特許第6758256号(P6758256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758256
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】荷物保持用のハンド部
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/14 20060101AFI20200910BHJP
   B66F 19/00 20060101ALN20200910BHJP
【FI】
   B66C1/14 F
   !B66F19/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-127470(P2017-127470)
(22)【出願日】2017年6月29日
(65)【公開番号】特開2019-11154(P2019-11154A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】塩田 達也
(72)【発明者】
【氏名】奥野 真由子
(72)【発明者】
【氏名】中塚 晶基
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−182833(JP,A)
【文献】 特開2016−130159(JP,A)
【文献】 特開2001−241038(JP,A)
【文献】 特開2005−003029(JP,A)
【文献】 特開2016−008103(JP,A)
【文献】 特開2013−052192(JP,A)
【文献】 実公昭49−014826(JP,Y1)
【文献】 米国特許第5004108(US,A)
【文献】 実開平3−127688(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0062954(US,A1)
【文献】 実開平3−076084(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00 − 3/20
B66F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り下げ機構に接続されて吊り下げられる荷物保持用のハンド部であって、
荷物の横壁部の外側に沿って上下方向に配置される横側部と、
前記横側部の下部から荷物の横壁部側に延びて荷物の横壁部に入り込む下側部と、
荷物の横壁部の内側に沿って上下方向に配置される内側部と、
前記内側部を、下側に移動して前記下側部に接近する接近方向、及び上側に移動して前記下側部から離間する離間方向に移動自在に支持する移動支持部と、
前記内側部を前記離間方向に付勢する付勢部と、
前記内側部を前記付勢部に抗して前記接近方向に操作する為の手動操作部とが備えられている荷物保持用のハンド部。
【請求項2】
前記横側部の上部から荷物の横壁部側に延びて荷物の横壁部の上側に配置される上側部が備えられている請求項1に記載の荷物保持用のハンド部。
【請求項3】
前記移動支持部は、前記内側部を前記接近方向及び前記離間方向に移動自在に支持し、且つ、前記内側部を、荷物の横壁部の内側に沿った第1位置と、前記第1位置から前記横側部とは反対側に離れた第2位置とに亘って移動自在に支持し、
前記手動操作部により前記内側部が前記接近方向に操作されると、前記内側部を前記第1位置に操作する連動操作部が備えられる請求項1又は2に記載の荷物保持用のハンド部。
【請求項4】
前記内側部を前記第2位置に付勢する連動付勢部が備えられ、
前記連動操作部は前記連動付勢部に抗して前記内側部を前記第1位置に操作する請求項3に記載の荷物保持用のハンド部。
【請求項5】
前記吊り下げ機構を作動させる為の手動昇降操作部が、前記手動操作部に備えられている請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の荷物保持用のハンド部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者に装着されるアシスト器具や、建物の天井部に支持されたウインチ等において、吊り下げ機構に接続されて吊り下げるように使用されるもので、荷物を保持する為のハンド部に関する。
【背景技術】
【0002】
