特許第6758281号(P6758281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6758281熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758281
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/00 20060101AFI20200910BHJP
   C22F 1/04 20060101ALI20200910BHJP
   B23K 35/28 20060101ALI20200910BHJP
   B23K 35/22 20060101ALI20200910BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20200910BHJP
【FI】
   C22C21/00 J
   C22C21/00 E
   C22C21/00 D
   C22F1/04 Z
   B23K35/28 310B
   B23K35/22 310E
   !C22F1/00 623
   !C22F1/00 627
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 630M
   !C22F1/00 640A
   !C22F1/00 651A
   !C22F1/00 681
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 685Z
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 694A
   !C22F1/00 694B
【請求項の数】16
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-506081(P2017-506081)
(86)(22)【出願日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2016001358
(87)【国際公開番号】WO2016147627
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-51509(P2015-51509)
(32)【優先日】2015年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】100155572
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 恵視
(72)【発明者】
【氏名】中川渉
(72)【発明者】
【氏名】田中哲
(72)【発明者】
【氏名】寺山和子
【審査官】 鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−067385(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/002315(WO,A1)
【文献】 特開2011−099154(JP,A)
【文献】 特開2006−281266(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/169412(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00 − 21/18
C22F 1/04 − 1/057
B23K 35/22
B23K 35/28
F28F 21/08
B32B 15/00 − 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金の芯材と、当該芯材の両面にクラッドされたAl−Si系合金ろう材とを備えるアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材であって、前記芯材が、Si:0.05〜0.8質量%、Fe:0.05〜0.8質量%、Mn:0.8〜2.0質量%を含有し、かつ、前記Si、Fe、Mnの含有量がSi+Fe≦Mnの条件を満たし、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、前記ろう材が、Si:6.0〜13.0質量%、Fe:0.05〜0.8質量%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl−Si系合金からなり、
ろう付加熱前において、当該フィン材が、6〜16%の片面平均クラッド率、40〜120μmの厚さ及び48〜54%IACSの導電率を有し、前記芯材の金属組織が、円相当径0.05〜0.50μmのMn系化合物が0.05〜0.35μmの平均粒子間距離で存在する分布状態を有し、
窒素ガス雰囲気炉内で加熱して600℃で3分間保持し、次いで、100℃/分の冷却速度で室温まで冷却するろう付相当の加熱後において、当該フィン材が40〜44%IACSの導電率を有し、前記芯材の金属組織が、円相当径0.50μm以下のMn系化合物が0.45μm以下の平均粒子間距離で存在する分布状態を有することを特徴とする熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材。
【請求項2】
前記芯材が、Zn:0.3〜3.0質量%を更に含有するアルミニウム合金からなる、請求項1に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材。
【請求項3】
前記芯材が、Cu:0.05〜0.5質量%を更に含有するアルミニウム合金からなる、請求項1又は2に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材。
【請求項4】
前記芯材が、Zr:0.05〜0.3質量%、Ti:0.05〜0.3質量%、Cr:0.05〜0.3質量%及びV:0.05〜0.3質量%から選択される1種又は2種以上を更に含有するアルミニウム合金からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材。
【請求項5】
前記ろう材が、Zn:0.3〜3.0質量%を更に含有するAl−Si系合金からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材。
【請求項6】
前記ろう材が、Cu:0.1〜0.7質量%を更に含有するAl−Si系合金からなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材。
【請求項7】
前記ろう材が、Na:0.003〜0.05質量%及びSr:0.003〜0.05質量%の少なくともいずれか一方を更に含有するAl−Si系合金からなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材。
【請求項8】
ろう付加熱後の引張強度が130MPa以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法であって、前記芯材用及びろう材用のアルミニウム合金を半連続鋳造法によりそれぞれ鋳造する鋳造工程と、芯材の両面に所定厚さに圧延したろう材を重ね合わせた合わせ材を熱間圧延する熱間合わせ圧延工程と、熱間合わせ圧延工程後のクラッド材を途中で焼鈍することなく冷間圧延する一次冷間圧延工程と、一次冷間圧延工程後においてクラッド材を焼鈍する焼鈍工程と、焼鈍工程後において途中で焼鈍することなく最終板厚まで冷間圧延する二次冷間圧延工程とを備え、
前記芯材の鋳造工程において、凝固後の芯材鋳塊を550〜200℃まで冷却する平均冷却速度を0.10℃/秒以上とし、
前記芯材鋳塊を510℃以上の温度で均質化処理する均質化処理工程を設けず、
前記熱間合わせ圧延工程において、合わせ材の加熱温度を420〜500℃とし、熱間圧延率が10%に達したときの圧延板の温度を370〜450℃とし、
前記一次冷間圧延工程において、冷間圧延率を85.0〜99.5%とし、
前記焼鈍工程において、焼鈍温度を300〜450℃として芯材を再結晶させ、前記二次冷間圧延工程において、冷間圧延率を10〜85%とすることを特徴とする熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法であって、前記芯材用及びろう材用のアルミニウム合金を半連続鋳造法によりそれぞれ鋳造する鋳造工程と、芯材の両面に所定厚さに圧延したろう材を重ね合わせた合わせ材を熱間圧延する熱間合わせ圧延工程と、熱間合わせ圧延工程後のクラッド材を途中で焼鈍することなく冷間圧延する一次冷間圧延工程と、一次冷間圧延工程後においてクラッド材を焼鈍する焼鈍工程と、焼鈍工程後において途中で焼鈍することなく最終板厚まで冷間圧延する二次冷間圧延工程とを備え、
前記芯材の鋳造工程において、凝固後の芯材鋳塊を550〜200℃まで冷却する平均冷却速度を0.10℃/秒以上とし、
前記芯材鋳塊を510℃以上の温度で均質化処理する均質化処理工程を設けず、
前記熱間合わせ圧延工程において、合わせ材の加熱温度を420〜500℃とし、熱間圧延率が10%に達したときの圧延板の温度を370〜450℃とし、
前記一次冷間圧延工程において、冷間圧延率を85.0〜99.5%とし、
