特許第6758352号(P6758352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758352
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】ヒンジ装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/04 20060101AFI20200910BHJP
   F16C 11/10 20060101ALI20200910BHJP
   E05D 3/14 20060101ALI20200910BHJP
   E05F 1/12 20060101ALI20200910BHJP
   A63F 5/04 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   F16C11/04 F
   F16C11/10 A
   E05D3/14 A
   E05F1/12
   A63F5/04 601A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-167551(P2018-167551)
(22)【出願日】2018年9月7日
(65)【公開番号】特開2020-41559(P2020-41559A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2019年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】石ヶ谷 和征
(72)【発明者】
【氏名】石井 善隆
(72)【発明者】
【氏名】三上 智弘
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/051673(WO,A1)
【文献】 特開2017−31746(JP,A)
【文献】 特開2016−50659(JP,A)
【文献】 特開2004−169870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/04,11/10
A63F 5/04
E05D 3/06, 3/14,11/08
E05F 1/08, 1/10, 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構成部材と、第2構成部材と、上記第1構成部材と上記第2構成部材を相対回動可能に連結する第1軸部材と、を備えたヒンジ装置において、
上記第1構成部材と上記第2構成部材は、上記第1軸部材と直交するとともに互いに対向して配置された第1,第2連結板部をそれぞれ有し、上記第1構成部材の上記第1連結板部には摩擦機構が装着され、
上記摩擦機構は、少なくとも1枚の摩擦プレートと、この摩擦プレートを上記第1軸部材の軸線方向に付勢する付勢部材と、上記第1連結板部と上記摩擦プレートと上記付勢部材を貫通する取付筒と、を備え、
上記第1軸部材が上記取付筒内に挿通されるとともに、上記第2構成部材の第2連結板部に支持されており、
上記摩擦プレートが上記第2連結板部に相対回動不能に保持されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
上記摩擦プレートが上記第1連結板部の一方側に配置され、上記付勢部材が上記第1連結板部の他方側に配置され、上記付勢部材により上記取付筒を介して上記摩擦プレートが上記第1連結板部に向かって付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
上記摩擦プレートが上記第1連結板部の一方側に配置され、上記付勢部材が上記摩擦プレートと上記第1連結板部の間に配置され、上記付勢部材により上記摩擦プレートが上記第1連結板部から離れる方向に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
上記少なくとも1枚の摩擦プレートは、上記第1連結板部の両側にそれぞれ配置された2枚の摩擦プレートを含み、
上記付勢部材が、上記2枚の摩擦プレートのうちの一方の摩擦プレートと上記第1連結板部との間に配置され、上記一方の摩擦プレートを上記第1連結板部から離れる方向に付勢するとともに、上記2枚の摩擦プレートのうちの他方の摩擦プレートを上記取付筒を介して上記第1連結板部に向かって付勢することを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項5】
