特許第6758331号(P6758331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6758331付着防止コーティングプライマー組成物およびそれらの調製のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758331
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】付着防止コーティングプライマー組成物およびそれらの調製のための方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 179/08 20060101AFI20200910BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20200910BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20200910BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20200910BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20200910BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20200910BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   C09D179/08 A
   C09D5/00 D
   C09D7/20
   C09D7/63
   B05D7/24 302X
   B05D7/24 303B
   B05D3/02 Z
   B05D5/00 H
   C09D179/08 B
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-567193(P2017-567193)
(86)(22)【出願日】2016年6月23日
(65)【公表番号】特表2018-524445(P2018-524445A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】FR2016051552
(87)【国際公開番号】WO2016207563
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年3月15日
(31)【優先権主張番号】1555826
(32)【優先日】2015年6月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルバラ ギャンチョン
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−503622(JP,A)
【文献】 特開平04−306241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂のマトリックスを含む付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物であって、200nm未満の大きさのシリカドメインが、極性非プロトン溶媒中のポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂のマトリックスに分散されており、フッ化炭素樹脂を含まないことを特徴とする、ハイブリッドプライマー組成物。
【請求項2】
前記シリカドメインの相対的乾燥重量は、前記ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂マトリックスに対して、前記ハイブリッドプライマー組成物において10〜25%の間である、請求項1に記載のハイブリッドプライマー組成物。
【請求項3】
前記極性非プロトン溶媒は、前記組成物の合計重量に対して1から70重量%の濃度で存在する、請求項1または2に記載のハイブリッドプライマー組成物。
【請求項4】
付着防止コーティングプライマー組成物であって、
− ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂と、
− アルコキシシランおよび/または金属アルコキシレートと、
− 前記ポリイミド樹脂および/または前記ポリアミド−イミド樹脂と、前記アルコキシシランおよび/または前記金属アルコキシレートとを結び付けることができるカップリング剤と、
− 極性非プロトン溶媒と
を含み、フッ化炭素樹脂を含まないことを特徴とする、組成物。
【請求項5】
前記アルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン、メチルトリエトキシシラン(MTES)、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランおよびこれらの混合物から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記カップリング剤の合計の相対的な乾燥重量含有量は、前記ポリイミド樹脂および/または前記ポリアミド−イミド樹脂に対して、前記プライマー組成物の2〜20%の間である、請求項またはに記載の組成物。
【請求項7】
前記カップリング剤は、シラザン、シラン誘導体およびこれらの混合物から選択される、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記極性非プロトン溶媒は、前記組成物の合計重量に対して1から70重量%の濃度で存在する、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物の少なくとも1つの層を含む、付着防止コーティング。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物または請求項のいずれか一項に記載の付着防止コーティングプライマー組成物を調製する方法であって、
a)カップリング剤を、前記ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂ならびに前記極性非プロトン溶媒を含む溶液に導入するステップと、
b)塩基性媒体において、前記アルコキシシランおよび/または前記金属アルコキシレート、ならびに水を、ステップa)の結果として生じた混合物に添加するステップと
を含む、方法。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか一項に記載の付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物を調製する方法であって、