作業者に装着されて使用されるアシスト器具として、特許文献1に開示されているものがある。特許文献1では、作業者に取り付けられる本体部から前側にアーム部が延出されて、アーム部から下側に延出されたワイヤ(吊り下げ機構に相当)に、荷物保持用のハンド部が接続されている。
【0003】
特許文献1では、ワイヤを巻き取り及び繰り出す昇降装置が本体部に備えられており、昇降装置を巻き取り側及び繰り出し側に作動させる為の手動操作部が、ハンド部に備えられている。
作業者はハンド部を手で持ちながらハンド部により荷物を保持するのであり、ハンド部を持った手で手動操作部を操作することによって、ハンド部を上昇及び下降させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−182832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1ではビールケース等のように、荷物の横壁部に開口部が備えられた荷物が想定されており、ハンド部の下側部を荷物の横壁部の開口部に挿入して、ハンド部により荷物を保持する。
【0006】
荷物においては、前述のように、横壁部に開口部が備えられた荷物ばかりではなく、横壁部に開口部が備えられていない荷物もある。
本発明は、荷物保持用のハンド部において、荷物の横壁部に開口部が備えられていない場合においても、荷物を適切に保持することができるハンド部を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の荷物保持用のハンド部は、
吊り下げ機構に接続されて吊り下げられる荷物保持用のハンド部であって、
荷物の横壁部の外側に沿って上下方向に配置される横側部と、
前記横側部の下部から荷物の横壁部側に延びて荷物の横壁部に入り込む下側部と、
荷物の横壁部の内側に沿って上下方向に配置される内側部と、
前記内側部を、下側に移動して前記下側部に接近する接近方向、及び上側に移動して前記下側部から離間する離間方向に移動自在に支持する移動支持部と、
前記内側部を前記離間方向に付勢する付勢部と、
前記内側部を前記付勢部に抗して前記接近方向に操作する為の手動操作部とが備えられている。
【0008】
本発明によると、ハンド部により荷物を保持する場合、ハンド部の横側部を荷物の横壁部の外側に位置させて、ハンド部の下側部を荷物の横壁部に入り込ませるのであり、ハンド部の内側部を荷物の横壁部の内側に位置させる。
【0009】
これにより、荷物の重量がハンド部に掛かった場合、荷物の重量がハンド部の下側部によって支持されるのであり、ハンド部が荷物の横壁部から外れようとしても、ハンド部の内側部が荷物の横壁部の内側に当たることにより、ハンド部が荷物の横壁部から外れようとする状態が抑えられる。この状態は、荷物の横壁部に開口部があっても、開口部が無くても同じである。
【0010】
本発明によると、ハンド部の内側部が、下側に移動してハンド部の下側部に接近する接近方向、及び上側に移動してハンド部の下側部から離間する離間方向に移動自在であり、ハンド部の内側部が付勢部により離間方向に付勢されている。
【0011】
これにより、作業者が手動操作部を操作しない状態において、ハンド部の内側部が離間方向に操作されており、ハンド部の下側部と内側部との間が大きく開かれているので、ハンド部の下側部と内側部との間に荷物の横壁部を容易に入れることができるのであり、ハンド部の下側部を荷物の横壁部に容易に入り込ませることができて、操作性の良いものとなる。
【0012】
ハンド部の下側部と内側部との間に荷物の横壁部を入れ、ハンド部の下側部を荷物の横壁部に入り込ませた後、作業者はハンド部の手動操作部を操作することにより、ハンド部の内側部を付勢部に抗して接近方向に操作すればよい。
【0013】
これにより、ハンド部の内側部を荷物の横壁部の内側に適切に位置させることができるのであり、ハンド部が荷物の横壁部から外れようとする状態を、ハンド部の内側部によって適切に抑えることができる。
【0014】
本発明において、
前記横側部の上部から荷物の横壁部側に延びて荷物の横壁部の上側に配置される上側部が備えられていると好適である。
【0015】
本発明によると、ハンド部の下側部と上側部との間に、荷物の横壁部が位置する状態となる。
これにより、荷物の重量がハンド部の下側部によって支持されることに加えて、荷物やハンド部の揺れ等により、荷物の横壁部がハンド部の下側部から浮き上がろうとしても、荷物の横壁部がハンド部の上側部に当たることにより、荷物の横壁部の浮き上がりが抑えられる。
