【文献】
USSAMA M ABDEL-MOTAL,INTRATUMORAL INJECTION OF +--GAL GLYCOLIPIDS INDUCES A PROTECTIVE ANTI-TUMOR T CELL 以下備考,CANCER IMMUNOLOGY, IMMUNOTHERAPY,ドイツ,SPRINGER,2009年 1月28日,VOL:58, NR:10,PAGE(S):1545 - 1556,RESPONSE WHICH OVERCOMES TREG ACTIVITY,URL,http://dx.doi.org/10.1007/s00262-009-0662-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記腫瘍が、腹膜、肝臓、膵臓、肺、膀胱、前立腺、子宮、子宮頸部、膣、骨髄、乳房、皮膚、脳、リンパ節、頭頸部、胃、腸、結腸、腎臓、精巣、及び卵巣から選択される器官に由来する腫瘍である、請求項3又は請求項4記載の使用のための医薬組成物。
請求項1記載の糖脂質化合物若しくはその医薬として許容し得る塩を含む、対象における腫瘍を治療するための医薬組成物であって、該糖脂質化合物若しくはその医薬として許容し得る塩が該腫瘍に導入されるように用いられる、前記医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、先に本明細書に定義した通りの式(I)、(II)、及び(III)の化合物から選択される糖脂質化合物、又はその医薬として許容し得る塩が提供される。
【0017】
本明細書に記載した本発明は、治療される腫瘍内の腫瘍細胞の細胞膜に挿入されることが可能である糖脂質(すなわち式(I)、(II)、及び(III)の化合物)を提供する。腫瘍病変における本発明の糖脂質の存在は、対象に存在する天然の抗Gal抗体と、式(I)及び(II)の化合物(それぞれ、実施例1及び2として本明細書に記載した通りに調製される)のα-Galエピトープとの間の相互作用によって誘導される、免疫介在性の炎症プロセスによる腫瘍の破壊又は退縮をもたらすと考えられる。さらに、この治療は、治療された腫瘍を、転移性腫瘍細胞の免疫破壊によって遠隔転移の発生を予防する全身性の防御的な抗腫瘍免疫応答を誘発するワクチンに変換する。
【0018】
ヒト血清は、α-Galに対する抗体に加えて、他の炭水化物に対する抗体も含有する。血液型A・2型直鎖三糖(GalNAcα1-3-Gal-β1-4GlcNAc、GalNAcエピトープ)は、ヒト血清中の天然の抗体によって認識され得る、こうしたグリカンの1つである(von Gunten,S.らの文献(2009)「J.Allergy Clin.Immunol.」123,1268-76.e15;及びBovinの文献(2013)「Biochemistry(Moscow)」78(7),786-797)。これらの抗体はまた、GalNAcエピトープを含有する糖脂質で標識された腫瘍細胞の免疫殺傷の誘導における有用性を有することができる。式(III)の糖脂質化合物(実施例3として本明細書に記載した通りに調製される)は、ヒト血清中に存在する抗体が、この糖脂質で標識された細胞を選択的に認識し、かつ標識された細胞の補体介在性の溶解を刺激するかどうかを評価するために合成された、GalNAcエピトープを含有する糖脂質である。
【0019】
本明細書に記載した本発明は、限定はされないが、α-Gal又はGalNAcエピトープを保有し、したがって「α-Gal糖脂質」又は「GalNAc糖脂質」と称することができる式(I)、(II)、及び(III)の化合物と称される特定の糖脂質の腫瘍内送達を含めた、療法治療様式を含む。α-Gal又はGalNAc糖脂質は、治療される病変内の腫瘍細胞の細胞膜の外葉に挿入される。腫瘍病変におけるα-Gal又はGalNAc糖脂質の存在は、2つの目的:
1.天然の抗Gal又は抗GalNAc抗体と、腫瘍細胞膜に挿入されたα-Gal又はGalNAc糖脂質のα-Gal又はGalNAcエピトープとの間の相互作用によって、腫瘍病変内で誘導される、炎症プロセスによる腫瘍病変の免疫介在性の破壊;及び
2.α-Gal又はGalNAc糖脂質が挿入された腫瘍細胞及び腫瘍細胞膜の、抗原提示細胞による有効な取り込み、その結果、抗Gal又は抗GalNAc抗体とインサイチューで結合するα-Gal又はGalNAcエピトープを発現させること、それによって、治療された腫瘍病変を自家腫瘍ワクチンに変換すること
を達成する。
【0020】
発明の機構を理解する必要はないが、この取り込みは、α-Gal又はGalNAcエピトープを発現している腫瘍細胞上に存在する又は該腫瘍細胞内の、腫瘍抗原に対する有効な免疫応答を結果としてもたらすと考えられる。この免疫応答が、α-Gal又はGalNAcエピトープを発現しないが腫瘍抗原を発現する転移性腫瘍細胞の免疫介在性の破壊をもたらすことができることが、さらに考えられている。
【0021】
本発明は、治療される腫瘍内の細胞上のα-Gal又はGalNAcエピトープの発現を誘導する、注射又は任意の他の手段によって化合物を腫瘍に投与することを意図する。α-Gal又はGalNAc糖脂質のこうした投与は、以下の目的:
1.天然の抗Gal又は抗GalNAc抗体と、α-Gal又はGalNAc糖脂質のα-Gal又はGalNAcエピトープとの結合は、局所的な補体活性化をもたらし、それによって、限定はされないがC5a及びC3aを含めた走化性因子を産生することができる。これらの走化性因子は、限定はされないが樹状細胞及びマクロファージなどの抗原提示細胞の、腫瘍組織への広範囲な遊走を誘導する
2.α-Gal又はGalNAc糖脂質の脂質尾部は、治療される病変内の腫瘍細胞膜に自発的に挿入し、腫瘍細胞上にα-Gal又はGalNAcエピトープの発現をもたらすこととなる。これらのエピトープと結合する抗Gal又は抗GalNAcは、腫瘍細胞を含む腫瘍の退縮及び/又は破壊を誘導すると考えられている
3.抗Gal又は抗GalNAcによる腫瘍細胞膜のオプソニン化は、腫瘍に遊走する抗原提示細胞による有効な取り込みのために、これらを標的とする。これらの抗原提示細胞の遊走は、抗Gal又は抗GalNAcと、治療される腫瘍内のα-Gal又はGalNAc糖脂質との結合後に産生される、走化性の補体分解ペプチドによって誘導される
を達成する。
【0022】
いずれかの特定の機構に拘泥されるものではないが、腫瘍細胞膜結合型の抗Gal又は抗GalNAc IgG分子のFc部分が、抗原提示細胞上のFc-γ受容体(FcγR)と結合し、抗原提示細胞による腫瘍細胞の取り込みを誘導すると考えられる。取り込みに関する同様の誘導は、抗Gal又は抗GalNAcが結合している腫瘍細胞上の補体沈着物のC3b成分と、抗原提示細胞上のC3b受容体との間の相互作用の結果として起こる可能性がある。腫瘍膜の、抗原提示細胞への、この抗Gal又は抗GalNAc介在性のターゲティングは、自己腫瘍抗原の流入領域リンパ節への有効な輸送、並びにリンパ節内の抗原提示細胞による免疫原性腫瘍抗原ペプチドのプロセシング及び提示を可能にする。
【0023】
したがって、α-Gal又はGalNAc糖脂質の腫瘍内注入は、治療される腫瘍病変を自家腫瘍ワクチンにインサイチューで変換し、腫瘍抗原を免疫系に提供し、それによって、防御的な抗腫瘍免疫応答を誘発する。この免疫応答は、個々の腫瘍細胞の、又は腫瘍細胞の小さな凝集体(すなわち、例えば微小転移)の破壊を含む、腫瘍退縮を誘導することが可能である。このような微小転移は、通常、目視で又は画像化によって検出不可能であり、かつ従来の外科的又は放射線療法技術によって到達可能ではない(すなわち、これらは、小さなサイズが原因で切除不可能である)。したがって、本方法は、目視で又は画像化によって、通常、検出不可能であり、かつ従来の外科的及び放射線療法技術によって到達可能ではない、微小転移を治療することが可能であるという、さらなる利点を有する。
【0024】
(定義)
用語「式(I)の化合物」に対する本明細書での言及は、機能性(F)、スペーサー(S)、及び脂質(L)成分からなり、かつ、細胞がその表面上に機能性(F)成分を呈示することとなるように細胞膜に挿入するために使用することができる、α-Gal糖脂質の具体例を指す。式(I)の化合物の機能性(F)成分は、三糖基:Gal-α1-3-Gal-β1-4GlcNAc(すなわちα-Galエピトープ)である。スペーサー(S)成分は、2つのCMG基からなり、脂質(L)成分は、DOPEである。「式(I)の化合物」に対する本明細書での言及はまた、「Galili-CMG2-DOPE」及び「CMG」を含み、これらは、互換的に使用することができる。式(I)の化合物の構造は、先に示した通りである。式(I)の化合物は、実施例1について本明細書に記載した詳細な合成手順に従って調製することができる。
【0025】
用語「式(II)の化合物」に対する本明細書での言及は、機能性(F)、スペーサー(S)、及び脂質(L)成分からなり、かつ、細胞がその表面上に機能性(F)成分を呈することとなるように細胞膜に挿入するために使用することができる、α-Gal糖脂質の具体例を指す。式(II)の化合物の機能性(F)成分は、三糖基:Gal-α1-3-Gal-β1-4GlcNAc(すなわちα-Galエピトープ)である。スペーサー(S)成分は、T17基からなり、脂質(L)成分は、DOPEである。「式(II)の化合物」に対する本明細書での言及はまた、「Galili-T17 DOPE」及び「T17」を含み、これらは、互換的に使用することができる。式(II)の化合物の構造は、先に示した通りである。式(II)の化合物は、実施例2について本明細書に記載した詳細な合成手順に従って調製することができる。式(II)の三量体化合物は、式(II)