a)カップリング剤を、前記ポリイミド樹脂および/または前記ポリアミド−イミド樹脂ならびに前記極性非プロトン溶媒を含む溶液に導入するステップと、
b)アルコキシシランおよび/または予備加水分解された金属アルコキシレートを、ステップa)の結果として生じた混合物に添加するステップと
を含む、方法。
【請求項12】
c)前記アルコキシシランおよび/または前記金属アルコキシレートを加水分解して、予備加水分解されたアルコキシシランおよび/または金属アルコキシレートを生成するステップを更に含み、この加水分解ステップc)はステップb)の前に実施され、
− 塩基性環境における、前記アルコキシシランおよび/または前記金属アルコキシレートの、水とアルコールの混合物中での加水分解、または
− 塩基性環境における、前記アルコキシシランおよび/または前記金属アルコキシレートの、水と極性非プロトン溶媒の混合物中での加水分解
を含む、付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物の調製のための、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項に記載の付着防止コーティングを含む物品を製造する方法であって、
A)2つの対向面を有する基材を用意するステップと、
B)前記基材の少なくとも1つの表面に、
− 請求項1〜のいずれか一項に記載の付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物の少なくとも1つの層、または
− 請求項1012のいずれか一項に記載の方法によって得られた付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物の少なくとも1つの層
を適用するステップと
C)390℃〜430℃の間の温度で全ての集合体を焼結させるステップと
を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載に記載の方法によって得ることができる物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂をベースとする付着防止コーティングプライマー組成物に関する。本発明はまた、このような組成物の調製のための方法にも関する。最後に、本発明は、このような組成物を組み込んでいる付着防止コーティングおよびこのような付着防止コーティングを含む物品を製造する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
フッ化炭素樹脂、および特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をベースとする付着防止コーティングは、調理用品の分野で一般的に使用される。それらは、フッ化炭素樹脂および1つのバインダー樹脂を含有する少なくとも1つのプライマー層から作製される。次にこのプライマー層は、フッ化炭素樹脂、詳細にはPTFEをベースとする1つまたは複数の層でコーティングされ、ここでフッ化炭素樹脂の量は徐々に増加される。
【0003】
バインダー樹脂は、このプライマー層が基材上の他のフッ素含有層と接着することを可能にし、典型的には、ポリアミド−イミド(PAI)、ポリイミド(PI)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から作製される。
【0004】
プライマー層が薄い色となる特定の場合では、PES、PPSまたはPEEK樹脂が好ましい。
【0005】
しかしながら、これらの樹脂の使用は、これらが極性非プロトン溶媒を除いて難溶性であり、その大部分が、REACH規制によると有害または毒性産物としてさえ分類される対象となるため、容易ではない。これらの樹脂は、実際には、粉末形態での使用に好適である。しかしながら、十分に小さい粒度の粉末を得ることは困難で且つ費用がかかり、結果的に、これらのポリマーを10μm未満の平均サイズに粉砕することは困難である。結果的に、プライマー層におけるこれらの樹脂の分布は、したがって不均質であり、使用時の接着損失へとつながる。
【0006】
この趣旨で、溶液中か、または水に希釈され得る粉末として供給されるバインダー樹脂が、実行にはより容易である。しかしながら、これらは大量の溶媒を含有する。
【0007】
水に希釈され得る粉末の形態で送達されると、溶媒の制約はもはや問題ではないが、これらのバインダー樹脂は、たとえこれが、得られたコーティングの大部分の性質に影響を及ぼすことはないとしても、不十分な熱安定性を示す。実際、フッ化炭素樹脂、特にPTFEを焼結するステップ中に(370℃超および好ましくは415℃の温度において実施される)、少量のバインダー樹脂、詳細にはPAI樹脂は分解する。加えて、バインダー樹脂、詳細にはPAI樹脂の水性相の実現における不安定なアミンの使用は、かなりの割合の揮発性の有機化合物を作り出すことにつながり、且つ得られたコーティングの許容不能な黄変を起こす。
【0008】
他方では、ポリアミド酸でグラフトされたシリカは公知である(例えば、非特許文献1参照)。これらのグラフトされたシリカは、改善された熱安定性を示すが、しかしながら、一方では、出発化合物は既存のシリカであり、他方では全ての改質は溶媒媒体中で実施され、それらは溶媒媒体中における使用に推奨される。
【0009】
同様の手法で、PAI樹脂とアミノシランの混合物が記載されている(例えば、特許文献1および特許文献2の両方を参照)。これらの文書に記載される方法では、アミノシランは、既に水溶液中にある、すなわち、既に塩の形成のためにアミンを組み込んでおり、両方の例においてPAI樹脂の選択が与えられているPAI樹脂前駆物質、溶媒と混合され、この溶媒は液体形態における混合物に必要である。
【0010】
これらの特許文献は、黄変を起こし得る揮発性のアミンの存在か、または潜在的に有毒の極性非プロトン溶媒の存在のいずれかを免れない。
【0011】
最後に、且つ極めて従来的に、プライマー組成物の配合は、実際にはコロイド状シリカを導入して、得られたプライマーフィルムを補強することが必要である。使用される量は、10から20重量%の範囲である(乾燥フィルムに対して表される)。少量の添加は十分な補強を生み出すことはなく、且つ実際には、より多くの量を添加することは困難である。しかし、このレベルにおいてさえも、シリカ粒子の凝集が観察され得て、プライマーフィルムにおいて、フィルムの不浸透性に不利益をもたらすナノ多孔の形成を起こし、且つ非常に多数の腐食ポイントの出現へとつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第0386379号明細書