前記焼鈍工程において、焼鈍温度を150℃以上300℃未満として芯材を再結晶させず、
前記二次冷間圧延工程において、冷間圧延率を3〜40%とすることを特徴とする熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法。
【請求項11】
前記二次冷間圧延工程後において、圧延板を300℃以下の温度で焼鈍する焼鈍工程を更に備える、請求項9又は10に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法であって、前記芯材用及びろう材用のアルミニウム合金を半連続鋳造法によりそれぞれ鋳造する鋳造工程と、芯材の両面に所定厚さに圧延したろう材を重ね合わせた合わせ材を熱間圧延する熱間合わせ圧延工程と、熱間合わせ圧延工程後のクラッド材を途中で焼鈍することなく最終板厚まで冷間圧延する冷間圧延工程と、冷間圧延工程後においてクラッド材を焼鈍する焼鈍工程とを備え、
前記芯材の鋳造工程において、凝固後の芯材鋳塊を550〜200℃まで冷却する平均冷却速度を0.10℃/秒以上とし、
前記芯材鋳塊を510℃以上の温度で均質化処理する均質化処理工程を設けず、
前記熱間合わせ圧延工程において、合わせ材の加熱温度を420〜500℃とし、熱間圧延率が10%に達したときの圧延板の温度を370〜450℃とし、
前記冷間圧延工程において、冷間圧延率を85.0〜99.5%とし、
前記焼鈍工程において、焼鈍温度を150℃以上300℃未満として芯材を再結晶させないことを特徴とする熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法。
【請求項13】
前記芯材の鋳造工程後において、芯材鋳塊を510℃未満の温度で均質化処理する均質化処理工程を更に備える、請求項9〜12のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法。
【請求項14】
前記芯材の鋳造工程において、溶湯凝固時の平均冷却速度を0.5℃/秒以上とする、請求項9〜13のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法。
【請求項15】
前記合わせ材を加熱する際において、前記加熱温度に達するまでの昇温時間を15時間以下とする、請求項9〜14のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法。
【請求項16】
前記熱間合わせ圧延工程の終了時における圧延板温度を370℃未満とする、請求項9〜15のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はろう付加熱後の強度に優れ、更に良好な耐高温座屈性、ろう付性及び自己耐食性を有する熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材及びその製造方法に関する。本発明に係るアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材は、特に自動車用熱交換器のフィン材として好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金は軽量で強度に優れ、更には熱伝導率に優れることから熱交換器用材料として好適に用いられている。
【0003】
近年、あらゆる産業において省資源化や省エネルギー化が必須課題となっている。自動車産業においても、これら課題の達成に向けて自動車の軽量化が進められている。この流れの中で自動車用熱交換器も軽量化や小型化が進められており、構造材料の薄肉化が求められている。熱交換器の剛性を確保しつつ構造材料の薄肉化を達成するために、各部材のろう付加熱後の強度向上が期待されている。これに伴い、ブレージングシートフィン材は薄肉高強度化が望まれている。
【0004】
このようなことから、コンデンサやエバポレータ等の自動車用熱交換器には、アルミニウム合金製のものが広く使用されている。また、近年になってルームクーラー用熱交換器にもアルミニウム合金製のものが普及し始めている。これらの熱交換器は、作動流体の通路として機能する部材と熱輸送の媒体として機能するフィン材から構成されており、両部材をろう付接合して製造される。ろう付接合は、ろう材を内包した構成部材を約600℃に加熱して継ぎ手に溶融ろうを供給し、継ぎ手の隙間にろうを充填させたあと冷却するプロセスで実施される。特に自動車用熱交換器では、フッ化物系フラックスを付着させたチューブやコルゲートフィンなどの部材を所定の構造に組付けた後、不活性ガス雰囲気の加熱炉においてろう付接合する方法が一般的に採用されている。
【0005】
一般的な熱交換器用ブレージングシートは、JIS−A3003やJIS−A3203等のAl−Mn系合金芯材の片面又は両面に、JIS−A4343やJIS−A4045等のAl−Si系合金ろう材を貼り合わせてなるクラッド材である。しかしながら、このような一般的な合金からなるブレージングシートは、ろう付加熱後の強度に劣るため薄肉化が困難であるという問題があった。
【0006】
上記問題を解決するため、これまでにブレージングシートフィン材の薄肉高強度化に向けて、材料構成や製造工程について様々な検討がなされてきた。
【0007】
例えば、特許文献1には、芯材にNiを添加することにより優れたろう付加熱後強度を有するブレージングシートフィン材が提案されている。しかしながら、Niを含有する金属間化合物は母相との電位差が大きく腐食の起点となり易いため、自己耐食性が低く実用上の使用に問題があった。
【0008】
特許文献2には、皮材の板厚と皮材のSi含有量を規制することにより優れたろう付加熱後強度を有する3層クラッドフィン材が提案されている。しかしながら、このフィン材は明細書の段落番号0011に記載されているように、ろう材層を有する部材と組み合わせて用いられるため、自身がろう供給機能を有するブレージングシートフィン材として用いることができないという問題があった。
【0009】
特許文献3には、ろう付加熱後の芯材に亜結晶粒を形成させることにより優れたろう付加熱後強度を有するブレージングシートフィン材が提案されている。しかしながら、同文献の表4などに記載されているように、このプレートフィン材では、芯材へのろう侵食が発生して耐高温座屈性が低くなり、コルゲートフィン材には適用できないという問題があった。
【0010】
以上のように、ブレージングシートフィン材の薄肉化に向けて、ろう付加熱後の強度向上と諸特性の確保を両立することが問題として残った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3407965号公報
【特許文献2】特開2007−146264号公報
【特許文献3】特開2012−224923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたもので、ろう付加熱後の強度に優れ、更に良好な耐高温座屈性、ろう付性及び自己耐食性を有する熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は上記状況に鑑み鋭意検討した結果、特定の成分を有するアルミニウム合金材を用いて、特定の鋳塊冷却条件や合わせ材加熱条件、合わせ材の熱間圧延条件、冷間圧延条件及び焼鈍条件によって、特定の金属組織を有するアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材を製造可能なことを見出した。
【0014】
すなわち、芯材については、SiとFeの含有量を制限し、更にSiとFeの含有量の和に対しMnの含有量を多く制御する。このように配合したアルミニウム合金溶湯を、半連続鋳造法により調製する。ここで、鋳造工程において、凝固したアルミニウム合金の平均冷却速度を一定値以上に速めて芯材鋳塊を得る。なお、芯材鋳塊は、均質化処理を施す場合には、高温での処理とはしない。このようにして調製された芯材鋳塊は、Al―Mn系金属間化合物、Al−Si−Mn系金属間化合物、Al−Fe−Mn系金属間化合物、Al−Si−Fe−Mn系金属間化合物(以下、これらの金属間化合物を「Mn系化合物」という。)の析出を抑制して適切なMn固溶量を確保できる。その結果、ろう付加熱後において優れた強度が得られ、耐高温座屈性を確保できる。一方、ろう材については、SiとFeの含有量を適切な量に制御して調製することで、ろう付加熱におけるろう流動性を確保でき、また、ろう付加熱時のSiの芯材への拡散により優れた強度が得られ、耐高温座屈性を確保できる。
【0015】
芯材鋳塊とろう材との合わせ材を熱間合わせ圧延してクラッド材とする際には、合わせ材の加熱は低温で行い、熱間合わせ圧延途中の圧延板の温度も低温となるよう制御して熱間合わせ圧延を行う。これにより、芯材のMn系化合物の析出を抑制して適切なMn固溶量を確保できる。
【0016】
次に、熱間合わせ圧延後のクラッド材を冷間圧延する際には、途中で焼鈍することなく高圧延率で冷間圧延する。冷間圧延後の焼鈍工程において焼鈍温度を400℃以下の低温で行う。冷間圧延率と焼鈍条件により、芯材には微細なMn系化合物が密に析出する。この焼鈍工程でMn固溶量は減少するが、熱間合わせ圧延終了時点において適切なMn固溶量を確保しているため、焼鈍終了時点でMn系化合物の微細分散とMn固溶量の確保がバランスよく実現されている。この焼鈍後のクラッド材を更に冷間圧延する(以下、焼鈍後の冷間圧延を最終圧延とする。)、或いは、しないに拘わらず、焼鈍工程までに得られたクラッド材のMn系化合物の分布とMn固溶量との良好なバランスが確保されているため、最終板厚とされたブレージングシートフィン材は、ある一定水準の導電率とMn系化合物の平均粒子間距離を有する金属組織となっている。
