【実施例】
【0072】
実施例1-LAG-3(CD223)によるT細胞恒常性のネガティブ制御
以下の実施例は、LAG-3(CD223)がCD4
+およびCD8
+ T細胞恒常性を負に調節することを示し、骨髄移植後のT細胞移植を促進するための新規の治療的な標的としてこれが同定されたことを支持する。
【0073】
野生型C57BL/6マウスは、4〜52週齢のαβ
+ T細胞を一定数有する。前に報告された通り、若い4週齢のLAG-3
-/-マウスは、正常なT細胞数を有する。Miyazaki, T. et al., Science 272: 405-408 (1996)。対照的に、LAG-3
-/-マウスのαβ
+ T細胞の数は、3ヶ月齢から、野生型マウスよりも2倍多くの数まで着実に増大する。この違いは、αβ
+ T細胞数の厳密な恒常性の制御が非常に低い標準偏差によって明示されたことを考えると、非常に有意である。CD4+およびCD8+細胞はいずれもLAG-3
-/-マウスにおいて増大されたが、CD4:CD8の比率は、不変であった。同様に、OT-II TCRをトランスジェニックしたLAG-3
-/-マウス(卵白アルブミン326〜339特異的、H-2A
b拘束性)では、これらの違いが5週間目に明らかであったことを除き、野生型対照OT-IIトランスジェニックマウスと比較して、CD4
+ Vα2
+ T細胞の数が増大された。野生型マウスでは、ほぼ20%のαβ
+ T細胞およびCD49b
+ NK細胞が、LAG-3を構成的に発現し(Workman, C.J. et al., Eur. J. Immunol. 32: 2255-2263 (2002))、これらの数も、LAG-3
-/-マウスにおいて有意に増大した。驚くべきことに、LAG-3を発現しないB220
+B細胞、Gr-1
+顆粒球、およびMac-1
+マクロファージのようないくつかのその他の細胞タイプでも、対照マウスと比較してLAG-3
-/-が増大された。LAG-3
-/-マウスで観察される細胞数の増大は、インビボの分裂しているBrdU
+細胞数の〜50%の増大に匹敵した。LAG-3
-/-と野生型マウスの間で観察される細胞数の相違は、非常に一貫しており、再現性があった。LAG-3がないと、LAG-3
-/-マウスに由来するT細胞の細胞表面表現系に対して有意な効果を有さないようにみえる。これらのデータは、LAG-3がマウスのT細胞数を調節し、一般に白血球数に間接的に影響を及ぼしているという考えを支持する。
【0074】
LAG-3がリンパ球減少環境においてT細胞の恒常的発現に影響を及ぼしているかどうかを決定するために、精製したT細胞を、T細胞およびB細胞を欠いたRAG
-/-マウスに養子性に(adoptively)導入し、脾臓のT細胞数を導入の15日後に決定した。野生型対照と比較してLAG-3
-/-T細胞数の2.8倍の増大があった。注目すべきことに、LAG-3の非存在がT細胞増殖に対して明らかに有効であるにもかかわらず、野生型T細胞のわずかな割合のみがLAG-3を発現した。これにより、LAG-3の短期の一過性の発現が、これが分裂細胞に対してその効果を及ぼすには十分であろうことが推論される。CD4
+およびCD8
+T細胞の増殖の増大が観察されたことから、両細胞タイプがLAG-3の不存在によって同等の影響を受けたことが証明される。興味深いことに、また、LAG-3
-/-対LAG-3
+/+ T細胞のレシピエントにおいてαβ
-宿主由来細胞数の2倍の増加があった。これは、操作されていないLAG-3
-/-マウスで観察されたマクロファージおよび顆粒球の数の増大と一致した。RAG
-/-で観察されるLAG-3
-/- T細胞の増殖の増大は、抗原特異性から独立していることを確認するために、本発明者らは、OVA [Ovalbumin 257-264-特異的、H-2K
b-拘束性;Hogquist, K.A. et al., Cell 76: 17-27 (1994)]およびOT-II [Ovalbumin 326-339-特異的、H-2A
b-拘束性; Barnden, M.J. et al., Immunol. Cell Biol. 76: 34-40 (1998)]トランスジェニック・マウスから精製したT細胞を使用した。野生型CD4
+ Vα2
+ OT-II T細胞は、以前の報告と一致してRAG
-/-マウスにおいて十分に増殖せずに、これらの細胞がリンパ球減少性宿主においてほとんど恒常的な増殖を示さないことを示している。Ernst, B. et al., Immunity 11: 173-181 (1999)。対照的に、この制限は、LAG-3
-/- OT-IIトランスジェニックマウスからのT細胞には適用されず、これは、リンパ球減少性の宿主において活発に、導入後15日までに野生型T細胞の3.2倍以上の数に増殖した。同様に、RAG-1
-/-マウスから回収したLAG-3
-/- CD8
+ Vα2
+ OVAトランスジェニックT細胞の数は、野生型の対照OVA T細胞よりも4倍高かった。特筆すべきは、この相違は、導入後少なくとも1ヶ月間持続されたことである。これらのデータは、また、CD4
+およびCD8
+ T細胞がLAG-3の減少により同様に影響を受けることを証明した。MHCクラスII分子によるLAG-3のライゲーションの重要性を評価するために、LAG-3
-/-および野生型OVAトランスジェニックT細胞を、MHCクラスIおよびクラスII分子(β2m
-/- x H-2Aβ
b-/-)を両方とも欠いているマウスに導入した。データは、LAG-3
-/- T細胞の増殖の増大がMHCクラスII分子の非存在下で消滅されることを明らかに示しており、この相互作用の重要性が証明された。
【0075】
LAG3
-/-マウスまたはLAG-3
-/- T細胞の養子性のレシピエントは、B細胞およびマクロファージなどの通常LAG-3陰性である細胞の数を増大した。これは、LAG-3の非存在によるT細胞の恒常性の制御の変化は、その他の白血球細胞型の制御を直接変化させるという考えを支持する。直接これを試験するために、B細胞を、LAG-3
-/-または野生型T細胞のいずれかと共にRAG
-/-マウスに同時導入した。また、本発明者らは、T細胞恒常性を調節する際のMHCクラスII分子の対照的な役割を評価するためにも、このアプローチを利用した。以前の研究では、CD4+ T細胞の恒常的な増殖および長期の生存には、MHCクラスII分子との周期的な相互作用が必要であることを明らかに証明した。Takeda, S. et al., Immunity 5: 217-228 (1996); Rooke, R., et al., Immunity 7:123-134 (1997)。対照的に、LAG-3とMHCクラスII分子との間の相互作用は、逆の効果を有する可能性もある。以前に示したように、MHCクラスII
-/- B細胞を導入したときに、野生型対照と比較してLAG-3
-/- T細胞の数に3.0倍の増大がある。しかし、野生型B細胞の存在下では、LAG-3
-/-とLAG-3
+/+ Tとの間の細胞数の違いは、4.9倍に増大した。LAG-3
-/- T細胞数の増大は、MHC:TCRの相互作用が増大され、したがって増殖が増強されるためである可能性が高い。対照的に、LAG-3
+/+ T細胞は、正(MHCを経て:TCR相互作用)および負(MHCを経て:LAG-3相互作用)の恒常性調節の両方に供されて、野生型T細胞に匹敵する増殖を生じるであろう。
【0076】
野生型T細胞の存在下において、B細胞の数は、導入7日後に脾臓から回収したB細胞の数は、B細胞単独を受けているマウスと同じであった。対照的に、LAG-3
-/- T細胞レシピエントから回収したB細胞の数には、2.7倍の増加があり、B細胞数の増大は、LAG-3
-/- T細胞の「調節解除」によるものであることの直接の実証を提供する。興味深いことに、野生型T細胞の存在下において、B細胞単独を受けているマウスと比較して、MHCクラスII
-/- B細胞の数が増大する。これは、LAG-3:MHCクラスIIの相互作用が「局部的」になくなると、レシピエントRAG
-/-マウスは、脾臓内にMHCクラスII
+マクロファージおよび樹状細胞を有するものの、野生型T細胞の一過性の調節解除により、B細胞増殖の増大を生じ得るという考えを支持する。別の可能性としては、LAG-3によるMHCクラスII分子のライゲーションが負の調節シグナルをB細胞に送達することにより、増殖を妨げることである。これは、B細胞に対してはもっともらしいが、これによっては、LAG-3
