を反応させてから試料の分析を行う場合に、分析毎の反応温度を一定化することができ、分析精度を向上させることができる。
【0060】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、少なくともピペットチップの先端部分を収容可能な筐体の内部空間を熱源から放出される温風によって加温するピペットチップ温調部を備えた温調システムにおいて、筐体の内部空間、特にピペットチップの周囲における温度ムラを抑制すべく、熱源から放出される温風を、ピペットチップの周囲に満遍無く行き渡らせる温風調整手段を筐体内に設けることもできる。
【0061】
特に、
図6及び
図7に示すように、熱源72から放出される温風がピペットチップ51よりも優先して当たる遮風板75を筐体71内部に設け、温風が遮風板75を回り込んでピペットチップ51に到達するように構成したピペットピペットチップ温調部7であれば、熱源72から放出される温風がピペットチップ51にダイレクトに当たるように構成されたピペットチップ温調部と比較して、温風の流れがピペットチップ51に向かう直線上に集中することがなく、筐体71の内部空間、特にピペットチップ51の周囲における温度ムラの発生を効果的に抑制することができる。
図6は本変形例のピペットピペットチップ温調部7を
図3に対応して示す図であり、
図7は
図6のピペットチップ温調部7の平面図である。
図6及び
図7では、遮風板72を相対的に太い線で示し且つ所定のパターンを付している。また、
図7では、ピペットチップ51を模式的に示すとともに、上壁711(天板716)を想像線(二点鎖線)で示している。
【0062】
図6及び
図7に示すピペットチップ温調部7では、熱源72と開口部713,714の中心とを結ぶ仮想直線上に遮風板75を配置し、開口部713,714の中心部に位置付けられるピペットチップ51に到達する温風は、遮風板75を回り込んで流れる温風となるように構成している。遮風板75の好適な例としては、
図6及び
図7に示すように、開口部714の開口径と同一又はほぼ同一寸法の内径を有する平面視部分円弧状(半円弧状)のプレート材を挙げることができる。遮風板75は、筐体71内部の高さ寸法よりもわずかに小さい高さ寸法を有するものがよい。遮風板75は、ピペットチップ51の周囲において、ピペットチップ51のうち熱源72に臨む領域を熱源72側から被覆する姿勢で配置されている。
【0063】
このような遮風板75を用いた温風調整手段により、熱源72から直線的にピペットチップ51に向かう温風が、ピペットチップ51に当たるよりも先に遮風板75に当たり、遮風板75にガイドされて、遮風板75を周り込む流れになり、ピペットチップ51の周囲に温風を満遍無く行き渡らせることができ、筐体71の内部空間、特にピペットチップの周囲における温度ムラを低減することが可能である。そして、このような構成を採用することで、熱源72から放出された温風が直線的にピペットチップ51に向かってダイレクトに当たる構成と比較して、放熱板718(放熱フィン)やセンサ(温度制御用サーミスタ717)の位置関係による温度個体差が生じ難く、ピペットチップ温調部7の温度制御の安定化を図ることが可能である。なお、センサ717は、熱源71、遮風板75、ピペットチップ51の順で辿る温風の流れに対して、遮風板75を周り込んでピペットチップ51に向かう温風の温度を計測可能な位置、つまり、熱源71と遮風板75の間ではなく、遮風板75とピペットチップ51の間に配置することが好ましい(
図7参照)。
【0064】
遮風板は、熱源からピペットチップに向かう温風がピペットチップよりも先に当たるという条件、及び当たった温風をピペットチップの周囲に満遍無く流通させる(分散させる)という条件を満たすものであればよく、形状や数は特に限定されず、数適変更・選択することができる。
【0065】
また、熱源から放出される温風の流れがピペットチップの周囲に満遍無く行き渡るように温風の流れを方向付けるファンを用いて温風調整手段を構成することもできる。また、温風調整手段の有無を問わず、ピペットチップに対して多方向から温風が当たるように、熱源を複数箇所に配置したピペットチップ温調部としてもよい。なお、加温に要するエネルギー消費量の低減化及び構造の簡素化という点では、単一の熱源を用いることが好ましい。
