【文献】
NAM et al.,Preparation of Nylon 4 microspheres via heterogeneous polymerization of 2-pyrrolidone in a paraffin oil continuous phase,Journal of Industrial and Engineering Chemistry,2015年,vol.28,p.236-240
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つのアルキレン基と、少なくとも1つのアミド結合とを有する構造単位の繰り返しからなるとともに当該少なくとも1つのアルキレン基のそれぞれが炭素数1以上、4以下であるポリアミドからなり、重量平均分子量が30,000以上、300,000以下であり、比表面積が20m2/g以下であり、顕微鏡観察に基づく平均粒子径が1μm以上、30μm以下であり、真球度が85以上であることを特徴とするポリアミド微粒子。
少なくとも1つのアルキレン基と、少なくとも1つのアミド結合とを有する構造単位の繰り返しからなるとともに当該少なくとも1つのアルキレン基のそれぞれが炭素数1以上、5以下であるポリアミドを熱水中に溶解する溶解工程と、
前記熱水を冷却して前記ポリアミドからなるポリアミド微粒子を析出させる析出工程とを含むことを特徴とするポリアミド微粒子の製造方法。
前記溶解工程において、前記熱水中の前記ポリアミドの濃度が0.1重量%以上、10重量%以下となるように前記熱水中に前記ポリアミドを溶解することを特徴とする請求項4に記載のポリアミド微粒子の製造方法。
前記溶解工程において、前記熱水中の前記ポリアミドの濃度が0.1重量%以上、3重量%以下となるように前記熱水中に前記ポリアミドを溶解することを特徴とする請求項4に記載のポリアミド微粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
<ポリアミド微粒子>
本実施形態に係るポリアミド微粒子(以下、「ポリアミド微粒子」ということがある)は、少なくとも1つのアルキレン基と、少なくとも1つのアミド結合とを有する構造単位の繰り返しからなるとともに当該アルキレン基のそれぞれが炭素数1以上、5以下であるポリアミドからなり、真球度が80以上である。
【0016】
[ポリアミド]
本明細書において「ポリアミド」とは、−CONH−で表される構造を有する高分子化合物である。
【0017】
より具体的には、本実施形態に係るポリアミドは、少なくとも1つのアルキレン基と、少なくとも1つのアミド結合とを有する構造単位の繰り返しからなるとともに、アルキレン基のそれぞれが炭素数1以上、5以下である。
【0018】
本実施形態において、上記構成のポリアミドは生分解性を有する。なお、本明細書において「生分解性」とは、微生物および水等の作用により、例えば水および二酸化炭素等の低分子量化合物に分解されるポリアミドを意味する。すなわち、本明細書における「生分解性」とは、加水分解性を含むものである。
【0019】
本実施形態に係る構造単位の繰り返しの数は、ポリアミドの重量平均分子量に応じて適宜定めればよい。なお、ポリアミドの重量平均分子量については詳しくは後述する。
【0020】
本実施形態において、上述した構造単位は、少なくとも1つのアルキレン基と、少なくとも1つのアミド結合とを有していれば特に限定されないが、アルキレン基を1つ以上、4つ以下有していることが好ましく、1つ以上、3つ以下有していることがより好ましく、アルキレン基を1つ以上、2つ以下有していることが最も好ましい。また、アミド結合を1つ以上、4つ以下有していることが好ましく、1つ以上、3つ以下有していることがより好ましく、1つ以上、2つ以下有していることが好ましい。
【0021】
さらに、本実施形態に係るアルキレン基のそれぞれは、炭素数が1以上、5以下であれば特に限定されないが、炭素数が1以上、4以下であることが好ましく、1以上、3以下であることがより好ましい。
【0022】
