特許第6758228号(P6758228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758228
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】脱穀装置
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/22 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   A01F12/22 A
   A01F12/22 B
   A01F12/22 Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-49713(P2017-49713)
(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-148868(P2018-148868A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】北原 貴志
(72)【発明者】
【氏名】山下 直樹
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−035015(JP,A)
【文献】 特開2012−165701(JP,A)
【文献】 特開2016−178901(JP,A)
【文献】 特開2012−231681(JP,A)
【文献】 特開2013−110991(JP,A)
【文献】 特開2015−119667(JP,A)
【文献】 特開2008−167686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/18 − 12/28
12/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫されたトウモロコシ房状体が投入される扱室と、
前記扱室に回転可能に設けられた扱胴と、
前記扱胴の外周部に扱胴径方向外側に向けて突出する状態で設けられ、投入されたトウモロコシ房状体を扱き処理する扱歯と、
前記扱胴の外周囲に設けられた受網と、が備えられ、
前記扱歯は、前記受網上に位置しているトウモコロシ房状体の外周部のうち、前記トウモロコシ房状体の長手方向と直交する方向での房断面における頂部から、前記扱胴の回転方向とは反対側に前記房断面の中心回りに60度、離れた箇所までの範囲に相当する部分に接触作用するように構成されている脱穀装置。
【請求項2】
前記扱歯の先端部の回動軌跡が、前記房断面の中心よりも扱胴中心側を通過するように、前記扱歯の扱胴径方向における長さを設定してある請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記扱歯は、前記扱胴の外周部から扱胴径方向外側に向けて突出する棒状であると共に前記扱胴の回転方向に対する後退角を有しており、
前記後退角は、35度〜55度である請求項1又は2に記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記扱胴の軸芯の方向に沿う姿勢で且つ前記扱胴の周方向に間隔を隔てて並ぶ状態で複数の棒状支持部材が備えられ、
前記各棒状支持部材に前記扱歯が複数、前記軸芯に沿う方向に間隔を空けて並ぶ状態で支持されており、
前記扱歯の前記間隔は、トウモロコシ房状体の長さとほぼ同じに設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記扱胴の周方向に隣り合う前記棒状支持部材のうちの一方の棒状支持部材における前記扱歯の回動軌跡と他方の棒状支持部材における前記扱歯の回動軌跡とが前記扱胴の軸芯の方向に位置ずれしている請求項4に記載の脱穀装置。
【請求項6】
前記受網に、前記扱胴の軸芯の方向に沿う姿勢で且つ前記扱胴の周方向に間隔を隔てて並ぶ複数の縦横桟部材と、前記扱胴の周方向に沿う姿勢で且つ前記扱胴の軸芯の方向に間隔を隔てて並ぶ複数の横桟部材と、が備えられ、