【0066】
また、ピペットチップ温調部の熱源としては、赤外線ヒータ、タングステンランプ、面状ヒータ、あるいはニクロム線シーズヒータ等を適用することができる。
【0067】
また、反応容器温調部は、少なくとも反応容器を温調可能なものであればよく、試薬類が収容された検査カートリッジに収容された試薬類を加温する機能がないものであってもよい。一例として、検査カートリッジの設置領域と反応容器の設置領域が明確に区別できる場合に、反応容器の設置領域のみを加温する反応容器温調部を挙げることができる。
【0068】
ピペットチップ温調部として、筐体の高さ位置を調整可能に構成したものを適用してもよい。この場合、ピペットノズルを加温位置に位置付けた状態でのピペットチップの高さ位置や、反応容器あるいは検査カートリッジの高さ位置に応じて、筐体の高さ位置を調整することができる。
【0069】
また、筐体の内部空間のサイズを、ピペットチップのサイズや温調効率を考慮して変更しても構わない。
【0070】
上述の実施形態では、ピペットノズルを高さ方向にのみ移動(昇降移動)可能に構成する一方、ステージを水平方向に移動可能に構成した態様を例示したが、移動不能なステージに対して、ピペットノズルを加温位置から水平方向にも移動可能に構成することもできる。この場合、ピペットチップ温調部をピペットノズルと同期して加温位置から水平移動可能に設定すれば、ピペットノズルの水平移動時にピペットチップがピペットチップ温調部に接触する事態を回避することができる。このような変形例を採用した場合であっても、「ピペットノズルを加温位置に位置付けた状態では、少なくともピペットチップの先端部分が筐体内部に収容され、ピペットノズルを加温位置から降下させた場合に、少なくともピペットチップの先端部分が挿通孔を通じて筐体の外部に位置付けられる」という条件は満たされる。また、この変形例は、「ピペットノズルを加温位置に位置付けた状態、及びピペットノズルを加温位置から水平移動させた状態では、少なくともピペットチップの先端部分が筐体内部に収容され、ピペットノズルを加温位置から降下させた場合、及びピペットノズルを加温位置から水平移動させた位置から降下させた場合に、少なくともピペットチップの先端部分が挿通孔を通じて筐体の外部に位置付けられる」構成になる。
【0071】
また、ピペットチップ温調部の変形例として、単一のパーツで構成した筐体を適用した態様や、複数本のピペットチップを同時または時間差で加温可能に構成した態様を挙げることができる。
【0072】
本発明におけるピペットチップ温調部は、所定の加温位置に位置付けられたピペットノズルのうち少なくともピペットチップの先端部分を集中的(集約的)に加温するものであればよく、
図8以降の各図に示すようなピペットチップ温調部を適用することが可能である。
【0073】
例えば、筐体に形成され且つピペットチップの昇降移動を許容する開口部として、高さ方向のみならず、前方、後方または側方の少なくとも一方向に開口した形状のものを適用することができる。
図8及び
図9に示すピペットチップ温調部7は、高さ方向及び側方に開口した開口部713Aを筐体71に形成したものである。
図8及び
図9において、上述のピペットチップ温調部7に対応する部分やパーツには同じ符号を付している。
【0074】
また、ピペットチップ温調部として、内部空間が高さ方向に開口した筒状の筐体を備えたものであってもよい。その一例を
図10に示す。同図に示すピペットチップ温調部7は、加温位置に位置付けたピペットノズルのうち少なくともピペットチップ51の先端部分を筒状の筐体71内に収容し、図示しない熱源から放出される温風によって少なくともピペットチップ51の先端部分を集中的に加温することが可能である。
図10に示す構成であれば、ピペットチップ温調部7の近傍に配置した反応容器3は、筐体71の高さ方向に開口した開口部713Bを通じて筐体71の内部から外部に放出される温風に晒されることになる。
【0075】