【0017】
このように、製造工程における入熱量が少なく制御されたブレージングシートフィン材は、ろう付加熱後の芯材に適切なMn固溶量を確保できるとともに、芯材の固溶Mnがろう材から拡散されたSiと結合してMn系化合物を形成し、ろう付加熱温度である600℃付近で再固溶することにより、素材のMn系化合物の増大を抑制できる。そのため、ろう付加熱後において、Mnの固溶強化とMn化合物の分散強化のバランスの取れた効果を得ることができる。
【0018】
但し、ろう付加熱中の芯材へのろう侵食を抑制して自己耐食性を確保するため、最終板厚のブレージングシートフィン材への加工度は適切に制御する必要がある。焼鈍工程でクラッド材の芯材を再結晶させる場合には、焼鈍後の冷間圧延工程で高めの圧延率で冷間圧延を実施する。一方、焼鈍工程でクラッド材の芯材を再結晶させない場合には、焼鈍後の冷間圧延工程で低めの圧延率で冷間圧延を実施するか、或いは、冷間圧延を実施しない。このようにして、再結晶させる場合においてもさせない場合においても、ろう付加熱中に芯材が粗大に再結晶化して芯材へろう侵食するのを抑制し、自己耐食性を確保できる。焼鈍工程において芯材を再結晶させるか否かは、コルゲート成形設備での成形性を考慮して選択すればよい。
【0019】
以上のようにして、本発明者らは上記発明の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
具体的には、本発明は請求項1において、アルミニウム合金の芯材と、当該芯材の両面にクラッドされたAl−Si系合金ろう材とを備えるアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材であって、前記芯材が、Si:0.05〜0.8質量%、Fe:0.05〜0.8質量%、Mn:0.8〜2.0質量%を含有し、かつ、前記Si、Fe、Mnの含有量がSi+Fe≦Mnの条件を満たし、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、前記ろう材が、Si:6.0〜13.0質量%、Fe:0.05〜0.8質量%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl−Si系合金からなり、
ろう付加熱前において、当該フィン材が、6〜16%の片面平均クラッド率、40〜120μmの厚さ及び48〜54%IACSの導電率を有し、前記芯材の金属組織が、円相当径0.05〜0.50μmのMn系化合物が0.05〜0.35μmの平均粒子間距離で存在する分布状態を有し、
窒素ガス雰囲気炉内で加熱して600℃で3分間保持し、次いで、100℃/分の冷却速度で室温まで冷却するろう付相当の加熱後において、当該フィン材が40〜44%IACSの導電率を有し、前記芯材の金属組織が、円相当径0.50μm以下のMn系化合物が0.45μm以下の平均粒子間距離で存在する分布状態を有することを特徴とする熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材とした。
【0021】
本発明は請求項2では請求項1において、前記芯材が、Zn:0.3〜3.0質量%を更に含有するアルミニウム合金からなるものとした。
【0022】
本発明は請求項3では請求項1又は2において、前記芯材が、Cu:0.05〜0.5質量%を更に含有するアルミニウム合金からなるものとした。
【0023】
本発明は請求項4では請求項1〜3のいずれか一項において、前記芯材が、Zr:0.05〜0.3質量%、Ti:0.05〜0.3質量%、Cr:0.05〜0.3質量%及びV:0.05〜0.3質量%から選択される1種又は2種以上を更に含有するアルミニウム合金からなるものとした。
【0024】
本発明は請求項5では請求項1〜4のいずれか一項において、前記ろう材が、Zn:0.3〜3.0質量%を更に含有するAl−Si系合金からなるものとした。
【0025】
本発明は請求項6では請求項1〜5のいずれか一項において、前記ろう材が、Cu:0.1〜0.7質量%を更に含有するAl−Si系合金からなるものとした。
【0026】
本発明は請求項7では請求項1〜6のいずれか一項において、前記ろう材が、Na:0.003〜0.05質量%及びSr:0.003〜0.05質量%の少なくともいずれか一方を更に含有するAl−Si系合金からなるものとした。
【0027】
本発明は請求項8では請求項1〜7のいずれか一項において、ろう付加熱後の引張強度が130MPa以上であるものとした。
【0028】
本発明は請求項9では請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法であって、前記芯材用及びろう材用のアルミニウム合金を半連続鋳造法によりそれぞれ鋳造する鋳造工程と、芯材の両面に所定厚さに圧延したろう材を重ね合わせた合わせ材を熱間圧延する熱間合わせ圧延工程と、熱間合わせ圧延工程後のクラッド材を途中で焼鈍することなく冷間圧延する一次冷間圧延工程と、一次冷間圧延工程後においてクラッド材を焼鈍する焼鈍工程と、焼鈍工程後において途中で焼鈍することなく最終板厚まで冷間圧延する二次冷間圧延工程とを備え、
前記芯材の鋳造工程において、凝固後の芯材鋳塊を550〜200℃まで冷却する平均冷却速度を0.10℃/秒以上とし、
前記芯材鋳塊を510℃以上の温度で均質化処理する均質化処理工程を設けず、
前記熱間合わせ圧延工程において、合わせ材の加熱温度を420〜500℃とし、熱間圧延率が10%に達したときの圧延板の温度を370〜450℃とし、
前記一次冷間圧延工程において、冷間圧延率を85.0〜99.5%とし、
前記焼鈍工程において、焼鈍温度を300〜450℃として芯材を再結晶させ、前記二次冷間圧延工程において、冷間圧延率を10〜85%とすることを特徴とする熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法とした。
【0029】
本発明は請求項10では請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法であって、前記芯材用及びろう材用のアルミニウム合金を半連続鋳造法によりそれぞれ鋳造する鋳造工程と、芯材の両面に所定厚さに圧延したろう材を重ね合わせた合わせ材を熱間圧延する熱間合わせ圧延工程と、熱間合わせ圧延工程後のクラッド材を途中で焼鈍することなく冷間圧延する一次冷間圧延工程と、一次冷間圧延工程後においてクラッド材を焼鈍する焼鈍工程と、焼鈍工程後において途中で焼鈍することなく最終板厚まで冷間圧延する二次冷間圧延工程とを備え、
前記芯材の鋳造工程において、凝固後の芯材鋳塊を550〜200℃まで冷却する平均冷却速度を0.10℃/秒以上とし、
前記芯材鋳塊を510℃以上の温度で均質化処理する均質化処理工程を設けず、
前記熱間合わせ圧延工程において、合わせ材の加熱温度を420〜500℃とし、熱間圧延率が10%に達したときの圧延板の温度を370〜450℃とし、
前記一次冷間圧延工程において、冷間圧延率を85.0〜99.5%とし、
前記焼鈍工程において、焼鈍温度を150℃以上300℃未満として芯材を再結晶させず、
前記二次冷間圧延工程において、冷間圧延率を3〜40%とすることを特徴とする熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法とした。
【0030】
本発明は請求項11では請求項9又は10において、前記二次冷間圧延工程後において、圧延板を300℃以下の温度で焼鈍する焼鈍工程を更に備えるものとした。
【0031】
本発明は請求項12では請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法であって、前記芯材用及びろう材用のアルミニウム合金を半連続鋳造法によりそれぞれ鋳造する鋳造工程と、芯材の両面に所定厚さに圧延したろう材を重ね合わせた合わせ材を熱間圧延する熱間合わせ圧延工程と、熱間合わせ圧延工程後のクラッド材を途中で焼鈍することなく最終板厚まで冷間圧延する冷間圧延工程と、冷間圧延工程後においてクラッド材を焼鈍する焼鈍工程とを備え、
前記芯材の鋳造工程において、凝固後の芯材鋳塊を550〜200℃まで冷却する平均冷却速度を0.10℃/秒以上とし、
前記芯材鋳塊を510℃以上の温度で均質化処理する均質化処理工程を設けず、
前記熱間合わせ圧延工程において、合わせ材の加熱温度を420〜500℃とし、熱間圧延率が10%に達したときの圧延板の温度を370〜450℃とし、
前記冷間圧延工程において、冷間圧延率を85.0〜99.5%とし、
前記焼鈍工程において、焼鈍温度を150℃以上300℃未満として芯材を再結晶させないことを特徴とする熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法とした。
【0032】
本発明は請求項13では請求項9〜12のいずれか一項において、前記芯材の鋳造工程後において、芯材鋳塊を510℃未満の温度で均質化処理する均質化処理工程を更に備えるものとした。