aの二量体化合物:
【化2】
という不純物を含有すると考えられる。したがって、用語「式(II)の化合物」、「Galili-T17 DOPE」、及び「T17」に対する本明細書での言及は、式(II)と(II)
aの化合物の混合物を指す。
【0026】
用語「式(III)の化合物」に対する本明細書での言及は、機能性(F)、スペーサー(S)、及び脂質(L)成分からなり、かつ、細胞がその表面上に機能性(F)成分を呈示することとなるように細胞膜に挿入するために使用することができる、GalNAc糖脂質の具体例を指す。式(I)の化合物の機能性(F)成分は、三糖基:GalNAcα1-3-Gal-β1-4GlcNAc(すなわちGalNAcエピトープ)である。スペーサー(S)成分は、O(CH
2)
3NH基を含み、脂質(L)成分は、DOPEである。「式(III)の化合物」に対する本明細書での言及はまた、「GalNAc-Gal-GlcNAc-Ad-DOPE」及び「GalNAc」を含み、これらは、互換的に使用することができる。式(III)の化合物の構造は、先に示した通りである。式(III)の化合物は、実施例3について本明細書に記載した詳細な合成手順に従って調製することができる。
【0027】
一実施態様では、糖脂質化合物は、式(I)の化合物から選択される。代替実施態様では、糖脂質化合物は、式(II)の化合物から選択される。代替実施態様では、糖脂質化合物は、式(I)及び(II)の化合物から選択される。代替実施態様では、糖脂質化合物は、式(III)の化合物から選択される。
【0028】
用語「DOPE」に対する本明細書での言及は、化学名1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを有するホスファチジルエタノールアミン(PE)を指す。
【0029】
式(I)、(II)、及び(III)の化合物は、塩、例えば酸付加塩、又は、ある種の場合には有機及び無機塩基の塩、例えばカルボン酸塩、スルホン酸塩、及びリン酸塩の形態で存在することができる。こうした塩はすべて、本発明の範囲内であり、式(I)、(II)、及び(III)の化合物に対する言及には、これらの化合物の塩形態が含まれる。
【0030】
本発明の塩は、「医薬用塩:性質、選択、及び使用(Pharmaceutical Salts:Properties, Selection, and Use)」、P.Heinrich Stahl(編集者)、Camille G.Wermuth(編集者)、ISBN:3-90639-026-8,Hardcover,388 pages,August 2002に記載されている方法などの従来の化学的方法によって、塩基性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、こうした塩は、塩基形態のこれらの化合物を、適切な塩基又は酸(水中、若しくは有機溶媒中、又はこれら2つの混合物中)と反応させることによって調製することができ;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルなどの非水系媒質が使用される。
【0031】
酸付加塩(一又は二塩)は、非常に様々な酸(無機と有機のいずれも)を用いて形成することができる。酸付加塩の例としては、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えばL-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)ショウノウ酸、カンファー-スルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、グルクロン酸(例えばD-グルクロン酸)、グルタミン酸(例えばL-グルタミン酸)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、ハロゲン化水素酸(例えば臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸)、イセチオン酸、乳酸(例えば(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、及び吉草酸、並びにアシル化アミノ酸及び陽イオン交換樹脂からなる群から選択される酸を用いて形成される、一又は二塩が挙げられる。
【0032】
ある特定の群の塩は、酢酸、塩酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸(メシラート)、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、吉草酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、マロン酸、グルクロン酸、及びラクトビオン酸から形成される塩からなる。ある特定の塩は、塩酸塩である。別の特定の塩は、ヘミ硫酸塩としても公知である硫酸水素塩である。さらなる実施態様では、塩は、ナトリウム及びカリウムから選択される、又は、アミン-対イオンを含む。
【0033】
式(I)、(II)、及び(III)の化合物が、アミン官能基を含有する場合、これらは、当業者に周知の方法に従って、例えば、アルキル化剤との反応によって、第四級アンモニウム塩を形成することができる。こうした第四級アンモニウム化合物は、式(I)の範囲内である。
【0034】
本発明の化合物は、塩が形成される酸のpKaに依存して、単一又は複数の対イオンを含有することができる。例えば、実施例1は、4個の酸基を含有し、実施例2は、20個の酸基を含有し、したがって、これらの化合物のそれぞれは、複数の対イオンを含有するのに十分に適している。
【0035】
本発明の化合物の塩の形態は、一般的に、医薬として許容し得る塩であり、医薬として許容し得る塩の例は、Bergeらの文献、1977、「医薬として許容し得る塩(Pharmaceutically Acceptable Salts)」、J.Pharm.Sci.,Vol.66,pp.1-19に論じられている。しかし、医薬として許容し得ない塩も、その後医薬として許容し得る塩に変換させることができる中間体形態として調製される可能性がある。例えば、本発明の化合物の精製又は分離において有用であり得る、こうした医薬として許容し得る塩ではない形態も、本発明の一部を成す。
【0036】
用語「α-Galエピトープ」とは、本明細書で使用する場合、Galα1-3Galβ1-4GlcNAc-R、Galα1-3Galβ1-3GlcNAc-R、又は非還元末端に末端Galα1-3Galを有するあらゆる炭水化物鎖を含む末端構造を有する、あらゆる分子、又は分子の一部をいう。α-ガラクトシル(「アルファ-Gal」又は「α-Gal」とも称される)エピトープ、すなわちガラクトシル-アルファ-1,3-ガラクトシル-ベータ-1,4-N-アセチルコサミンは、Galili,U.及びAvila,J.L.の文献、「アルファ-Gal及び抗Gal(Alpha-Gal and Anti-Gal)」、Subcellular Biochemistry,Vol.32,1999に記載されている。異種移植研究は、ヒトが、α-ガラクトシルエピトープ(これは、それ自体はヒトでは通常見られないが、他の動物及び多くの微生物では見られる)に対する免疫応答を開始すると結論付けている。
【0037】
用語「GalNAcエピトープ」とは、本明細書で使用する場合、GalNAcα1-3-Gal-β1-4GlcNAc、又は非還元末端に末端GalNAcα1-3-Galを有するあらゆる炭水化物鎖を含む末端構造を有する、あらゆる分子、又は分子の一部をいう。
【0038】
用語「糖脂質」とは、本明細書で使用する場合、セラミド、脂肪酸鎖、又は他の任意の脂質と連結された少なくとも1つの炭水化物鎖を有するあらゆる分子をいう。あるいは、糖脂質は、場合によってはスフィンゴ糖脂質と称される。
【0039】
用語「抗Gal」とは、本明細書で使用する場合、α-Galエピトープと結合する、天然に存在する抗体をいう。
【0040】
用語「抗GalNAc」とは、本明細書で使用する場合、GalNAcエピトープと結合する、天然に存在する抗体をいう。
【0041】
用語「α-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ」とは、本明細書で使用する場合、α-Galエピトープを合成することが可能なあらゆる酵素をいう。
【0042】
用語「抗Gal結合エピトープ」とは、本明細書で使用する場合、天然の抗Gal抗体とインビボ又はインビトロで結合することが可能である、あらゆる分子、又は分子の一部をいう。
【0043】
用語「抗GalNAc結合エピトープ」とは、本明細書で使用する場合、天然の抗GalNAc抗体とインビボ又はインビトロで結合することが可能である、あらゆる分子、又は分子の一部をいう。
【0044】
用語「切除不可能な」とは、本明細書で使用する場合、外科的に除去することができない器官又は身体構造のいずれかの部分をいう。例えば、「切除不可能な腫瘍」は、従来の外科的技術によって物理的に到達不可能な腫瘍、その除去が患者の癌疾患全体若しくは福祉を改善しない腫瘍、又はその除去が生命維持に必要な器官にとって有害である可能性がある腫瘍であり得る。