また、ピペットチップ温調部として、所定の加温位置に位置付けられたピペットノズルのうち少なくともピペットチップの先端部分の近傍に配置される筐体を備え、筐体内から筐体外に放出される温風によって、少なくともピペットチップの先端部分を集中的に加温するものを適用してもよい。
【0076】
図11に示すピペットチップ温調部7は、所定の加温位置に位置付けられたピペットノズルのうち少なくともピペットチップ51の先端部分の近傍、具体的には、ピペットチップ51の先端部分の側方に配置される筐体71を備え、筐体71内に設けた図示しない熱源から放出される温風によって、少なくともピペットチップ51の先端部分をピンポイントで加温するものである。
【0077】
また、
図12に示すピペットチップ温調部7は、所定の加温位置に位置付けられたピペットノズルのうち少なくともピペットチップ51の先端部分の側方及び反応容器3(図示例ではステージ4)の側方に配置される筐体71を備え、筐体71内に設けた図示しない熱源から放出される温風によって、少なくともピペットチップ51の先端部分及び反応容器3(図示例ではステージ4)を集中的に加温するものである。なお、
図12に示すピペットチップ温調部7は、
図9に示すピペットチップ温調部7の筐体71よりも高さ寸法が大きい筐体71を備えたものである。
【0078】
また、
図13に示すピペットチップ温調部7は、所定の加温位置に位置付けられたピペットノズルのうち少なくともピペットチップ51の先端部分の斜め上方に配置される筐体71を備え、筐体71内に設けた図示しない熱源から放出される温風を、少なくともピペットチップ51の先端部分の斜め上方から吹き付けて、ピペットチップ51の先端部分を集中的に加温するものである。
【0079】
また、図示しないものの、ピペットチップ温調部として、所定の加温位置に位置付けられたピペットノズルのうち少なくともピペットチップの先端部分の斜め下方に配置される筐体を備え、筐体内に設けた図示しない熱源から放出される温風を、少なくともピペットチップの先端部分を斜め下方から吹き付けて加温するものを適用してもよい。
【0080】
上述した何れのピペット温調部も、筐体内に設けた熱源から放出される温風の流れを、筐体の外面に固定したファン(図中の符号73)によってピペットチップの先端部分に向かうように設定した構成である。本発明では、ファンを筐体内に設けたピペットチップ温調部を採用することもできる。また、筐体内に設けた熱源から放出される温風が、ファンに依らずともピペットチップの先端部分に向かう流れになる場合には、ファンを省くことができる。
【0081】
さらにまた、ピペットチップ温調部として、筐体を備えず、熱源から放出される温風が少なくともピペットチップの先端部分に当たるように構成されたものを適用してもよい。この場合、ファンによって温風を少なくともピペットチップの先端部分に吹き付けるようにしてもよいし、ファンに依ることなく、温風の雰囲気下に少なくともピペットチップの先端部分を晒すことで、少なくともピペットチップの先端部分を加温する構成であってもよい。
【0082】
また、ピペットチップ温調部が、ピペットノズルの先端部分を、熱源から放出される温風によって複数方向(例えば、水平方向と斜め方向)から集中的に加温するものであっても構わない。上述のとおり、ピペットチップ温調部の熱源は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0083】
本発明では、ピペットノズルの「所定の加温位置」をピペットノズルの原点位置以外の任意の位置に設定することも可能である。
【0084】
本発明における反応容器は、液体流路を有するものであってもよいし、共通の基板上にウェルをマトリックス状に複数配置したマイクロプレートであってもよい。これらの場合、ピペットチップを通じた液体吸排処理や撹拌処理は、液体流路またはウェルで行われる。
【0085】
本発明に係る温調システムを、分析装置以外の適宜の装置、例えば分注装置等に適用することも可能である。
【0086】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。