-/-マウスにおける顆粒球などのMHCクラスII細胞の数の増大が説明されない。現在調査している1つの可能性としては、LAG-3
-/- T細胞の調節解除された増殖により、多くの細胞タイプの広範な増殖を誘導するサイトカインの生産をこれらが生じることである。
【0077】
リンパ球減少性マウスにおける恒常的な増殖に対するLAG-3発現の影響は、ナイーブT細胞に限定されない。また、抗原を受けた「メモリー」OT-II T細胞の導入により、LAG-3T3
-/-T細胞は、野生型の対照細胞と比較して、実質的に増殖の促進を生じた[7.2倍]。LAG-3が、この「調節解除された」T細胞増殖の直接の原因であり、本来のターゲティング戦略によって破壊される密接に連関した遺伝子ではないことを確かめることが、非常に重要であった。従ってLAG-3
-/- OT-II T細胞には、野生型LAG-3またはシグナリング欠損がある変異体LAG-3.ΔK
Mのいずれかを含むマウス幹細胞ウイルス(MSCV)に基づいたレトロウイルスを形質導入した。Workman, C. J. et al., Eur. J. Immunol. 32: 2255-2263 (2002)。また、ベクターは、形質導入された細胞の解析を容易にするために、内部リボソーム導入部位(IRES)および緑色蛍光タンパク質(GFP)カセットを含んだ。Persons, D. A. et al., Blood 90: 1777-1786 (1997)。また、LAG-3
-/-およびLAG-3
+/+ OT-11のT細胞には、「空」ベクター/GFP単独の対照を形質導入した。形質導入された細胞をRAG-1
-/-レシピエントに導入して、導入の15日に回収したOT-II T細胞の数を決定した。予想されるとおり、LAG-3
-/- GFP単独対照T細胞では、野生型GFP細胞よりも増殖した[2.8倍]。LAG-3の異所性の発現は、OT-11 T細胞の数を野生型対照と同等のレベルに減少させたが、一方のLAG-3シグナリング欠損がある変異体の発現は、恒常的な増殖に対して効果を有さない。これらのデータは、LAG-3が観察される効果の直接の原因となることを証明する。
【0078】
本発明者らのデータは、LAG-3がT細胞の恒常的な増殖を負に調節することを明らかに示す。また、これらは、T細胞が多くの細胞型の恒常性に関与しているであろういう考えを支持する。LAG-3の非存在下で、ノックアウトマウスにおけるT細胞数、およびリンパ球減少性マウスにおけるT細胞の増殖に対する明白な効果を有したにもかかわらず、T細胞の非常に少ない割合だけがLAG-3を発現したことが目立った。興味深いことに、全てのT細胞でのLAG-3の異所性の発現が、恒常的な増殖に対して、野生型細胞で見られるLAG-3の低レベルの一過性発現よりも優れた効果を有するというわけではなかった。これは、LAG-3シグナリングの閾値が非常に低いであろうこと、およびLAG-3シグナリングの効果を制限するその他の因子があるかもしれないことを示唆する。LAG-3と相互作用する下流のシグナリング分子(群)を同定し、LAG-3が恒常的な増殖を調節する機構を決定することは、将来の研究の明らかに重要な焦点である。
【0079】
B細胞およびマクロファージなどのLAG-3を発現しない細胞数の増大は、驚くべき観察であった。同時導入実験では、T細胞上にLAG-3が存在しないことが観察したその他の細胞タイプの増加の原因であったことを明らかに証明した。これは、その他の細胞タイプの数および/または増殖を制限するLAG-3シグナリングによって誘導されるか、またはその他の細胞タイプの数および/または増殖を制限するLAG-3によって負の調節が存在しないために産生される、可溶性または細胞表面タンパク質によるものであろう。この傍観者(bystander)の増殖およびその生理的役割の正確な性質は、決定されないままである。
【0080】
骨髄移植またはメガ用量幹細胞移植を受けている患者は、リンパ球再構成の速度が緩徐であるために、最初の4〜6ヶ月において特に感染症に感受性である。本発明者らの研究は、LAG-3が生存可能な治療の標的であること、およびLAG-3の発現またはその機能のブロッキングがT細胞移植を促進し、この感受性のウインドウを有意に減少させるという考えを支持する。
【0081】
実施例2−材料および方法
本実施例は、実施例1のための実験法および材料を提供する。
【0082】
マウス:以下のマウスを使用した:LAG-3
-/- [Christophe Benoist and Diane Mathis, Joslin Diabetes Center, Boston, MA; Miyazaki, T. et al., Science 272: 405-408 (1996)からの許可によって、Yueh-Hsiu Chen, Stanford University, Palo Alto, CA,から得られる]; C57BL/6J [Jackson Labs, Bar Harbor, ME]; B6.PL-Thyl
α/Cy (Thy1.1類遺伝子性) [Jackson Labs]; RAG-1
-/- [Jackson Labs, Bar Harbor, ME; Mombaerts, P. et al., Cell 68: 869-877 (1992)]; MHCクラスII
-/- [Peter Doherty, St. Jude Children's Research Hospital, Memphis, TN; Grusby, M.J. et al., Science 253:1417-1420 (1991)によって提供された]; MHCクラスI
-/-/II
-/-[Taconic, Germantown, NY; Grusby, M.J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 90: 3913-3917 (1993)];OT-II TCRトランスジェニック・マウス[William Heath, Walter and Eliza Hall Institute, Parkville, Victoria Australia; Barnden, M.J. et al., Immunol Cell Biol. 76: 34-40 (1998)からの許可とともに、Stephen Schoenberger, La Jolla Institute for Allergy and Immunology, La Jolla, CA, によって提供された]、およびOT-I(OVA)TCRトランスジェニックマウス[Jackson Labs; Hogquist, K.A. et al., Cell 76: 17-27 (1994)]。ゲノム全般のマイクロサテライト解析では、LAG-3
-/-マウスに関して試験した88の遺伝マーカーの97%がB6マウスに由来することを証明した(Charles River Laboratories, Troy, NY)。LAG-3
-/-、MHCクラスII
-/-、OT-I. LAG-3
-/-およびOT-II. LAG-3
-/-コロニーは、St. Jude Animal Resource Centerで維持した。全ての動物実験は、国家、州、および施設の指針に従って、AAALAC公認のSPF施設で行った。動物プロトコルは、St. Jude IACUCによって承認された。
【0083】
LAG-3構築物およびレトロウイルスの形質導入:LAG-3構築物は、記載されているとおりに組換えPCRを使用して作製した(Vignaali, D.A.A. and K. M. Vignali, J.Immunol. 162: 1431-1439 (1999))。LAG-3.WTおよびLAG-3.ΔK
M(細胞質尾部の保存されたKIEELEモチーフを欠失するLAG-3)は、記載されている(Workman, C.J. et al., J. Immunol. 169: 5392-5395 (2002))。LAG-3構築物を、内部リボソーム導入部位(IRES)および緑色蛍光タンパク質(GFP)を含むマウス幹細胞ウイルス(MSCV)に基づいたレトロウイルスベクターにクローニングし、記載されているようにレトロウイルスを作製した(Persons, D.A. et al., Blood 90: 1777-1786 (1997); Persons, D.A. et al., Blood Cells Mol Dis. 24: 167-182 (1998))。次いで、24時間後に10