本実施形態に係るアルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。また、構造単位にアルキレン基が複数含まれる場合、それぞれの炭素数は独立して1以上、4以下であることが好ましい。
【0023】
本実施形態に係る構造単位の一態様として、例えば下記式(1)
【0024】
【化1】
で表される構造単位を挙げることができる。
【0025】
式(1)中、xは2以上、5以下の整数であり、2、3または4であることが好ましい。
【0026】
また、本実施形態に係る構造単位の他の態様として、例えば、下記式(2)
【0027】
【化2】
で表される構造単位を挙げることができる。
【0028】
式(2)中、yは1以上、5以下の整数であり、zは3以上、7以下の整数である。また、yおよびzは、それぞれ独立して、2、3または4であることが好ましい。
【0029】
ところで、本明細書では、式(1)で表される構造単位の繰り返しを有するポリアミドを、式(1)中のxの数に応じて「ポリアミドx」と称することがある。よって、例えば式(1)においてxが4のポリアミドであれば、「ポリアミド4」と称する。
【0030】
〔ポリアミド微粒子〕
(真球度)
本明細書において、真球度とは、任意に選択したポリアミド微粒子n個について、それらの短径および長径をそれぞれ測定し、下記式(3)に従って算出した値である。
【0031】
【数1】
なお、本実施形態では、式(3)において、nは30であることが好ましい。
【0032】
本実施形態においてポリアミド微粒子の短径および長径を正確に測定するためには、ポリアミド微粒子の光学顕微鏡写真または走査型電子顕微鏡写真を撮影し、撮影した顕微鏡写真からポリアミド微粒子の短径および長径の測定を行うことが好ましい。また、光学顕微鏡写真を用いる場合、光学顕微鏡写真の倍率は、300倍以上とすることが好ましい。
【0033】
式(3)において真球度の値が100に近いものほど真球に近づく。本実施形態に係るポリアミドは、真球度が80以上であり、球状の形状を有している。
【0034】
本実施形態において、ポリアミド微粒子の真球度は85以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましい。また、ポリアミド微粒子の真球度は100であることが最も好ましいが、通常、真球度が80以上であればポリアミド微粒子の滑り性は滑らかとなり、十分な質感を得ることができる。ポリアミド微粒子の真球度が80以上であることは、ポリアミド微粒子の形状が楕円形に近づくことが回避され、例えば化粧品、塗料およびトナー用途としてポリアミド微粒子を使用する際に好適な滑り性が得られる面において好ましい。
【0035】
(平均粒子径)
ポリアミド微粒子の平均粒子径は特に限定されないが、1μm以上、350μm以下であることが好ましく、1μm以上、60μm以下であることがより好ましく、1μm以上、30μm以下であることがさらに好ましく、1μm以上、10μm以下であることが特に好ましい。
【0036】
さらに、ポリアミド微粒子の粒子径は均一であることが好ましく、より好ましくはポリアミド微粒子の平均粒子径が上述の範囲内であり、かつ、粒子径が均一であることである。
【0037】
なお、本明細書において「粒子径が均一」とは、ポリアミド微粒子全数に対して、粒子径が平均粒子径に対して±50%のポリアミド微粒子が占める割合が67%以上、好ましくは95%以上、最も好ましくは100%であることを意味するものとする。
【0038】
ポリアミド微粒子の粒子径が均一であることによって、ポリアミド微粒子を例えば化粧品、塗料またはトナーにおいて塗布材料として用いる場合、ポリアミド微粒子は塗布対象物に対して滑らかに滑るため、ポリアミド微粒子を塗布対象物に対して均一に塗布することができる。
【0039】
(重量平均分子量)