【0033】
本発明は請求項14では請求項9〜13のいずれか一項において、前記芯材の鋳造工程において、溶湯凝固時の平均冷却速度を0.5℃/秒以上とするものとした。
【0034】
本発明は請求項15では請求項9〜14のいずれか一項において、前記合わせ材を加熱する際において、前記加熱温度に達するまでの昇温時間を15時間以下とするものとした。
【0035】
本発明は請求項16では請求項9〜15のいずれか一項において、前記熱間合わせ圧延工程の終了時における圧延板温度を370℃未満とするものとした。
【発明の効果】
【0036】
本発明により、ろう付加熱後の強度が高く薄肉のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材及びその製造方法が提供される。また、このブレージングシートフィン材は、良好な耐高温座屈性、ろう付性及び自己耐食性を有する。従って、本発明のブレージングシートフィン材は、熱交換器用フィン材として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明における、サグ試験装置を用いた耐高温座屈性評価の模式図である。
図2】本発明における、ろう付性と自己耐食性の評価に用いた試験片の模式的な正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明に係る熱交換起用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材及びその製造方法について、以下に詳細に説明する。
【0039】
1.アルミニウム合金製ブレージングシートフィン材
本発明に係る熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材は、芯材及びろう材が所定のアルミニウム合金組成を有し、更に、所定の厚さとクラッド率、ならびに、ろう付加熱前後において所定の導電率と金属組織を有する。
【0040】
1−1.芯材
芯材は、Si、Fe、Mnを必須元素とする。芯材のSiは、強度や耐高温座屈性の向上に寄与する。Si含有量は、0.05〜0.8質量%(以下、単に「%」と記す)とする。Si含有量が0.05%未満では、Mn系化合物が十分に形成されず、ろう付加熱後に十分な強度が得られない。一方、Si含有量が0.8%を超えると、Mn系化合物が過剰に形成されてろう付加熱前に適切なMn固溶量を確保できず、ろう付加熱後に十分な強度が得られない。また、芯材の融点が低温化するため芯材へのろう侵食が発生し、自己耐食性が低下する。芯材のSiの好ましい含有量は0.1〜0.7%であり、より好ましい含有量は0.1〜0.6%である。
【0041】
芯材のFeは、強度向上や結晶組織の安定化に寄与する。芯材のFe含有量は、0.05〜0.8%とする。Fe含有量が0.05%未満では、Mn系化合物が十分に形成されず、ろう付加熱後に十分な強度が得られない。一方、Fe含有量が0.8%を超えると、Mn系化合物が過剰に形成されてろう付加熱前に適切なMn固溶量を確保できず、ろう付加熱後に十分な強度が得られない。また、Feを含む金属間化合物は母相との電位差が大きく腐食の起点となり易いため、Fe含有量が0.8%を超える場合には、Feを含む金属間化合物が過剰に形成されて自己耐食性が低下する。更に、ろう付加熱後の芯材の結晶粒が微細になるため耐高温座屈性及び自己耐食性が確保できなくなる。芯材のFeの好ましい含有量は0.1〜0.8%であり、より好ましい含有量は0.1〜0.7%である。
【0042】
芯材のMnは、強度や耐高温座屈性の向上に寄与する。芯材のMn含有量は、0.8〜2.0%とする。Mn含有量が0.8質量%未満では、ブレージングシートフィン材の芯材における適切なMn固溶量を確保できず、またMn系化合物の形成も不十分となるため、ろう付加熱後に十分な強度が得られない。一方、Mn含有量が2.0質量%を超えると、鋳造時に粗大な晶出物が形成されて製造困難となる。芯材のMnの好ましい含有量は0.8〜1.9%であり、より好ましい含有量は0.9〜1.9%である。
【0043】
更に、芯材のSi、Fe、Mn含有量は、Si+Fe≦Mnの条件を満たすこととする。SiとFeの総含有量がMn含有量を超えると、含有されたMnはSi、FeとMn系化合物を形成するため、芯材における適切なMn固溶量を確保できずろう付後に十分な強度が得られないだけでなく、ろう付加熱後の芯材再結晶粒が微細となり,耐高温座屈性及び自己耐食性を確保できない。好ましい上記条件は、Si+Fe≦0.9Mnである。
【0044】
芯材には、上記必須元素に加えてZnを第1選択的添加元素として添加してもよい。Znは、フィン材の電位を卑化する合金元素である。Znを添加することにより、電位が卑化してフィン材に犠牲防食機能が付与され、チューブ材の耐食性が向上する。Zn含有量は、チューブ材やその他の部材の電位を考慮して適宜選択すればよいが、0.3〜3.0%とする。Zn含有量が0.3%未満では、十分な犠牲防食効果が得られない。一方、Zn含有量が3.0%を超えると、腐食速度が増加してフィン材の自己耐食性を確保できない。芯材のZnの好ましい含有量は0.5〜2.7%であり、より好ましい含有量は0.7〜2.5%である。
【0045】
芯材には、第2選択的添加元素としてCuを更に添加してもよい。Cuは、強度向上に寄与する合金元素である。Cu含有量は0.05〜0.5%とする。Cu含有量が0.05%未満では、強度向上効果が不十分である。一方、Cu含有量が0.5%を超えると、耐粒界腐食感受性が低下し、フィン材の自己耐食性を確保できない。芯材のCuの好ましい含有量は0.05〜0.3%であり、より好ましい含有量は0.05〜0.25%である。
【0046】
芯材には、第3選択的添加元素としてZr、Ti、Cr及びVから選択される1種又は2種以上を更に添加してもよい。Zr、Ti、Cr、Vはいずれも、強度及び耐高温座屈性を向上させる合金元素である。Zr、Ti、Cr及びVから選択される1種又は2種以上の含有量はそれぞれ、0.05〜0.3%である。この含有量が0.05%未満では上記効果が十分に得られず、一方、0.3%を超えると、鋳造時に粗大な晶出物が形成されるため不適当となる。好ましい上記含有量はそれぞれ0.05〜0.2%であり、より好ましい上記含有量はそれぞれ0.1〜0.2%である。
【0047】
1−2.ろう材
ろう材は、Si、Feを必須元素とする。ろう材のSiは、融点やろう流動量に寄与する。また、ブレージングシートフィン材の場合、ろう材のSiはろう付加熱中に芯材へ拡散し、芯材でMn系化合物を形成するか、或いは、芯材の母相に固溶する。ろう材のSi含有量は、6.0〜13.0%とする。Si含有量が6.0%未満では、ろう材から芯材へ拡散するSi量が不十分となり、ろう付加熱後に十分な強度が得られない。また、ろう流動性が不十分となり、ろう付性を確保できない。一方、Si含有量が13.0%を超えと、ろう付加熱中にろう材から拡散するSiと芯材の固溶Mnとで形成されるMn系化合物が過剰に析出してろう付加熱後に適切なMn固溶量を確保できず、ろう付加熱後に十分な強度が得られない。また、ろう付加熱中のろう材の液相量が過剰となり、自己耐食性を確保できない。ろう材のSiの好ましい含有量は7.0〜13.0%であり、より好ましい含有量は7.0〜12.0%である。
【0048】
ろう材のFeは、ろう流動性や自己耐食性に寄与する。ろう材のFe含有量は、0.05〜0.8質量%とする。Fe含有量が0.05%未満では、ろう流動性を確保できない。一方、Fe含有量が0.8%を超えると、自己耐食性を確保できない。ろう材のFeの好ましい含有量は0.05〜0.7%であり、より好ましくは0.1〜0.6%である。
【0049】
ろう材には、上記必須元素に加えてZnを第1選択的添加元素として添加してもよい。Znは、フィン材の犠牲防食効果向上に寄与する。ろう材のZn含有量は芯材のZn含有量やチューブ材、その他の部材の電位を考慮して適宜選択すればよいが、0.3〜3.0%とする。Zn含有量が0.3%未満では、犠牲防食効果が十分に得られない。一方、Zn含有量が3.0%を超えると、フィン材の自己耐食性を確保できない。ろう材のZnの好ましい含有量は0.5〜2.7%であり、より好ましい含有量は0.7〜2.5%である。
【0050】
ろう材には、第2選択的添加元素としてCuを更に添加してもよい。Cuは、ろう付加熱中に芯材へ拡散して芯材の強度向上に寄与する。Cu含有量は、0.1〜0.7%とする。Cu含有量が0.1%未満では、強度向上効果が十分に得られない。一方、Cu含有量が0.7%を超えると、耐粒界腐食感受性が低下し、フィン材の自己耐食性を確保できない。ろう材のCuの好ましい含有量は0.1〜0.6%であり、より好ましい含有量は0.2〜0.5%である。
【0051】
ろう材には、第3選択的添加元素としてNa及びSrの少なくともいずれか一方を更に添加してもよい。Na、Srはいずれも、ろう流動性に寄与する元素である。Na及びSrの少なくともいずれか一方の含有量は、0.003〜0.05%である。この含有量が0.003%未満では、上記効果が得られない。一方、上記含有量が0.05%を超えると、上記効果が得られない。ろう材のNa、Srの好ましい含有量は、0.005〜0.02%であり、より好ましい含有量は0.007〜0.02%である。