5/ml以上のウイルス力価が得られるまで、GPE+86細胞を繰り返して(7〜10回)形質導入することによってレトロウイルス産生株の株化細胞を作製した(Markowitz, D. et al., J Virol. 62: 1120-1124 (1988))。
【0084】
フローサイトメトリー:単個細胞懸濁液を脾臓から作製し、RBCをゲイ液で溶解した。脾細胞は、まずFc Block、抗CD16/CD32(2.4G2)(BD PharMingen, San Diego, CA)と共に氷上で10分間染色した。次いで、細胞をBD PharMingenからの種々の抱合型抗体を使用して以下の細胞表面マーカーを染色した:
。LAG-3発現は、ビオチン化されたラット抗LAG-3 mAb(C9B7W, IgG1κ; Workman, C.J. et al., Eur. J. Immunol. 32: 2255-2263(2002))またはPE抱合体として得た同じ抗体(BD PharMingen)によって評価した。次いで、細胞をフローサイトメトリー(Becton Dickinson, San Jose, CA)によって解析した。
【0085】
ブロモデオキシウリジン取り込み:5、16、28、および52週間目に、LAG-3
+/+、LAG-3
-/-、OTII.LAG-3
+/+、およびOTll.LAG-3
-/-マウスには、(0.8mg/ml)それらの飲料水中にBrdU(Sigma, St. Louis, MO)を8日間与えた。次いで、マウスをCO
2吸入によって屠殺して、脾臓を取り除いた。BrdU取り込みの染色は記載されているように行った(Flynn, K. J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 96: 8597-8602 (1999))。簡潔には、LAG-3
-/-およびLAG-3
+/+脾細胞をTCRαβ、CD4、CD8、およびB220発現のために染色した。OTII.LAG-3
+/+およびOTII.LAG-3
-/-脾細胞は、Vα2およびCD4発現のために染色した(PharMingen)。次いで、細胞を1.2mlの氷冷95%エタノールで氷上で30分間固定した。次いで、細胞を洗浄し、PBS +1%パラホルムアルデヒド +0.01% Tween 20で室温において1時間透過化処理した。次いで、細胞を洗浄し、50KUのデオキシリボヌクレアーゼ(Sigma)の0.15M NaCl+4.2mM MgCl
2(pH 5.0)溶液で37℃において10分間インキュベートした。BrdUを抗BrdU-FITC(Becton Dickinson)をRTで30分添加することによって検出し、次いでフローサイトメトリーによって解析した。
【0086】
養子性の導入実験:脾細胞からのT細胞および/またはB細胞をFACSによって陽性選別するか、または磁気ビーズ細胞選別(MACS)によってネガティブに選別した。FACS精製のために、脾細胞をTCR□□、CD4、およびCD8発現について染色し、およびMoFlow(Cytomation, Ft. Collins, CO)で陽性選択によって選別した。ネガティブMACS精製のためには、脾細胞をPE結合抗B220、抗Gr1、抗Mac1、抗TER119(赤血球)、抗CD244.2(NK細胞)、および抗CD8(OTII トランスジェニックT細胞のネガティブ精製のために)で染色した。次いで、細胞を抗PE抗体と結合された磁気ビーズ(Miltenyi Biotech, Auburn, CA)と共にインキュベートし、自動MACS(Miltenyi Biotech, Auburn, CA)で90〜95%の純度に選別した。いくつかの実験では、T細胞をカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)でラベルした。細胞をPBSで2回洗浄し、1×10
7細胞/mlでPBS+0.1% BSAに再懸濁し、5μM CFSEと共に37℃で10分間インキュベートした。細胞をPBS+0.1% BSAで2回洗浄した。CFSE標識または無標識の精製T細胞(5x10
6または1×10
7)、および場合によってはB細胞(5×10
6)をRAG-1
-/-または Thyl.1
+(B6.PL)マウスにi.v.注射した。
【0087】
正常T細胞のレトロウイルスによる形質導入:OTII.LAG-3
+/+およびOTII.LAG3
-/-マウスからの脾臓を取り出し、単細胞懸濁液を2.5×10
6細胞/mlで作製した。脾細胞をOVA 326-339ペプチド[10μM]で2日間培養液中で活性化した。次いで、活性化された脾細胞をGFP単独、LAG-3.WT/GFP、またはLAG-3.ΔK
M/GFPレトロウイルス産生株細胞の単層上で、ポリブレンの存在下において2日間インキュベートした。細胞を10日間静止させ、次いでFACSによってVα2
+/CD4
+/GFP
+発現を選別した。細胞をさらに2日間静止させ、次いで5×10
6細胞を、尾静脈を経てRAG
-/-マウスに注射した。導入の15日後、マウスをCO
2吸入によって屠殺し、脾臓を取り除いた。脾細胞を染色し、フローサイトメトリーによって解析した。
【0088】
実施例3−強力な調節活性で誘導されるTreg細胞
Treg特異的な分子を同定するために、本発明者らは、ウイルス感染に応答してエフェクター/メモリー細胞か、または自己抗原としての同族抗原に遭遇することによってTreg細胞のいずれかに分化する抗原特異的なT細胞の差次的遺伝子発現解析を行った。この解析により、LAG-3遺伝子がTreg細胞において選択的にアップレギュレートされることが明らかになった。LAG-3(MHCクラスIIに結合するCD4相同体)の生理的な役割は、はっきり解明されなかった。いくつかのインビトロでの実験では、LAG-3が負の調節機能を有しているかもしれないことを示唆した(Hannier et al., 1998; Huard et al., 1994; Workman et al., 2002a; Workman et al., 2002b)。ここで、本発明者らは、LAG-3の膜発現がCD25とは独立して選択的にTreg細胞をマークすること、およびLAG-3がインビトロおよびインビボの両方でTreg細胞の抑制性の活性を調整することを示した。
【0089】
T細胞エフェクター/メモリーと寛容誘導との間の相違を検討するために、本発明者らは、モデル抗原の赤血球凝集素(HA)に特異的なT細胞受容体(TCR)トランスジェニックCD4+ T細胞(クローン6.5)の養子性の導入を利用した。組換えHA発現ワクシニアウイルス(Vac-HA)を感染させた野生型マウスでは、養子性に導入したHA特異的な6.5 CD4+ T細胞が、HAと遭遇することによってエフェクター/メモリー細胞に分化した。エフェクター/メモリー反応は、典型的な増殖/収縮期およびメモリーマーカーの発生によって特徴づけられる。養子性に導入された動物から取り出したときに、これらのエフェクター/メモリー細胞は、抗原特異的な増殖反応およびγ-インターフェロン生産によってアッセイすると、ナイーブ6.5 CD4+ T細胞と比較して、インビトロでHAに対して応答性亢進である。このメモリー反応は、養子性の導入後に何ヶ月も持続する。対照的に、複数の上皮組織にHAを発現するC3-HAトランスジェニックマウスへの6.5 CD4+ T細胞の養子性導入では、寛容を生じる(Adler et al., 2000; Adler et al., 1998)。エフェクター/メモリー反応と同様に、γ-インターフェロンなどのエフェクターサイトカインの増殖および発現によって特徴づけられる迅速な増殖/活性化期がある。しかし、活性化期の後に、全HA特異的T細胞プールが縮小し、残りの6.5細胞は、養子性導入4〜7日後に抗原刺激によってγ-インターフェロンを産生したり、またはインビトロで増殖することができない(Adler et al., 2000; Huang et al., 2003)。IL-2およびγ-インターフェロンなどのリンホカインを産生して抗原に対する応答を急増する能力の消滅は、アネルギー性の表現型の標準的な実効の定義を表す。