【0016】
本発明において、
前記移動支持部は、前記内側部を前記接近方向及び前記離間方向に移動自在に支持し、且つ、前記内側部を、荷物の横壁部の内側に沿った第1位置と、前記第1位置から前記横側部とは反対側に離れた第2位置とに亘って移動自在に支持し、
前記手動操作部により前記内側部が前記接近方向に操作されると、前記内側部を前記第1位置に操作する連動操作部が備えられると好適である。
【0017】
本発明によると、作業者が手動操作部を操作しない状態において、ハンド部の内側部が離間方向に操作されることに加えて、ハンド部の内側部をハンド部の横側部から離れた第2位置に位置させることができる。
【0018】
これにより、ハンド部の下側部と内側部との間がさらに大きく開かれているので、ハンド部の下側部と内側部との間に荷物の横壁部を容易に入れることができるのであり、ハンド部の下側部を荷物の横壁部に容易に入り込ませることができて、操作性の良いものとなる。
【0019】
ハンド部の下側部と内側部との間に荷物の横壁部を入れ、ハンド部の下側部を荷物の横壁部に入り込ませた後、作業者がハンド部の手動操作部を操作してハンド部の内側部を接近方向に操作すると、ハンド部の内側部が第2位置から第1位置に操作されて、ハンド部の内側部を荷物の横壁部の内側に適切に位置させることができるのであり、ハンド部が荷物の横壁部から外れようとする状態を、ハンド部の内側部によって適切に抑えることができる。
【0020】
本発明において、
前記内側部を前記第2位置に付勢する連動付勢部が備えられ、
前記連動操作部は前記連動付勢部に抗して前記内側部を前記第1位置に操作すると好適である。
【0021】
本発明によると、作業者が手動操作部を操作しない状態において、ハンド部の内側部が離間方向に操作されていることに加えて、ハンド部の内側部が第2位置に操作されているので、作業者がハンド部の内側部を第2位置に手で操作する必要がなく、操作性の良いものとなる。
作業者がハンド部の手動操作部を操作することにより、ハンド部の内側部を付勢部に抗して接近方向に操作することができるのであり、ハンド部の内側部を連動付勢部に抗して第1位置に操作することができる。
【0022】
本発明において、
前記吊り下げ機構を作動させる為の手動昇降操作部が、前記手動操作部に備えられていると好適である。
【0023】
吊り下げ機構を作動させるように構成した場合、吊り下げ機構を作動させる手動昇降操作部を、ハンド部に備えることがある。
本発明によると、手動昇降操作部がハンド部の手動操作部に備えられているので、作業者が手動操作部を操作しながら、手動昇降操作部を操作することができるようになって、操作性の良いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】作業者がアシスト器具を装着した状態での右側面図である。
図2】作業者がアシスト器具を装着した状態での背面図である。
図3】アシスト器具の斜視図である。
図4】ハンド部の分解斜視図である。
図5】ハンド部の側面図である。
図6】ハンド部により荷物を保持する状態を示す縦断正面図である。
図7】ハンド部により荷物を保持する状態を示す縦断正面図である。
図8】ハンド部により荷物を保持する状態を示す縦断正面図である。
図9】発明の実施の第1別形態において、ハンド部の分解斜視図である。
図10】発明の実施の第1別形態において、ハンド部の縦断正面図である。
図11】発明の実施の第1別形態において、ハンド部の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図11には、作業者が装着して使用するアシスト器具に、本発明の荷物保持用のハンド部20が取り付けられた状態が示されている。
本発明の実施形態における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、以下のように記載している。作業者がアシスト器具を装着した状態において、作業者から視て前側が「前」であり、後側が「後」であり、右側が「右」であり、左側が「左」である。
【0026】
(アシスト器具の全体構成及び本体部)
図1,2,3に示すように、アシスト器具には、作業者の背中部に取り付けられる本体部1、本体部1の上部から上側に延出され前側に延出された右及び左のアーム部2、本体部1の下部に設けられた右及び左の脚作用部3が備えられており、作業者への装着用の取付ベルト4、右及び左の肩ベルト5が備えられている。