【特許文献2】仏国特許第2625450号明細書
【特許文献3】韓国特許出願第20090111951号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0245715号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Peng Liu,lranian polymer Journal 14,(11)2005,968−972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これらの欠点に対処し、且つ熱安定性および補強された機械的耐性を実証し、全く一方では弾性、良好な腐食耐性を維持し、そして一方では着色または黄変をかなり低減する付着防止コーティングを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本出願人は、ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂と、カップリング剤ならびにアルコキシシランおよび/または金属アルコキシレートとの反応を通して得られた、ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂をベースとする付着防止コーティングプライマー組成物を開発し、カップリング剤は、PIおよび/またはPAI樹脂が、アルコキシシランおよび/または金属アルコキシレートとつながることを可能にする。このような反応は、ゾル−ゲル型の反応を介して、それに続く架橋へとつながり、PIおよび/またはPAI樹脂マトリックス中に完全に分散されたナノスケールシリカドメインのネットワークのインサイチュの形成を伴い、有機−無機ハイブリッド構造が生成される。
【0016】
結果として生じた有機−無機ハイブリッド構造材料は、相乗的組み合わせとなるように設計されたナノ複合体である:
【0017】
有機相:バインダー樹脂PAIおよび/またはPIは、有機ポリマーマトリックスの役割を果たす。それは、得られたコーティングに、そのアミド官能基を介して柔軟性を、そのイミド環を介して高い熱安定性を提供する。一方、このようなポリマーマトリックスの延性は、詳細には、基材(ディスクなど)が続いて打ち抜きされなければならない場合に、その実施を促進する;且つ、
【0018】
無機相:ポリマーマトリックスに浸透したシリカ充填剤で、得られたコーティングの機械的耐性(硬度、剛性)、熱耐性および腐食耐性を補強する。この充填剤は、実際に、無機金属酸化物前駆物質を使用して、ゾル−ゲル反応を介して、ポリマーマトリックス中にインサイチュで作り出された、無機ナノスケールドメインのネットワーク(「ナノ形成された」と言われる)である。
【0019】
したがって、本発明は、有機相および無機相に共有結合されたカップリング剤によって、PAIおよび/またはPI(有機相)のバインダー樹脂を、新たに形成された無機相に結合させることに関する。このようなカップリング剤は、PAI樹脂および/またはPI樹脂のイミド環の開環およびイミド環との結合、ならびに選択された実施条件においてシリカを作り出すことが可能である。
【0020】
ポリアミド−イミド樹脂/シリカハイブリッド材料は、当業者に公知である。
【0021】
したがって、電線のコーティング用のポリアミド−イミド樹脂/シリカハイブリッド材料を生成する方法が記載されている(例えば、特許文献3参照)。記載された方法では、コロイド状シリカが有機シランに添加され、シリカシランをベースとするコロイド状シリカゾル(すなわち、その表面に有機基を伴うコロイド状シリカ)を形成する。次に、有機溶媒がコロイド状シリカゾルに添加され、これはポリアミド−イミド樹脂に組み込まれ、シリカおよびポリアミド−イミド樹脂のハイブリッドを生成する。
【0022】
最後に、アミノシランがゾル−ハイブリッド溶液に添加され、混合物を撹拌する。特許文献3に基づく方法は、カップリング剤を使用して、存在するシリカをPAI樹脂にグラフトする方法を記載している。しかし、それは、ポリマーマトリックスの全体にわたり良好に分散されたナノスケールシリカドメインを得ることを可能にする、インサイチュでシリカを作り出すゾル−ゲル方法を記載していない。
【0023】
更に、アミン−ベースのカップリング剤またはハロゲン化されたエポキシ基に依存する、カルボキシシランおよびポリマー樹脂からポリマー樹脂およびシリカの複合体フィルムを生成する方法が記載されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、この文献中の方法に基づいて使用されるポリマー樹脂は、PAI樹脂の前駆物質であり、且つPAI樹脂自体ではないポリアミド−アミド酸(PAA)である。この文献に記載された複合体フィルムは、電子およびマイクロ電子デバイスならびに光起電力素子のドメインに主に使用される。
【0024】
したがって、本発明の目的は、上記の不完全性を解決する付着防止コーティングプライマー組成物である。特に、これは、
【0025】
− ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂、
【0026】
− アルコキシシランおよび/または金属アルコキシレート、
【0027】
− ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂と、アルコキシシランおよび/または金属アルコキシレートとを結び付けることができるカップリング剤、ならびに
【0028】
− 極性非プロトン溶媒
を含む付着防止コーティングプライマー組成物に関する。
【0029】
本発明によれば、ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂と、アルコキシシランおよび/または金属アルコキシレートとを結び付けることができるカップリング剤という用語は、一方では、PIおよび/またはPAI樹脂に、および特に、PIおよび/またはPAI樹脂のイミド環につながることができる1つまたは複数の官能基、ならびに他方では、アルコキシシランおよび/または金属アルコキシレートと反応して、インサイチュでシリカを形成するのに好適な1つまたは複数の官能基を有する化合物を意味する。
【0030】
本発明によるプライマー組成物は、ポリアミド−イミド樹脂を含むことが好ましい。
【0031】
有利には、ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂は、前記プライマー組成物の合計重量に関して、本発明に基づくプライマー組成物の20から70重量%を、好ましくは、20から60重量%の間を構成し得る。
【0032】