【0090】
寛容の誘導に先だつC3-HAマウスにおける最初のインビボエフェクター期の強度は、養子性に導入した6.5 CD4+ T細胞の数、並びにレシピエントマウスでのHA抗原の発現レベルに比例する。従って、C3-HA
lowマウスは、2.5×10
6 6.5 CD4+ T細胞の導入をかなりよく許容するが、C3-HA
lowマウスよりも1000倍多くのHA発現を有するC3-HA
highマウスでは、2.5×10
6の6.5 CD4+ T細胞の導入後4〜7日以内に死亡する(
図1A)。死因は、HA発現が最も高い肺におけるトランスジェニック6.5 CD4+ T細胞の浸潤による致死肺血管炎である。2.5×10
5未満の6.5 CD4+ T細胞をC3-HA
highマウスに養子性導入すると、肺血管炎の重篤さの軽減が引き起こされて、レシピエントが生存する(
図1A)(Huang et al., 2003)。興味深いことに、亜致死量で導入された6.5 CD4+ T細胞では、その後の保護されていないC3-HA
highマウスにおいて致死量の6.5 CD4+ T細胞であると考えられる注入による死からマウスを保護することができるので、これらは節性の表現型を獲得する。わずか8,000細胞の導入(致死量の0.3%)ほどでその後の2.5×10
6のナイーブ6.5 CD4+ T細胞の注入による死から動物を完全に保護するので、このインビボでの調節機能は極めて強力である。保護は、最初の導入の4日後という早い時期に観察され、6ヶ月まで活性なままである(
図1A)。養子性導入前のCD4+ T細胞(しかし、CD8+ T細胞ではない)の枯渇により、保護作用が全くなくなり、これによりアネルギーとなったクローン型(clonotypic)6.5 CD4+ T細胞のTreg表現型を定義する。
【0091】
致死間質性肺炎の抑制は、肺における最初の投入(Treg)の6.5T細胞の蓄積、および第2の注入からの浸潤するTエフェクター細胞の数の急激な減少を伴う。肺に蓄積する代わりに、Treg細胞がない場合に生じるように、Tエフェクター細胞は、脾臓の動脈周囲のリンパ性外筒に蓄積する(
図1B)。アネルギー細胞がTreg機能を証明するというさらなる証拠は、これらがインビボで細胞障害性のHA特異的CD8+ T細胞の活性化を阻害するという知見から生じる(データ示さず)。第1の(保護)養子性導入より前にCD25+ T細胞を除去しても、その後の6.5 T細胞の致死的なチャレンジから動物を保護することができるTreg細胞の発生には影響を及ぼさなかった。従って、最初の投入のT細胞のTreg表現型は、養子性に導入された集団の中の天然に存在するTreg細胞の結果とは反対に、養子性の導入の後で獲得された可能性が高い。これらの知見は、発行されたVon Boehmerおよび同僚の知見(彼らは、6.5 CD4+ T細胞が、実際にTreg機能を示すB細胞区画にHAを発現するトランスジェニックマウスに導入された後、寛容になることを証明した)と非常に一致している。(Jooss et al., 2001)。
【0092】
実施例4−LAG-3は、誘導されたTreg細胞上に差次的に発現される
本発明者らのインビボの系でアネルギー性/Treg表現型と関係する遺伝子を同定するために、本発明者らは、非トランスジェニックレシピエント内に養子性に導入し、続いてVac-HA免疫化を行ってエフェクター/メモリーT細胞を作製した後の、または、C3-HA
highマウス内に導入してアネルギー性の/Treg細胞を作製した後の、いずれかの精製した6.5 CD4+ T細胞に対してアフィメトリックス・チップ解析を行った。Thy1.1(+)Thy1.2(-)類遺伝子性の6.5 T細胞は、CD8+ T細胞、B細胞、およびThy1.2(+) T細胞のMACS Column枯渇、続いてフローサイトメーターによって>95%の純度に選別することを含む経時的な単離手順を使用して、野生型(エフェクタ/メモリー)またはC3HA
high(アネルギー性/Treg)レシピエントを感染させたThy1.1(-)Thy1.2(+) Vac-HAから精製した。このプロトコルでは、TCRまたはCD4依存的な遺伝子発現パターンを潜在的に変更し得るTCR特異的またはCD4補助受容体特異的な抗体の使用を避けている。
【0093】
RNAは、チップ解析のために、0日の試料としてナイーブ6.5 CD4+ T細胞から単離し、また養子性導入後2、3、および4日での6.5 CD4+ T細胞から単離した。アネルギー性/Treg集団とエフェクター/メモリー集団との間で差次的に発現された遺伝子を0〜4日からのこれらの差次的発現を合計したアルゴリズムに従って順序づけられた順位にした。驚くほど多数の遺伝子が、アネルギー性/Treg集団において、これらの養子性導入後の初期の時点でさえも、選択的に活性化された。これらの遺伝子の多くは、既知の機能のないESTを示した。以前に同定された遺伝子の中で、LAG-3は、エフェクター/メモリー集団と比較してアネルギー性/Treg集団において最も差次的に発現するものの一つであった。その後、この結果を、養子性導入の1ヶ月後まで及ぶ種々の時点について、LAG-3プライマー-プローブ対での定量的RT-PCR解析によって確認した。エフェクター/メモリー細胞における最小の最初の増大後、LAG-3発現は、養子性導入後20日までにベースラインに戻った。著しく対照的に、LAG-3の発現は、アネルギー性/Treg細胞群の中で最初の5日にわたって20〜50倍増大し、その後の4週の解析にわたって高いままである(
図2A)。対照的に、FoxP3、GITR、およびCTLA-4のレベルは、最初の4〜5日にわたって適度な増大を示し(1.5〜4倍)、エフェクター/メモリー細胞および誘導されたアネルギー性/Treg細胞の両方においても同様であった(データ示さず)。
【0094】
次いで、エフェクター/メモリー6.5 CD4+ T細胞と比較した、アネルギー性/Treg 6.5 CD4+ T細胞の集団でのLAG-3の細胞表面発現を、抗LAG-3-モノクローナル抗体を使用して解析した(Workman et al., 2002b)(
図2B)。エフェクター/メモリー細胞に対するLAG-3染色は非常に低レベルであるが、C3-HA
highトランスジェニックマウスからのアネルギー性/Treg細胞のうちの有意な比率が、遺伝子発現の結果と一致して、適度から高度のレベルのLAG-3染色を示した。IL-10は、一般にTregの分化および機能と関連しているので(Moore et al., 2001)、本発明者らは、IL-10 mRNAの内因性レベルおよびこれらのC3-HA
highトランスジェニックマウスからのCD4+ T細胞サブセット(アネルギー性/Treg 6.5 CD4+ T細胞)のLAG-3 mRNAのレベルとの相関を解析した。多くの実験にわたる複数の試料のアネルギー/Treg集団の解析により、LAG-3 mRNAレベルとIL-10 mRNAレベルの間の相関が明らかとなり、0.87の相関係数(R
2)を有した(
図2C)。
【0095】
実施例5−LAG-3は、最大のTreg機能のために必要とされる
アネルギー性/Treg 6.5 CD4+ T細胞の集団でのLAG-3およびCD25の細胞表面発現を抗LAG-3および抗CD25モノクローナル抗体を使用して協調的に解析した。同比率のエフェクター/メモリーおよびアネルギー性/Treg細胞がCD25を発現するが(データ示さず)、アネルギー性/Treg細胞でのLAG-3およびCD25発現は、完全には調和性でなかった(
図3A)。従って、本発明者らは、細胞をLAG-3
high CD25
high、LAG-3
high CD25
low、LAG-3
low CD25
high、およびLAG-3
low CD25
low集団に選別し、標準的なインビトロ抑制アッセイ法でこれらの調節活性を解析した。ナイーブ6.5 CD4+細胞の中での増殖反応のインビトロ抑制では、LAG-3
high CD25
high集団が最高の抑制活性を示すこと、およびLAG-3
low CD25
low集団が最も低いが、LAG-3
high CD25
lowおよびLAG-3
low CD25
low細胞の抑制活性は、同等であったことを示した(
図3B)。これらの結果は、誘導されたTreg細胞の中で、LAG-3およびCD25の組み合わせが、最も抑制活性を有するTreg細胞を特徴付けるであろうことを示唆する。