【0045】
用語「膜結合型」とは、本明細書で使用する場合、リン脂質二重層に安定して付着する又はリン脂質二重層の内部に埋め込まれるあらゆる分子をいう。こうした付着又は埋め込みは、限定はされないが、イオン結合、共有結合、疎水性力、又はファンデルワールス力などを含めた力を必要とする可能性がある。例えば、疎水性アミノ酸領域を含むタンパク質が、それ自体、リン脂質二重層膜に挿入することもできるし、脂質尾部を含有する分子が、それ自体、細胞のリン脂質二重層に挿入し、埋め込まれるようになることもできる。本発明の糖脂質を含有するα-Gal又はGalNAcの脂質成分は、腫瘍の細胞膜に挿入して、その細胞表面上にα-Gal又はGalNAcエピトープを呈示する腫瘍を作り出すために使用される。
【0046】
用語「部分集合」は、本明細書で使用する場合、群全体よりも数が少ない、限定された群をいう。例えば、患者は、複数の切除不能な固形腫瘍を提示する可能性がある。この複数性のうち、ある部分集合は、非外科的な技術によって到達可能である可能性があるのに対して、別の部分集合は、非外科的な技術によって到達可能ではない可能性がある。
【0047】
用語「到達可能な」とは、本明細書で使用する場合、非外科的技術によって固形腫瘍を治療する、いずれかの能力をいう。こうした技術には、限定はされないが、皮膚への注射、又は内視鏡法、気管支鏡法、膀胱鏡法、結腸鏡法、腹腔鏡法、カテーテル法による注入、又はローション、軟膏、若しくは粉末による局所適用が含まれ得る。例えば、卵巣固形腫瘍は、腹腔鏡法によって到達可能であり得る。別の例では、結腸固形腫瘍は、結腸鏡法によって到達可能であり得る。
【0048】
用語「導入すること」とは、本明細書で使用する場合、化合物を、ある組織に、続いて前記組織内の細胞に移動させるあらゆる方法をいう。こうした導入の方法には、限定はされないが、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、バイオバリスティック(biobalistic)、リポフェクション、及び当技術分野で公知の多くの市販品として入手可能なDNAベクターが含まれ得る。あるいは、化合物は、生理機構(すなわち、例えば、疎水性相互作用又は能動輸送)によって細胞に組み込まれるように、細胞に隣接して配置され得る。ある導入方法は、注入を含み、ここでは、化合物は、注入される組織内の細胞間隙に直接的に配置される。こうした注入は、器官部分、成長物(すなわち、例えば、固形腫瘍)、又は体腔が「到達可能」である場合に可能であり得る。
【0049】
用語「〜に」とは、本明細書で使用する場合、細胞膜を通した又は細胞膜内への分子の成功裡の透過をいう。例えば、ウイルスベクターは、腫瘍細胞が遺伝子導入されるような条件下で、固形腫瘍細胞に導入することができる。別の例では、糖脂質を、糖脂質が細胞のリン脂質二重層膜に挿入されるようになるような条件下で、腫瘍細胞に導入することができる。
【0050】
用語「退縮」、「少なくともある程度サイズが小さくなる」、又は「低下する」とは、本明細書で使用する場合、例えば固形腫瘍などの身体的成長物の縮小をいう。こうした縮小は、限定はされないが、直径、質量(すなわち重量)、又は体積などの、測定されるパラメータの減少によって決定することができる。縮小は、決して、サイズが完全に低下したことを示すわけではなく、測定されるパラメータが以前の決定よりも量的に少ないことを示すに過ぎない。
【0051】
用語「破壊」とは、本明細書で使用する場合、例えば固形腫瘍などの身体的成長物の完全な細胞破壊をいう。こうした破壊は、身体的成長物が完全に消化されて身体から排除されるような、細胞内アポトーシス、T細胞介在性の細胞の死滅、補体介在性の細胞溶解、及び/又はマクロファージ食作用を含むことができる。用語「腫瘍の破壊」とは、診断手段によって、もはや検出可能ではない程度までの腫瘍の減少をいう。
【0052】
本明細書で使用される用語「治療すること」、「治療」、及び「治療する」とはすべて、例えば固形腫瘍などの身体的成長物のサイズが少なくともある程度小さくなること、又はサイズの低下をもたらす手順をいうことを目的とする。
【0053】
用語「すべてよりも少ない」とは、本明細書で使用する場合、ある群のある部分集合をいう。本発明の一実施態様という状況では、患者における、すべてよりも少ない腫瘍の治療が意図される。言い換えれば、一実施態様では、α-Gal又はGalNAcエピトープの導入によって(例えば、本発明の糖脂質を含有するα-Gal又はGalNAcの導入によって)、あらゆる腫瘍を治療することは必要でなく;むしろ、部分集合に対する導入が、すべての腫瘍(直接的に治療されていないものを含む)に対する免疫応答をもたらす。このようにして、例えば固形腫瘍転移などの複数の身体的成長物の集合的な縮小を達成することができる。こうした縮小は、限定はされないが数などの測定パラメータの低下によって決定することができる。縮小は、決して、パラメータがゼロに低下したことを示すわけではなく、測定されるパラメータが以前の決定よりも量的に少ないことを示すに過ぎない。
【0054】
用語「成長物」とは、本明細書で使用する場合、異常な増殖を示すと考えられる細胞塊を含む、あらゆる組織又は器官をいう。こうした成長物は、癌性、非癌性、悪性、又は非悪性であり得る。成長物が、癌を含む場合、これは、腫瘍であり得る。
【0055】
用語「腫瘍」とは、本明細書で使用する場合、細胞の異常な成長又は分割から生じる、組織の異常な塊をいう。こうした腫瘍は、固形(すなわち、特定の器官、組織、若しくは腺における、例えば、腹膜、肝臓、膵臓、肺、膀胱、前立腺、子宮、子宮頸部、膣、乳房、皮膚、脳、リンパ節、頭頸部、胃、腸、結腸、若しくは卵巣上の、細胞の塊)、又は非固形(すなわち、血液中で発生する液性腫瘍、例えば白血病)であり得る。
【0056】
用語「対象」とは、本明細書で使用する場合、腫瘍を発生することが可能なあらゆる生物をいう。こうした生物には、限定はされないが、哺乳類、ヒト、非霊長類哺乳類、原猿、及び新世界ザルなどが含まれる。
【0057】
用語「分子」とは、本明細書で使用する場合、組成物のすべての特性を保持し、かつ1個以上の原子からなる、組成物の最小粒子をいう。このような1個以上の原子は、分子が他の分子と相互作用して(すなわち、イオン結合的に、共有結合的に、非共有結合的に、など)、付着及び/又は会合を成すことができるように配置される。例えば、分子は、抗Gal又は抗GalNAc抗体と相互作用する能力を提供するように配置された、1個以上の原子を有することができる。
【0058】
(合成手順)
先に論じた通り、式(I)、(II)、及び(III)の化合物についての詳細な合成手順を、それぞれ、実施例1、2、及び3において本明細書に記載する。
【0059】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、実施例1、スキームVIに記載する通りの式(21)の化合物を、実施例1、スキームVIに記載する通りの式(20)の化合物と反応させることを含む、本明細書に定義した通りの式(I)の化合物を調製するためのプロセスが提供される。こうしたプロセスは、一般的に、トリメチルアミンなどの好適な塩基の使用を含み、例えば室温で24時間撹拌することなどの、好適な反応条件にかけられる。
【0060】
本発明のさらなる態様によれば、実施例2、スキームVIIに記載する通りの式(28)の化合物を、実施例2、スキームVIIに記載する通りの式(29)の化合物と反応させることを含む、本明細書に定義した通りの式(II)の化合物を調製するためのプロセスが提供される。こうしたプロセスは、一般的に、トリメチルアミンなどの好適な塩基の使用を含み、例えば室温で24時間撹拌することなどの、好適な反応条件にかけられる。
【0061】
本発明のさらなる態様によれば、実施例3、スキームIIIに記載する通りの式(5)の化合物を、実施例3、スキームIIIに記載する通りの式(8)の化合物と反応させることを含む、本明細書に定義した通りの式(III)の化合物を調製するためのプロセスが提供される。こうしたプロセスは、一般的に、トリメチルアミンなどの好適な塩基の使用を含み、例えば室温で2時間撹拌することなどの、好適な反応条件にかけられる。
【0062】
(天然の抗Gal抗体、α-Galエピトープ、及び異種移植拒絶反応)
抗Galは、すべてのヒトにおいて存在し得る天然の抗体であると考えられており、血清免疫グロブリンの0.1〜2%を構成する(Bovin N.V.の文献、「Biochemistry(Moscow)」、2013;78(7):786-797、Galiliらの文献「J.Exp.Med.」1984;160:1519-31、及びHamadeh R Mらの文献「Clin.diagnos.Lab.Immunol.」1995;2:125-31)。研究によれば、抗Gal抗体が、細胞表面又は遊離糖脂質及び糖タンパク質上のα-Galエピトープと特異的に相互作用する可能性があることを示すデータが示されている。(Galili Uらの文献「J.Exp.Med.」1985,162:573-82、及びGalili U.の文献「Springer Semin Immunopathol.」1993;15:155-171)。抗Gal抗体は、胃腸管内フローラの細菌による抗原刺激の結果として、生涯を通して産生され得ることがさらに報告されている(Galili Uらの文献「Infect.Immun.」1988;56:1730-37)。