【0052】
なお、本発明に用いる上記の芯材やろう材にMg、Ca及びその他の不可避的不純物元素は特性に影響しない範囲で含有されても良く、それぞれの含有量が0.05%以下で、かつ、それらの総含有量が0.15%以下であれば本発明の効果に影響を与えずに許容される。
【0053】
1−3.厚さ
本発明に係るアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材は、40〜120μm、好ましくは40〜100μmの厚さを有する。厚さが40μm未満では、クラッド率や厚さのバラツキを制御するのが困難となり、工業製品としての品質確保が困難となる。一方、厚さが120μmを超えると熱交換器の軽量化に寄与できない。
【0054】
1−4.クラッド率
次に、ろう材のクラッド率について説明する。ろう材のクラッド率は、ろう流動量に寄与する。ブレージングシートフィン材では、ろう材のクラッド率は、ろう付加熱中のろう流動量への寄与の他、ろう材から芯材へ拡散するSiの量にも寄与する。本発明では、ろう材の片面平均クラッド率を6〜16%とする。このクラッド率が6%未満では、ろう付加熱中にろう材から芯材へ拡散するSiの量が不十分となり、ろう付加熱後において分散強化による十分な強度向上が得られない。また、ろう流動量が不十分となり、ろう付性を確保できない。一方、上記クラッド率が16%を超えると、ろう付加熱中にろう材から芯材へ拡散するSi量が過剰となり芯材中にMn系化合物を形成し、芯材のMn固溶量が減少する。その結果、ろう付加熱後において固溶強化による十分な強度向上が得られない。また、ろう付加熱中のろう材の液相量が過剰となり、自己耐食性を確保できない。ろう材の好ましい片面平均クラッド率は、7〜15%であり、より好ましい片面平均クラッド率は8〜14%である。
【0055】
1−5.導電率
ろう付加熱前のブレージングシートフィン材の導電率は、芯材に添加されている元素の固溶量と相関関係を有する。本発明で用いる芯材のようなAl−Mn系合金の導電率は、Mnの固溶量と相関関係を有する。上述したようにろう付加熱後に十分な強度を得るためには、ろう付加熱前の芯材において適切なMn固溶量を確保する必要がある。そこで、ろう付加熱前のブレージングシートフィン材の導電率を、48〜54%IACS(International Annealed Copper Standard)とする。導電率が48%IACS未満の場合には、芯材のMn固溶量が過剰でありMn系化合物の形成が不十分なために、ろう付加熱後において分散強化による十分な強度向上が得られない。一方、導電率が54%IACSを超える場合には、ろう付加熱前の芯材のMn固溶量が不十分となり、ろう付加熱後において固溶強化による十分な強度向上が得られない。ろう付加熱前の好ましい導電率は49〜54%IACSであり、より好ましい導電率は49〜53%IACSである。
【0056】
また、ろう付加熱後のブレージングシートフィン材の導電率も、芯材のMn固溶量と相関関係を有する。ろう付加熱中において、芯材中に固溶しているMnはろう材から拡散するSiと結合しその量が減少するが、一部はろう付加熱後まで残存してそれにより固溶強化の効果が得られる。そこで、ろう付加熱後のブレージングシートフィン材の導電率を、40〜44%IACSの範囲内とする。導電率が40%IACS未満の場合には、熱伝導性が低く、熱交換器としての熱交換性能を確保できない。一方、導電率が44%IACSを超える場合には固溶強化が不十分となり、ろう付加熱後に十分な強度が得られない。ろう付加熱後の好ましい導電率は41〜44%IACSであり、より好ましい導電率は41〜43%IACSである。なお、導電率がろう付加熱前よりろう付加熱後の方が低い理由は、ろう付加熱中においてろう材から拡散するSiが芯材に固溶するためである。
【0057】
1−6.金属組織
ろう付加熱後において芯材を適切な金属組織とすることにより、ブレージングシートフィン材の分散強化の効果が得られる。ろう付加熱後における芯材の金属組織は、ろう付加熱前における芯材の金属組織の影響を受ける。そこで、ろう付加熱後において適切な芯材金属組織を得るために、ろう付加熱前における芯材の金属組織を規定することが必要となる。ろう付加熱前の芯材には、製造工程で形成されたMn系化合物が分布する。そこで、金属組織としてMn系化合物の分布状態を規定することとした。具体的には、ろう付加熱前における芯材の金属組織を、円相当径(円相当直径であり、以下において同じ)0.05〜0.50μmのMn系化合物が0.05〜0.35μmの平均粒子間距離で存在する分布状態を有するものとする。円相当径0.05〜0.50μmのMn系化合物は、一部はろう付加熱中に再固溶するが多くはろう付加熱後においても残存し、この残存するMn系化合物によってろう付加熱後のフィン材において分散強化の効果が得られる。Mn系化合物のうち円相当径0.05μm未満のものは、大部分がろう付加熱中に再固溶する。また、円相当径が0.50μmを超えるものは、0.05〜0.50μmのものより密度が非常に小さく、平均粒子間距離をほとんど増減させない。従って、金属組織を規定するMn系化合物としては、円相当径0.05〜0.50μmのものを対象とし、円相当径0.05μm未満のもの及び0.50μmを超えるものは対象外とした。
【0058】
ろう付加熱前において芯材中に分布する円相当径0.05〜0.50μmのMn系化合物の平均粒子間距離が0.05μm未満の場合には、芯材中に存在するMn系化合物が過剰な状態となり、芯材のMn固溶量を十分に確保できない。その結果、ろう付加熱後において固溶強化による十分な強度向上が得られない。一方、上記平均粒子間距離が0.35μmを超える場合には、芯材中に分布するMn系化合物が不十分となり、ろう付加熱後において分散強化による十分な強度向上が得られない。好ましい上記平均粒子間距離は0.07〜0.32μmであり、より好ましい上記平均粒子間距離は0.10〜0.30μmである。
【0059】
ろう付加熱後の芯材中には、素材の製造工程で形成されたMn系化合物と、ろう付加熱中に形成されたMn系化合物が分布している。これらのMn系化合物のうち円相当径0.50μm以下のものにより、ろう付加熱後のフィン材において分散強化の効果が得られる。そこで、ろう付加熱後における芯材の金属組織として、Mn系化合物の分布状態を規定するものである。具体的には、ろう付加熱後における芯材の金属組織を、円相当径0.50μm以下のMn系化合物が0.45μm以下の平均粒子間距離で存在する分布状態を有するものとする。なお、Mn系化合物のうち円相当径が0.50μmを超えるものについては、0.50μm以下のものより密度が非常に小さく、平均粒子間距離をほとんど増減させないため対象外とした。上記平均粒子間距離が0.45μmを超える場合には、芯材中に分布するMn系化合物が不十分となり、ろう付加熱後において分散強化による十分な強度が得られない。ろう付加熱後の好ましい上記平均粒子間距離は0.40μm以下、より好ましい上記平均粒子間距離は0.35μm以下である。なお、平均粒子間距離の下限値は特に限定するものではないが、本発明で用いる芯材のアルミニウム合金組成と製造方法に依存するが、本発明では0.10μm程度となる。
【0060】
以上のような合金組成と材料特性を有するアルミニウム合金ブレージングシートフィン材は、薄肉でありながらろう付加熱後の強度に優れ、更に、良好な耐高温座屈性、ろう付性及び自己耐食性を有する。
【0061】
2.アルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法
本発明に係る熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材の製造方法について以下に説明する。
【0062】
2−1.製造方法の特徴
まず、Al地金やAl母合金を溶解炉で溶解し、所定のアルミニウム合金組成を有するろう材合金や芯材合金が得られるように溶湯の成分を調整する。この溶湯を半連続鋳造法により鋳造して、ろう材と芯材の鋳塊を得る。芯材鋳塊には、均質化処理を施さないか、或いは、施しても高温での均質化処理とはしない。次に、ろう材鋳塊と芯材鋳塊を面削する。芯材鋳塊の厚さを考慮してろう材鋳塊を熱間圧延し、所定のクラッド率を達成できる厚さのろう材圧延板を作製する。このろう材圧延板を芯材鋳塊の両面に重ね合わせて合わせ材を得る。合わせ材を所定の温度で加熱して熱間合わせ圧延を開始する。所定の熱間圧延率に達したときの圧延板が所定の温度となるよう圧延板の温度を制御してクラッド材を得る。このクラッド材を途中で焼鈍することなく高圧延率で一次冷間圧延し、この冷間圧延材を所定の加熱条件で焼鈍する。その後、二次冷間圧延して所定の最終板厚としたブレージングシートフィン材を得る。これに代わって、熱間合わせ圧延したクラッド材を、途中で焼鈍することなく最終板厚まで高圧延率で冷間圧延し、その後、冷間圧延材を所定の加熱条件で焼鈍してブレージングシートフィン材を得てもよい。
【0063】
本発明において規定する芯材の金属組織を制御するには、製造工程における材料への入熱を適切に制御する必要がある。そこで、芯材鋳造工程、均質化処理工程、熱間合わせ圧延工程、ならびに、焼鈍工程における材料への入熱を以下のように制御する。なお、冷間圧延中の材料への入熱は僅かであるため金属組織にほとんど影響を与えないが、冷間圧延率はその後の焼鈍工程における組織制御に影響するため制御する。