有利には、本発明によるプライマー組成物中のアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン、メチルトリエトキシシラン(MTES)、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランおよびこれらの混合物の中から選択され得る。
【0033】
本発明によるプライマー組成物中のアルコキシシランに関して、テトラエトキシシラン(TEOS)が使用されることが好ましい。
【0034】
有利には、本発明によるプライマー組成物の金属アルコキシレートは、アルミネート、チタネート、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選択され得る。
【0035】
有利には、本発明によるプライマー組成物のアルコキシシランおよび/または金属アルコキシレートは、酸性または塩基性媒体のいずれかにおいて加水分解され得る。アルコキシシランおよび/または金属アルコキシレートは、塩基性媒体において加水分解されることが好ましい。酸性媒体では、加水分解反応は縮合反応の前に迅速に起こり、混合物のゲル化へとつながる;塩基性媒体では、反対に、縮合反応が加水分解よりかなり速く起きて、コロイド状溶液を得ることを可能にする。
【0036】
有利には、本発明によるプライマー組成物はまた、アルコールを更に含有し得る。
【0037】
本発明によるプライマー組成物において使用され得るアルコールの中で、注目すべき例として、テルピネオール、プロパン−2−オール、メタノール、(2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール)、イソプロパノール、グリコール(例えば、ブチルグリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル(EGBE)、テキサノール(化学名:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、メトキシプロパノールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
有利には、カップリング剤の乾燥重量による相対的な合計量は、本発明によるプライマー組成物において、ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂に対して、2〜20%の間を構成し得る。
【0039】
本発明によるプライマー組成物において使用され得るカップリング剤の中で、注目すべき例として、シラザン(および好ましくはヘキサメチルジシラザン)、シラン誘導体、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
本発明によるプライマー組成物において使用され得るシラン誘導体の中で、注目すべき例として、3−アミノメチルトリメトキシシラン(APrTMOSまたはAPTMOS)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTESまたはAPrTEOS)、3−アミノプロピルトリ(メトキシエトキシ−エトキシ)シラン、(4−アミノブチル)トリエトキシシラン、(3−アミノフェニル)トリメトキシシラン(APTMOS)、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTEOS)、11−アミノウンデシルトリエトキシシラン、アミノプロピル−シラントリオール、ビス(メチルジエトキシシリルプロピルアミン)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、およびこれらの混合物などのアミノシランが挙げられる。本発明によるプライマー組成物のカップリング剤は、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)であることが好ましい。
【0041】
本発明によるプライマー組成物において使用され得るシラン誘導体の中で、注目すべき例として、エポキシシラン(好ましくはグリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS))、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GTMOS)、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GTEOS)、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、式OCN−R1−Si(R23のイソシアネートシランであって、式中、R1は、C1〜C6アルケン基(メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチリデンおよびヘキサメチレンなど)またはC1〜C6アリーレン基(フェニレンもしくはナフタレンなど)であり、且つR2は、R1と同一であるか、またはR1と異なり、したがって、C1〜C6アルコキシ基であるもの、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
本発明に基づいて使用され得るカップリング剤の中で、注目すべき例として、式
【0043】
【化1】
【0044】
のチロシン、
【0045】
または式
【0046】
【化2】
【0047】
のグリシンなどのアミノ酸も挙げられる。
【0048】
有利には、極性非プロトン溶媒は、本発明によるプライマー組成物中に、プライマー組成物の合計重量に対して1から70重量%の濃度で存在する。
【0049】
有利には、極性非プロトン溶媒は、以下の1つまたは複数を含み得る:N−ホルミルモルホリン(NFM)、N−エチルモルホリン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−アセチルモルホリン(NAM)、N−エチルピロリドン(NEP)、N−ブチルピロリドン(NBP)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジオキソラン、2,5,7,10−テトラオキサウンデカン、N−メチルピロリジンケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、およびN,N−ジメチルアセトアミド。
【0050】
有利には、本発明によるプライマー組成物は、任意の熱安定性結合剤、および特にフッ化炭素樹脂を含まなくてもよい。
【0051】
有利には、本発明によるプライマー組成物はまた、少なくとも1つの充填剤または少なくとも1つの顔料も更に含み得る。
【0052】