【0027】
図1,2,3に示すように、本体部1は、右及び左の縦フレーム6、右及び左の縦フレーム6に亘って連結された支持板7等を備えて、枠状となっている。脚作用部3に取付ベルト4が取り付けられ、支持板7の前面の上部に肩ベルト5が取り付けられている。支持板7の後面の上下中間部に制御装置8が取り付けられており、支持板7の後面の下部にバッテリー9が取り付けられている。
【0028】
図1及び図2に示すように、肩ベルト5に作業者の腕部(肩部)を入れ、取付ベルト4を作業者の腰部に巻き付けて固定することにより、作業者の背中部に本体部1が取り付けられる。
【0029】
図1及び図2に示すように、アシスト器具及び荷物B(図4及び図5参照)の重量が取付ベルト4を介して主に作業者の腰部に掛かるのであり、アシスト器具及び荷物Bの重量が作業者の腰部により安定して支持される。右及び左の肩ベルト5は、主に本体部1が作業者の背中部から後方に離れようとする状態を止める機能を発揮する。
【0030】
(右及び左の脚作用部)
図1,2,3に示すように、脚作用部3は、基部10、伝動ケース11、操作アーム12及び脚ベルト13等を備えている。支持板7の下部に左右方向にスライド自在に基部10が支持されており、基部10の外端部に伝動ケース11が前向きに連結されている。
【0031】
図1,2,3に示すように、伝動ケース11の前部の左右方向の横軸芯P1周りに、操作アーム12が揺動自在に支持されており、幅広のベルト状の脚ベルト13が操作アーム12に取り付けられている。複数の平ギヤにより構成された伝動機構(図示せず)が伝動ケース11の内部に備えられて、電動モータ(図示せず)が基部10の内部に備えられており、電動モータにより伝動機構を介して操作アーム12が横軸芯P1周りに揺動駆動される。
【0032】
作業者の背中部に本体部1を取り付ける場合において、作業者が取付ベルト4を腰部に巻き付けて固定する際、取付ベルト4と一緒に、右及び左の脚作用部3(基部10)が支持板7に沿って左右方向に移動可能である。
取付ベルト4の腰部への巻き付け具合によって、作業者の体格に合わせるように右及び左の脚作用部3の間隔が決まるのであり、取付ベルト4により右及び左の脚作用部3の位置が決められる。
【0033】
図1及び図2に示すように、作業者は脚ベルト13を太腿部に巻き付けて、面ファスナ(図示せず)(マジックテープ(登録商標))により、脚ベルト13を太腿部に取り付ける。作業者がアシスト器具を装着した状態において、作業者の腰部の右側に右の脚作用部3(伝動ケース11)が位置し、作業者の腰部の左側に左の脚作用部3(伝動ケース11)が位置する。
【0034】
(右及び左のアーム部)
図1,2,3に示すように、右及び左の縦フレーム6の上部が、作業者の右及び左の肩部を越えて斜め上側に延出され斜め前側に延出されて、右及び左のアーム部2となっている。アーム部2の上端部に右及び左の支持部材16が取り付けられて、右及び左のプーリー(図示せず)が支持部材16に回転自在に支持されている。
【0035】
図1,2,3に示すように、支持板7の後面の上部に昇降装置17が取り付けられており、昇降装置17から、右の2本のワイヤ18,19(吊り下げ機構に相当)、及び左の2本のワイヤ18,19(吊り下げ機構に相当)が延出されている。
【0036】
図1,2,3に示すように、支持板7の上部にアウター支持部15が連結され、支持部材16にアウター支持部16aが備えられている。ワイヤ18,19のアウター18b,19bの端部が、アウター支持部15及び支持部材16のアウター支持部16aに接続されて、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが昇降装置17に接続されている。
【0037】
図1,2,3に示すように、右の2本のワイヤ18,19のインナー18a,19aが右の支持部材16のプーリーに掛けられて下側に延出されており、右の2本のワイヤ18,19のインナー18a,19aの延出端に、右のハンド部20が接続されている。
左の2本のワイヤ18,19のインナー18a,19aが左の支持部材16のプーリーに掛けられて下側に延出されており、左の2本のワイヤ18,19のインナー18a,19aの延出端に、左のハンド部20が接続されている。