【0064】
2−2.鋳造工程
芯材用及びろう材用のアルミニウム合金は、半連続鋳造法によりそれぞれ鋳造される。芯材の鋳塊の金属組織は、鋳造工程における溶湯凝固時の冷却速度と凝固後の鋳塊の冷却速度によって変化する。いずれの冷却速度も速めることにより、芯材鋳塊における適切なMn固溶量を確保できるので、ろう付加熱前の芯材のMn固溶量を確保できる。
【0065】
溶湯凝固時の平均冷却速度は、0.5℃/秒以上であるのが好ましい。平均冷却速度が0.5℃/秒未満の場合には、冷却過程においてMn系化合物が過剰に晶出してMn固溶量を十分に確保できない。溶湯凝固時の冷却速度を速めるのは、溶湯温度を低くすること、冷却水量を増加すること、ならびに、潤滑油量を増加することの一つ以上により達成される。
【0066】
凝固後の芯材鋳塊の冷却速度、すなわち、芯材鋳塊を550℃から200℃まで冷却する際の平均冷却速度は0.10℃/秒以上とする。Mn系化合物の固溶と析出の挙動においては、凝固後の550℃から200℃までの間の平均冷却速度が極めて重要である。200℃未満の温度ではアルミニウム合金中において原子が殆ど拡散せず、Mn系化合物は殆ど析出しない。また、金型の外部に送り出された時点で、鋳塊のその場所は600℃程度であるため、550℃程度以下で鋳塊の温度測定が可能となる。従って、温度範囲を550℃から200℃までとした。上記冷却速度が0.10℃/秒未満の場合には、冷却過程においてMn系化合物が過剰に析出してMn固溶量を十分に確保できない。凝固後の冷却速度を速めるのは、冷却水量を増加すること、及び/又は、鋳造速度を遅くすることにより達成される。上記平均冷却速度は、好ましくは0.13℃/以上である。なお、この平均冷却速度の上限値は、鋳造方法や装置によって決まるが、本発明では0.2℃/秒程度である。
【0067】
2−3.均質化処理工程
芯材鋳塊には、均質化処理を施しても、或いは、施さなくてもよい。均質化処理を施す場合には、510℃以上の高温での処理を施さないこととする。すなわち、均質化処理を施す場合には、510℃未満の温度での処理とする。510℃以上で均質化処理すると、Mn系化合物が過剰に析出して芯材鋳塊において適切なMn固溶量を確保できない。熱間合わせ圧延前に合わせ材を加熱する工程で芯材鋳塊の均質化が実質的に達成できるため、芯材鋳塊には均質化処理を施さないのが好ましい。なお、510℃未満で均質化処理を行う場合の処理時間は、0.5〜12時間とする。0.5時間未満では均質化が不十分となり、12時間を超えると適切なMn固溶量を確保できない。
【0068】
2−4.熱間合わせ圧延工程
熱間合わせ圧延工程において、芯材鋳塊の両面にろう材を重ね合わせてなる合わせ材は420〜500℃に加熱し、これを熱間圧延する。加熱温度が420℃未満の場合には、熱間合わせ圧延の変形抵抗が大きくなり合わせ圧延が困難となる。一方、加熱温度が500℃を超える場合には、圧延時の加工発熱等により圧延材の温度が510℃を超えることがある。その結果、芯材中にMn系化合物が過剰に析出して芯材中における適切なMn固溶量を確保できない。好ましい加熱温度は、430〜490℃である。また、加熱保持時間は0.5〜12時間が好ましい。保持時間が0.5時間未満の場合には、鋳塊サイズや加熱炉によっては合わせ材全体が均一な所定温度に達しない虞がある。その結果、Mnの固溶量とMn系化合物の析出が芯材内で不均一となるだけでなく、ろう材と芯材の圧着不良が発生する虞がある。一方、保持時間が12時間を超える場合には、芯材中にMn系化合物が過剰に析出して芯材中における適切なMn固溶量を確保できない。
【0069】
また、合わせ材を加熱する際において、加熱温度に達するまでの昇温時間を短くすれば、芯材での過剰なMn系化合物の析出を抑制でき、芯材における適切なMn固溶量を確保できる。従って、加熱温度に達するまでの昇温時間は、15時間以下とするのが好ましい。
【0070】
熱間合わせ圧延を開始してから合わせ材の板厚が10%減少するまでに(熱間圧延率が10%に達したとき)、芯材とろう材との圧着(クラッド)が完了し、この時点での圧延板の温度を450℃以下に制御すれば芯材中の適切なMn固溶量を確保できる。しかしながら、この温度が低すぎると圧着不良が発生し易い。そこで、熱間圧延率が10%に達したときの圧延板の温度を370〜450℃とする。上記圧延途中の圧延板温度が370℃未満の場合には、ろう材と芯材を十分に圧着できない。一方、圧延途中の圧延板温度が450℃を超える場合には、芯材中のMn系化合物が過剰に析出して芯材の適切なMn固溶量を確保できない。熱間圧延率が10%に達したときの圧延板の好ましい温度は、380〜440℃である。
【0071】
また、熱間圧延中の材料は、200℃以上の高温でありながら歪が導入されている。このような高温、かつ歪導入下では、芯材中にMn系化合物が析出し易い。熱間合わせ圧延終了時の温度を低くし、かつ、熱間合わせ圧延工程の総時間を短くするよう制御することにより、芯材中の適切なMn固溶量を確保できる。熱間圧延終了時の圧延板温度は370℃未満とするのが好ましく、350℃以下とするのがより好ましく、熱間圧延工程の総時間は60分以下とするのが好ましく、40分以下とするのがより好ましい。
【0072】
以上のような熱間圧延板の温度制御は、圧延ロールの温度、潤滑冷却液の噴射口数、潤滑冷却液の噴射量、1パスの圧下量及び通板速度の一つ以上の調整によって達成することができる。
【0073】
熱間合わせ圧延工程後に、途中で焼鈍工程を設けることなく圧延板は一次冷間圧延工程にかけられる。歪導入下では芯材中にMn系化合物が析出し易い。そこで、熱間合わせ圧延工程後の一次冷間圧延工程での圧延率を85.0〜99.5%とする。一次冷間圧延率が85.0%未満の場合には、次の焼鈍工程において芯材におけるMn系化合物の析出が不十分となり、Mn系化合物が密に分散した芯材の金属組織が得られない。一方、一次冷間圧延率が99.5%を超える場合には、次の焼鈍工程において芯材中にMn系化合物が過剰に析出して芯材における適切なMn固溶量を確保できない。好ましい一次冷間圧延率は、91.0〜99.0%である。
【0074】
焼鈍工程において芯材を再結晶させる場合には、焼鈍温度を300〜450℃とする必要がある。一次冷間圧延工程で歪が導入された圧延材に、450℃以下の低温で焼鈍が施される。焼鈍温度を450℃以下とすることにより、芯材中にMn系化合物を密に析出させることができる。焼鈍温度が300℃未満の場合には、芯材が再結晶しない虞がある。一方、焼鈍温度が450℃を超える場合には、芯材中にMn系化合物が過剰に析出して芯材における適切なMn固溶量を確保できない。芯材を再結晶させる場合の好ましい焼鈍温度は310〜440℃、より好ましい焼鈍温度は310〜430℃である。また、焼鈍方法は、連続式焼鈍とバッチ式焼鈍のいずれを用いても良い。
【0075】
上記に代えて焼鈍工程において芯材を再結晶させない場合には、焼鈍温度を150℃以上300℃未満とする必要がある。焼鈍温度が150℃未満の場合には、芯材の回復が不十分なため、ろう付加熱中の再結晶粒が微細となり耐高温座屈性及び自己耐食性が確保できない。一方、焼鈍温度が300℃以上の場合には、芯材が再結晶する虞がある。芯材を再結晶させない場合の好ましい焼鈍温度は160〜290℃、より好ましい焼鈍温度は170〜280℃である。また、焼鈍方法は、連続式焼鈍とバッチ式焼鈍のいずれを用いても良い。
【0076】
また、焼鈍工程において芯材を再結晶させる場合においても、再結晶させない場合においても、焼鈍工程での加熱保持時間は0.5〜12時間が好ましい。加熱保持時間が0.5時間未満の場合には、冷間圧延材が均一に所定温度に達しない虞があり、Mnの固溶量とMn系化合物の析出が芯材内で不均一となり、品質にバラツキが発生する虞がある。一方、加熱保持時間が12時間を超える場合には、芯材中にMn系化合物が過剰に析出して芯材における適切なMn固溶量を確保できない虞がある。
【0077】
焼鈍工程において芯材を再結晶させた場合には、焼鈍工程後に圧延板を二次冷間圧延工程にかける。これにより焼鈍時に生じた再結晶を加工組織とし、フィンの成形性を確保できる。二次冷間圧延工程での圧延率は、10〜85%とする。この冷間圧延率が10%未満の場合には、ろう付加熱中に芯材が再結晶しない虞があり耐高温座屈性や自己耐食性を確保できない。一方、二次冷間圧延での圧延率が85%を超える場合には、ろう付加熱中の芯材再結晶粒が微細となり、耐高温座屈性や自己耐食性を確保できない。好ましい二次冷間圧延率は15〜65%であり、より好ましい二次冷間圧延率は20〜60%である。
【0078】
焼鈍工程において芯材を再結晶させない場合には、焼鈍工程後に圧延板を二次冷間圧延にかける。この場合の二次冷間圧延率は、3〜40%とする。この冷間圧延率が3%未満の場合には、安定した製造が困難である。一方、この二次冷間圧延率が40%を超える場合には、ろう付加熱中の芯材再結晶粒が微細となり、耐高温座屈性や自己耐食性を確保できない。芯材を再結晶させない場合における好ましい二次冷間圧延率は6〜35%であり、より好ましい二次冷間圧延率は10〜30%である。
【0079】