上記取付筒は一対の係止部を有し、上記一対の係止部間に上記第1連結板部と上記摩擦プレートが配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のヒンジ装置。
【請求項6】
上記摩擦プレートと上記第1連結板部との間に耐摩耗性材料からなる摩擦ワッシャが介在されており、この摩擦ワッシャを上記取付筒が貫通していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のヒンジ装置。
【請求項7】
上記摩擦プレートは上記取付筒が挿通する挿通穴が形成された主部と、この主部から径方向に張り出す副部を有し、
上記第2連結板部には、上記摩擦プレートの上記副部の回動を禁じる規制部が配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のヒンジ装置。
【請求項8】
2つのヒンジ本体と、これら2つのヒンジ本体間に配置される少なくとも2つのリンクを含み、
上記2つのリンクのうちの一方のリンクが上記第1構成部材として提供され、上記2つのヒンジ本体のうちの一方のヒンジ本体が上記第2構成部材として提供され、
上記一方のリンクと上記一方のヒンジ本体が上記第1軸部材により相対回動可能に連結され、上記2つのリンクのうちの他方のリンクと上記一方のヒンジ本体が第2軸部材により相対回動可能に連結されており、
上記摩擦プレートの上記副部には副挿通穴が形成され、上記第2軸部材が上記規制部として提供され上記副挿通穴を貫通していることを特徴とする請求項7に記載のヒンジ装置。
【請求項9】
静止対象に固定されるべき第1ヒンジ本体と、回動対象に固定されるべき第2ヒンジ本体と、これら第1、第2ヒンジ本体間に配置される第1、第2リンクを含み、上記第1リンクが上記第1構成部材として提供され、上記第2ヒンジ本体が上記第2構成部材として提供され、
上記第1リンクは、主板部とこの主板部の両側縁に連なる一対の側板部とを有し、上記一対の側板部の一方の側板部の端部が、上記第1連結板部として提供され、
上記第2ヒンジ本体は、上記回動対象の収容凹部に収容されるべきソケット部を有し、このソケット部が、底壁部と、この底壁部の両側縁に連なる一対の側壁部と、上記一対の側壁部から上記側壁部と面一をなして延出された延出部と、を有し、上記一対の側壁部のうちの一方の側壁部の延出部が、上記第2連結板部として提供され、
上記第1リンクの一対の側板部の端部と上記第2ヒンジ本体の一対の側壁部の延出部が、上記第1軸部材により相対回動可能に連結され、
上記第2リンクの端部と上記第2ヒンジ本体の一対の側壁部の延出部が、第2軸部材により相対回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のヒンジ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体等の第1対象に対して扉等の第2対象を回動可能に連結するヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パチスロ等の遊戯機では、筺体の開口の側縁にヒンジ装置を介して扉が回動可能に取り付けられている。扉は閉状態で少し上向きに傾けられている。そのため、開き状態の扉には自重によって自然に閉じる向きにトルクが働く。
筺体内の機械をメンテナンスする際は、扉を開き状態に維持しておく必要がある。扉を90度以上開けば、扉に閉じ方向のトルクは働かないが、そうすると隣の遊戯機の利用者の邪魔になってしまう。
【0003】
特許文献1の遊技機用ヒンジ装置では、扉の開閉の際に相対的に変位する2つの構成部材間に摩擦機構が設けられている。扉が90度未満の開き状態で自重により閉まろうとすると、摩擦機構の摩擦抵抗で構成部材間の相対変位を規制し、これにより扉を所望の開き角度に維持している。
【0004】
特許文献2のヒンジ装置では、2つの構成部材の連結板部を相対回動可能に連結する軸部材に、ワッシャと板バネが取り付けられている。板バネにより一方の構成部材の連結板部を他方の構成部材の連結板部に向かって付勢することにより、構成部材の連結板部間にワッシャを介して摩擦抵抗が生じ、これにより構成部材間の相対回動が規制され、ひいては扉の回動が規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6038968号公報