上に定義したような本発明によるプライマー組成物は、ハイブリッドプライマー組成物を得ることを可能にする。このハイブリッドプライマー組成物は、様々な成分を混合した後に得られる中間生成物であり、そこには樹脂のマトリックス、および前記樹脂内に分散したナノスケールシリカドメインの、マトリックスが形成される。
【0053】
したがって、本発明の目的はまた、ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂のマトリックスを含む付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物であって、200nm未満の大きさを有するシリカドメインが極性非プロトン溶媒中に分散されており、シリカドメインの大きさが、湿潤状態で、本発明によるハイブリッドプライマー組成物においてレーザー粒度分析を使用するか、または本発明によるハイブリッドプライマー組成物から得られた焼成された(cooked)プライマーフィルムの透過型電子顕微鏡(TEM分析)を使用するかのいずれかで測定される、組成物である。
【0054】
シリカドメインが分散しているポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂マトリックスは、有利には、極性非プロトン溶媒中のコロイド状分散体であり得る。
【0055】
有利には、本発明によるハイブリッドプライマー組成物におけるシリカドメインは、100nm未満の大きさで存在し、好ましくは10〜50nmの間で構成され得る。
【0056】
有利には、シリカドメインの相対的乾燥重量は、ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂のマトリックスに対して、前記ハイブリッドプライマー組成物において10〜25%の間、好ましくは10〜20%の間を構成し得る。
【0057】
有利には、極性非プロトン溶媒は、本発明によるハイブリッドプライマー組成物において、ハイブリッドプライマー組成物の合計重量に対して1から70重量%の濃度で存在し得る。
【0058】
有利には、極性非プロトン溶媒は、以下の1つまたは複数を含み得る:N−ホルミルモルホリン(NFM)、N−エチルモルホリン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−アセチルモルホリン(NAM)、N−エチルピロリドン(NEP)、N−ブチルピロリドン(NBP)、およびN−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジオキソラン、2,5,7,10−テトラオキサウンデカン、N−メチルピロリジンケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ならびにN,N−ジメチルアセトアミド。
【0059】
有利には、本発明によるハイブリッドプライマー組成物は、任意の熱安定性結合剤、および特にフッ化炭素樹脂を含まなくてもよい。
【0060】
有利には、本発明によるハイブリッドプライマー組成物はまた、少なくとも1つの充填剤または少なくとも1つの顔料も更に含み得る。
【0061】
本発明の文脈において、本発明によるプライマー組成物におけるか、または本発明によるハイブリッドプライマー組成物における充填剤として、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、重晶石、ケイ灰石、炭化ケイ素、クレイ、層状シートケイ酸カルシウム、層状シリケート水和物、フィロシリケート、ケイ酸カルシウム水和物、カルシウムオルガノシラン、およびこれらの混合物のナノ粒子の使用が優先される。
【0062】
本発明によれば、本発明によるプライマー組成物におけるか、または本発明によるハイブリッドプライマー組成物における顔料として、アルミン酸コバルト(CoAI24)、チタン酸クロム、アンチモン、酸化鉄、チタン酸ニッケル、カーボンブラック、アルミノケイ酸、二酸化チタン、様々な金属酸化物をベースとする立方晶結晶構造の無機顔料、酸化鉄−または酸化チタン−コーティングされた雲母薄片、酸化鉄−コーティングされたアルミニウム薄片、ペリレンレッド、サーモクロミック半導体顔料(例えば、Fe23、Bi23、またはBiVO4などの金属酸化物半導体)およびこれらの混合物の使用が優先される。
【0063】
本発明の目的はまた、本発明による付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物の少なくとも1つの層を含む付着防止コーティングである。
【0064】
本発明によるハイブリッドプライマー組成物の1つまたは複数の層は、典型的には、基材に、特に調理用品の基材、任意選択で予め表面処理が施された基材上に直接適用される。
【0065】
1つまたは複数のプライマー層の上に、最初の仕上げ層が典型的には適用され、好ましくはそれ自体が少なくとも第2の仕上げ層で覆われている。
【0066】
1つまたは複数の仕上げ層は、ハイブリッドプライマー組成物の1つまたは複数の層と混合可能な少なくとも1つの熱安定性結合剤を含む。
【0067】
本発明による仕上げ層(複数可)において使用され得る熱安定性結合剤の中で、注目すべき例として、エナメル、フッ化炭素樹脂(単独または組み合わせ)、無機ポリマーまたはゾル−ゲル方法を使用して合成された有機−無機ハイブリッドが挙げられる。
【0068】
本発明の目的はまた、本発明による付着防止コーティングプライマー組成物または本発明による付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物を調製する方法であって、
【0069】
a)カップリング剤を、ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂ならびに極性非プロトン溶媒を含む溶液に導入するステップ、ならびに
【0070】
b)塩基性媒体において、アルコキシシランおよび/または金属アルコキシレート、ならびに水を、ステップa)の結果として生じた混合物に添加するステップ
を含む、方法である。
【0071】
本発明による付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物の調製の場合では、本発明の目的はまた、
【0072】
a)カップリング剤を、ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂ならびに極性非プロトン溶媒を含む溶液に導入するステップ、ならびに
【0073】
b)アルコキシシランおよび/または予備加水分解された金属アルコキシレートを、ステップa)の結果として生じた混合物に添加するステップ
を含む方法である。
【0074】