ポリアミド微粒子におけるポリアミドの重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、30,000以上、800,000以下であることが好ましく、30,000以上、600,000以下であることがより好ましく、30,000以上、300,000以下であることが最も好ましい。ポリアミドの重量平均分子量がこの範囲内であれば、ポリアミド微粒子の成形時にポリアミドの機械的物性および耐熱性等が損なわれるおそれがない。また、ポリアミドの重量平均分子量は、30,000以上、200,000以下、または30,000以上、100,000以下でもあり得る。ポリアミドの重量平均分子量が30,000以上であれば、熱水中に溶解されたポリアミド微粒子が水側に分散することを効果的に抑制することができ、その結果、マイクロメートルサイズ以上のポリアミド粒子を効率的に形成することができる。
【0040】
(比表面積)
滑らかな球状ポリアミド微粒子は、比表面積が小さい方が好ましく、具体的には、20m
2/g以下が好ましく、10m
2/g以下が特に好ましい。より好適な滑らかなポリアミド微粒子は、平均粒子径が1μm以上、30μm以下であり、かつ比表面積が20m
2/g以下である。比表面積は窒素吸着によるBET法などで測定できる。
【0041】
[ポリアミド微粒子の利点]
本実施形態に係るポリアミド微粒子は、上述したように特定のポリアミドからなる微粒子であり、生分解性を有している。そのため、本実施形態に係るポリアミド微粒子は環境中で分解されるため、環境汚染の程度が低い。また、本実施形態に係るポリアミド微粒子は真球度が80以上であるため、滑らかな滑り性を有する。
【0042】
〔ポリアミド微粒子の製造方法〕
次に、本実施形態に係るポリアミド微粒子の製造方法について説明する。
【0043】
本実施形態に係るポリアミド微粒子の製造方法において用いるポリアミドとして、一般に市販されているものを使用してもよい。また、例えば以下の方法によってポリアミドを合成してもよい。
【0044】
本実施形態に係る製造方法において使用するポリアミドは、上述したように、少なくとも1つのアルキレン基と、少なくとも1つのアミド結合とを有する構造単位の繰り返しからなり、当該少なくとも1つのアルキレン基のそれぞれが炭素数1以上、5以下であるポリアミドであれば特に限定されるものではない。このようなポリアミドの合成方法を以下に例示する。
【0045】
(第1のポリアミド合成方法)
第1のポリアミド合成方法として、ラクタム構造を有する有機化合物を原料として開環重合する方法を挙げることができる。ラクタム構造を有する有機化合物としては、例えばα−ピロリドン、ε−カプロラクタム等を挙げることができる。また開環重合する方法は、特に限定されるものではなく、例えばバルク重合および石油系溶媒中粒子重合等の従来公知の方法を挙げることができる。
【0046】
より具体的には、この方法では、例えば、上述したラクタム構造を有する有機化合物を加水分解によって開環後、脱水縮合させることでポリアミドを合成する。その際、次の手順も選択され得る。すなわち、ラクタム構造を有する有機化合物に少量の塩基を作用させてアニオン種を発生させ、そのアニオン種がラクタム構造を有する有機化合物を開環させることで鎖延長するアニオン開環重合の方法である。
【0047】
(第2のポリアミド合成方法)
第2のポリアミド合成方法として、アミノ酸を自己縮合する方法を挙げることができる。アミノ酸としては、例えばグリシン、γ−アミノブタン酸等を挙げることができる。
【0048】
より具体的には、この方法では、アミノ酸を減圧下加熱することで脱水縮合させることでポリアミドを合成する。その際、次の手順も選択される。すなわち直径0.1mm程度のポリスチレン高分子ゲルのビーズ等を固相として用い、ここにアミノ酸を結合させ、続けて縮合反応後に末端を脱保護することによって1つずつアミノ酸鎖を伸長していく、合成ペプチドの製造方法として公知であるメリーフィールド法である。
【0049】
(第3のポリアミド合成方法)
第3のポリアミド合成方法として、ジアミンとジカルボン酸とを縮合する方法を挙げることができる。ジアミンとして、例えば1,2−エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブチレンジアミンおよび1,6−ヘキサメチレンジアミン等を挙げることができる。またジカルボン酸として、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸およびアジピン酸等を挙げることができる。