【0063】
α-Galエピトープは、非霊長類哺乳類、原猿、及び新世界ザルの細胞のゴルジ体内のグリコシル化酵素α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼによって、糖脂質及び糖タンパク質上に豊富に生合成され得る(Galili Uらの文献「Biol.Chem.」1988;263;17755-62)。一方、ヒト、類人猿、及び旧世界ザルは、α-Galエピトープを欠いているが、天然の抗Gal抗体を非常に大量に産生する(Galili Uらの文献「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」1987,84:1369-73)。サル及び類人猿におけるα1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ偽遺伝子の配列に基づいて、α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子が、およそ2千万年前の祖先の旧世界霊長類において不活性化されたことが推定された(Galili U、Swanson K.の文献「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」1991;88:7401-04)。この進化上の出来事は、旧世界(すなわち現在のヨーロッパ、アジア、及びアフリカ)に固有の感染性の微生物因子(これは、霊長類に有害であり、また、α-Galエピトープを発現する)の出現と関連していることが示唆される。霊長類は、α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の不活性化、したがってα-Galエピトープに対する免疫寛容の消失に関する選択圧下で進化して初めて、こうした推定上の有害因子に対する防御的な抗体として抗Galを産生することができた(Galili U、Andrews P.J.の文献「人類の進化(Human Evolution)」29:433-42,1995)。
【0064】
天然の抗Gal抗体の強力な防御的活性は、ヒト及びサルにおいて進化的に保存されている。これは、α-Galエピトープを発現するブタの器官に関する異種移植研究から推論することができる。ブタを含めた種々の哺乳類の細胞は、α-Galエピトープを発現するので、ヒト又は旧世界ザルに移植されたブタ由来の器官は、抗Gal抗体と、ブタ細胞上のこれらのエピトープとのインビボ結合が原因で拒絶される(Galili,U.の文献「Immunol.Today」1993,14:480-82)。ブタ組織の、ヒトへの又は旧世界ザルへの移植は、インビボ移植片上のα-Galエピトープへの強い抗Gal結合、及びその後の異種移植拒絶反応の誘導をもたらす。血管が新生された異種移植片(例えばブタ心臓)は、抗Gal抗体分子と、ブタ内皮細胞上のα-Galエピトープとの結合、補体の活性化、内皮細胞の溶解、及び血管床の崩壊の結果として、大抵30〜60分以内に、サルにおける即時拒絶反応(超急性拒絶反応と呼ばれる)を受ける(Collins B Hらの文献「J.Immunol.」1995;154:5500-10)。さらに、血管外領域における異種移植細胞の破壊の多くは、抗Gal IgGと、種々の細胞上のα-Galエピトープとの結合によって媒介される。この結合は、抗Gal IgGのFc部分が、顆粒球、マクロファージ、及びNK細胞上の細胞結合型Fcγ受容体と結合した後に、抗体依存性細胞介在性細胞溶解(ADCC)ををもたらす。
【0065】
異種移植片の抗Gal介在性の崩壊は、アカゲザル(すなわち抗Gal抗体をもともと産生するサル)に移植されたブタ軟骨(無血管性異種移植組織)を用いて観察することができた。研究によれば、抗Galと、ブタ組織中のα-Galエピトープとの結合が、2か月以内の組織の漸進的破壊につながる広範囲な炎症反応の誘導をもたらすことが示された(Stone K Rらの文献「Transplantation」1998,65:1577-83)。抗Galと、軟骨細胞及び細胞外マトリックス糖タンパク質上のα-Galエピトープとの結合は、α-Galエピトープをさらにオプソニン化し(すなわち、α-Galエピトープとの免疫複合体を形成し)、したがって、免疫複合体化された抗GalのFc部と、抗原提示細胞上のFcγ受容体との結合によって、これらを抗原提示細胞にターゲティングさせる。次に、抗原提示細胞は、これらのブタ糖タンパク質を流入領域リンパ節に輸送し、ここでは、これらは、複数のブタ異種ペプチド(xenopeptide)に対して特異的な多くのT細胞を活性化させる。続いて、これらの活性化されたT細胞は、軟骨異種移植片組織に遊走し、浸潤性の単核細胞のおよそ80%を構成する。この炎症反応が、主として抗Galとα-Galエピトープとの相互作用によって媒介されることは、(そこからα-Galエピトープが、酵素処理によって(例えば、組換えα-ガラクトシダーゼを使用して)除去された)ブタ軟骨異種移植片に対する免疫応答を観察することから推論することができる。α-ガラクトシダーゼは、末端α-ガラクトシル単位を切断する(加水分解する)ことによって、軟骨糖タンパク質上のα-Galエピトープを破壊する。ブタ軟骨糖タンパク質上のα-Galエピトープがない場合には、異種移植片と結合する抗Galは存在せず、したがって、異種糖タンパク質(xenoglycoprotein)の有効な抗原提示細胞介在性の輸送は起こらない。これは、異種移植片におけるの顕著なT細胞浸潤の不足によって示される。
【0066】
本発明は、α-Galエピトープを呈示するように治療された腫瘍病変の退縮及び/又は破壊のために、また、抗Gal抗体によって腫瘍細胞膜を抗原提示細胞にターゲティングさせるために、ブタ軟骨異種移植拒絶反応において実証された天然の抗Gal抗体の免疫可能性を利用することを意図する。こうした治療は、腫瘍病変を、自家腫瘍ワクチン(これは、サルにおけるブタ軟骨の拒絶反応において観察されるものと類似の機構によって、転移性腫瘍細胞に対する全身性の防御的な免疫応答を誘発する)に、インサイチューで変換することとなると考えられている。α-Galエピトープを発現する腫瘍細胞と結合する抗Gal IgG分子が、治療された病変における腫瘍細胞上で発現され、また、転移性腫瘍細胞でも発現される自己腫瘍抗原に対する防御的な抗腫瘍免疫応答を誘発するために、腫瘍細胞膜を抗原提示細胞にターゲティングさせるであろうことが、さらに考えられている。
【0067】
(医薬組成物)
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に定義した通りの式(I)、(II)、及び(III)の化合物から選択される糖脂質化合物、又はその医薬として許容し得る塩を含む医薬組成物が提供される。
【0068】
本発明のさらなる態様によれば、腫瘍の治療に使用するための、本明細書に定義した通りの式(I)、(II)、及び(III)の化合物から選択される糖脂質化合物、若しくはその医薬として許容し得る塩、又は本明細書に定義した通りの医薬組成物が提供される。
【0069】
一実施態様では、腫瘍は、固形腫瘍、骨髄腫、又はリンパ腫である。さらなる実施態様では、腫瘍は、固形腫瘍である。代替実施態様では、腫瘍は、非固形腫瘍である。
【0070】
一実施態様では、腫瘍は、腹膜、肝臓、膵臓、肺、膀胱、前立腺、子宮、子宮頸部、膣、骨髄、乳房、皮膚、脳、リンパ節、頭頸部、胃、腸、結腸、腎臓、精巣、及び卵巣から選択される器官に由来する腫瘍である。
【0071】
一実施態様では、腫瘍は、原発腫瘍及び/又は転移を含む。さらなる実施態様では、腫瘍は、原発腫瘍を含む。代替実施態様では、腫瘍は、二次性腫瘍を含む。
【0072】
一実施態様では、腫瘍は、メラノーマ、肉腫、神経膠腫、又は癌細胞を含む。さらなる実施態様では、腫瘍は、メラノーマ若しくは癌細胞、又は転移を含む。
【0073】
該組成物は、式(I)、(II)、又は(III)の糖脂質化合物を含む水性の糖脂質調製物として調製することができ、ここでは、前記調製物は、糖脂質ミセルを含む。
【0074】
一実施態様では、該組成物は、1種以上の医薬として許容し得る担体(1又は複数)、希釈剤(1又は複数)、及び/又は賦形剤(1又は複数)をさらに含む。担体、希釈剤、及び/又は賦形剤は、組成物の他の成分と適合性があり、かつそのレシピエントに有害ではないという意味で、「医薬として許容し得」なければならない。当業者は、例えば、Remingtonの文献:「薬学の科学と実践(The Science and Practice of Pharmacy)」;Pharmaceutical Press社;第22版;Allen,Loyd V.編,2012,London,UKに例示される医薬製剤の態様を認識するであろう。
【0075】
本発明の組成物は、当技術分野で周知の従来の手順に従って、式(I)、(II)、又は(III)の糖脂質化合物と、標準的の医薬担体又は希釈剤とを組み合わせることによって調製することができる。このような手順は、必要に応じて成分を混合、造粒、及び圧縮又は溶解して、所望の調製物とすることを含むことができる。
【0076】
一実施態様では、該医薬組成物は、デオキシコール酸塩、又は細胞膜への糖脂質の透過を増大させることができる他の中性界面活性剤も含有することができる。