【特許文献2】特許第5451978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のヒンジ装置では、摩擦機構を組み込む工程が増えるため、ヒンジ装置の組立の作業性が悪い。
特許文献2のヒンジ装置では、2つの構成部材を軸部材を介して回動可能に連結する際に、ワッシャや板バネを一緒に組み込む必要があり、組立の作業性が悪い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、第1構成部材と、第2構成部材と、上記第1構成部材と上記第2構成部材を相対回動可能に連結する第1軸部材と、を備えたヒンジ装置において、
上記第1構成部材と上記第2構成部材は、上記第1軸部材と直交するとともに互いに対向して配置された第1,第2連結板部をそれぞれ有し、上記第1構成部材の上記第1連結板部には摩擦機構が装着され、上記摩擦機構は、少なくとも1枚の摩擦プレートと、この摩擦プレートを上記第1軸部材の軸線方向に付勢する付勢部材と、上記第1連結板部と上記摩擦プレートと上記付勢部材を貫通する取付筒と、を備え、上記第1軸部材が上記取付筒内に挿通されるとともに、上記第2構成部材の第2連結板部に支持されており、上記摩擦プレートが上記第2連結板部に相対回動不能に保持されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、摩擦機構の摩擦プレートと付勢部材は、取付筒を介して予め第1構成部材の第1連結板部に装着することが可能となり、組立作業性を向上させることができる。
【0009】
一態様では、上記摩擦プレートが上記第1連結板部の一方側に配置され、上記付勢部材が上記第1連結板部の他方側に配置され、上記付勢部材により上記取付筒を介して上記摩擦プレートが上記第1連結板部に向かって付勢されている。
上記構成では、直接または間接的に押し当てられた摩擦プレートと第1連結板部との間で、摩擦抵抗が生じる。
【0010】
他の態様では、上記摩擦プレートが上記第1連結板部の一方側に配置され、上記付勢部材が上記摩擦プレートと上記第1連結板部の間に配置され、上記付勢部材により上記摩擦プレートが上記第1連結板部から離れる方向に付勢されている。
上記構成では、第1連結板部と板バネとの間および摩擦プレートと板バネとの間で、摩擦抵抗が生じる。
【0011】
さらに他の態様では、上記少なくとも1枚の摩擦プレートは、上記第1連結板部の両側にそれぞれ配置された2枚の摩擦プレートを含み、上記付勢部材が、上記2枚の摩擦プレートのうちの一方の摩擦プレートと上記第1連結板部との間に配置され、上記一方の摩擦プレートを上記第1連結板部から離れる方向に付勢するとともに、上記2枚の摩擦プレートのうちの他方の摩擦プレートを上記取付筒を介して上記第1連結板部に向かって付勢する。
上記構成によれば、第1連結板部の両側に2枚の摩擦プレートが配置されているので、より効率的に摩擦抵抗を生じさせることができる。
【0012】
好ましくは、上記取付筒は一対の係止部を有し、上記一対の係止部間に上記第1連結板部と上記摩擦プレートが配置されている。
【0013】
好ましくは、上記摩擦プレートと上記第1連結板部との間に摩擦ワッシャが介在されており、この摩擦ワッシャを上記取付筒が貫通している。
上記構成では、耐摩耗性材料からなる摩擦ワッシャを介して摩擦抵抗が生じるようになっており、耐久性を高めることができる。
【0014】
好ましくは、上記摩擦プレートは上記取付筒が挿通する挿通穴が形成された主部と、この主部から径方向に張り出す副部を有し、上記第2連結板部には、上記摩擦プレートの上記副部の回動を禁じる規制部が配置されている。
上記構成によれば、摩擦プレートの回動を比較的簡単な構成で禁じることができる。
【0015】
好ましくは、 2つのヒンジ本体と、これら2つのヒンジ本体間に配置される少なくとも2つのリンクを含み、上記2つのリンクのうちの一方のリンクが上記第1構成部材として提供され、上記2つのヒンジ本体のうちの一方のヒンジ本体が上記第2構成部材として提供され、上記一方のリンクと上記一方のヒンジ本体が上記第1軸部材により相対回動可能に連結され、上記2つのリンクのうちの他方のリンクと上記一方のヒンジ本体が第2軸部材により相対回動可能に連結されており、上記摩擦プレートの上記副部には副挿通穴が形成され、上記第2軸部材が上記規制部として提供され上記副挿通穴を貫通している。