【0096】
誘導されたTreg細胞によって抑制を調節する際のLAG-3の直接的な役割をさらに評価するために、本発明者らは、まずナイーブHA特異的T細胞のインビトロでの増殖反応をLAG-3発現細胞が抑制する能力を、抗LAG-3抗体がブロックすることができるかどうかを決定した。2μg/mlの濃度の抗LAG-3抗体は、インビトロアッセイ系でTreg 6.5 CD4+ T細胞による抑制を阻害する(
図4)。2日のアッセイ期間にわたって、抗LAG-3抗体は、Tregの非存在下で刺激される6.5T細胞の増殖反応に影響を及ぼさず、抗LAG-3抗体の効果が、実際にTreg細胞に対するものであり、エフェクター細胞ではなかったことを確認した(データ示さず)。抗LAG-3抗体がTreg細胞によるインビトロでの抑制をブロックする能力は、LAG-3が単にTreg選択マーカーでなく、Treg活性を調整する分子であることを証明する。
【0097】
実施例6−LAG-3は、インビボで誘導されるTreg活性に必要とされる
本発明者らは、次に、抗LAG-3抗体の投与がC3-HA
highマウスにおいてTregによる致死的間質性肺炎の抑制をブロックすることができるかどうかを決定することによって、インビボでのTreg機能を調整する際のLAG-3の役割を評価した。C3-HA
highマウスを8,000(亜致死量)の6.5 CD4+ T細胞で前処理し、続いて最初の導入の4日後に、その後の2.5×10
6の用量のナイーブ6.5 CD4+ T細胞を前処理した。上述のように、Tregは、この時点ですでに発生していた。抗LAG-3抗体(200□g)をその後の2.5×10
6の6.5細胞のチャレンジと共にi.v.投与し、2日後に別に200□gを与えた。この抗体治療では、完全にTreg細胞のインビボ抑制活性を除去し、マウスは、保護的な亜致死量の6.5の前処理を伴わずに致死的にチャレンジしたC3-HA
highマウスと同等の時間枠で死んだ。これに反して、アイソタイプ対照抗体(ラットIgG1)または抗体なしで処理した確立されたTregを有するマウスは、その後の2.5×10
6ナイーブ6.5 T細胞でのチャレンジでも生存した(
図5A)。これらの結果は、抗LAG-3抗体がインビボでTreg活性をブロックしたことを示唆するが、他の形式では、直接Treg細胞を阻害するのではなく、抗LAG-3抗体は、チャレンジ集団のT細胞を超活性化(hyper-activate)し、その結果これらがTregの阻害作用を克服した可能性がある。この可能性を除外するために、本発明者らは、わずかに死亡率閾値以下の6.5 T細胞の用量と共に、抗LAG-3抗体をインビボ投与すると、予め確立されたTreg集団の非存在下での致死性を引き起こすかどうかを問うた。従って、本発明者らは、2.5×10
5の6.5 T細胞(死亡率を生じさせないであろう最大量)または8.0×10
5の6.5 T細胞(導入の7〜14日後におよそ50%の死亡率)を、抗LAG-3抗体またはアイソタイプ対照と共にC3-HA
highマウスに投与した。
図5Bは、抗LAG-3処理では、2.5×10
5の6.5T細胞の用量でも致死性にならず、また8.0×10
5の6.5T細胞の用量の部分的な死亡率も増強しなかったことを証明する。従って、
図5Aの実験の抗LAG-3抗体の効果は、Treg細胞の直接阻害であった。
【0098】
実施例7−LAG-3は、天然のTreg細胞によって発現され、抑制活性に必要とされる
合わせて考えると、これらのデータは、誘導されたTregの抑制機能を媒介する際のLAG-3の重要な役割を確信させる。誘導されたTregと天然のTregの間の関係は、不明なままであることを考えると、LAG-3は、野生型マウスからのCD4+CD25+ T細胞に選択的に発現したかどうかを調べることに興味が持たれる。LAG-3 mRNA(CTLA-4、FoxP3、およびGITR mRNAとともに)は、実際にCD4+CD25-細胞と比較してCD4+CD25+細胞上に選択的に発現されている(
図6A)。この再現性の知見にもかかわらず、本発明者らは、CD4+CD25+またはCD4+CD25-細胞上のいずれにおいても、抗体染色によって表面LAG-3を検出することができなかった。しかし、透過化処理された細胞の抗体染色では、10〜20%のCD4+CD25+細胞がLAG-3の細胞内貯臓を表したことを明らかに示した。対照的に、透過化処理されたCD4+CD25-細胞の染色では、絶対にLAG-3+集団がないことを証明した(
図6B)。これらの知見は、少なくともいくつかの天然のTregがLAG-3の細胞内貯臓を有し、これが、同族の抗原と遭遇することによって細胞表面に迅速に動員され、その後に抑制を媒介するのであろうことを示唆する。天然のTregは、CD4およびCD25によって定義されるT細胞群に含まれるが、実際のTreg細胞は、細胞内LAG-3を発現するものである可能性も実際にはある。天然のTregの調節機能におけるLAG-3の役割を直接評価するために、本発明者らは、抗LAG-3抗体が、精製されたCD4+CD25+細胞によって媒介されるインビトロでの抑制を阻害することができるかどうかを調べた。
図6Cは、抗LAG-3抗体が、精製されたCD4+CD25+細胞によって媒介される抑制を実際にブロックすることを証明しており、LAG-3は、天然並びに誘導されたTregによって媒介される抑制において役割を果たしていることを示唆する。インビトロでの抑制アッセイ法の最後にCD4+CD25+細胞を染色すると、およぼ20%が現在もそれらの表面上に高レベルのLAG-3を発現することが明らかになり、細胞内LAG-3がTCRの結合環境下で表面に動員され、調節活性を媒介するという考えを支持する(
図6D)。
【0099】
実施例8−LAG-3の異所性の発現は、調節活性を与える
図5および6のブロッキング実験は、LAG-3が最大のTreg機能のために必要とされることを示唆する。この結論をさらに確証するために、本発明者らは、T細胞上のLAG-3の異所性の発現が調節活性を与えるかどうかを決定するための一連の形質導入実験を行った。これらの実験のために、6.5 CD4+ T細胞から最初にCD25+「天然」のTregを枯渇させ、次いでGFP単独、GFP+野生型LAG-3、またはGFP+変異体LAG-3.Y73FΔCY(実質的にMHCクラスIIに対する親和性が減少され、かつ下流のシグナリングを媒介することができない(Workman et al., 2002a))のいずれかをコードするMSCVに基づいたレトロウイルスベクターを形質導入した。10日の休止期の後、MSCV-GFPベクターを形質導入したGFP+6.5 CD4+ T細胞では、本質的に内因性LAG-3の染色は観察されなかったが、MSCV-LAG-3/GFPおよびMSCV-LAG-3. Y73FΔCY/GFPを形質導入したGFP+ 6.5細胞では、高レベルのLAG-3染色が観察された。増殖アッセイ法では、それぞれの群に由来するGFP+細胞を選別して、APC、HA
110-120ペプチド、およびナイーブ6.5CD4+CD25-細胞と種々の比率で混合した。
図7に示したとおり、野生型LAG-3を発現する6.5細胞は、ナイーブ6.5細胞の増殖を強力に抑制したが、対照GFP導入6.5細胞または非機能的LAG-3.Y73FΔCY変異体を発現する6.5細胞では観察されなかった。本アッセイ法において、ナイーブ6.5細胞に加えてGFPおよびLAG-3.Y73FΔCYを導入した6.5細胞自体も増殖したので、総増殖は、実際にこれらの2つの後者の群でやや増大した。実際に、野生型LAG-3を導入したT細胞自体は、非導入6.5細胞の増殖阻害とは別に、増殖応答の有意な減少を示した。これらの結果は、抑制の際のLAG-3の機能的な役割を確証させる直接の証拠を提供する。興味深いことに、LAG-3導入によっても、Foxp3、CD25、CD103、およびGITRを含むその他のTreg関連遺伝子は誘導しなかった(データ示さず)。この結果は、エフェクター/メモリー対アネルギー/Treg表現形に分化する6.5T細胞の間にこれらの遺伝子の有意な差次的発現がないことに加え、LAG-3は、Foxp3経路とは独立に調節性T細胞機能の異なった経路を媒介するであろうことを示唆する。
【0100】
実施例9−考察