この特定の場合では、本発明による方法は、c)アルコキシシランおよび/または金属アルコキシレートを加水分解して、予備加水分解されたアルコキシシランおよび/または金属アルコキシレートを生成するステップを有利には更に含んでもよく、この加水分解ステップc)はステップb)の前に実施され、
【0075】
− 塩基性媒体における、アルコキシシランおよび/または金属アルコキシレートの、水とアルコールの混合物中での加水分解、または
【0076】
− 塩基性媒体における、アルコキシシランおよび/または金属アルコキシレートの、水と極性非プロトン溶媒の混合物中での加水分解
を含む。
【0077】
PIおよび/またはPAI樹脂、カップリング剤、極性非プロトン溶媒、アルコキシシランおよび金属アルコキシレートは、上に規定された通りである。
【0078】
本発明による付着防止コーティングプライマー組成物の調製のための使用においても、本発明による付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物の調製のための使用においても、本発明による方法は、d)充填剤および/または顔料の、ステップb)で得られた混合物への添加のためのステップを有利には更に含んでもよい。
【0079】
充填剤および/または顔料は、上に規定された通りである。
【0080】
同様に、本発明による付着防止コーティングプライマー組成物の調製のための使用においても、本発明による付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物の調製のための使用においても、本発明による方法は、e)ポリイミド樹脂および/またはポリアミド−イミド樹脂の、極性非プロトン溶媒への溶解のためのステップを有利には更に含んでもよく、このステップe)はステップa)の前に実施されてもよい。
【0081】
本発明の別の目的はまた、本発明による付着防止コーティングを含む物品を製造する方法であって、
【0082】
A)2つの対向面を有する基材を用意するステップと、
【0083】
B)前記基材の少なくとも1つの表面に、
【0084】
− 本発明による付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物の少なくとも1つの層、または
【0085】
− 付着防止コーティングプライマー組成物または付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物の調製に関して、本発明に基づいて定義された方法に基づいて得られた付着防止コーティングハイブリッドプライマー組成物の少なくとも1つの層
を適用するステップと、
【0086】
C)390℃〜430℃の間の温度で全ての集合体を焼結させるステップと
を含む、方法である。
【0087】
有利には、本発明による物品の製造の方法は、B’)付着防止コーティングの少なくとも1つの仕上げ層が、焼結ステップC)の前に、ステップB)で得られた層に適用されるステップを更に含み得る。有利には、適用ステップB’)は、ステップB)で得られた層上に、湿潤状態で実行され得る。ステップB)で得られた層が、ステップB’)の前に乾燥されると、それは疎水性となり、それに続いて適用される仕上げ層の接着を妨げるおそれがある。
【0088】
付着防止コーティング仕上げ層は、上に規定された通りである。
【0089】
最後に、本発明の別の目的は、本発明による物品を製造する方法に基づいて得ることができる物品である。
【0090】
様々な種類の、様々な形態の、本発明と一致した材料から作製される物品が考えられ得る。
【0091】
したがって、それは、様々な金属、ガラス、セラミックまたはプラスチックから選択される材料から作製される基材を含む物品であってもよい。
【0092】
本発明に基づいて使用され得る金属基材の中で、有利な例として、アルミニウムまたは陽極酸化されたか、もしくは陽極酸化されてないアルミニウム合金、または研磨され、ブラシをかけられ、ビードブラストされたかもしくはやすりをかけられたアルミニウムから作製される、化学的に処理されたか、または研磨され、ブラシをかけられたかもしくはビードブラストされたステンレス鋼、または鋳造された鉄もしくはアルミニウム、チタンまたは打ち出されたかもしくは研磨された銅から作製される基材が挙げられる。
【0093】
本発明による物品は、特に、調理用品であり、より詳細には、その一表面が、前記物品内に入れられた食品と接触することを意図した内部面を含み、且つ他の表面が、熱源と接触することを意図した外部凸表面である調理用品であり得る。
【0094】
本発明の範囲下に入る調理用品の非限定的な例の中で、注目すべき例として、ポットおよび平鍋、中華鍋、ソテーパン、蒸し煮皿、シェフパン、圧力釜、クレープメーカー、グリル、パン焼き焼き型およびシート、ラクレット皿、バーベキュー料理板およびグリル、ミキシングボール、フライヤー槽ならびに炊飯器などの調理用品が挙げられる。
【0095】
調理分野に限定されず、他の種類の基材もまた、考えられ得る。したがって、本発明による物品の範囲内で、アイロン、カールアイロン、ストレートヘアアイロンなど、断熱容器(例えば、コーヒーメーカー用)、またはミキシングボールなどの家庭電気機器も予想することができる。
【発明を実施するための形態】
【0096】
本発明は、以下の実施例において、より詳細が例証される。
【0097】
これらの実施例では、明記された場合を除いて、全ての百分率および比率は、重量百分率で表される。
【0098】
[実施例]
試験
【0099】
組成物における乾燥抽出物の決定
【0100】
方針
【0101】
組成物の乾燥抽出物は、それが含有する揮発性の物質が蒸発された後に残る固体残留分である。乾燥の温度および持続時間は、高沸点溶媒、モノマーの画分、反応性希釈剤および反応の副生成物(それらの保持の程度に依存する)が、フィルムの形成を遅らせるため、重要な役割を果たす。実践にできる限り近い手法で、標準化された乾燥状態を明示的に定義することは、結果的に非常に重要である。
【0102】
技術
【0103】
この乾燥抽出物を測定するために使用される手順は、以下の通りである:
【0104】
− アルミニウム測定カップを秤量する:m0=カップの質量;
【0105】
− 0.5g〜3gの検討される組成物をカップ内に入れる;
【0106】
− 充填されたカップを秤量する:m1=充填されたカップの質量;
【0107】
− 充填されたカップを、210℃の温度で2時間、乾燥炉内に置く;
【0108】
− 乾燥後および冷却後に、カップを再び秤量する:m2=乾燥および冷却後の、充填されたカップの質量;
【0109】
− 乾燥抽出物を以下の式を用いて計算する:
【0110】
乾燥抽出物=100*[(m2−m0)/(m1−m0)]