前記複数の縦桟部材が前記複数の横桟材から扱胴側に突出している請求項1〜5のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トウモロコシ用の脱穀装置として、収穫されたトウモロコシ房状体が投入される扱室と、扱室に回転可能に設けられた扱胴と、が備えられている。扱胴の外周部に扱胴径方向外側に向けて突出する状態で設けられ、投入されたトウモロコシ房状体を扱き処理する扱歯と、扱胴の外周囲に設けられた受網と、が備えられたものがある。
【0003】
また、トウモロコシ用の脱穀装置としては、例えば、特許文献1に示されるものがある。特許文献1に示される脱稿装置では、脱穀処理物がフィーダによって供給口から扱室に投入される。扱室には、扱胴と受網とが備えられている。扱胴には、径方向外方に向けて突出する複数の扱歯が、扱き処理部の周方向と前後方向とに間隔を隔てて並ぶように配備されている。扱胴は、トウモロコシを対象物とするよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−35015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した脱穀装置では、トウモロコシ房状体(トウモロコシの種子粒が棒状に連なって房状になっているもの)が扱歯と受網とによって扱き処理されるが、トウモロコシ房状体が扱歯による押圧のために受網に強く擦れると、種子粒が潰れるなど損傷し易い。
【0006】
本発明は、トウモロコシ房状体が損傷し難い脱穀装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による脱穀装置は、
収穫されたトウモロコシ房状体が投入される扱室と、
前記扱室に回転可能に設けられた扱胴と、
前記扱胴の外周部に扱胴径方向外側に向けて突出する状態で設けられ、投入されたトウモロコシ房状体を扱き処理する扱歯と、
前記扱胴の外周囲に設けられた受網と、が備えられ、
前記扱歯は、前記受網上に位置しているトウモコロシ房状体の外周部のうち、前記トウモロコシ房状体の長手方向と直交する方向での房断面における頂部から、前記扱胴の回転方向とは反対側に前記房断面の中心回りに60度、離れた箇所までの範囲に相当する部分に接触作用するように構成されている。
【0008】
本構成によると、トウモロコシ房状体の外周部のうち、房断面の中心に対して受網側とは反対側に位置する部分において、トウモロコシ房状体が扱歯によって扱胴回転方向下手側に向けて押し操作されるので、トウモロコシ房状体が受網上を転動し易くなり、トウモロコシ房状体と受網との強い擦れあいが生じ難くて種子粒が潰れるなどの損傷を防止し易い。
【0009】
本発明においては、前記扱歯の先端部の回動軌跡が、前記房断面の中心よりも扱胴中心側を通過するように、前記扱歯の扱胴径方向における長さを設定してあると好適である。
【0010】
本構成によると、トウモロコシ房状体が受網から若干浮き上がっても、トウモロコシ房状体の外周部のうちの房断面の中心に対して受網側とは反対側の部位において、トウモロコシ房状体が扱歯によって押し操作されるので、トウモロコシ房状体が受網上を転動し易く、トウモロコシ房状体と受網との強い擦れあいを回避し易い。
【0011】
本発明においては、前記扱歯は、前記扱胴の外周部から扱胴径方向外側に向けて突出する棒状であると共に前記扱胴の回転方向に対する後退角を有しており、前記後退角は、335度〜55度であると好適である。
【0012】
本構成によれば、トウモロコシ房状体が扱歯によって扱胴回転方向下手側に向けて押し操作されるのみならず、扱歯がトウモロコシ房状体の上を覆う状態になり、トウモロコシ房状体を受網から浮き上がり難くできる。
【0013】
本発明においては、前記扱胴の軸芯の方向に沿う姿勢で且つ前記扱胴の周方向に間隔を隔てて並ぶ状態で複数の棒状支持部材が備えられ、前記各棒状支持部材に前記扱歯が複数、前記軸芯に沿う方向に間隔を空けて並ぶ状態で支持されており、前記扱歯の前記間隔は、トウモロコシ房状体の長さとほぼ同じに設定されていると好適である。
【0014】
本構成によれば、扱胴軸芯の方向に並ぶ扱歯どうしの間をトウモロコシ房状体が通るとき、トウモロコシ房状体の長手方向が扱胴軸芯の方向に沿う姿勢又はこれに近い姿勢で通ることができるので、トウモコシ房状体の受網上での姿勢を長手方向が扱胴軸芯の方向に沿う姿勢、すなわち受網上を扱胴回転方向に転動し易い姿勢に姿勢調整されるようにできる。また、トウモロコシ房状体が扱歯どうしの間をすり抜け易いので、トウモロコシ房状体が扱歯によって叩かれ過ぎないようにできる。