【0077】
本発明の医薬組成物は、任意の経路による投与のために製剤化することができ、ヒトを含めた哺乳類への経口、局所、又は非経口投与に適合された形状のものが含まれる。
【0078】
したがって、一実施態様では、該組成物は、注射による投与用である。代替実施態様では、該組成物は、局所軟膏、局所ローション、又は局所液剤など、局所適用である。
【0079】
一実施態様では、該組成物は、単回投与又は反復投与、例えば反復投与で投与される。さらなる実施態様では、反復投与は、同時に(すなわち一度に)投与される。さらなる代替実施態様では、反復投与は、連続的に(すなわち2回以上の別の機会に、例えば別の治療中に)投与される。
【0080】
投与が連続的(すなわち別の機会)である時、投与間に好適な時間、例えば、3日、5日、1週、2週、1か月、2か月、3か月、6か月、又は12か月が経過した時に、該組成物を投与することができる。
【0081】
非経口投与については、流体単位剤形は、該組成物、及び水などの滅菌ビヒクルを利用して調製される。液剤を調製する際には、組成物を、注射用水に溶解し、濾過滅菌し、その後、好適なバイアル又はアンプルに充填し、密封することができる。
【0082】
該組成物は、錠剤、カプセル、散剤、顆粒剤、トローチ剤、クリーム、又は液体調製物(経口用若しくは滅菌した非経口用の液剤若しくは懸濁剤など)の形態であり得る。
【0083】
本発明の局所製剤は、例えば、軟膏、クリーム又はローション、眼軟膏及び点眼剤又は点耳剤、含浸包帯、及びエアロゾルとして提示することができ、また、軟膏及びクリーム中には、保存剤及び皮膚軟化剤などの適切な従来の添加剤を含有することができる。
【0084】
製剤は、クリーム又は軟膏基剤、及びローション用のエタノール又はオレイルアルコールなどの、適合性のある従来の担体も含有することができる。
【0085】
(組み合わせ)
本発明の化合物は、唯一の治療薬として投与することもできるし、腫瘍の治療のための他のさらなる化合物(又は治療法)のうちの1つと共に、併用療法で投与することもできるということを理解されたい。
【0086】
このように、本発明のさらなる態様に従って、1以上の追加の治療薬と組み合わせて、本明細書に定義した通りの式(I)、(II)、及び(III)の化合物から選択される糖脂質化合物、又はその医薬として許容し得る塩を含む医薬組成物が提供される。
【0087】
腫瘍の治療については、本発明の化合物は、1以上の他の薬剤と、より具体的には癌療法における1以上の抗癌剤又はアジュバント(治療法における補助剤)と組み合わせて、好都合に用いることができる。
【0088】
本発明の化合物と共に(同時であるか異なる時間間隔であるかにかかわらず)投与することができる他の治療薬又は治療の例としては、限定はされないが、以下が含まれる:
・トポイソメラーゼI阻害剤;
・代謝拮抗剤;
・チューブリン標的剤;
・DNA結合剤及びトポイソメラーゼII阻害剤;
・アルキル化剤;
・モノクローナル抗体;
・抗ホルモン剤;
・シグナル伝達阻害剤;
・プロテアソーム阻害剤;
・DNAメチルトランスフェラーゼ;
・サイトカイン及びレチノイド;
・クロマチン標的療法;
・放射線療法;及び
・他の治療又は予防剤。
【0089】
抗癌剤又はアジュバント(又はその塩)の具体例としては、限定はされないが、以下の、群(i)〜(xlvi)から選択される薬剤のいずれか、及び任意に群(xlvii)が挙げられる:
(i)白金化合物、例えばシスプラチン(任意にアミホスチンと組み合わせられる)、カルボプラチン、又はオキサリプラチン;
(ii)タキサン化合物、例えばパクリタキセル、パクリタキセルタンパク質結合粒子(Abraxane(商標))、ドセタキセル、カバジタキセル、又はラロタキセル;
(iii)トポイソメラーゼI阻害剤、例えばカンプトテシン化合物、例えばカンプトテシン、イリノテカン(CPT11)、SN-38、又はトポテカン;
(iv)トポイソメラーゼII阻害剤、例えば抗腫瘍エピポドフィロトキシン又はポドフィロトキシン誘導体、例えばエトポシド又はテニポシド;
(v)ビンカアルカロイド、例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、リポソーム型ビンクリスチン(Onco-TCS)、ビノレルビン、ビンデシン、ビンフルニン、又はビンベシル(vinvesir);
(vi)ヌクレオシド誘導体、例えば5-フルオロウラシル(5-FU、任意にロイコボリンと組み合わせて)、ゲムシタビン、カペシタビン、テガフール、UFT、S1、クラドリビン、シタラビン(Ara-C、シトシンアラビノシド)、フルダラビン、クロファラビン、又はネララビン;
(vii)代謝拮抗剤、例えばクロファラビン、アミノプテリン、又はメトトレキサート、アザシチジン、シタラビン、フロクスウリジン、ペントスタチン、チオグアニン、チオプリン、6-メルカプトプリン、又はヒドロキシ尿素(ヒドロキシカルバミド);
(viii)ナイトロジェンマスタード又はニトロソウレアなどのアルキル化剤、例えばシクロホスファミド、クロラムブシル、カルムスチン(BCNU)、ベンダムスチン、チオテパ、メルファラン、トレオスルファン、ロムスチン(CCNU)、アルトレタミン、ブスルファン、ダカルバジン、エストラムスチン、ホテムスチン、イホスファミド(任意にメスナと組み合わせて)、ピポブロマン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、テモゾロミド、ウラシル、メクロレタミン、メチルシクロヘキシルクロロエチルニトロス尿素(methylcyclohexylchloroethylnitrosurea)、又はニムスチン(ACNU);
(ix)アントラサイクリン、アントラセンジオン及び関連薬物、例えばダウノルビシン、ドキソルビシン(任意にデクスラゾキサンと組み合わせて)、ドキソルビシンのリポソーム型製剤(例えばCaelyx(商標)、Myocet(商標)、Doxil(商標))、イダルビシン、ミトキサントロン、エピルビシン、アムサクリン、又はバルルビシン;
(x)エポチロン、例えばイクサベピロン、パツピロン(patupilone)、BMS-310705、KOS-862及びZK-EPO、エポチロンA、エポチロンB、デスオキシエポチロンB(エポチロンD若しくはKOS-862としても公知である)、アザ-エポチロンB(BMS-247550としても公知である)、アウリマリド(aulimalide)、イソラウリマリド、又はリュテロビン(luetherobin);
(xi)DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばテモゾロミド、アザシチジン、又はデシタビン;
(xii)葉酸代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート、ペメトレキセド二ナトリウム、又はラルチトレキセド;
(xiii)細胞傷害性抗生物質、例えばアンチノマイシン(antinomycin)D、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ダクチノマイシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、レバミソール、プリカマイシン、又はミトラマイシン;
(xiv)チューブリン結合剤、例えばコンブレスタチン(combrestatin)、コルヒチン、又はノコダゾール;
(xv)シグナル伝達阻害剤、例えば、キナーゼ阻害剤(例えばEGFR(上皮成長因子受容体)阻害剤、VEGFR(血管内皮成長因子受容体)阻害剤、PDGFR(血小板由来成長因子受容体)阻害剤、MTKI(多標的キナーゼ阻害剤)、Raf阻害剤、mTOR阻害剤、例えばメシル酸イマチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ダサチニブ、ラパチニブ、ドボチニブ(dovotinib)、アキシチニブ、ニロチニブ、バンデタニブ、バタリニブ(vatalinib)、パゾパニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムス、エベロリムス(RAD 001)、又はベムラフェニブ(PLX4032/RG7204);
(xvi)オーロラキナーゼ阻害剤、例えばAT9283、バラセルチブ(barasertib)(AZD1152)、TAK-901、MK0457(VX680)、セニセルチブ(cenisertib)(R-763)、ダヌセルチブ(danusertib)(PHA-739358)、アリセルチブ(MLN-8237)、又はMP-470;
(xvii)CDK阻害剤、例えばAT7519、ロスコビチン、セリシクリブ、アルボシディブ(alvocidib)(フラボピリドール)、ディナシクリブ(dinaciclib)(SCH-727965)、7-ヒドロキシ-スタウロスポリン(UCN-01)、JNJ-7706621、BMS-387032(SNS-032としても公知である)、PHA533533、PD332991、ZK-304709、又はAZD-5438;