これらの知見から、LAG-3は、Treg細胞で選択的にアップレギュレートされ、Treg機能を媒介する際に直接関与しているであろう細胞表面分子であると同定される。天然および誘導性のTreg活性が定義されている多くの系を考えると、LAG-3は、「普遍的な」Tregマーカーであるか、または選択的に特定のTregサブセットのみをマークするかは決定されていないままである。本発明者らの結果は、CD4+ Treg細胞を誘導することに加えて、LAG-3は、天然のCD4+CD25+Treg細胞による抑制を媒介する際に少なくともいくらかの役割を果たしていることを示唆する。さらに、その他の実験データからも、天然のTregによる恒常性リンパ球増殖の調節におけるLAG-3の役割も証明される(Workman and Vignali、添付論文)。LAG-3発現が野生型マウス由来のCD4+CD25+ T細胞の中で有意に多いという知見は、これが天然のTreg、並びに誘導されたTregの機能において役割を果たしているであろうこと示唆する。
図3の実験によって示唆されるように、LAG-3とCD25の組み合わせは、最も強力なサプレッサー活性を有するTregサブセットを定義するであろう。本発明者らは、LAG-3は、インビトロでのアッセイ法での調節活性の大きさと相関する可変レベルで発現されるので、Tregの「系統マーカー」であることを提案しない。実際に、Tregが非細胞自律的様式で寛容を促進することができる安定な系統または分化状態を表すかは明白でない(von Boehmer, 2003)。異なる系のTreg機能について、異なる機構が同定された(Shevach, 2002に概説)。LAG-3
high細胞は、IL-10の量の増大を生じ、インビトロでの抑制活性の増強を示すが、本発明者らの系において抑制機能を媒介する際のIL-10の役割は、決定されていないままである。LAG-3に対する抗体は、インビトロおよびインビボの両方でTreg細胞のサプレッサー活性を阻害する。従って、本発明者らは、LAG-3がこのT細胞サブセットのサプレッサー活性を調整するTreg特異的な受容体または補助受容体であることを提案する。
【0101】
LAG-3について細胞自立的な抑制的な役割が多くの研究で示唆されているが(Huard et al., 1994; Workman et al., 2002b)、LAG-3 KOマウスによる最初の研究では、明白な自己免疫または高免疫についての何らかの証拠を発見することができなかった(Miyazaki et al., 1996)。Treg機能におけるLAG-3についての本発明者らが提案した役割を考えると、LAG-3ノックアウトマウスは、これらのマウスにおいて報告されなかった多システムの自己免疫を示すであろうことが予測されるだろう(すなわち、Foxp3ノックアウトまたはふけマウス(scurfy mice)と同様)。しかし、細胞恒常性の調節の欠陥などの、LAG-3ノックアウトマウスによって示される調節性T細胞の欠損が明らかに存在した(Workman and Vignali、添付論文)。本発明者らは、PD-1ノックアウトマウスで観察したように(Nishimura et al., 1999; Nishimura et al., 2001)、遅発性の自己免疫のより微妙な証拠について以前のLAG-3ノックアウトマウスを再検査している途中である。また、その他の調節機構がLAG-3発現の減少を補うようにこれらのマウスにおいて増強されるかもしれないことが考えられる。
【0102】
Treg細胞に高レベルで発現されているので、LAG-3は、癌および自己免疫疾患の両方を治療するためにTreg活性を選択的に操作するための優れた潜在的な標的を提供する。CD25「ゴールドスタンダード(gold standard)」Tregマーカーは、IL-2受容体複合体の重要な成分であり、活性化された細胞において高レベルで誘導されている。CD4+CD25+細胞がTreg活性の際に濃縮されていることの明らかな理由は、CD25がTreg機能に特異的であるためではなく、むしろTreg細胞が、末梢において自己抗原と持続的に遭遇することによって慢性的に刺激されるためである。より最近では、TNF受容体スーパーファミリーメンバー18分子(GITRとも呼ばれる)が、Treg細胞上でアップレギュレートされることが証明された。さらに、GITRに対する抗体は、インビボおよびインビトロの両方でTreg活性を阻害することが報告された。しかし、GITRは、活性化されたT細胞上で同等にアップレギュレートされており、したがって、明らかにTreg細胞のマーカーとしてCD25よりも選択的ではない(McHugh et al., 2002; Shimizu et al., 2002)。そのうえ、CD4+CD25-細胞群は、一定の免疫機能を抑制することができるという多数の報告がある(Annacker et al., 2001; Apostolou et al., 2002; Curotto de Lafaille et al., 2001; Graca et al., 2002; Shimizu and Moriizumi, 2003; Stephens and Mason, 2000)。それにもかかわらず、CD25
highLAG-3
high細胞が最も優れた抑制活性を示すという知見は、これらの細胞表面分子の両方に対する抗体を、Treg活性を操作するために協調的に使用してもよいことを示唆する。
【0103】
本発明者らのデータは、LAG-3が天然および誘導されたTreg細胞の最大の抑制活性に必要とされることを示す。しかし、それは十分であるか?これまでに、活性化されたT細胞上の調節活性を与えることが示された唯一の分子は、Foxp3である(Fontenot et al., 2003; Hori et al., 2003)。重要なことに、本発明者らは、ここでLAG-3(しかし、機能的に欠損がある変異体でない)のCD4+ T細胞におけるその異所性の発現が調節活性を与えることができることも示した。
【0104】
もう一つの重要な疑問は、Treg細胞が直接的なT-T相互作用を介して、またはDC中間体を介してCD4+およびCD8+エフェクター細胞の反応性を抑制するかどうかということである。MHCクラスII結合分子のLAG-3のTreg選択的および機能的な発現の同定により、これらの細胞が重要な役割を果たしている疾患のために、機構を分析し、およびTreg機能を操作するに際して新たな足掛かりを提供するはずである。
【0105】
実施例10−実験法
トランスジェニックマウス
C3-HAトランスジェニックマウスは、以前に記載されている(Adler et al., 2000; Adler et al., 1998)。手短には、インフルエンザウイルスA/PR/8/34(Mount Sinai strain)に由来する赤血球凝集素(HA)遺伝子をラットC3(1)プロモーターの制御下に配置した。2つの初代系統をB10.D2遺伝的バックグラウンドで確立した。これらの2つの初代系統、C3-HA
highおよびC3-HA
lowは、それぞれ30〜50および3つの導入遺伝子コピーを含み、肺および前立腺を含む非リンパ系の組織の同一セットにおいてC3-HAハイブリッドmRNAを発現する。C3-HA
highとC3-HA
lowとの間の総HAタンパク質発現の相違は、発現レベルが最も高い肺および前立腺では直接測定しなかったが、相違は、ハイブリドーマのサイトカイン放出が誘導された組織抽出物の生物検定によって示すと、およそ1000倍である。
【0106】
I-E
d-制限されたHAエピトープ(
110SFERFEIEPKE
120; SEQ ID NO:7)を認識するTCRを発現するTCRトランスジェニックマウス系統6.5株(Dr. Harald von Boehmer, Harvard University, Boston, MAによって寛大に提供された)をB10.D2遺伝的バックグラウンドに対して9世代戻し交配した。K
d拘束性HAエピトープを認識するTCRを発現するその他のTCRトランスジェニックマウス系統クローン-4(
518IYSTVASSL
526;SEQ ID NO:8)(Dr. Linda Sherman, Scripps Research Institute, La Jolla, CAによって寛大に提供された)も、Thy 1.1/1.1 B10.D2遺伝的バックグラウンドに対して9世代を超えて戻し交配した。クローン型(clonotypic)抗体は、クローン-4 TCRに利用できないので、Thy 1.1を代わりのマーカーとして使用した。クローン-4マウスの成熟CD8+ T細胞のほとんど全てがK