【0050】
(その他のポリアミドの合成方法)
ポリアミド3であれば、例えばアクリルアミド類の水素移動重合法によって合成してもよい。
【0051】
また、ポリアミド4の合成方法は、例えば非特許文献1として挙げた「N,N’−アジピルジピロリドンの存在下におけるα−ピロリドンのアルカリ触媒重合」、谷山雅一、長岡武、高田利宏、讃山一則、工業化学雑誌、第65巻、第3号、1962年、419〜422頁に記載されている。より具体的には、次の手順によりポリアミド4を得ることができる。すなわちα−ピロリドンに少量の金属ナトリウムを作用させ、一部のα−ピロリドンについてアニオン種を発生させる。そこに開始剤としてN−アシル化ピロリドンを加えることで、ピロリドンの開環反応が連続的に進行し、ポリアミド4の塊状物を得ることができる。
【0052】
(ポリアミド微粒子の製造方法)
次に、本実施形態に係るポリアミド微粒子の製造方法(以下、「本製造方法」ということがある)について説明する。
【0053】
本製造方法は、上述した構成を有するポリアミドを用いる方法であって、(1)溶解工程と、(2)析出工程をと含むものである。以下、この2つの工程について、詳細に説明する。
【0054】
(1)溶解工程
本実施形態に係る溶解工程には、上述した構成を有するポリアミドを熱水中に溶解することが含まれる。
【0055】
溶解工程では、熱水中のポリアミドの濃度が0.1重量%以上、10重量%以下、好ましくは0.1重量%以上、3重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上、1重量%以下となるように、ポリアミドを溶解することが好ましい。ポリアミドの溶解量を上記範囲内とすることにより、ポリアミド微粒子の真球度がより高くなる。
【0056】
溶解工程において、熱水の温度は100℃以上、170℃以下であることが好ましく、100℃以上、150℃以下であることがより好ましく、130℃以上、150℃以下であることが最も好ましい。熱水の温度が上記範囲内であることは、ポリアミドの熱水への溶解性の面で好ましい。
【0057】
本実施形態では、水にポリアミドを添加して所望の温度に加熱した後、熱水の温度を維持しながらポリアミドを溶解することが好ましい。また、その場合、熱水の温度は1分以上維持することが好ましく、30分以上維持することがより好ましく、3時間以上維持することがさらに好ましく、6時間以上維持することが特に好ましい。なお、予め水を所望の温度に加熱した熱水にポリアミドを添加した後、熱水の温度を維持しながらポリアミドを溶解するようにしてもよい。
【0058】
(2)析出工程
析出工程では、上述した溶解工程後に、熱水とポリアミドとの混合物を冷却する。冷却方法は特に限定されるものでなく、例えばポリアミドと熱水との混合物を室温(23℃程度)で静置しておく手法およびポリアミドと熱水との混合物を冷水中に静置させる手法等が挙げられる。
【0059】
本実施形態では、熱水とポリアミドとの混合物を冷却する過程で、熱水中に溶解していたポリアミドの分子が規則的に配列し、これにより球状のポリアミド微粒子が形成される。
【0060】
本実施形態では、必要に応じて、上述の工程に加えて、篩等によって析出されたポリアミド微粒子を紛級してポリアミド微粒子の粒子径をそろえる操作を行ってもよい。
【0061】
[ポリアミド微粒子の用途]
本実施形態に係るポリアミド微粒子は単独で用いてもよい。また、本実施形態に係るポリアミド微粒子は、当該ポリアミド微粒子と他の成分とを含有するポリアミド微粒子組成物として用いてもよい。ポリアミド微粒子組成物に含有される他の成分は、例えば生分解性プラスチックであってもよい。さらに、他の成分としては、例えば、ポリエチレングリコール等のポリエーテル類、ポリビニルアルコール等のポリアルコール類ならびにポリ乳酸およびポリグリコール酸等のポリエステル類等を挙げることができる。
【0062】
ポリアミド微粒子組成物に含まれるポリアミド微粒子と他の成分との含有比は、例えばポリアミド微粒子:他の成分=1:99以上、99:1以下であることが好ましく、2:98以上、98:2以下であることがより好ましく、3:97以上、97:3以下であることが最も好ましい。