上記構成によれば、一方のヒンジ本体と他方のリンクとを相対回動可能に連結する第2軸部材を、摩擦プレートの回動を禁じる規制部として兼用することにより、構成をより一層簡略化することができる。
【0016】
具体的態様では、静止対象に固定されるべき第1ヒンジ本体と、回動対象に固定されるべき第2ヒンジ本体と、これら第1、第2ヒンジ本体間に配置される第1、第2リンクを含み、上記第1リンクが上記第1構成部材として提供され、上記第2ヒンジ本体が上記第2構成部材として提供され、上記第1リンクは、主板部とこの主板部の両側縁に連なる一対の側板部とを有し、上記一対の側板部の一方の側板部の端部が、上記第1連結板部として提供され、上記第2ヒンジ本体は、上記回動対象の収容凹部に収容されるべきソケット部を有し、このソケット部が、底壁部と、この底壁部の両側縁に連なる一対の側壁部と、上記一対の側壁部から上記側壁部と面一をなして延出された延出部と、を有し、上記一対の側壁部のうちの一方の側壁部の延出部が、上記第2連結板部として提供され、上記第1リンクの一対の側板部の端部と上記第2ヒンジ本体の一対の側壁部の延出部が、上記第1軸部材により相対回動可能に連結され、上記第2リンクの端部と上記第2ヒンジ本体の一対の側壁部の延出部が、第2軸部材により相対回動可能に連結されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、組立作業性を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るヒンジ装置を用いた遊技機を、扉の開き状態で示す斜視図である。
図2】上記ヒンジ装置の斜視図であり、(A)は開き状態、(B)は閉じ状態をそれぞれ示す。
図3】上記開き状態のヒンジ装置を図2(A)とは異なる方向から見た斜視図であり、第1ヒンジ本体のベースを省いて示す。
図4】上記ヒンジ装置を図3と同方向から見た分解斜視図である。
図5】上記ヒンジ装置において第1リンクに摩擦機構を組み込んだリンクアッセンブリを示す斜視図である。
図6】上記リンクアッセンブリを図5のVI方向から見た図である。
図7】(A)は上記リンクアッセンブリを図5の斜め上方から見た図であり、(B)は図7(A)におけるB−B矢視断面図、(C)は図7(A)におけるC−C矢視断面図である。
図8】上記リンクアッセンブリの分解斜視図である。
図9】上記第1リンクと摩擦ワッシャを図8と異なる方向から見た分解斜視図である。
図10】上記ヒンジ装置において上記リンクアッセンブリと第2リンクを第2ヒンジ本体に連結した状態を示す要部の斜視図である。
図11】上記要部を図10と異なる方向から見た斜視図である。
図12】上記要部を図11と同方向から見た分解斜視図である。
図13】上記要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、パチスロ台等の遊技機Mは、筐体1(第1対象;静止対象)と、扉2(第2対象;回動対象)と、扉2を筐体1に開閉可能に連結する上下に離れた2つのヒンジ装置3と、を備えている。
筺体1の開口側の面は鉛直に対して例えば約5°上向きに傾けられており、扉2の回転軸線も同角度傾いている。このため、扉2は閉じ状態のときに上向きに傾き、開状態(開き角度90°未満)のときに、自重によって閉じる方向の回転トルクを受ける。
【0020】
各ヒンジ装置3は、筺体1の例えば左側の側板の内側面において開口近傍に固定された第1ヒンジ本体10と、扉10の側縁部に固定された第2ヒンジ本体20(第2構成部材)と、第1ヒンジ本体10と第2ヒンジ本体20を上述した上下方向に延びる回動軸線を中心に相対回動可能に連結する連結機構30とを備えている。
【0021】
図2図3に示すように、第1ヒンジ本体10は、ベース11とマウント12とを含む。ベース11は、筐体1の内側面にネジ止めにて固定されている。マウント12は、筺体11の奥行方向に延び、横断面が略U字形をなしており、ベース11に着脱可能に取り付けられている。
【0022】
第2ヒンジ本体20は、略U字形のソケット部21とこのソケット部21の両縁から上下にそれぞれ延びる鍔部22を有している。ソケット部21を扉2に形成された収容凹部2a(図1参照)に収容し、鍔部22を扉2にネジ止めすることにより、第2ヒンジ本体20は扉2に固定されている。
【0023】
第2ヒンジ本体20のソケット部21は、底壁部21aとこの底壁部21aの両側縁に連なる一対の側壁部21b、21cとを有しており、これら一対の側壁部21b、21cから側壁部21b、21cと面一をなして延出部23、24が延出されている。