d制限されたHAエピトープを直接認識するので、Thy 1.2/1.2レシピエントへの養子性導入に続き、本発明者らは、全てのThy 1.1
+CD8
+ T細胞がHA-特異的なクローン型TCRを発現するとみなすことができる(Morgan et al., 1996)。
【0107】
実験に使用されるトランスジェニックマウスは、8〜24週の間の年齢であった。マウスの使用を含む全ての実験は、Johns Hopkins University School of Medicineの動物実験委員会(Animal Care and Use Committee)によって承認されたプロトコルに従って行われた。
【0108】
養子性の導入
クローン型CD4
+またはCD8
+ T細胞は、6.5またはクローン-4トランスジェニックマウスのプールされた脾臓およびリンパ節から調製した。クローン型の割合は、フローサイトメトリー解析によって決定した。活性化マーカーCD44を解析して、これらのクローン型細胞がドナーマウスにおいて活性化されず、表現型がナイーブであったことを確認した。HBSSで3回洗浄した後に、尾静脈を介してi.v.注射するために、適切な数の細胞を0.2mlのHBSSに再懸濁した。
【0109】
免疫組織化学
組織を養子性の導入の3日後にマウスから集めた。組織をイムノヒストフィックス(Immuno Histo Fix)(A Phase sprl, Belgium)に4℃で3日間固定し、次いでイムノヒストワックス(Immuno Histo Wax)(A Phase sprl, Belgium)に埋め込んだ。ビオチンラベルした抗Thy1.1 mAb(PharMingen, San Diego, CA)を使用して連続切片を染色した。ベクタステインABCキット(Vectastain ABC kit:Vector, Burlingame, CA)およびNovaRed(Vector)は、発色のために使用した。切片をヘマトキシリンQS(Vector)で対比染色した。ニコンEclipse E800を使用して切片を解析した。最終的な画像処理は、Adobe PhotoShop (Mountain View, CA)を使用して行った。
【0110】
インビボで初回抗原刺激した6.5 CD4+ T細胞の濃縮および精製
インビボで養子性導入の後に、エフェクター/メモリーまたは寛容のいずれかを誘導すると、レシピエントマウスの脾臓の6.5 CD4+ T細胞のクローン型の割合は、0.2%〜5%だけである。アフィメトリックス遺伝子チップ解析のためなど、さらなる研究のために十分なクローン型CD4+ T細胞を得るためには、慎重な濃縮および精製が必須である。ドナー6.5 T細胞をThy1.1(+)Thy1.2(-)遺伝的バックグラウンドに対して交配した(これは、Thy1.1(-)/Thy1.2(+)レシピエントに養子性の導入後に2工程の濃縮および精製手順でできる)。CD8+ T細胞、B細胞、およびレシピエントT細胞(Thy1.2+)を枯渇させるために、最初にビオチン化された抗CD8(Ly-2、53-6.7)、抗B220(RA3-6B2)、および抗Thy1.2(30-H12)抗体(全てBD Biosciences PharMingen, San Diego, CAから購入)、並びにMACSストレプトアビジン・ミクロビーズおよびMACS LS分離カラム(Miltenyi Biotech, Auburn, CA)を使用して6.5 CD4+ T細胞を濃縮した。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞は、Thy1.1を有する唯一の集団であるので、またCD8+ T細胞が濃縮の間に減少したために、 FACSVantage SE細胞ソーター(BD Biosciences)を使用してThy1.1(+)細胞をソーティングすることにより、非常に精製された6.5 CD4+ T細胞(95%)にした。この技術では、TCRまたはCD4依存的な遺伝子発現パターンを変更する可能性のあるTCR特異的またはCD4補助受容体特異的な抗体の使用を回避する。
【0111】
遺伝子チップ解析
選別した細胞を、Qiashredderカラム(Qiagen, Valencia CA)で剪断し、続いてRNeasyキット(Qiagen)を使用して総RNAを単離した。cDNAは、Superscript Choiceキット(Gibco/BRL)およびHPLCで精製したT7-DTプライマー(Proligo, Boulder, CO)を使用して合成した。ビオチン化したcRNAプローブは、ENZO BioArray RNA転写物キット(Affymetrix, Santa Clara, CA)を使用して調製した。マウスの遺伝子チップU174A、B、およびCには、標準的なアフィメトリックス・プロトコルに従ってハイブリダイズさせて解析した。
【0112】
アネルギー/Treg誘導とエフェクター/メモリー誘導との間のCD4
+ T細胞の遺伝子の差次的発現のランク付け
養子性の導入後の種々の日に、精製したナイーブ6.5クローン型CD4
+ T細胞、並びにアネルギー性/Tregおよびエフェクター/メモリー6.5クローン型のCD4
+ T細胞から調製したmRNAをアフィメトリックス遺伝子チップによって解析した。アネルギー/Treg誘導とエフェクター/メモリー誘導との間の遺伝子の差次的発現は、「距離」によってランクを付けた。距離は、養子性の導入後の2日(|d1|)、3日(|d2|)、および4日(|d3|)目の、アネルギー性T細胞とエフェクター/メモリーT細胞との間の発現の絶対的な相違の合計として定義し、標準化のためのナイーブCD4
+ T細胞(n)の値で割った。
【0113】
抗体および染色
以下の抗体を使用した。精製したか、またはPE結合したかのいずれかの抗LAG-3(C9B7W、PharMingenから)(Workman et al., 2002b);精製したか、またはFITC結合したかのいずれかの抗CD25(7D4、PharMingenから);および抗GITR(R&D Systemsから購入したポリクローナル抗体)。LAG-3およびCD25の細胞表面染色のために、6.5+/-Thy1.1+/-トランスジェニックマウスからの脾細胞を単離し、CD4+ネガティブ選択単離キット(Miltenyi Biotec)を使用してCD4+について濃縮した。フローサイトメトリーによって決定した約2.5×10
6のクローン型6.5細胞(総CD4+細胞の16%)をHBSSに再懸濁し、137(C3-HA high)または野生型B10.D2内に尾静脈を介して注射した。B10.D2マウスの1群には、5×10
6のVac-HAを処理し、その一方で、その他の群には、ナイーブ対照のために無処置のままにした。脾細胞および鼠径部および腋窩リンパ節を5日後に集め、単個細胞懸濁液に調製した。RBCをACK溶解緩衝液で溶解した。直ちに細胞を5μgの全ラットIgG(Sigma)で15分間ブロックした後に、抗6.5 TCR-ビオチン+SA-APC、LAG-3-PE、およびCD25-FITC、または対応するアイソタイプ対照で染色した。抗6.5ビオチン以外は、全ての染色試薬をPharmingenから購入した(San Diego, CA)。短いインキュベーション後に、試料をPBS+1% FBS溶液中で一度洗浄し、FACScalibur機に読み込んだ(BD, San Jose, CA)。
【0114】
誘導された6.5調節性T細胞のインビトロでの抑制アッセイ法
1×10
4の精製したナイーブ6.5 CD4+ T細胞(応答者)および1×10
5の3000-radを照射した同系のB10.D2脾細胞(抗原提示細胞)を異なる数のサプレッサー6.5 CD4+ T細胞と共に混合し、10μg/mlのHAクラスII(
110SFERFEIFPKE
120;SEQ No:7)ペプチドと共に丸底96穴組織培養プレートにおいて、200μlのCTL培地中でインキュベートした。48〜72時間後、培養液を1μCiの
3H-チミジンでパルスし、さらに16時間インキュベート後、パッカード・マイクロメート細胞収穫器(Packard Micromate cell harvester)で収集した。取り込まれた放射性カウントの量の決定は、パッカード・マトリックス96ダイレクトベータカウンター(Packard Matrix 96 direct beta counter:Packard Biosciences, Meriden, CT)で行った。