(xviii)PKA/B阻害剤及びPKB(akt)経路阻害剤、例えばAT13148、AZ-5363、セマフォア(Semaphore)、SF1126及びMTOR阻害剤、例えばラパマイシン類似体、AP23841及びAP23573、カルモジュリン阻害剤(フォークヘッド転座阻害剤)、API-2/TCN(トリシリビン)、RX-0201、エンザスタウリンHCl(LY317615)、NL-71-101、SR-13668、PX-316、又はKRX-0401(ペリフォシン/NSC 639966);
(xix)Hsp90阻害剤、例えばAT13387、ハービマイシン、ゲルダナマイシン(GA)、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)、例えばNSC-330507、Kos-953、及びCNF-1010、17-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン塩酸塩(17-DMAG)、例えばNSC-707545及びKos-1022、NVP-AUY922(VER-52296)、NVP-BEP800、CNF-2024(BIIB-021、経口用のプリン)、ガネテスピブ(STA-9090)、SNX-5422(SC-102112)、又はIPI-504);
(xx)モノクローナル抗体(放射性同位体、毒素、又は他の薬剤と複合体化されていない又は複合体化されたもの)、抗体誘導体及び関連薬剤、例えば抗CD、抗VEGFR、抗HER2、又は抗EGFR抗体、例えばリツキシマブ(CD20)、オファツムマブ(CD20)、イブリツモマブチウキセタン(CD20)、GA101(CD20)、トシツモマブ(CD20)、エプラツズマブ(CD22)、リンツズマブ(CD33)、ゲムツズマブオゾガマイシン(CD33)、アレムツズマブ(CD52)、ガリキシマブ(CD80)、トラスツズマブ(HER2抗体)、ペルツズマブ(HER2)、トラスツズマブ-DM1(HER2)、エルツマキソマブ(ertumaxomab)(HER2及びCD3)、セツキシマブ(EGFR)、パニツムマブ(EGFR)、ネシツムマブ(EGFR)、ニモツズマブ(EGFR)、ベバシズマブ(VEGF)、イピリムマブ(CTLA4)、カツマキスマブ(catumaxumab)(EpCAM及びCD3)、アバゴボマブ(abagovomab)(CA125)、ファーレツズマブ(葉酸受容体)、エロツズマブ(CS1)、デノスマブ(RANKリガンド)、フィギツムマブ(IGF1R)、CP751,871(IGF1R)、マパツズマブ(TRAIL受容体)、metMAB(met)、ミツモマブ(mitumomab)(GD3ガングリオシド)、ナプツモマブ・エスタフェナトクス(5T4)、又はシルツキシマブ(IL6);
(xxi)エストロゲン受容体アンタゴニスト又は選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)又はエストロゲン合成阻害剤、例えばタモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ドロロキシフェン、フェソロデックス、又はラロキシフェン;
(xxii)アロマターゼ阻害剤及び関連薬物、例えばエキセメスタン、アナストロゾール、レトラゾール(letrazole)、テストラクトン、アミノグルテチミド、ミトタン、又はボロゾール;
(xxiii)抗アンドロゲン(すなわちアンドロゲン受容体アンタゴニスト)及び関連薬剤、例えばビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、シプロテロン、又はケトコナゾール;
(xxiv)ホルモン及びその類似体、例えばメドロキシプロゲステロン、ジエチルスチルベストロール(ジエチルスチルボエストロールとしても公知である)、又はオクトレオチド;
(xxv)ステロイド、例えばプロピオン酸ドロモスタノロン、酢酸メゲストロール、ナンドロロン(デカン酸エステル、フェンプロピオン酸エステル)、フルオキシメステロン、又はゴシポール;
(xxvi)ステロイド性シトクロムP450 17α-ヒドロキシラーゼ-17,20-リアーゼ阻害剤(CYP17)、例えばアビラテロン;
(xxvii)性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト又はアンタゴニスト(GnRA)、例えばアバレリックス、酢酸ゴセレリン、酢酸ヒストレリン、酢酸ロイプロリド、トリプトレリン、ブセレリン、又はデスロレリン;
(xxviii)グルココルチコイド、例えばプレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン;
(xxix)分化誘導剤、例えばレチノイド、レキシノイド、ビタミンD、又はレチノイン酸及びレチノイン酸代謝遮断剤(RAMBA)、例えばアキュテイン、アリトレチノイン、ベキサロテン、又はトレチノイン;
(xxx)ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばチピファルニブ;
(xxxi)クロマチン標的療法、例えばヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、例えば酪酸ナトリウム、スベロイルアニリドヒドロキシアミド酸(SAHA)、デプシペプチド(FR 901228)、ダシノスタット(NVP-LAQ824)、R306465/JNJ-16241199、JNJ-26481585、トリコスタチンA、ボリノスタット、クラミドシン、A-173、JNJ-MGCD-0103、PXD-101、又はアピシジン;
(xxxii)プロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、CEP-18770、MLN-9708、又はONX-0912;
(xxxiii)光線力学薬、例えばポルフィマーナトリウム又はテモポルフィン;
(xxxiv)海洋生物由来の抗癌剤、例えばトラベクチジン;
(xxxv)例えばβ粒子放出同位体(例えば、ヨウ素-131、イットリウム-90)又はα粒子放出同位体(例えば、ビスマス-213若しくはアクチニウム-225)を用いる放射免疫療法のための、放射標識薬、例えばイブリツモマブ又はヨウ素トシツモマブ;
(xxxvi)テロメラーゼ阻害剤、例えばテロメスタチン;
(xxxvii)マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、例えばバチマスタット、マリマスタット、プリノスタット(prinostat)、又はメタスタット(metastat);
(xxxviii)組換え型インターフェロン(インターフェロン-γ及びインターフェロンαなど)及びインターロイキン(例えばインターロイキン2)、例えばアルデスロイキン、デニロイキンジフチトクス、インターフェロンα2a、インターフェロンα2b、又はペグインターフェロンα2b;
(xxxix)選択的免疫応答モジュレーター、例えばサリドマイド又はレナリドミド;
(xl)治療用ワクチン、例えばシプロイセルT(プロベンジ)又はOncoVex;
(xli)サイトカイン活性化剤(ピシバニール、ロムルチド、シゾフィラン、ビルリジン(Virulizin)、又はサイモシンが含まれる);
(xlii)三酸化二ヒ素;
(xliii)Gタンパク質共役受容体(GPCR)の阻害剤、例えばアトラセンタン;
(xliv)酵素、例えばL-アスパラギナーゼ、ペグアスパルガーゼ、ラスブリカーゼ、又はペガデマーゼ;
(xlv)DNA修復阻害剤、例えばPARP阻害剤、例えばオラパリブ、ベラパリブ、イニパリブ、INO-1001、AG-014699、又はONO-2231;
(xlvi)細胞死受容体(例えばTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)受容体)のアゴニスト、例えばマパツズマブ(以前はHGS-ETR1)、コナツムマブ(以前はAMG655)、PRO95780、レクサツムマブ、デュラネルミン(dulanermin)、CS-1008、アポマブ(apomab)、又は組換え型TRAILリガンド、例えば組換え型ヒトTRAIL/Apo2リガンド;
(xlvii)予防的薬剤(補助剤);すなわち、化学療法剤に伴う副作用のいくつかを低減又は緩和する薬剤、例えば、
-制吐剤、
-化学療法に伴う好中球減少を予防する又はその期間を縮小させる、及び血小板、赤血球、又は白血球のレベルの低下から生じる合併症を予防する薬剤、例えばインターロイキン-11(例えばオプレルベキン、エリスロポエチン(EPO)及びその類似体(例えばダルベポエチンアルファ)、コロニー刺激因子類似体、例えば顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)(例えばサルグラモスチム)、並びに顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)及びその類似体(例えばフィルグラスチム、ペグフィルグラスチム)、
-骨吸収を阻害する薬剤、例えばデノスマブ又はビスホスホネート、例えばゾレドロネート、ゾレドロン酸、パミドロネート、及びイバンドロネート、
-炎症反応を抑制する薬剤、例えばデキサメタゾン、プレドニゾン、及びプレドニゾロンなど、
-先端巨大症又は他の稀なホルモン産生腫瘍を有する患者における成長ホルモン及びIGF-I(及び他のホルモン)の血中濃度を低下させるために使用される薬剤、例えば合成型のホルモン・ソマトスタチン、例えば酢酸オクトレオチド、
-葉酸の濃度を低下させる薬物に対する解毒剤、例えばロイコボリン又はフォリン酸、
-疼痛用薬剤、例えばオピエート、例えばモルヒネ、ジアモルヒネ、及びフェンタニル、