【0038】
(昇降装置)
図1及び図2に示すように、昇降装置17は支持板7に連結されている。伝動機構(図示せず)を内装する上下向きの伝動ケース25、伝動ケース25の上部に横向きに連結された支持ケース26、伝動ケース25の下部に横向きに連結された電動モータ27、支持ケース26の内部で横向きの軸芯周りに回転自在な4個の回転体(図示せず)が、昇降装置17に備えられている。
【0039】
図1及び図2に示すように、右及び左のワイヤ18,19のアウター18b,19bの端部がアウター支持部15に接続され、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが、支持ケース26の内部の4個の回転体の各々に接続されている。
【0040】
図1及び図2に示すように、制御装置8により電動モータ27が作動する。電動モータ27の動力が伝動ケース25の内部の伝動機構を介して、支持ケース26の内部の回転体に伝達されるのであり、回転体が巻き取り側及び繰り出し側に回転駆動される。
【0041】
(ハンド部の全体構成)
図4及び図5に、右のハンド部20の全体が示されており、図1及び図2に示すように右及び左のハンド部20は左右対称の形状となっている。
【0042】
図4及び図5に示すように、ハンド部20は、第1部材21、第2部材22、カバー28、上昇操作スイッチ23(手動昇降操作部に相当)(下降操作スイッチ24(手動昇降操作部に相当))、バネ29(付勢部に相当)等を備えている。
【0043】
図1及び図2に示すように、右のハンド部20において、右のワイヤ18,19のインナー18a,19aが第1部材21に接続されて、上昇操作スイッチ23が第2部材22に取り付けられている。
左のハンド部20において、左のワイヤ18,19のインナー18a,19aが第1部材21に接続されて、下降操作スイッチ24が第2部材22に取り付けられている。
【0044】
図1,2,3に示すように、制御装置8に接続された右及び左のハーネス14が、右及び左のアーム部2の内部に入り、アーム部2の内部を通ってアーム部2の上端部に延出されている。右及び左のアーム部2の上端部の開口部からハーネス14が出て下側に延出されており、右のハーネス14が上昇操作スイッチ23に接続され、左のハーネス14が下降操作スイッチ24に接続されている。
【0045】
図1及び図2に示すように、上昇操作スイッチ23を押し操作すると、昇降装置17において、電動モータ27により回転体が巻き取り側に回転駆動され、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが回転体に巻き取られて、ハンド部20が上昇する。
下降操作スイッチ24を押し操作すると、電動モータ27により回転体が繰り出し側に回転駆動され、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが回転体から繰り出されて、ハンド部20が下降する。
【0046】
上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24の押し操作を止めると、電動モータ27が停止する。電動モータ27に電磁ブレーキ(図示せず)が備えられており、電動モータ27の作動時に電磁ブレーキは自動的に解除状態となり、電動モータ27の停止時及び非通電時に電磁ブレーキは自動的に制動状態となる。
【0047】
(ハンド部の詳細構造)
図4及び図5に示すように、ハンド部20において、第1部材21及び第2部材22は金属製の板材を折り曲げて形成されている。
【0048】
図4及び図5に示すように、第1部材21は、上下向きの横側部30、横側部30の下部から横向き(荷物Bの横壁部B1(図6参照)側)に延出された下側部31、横側部30の上部の中央部から横向き(荷物Bの横壁部B1(図6参照)側)に延出された上側部32、上側部32の端部から上向きに延出された接続部33を備えている。
【0049】
図4及び図5に示すように、横側部30に2個の長孔30aが、上下方向に沿って開口されている。接続部33の上部に接続孔33aが開口されており、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが接続部33の接続孔33aに接続される。
【0050】