【0063】
さらに、ポリアミド微粒子組成物には、本実施形態に係るポリアミド微粒子が2種類以上含有されてもよい。したがって例えば本実施形態に係るポリアミド微粒子組成物には、ポリアミド2からなるポリアミド微粒子およびポリアミド4からなるポリアミド微粒子が含有されていてもよい。さらに、本実施形態に係るポリアミド微粒子組成物が2種類以上の異なるポリアミド微粒子を含む場合には、それらポリアミド微粒子の含有比は特に限定されない。
【0064】
本実施形態に係るポリアミド微粒子組成物は、例えば、外用組成物、塗料用組成物およびトナー用組成物等として用いることができる。以下、本実施形態に係るポリアミド微粒子の用途について具体的に説明する。しかし、当然ながら、本実施形態に係るポリアミド微粒子の用途は以下に説明する具体例に限定されるものではなく、他の用途についても好適に用いることができることは言うまでもない。
【0065】
(外用組成物)
本実施形態において外用組成物とは、人体に対して外側から直接用いられる組成物を意味する。外用組成物としては、例えばファンデーション、口紅、アイシャドウ等の化粧品等を挙げることができる。本実施形態に係る外用組成物はポリアミド微粒子を含有するため、それらポリアミド微粒子の球形状によって光の散乱を均一とすることができる。そのため、本実施形態に係る外用組成物によれば、光の散乱を均一化するための添加成分として、ポリアミド微粒子を好適に用いることができる。
【0066】
本実施形態において、外用組成物に含まれるポリアミド微粒子以外の成分としては、従来の化粧品等に含まれる成分を挙げることができる。
【0067】
外用組成物中のポリアミド微粒子の含有量は特に限定されるものではないが、光の散乱の均一化を向上させるためには、外用組成物中のポリアミド微粒子の含有量が3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることが最も好ましい。
【0068】
(塗料用組成物)
本実施形態において塗料用組成物とは、例えば、建築物用、自動車用、金属製品用、電気器具用等に用いられる塗料である。本実施形態に係る塗料用組成物はポリアミド微粒子を含有するため、それらのポリアミド微粒子の球形状によって光の散乱を均一とすることができる。そのため、本実施形態に係る塗料用組成物によれば、光の散乱を均一化するための添加成分として、ポリアミド微粒子を好適に用いることができる。
【0069】
本実施形態において、塗料用組成物に含まれるポリアミド微粒子以外の成分として、従例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、増粘剤、可塑剤、溶剤、顔料等の従来の塗料等に含まれる成分を挙げることができる。
【0070】
塗料用組成物中のポリアミド微粒子の含有量は特に限定されるものではないが、光の散乱の均一化を向上させるためには、塗料用組成物中のポリアミド微粒子の含有量が10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることが最も好ましい。
【0071】
(トナー用組成物)
本実施形態においてトナー用組成物とは、例えば、レーザープリンターおよび複写機等に用いられるトナー等である。本実施形態に係るポリアミド微粒子は、例えばトナーにおけるプラスチック粒子として用いることができる。具体的には、例えば、ポリアミド微粒子に帯電性を付与し、さらに、顔料等の色粒子をポリアミド微粒子に付着させることによって、ポリアミド微粒子をトナーのプラスチック微粒子として用いることができる。
【0072】
本実施形態において、トナー用組成物に含まれるポリアミド微粒子以外の成分として、例えばポリスチレン、ポリエステル等の従来のトナー等に含まれる成分を挙げることができる。
【0073】
トナー用組成物中のポリアミド微粒子の含有量は特に限定されるものではないが、例えば用紙等の対象物に対してトナーが均一に塗布されるためには、トナー組成物中のポリアミド微粒子の含有量が40重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが最も好ましい。