【0015】
本発明においては、前記扱胴の周方向に隣り合う前記棒状支持部材のうちの一方の棒状支持部材における前記扱歯の回動軌跡と他方の棒状支持部材における前記扱歯の回動軌跡とが前記扱胴の軸芯の方向に位置ずれしていると好適である。
【0016】
本構成によると、トウモロコシ房状体が扱胴軸芯の方向に並ぶ扱歯どうしの間を通ることによって、トウモロコシ房状体が受網上を扱胴回転方向に転動し易い姿勢に姿勢調整されるのみならず、姿勢調整されたトウモロコシ房状体の長手方向での中間部に次の扱歯が押圧作用するので、トウモロコシ房状体を転動させ易い。
【0017】
本発明においては、前記受網に、前記扱胴の軸芯の方向に沿う姿勢で且つ前記扱胴の周方向に間隔を隔てて並ぶ複数の縦横桟部材と、前記扱胴の周方向に沿う姿勢で且つ前記扱胴の軸芯の方向に間隔を隔てて並ぶ複数の横桟部材と、が備えられ、前記複数の縦桟部材が前記複数の横桟材から扱胴側に突出していると好適である。
【0018】
本構成によると、縦桟部材と横桟部材との間に、縦桟部材が横桟部材より扱胴側に突出した段差が形成され、トウモロコシ房状体の外周部のうち、房断面の中心に対して扱歯が接触する部分の側と反対側の部分が段差のために縦桟部材に係合し、トウモロコシ房状体が縦桟部材によって移動抵抗を受けつつ、房断面の中心に対して移動抵抗を受ける部位とは反対側の部位が扱歯によって押し操作されるので、トウモロコシ房状体が受網上を転動し易い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】トウモロコシ収穫機の全体を示す左側面図である。
図2】脱穀装置の縦断側面図である。
図3】脱穀装置の縦断正面図である。
図4】扱歯の構成、及び、扱歯とトウモロコシ房状体との関係を示す説明図である。
図5】揺動選別装置の前部を示す縦断側面図である。
図6】第1の調整部材を取り付けた状態の脱穀装置を示す概略平面図である。
図7】第2の調整部材を取り付けた状態の脱穀装置を示す概略平面図である。
図8図6のVIII−VIII断面矢視図である。
図9図7のIX−IX断面矢視図である。
図10図7のX−X断面矢視図である。
図11】トウモロコシ房状体を示す説明図である。
図12】別の実施構造を備えた調整部材を示す縦断面図である。
図13】さらに別の実施構造を備えた調整部材を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、トウモロコシ収穫機の全体を示す左側面図である。図1に示す[F]の方向が走行車体1の前方向、[B]の方向が走行車体1の後方向、紙面表側の方向が走行車体1の左横方向、紙面裏側の方向が走行車体1の右横方向と定義する。
【0021】
〔トウモロコシ収穫機の全体の構成〕
図1に示すように、トウモロコシ収穫機は、左右一対の前車輪2が装備され、左右一対の後車輪3が操向可能に装備された走行車体1を備えている。走行車体1の前部に運転部4が形成されている。車体フレーム5の前部から収穫搬送部6が車体前方向きに延出されている。収穫搬送部6には、搬送装置7と収穫部8とが備えられている。搬送装置7の後部が車体フレーム5に枢支されている。搬送装置7は、左右の前車輪2の間を通って走行車体1の前後方向に延びている。収穫部8は、搬送装置7の前部に連結されている。搬送装置7の前端側と車体フレーム5とに昇降シリンダ9が連結されている。搬送装置7を昇降シリンダ9によって車体横方向に延びる枢支軸芯Pを揺動支点にして上下に揺動操作することにより、収穫部8を下降作業姿勢と上昇非作業姿勢とにわたって昇降操作できる。車体フレーム5の後部に脱穀装置10及び穀粒タンク11が設けられている。穀粒タンク11は、車体右横側の端部で車体フレーム5に枢支され、脱穀装置10の上方に下降揺動した下降貯留姿勢と、左横端側ほど高くなる傾斜姿勢に上昇揺動した上昇排出姿勢とに姿勢変更可能になっている。
【0022】