図4及び図5に示すように、第2部材22は、上下向きの移動支持部34、移動支持部34の上部から横向き(荷物Bの横壁部B1(図6参照)側)に延出された手動操作部35、手動操作部35の端部から下向きに延出された2個の内側部36を備えている。上昇操作スイッチ23(下降操作スイッチ24)が、手動操作部35に取り付けられている。
【0051】
図4及び図5に示すように、内側部36の間に接続部33が位置するように、移動支持部34が横側部30に当て付けられて、ビス37が横側部30の長孔30aを通って移動支持部34に連結されている。
【0052】
図4及び図5に示すように、横側部30の長孔30a及び移動支持部34により、手動操作部35及び内側部36が、横側部30の長孔30aに沿ってスライド自在に支持されており、下側に移動して下側部31に接近する接近方向、及び上側に移動して下側部31から離間する離間方向に移動自在に支持されている。
上側部32と手動操作部35との間にバネ29が取り付けられており、手動操作部35及び内側部36がバネ29により離間方向に付勢されている。
【0053】
図4及び図5に示すように、カバー28は、合成樹脂により一体的に形成されており、上側部28a及び横側部28b、上側部28aに開口された開口部28cを備えている。カバー28の上側部28aが手動操作部35に取り付けられて、上昇操作スイッチ23(下降操作スイッチ24)が、カバー28の開口部28cから上側に出ており、カバー28の横側部28bが移動支持部34に取り付けられている。
【0054】
(ハンド部による荷物の保持操作)
図6に示すように、例えばビール等の飲料、リンゴやミカン等の果物を入れる為のケース状の荷物Bにおいて、ハンド部20により荷物Bを保持する場合、荷物Bに以下のような状態を想定している。
【0055】
図6に示すように、荷物Bの横壁部B1に、上側の突出部B2及び下側の突出部B3が備えられており、荷物Bの横壁部B1を貫通する開口部は備えられていない。荷物Bの突出部B2,B3は横向きに突出する平板状であり、荷物Bの横壁部B1を含めた荷物Bの上部の全周に亘って備えられている。
【0056】
図6に示す荷物Bにおいて、ハンド部20により荷物Bを保持する為に、荷物Bの横壁部B1にハンド部20を取り付ける場合、手動操作部35及び内側部36がバネ29により上側の離間方向に操作されて、下側部31と内側部36との間が大きく開かれているので、この状態において、下側部31と内側部36との間に荷物Bの横壁部B1(突出部B2,B3)入れる。
【0057】
これにより、図6に示すように、横側部30が荷物Bの横壁部B1の外側に沿って上下方向に配置され、下側部31が荷物Bの横壁部B1(突出部B3)の下側に入り込み、上側部32が荷物Bの横壁部B1(突出部B2)の上側に配置される状態となる。
【0058】
図6から図7に示すように、カバー28の上側部28aを下側に押し操作し、カバー28の上側部28aを介して手動操作部35を下側に押し操作する。
図7に示すように、下側部31が荷物Bの横壁部B1(突出部B3)から少し下側に離れ、上側部32が荷物Bの横壁部B1(突出部B2)の上側に接触した状態となって、バネ29が圧縮されながら、手動操作部35及び内側部36が下側の接近方向に移動して、内側部36が荷物Bの横壁部B1の内側に沿って上下方向に配置される状態となる。
【0059】
図7に示す状態において、親指をカバー28の上側部28aに当て、人差し指から小指を下側部31の下面に当てて、ハンド部20を握るようにして持つのであり、手動操作部35及び内側部36がバネ29により上側の離間方向に操作されないようにして、手動操作部35及び内側部36が下側の接近方向に操作された状態を維持する。
【0060】
ハンド部20を持った状態で前項の(ハンド部の全体構成)に記載のように、上昇操作スイッチ23を押し操作すると、ハンド部20が上昇するのであり、図8に示すように、下側部31が荷物Bの横壁部B1(突出部B3)に接触して、荷物Bの重量が下側部31によって支持される。
【0061】
図8に示す状態において、ハンド部20が荷物Bの横壁部B1から外れようとしても、内側部36が荷物Bの横壁部B1の内側に当たることにより、ハンド部20が荷物Bの横壁部B1から外れようとする状態が抑えられる。
荷物Bやハンド部20の揺れ等により、荷物Bの横壁部B1(突出部B3)が下側部31から浮き上がろうとしても、荷物Bの横壁部B1(突出部B2)が上側部32に当たることにより、荷物Bの横壁部B1の浮き上がりが抑えられる。