【0111】
光回折を使用した粒度および粒度分布の測定
【0112】
TEOSを加水分解することにより得られた(以下の実施例1を参照されたい)コロイド状溶液の粒径は、コロイドの大きさに関連して、光の回折を介して、懸濁液中の粒子のブラウン運動を測定する(小さい粒子は、より大きい粒子より速く運動する)、商品名Nanosizerの下にMalvern社により販売されているレーザー回折粒度分析器を使用して、特徴付けることができる。
【0113】
滑らかなアルミニウム基材上のコーティングの接着の検討
【0114】
規格NF T 30−038(規格NF EN ISO 2409)に準拠してクロスハッチ接着試験を実行し、続いてコーティングされた基材の18時間の浸漬(沸騰水中の3回の3時間サイクルおよび200℃に加熱された油中の3回の3時間サイクルからなる)を実行する。次に、付着防止コーティングは、剥がれているかいないかの証拠を調べる。以下の表の判定基準に基づいて、評価が決定される。
【0115】
【表1】

【0116】
黄変の検討
【0117】
コーティングされた基材の焼結後の黄変は、目視による比較で評価される。
【0118】
形態学的分析
【0119】
ポリマー樹脂マトリックス内のシリカ充填剤の形態分析は、TEM分析を使用して実行される。
【0120】
TEM分析は、充填剤が予備形成されても(ルドックス型コロイド状)、またはゾル−ゲル方法を使用してインサイチュで得られても、PAI樹脂などのポリマーマトリックス内のシリカ充填(charge)の形態を視覚化するために使用される効率的な方法である。
【実施例1】
【0121】
第1のステップでは、加水分解されたTEOSの塩基性溶液が、以下の成分を、磁気撹拌下および制御された室温で混合することにより調製される:
−純TEOS :262.28g
−NEP :142.43g
−水と塩基の混合物:
○水 :52.21g
○水中10.25重量%のアンモニア溶液 :42.85g
合計 :499.77g
【0122】
この溶液は、ゆっくりとした撹拌下で2時間、室温で維持される。結果として生じた溶液は、乳白光で、数か月間安定しており、以下の特性を有する:
【0123】
特性:
【0124】
pH:9.6
【0125】
粘度:280mPas
【0126】
TEOSの百分率:52.5%/湿潤性溶液の合計質量
【0127】
外観:半透明、虹色
【0128】
レーザー回折粒度分析を使用して分析された粒度:20から40nm
【0129】
可使期間:数か月超
【0130】
第2のステップでは、溶媒ベースのPAI樹脂が、反応器内で、NEPに29重量%で導入される。NEP中のPAI樹脂の希釈後に、APTESが添加される。アミノシランによる末端酸性基の中和反応は、シランの化学的グラフトへとつながる。反応は、2時間ゆっくりとした撹拌下で室温で起きる。
【0131】
最後に、第1のステップでもたらされた指示に従って加水分解されたTEOS溶液が添加され、混合物はゆっくりとした撹拌下、室温で20から24時間置かれる。
【0132】
混合物の比率は以下に示される:
−NEP中29重量%のPAI樹脂 :218.35g
−NEP :98.31g
−APTES :5.40g
−加水分解されたTEOSの塩基性溶液 :177.94g
合計 :500.00g
【0133】
PAI樹脂/SiO2の質量比(乾燥質量/乾燥質量として表される)は、77/23である。
【0134】
このようにして得られたNEP中のPAI樹脂/シリカハイブリッド材料の、結果として生じたコロイド状溶液は、16.5%の乾燥抽出物、pH10.2および80秒の粘度(DIN 4 フローカップにおける規格DIN EN ISO 2433/ASTM 05125に準拠して測定された)を有する。この溶液は、室温で保存されて3週間まで安定である。
【0135】
第1の実施形態によれば(予備形成された基材上への適用)、このハイブリッド材料コロイド状溶液はそのままで使用され、予め表面処理が施されたキャップの形状(予備形成された基材)のアルミニウム基材上に噴霧することにより、薄層に適用される。
【0136】
得られた性能特性は、以下の通りである:
【0137】
− 上で達成された薄層は、TEMを使用して分析され、塊状ではないナノスケールシリカドメインを伴うハイブリッド有機/無機材料が得られた(シリカおよびPAI樹脂の共連続的なネットワーク)ことを実証している。TEM分析は、集塊または凝集を伴わない、直径100nm未満の個々のシリカ粒子を明らかにしている。
【0138】
− シリカ充填剤は、図1に示されるようにフィルムの厚さ全体にわたり存在し、これは形成されたコーティングの横断面のTEM画像であり、PAI樹脂マトリックスにおけるナノスケールシリカ粒子の均質な分布とその大きさを示す:シリカ粒子の平均直径は、およそ37±4nmである。
【0139】
− シリカの共連続的なネットワークの存在は、か焼を使用して実証される。フィルムが得られ、赤外分光法を使用するそれの化学的分析は、σ=1075cm-1およびσ=804cm-1(Si−O−Siシロキサン橋かけの縮合)におけるシリカを特徴付ける2つのバンドを明らかにしている。
【0140】
− 標準条件下(430℃において11分間)で焼結された、3層コーティング系(ハイブリッド有機/無機プライマー層+ウェットオンウェットで適用されたPAI樹脂を伴わない、第1のPTFEベースの仕上げ層+第2のPTFEベースの仕上げ層)におけるこのハイブリッドプライマー層の実現は、3サイクルの接着試験において、0の評価をもたらす。
【0141】
− 結果として生じたハイブリッドコーティングは、非黄変(比較例1に記載される系などの標準PTFEベースのプライマー系と比較して、−35%の黄変)である。
【0142】
− ハイブリッドコーティングの腐食耐性試験は、コーティングを沸騰している10%食塩水に24時間曝露することにより実施され、腐食ポイントを生じなかった。
【0143】
更に、第2の実施形態によれば(基材の二次形成を用いた基材上への適用)、ステップ2で得られたハイブリッドプライマー組成物が、化学的ストリッピングプロセス、乾燥および次に加熱を予め施されたアルミニウム円板に適用される。第1の、PAI樹脂を伴わないPTFEベースの仕上げ層は、次にウェットオンウェットでこのプライマー層に適用され、次に第2のPTFEベースの仕上げ層が第1の仕上げ層に適用される。次に全体が標準条件下(430℃において11分間)で焼結される。結果として生じたコーティングされた基材は、次に打ち抜きされ、その内部面にコーティングされたキャップを形成する。
【0144】
この二次形成されたコーティングされたキャップは、上述の予備形成されたコーティングされたキャップと同様の性能特性を示し、打ち抜き用のハイブリッドコーティングの適合性を例証している。