収穫部8を下降作業姿勢にして走行車体1を走行させることにより、トウモロコシの収穫作業をできる。収穫部8において、トウモロコシの木が左右一対の収穫ロール8aの間に導入され、収穫ロール8aによってトウモロコシ房状体15(図11参照)がトウモロコシの木から引き千切られて、トウモロコシ房状体15の収穫が行われる。トウモロコシ房状体15は、種子粒が棒状に連なって房状になり、かつ、包葉によって覆われているものである。収穫されたトウモロコシ房状体15が搬送装置7によって脱穀装置10に搬送されて供給される。脱穀装置10において、トウモロコシ房状体15から種子粒を脱粒させる扱き処理が行われる。脱粒した種子粒が脱穀装置10から揚穀装置12によって穀粒タンク11に供給されて貯留される。穀粒タンク11を上昇排出姿勢に上昇操作することにより、穀粒タンク11に貯留されている種子粒が走行車体1の右横側方へ落下して排出される。
【0023】
〔脱穀装置10の構成〕
図2に示すように、脱穀装置10は、脱穀機体13を備えている。脱穀機体13の上部に、トウモロコシ房状体15を扱き処理する脱穀部20が形成されている。脱穀機体13の下部に、脱穀部20によって得られた種子粒を脱穀排出物と選別する選別部40が形成されている。脱穀機体13の後部に、脱穀部20及び選別部40からの脱穀排出物を細断処理する細断装置Sが装備されている。
【0024】
〔脱穀部20の構成〕
図2,3に示すように、脱穀部20は、扱室21を備えている。扱室21は、前壁22、後壁23、天板24及び受網25によって形成されている。扱室21の前部に入口21aが設けられ、扱室21の後部に出口21bが設けられている。扱室21に、扱胴26が設けられている。扱胴26は、回転支軸27を介して前壁22及び後壁23に支持されている。回転支軸27が駆動機構28によって駆動され、扱胴26が回転支軸27の軸芯Xを回転中心にして回転方向R(図3参照)に駆動される。受網25は、扱胴26の外周囲に設けられている。
【0025】
図2に示すように、扱胴26には、掻込み部30及び扱き処理部31が備えられている。掻込み部30は、扱胴26の前部に設けられている。扱き処理部31は、扱胴26の後部に設けられている。掻込み部30の後端部と扱き処理部31の前端部とが連結されている。
【0026】
図2,3に示すように、扱き処理部31は、6本の棒状支持部材32を備えている。6本の棒状支持部材32は、軸芯Xの方向に沿う姿勢で、扱胴26の周方向に間隔を空けて並んでいる。各棒状支持部材32の前端部は、掻込み部30の基台30aを介して回転支軸27に支持されている。各棒状支持部材32の後端部は、後支持部材33を介して回転支軸27に支持されている。各棒状支持部材32の前後方向での中間部における3箇所が中支持部材34を介して回転支軸27に支持されている。扱胴26の外周部としての棒状支持部材32に、複数の扱歯35が支持されている。複数の扱歯35は、軸芯Xの方向に間隔D1を空けて並んでいる。各扱歯35は、棒状支持部材32から扱胴26の径方向外側に向けて突出している。扱き処理部31が籠状に構成され、扱胴26は、いわゆるバー型扱胴に構成されている。本実施形態では、棒状の扱歯35を採用している。線材を折り曲げた扱歯、板部材で構成された扱歯など、具体的形状が各種異なる扱歯を採用可能である。本実施形態では、6本の棒状支持部材32を備えているが、5本以下や、7本以上の本数の棒状支持部材32を備えることが可能である。
【0027】
図4は、扱歯35の構成、及び、受網25上に位置するトウモロコシ房状体15と扱歯35との関係を示す説明図である。図4に示す房断面15Aは、トウモロコシ房状体15のうちの基端側の外径が大きい房部分15b(図11参照)における断面である。この断面は、トウモロコシ房状体15の長手方向と直交する方向での断面である。
【0028】
図4に示すように、扱歯35が受網上に位置するトウモロコシ房状体15に接触作用するとき、トウモロコシ房状体15の外周部のうち、房断面15Aにおける頂部15tから60度の離間角度aを離れた箇所15cまでの範囲15Sに相当する部分15Xに接触作用するよう構成してある。頂部15tから離間角度aを離れた箇所15cとは、頂部15tから、扱胴26の回転方向Rとは反対側、すなわち頂部15tに対して扱歯35が移動する側とは反対の側に房断面15Aの中心Y回りに離間角度aを離れた箇所である。トウモロコシ房状体15の外周部のうち、房断面の中心Yに対して受網側とは反対側に位置する部分15Xが扱歯35によって扱胴回転方向下手側に向けて押し操作され、トウモロコシ房状体15が受網上を転動し易くなる。