【0024】
図2図4に示すように、連結機構30は、第1、第2の2つ(複数)のリンク31、32(構成部材)と、4つ(複数)の軸部材35〜38を含む。
第1リンク31(一方のリンク;第1構成部材)は、断面U字形をなし、主板部31aと、この主板部31aに連なる一対の側板部31b、31cとを有している。
【0025】
第1リンク31の一端部は、側板部31b、31cとマウント12の一対の側板部を貫通する軸部材35を介して、第1ヒンジ本体10の先端部(筺体1の開口側の端部)に相対回動可能に連結されている。
第1リンク31の他端部は、側板部31b、31cと第2ヒンジ本体20の一対の延出部23、24(ソケット部21に近い部位)を貫通する軸部材36(第1軸部材)を介して、第2ヒンジ本体20に相対回動可能に連結されている。
【0026】
図10図12に示すように、第2リンク32(他方のリンク;構成部材)は3つの細長い板材を積層させてなり、その一端部とマウント12の側板部(軸部材35より奥の部位)を貫通する軸部材37を介して、第1ヒンジ本体10に相対回動可能に連結されている。第2リンク32は、その他端部と第2ヒンジ本体20の一対の延出部23、24(ソケット部21から遠い部位)を貫通する軸部材38(第2軸部材)を介して、第2ヒンジ本体20に相対回動可能に連結されている。
【0027】
軸部材35〜38は互いに平行をなして上下方向に延びている。
図1に示すように扉2が開いた状態では、図2(A)に示すように、ヒンジ装置3の第2ヒンジ本体20が第1ヒンジ本体10から離れた位置にある(以下、この状態をヒンジ装置3の開き状態と言う)。
扉2が閉じた状態では、図2(B)に示すように、ヒンジ装置3の第2ヒンジ本体20が第1ヒンジ本体10に近づいた位置にある(以下、この状態をヒンジ装置3の閉じ状態と言う)。ヒンジ装置3の閉じ状態では、第1リンク31が第2ヒンジ本体20のソケット部21に入り込み、第2リンク32の一部が第1リンク31の一対の側板部31b、31c間に入り込んでいる。
【0028】
図5図7に示すように、ヒンジ装置3はさらに、扉2の回動を規制するための摩擦機構40を備えている。この摩擦機構40は、ヒンジ装置3の組立前に予め第1リンク31に組み込まれており、これによりリンクアッセンブリLAが構成されている。
図8に示すように、摩擦機構40は、一対の摩擦プレート41A,41Bと、一対の摩擦ワッシャ42A,42Bと、板バネ43(付勢部材)と、取付筒44と、を有している。
【0029】
摩擦プレート41A,41Bは、同形状をなし、第1リンク31の一方の側板部31b(連結板部)の外側と内側に配置されている。各摩擦プレート41A,41Bは、円形の主部41aと、この主部41aの外周の一部から径方向外側に突出する副部41bとを有している。主部41aの中央には挿通穴41xが形成され、副部41bには副挿通穴41yが形成されている。
【0030】
摩擦ワッシャ42A,42Bは、同形状をなし、第1側板部31bと摩擦プレート41A,41Bとの間にそれぞれ配置されている。各摩擦ワッシャ42A,42Bは、円形の主部42aと、この主部42aの外周の一部から径方向に突出する副部42bとを有している。主部42aの中央には挿通穴42xが形成され、その周囲には複数例えば2つの係合穴42yが形成されている。副部42bの周縁には直交する2つの縁を有する切欠42zが形成されている。
【0031】
さらに、板バネ43の中央と第1リンク31の側板部31bの端部にも、挿通穴43x,31xがそれぞれ形成されている。上記挿通穴41x,42x,43x,31xの径は、取付筒44の外径と等しい。
【0032】
摩擦プレート41A,41B、摩擦ワッシャ42A,42B、板バネ43を、側板部31bに整列させて、取付筒44を挿通穴41x,42x,43x,31xに通すことにより、摩擦プレート41A,41B、摩擦ワッシャ42A,42Bと板バネ43が第1リンク31の側板部31bに装着される。
本実施形態では、摩擦プレート41A,41Bが、最も外側に配置され、板バネ43が内側の摩擦ワッシャ42Bと側板部31bとの間に配置されている。
【0033】
取付筒44は、一端にその筒部より大径の係止部44aを有しており、上記装着状態で他端部をかしめて筒部より大径の係止部44bを形成することにより、摩擦機構40の装着作業が終了する。