【0115】
天然の調節性T細胞のインビトロでの抑制アッセイ法
野生型BALB/cマウスを天然のTregアッセイ法に使用した。5×10
4のフローサイトメトリーで選別したCD4+CD25-T細胞(応答者)および5×10
4の3000-radの照射を受けたBALB/c脾細胞(抗原提示細胞)を、フローサイトメトリーで選別した異なる数のCD4+CD25+サプレッサーT細胞と共に混合し、0.5μg/mlの抗CD3抗体を有する丸底96穴組織培養プレートにおいて、200μlのCTL培地中でインキュベートした。48〜72時間後、培養液を1μCiの
3H-チミジンでパルスし、さらに16時間インキュベート後、パッカード・マイクロメート細胞収穫器(Packard Micromate cell harvester)で収集した。取り込まれた放射性カウントの量の決定は、パッカード・マトリックス96ダイレクトベータカウンター(Packard Matrix 96 direct beta counter:Packard Biosciences, Meriden, CT)で行った。
【0116】
定量的リアルタイムPCR解析
Trizol試薬を使用して、RNA抽出のために選別した6.5 CD4+ T細胞を直ちに使用した(Invitrogen, Carlsbad, CA)。逆転写は、スーパースクリプト・第1鎖標準合成系(Superscript First Strand Synthesis System:Invitrogen, Carlsbad, CA)によって行った。cDNAレベルは、Taqman系でのリアルタイム定量的PCRによって解析された(Applied Biosystems, Foster City, CA)。それぞれの試料は、タックマン・ユニバーサル・PCRマスターミックス(Taqman Universal PCR Master Mix)およびABIプリズム7700配列検出システム(ABI Prism 7700 Sequence Detection system)を使用して、25μlの最終反応体積で、内部基準として18S rRNAと共に標的遺伝子について2回または3回アッセイした。IL-10およびIL-2の検出のためには、予め作製した反応試薬(PDARs)をApplied Biosystemsから購入した。LAG-3、CD25、GITR、およびIFN-γについては、プライマー対およびプローブセットは、プライマー・エキスプレス(Primer Express)ソフトウェアを使用してデザインし、次いでApplied Biosystemsによって合成した。Foxp3に使用するプライマーおよびプローブセットは、文献(S4)からのものを引用した。相対的なmRNA頻度は、内部対照18S RNAに対し基準化することによって決定した。簡単には、本発明者らは、標的遺伝子と18S RNAとの間の閾値サイクル(Ct)の相違:ΔCt
sample=(Ct
sample-Ct
18s)を使用してそれぞれの試料セットを基準化した。較正試料は、アッセイ法(ΔCt
calibration)のそれぞれのセットにおいて最も高いΔCtを有する試料として割り当てた。相対的mRNA頻度は、2
ΔΔCtとして算出し、式中ΔΔCt=(ΔCt
calibration-ΔCt
sample)である。使用したプライマーおよびプローブセットは以下の通りである:
。
【0117】
LAG-3構築物およびレトロウイルス産生株の株化細胞
LAG-3構築物は、記載されたとおりに組換えPCRを使用して作製した(Vignali and Vignali, 1999)。Lag-3.WTおよび機能的ヌル変異体LAG-3.Y73F.ΔCY(LAG-3のMHCクラスIIを結合する能力を非常に減少させる点変異を有する細胞質末端のLAG-3)は記載されている(Workman et al., 2002a)。LAG-3構築物を、内部リボソーム導入部位(IRES)および緑色蛍光タンパク質(GFP)を含むマウス幹細胞ウイルス(MSCV)に基づいたレトロウイルスベクターにクローニングし、記載されているようにレトロウイルスを作製した(Persons et al., 1997; Persons et al., 1998)。次いで、24時間後に10
5/ml以上のウイルス力価が得られるまで、GPE+86細胞を繰り返して(7〜10)回形質導入することによってレトロウイルス産生株の株化細胞を作製した(Markowitz et al., 1988)。
【0118】
CD4+/CD25- T細胞のレトロウイルスによる形質導入およびインビトロでの抑制アッセイ法
6.5マウスからの脾細胞をビオチンラベルした抗B220、抗Gr1、抗Mac1、抗TER119、抗CD49b、抗CD8、および抗CD25抗体(PharMingen, San Diego,CA)で染色した。次いで、細胞をストレプトアビジンに結合させた磁気ビーズと共にインキュベートして、90〜95%の純度のCD4
+/CD25
- T細胞になるよう自動MACS(autoMACS: Miltenyi Biotech, Auburn CA)でネガティブに選別した。精製した6.5 CD4
+/CD25
- T細胞を、プレートに結合した抗CD3(2C11)および抗CD28(35.71)によって活性化した。刺激の2日および3日後に、活性化されたT細胞(4×10
5細胞/ml)には、上記したベクター単独、LAG-3.WT/GFP、またはLAG-3.Y73F.ΔCY/GFP レトロウイルスGPE+86産生株株化細胞(6μg/ml)プラスIL-2およびポリブレンからのウイルス上清をスピン形質導入(spin transduce)(90min、3000rpm)した。細胞を10日間静止することができ、次いで上位30〜35% GFP
+/Thy1.2
+ T細胞に対して選別した。
【0119】
インビトロ抑制アッセイ法については、精製したGFP
+ T細胞(2.5×10
4で開始して2倍希釈)を、2.5×10
4のCD4
+/CD25
- 6.5T細胞(ネガティブに自動MACSによって精製した)、5×10
4の照射(3000rads)を受けた脾細胞、および5μg/mlのHA110-120と共に96穴丸底プレートにおいて培養した。細胞を72時間培養し、培養の最後の7〜8時間1μCi/ウェルの[
3H]チミジンでパルスした(Du Pont, Wilmington, DE)。
【0120】
実施例11
CD223は、細胞表面から切断されて、可溶性形態(sLAG-3)で放出される。これは、インビトロで活性化されたT細胞によって有意な量で産生され(5μg/ml)、またマウスの血清中にも見いだされる(80ng/ml)。これは、細胞表面プロテアーゼによって産生される可能性が高い。本発明者らは、ウエスタンブロットによってsLAG-3を検出した。切断は、膜貫通領域(たとえば、SEQ ID NO:2のアミノ酸442〜466)に、またはアミノ末期の直前のコネクタ領域(たとえば、SEQ ID NO:2のアミノ酸432〜441)に生じる。
【0121】
実施例12
上記のように、LAG-3は、最大の調節性T細胞(Treg)機能に必要かつ十分である。言い換えると、LAG-3単独の発現でも、細胞を活性化されたエフェクターT細胞から調節性T細胞に変換するために十分である。
【0122】
本発明者らは、次に、LAG-3を異所性に発現する細胞もインビボで調節性の機能を示し、疾患状況において保護されるかどうかを決定したいと考えた。本発明者らは、自己抗原特異的なT細胞上のLAG-3の異所性の発現が、マウスを1型糖尿病から保護することができるかどうかについて問うことを選択した。この実験系では、糖尿病を起こしやすいNODマウスからの脾細胞を、リンパ球を欠如するNOD-Scidマウスに養子性に導入した。全てのマウスが3ヶ月以内に糖尿病を発症する。本発明者らの予備解析では、NOD脾細胞によって誘導される糖尿病の発症が、LAG-3を形質導入したホグリン(phogrin)特異的なT細胞によって防止されるが、シグナリング欠損がある変異体またはGFP対照では防止されないことを示唆する。これらのデータは、LAG-3を有する自己抗原特異的なT細胞の異所性の発現を、多くの自己免疫疾患、喘息、およびアレルギーの治療のための新規治療に使用するという考えを支持する。
【0123】
参考文献