【0074】
[外用組成物、塗料用組成物、トナー用組成物の製造方法]
本実施形態に係る外用組成物、塗料用組成物およびトナー用組成物は、本実施形態に係るポリアミド微粒子1種類または2種類以上をそのままの状態で含むものであってもよい。また、本実施形態に係る外用組成物、塗料用組成物およびトナー用組成物は、上述したように、本実施形態に係るポリアミド微粒子と、分散媒および上述したような任意成分とが混合されてなるものであってもよい。この場合、分散媒としては、特に限定されないが、例えば、水、エチルアルコール、グリセリン等のアルコール類含有水溶液等の水系分散媒、脂肪酸エステル油等の非極性油等を挙げることができる。また、混合方法においても、特に限定されるものではなく、例えば、ヘンシェルミキサー、プラストミル、コーンミキサー、ニーダー、リボンミキサー等の攪拌機等を用いた方法を挙げることができる。
【0075】
本実施形態に係る外用組成物、塗料用組成物またはトナー用組成物中に、本実施形態に係るポリアミド微粒子に加えて他の生分解性プラスチックが含まれる構成とする場合には、例えば、溶融されたポリアミドと、その他の生分解性プラスチックとをニーダーおよびリボンミキサー等で撹拌してもよい。あるいは、攪拌機に溶融・溶解したポリアミドとその他の生分解性プラスチックとを同時または別々に投入して混合してもよい。
【0076】
(まとめ)
本発明に係るポリアミド微粒子は、少なくとも1つのアルキレン基と、少なくとも1つのアミド結合とを有する構造単位の繰り返しからなるとともに当該少なくとも1つのアルキレン基のそれぞれが炭素数1以上、5以下であるポリアミドからなり、真球度が80以上である。
【0077】
また、本発明に係るポリアミド微粒子は、平均粒子径が1μm以上、350μm以下であることが好ましい。
【0078】
また、本発明に係るポリアミド微粒子は、重量平均分子量が30,000以上、800,000以下であることが好ましい。
【0079】
また、本発明に係るポリアミド微粒子は、比表面積が20m
2/g以下であることが好ましい。
【0080】
また、本発明に係るポリアミド微粒子において、構造単位は、下記式(1)
【0081】
【化3】
(式中、xは2以上、5以下の整数である。)
で表されることが好ましい。
【0082】
また、本発明に係るポリアミド微粒子は、構造単位は、下記式(2)
【0083】
【化4】
(式中、yは1以上、5以下の整数であり、zは3以上、7以下の整数である。)
で表されることが好ましい。
【0084】
また、本発明に係るポリアミド微粒子の製造方法は、少なくとも1つのアルキレン基と、少なくとも1つのアミド結合とを有する構造単位の繰り返しからなるとともにこの少なくとも1つのアルキレン基のそれぞれが炭素数1以上、5以下であるポリアミドを熱水中に溶解する溶解工程と、この熱水を冷却してポリアミドからなるポリアミド微粒子を析出させる析出工程とを含むものである。
【0085】
また、本発明に係るポリアミド微粒子の製造方法は、溶解工程において、熱水中のポリアミドの濃度が0.1重量%以上、10重量%以下となるように水中、あるいは熱水中にポリアミドを溶解することが好ましい。
【0086】
また、本発明に係るポリアミド微粒子の製造方法は、溶解工程において、熱水中のポリアミドの濃度が0.1重量%以上、3重量%以下となるように水中、あるいは熱水中にポリアミドを溶解することが好ましい。
【0087】
また、本発明に係る外用組成物、塗料用組成物およびトナー用組成物は、いずれも本発明に係るポリアミド微粒子を含有することが好ましい。
【0088】
以下に実施例を示し、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。もちろん本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。さらに、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本文中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例】
【0089】