上記取付筒44の他端部のかしめにより、板バネ43が圧縮され、この板バネ43の弾性力により、外側の摩擦プレート41Aが係止部44bに係止されるとともに側板部31bに向かって付勢され、内側の摩擦プレート41Bが側板部31bから離れる方向に付勢されるとともに係止部44aに係止される。
その結果、外側の摩擦プレート41Aと第1リンク31の側板部31bとの間には摩擦ワッシャ42Aを介して摩擦抵抗が生じ、内側の摩擦プレート41Bと側板部31bとの間には、摩擦ワッシャ42Bと板バネ43を介して摩擦抵抗が生じる。
【0034】
なお、摩擦プレート41A,42Aはステンレス鋼からなり、摩擦ワッシャ42A,42Bはリン青銅等、耐摩耗性に優れた材料からなる。
【0035】
図7(C)、図9に示すように、外側の摩擦ワッシャ42Aは、その係合穴42yを第1リンク31の側板部31bの外面に形成された係合凸部31yに嵌めることにより、第1リンク31に対して回動を禁じられている。
図7(B)に示すように、内側の摩擦ワッシャ42Bは、その切欠42zを第1リンク31の主板部31aの端縁に嵌めることにより、第1リンク31に対して回動を禁じられている。
【0036】
図10図13に示すように、軸部材36を、第2ヒンジ本体20の延出部23,24に形成された軸受穴23x、24xに通すとともに、上記第1リンクの側板部31cに形成された軸受穴31x’に通し、摩擦機構40の取付筒44に通すことにより、リンクアッセンブリLAの第1リンク31が第2ヒンジ本体20に回動可能に連結される。
【0037】
第2リンク32を第2ヒンジ本体20の延出部23,24に回動可能に連結するための軸部材38(規制部)は、延出部23,24の軸受穴23y、24yを貫通し、第2リンク32の軸受穴を貫通するばかりでなく、摩擦機構40の摩擦プレート41A,41Bの副挿通穴41yを貫通する。これにより、摩擦プレート41A,41Bは第2ヒンジ本体20に対して回動を禁じられている(軸方向の変位は可能)。
【0038】
本実施形態のヒンジ装置3はさらに、一対のスペーサ51,52を備えている。これらスペーサ51,52は摩擦抵抗が少ないポリアセタール等の樹脂にて構成されている。
一方のスペーサ51は、第1リンクの側板部31bと第2ヒンジ本体20の延出部23との間に配置されている。このスペーサ51には取付筒44の係止部44bを収めるとともに軸部材36を挿通させるための穴51xが形成されるとともに、摩擦プレート41Aを収容する凹部51aが形成されている。さらにスペーサ51には軸部材38を挿通させるための挿通穴51yが形成されている。
他方のスペーサ52は、第1リンクの側板部31cと第2ヒンジ本体20の延出部24との間に配置されており、これら側板部31cと連結板部24との直接的な摩擦接触を禁じている。このスペーサ52には軸部材36,38を挿通させる挿通穴52x,52yが形成されている。
【0039】
上記構成をなすヒンジ装置3では、上記摩擦機構40によって、扉2に対する摩擦抵抗トルクが発現される。すなわち扉2の回動に伴い第1リンク31と第2リンク32が第1ヒンジ本体10に対して回動し、第1リンク31と第2リンク32に対して第2ヒンジ本体20が回動する。第1リンク31と第2ヒンジ本体20との相対回動する際、第2ヒンジ本体20に回動を禁じられた状態で保持された摩擦プレート41A,41Bと、第1リンク31の側板部31bとの間に相対回動が生じ、摩擦プレート41A,41Bと第1リンク31の側板部31bとの間の摩擦抵抗によって、第1リンク31と第2ヒンジ本体20の間に抵抗トルクが生じ、ひいては扉2に抵抗トルクが生じるのである。
【0040】
扉2の開き角度が小さいとき、例えば18°未満の場合には、扉2の自重による自然回転トルクの方が摩擦機構40による抵抗トルクよりも大きいので、扉2が自然と閉方向へ回転し、しっかりと閉じることができる。
扉2の回転可能範囲のうち、例えば18°以上90°未満では、扉2の自重による回転トルクが上記摩擦による抵抗トルクより小さくなる。これにより、扉2が自然と閉じるのを阻止でき、例えば60°程度の開き状態で遊技機Mの内部をメンテナンスすることができる。
【0041】
本実施形態では、ヒンジ装置3の主たる構成要素である第1リンク31を用いて摩擦抵抗を発生させるので、摩擦機構40の構成を簡略化することができ、コストを抑えることができる。
また、摩擦機構40の摩擦プレート41A,41B,摩擦ワッシャ42A,42B、板バネ43を、取付筒44を介して予め第1リンク31の側板部31bに装着することにより、リンクアッセンブリLAを構成することができ、このリンクアッセンブリLAを軸部材36により第2ヒンジ本体20に組み付けるので、組立作業性を向上させることができる。