【0062】
ハンド部20を荷物Bの横壁部B1から取り外す場合、ハンド部20を握るようにして持つ状態を止めると、図6に示すように、手動操作部35及び内側部36がバネ29により上側の離間方向に操作されるので、ハンド部20を荷物Bの横壁部B1から取り外せばよい。
【0063】
(アシスト器具の作業形態)
例えば、パレットや床に置かれた荷物Bを高い棚やトラックの荷台に置くような場合、作業者がしゃがんでパレットや床の荷物Bを手で持ち、手を下に延ばした状態で荷物Bを持ちながら立ち上がり、手で荷物Bを持ち上げて、荷物Bを高い棚やトラックの荷台に置くような状態が想定される。
【0064】
アシスト器具を装着した作業者が前述のような作業を行う状態において、上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24の押し操作に基づいて、制御装置8により右及び左の脚作用部3、昇降装置17が作動する状態について説明する。
【0065】
図1及び図2に示すように、作業者がアシスト器具を装着した状態において、作業者が上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24の両方を押し操作していないと、昇降装置17の電動モータ27は停止して、右及び左の脚作用部3の電動モータは停止状態(自由回転状態)となる。
【0066】
作業者が歩行する場合や、作業者が膝部を曲げて腰部を落とす場合(しゃがむ場合)、作業者の太腿部に追従するように操作アーム12が揺動するのであり、作業者の動作が妨げられることはない。
【0067】
作業者がしゃがんでパレットや床の荷物Bを持つ場合、作業者が下降操作スイッチ24を押し操作すると、昇降装置17において電動モータ27が繰り出し側に作動し、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが繰り出されて、ハンド部20が下降する。
【0068】
下降操作スイッチ24の押し操作を止めると、電動モータ27が停止して、ハンド部20が停止するので、作業者は、ハンド部20により荷物Bを保持する(前項の(ハンド部による荷物の保持操作)を参照)。
【0069】
前項の(昇降装置)に記載のように、電動モータ27に電磁ブレーキ(図示せず)が備えられており、電動モータ27の停止時及び非通電時に、電磁ブレーキは自動的に制動状態となる。
電動モータ27が停止した状態において、昇降装置17からワイヤ18,19のインナー18a,19aが繰り出されることはなく、後述するようにハンド部20に荷物Bの重量が掛かっても、ハンド部20が下降することはない。
【0070】
作業者は、ハンド部20により荷物Bを保持した状態で、立ち上がることによって荷物Bを持ち上げる。作業者が上昇操作スイッチ23を押し操作すると、脚作用部3において操作アーム12が下側に駆動され、作業者の太腿部が下側に操作されて、作業者の立ち上がりが補助される。
【0071】
作業者が上昇操作スイッチ23を押し操作した状態で立ち上がった後に、脚作用部3において、操作アーム12が略真下に向く位置に達したことが検出されると、作業者が完全に立ち上がったと判断されて、脚作用部3の電動モータは停止状態(自由回転状態)となる。
【0072】
次に昇降装置17において、電動モータ27が巻き取り側に作動し、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが巻き取られて、ハンド部20が上昇する。所望の位置までハンド部20が上昇すると、上昇操作スイッチ23の押し操作を止めることにより、電動モータ27が停止してハンド部20が停止する。
【0073】
作業者は、荷物Bを置くべき高い棚やトラックの荷台等へ歩いて移動する。作業者が高い棚やトラックの荷台等に到着して、作業者が下降操作スイッチ24を押し操作すると、昇降装置17において、電動モータ27が繰り出し側に作動し、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが繰り出されて、ハンド部20が下降する。
【0074】
作業者は、荷物Bを高い棚やトラックの荷台等に置いて、ハンド部20を荷物Bから取り外す。荷物Bを高い棚やトラックの荷台等に置くと、最初の状態に戻るので、次の荷物Bに対して同様な操作を行う。
【0075】