-非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えばCOX-2阻害剤、例えばセレコキシブ、エトリコキシブ、及びルミラコキシブ、
-粘膜炎用薬剤、例えばパリフェルミン、
-食欲不振、悪液質、浮腫、又は血栓塞栓症発作を含めた副作用の治療のための薬剤、例えば酢酸メゲストロール。
【0090】
ある特定の実施態様では、該医薬組成物は、免疫系下方調節の1以上の全身性阻害剤をさらに含む。免疫系下方調節の好適な全身性阻害剤の例は、米国特許第2012/263677号に記載されており、抗CTLA-4、抗PD-1、及び抗PD-L1抗体が含まれる。
【0091】
いっそうさらなる実施態様では、免疫系下方調節の1以上の全身性阻害剤は、抗PD-1抗体から選択される。
【0092】
さらなる実施態様では、該医薬組成物は、免疫系上方調節の1以上のエンハンサーをさらに含む。免疫系上方調節の好適なエンハンサーの例は、米国特許第2012/263677号に記載されており、好適な非特異的サイトカイン、例えばインターロイキン-1、-2、又は-6(IL-1、IL-2、又はIL-6)及びアルデスロイキン;インターフェロン-α又はγ(IFN-α及びIFN-γ)、インターフェロンα-2b及びペグ化インターフェロン(ペグ化インターフェロンα-2a及びペグ化インターフェロンα-2bを含む);顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、モルグラモスチム又はサルグラモスチム);樹状細胞ワクチン、及び他の同種又は自家の治療用癌ワクチン(GM-CSFをコードする腫瘍溶解性ヘルペスウイルス(OncoVex(登録商標))又は同種のMHCクラスI抗原を発現するように設計されたヒト白血球抗原-B7及びβ-2ミクログロブリン因子をコードするプラスミド(Allovectin-7(登録商標))を含有する病巣内ワクチンを含む);並びに特定の腫瘍抗原に対する抗体が含まれる。いっそうさらなる実施態様では、免疫系上方調節の1種以上のエンハンサーは、IL-2及びインターフェロン-γから選択される。
【0093】
本発明の組み合わせ中に存在する化合物のそれぞれは、個々に変動する投与スケジュールで、様々な経路を介して与えることができる。例えば、本発明の糖脂質化合物が、腫瘍に直接的に投与されることを目的としているのに対して、抗PD-1抗体などの免疫系下方調節の全身性阻害剤は一般的に、全身的に、すなわち静脈内注射によって送達されることとなる。したがって、2種以上の薬剤のそれぞれの薬量は、異なり得る:それぞれを、同時に又は異なる時間に投与することができる。当業者は、その共通の一般知識を通じて、使用される投与計画及び併用療法を知るであろう。例えば、本発明の化合物は、その既存の併用レジメンに従って投与される1種以上の他の薬剤と組み合わせて使用することができる。
【0094】
(治療の方法)
本発明のさらなる態様によれば、対象における腫瘍を治療する方法であって、
a)i)細胞表面を有する複数の癌細胞を含む少なくとも1つの腫瘍を含む対象;及び
ii)式(I)、(II)、及び(III)の化合物、若しくはその医薬として許容し得る塩、又は本明細書に定義した通りの医薬組成物から選択される糖脂質化合物
を提供することと;
b)前記糖脂質又は組成物を腫瘍に導入することと
を含む前記方法が提供される。
【0095】
一実施態様では、該糖脂質又は医薬組成物は、腫瘍に対する免疫応答を誘導し、それによって腫瘍を治療する。
【0096】
一実施態様では、本発明は、対象における腫瘍に対する免疫応答を誘導するための方法であって、
a)少なくとも1つの腫瘍を含む対象に、有効量の、本明細書に定義した通りの式(I)、(II)、及び(III)の化合物から選択される糖脂質化合物、若しくはその医薬として許容し得る塩、又は医薬組成物を投与して、少なくとも1つの腫瘍に対する免疫応答を誘導すること
を含む、前記方法を提供する。
【0097】
一実施態様では、本発明は、対象における腫瘍を治療するための方法であって、
a)少なくとも1つの腫瘍を含む対象に、有効量の、本明細書に定義した通りの式(I)、(II)、及び(III)の化合物から選択される糖脂質化合物、若しくはその医薬として許容し得る塩、又は医薬組成物を投与して、少なくとも1つの腫瘍に対する免疫応答を誘導すること
(ここでは、腫瘍に対する免疫応答を誘導することは、対象における、腫瘍の減少、それによって腫瘍を治療することをもたらす)
を含む、前記方法を提供する。
【0098】
一実施態様では、該組成物は、免疫系下方調節の少なくとも1種の全身性阻害剤をさらに含む。
【0099】
一実施態様では、該免疫系下方調節の少なくとも1種の全身性阻害剤は、抗CTLA-4、抗PD-1、及び抗PD-L1抗体から選択される。
【0100】
一実施態様では、該方法は、腫瘍の大きさが低下するまで、1〜5回繰り返される。
【0101】
一実施態様では、該方法は、腫瘍が検出不可能となるまで、1〜5回繰り返される。
【0102】
一実施態様では、該糖脂質又は医薬組成物は、原発腫瘍に注入され、原発腫瘍から生じた少なくとも1つの二次性腫瘍を治療するのに有効である免疫応答を誘導する。
【0103】
一実施態様では、該糖脂質又は医薬組成物は、原発腫瘍に注入され、原発腫瘍から生じた少なくとも1つの二次性腫瘍の大きさを低下させるのに有効である免疫応答を誘導する。
【0104】
一実施態様では、該方法は、腫瘍に対する免疫応答を誘導した後の腫瘍の外科的切除をさらに含む。
【0105】
一実施態様では、該方法は、該糖脂質又は医薬組成物の投与後の腫瘍の外科的切除をさらに含む。
【0106】
一実施態様では、腫瘍の外科的切除は、該糖脂質又は医薬組成物の投与の約1〜21日後に行われる。
【0107】
一実施態様では、腫瘍の外科的切除は、該糖脂質又は医薬組成物の投与の約1〜14日後に行われる。
【0108】
一実施態様では、腫瘍の外科的切除は、該糖脂質又は医薬組成物の投与の約1〜7日後に行われる。
【0109】
一実施態様では、腫瘍の外科的切除は、該糖脂質又は医薬組成物の投与の約7〜14日後に行われる。
【0110】
一実施態様では、腫瘍の外科的切除は、該糖脂質又は医薬組成物の投与の約14〜21日後に行われる。
【0111】
本発明の方法は、癌細胞の細胞表面上のα-Gal又はGalNAcエピトープを呈示させるために、本発明の糖脂質化合物の投与を可能にする。
【0112】
一実施態様では、該方法は、前記腫瘍細胞上の膜結合型α-Gal又はGalNAcエピトープを呈示させることをさらに含む。
【0113】
一実施態様では、本発明は、対象を治療する方法であって、
a)i)内在性抗Gal又は抗GalNAc抗体と、複数の切除不可能な腫瘍(ここでは、前記腫瘍の少なくとも一部分集合は、直接注入、内視鏡法、気管支鏡法、膀胱鏡法、結腸鏡法、腹腔鏡法、及びカテーテル法による注入からなる群から選択される手順を介して到達可能である)とを有する対象、
ii)本明細書に定義した通りの糖脂質化合物又は医薬組成物
を提供することと
b)前記手順を使用して、前記糖脂質化合物又は組成物を腫瘍内に注入することと
を含む前記方法を意図する。
【0114】
一実施態様では、本発明の糖脂質化合物のα-Gal又はGalNAcエピトープは、オプソニン化されるようになる。一実施態様では、オプソニン化されたα-Gal又はGalNAcエピトープは、腫瘍細胞及び細胞膜を抗原提示細胞にターゲティングさせることによって、前記腫瘍に対する自家ワクチンの産生を誘導する。
【0115】
一実施態様では、対象は、ヒト又はマウスである。一実施態様では、対象は、ヒトである。代替実施態様では、対象は、マウスである。
【0116】
本発明の別の態様によれば、本発明の糖脂質化合物を、マウスにおける腫瘍に導入する方法であって:
a)i)(1)α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠損している、(2)抗Gal抗体を有する、及び(3)細胞表面を有する複数の癌細胞を含む少なくとも1つの腫瘍を含む、マウスと、
ii)式(I)及び(II)の化合物から選択される糖脂質化合物、又はその医薬として許容し得る塩と
を提供することと;
b)前記糖脂質を、前記腫瘍の少なくとも1つに導入して、癌細胞の細胞表面上のα-Galエピトープを呈示させることと
を含む前記方法が提供される。
【0117】
(自家腫瘍ワクチンの抗原提示細胞への抗Galターゲティング)
α-Galエピトープは、腫瘍細胞とα-Gal糖脂質とのインキュベーションによって、腫瘍細胞膜にインビトロで挿入することができることが示されている。腫瘍細胞又は腫瘍細胞膜と、こうしたα-Gal糖脂質との共インキュベーションにより、腫瘍細胞膜内へのその自発的なインビトロ挿入、及びこれらの細胞膜上のα-Galエピトープの発現がもたらされる。α-Galエピトープを発現するように操作された腫瘍細胞を、α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子に関する種々の分子生物学的方法によって、自家腫瘍ワクチンとして研究した。天然の抗Gal IgG抗体は、皮内注射後、ワクチン接種している腫瘍細胞膜上のα-Galエピトープと、ワクチン接種部位でインサイチューで結合し、ワクチンを抗原提示細胞にターゲティングさせる。発明の機構を理解する必要はないが、複合体化された抗GalのFc部分と、抗原提示細胞上のFcγ受容体との結合は、オプソニン化されたワクチン接種している腫瘍細胞膜の抗原提示細胞内への有効な取り込みを誘導すると考えられる。したがって、自己腫瘍の特徴付けられていない腫瘍抗原も、抗原提示細胞に内在化される。抗原提示細胞は、ワクチン接種している自己腫瘍膜の、流入領域リンパ節への輸送後、腫瘍特異的な細胞傷害性細胞及びヘルパーT細胞(すなわち、それぞれ、CD8