<合成例>
(ポリアミド4の合成方法)
ポリアミド4(以下、「PA4」とも言う)は、非特許文献1に挙げた「N,N−アジピルジピロリドンの存在下におけるα−ピロリドンのアルカリ触媒重合」、谷山雅一、長岡武、高田利宏、讃山一則、工業化学雑誌、第65巻、第3号、1962年、419〜422頁に記載の合成方法にしたがって合成した。より具体的には、50℃の湯浴下で、密閉したフラスコ中に、α‐ピロリドンに1mol%の金属ナトリウム(Na)を加えた。Na溶解後、開始剤として0.1mol%のN,N’アジピルジピロリドンを加えた。するとただちに系は白濁し、まもなく撹拌困難となった。撹拌停止してから10時間後、フラスコ中に生成した塊状物を取り出して塊状物を粉砕後、アセトンで未反応物および低分子物を洗浄した。それから塊状物を乾燥させることによって、粉末状のPA4を得た。
【0090】
得られたPA4の重量平均分子量(Mw)は96,000であった。この重量平均分子量は、以下の手順、分析装置および条件によって測定した。
【0091】
測定手順:
トリフルオロ酢酸ナトリウムを5mMの濃度で溶解したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に、上記のようにして得られたPA4試料10mgを溶解させて10cm
3とした後、メンブレンフィルターでろ過して試料溶液を得た。この試料溶液10μLを以下に示す分析装置に注入し、後述する測定条件でPA4の重量平均分子量を測定した。・分析装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析装置(昭和電工株式会社製、GPC104)
・測定条件:
A)SHODEX 104システム
B)カラム:昭和電工HFIP 606×2本 直列、40℃
C)5 mM CF3COONa/HFIP、0.1 mL/min
D)Detector:RI
E)サンプル10〜11mg/5mM CF3COONa/HFIP 10mL
F)PMMA標準物質(150 E4, 65.9 E4, 21.8 E4, 4.96 E4, 2.06 E4, 0.68 E4, 0.2 E4)による校正(PMMA換算)法
<実施例1>
(ポリアミド4微粒子の調製)
純水及び純水に対するPA4の濃度が0.1重量%となるように耐圧容器にPA4を加え、耐圧容器を150℃の恒温槽で3時間加熱し、熱水中でPA4を溶解した。加熱終了後、熱水が室温(23℃)となるまで熱水を自然冷却し、さらに一晩静置することにより、PA4微粒子が純水に分散した懸濁溶液を得た。
【0092】
上記手法で得られた懸濁溶液をスライドガラスの上に滴下し、カバーガラスを載せて得られた観察試料について、光学顕微鏡(KEYENCE社製、VHX−700F,使用レンズ:VH−Z100R)を用いて、室温(23℃)、倍率×300の条件で、PA4微粒子の分散状態を観察した。観察結果を
図1に示す。
図1は、PA4の濃度を0.1重量%として得られたポリアミド微粒子の光学顕微鏡写真である。
図1から、PA4微粒子は、純水中で凝集することなく分散していることがわかる。
【0093】
図1に示す光学顕微鏡写真からPA4微粒子30個を任意に選択し、各々のPA4微粒子について、それらの短径および長径を測定し、以下の式にしたがってPA4微粒子の真球度を求めた。この結果を表1に示す。
【0094】
【数2】
また、
図1に示す光学顕微鏡写真中のPA4微粒子50個を任意に選択し、それらの粒径を計測した。そして、それら粒径の平均値をPA4微粒子の平均粒子径とした。この結果を表1に示す。
【0095】
<実施例2>
PA4の濃度が1重量%となるようにPA4を加えた以外は実施例1と同様にして懸濁溶液を得た。得られた懸濁溶液について、実施例1と同様にして光学顕微鏡で観察した。観察結果を
図2に示す。
図2は、PA4の濃度を1.0重量%として得られたポリアミド微粒子の光学顕微鏡写真である。
図2から、PA4微粒子は純水中で凝集することなく分散していることがわかる。また、
図2に示す光学顕微鏡写真から、実施例1と同様にしてPA4微粒子の真球度および平均粒子径を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0096】