【0029】
扱歯35は、扱胴26の回転方向Rに対する45度の後退角bを有する取付姿勢で扱胴26に支持されている。扱歯35の扱胴26の外周部から扱胴径方向外側に向けて突出する長さLとして、扱歯35の先端部の回動軌跡T1が房断面15Aにおける中心Yよりも扱胴中心(軸芯X)の側を通過する長さが設定されている。扱歯35がトウモロコシ房状体15の上方を覆う状態になり、トウモロコシ房状体15の外周部のうち、房断面15Aの中心Yに対して受網側とは反対側に位置する部分15Xが扱歯35によって扱胴回転方向下手側に向けて押し操作されるので、トウモロコシ房状体15が受網25から浮き上がり難くい状態で受網25上を転動する。
【0030】
本実施形態では、45度の後退角bを採用しているが、35度〜55度の範囲の後退角を採用することによっても同様の作用、効果を得ることができる。
【0031】
図2に示すように、各棒状支持部材32における扱歯35の間隔D1は、トウモロコシ房状体15の長さ15L(図11参照)とほぼ同じに設定されている。本発明に係る長さ15Lとほぼ同じ間隔D1とは、長さ15Lに等しい間隔、長さ15Lより少し長い間隔、長さ15Lより少し短い間隔を含む。扱胴26の周方向に隣り合う棒状支持部材32のうちの一方の棒状支持部材32における扱歯35の回動軌跡T2と、扱胴26の周方向に隣り合う一対の棒状支持部材32の他方の棒状支持部材32の扱歯35の回動軌跡T2とが軸芯Xの方向に位置ずれしている。すなわち、棒状支持部材32の長手方向での扱歯35の取付け位置が異なる2種類の棒状支持部材32が扱胴35の周方向に交互に並んでいる。
【0032】
扱胴軸芯Xの方向に並ぶ扱歯35どうしの間をトウモロコシ房状体15が通るとき、トウモロコシ房状体15の長手方向が扱胴軸芯Xの方向に沿う姿勢又はこれに近い姿勢で通り、トウモロコシ房状体15の受網上での姿勢を長手方向が扱胴軸芯Xの方向に沿う姿勢に姿勢調整されるようにできる。姿勢調整されたトウモロコシ房状体15の長手方向での中間部に次の扱歯35が押圧作用し、トウモロコシ房状体15が受網上を転動し易い。
【0033】
図3に示すように、受網25は、扱胴26の周方向に2つの分割受網25Aに分割可能に構成されている。図2,3に示すように、各分割受網25Aには、扱胴26の周方向に沿う姿勢の複数の横桟部材36と、扱胴26の軸芯Xの方向に沿う姿勢の複数の縦桟部材37と、枠部材38とが備えられている。複数の縦桟部材37は、扱胴26の周方向に間隔を空けて並ぶ状態で備えられ、複数の横桟部材36は、扱胴26の軸芯Xの方向に間隔を空けて並ぶ状態で備えられている。各横桟部材36は、各縦桟部材37を挿通するよう構成され、各縦桟部材37の両端部、及び、各横桟部材36の両端部が枠部材38に連結され、各分割受網25Aは、格子受網に構成されている。
【0034】
図4に示すように、各縦桟部材37の扱室内方側の端部37aが各横桟部材36から扱胴側に突出する格子状に構成されている。縦桟部材37と横桟部材36との間に段差が形成され、トウモロコシ房状体15の外周部のうち、房断面15Aの中心Yに対して扱歯35が接触する部分とは反対側に位置する部分15dが縦桟部材37の端部37aに係合し、トウモロコシ房状体15が扱歯35によって押圧操作されるとき、端部37aによって移動抵抗を受けつつ押圧操作され、トウモロコシ房状体15が転動し易い。
【0035】
本実施形態では、縦桟部材37は、板厚方向が扱胴周方向となっている帯板材によって構成され、横桟部材36は、丸棒材によって構成されている。横桟部材としては、角棒材、筒部材、線材などを採用可能である。
【0036】
図2,3に示すように、天板24の内面側に複数の第1の調整部材61が取付けられている。複数の第1の調整部材61は、軸芯Xの方向に間隔を空けて並んでいる。図6に示すように、第1の調整部材61には、軸芯Xに直交する方向に対する傾斜角を送り角cとして備えられている。トウモロコシ房状体15が扱き処理部31の回転によって付与される回動力によって扱き処理部31の周方向に回動して第1の調整部材61に当たり、第1の調整部材61の送り角cによる案内作用によって、出口21bの側に向かって流動するように案内される。すなわち、トウモロコシ房状体15が扱胴26の回転、及び、第1の調整部材61の案内によって出口21bの側に送られる。出口21bの側へ送られるトウモロコシ房状体15の送り量が送り角cによって設定される設定量になるように第1の調整部材61によって調整される。