また、焼鈍工程において芯材を再結晶させる場合においても、再結晶させない場合においても、フィンの成形性を確保するために、二次冷間圧延後に低温で焼鈍することにより素材の機械特性を微調整することができる。この場合の焼鈍温度は、300℃未満とする。この焼鈍温度が300℃以上の場合には、芯材が再結晶する虞がある。芯材を再結晶させない好ましい焼鈍温度は290℃未満、より好ましい焼鈍温度は280℃未満である。なお、焼鈍温度の下限値は特に限定されるものではないが、フィンの成形性を確保するには少なくとも100℃とする必要がある。
【0080】
なお、焼鈍工程において芯材を再結晶させない場合には、熱間合わせ圧延工程後のクラッド材を途中で焼鈍することなく最終板厚まで冷間圧延する冷間圧延工程と、冷間圧延工程後においてクラッド材を焼鈍する焼鈍工程とを設けるようにしてもよい。熱間合わせ圧延工程後の冷間圧延工程での圧延率は、85.0〜99.5%とする。この冷間圧延率が85.0%未満の場合には、次の焼鈍工程において芯材におけるMn系化合物の析出が不十分となり、Mn系化合物が密に分散した芯材の金属組織が得られない。一方、上記冷間圧延率が99.5%を超える場合には、次の焼鈍工程において芯材中にMn系化合物が過剰に析出して芯材における適切なMn固溶量を確保できない。好ましい上記冷間圧延率は、91.0〜99.0%である。
【0081】
上記冷間圧延工程後の焼鈍温度は、150℃以上300℃未満とする必要がある。焼鈍温度が150℃未満の場合には、芯材の回復が不十分なため、ろう付加熱中の再結晶粒が微細となり耐高温座屈性及び自己耐食性が確保できない。一方、焼鈍温度が300℃以上の場合には、芯材が再結晶する虞がある。芯材を再結晶させない場合の好ましい焼鈍温度は160〜290℃、より好ましい焼鈍温度は170〜280℃である。また、焼鈍方法は、連続式焼鈍とバッチ式焼鈍のいずれを用いても良い。
【0082】
また、この焼鈍工程での加熱保持時間は0.5〜12時間が好ましい。加熱保持時間が0.5時間未満の場合には、冷間圧延材が均一に所定温度に達しない虞があり、Mnの固溶量とMn系化合物の析出が芯材内で不均一となり、品質にバラツキが発生する虞がある。一方、加熱保持時間が12時間を超える場合には、芯材中にMn系化合物が過剰に析出して芯材における適切なMn固溶量を確保できない虞がある。
【実施例】
【0083】
以下に、本発明の実施例を本発明例と比較例とともに示す。なお、以下の実施例は、本発明の効果を示すためのものであり、その実施例が本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0084】
表1に示す合金組成を有する芯材合金と、表2に示す合金組成を有するろう材合金を、それぞれ半連続鋳造法により鋳造し、芯材鋳塊とろう材鋳塊を得た。芯材鋳塊は、均質化処理したものと均質化処理を省いたものを作製した。ろう材鋳塊には、均質化処理を施していない。次に、それぞれの鋳塊を面削した。更に、所定のクラッド率が得られる板厚までろう材鋳塊を500℃に加熱してから熱間圧延した。その後、熱間圧延したろう材圧延板を芯材鋳塊の両面に貼り合わせ、この合わせ材を加熱してから熱間合わせ圧延を行いクラッド材を作製した。熱間合わせ圧延後に、一次冷間圧延を行なって焼鈍した。焼鈍後に、芯材を再結晶させたクラッド材と再結晶させなかったクラッド材は、それぞれ更に最終板厚まで二次冷間圧延を行ってブレージングシートフィン材の試料とした。また、熱間合わせ圧延後に、一次冷間圧延ではなく最終板厚まで冷間圧延して焼鈍したブレージングシートフィン材の試料(再結晶させなかったクラッド材)も作製した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
なお、表1、表2の合金組成表において、「−」は、スパーク放電発光分光分析装置の検出限界以下の含有量であったことを意味し、「残部」は残部Alと不可避的不純物からなることを意味する。
【0088】
また、上記のようにして作製したブレージングシートフィン材を用いて、ろう付加熱を行った。このろう付加熱は、ろう付相当の加熱であり、具体的には、ブレージングシートフィン材を窒素ガス雰囲気炉内で加熱して600℃で3分間保持し、次いで、100℃/分の冷却速度で室温まで冷却するものである。
【0089】
上記製造工程における、芯材とろう材の組み合わせ、芯材鋳塊の平均冷却速度(550℃から200℃までの)、均質化処理温度、熱間合わせ圧延における合わせ材の加熱温度、熱間圧延率10%時点での圧延板の温度、一次冷間圧延率、焼鈍温度、焼鈍後の組織、片面平均クラッド率、二次冷間圧延率、最終焼鈍温度、最終板厚及び製造性を表3、4に示す。なお、以上の製造工程において問題が発生せず、最終板圧まで圧延できた場合は製造性を「○」とし、鋳造又は圧延時における割れ、芯材とろう材の圧着不良が生じて最終板厚まで製造できなかった場合は製造性を「×」とした。また、溶湯凝固時の平均冷却速度は0.5〜2.0℃/秒とし、合わせ材を加熱する際において、加熱温度に達するまでの昇温時間は8〜15時間とし、熱間合わせ圧延工程の終了時における圧延板温度は200〜370℃とした。
【0090】
なお、表3、4において、本発明例1、4、8、9、11、12、16、18〜20、ならびに、比較例21〜45、49〜50は、請求項8の本発明例及び比較例であり、本発明例2、5、10、13〜15、17、ならびに、比較例46、47は、請求項9の本発明例及び比較例であり、本発明例3、6,7、ならびに、比較例48は、請求項11の本発明例及び比較例である。ここで、本発明例9、10は、請求項10の実施態様を示すものであり、本発明例3、12、14、ならびに、比較例30、34、36、49、50は、請求項12の実施態様を示すものである。また、請求項11の本発明例及び比較例では、冷間圧延工程における圧延率を一次冷間圧延の欄に示し、二次冷間圧延工程後の最終焼鈍は行なわないので、二次冷間圧延工程後の最終焼鈍温度の欄は「−」で示した。
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
以上製造したブレージングシートフィン材の試料について、ろう付加熱前後における導電率と平均粒子間距離の測定、ろう付加熱後における引張強さの測定、ならびに、高温座屈性、ろう付性及び自己耐食性の評価を行った。測定方法及び評価方法は、下記の通りである。なお、表4において製造性が「×」のものは試料を製造できなかったため、これらの評価を行うことができなかった。
【0094】
(導電率の測定)
ろう付加熱前後の各試料について、20℃の恒温曹内で、JIS H0505に基づき電気抵抗を測定した。同一試料の3箇所で測定し、それらの算術平均値をもって導電率とした。
【0095】
(平均粒子間距離の測定)
ろう付加熱前後の各試料について、板厚中央のL−LT面を透過型電子顕微鏡(TEM)により5万倍の倍率で撮影し、ろう付加熱前の試料については円相当径0.05〜0.50mmのMn系化合物の平均粒子間距離を、ろう付加熱後の試料については円相当径0.50mm以下の平均粒子間距離を、それぞれ画像解析ソフトで測定した。同一試料について、5視野で測定を行ってそれらの算術平均値をもって平均粒子間距離とした。
【0096】
なお、本発明において規定する平均粒子間距離とは、TEM画像における全粒子の中心点同士を半直線で結ぶ際において、全ての半直線が交差しないように粒子同士を半直線で結んだときの粒子表面間距離の平均値として定義される。また、TEM画像における黒いコントラストの粒子がMn系化合物であることは、エネルギー分散形X線分光器(EDS)を用いた元素分析により確認した。
【0097】
(引張強さの測定)
ろう付加熱後の各試料をJIS13号Bに準拠した形状とし、室温で引張試験を行って引張強さを測定した。ろう付加熱後の引張強度が130MPa以上の場合を合格(○)とし、130MPa未満の場合を不合格(×)と判定した。
【0098】
(耐高温座屈性の評価)
サグ試験装置を用いた耐高温座屈性評価の模式図を、図1(a)〜(c)に示す。各試料から幅16mm、長さ60mmの試験片1を切り出し、試験台2上に固定治具3を用いて50mmの張り出し部を片持ちで保持してろう付加熱した後、試験片1の垂下量を測定した。図1(a)は加熱前の状態における正面からの模式図、図1(b)は図1(a)の状態における平面からの模式図、図1(c)は加熱後の垂下した状態における正面からの模式図を表す。ろう付加熱後の垂下量が30mm未満の場合を耐高温座屈性が合格(○)とし、垂下量が30mm以上の場合を耐高温座屈性が不合格(×)と判定した。
【0099】
(ろう付性の評価)
ろう付性評価に用いた試験片の模式的な正面図を、図2に示す。各試料をコルゲート加工してフィン材4を作製し、図2に示すように、フィン材4の両側に板厚0.5mm、幅16mm、長さ60mmのA3003板5を組付けたミニコア試験片を作製した。このミニコア試験片を、濃度5%のフッ化物系フラックス懸濁液に浸漬して乾燥させた後にろう付加熱した。このミニコア試験片におけるフィン接合率が95%以上であり、かつ、フィン試料に溶融が生じていない場合をろう付性が合格(○)とし、フィン接合率が95%未満、及び/又は、フィン試料に溶融が生じた場合をろう付性が不合格(×)と判定した。
【0100】
なお、フィン接合率とは、フィン材4と板5の接合長さの合計を、コルゲートフィンの幅の長さ)×(フィンの山の数)で除したものとして定義した。フィン材4と板5の接合長さの合計は、ろう付加熱後のミニコア試験片においてフィン材4から板5を剥がし、各接合部の長さを測定しこれらを合計した。