【0042】
板バネ43は、摩擦プレート41A,41Bを軸方向に付勢させることにより摩擦抵抗トルクを発生させ、ヒンジ装置3の構成部材を付勢せずに済むので、板バネ43の負担を軽くすることができ、効率良く摩擦抵抗を得ることができる。
【0043】
第1リンク31の側板部31bと摩擦プレート41A,41Bとの間に、耐摩耗性材料からなる摩擦ワッシャ42A,42Bが介在されているので、耐久性を高めることができる。また、摩擦ワッシャ42A,42Bが第1リンク31に対して回動を禁じられているので、確実に摩擦抵抗を生じさせることができる。
なお、摩擦ワッシャ42A,42Bは、第1リンク31に対して回動可能であってもよい。また、摩擦ワッシャ42A,42Bを省いてもよい。
【0044】
本実施形態では、第1リンク31の側板部31bの両側に摩擦プレート41A,41Bが配置されているので、より効率的に摩擦抵抗を生じさせることができる。なお、摩擦プレート41A,41Bの一方を省いてもよい。
【0045】
本実施形態では、摩擦プレート41A,41Bの副部41aを、第2リンク32を第2ヒンジ本体20に回動可能に連結する軸部材38を用いて摩擦プレート41A,41Bの回動を禁じる規制部としたので、構成を簡略化することができる。
なお、上記規制部は第2ヒンジ本体の延出部から突出する係合凸部により構成し、この係合凸部を摩擦プレート41A,41Bの副部41aに形成された挿通穴41yに挿入してもよいし、副部41aの側縁に係止させてもよい。
【0046】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
板バネ43は外側の摩擦ワッシャ42Aと側板部31bとの間に配置してもよい。この場合、外側の摩擦プレート41Aが側板部31bから離れる方向に付勢され、内側の摩擦プレート41Bが側板部31bに向かって付勢される。
取付筒44の係止部44bは、かしめでなくナットを螺合させることにより構成してもよい。
付勢部材として圧縮コイルバネを用いてもよい。
取付筒に係止部を設ける代わりに、摩擦プレートを取付筒に固定してもよい。
【0047】
上記実施形態において、ヒンジ本体10、20のいずれか一方を第1構成部材として提供し、摩擦機構を組み込んでアッセンブリにしてもよい。この場合、2本のリンクの一方が第2構成部材として提供されることになる。
ヒンジ装置の構成部材として、筺体1側の第1ヒンジ本体10と扉2側の第2ヒンジ本体20だけを備えていてもよい。この場合、ヒンジ本体10,20の一方が第1構成部材として提供され、他方が第2構成部材として提供され、ヒンジ本体10,20を相対回動可能に連結する軸部材が第1軸部材として提供される。
連結機構は例えば4本以上のリンクを有していてもよい。
ヒンジ装置の摩擦機構は、回動対象の回動を禁じて開き状態を維持するためではなく、急激な回動を抑制するために用いてもよい。
【0048】
扉2は、閉じ位置において必ずしも上向きに傾いていなくてもよく、鉛直になっていてもよい。また、静止対象としては筐体に限られず、建物躯体等であってもよい。回動対象の回転軸線が水平に延び、その上縁がヒンジ装置を介して静止対象に回動可能に連結されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば摩擦機構を有するヒンジ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 筺体(静止対象;第1対象)
2 扉(回動対象;第2対象)
2a 収容凹部
3 ヒンジ装置
10 第1ヒンジ本体
20 第2ヒンジ本体(第2構成部材)
21 ソケット部
21a 底壁部
21b、21c 側壁部
23 延出部(連結板部)
24 延出部
30 連結機構
31 第1リンク(一方のリンク;第1構成部材)
31a 主板部
31b 側板部(連結板部)
31c 側板部
32 第2リンク(他方のリンク;構成部材)
35 軸部材
36 軸部材(第1軸部材)
37 軸部材
38 軸部材(第2軸部材;規制部)
40 摩擦機構
41A,41B 摩擦プレート
41a 主部
41b 副部
41x 挿通穴
41y 副挿通穴
42A,42B 摩擦ワッシャ
43 板バネ(付勢部材)
44 取付筒
44a,44b 係止部
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