【0037】
脱穀部20においは、トウモロコシ房状体15が搬送装置7によって入口21aを介して扱室21の前部に投入される。投入されたトウモロコシ房状体15が掻込み部30の2重螺旋の螺旋羽根30bによって案内底板21cに沿わせて扱き処理部31に掻き込まれる。掻き込まれたトウモロコシ房状体15が扱き処理部31の回転、及び第1の調整部材61による案内によって出口21bの側へ送られつつ扱歯35と受網25とによって扱き処理される。かつ、トウモロコシ房状体15の出口21bの側への送り量が送り角cによる設定量になるように第1の調整部材61によって調整されつつ扱き処理される。トウモロコシ房状体15の外周部のうちの範囲15Sに相当する部分に扱歯35が接触作用してトウモロコシ房状体15が扱歯35によって扱胴回転方向下手側に向けて押し操作されるので、トウモロコシ房状体15が受網25上をスムーズに転動しつつ扱き処理される。
【0038】
扱き処理によってトウモロコシ房状体15から脱粒した種子粒が受網25の漏下穴を介して選別部40に落下する。扱き処理によってトウモロコシ房状体15から外れた包葉などの排出物が扱室21から出口21bを介して後方へ排出されて細断装置Sに入る。
【0039】
〔選別部40の構成〕
図2に示すように、選別部40には、揺動選別装置41、唐箕42、1番スクリューコンベヤ43、2番スクリューコンベヤ44が設けられている。
【0040】
揺動選別装置41は、駆動機構41cによって駆動され、前端側の支軸41aを揺動支点にして後端側が上下揺動する。受網25から落下した種子粒、包葉の破片などが揺動選別装置41によって受け止められ、揺動選別されつつ、かつ、唐箕42からの選別風によって風選別されつつ後方へ移送される。揺動選別装置41から落下した単粒化状態の種子粒が1番スクリューコンベヤ43によって回収されて脱穀装置10の外部に搬送される。揺動選別装置41から落下した未処理状態の処理物が2番スクリューコンベヤ44によって回収されて搬送される。
【0041】
図2に示すように、揺動選別装置41には、シーブケース41Kが備えられている。シーブケース41Kには、グレンパン45、後側グレンパン46、チャフシーブ47、グレンシーブ48、複数のストローラック49が備えられている。後側グレンパン46は、グレンパン45の後下方に設けられている。チャフシーブ47は、後側グレンパン46の真後に設けられている。
【0042】
シーブケース41Kが前後揺動すると、グレンパン45及び後側グレンパン46にて処理物の比重選別が行われる。比重選別が終わった処理物は、チャフシーブ47に搬送される。唐箕42からの選別風は、風路W1を通ってチャフシーブ47の前下方から吹き上げられる。
【0043】
グレンパン45と後側グレンパン46との間には、風路W2が形成されている。シーブケース41Kには、風路W2を閉塞可能な遮蔽部材52が、取り付け及び取り外し可能に備えられている。
【0044】
図5に示すように、グレンパン45の後端部に、取付部45aが備えられている。遮蔽部材52の上端部52bが取付部45aにボルト53によって固定される。遮蔽部材52における上端部52bの後側に、平板状の遮蔽部52aが備えられている。遮蔽部材52がグレンパン45に取り付けられた状態で、上端部52bは水平姿勢であり、遮蔽部52aは、上端部52bから後下がりの傾斜姿勢となる。遮蔽部52aは、取り付け状態において、グレンパン45の後端部と後側グレンパン46の上面とに亘り、かつ、左右方向でシーブケース41Kの左右の壁部41bに亘っている。遮蔽部52aの左右両端には、横側取付部52cが備えられている。左右の横側取付部52cは、左右の壁部41bに、夫々ボルト54によって固定される。
【0045】
遮蔽部材52が取付部45aと左右壁部41bとに固定されると、風路W2が閉塞され、選別風を堰き止めることができる。
【0046】