【実施例2】
【0145】
溶媒ベースのPAI樹脂は、反応器内のNEPに29重量%で導入される。それはNEPで希釈され、次にAPTESが添加される。アミノシランによる末端酸性基の中和反応は、シランの化学的グラフトへとつながる。反応は、ゆっくりとした撹拌下で2時間、室温で起きる。
【0146】
次にTEOSは、脱塩水および塩基と共に添加され、次に混合物はゆっくりとした撹拌下、室温で20から24時間置かれる。様々な成分の比率は、以下の通りである:
−NEP中29重量%のPAI樹脂 :218.35g
−NEP :149.20g
−APTES :5.40g
−純TEOS :93.38g
−脱塩水 :18.41g
−水中10.25重量%におけるアンモニア溶液 :15.26g
合計 :500g
【0147】
PAI樹脂/SiO2の質量比(乾燥質量/乾燥質量として表される)は、77/23である。
【0148】
結果として生じたNEP中のPAI樹脂/シリカハイブリッド材料のコロイド状溶液は、16.5%の乾燥抽出物、pH10.2および65秒の粘度(規格DIN EN ISO 2433/ASTM 05125に準拠して測定された)を有する。この溶液は、室温で保存されて3週間まで安定である。
【0149】
この溶液はそのままで使用され、予め表面処理が施されたキャップの形状(予備形成された基材)のアルミニウム基材上に噴霧することにより、薄層に適用される。
【0150】
得られた性能特性は、以下の通りである:
【0151】
− 標準条件下(430℃において11分間)で焼結された、3層コーティング系(ハイブリッド有機/無機プライマー層+ウェットオンウェットで適用されたPAI樹脂を伴わない、第1のPTFEベースの仕上げ層+第2のPTFEベースの仕上げ層)におけるこのハイブリッドプライマー層の実現は、3サイクルの接着試験において、0の評価をもたらす。
【0152】
− 結果として生じたハイブリッドコーティングは、非黄変(比較例1に記載される系などの標準PTFEベースのプライマー系と比較して、−30%の黄変)である。
【0153】
− ハイブリッドコーティングの腐食耐性試験は、コーティングを沸騰している10%食塩水に24時間曝露することにより実施され、腐食ポイントを生じなかった。
【0154】
(比較例1)
【0155】
以下の成分を含む半仕上げの水性組成物が調製され、そのそれぞれの量は、以下の図のgに詳述される:
−NEP中29重量%のPAI樹脂 :220.0g
−NEP :79.0g
−トリエチルアミン :22.0g
−脱塩水 :350.0g
−コロイド状シリカ :63.5g
合計 :734.5g
【0156】
使用されたコロイド状シリカは改質表面を持たず、およそ220m2/gの比表面積を有し、水中で30重量%の乾燥抽出物を伴い、ナノ粒子の水性分散体の形態を有する。
【0157】
半仕上げの水性混合物を調製する手順は、以下の通りである:
【0158】
PAI樹脂を、Discontimill反応器に溶媒およびトリエチルアミンと共に入れ;
【0159】
結果として生じた混合物を、次にDiscontimill反応器内で室温で粉砕し;次に
【0160】
水を徐々に添加して水性相が達成され、分散したポリアミド−アミド酸を得て;
【0161】
粉砕は2時間継続され、中間混合物を得る。
【0162】
このようにして得られた半仕上げの混合物の性質は、以下の通りである:
【0163】
理論上の乾燥抽出物:9.5%
【0164】
測定された乾燥抽出物:9.0%
【0165】
生成物は黄金色の半透明、且つ粘稠性である
【0166】
粘度(規格DIN EN ISO 2433/ASTM 05125に準拠):
140秒
【0167】
大きさが40から200nmのコロイド状シリカの分散体は、室温で中間体混合物に導入され、半仕上げの水性混合物を得る。
【0168】
このようにして得られた半仕上げの水性混合物の性質は、以下の通りである:
【0169】
理論上の乾燥抽出物:11.3%
【0170】
測定された溶液中の乾燥抽出物:11.0%
【0171】
生成物は黄金色の半透明、且つ粘稠性である
【0172】
粘度(規格DIN EN ISO 2433/ASTM 05125に準拠):150秒、
【0173】
シリカの比率は、ポリアミド−アミド酸に関して23重量%である。
【0174】
次に、水性の半仕上げの混合物から、水性バインダープライマー組成物が以下の成分を用いて調製される:
−水中60重量%のPTFEの分散体 :30.5g
−水中25重量%のカーボンブラックの分散体 :3.5g
−上記の部分的に仕上げられた水性混合物 :50.0g
−12.5%乾燥抽出物の非イオン性界面活性剤系 :5.1g
−NH4OH :1.4g
−脱塩水 :9.5g
合計 :100.0g
【0175】
この水性バインダープライマー組成物は、以下の特性を示す:
【0176】
− 乾燥プライマー組成物におけるフッ素含有樹脂の含有量は、組成物の合計乾燥重量に対しておよそ71.9重量%であり、
【0177】
− 乾燥プライマー組成物のポリアミド−アミド酸含有量は、組成物の合計乾燥重量に対しておよそ17.1重量%であり、
【0178】
− 組成物のシリカ含有量は、ポリアミド−アミド酸の乾燥重量に対して重量により23/77であり、
【0179】
− 理論上の乾燥抽出物は25.5%であり、且つ
【0180】
− 粘度(規格DIN EN ISO 2433/ASTM 05125に準拠して測定)は、65秒である。
【0181】
この水性バインダープライマー組成物は、予め表面処理が施されたキャップの形状(予備形成された基材)のアルミニウム基材上に噴霧することにより、薄層に適用される。
【0182】
得られた性能特性は、以下の通りである:
【0183】
− 標準条件下(430℃において11分間)で焼結された、3層コーティング系(上述のプライマー層+PAI樹脂を用いない、ドライオンドライで適用された第1のPTFEベースの仕上げ層+第2のPTFEベースの仕上げ層)におけるこの薄いバインダープライマー層の実現は、3サイクルの接着試験において、3または4の評価をもたらす。
【0184】
− 得られたコーティングの腐食耐性試験は、コーティングを沸騰している10%食塩水に24時間曝露することにより実施され、5ポイントの腐食を生じた。この結果は矛盾している。
【0185】
− コロイド状シリカの分散体を含むバインダープライマー層は、TEMを使用して分析される。図2は、結果として生じたプライマー層の横断面のTEM画像であり、フィルムの厚さ全体にわたる円形または楕円形状の充填剤の集塊およびフィルムの厚さにわたる同等の大きさの集塊(0.5μmから3μmの範囲の集塊の長さ)を明らかにしている。
図1
図2