<実施例3>
PA4の濃度が10重量%となるようにPA4を加えた以外は実施例1と同様にして懸濁溶液を得た。得られた懸濁溶液について、実施例1と同様にして光学顕微鏡で観察した。観察結果を
図3に示す。
図3は、PA4の濃度を10重量%として得られたポリアミド微粒子の光学顕微鏡写真である。
図3から、PA4微粒子は純水中で凝集することなく分散していることがわかる。また、
図3に示す光学顕微鏡写真から、実施例1と同様にしてPA4微粒子の真球度および平均粒子径を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0097】
<比較例1>
合成例で得られたPA4を乳鉢を用いて粉砕して、微粒子を得た。得られた微粒子について、実施例1と同様の光学顕微鏡で観察した。観察結果を
図4に示す。
図4は、PA4を粉砕することによって得られた微粒子の光学顕微鏡写真である。また、
図4に示す光学顕微鏡写真から、実施例1と同様にして微粒子の真球度および平均粒子径を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0098】
<実施例4>
純水及び純水に対するPA4の濃度が1重量%となるように1L耐圧容器に重量平均分子量約80,000のPA4を加え、1L耐圧容器を加熱し内温を150℃とすることで、PA4を熱水に溶解した。加熱終了後に熱水の温度を30分維持した後、熱水が室温(23℃)となるまで熱水を冷却することにより、PA4微粒子が純水に分散した懸濁溶液を得た。さらに得られた懸濁溶液をろ紙でろ過し、ろ紙上に保持されたものを80℃で8時間真空乾燥し、ポリアミド4微粒子を得た。1L耐圧容器を用いることで、比表面積測定を行うのに十分な量のサンプルを得ることができる。
【0099】
(SEM観察)
上記手法で得られたポリアミド4微粒子を走査型電子顕微鏡(NeoScopeJCM-5000:日本電子株式会社製)を用いて観察を行ったところ
図5に示すような球状粒子であった。また光学顕微鏡写真の代わりにSEM画像を用いた以外は実施例1と同様に真球度および平均粒径を求めた。結果を表2に示す。
【0100】
(比表面積の測定)
ポリアミド4微粒子をさらに120℃で10分間乾燥させた。比表面積測定機(MONOSORB:Quantachrome Inturuments社製)を用いて、乾燥させたポリアミド4微粒子の比表面積を測定した。結果を表2に示す。
【0101】
<実施例5>
1L耐圧容器に加えるPA4の重量平均分子量が約210,000である以外は実施例4と同様にしてポリアミド4微粒子を得た。得られたポリアミド4微粒子について実施例4と同様にSEM観察を行うと、
図6に示すような球状粒子であった。またSEM画像を用いて実施例4と同様に真球度および平均粒径を求めた。結果を表2に示す。
【0102】
また、得られたポリアミド4微粒子について実施例4と同様にして、比表面積を測定した。結果を表2に示す。
【0103】
<実施例6>
PA4の濃度が5重量%である以外は実施例4と同様にしてポリアミド4微粒子を得た。得られたポリアミド4微粒子について実施例4と同様にSEM観察を行うと、
図7に示すような球状粒子であった。またSEM画像を用いて実施例4と同様に真球度および平均粒径を求めた。結果を表2に示す。
【0104】
また、得られたポリアミド4微粒子について実施例4と同様にして、比表面積を測定した。結果を表2に示す。
【0105】
<実施例7>
耐圧容器に加えるPA4の重量平均分子量が約210,000であり、PA4の濃度が5重量%である以外は実施例4と同様にしてポリアミド4微粒子を得た。得られたポリアミド4微粒子について実施例4と同様にSEM観察を行うと、
図8に示すような球状粒子であった。またSEM画像を用いて実施例4と同様に真球度および平均粒径を求めた。結果を表2に示す。
【0106】
また、得られたポリアミド4微粒子について実施例4と同様にして、比表面積を測定した。結果を表2に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】