後側グレンパン46の上面は、山部46bと谷部46cとが繰り返される断面のこぎり刃の形状である。シーブケース41Kが前後揺動すると、後側グレンパン46の上面にある種子粒などの処理物は、谷部46cから後上方に押し上げられ、次の山部46bを越えて、さらに次の谷部46cへ移送される。この動作を繰り返しながら、処理物は比重選別されながら後方に搬送される。後側グレンパン46のうち、グレンパン45の後端部の略真下に位置する前端谷部46fは、他の谷部46cよりも深く形成されている。また、前端谷部46f以後の後側グレンパン46の断面形状は、同一の形状に形成されている。
【0047】
遮蔽部材52がグレンパン45に取付けられた状態で、前端谷部46fと次の山部46bとの間の傾斜面に、遮蔽部52aの下端が接して、新たな前端谷部46aが形成されている。新たな前端谷部46aと次の山部46bとに亘る前後間隔D2は、次の山部46b以降の山部46b同士の前後間隔D3と同じとなるように構成されている。また、遮蔽部52aは、山部46bから谷部46cに亘る傾斜面46eと平行となるように傾斜している。この構成により、遮蔽部52aと次の山部46bとに亘る断面形状が、他の山部46b同士の間の断面形状に近い形状になる。そして、シーブケース41Kが前後揺動すると、新たな前端谷部46aにある処理物に、他の山部46b及び谷部46cと同じような選別作用及び搬送作用を施すことができる。
【0048】
遮蔽部材52がない場合、グレンパン45から排出された種子粒が前端谷部46fに落下することがある。この場合、前端谷部46fの深さのために種子粒が選別風を受けないで前端谷部46fに滞留したままになる。遮蔽部材52を取付けた場合、グレンパン45から排出された種子粒が遮蔽部52aによって受け止められて、新たな前端谷部46aに落下する。すると、遮蔽部52aと、種子粒を後方に向けて送り出し操作する傾斜面46eとが平行であり、かつ、遮蔽部52aと山部46bとの間隔D2が山部46b同士の間隔D3と等しい又はほぼ等しいので、新たな前端谷部46aに位置した種子粒が新たな前端谷部46aに位置したままにならず、後方へスムーズに送り出される。
【0049】
図7は、第1の調整部材61に代えて第2の調整部材62が取付けられた状態の脱穀装置を示す概略平面図である。第2の調整部材62には、送り角dが備えられている。第2の調整部材62の送り角dは、第1の調整部材61の送り角cよりも後下がり傾斜が緩傾斜の送り角に設定されている。
【0050】
第2の調整部材62が取付けられた脱穀装置10では、トウモロコシ房状体15が扱胴26の回転、及び、第2の調整部材62の送り角dによる案内によって出口21bの側に送られつつ、扱胴26と受網25とによって扱き処理される。出口21bの側へ送られるトウモロコシ房状体15の送り量が第1の調整部材61によって調整される送り量よりも少ない送り量になるように第2の調整部材62によって調整される。
【0051】
〔調整部材の構成〕
図3,8,9,10に示すように、第1の調整部材61及び第2の調整部材62には、ベース部63と羽根部64とが備えられている。羽根部14は、ベース部63から扱胴26の中心側に向けて立ち上がっている。
【0052】
図8に示すように、第1の調整部材61においては、ベース部63は、羽根部64を構成する部材の折り曲げ端部によって構成されている。ベース部63の4箇所に連結部65が形成されている。4箇所の連結部65に1つの連結穴66が備えられている。4箇所の連結部65は、天板24に形成されている4つの取付部67に対応している。連結部65の連結穴66は、取付部67に備えられている取付穴68に対応している。
【0053】
図6,8に示すように、第1の調整部材61においては、4箇所の連結穴66と、この連結穴66が対応する取付穴68とに締結具としての連結ボルト69を通し、連結ボルト69とネジ穴部材70とによる締め付け力によって、4箇所の連結部65をこの連結部65が対応する取付部67に連結することによって、ベース部63が天板24に沿った取付姿勢で天板24に連結されている。ベース部63を天板24に連結することによって、第1の調整部材61が天板24に脱着可能に取付けられている。
【0054】