(発明の実施の第1別形態)
前述の(発明を実施するための形態)のハンド部20を、図9,10,11に示すようなハンド部20としてもよい。
【0076】
図9,10,11に示すように、第1部材21において、上側部32が横側部30と同じ幅を持つ長さに形成されている。第2部材22において、手動操作部35の端部の横軸芯P2周りに、内側部36が第1位置A1及び第2位置A2に亘って揺動自在に支持されている。
【0077】
図9及び図10に示すように、内側部36に連結されたアーム部36a(連動操作部に相当)が、移動支持部34に向けて延出されている。手動操作部35と内側部36のアーム部36aとに亘って、バネ38(連動付勢部に相当)が接続されており、内側部36がバネ38により第2位置A2に付勢されている。
以上の構造以外の構造は、図4及び図5に示すハンド部20と同じ構造である。
【0078】
図10に示すように、手動操作部35及び内側部36がバネ29により上側の離間方向に操作された状態において、内側部36のアーム部36aが上側部32から離れており、内側部36がバネ38により、第1位置A1から横側部30とは反対側に離れた第2位置A2に位置している。これにより、下側部31と内側部36との間が上下方向及び横方向において大きく開かれた状態となる。
【0079】
図10から図11に示すように、カバー28の上側部28aを下側に押し操作し、カバー28の上側部28aを介して手動操作部35を下側に押し操作すると、バネ29が圧縮されながら、手動操作部35及び内側部36が下側の接近方向に移動する。
【0080】
図11に示すように、内側部36のアーム部36aが上側部32に当たってから、手動操作部35及び内側部36がさらに下側の接近方向に移動すると、内側部36のアーム部36aが上側部32により押し上げられて、内側部36が荷物Bの横壁部B1の内側に沿った第1位置A1に操作される。これにより、内側部36が荷物Bの横壁部B1の内側に沿って上下方向に配置される状態となる。
【0081】
図11に示す状態において、荷物Bの横壁部B1の横幅(左右幅)が少し大きなものであれば、内側部36が第1位置A1に操作された状態で、内側部36が荷物Bの横壁部B1の内側に接触して押圧される状態となる。これにより、横側部30と内側部36との間において、荷物Bの横壁部B1を挟んで保持する状態となる。
【0082】
(発明の実施の第2別形態)
アシスト器具において、右及び左のアーム部2を廃止して、1本のアーム部2を備えてもよい。
この構造によると、1本のアーム部2から2本のワイヤ18を延出して、2本のワイヤ18の一方に右のハンド部20を接続し、2本のワイヤ18の他方に左のハンド部20を接続する。又は、1本のアーム部2から1本のワイヤ18を延出し、1本のワイヤ18の端部を二股状に分岐させて、分岐部分の一方に右のハンド部20を接続し、分岐部分の他方に左のハンド部20を接続する。
【0083】
上昇操作スイッチ23を左のハンド部20に備え、下降操作スイッチ24を右のハンド部20に備えてもよい。上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24の両方を、右又は左の一方のハンド部20に備えてもよい。
【0084】
アシスト器具において、右及び左の脚作用部3を備えないように構成してもよい。
アシスト器具において、昇降装置17、上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24を廃止して、ワイヤ18,19を本体部1やアーム部2に連結し、ハンド部20の位置を固定して、ハンド部20の昇降を行わないように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、作業者に装着されて作業者による荷物の保持を補助するアシスト器具に使用されるハンド部ばかりではなく、建物の天井部に支持されたウインチ等に使用されるハンド部にも適用できる。
【符号の説明】
【0086】
18,19 吊り下げ機構
23,24 手動昇降操作部
29 付勢部
30 横側部
31 下側部
32 上側部
34 移動支持部
35 手動操作部
36 内側部
36a 連動操作部
38 連動付勢部
A1 第1位置
A2 第2位置
B 荷物
B1 横壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11