【0101】
(自己耐食性の評価)
ろう付加熱後の各試料の単板について、ASTM G85に準拠したSWAAT(Sea WaterAcetic Acid Test)試験を30時間行い、各試料の腐食状態を調査した。腐食が板厚を貫通していない場合を自己耐食性が合格(○)とし、腐食が板厚を貫通した場合を自己耐食性が不合格(×)とした。
【0102】
以上の試験結果と評価結果を表5、6に示す。
【0103】
【表5】
【0104】
【表6】
【0105】
以下、表5、6を参照して結果について検討する。まず、本発明例1〜18では芯材及びろう材の合金組成が本発明で規定する範囲にあり、また、その製造条件も本発明で規定する条件を満たすものである。これらの本発明例では、製造性も良好であり、ろう付加熱前後の導電率と金属組織も条件を満たしていた。そして、これらの本発明例では、ろう付加熱後の引張強さ、耐高温座屈性、ろう付性、自己耐食性のいずれも合格であった。
【0106】
次に、比較例について検討する。比較例19〜26では、芯材の合金組成が本発明で規定する範囲外であり、以下のような結果となった。
【0107】
比較例21では、芯材のSi含有量が過少であったため、ろう付加熱後にMn系化合物の形成が不十分であった。その結果、ろう付加熱後における粒子間距離が大きくなり、ろう付加熱後の強度が不合格となった。
【0108】
比較例22では、芯材のFe含有量が過少であったため、ろう付加熱後にMn系化合物の形成が不十分であった。その結果、ろう付加熱後における粒子間距離が大きくなり、ろう付加熱後の強度が不合格となった。
【0109】
比較例23では、芯材のSi含有量が過多であったため、また、Si+Fe≦Mnの関係を満たさなかったため、ろう付加熱前後の導電率が大きくなった。その結果、芯材の適切なMn固溶量を確保できず、ろう付加熱後の強度が不合格となった。更に、耐高温座屈性、ろう付性及び自己耐食性も不合格となった。
【0110】
比較例24では、芯材のFe含有量が過多であったため、ろう付加熱後の導電率が大きくなった。その結果、芯材の適切なMn固溶量を確保できず、ろう付加熱後の強度が不合格となった。更に、耐高温座屈性、ろう付性及び自己耐食性も不合格となった。
【0111】
比較例25では、芯材のMn含有量が過少であったため、ろう付加熱前後の導電率が大きくなった。その結果、芯材の適切なMn固溶量を確保できず、ろう付加熱後の強度が不合格となった。また、ろう付加熱前後におけるMn系化合物の形成が不十分であったため、ろう付加熱後における粒子間距離が大きくなり、これまた、ろう付加熱後の強度が不合格となる原因となった。更に、芯材のZn含有量が過多であったため、自己耐食性も不合格となった。
【0112】
比較例26では、芯材のMn含有量が過多であったため冷間圧延中に割れが生じ、ブレージングシートフィン材を製造できなかった。
【0113】
比較例27では、芯材のZr、Ti、Cr、Vの含有量が過多であったため冷間圧延中に割れが生じ、ブレージングシートフィン材を製造できなかった。
【0114】
比較例28では、芯材のSiとFe含有量の総量がMn含有量を超えたため、ろう付加熱前後の導電率が大きくなった。その結果、芯材の適切なMn固溶量を確保できず、ろう付加熱後の強度が不合格となった。また、ろう付加熱後におけるMn系化合物の形成が不十分であった。その結果、ろう付加熱後における粒子間距離が大きくなり、これまた、ろう付加熱後の強度が不合格となる原因となった。更に、耐高温座屈性、ろう付性及び自己耐食性も不合格となった。
【0115】
比較例29〜32では、ろう材の合金組成が本発明で規定する範囲外であり、以下のような結果となった。
【0116】
比較例29では、ろう材のZn含有量が過多であったため自己耐食性が不合格となった。
【0117】
比較例30では、ろう材のSi含有量が過少であったためろう付性が不合格となった。また、ろう材のCu含有量が過多であったため自己耐食性が不合格となった。
【0118】
比較例31では、ろう材のSi含有量が過多であったため、耐高温座屈性が不合格となった。また、ろう材のZn含有量が過少であったため、自己耐食性が不合格となった。
【0119】
比較例32では、ろう材のFe含有量が過多であったため、ろう付性及び自己耐食性が不合格となった。また、ろう材のCu含有量が過少であったため、ろう付加熱後の強度が不合格となった。
【0120】
比較例33〜52では、製造条件が本発明で規定する条件から外れたものであり、以下のような結果となった。
【0121】
比較例33では、片面平均クラッド率が過小であったため,ろう付加熱後の強度及びろう付性が不合格となった。
【0122】
比較例34では、片面平均クラッド率が過大であったため,耐高温座屈性及び自己耐食性が不合格となった。
【0123】
比較例35では、芯材鋳塊の平均冷却速度が遅過ぎたため、ろう付加熱前後の導電率が大きくなった。その結果、芯材の適切なMn固溶量を確保できず、ろう付加熱後の強度が不合格となった。更に、耐高温座屈性も不合格となった。
【0124】
比較例36では、芯材鋳塊の均質化処理温度が高過ぎたため、ろう付加熱前後の導電率が大きくなった。その結果、芯材の適切なMn固溶量を確保できず、ろう付加熱後の強度が不合格となった。また、ろう付加熱前におけるMn系化合物の形成が不十分であった。その結果、ろう付加熱前における粒子間距離が大きくなり、これまた、ろう付加熱後の強度が不合格となる原因となった。更に、耐高温座屈性も不合格となった。
【0125】
比較例37では、合わせ材の加熱温度が低過ぎたため芯材とろう材との圧着不良が発生し、ブレージングシートフィン材を製造できなかった。
【0126】
比較例38では、合わせ材の加熱温度が高過ぎたため、ろう付加熱前後の導電率が大きくなった。その結果、芯材の適切なMn固溶量を確保できず、ろう付加熱後の強度が不合格となった。更に、耐高温座屈性も不合格となった。
【0127】
比較例39では、熱間圧延率が10%に達したときの圧延板の温度が低過ぎたため、ろう付加熱前後におけるMn系化合物の形成が不十分であった。その結果、ろう付加熱前後における粒子間距離が大きくなり、ろう付加熱後の強度が不合格となった。
【0128】
比較例40では、熱間圧延率が10%に達したときの圧延板の温度が高過ぎたため、ろう付加熱前後の導電率が大きくなった。その結果、芯材の適切なMn固溶量を確保できず、ろう付加熱後の強度が不合格となった。更に、耐高温座屈性も不合格となった。
【0129】
比較例41では、一次冷間圧延率が低過ぎたため、ろう付加熱前後におけるMn系化合物の形成が不十分であった。その結果、ろう付加熱前後における粒子間距離が大きくなり、ろう付加熱後の強度が不合格となった。
【0130】
比較例42では、一次冷間圧延率が高過ぎたため、ろう付加熱前後の導電率が大きくなった。その結果、芯材の適切なMn固溶量を確保できず、ろう付加熱後の強度が不合格となった。
【0131】
比較例43では、焼鈍温度が高過ぎたため、ろう付加熱前後の導電率が大きくなった。その結果、芯材の適切なMn固溶量を確保できず、ろう付加熱後の強度が不合格となった。
【0132】
比較例44では、焼鈍工程で再結晶させた後の二次冷間圧延率が低過ぎたため、ろう付加熱中に芯材へのろう侵食が発生し、ろう付加熱後の強度が不合格となった。更に、耐高温座屈性、ろう付性及び自己耐食性も不合格となった。
【0133】
比較例45では、焼鈍工程で再結晶させた後の二次冷間圧延率が高過ぎたため、ろう付加熱中に芯材へのろう侵食が発生し、ろう付加熱後の強度が不合格となった。更に、耐高温座屈性、ろう付性及び自己耐食性も不合格となった。
【0134】
比較例46では、焼鈍温度が低過ぎたため、ろう付加熱前後におけるMn系化合物の形成が不十分であった。その結果、ろう付加熱前後における粒子間距離が大きくなり、ろう付加熱後の強度が不合格となった。
【0135】
比較例47では、焼鈍工程で再結晶させなかった後の二次冷間圧延率が高過ぎたため、ろう付加熱中に芯材へのろう侵食が発生し、ろう付加熱後の強度が不合格となった。更に、耐高温座屈性、ろう付性及び自己耐食性も不合格となった。
【0136】
比較例48では、焼鈍温度が低過ぎたため、ろう付加熱前後におけるMn系化合物の形成が不十分であった。その結果、ろう付加熱前後における粒子間距離が大きくなり、ろう付加熱後の強度が不合格となった。
【0137】
比較例49では、板厚が薄過ぎたため、自己耐食性が不合格となった。
【0138】
比較例50では、板厚が厚すぎたため、ろう付加熱前後におけるMn系化合物の形成が不十分であった。その結果、ろう付加熱前後における粒子間距離が大きくなり、ろう付加熱後の強度が不合格となった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明に係る熱交換器用のアルミニウム合金製ブレージングシートフィン材は、ろう付加熱後の強度に優れ、更に良好な耐高温座屈性、ろう付性及び自己耐食性を有し、更に、薄肉化により従来のものと比較して軽量化できることから、特に自動車の熱交換器用として産業上顕著な利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0140】
1・・・試験片
2・・・試験台
3・・・固定治具
4・・・フィン材
5・・・板
図1
図2