図9,10に示すように、第2の調整部材62においては、ベース部63と羽根部64とは、別々の部材によって構成されている。羽根部64がベース部63に溶接されている。ベース部63の4箇所に連結部71が形成されている。4箇所の連結部71に1つの連結穴72が備えられている。4箇所の連結部71は、天板24の4つの取付部67に対応している。連結部71の連結穴72は、取付部67の取付穴68に対応している。
【0055】
図7,9,10に示すように、第2の調整部材62においては、4箇所の連結穴72と、この連結穴72が対応する取付穴68とに連結ボルト69を通し、連結ボルト69とネジ穴部材70とによる締め付け力によって、4箇所の連結部71をこの連結部71が対応する取付部67に連結することによって、ベース部63が天板24に沿った取付姿勢で天板24に連結されている。ベース部63を天板24に連結することによって、第2の調整部材62が天板24に脱着可能に取付けられている。4箇所の連結部71は、羽根部64を挟んで扱室入口側と扱室出口側とに振り分け配置されている。本実施形態では、4箇所の連結部71のうち、案内方向上手側の2箇所の連結部71が扱室入口側に位置し、案内方向下手側の2箇所の連結部71が扱室出口側に位置している。
【0056】
第1の調整部材61と第2の調整部材62とを付け替えることにより、調整される送り量を変更できる。第1の調整部材61の天板24への取付け、及び、第2の調整部材62の天板24への取付けは、ベース部63を同じ取付穴68を用いて同じ取付部67に連結することによって行なうようになっている。
【0057】
〔別実施形態〕
(1)図12は、別の実施構造を備えた調整部材73を示す縦断面図である。別の実施構造を備えた調整部材73では、羽根部64とベース部63とが別々の部材によって構成されている。ベース部63に支持部63aが備えられ、支持部63aと羽根部64とが連結ボルト74によって連結されて、羽根部14がベース部63に支持されている。
【0058】
(2)図13は、さらに別の実施構造を備えた調整部材75を示す縦断面図である。さらに別の実施構造を備えた調整部材75では、1つのベース部63から2つの羽根部64が扱胴26の中心側に向けて立ち上がっている。
【0059】
(3)上記した実施形態では、扱胴26をバー型扱胴に構成した例を示したが、板部材を円筒状に形成したドラムを備え、ドラムに扱歯を支持したドラム型扱胴に構成して実施してもよい。
【0060】
(4)上記した実施形態では、棒状の扱歯35を採用した例示したが、線材を曲げ成形した扱歯、あるいは板状の扱歯を採用してもよい。
【0061】
(5)上記した実施形態では、扱歯の先端部の回動軌跡T1が房断面15Aの中心Yよりも扱胴中心側を通過する長さを有する扱歯を採用した例を示したが、扱歯の先端部の回動軌跡T1が房断面15Aの中心Yを通過する長さ、あるいは、扱歯の先端部の回動軌跡T1が房断面15Aの中心Yよりも受網側を通過する長さを有する扱歯を採用してもよい。
【0062】
(6)上記した実施形態では、後退角bを有する扱歯を採用した例を示したが、後退角を有しない扱歯を採用してもよい。
【0063】
(7)上記した実施形態では、扱歯どうしの間隔D1をトウモロコシ房状体15の長さ15Lにほぼ等しくした例に示したが、トウモロコシ房状体15の長さ方向が扱胴軸芯Xの方向と交差する姿勢でトウモロコシ房状体15が扱歯どうし間を扱胴周方向に通るように、扱歯どうしの間隔をトウモロコシ房状体15の長さ15Lよりも短くして実施してもよい。
【0064】
(8)上記した実施形態では、縦桟部材37が横桟部材36から扱胴側に突出する受網を採用した例を示したが、横桟部材が縦桟部材から扱胴側に突出する受網、あるいは、横桟部材と縦桟部材の扱胴側が面一に揃う受網を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、前車輪、後車輪に代え、クローラ走行装置、車輪とミニクローラとを込み合わせた走行装置を備えるトウモロコシ収穫機に適用できる。
【符号の説明】
【0066】
15 トウモロコシ房状体
15A 房断面
15t 頂部
15S 範囲
21 扱室
25 受網
26 扱胴
32 棒状支持部材
35 扱歯
36 横桟部材
37 縦桟部材
b 後退角
D1 間隔
L 長さ
T1 回動軌跡
R 回転方向
X 軸芯
Y 中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13