+及びCD4
+T細胞)の活性化のための腫瘍抗原ペプチドをプロセッシング及び提示する。
【0118】
α-Galエピトープを発現する腫瘍ワクチンの有効性の原理の証明は、α-Galエピトープを発現しているメラノーマ細胞で免疫化した、また、同じメラノーマ細胞であるがα-Galエピトープを欠く細胞を負荷した、マウス実験モデルにおける研究で得られた(LaTemple D Cらの文献「Cancer Res.」1999,59:3417-23、及びDeriy Lららの文献「Cancer Gene Therapy」2005;12:528-39)。これらの研究で使用されたマウスは、α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子についてのノックアウトマウスであった(すなわち、これらのマウスは、α-Galエピトープを欠いており、かつ抗Gal抗体を産生することができる)。α-Galエピトープを発現するように操作されたメラノーマ細胞で免疫化したマウスは、同じ腫瘍細胞であるがα-Galエピトープを欠く細胞での負荷に対して有効な免疫防御を示した。対照的に、α-Galエピトープを欠く腫瘍細胞で免疫化したマウスは、α-Galエピトープを欠く生きている腫瘍細胞での負荷に対して防御的な免疫応答を示さなかった。
【0119】
(腫瘍治療法におけるα-Gal糖脂質)
本発明は、固形腫瘍塊を有する患者の治療を意図する。本発明の特定の実施態様は、患者自身の腫瘍を自家腫瘍ワクチンに変換することによって、個々の患者を、自分自身の腫瘍病変に対して免疫化することを目的とする、癌患者の新規の免疫療法治療を意図する(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,879,675号を参照のこと)。例えば前記5,879,675号特許は、腫瘍細胞及び/又は細胞膜のインビトロプロセシングを教示する。ワクチンは、これらの細胞の患者への注入時に、抗Gal抗体によって、APCにターゲティングされ、自己腫瘍抗原に対する防御的な免疫応答を誘発する。しかし、本発明とは異なり、前記5,879,675特許は、i)天然の抗Gal抗体による、腫瘍の炎症、退縮及び/又は破壊の誘導のためのインビボ腫瘍内治療;又はii)癌患者内へのα-Gal糖脂質の腫瘍内注入後の、インビボでの腫瘍細胞上でのα-Galエピトープの呈示、を教示しない。
【0120】
本発明の一実施態様では、α-Gal糖脂質は、非外科的な腫瘍内注入によって(すなわち、例えば、内視鏡法、カテーテル法などによって)、又は、α-Gal糖脂質の腫瘍への、若しくは種々の分子上の抗Gal結合エピトープへのインビボ導入のための任意の他の方法によって、腫瘍細胞を含む腫瘍病変に送達することができる。
【0121】
化学療法抵抗性の転移の術後再発は、固形腫瘍を有する患者における最も一般的な死因であると考えられている。こうした再発性転移の高い頻度(80%)が、膵臓及び卵巣癌を有する患者において報告されており、メラノーマ、結腸直腸癌、肺癌、及び乳癌などの他の固形腫瘍では、いくらか低い程度で報告されている。これらの再発患者の多くは、終末期疾患を有しており、いかなる治療も利用できないので、転移の検出後、数週間又は数か月以内に死亡すると考えられる。
【0122】
一実施態様では、本発明は、すべてのヒトが、その免疫グロブリンのおよそ1%として、抗Gal抗体を天然に産生するという事実を利用することによって、腫瘍転移の退縮及び/又は破壊のための治療法を意図する。抗Gal抗体の免疫可能性を利用して、α-Galエピトープ(すなわち、式(I)又は(II)の糖脂質化合物)を保有する糖脂質の腫瘍内注入によって、いかなる腫瘍病変も退縮及び/又は破壊し、これらをインサイチューで自家腫瘍ワクチンに変換することができる。
【0123】
したがって、本明細書に記載した本発明は、治療された腫瘍病変の退縮及び/又は破壊を誘導することができる。したがって、一実施態様では、治療された腫瘍は、退縮を起こす。代替実施態様では、治療された腫瘍は、破壊される。
【0124】
さらなる実施態様では、腫瘍(すなわちα-Galエピトープを呈示している)は、退縮を起こし、ここでは、前記腫瘍は、メラノーマ、又は肝転移などの器官転移から選択される。さらなる代替実施態様では、腫瘍(すなわちα-Galエピトープを呈示している)は破壊され、ここでは、前記腫瘍は、メラノーマ、又は肝転移などの器官転移から選択される。
【0125】
一実施態様では、導入ステップは、治療された腫瘍の自家腫瘍ワクチンへの変換の結果として、対象における二次性腫瘍の退縮を引き起こす。さらなる実施態様では、前記二次性腫瘍は、メラノーマ又は肝転移から選択される。
【0126】
一実施態様では、導入ステップは、対象における二次性腫瘍の破壊を引き起こす。さらなる実施態様では、前記二次性腫瘍は、メラノーマ又は肝転移から選択される。
【0127】
多くのα-Gal糖脂質は、α-Gal糖脂質の疎水性(すなわち親油性)脂質尾部が、細胞膜の脂質二重層の外葉に埋め込まれる時、水に囲まれたミセルコアと比較して、より安定なエネルギー形態であるので、自発的に腫瘍細胞膜に挿入することとなる。ガングリオシドと呼ばれる他の種類の糖脂質の、細胞膜への自発的な挿入(取り込み)は、以前に実証されている(Kanda Sらの文献「J Biochem.」(Tokyo).1982;91:1707-18、及びSpiegel Sらの文献「Cell Biol.」1985;100:721-26)。α-Gal糖脂質の、腫瘍細胞膜への挿入は、細胞膜表面上のα-Galエピトープの新規の呈示をもたらすと予想される。α-Galエピトープ発現は、こうした機構(限定はされないが、補体介在性細胞溶解(CDC)及び抗体依存性細胞介在性細胞溶解(ADCC)が含まれる)によって、腫瘍細胞の抗Gal抗体介在性の退縮及び/又は破壊を容易にすることができ、さらに腫瘍壊死ももたらす可能性がある。次いで、抗Galオプソニン化腫瘍細胞膜は、抗原提示細胞によって効果的にターゲティングされ、それによって、治療された腫瘍病変を自家腫瘍ワクチンに変換することとなる。次いで、この自家ワクチンは、免疫系を刺激して腫瘍抗原に対して反応させて、治療される患者の他の腫瘍病変及び/又は微小転移巣内の、これらの抗原を発現している腫瘍細胞のさらなる退縮及び/又は破壊をもたらすこととなる。
【0128】
一実施態様では、対象は、外科的に腫瘍を除去するために、以前に治療された。
【0129】
代替実施態様では、対象は、外科的に腫瘍を除去するために以前に治療されていない、すなわち、本明細書に記載した方法は、原発腫瘍の切除の数週間前に、ネオアジュバント療法として実施することができる。一実施態様では、本発明の糖脂質の腫瘍内注入は、腫瘍のサイズを低下させ、また、治療された腫瘍を自家腫瘍ワクチンに変換する。こうした腫瘍は、最終的には切除されることとなるが、治療された腫瘍は、その切除の前に、同じ腫瘍抗原を呈示する微小転移に対する免疫応答を誘発することとなると考えられる。
【0130】
(抗Gal抗体の腫瘍退縮及び/又は破壊の機構)
発明の機構を理解する必要はないが、注入されるα-Gal糖脂質による腫瘍病変の退縮及び/又は破壊は、生化学的及び生理学的原理を含むことができると考えられる。
【0131】
一実施態様では、該方法は、腫瘍内炎症を誘導することをさらに含む。
【0132】
腫瘍内注入は、腫瘍に伴う毛細血管の局所破裂をもたらし、それによって、腫瘍内部に到達する天然の抗Gal IgM及び抗Gal IgG抗体分子を提供することができる。次いで、抗Gal抗体は、α-Gal糖脂質ミセル又は個々のα-Gal糖脂質分子上のα-Galエピトープと相互作用し、それによって、補体の局所活性化及び補体分解走化性因子C5a及びC3aの産生を誘導することが可能であるであろう。さらに、C3bは、標的細胞上に共有結合的に付着される。次いで、補体活性化が、治療された腫瘍病変内で新規産生されたC5a及びC3a走化性因子によって誘導される、腫瘍内顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞遊走を促進する局所炎症プロセスを開始する。炎症プロセスは、α-Gal糖脂質の、内皮細胞の抗Gal活性化を引き起こす細胞膜への挿入の結果として、さらに増幅される可能性がある(Palmetshofer Aらの文献「移植(Transplantation.)」1998;65:844-53;Palmetshofer Aらの文献「移植(Transplantation.)」1998;65:971-8)。内皮細胞活性化及び腫瘍細胞全体の損傷は、追加の炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの局所産生をもたらす可能性がある。これらの局所的に分泌されるサイトカイン及びケモカインは、マクロファージ、樹状細胞のさらなる遊走、及びα-Gal糖脂質を注入した病変へのリンパ球のその後の遊走を誘導する。この細胞遊走は、抗原提示細胞上及びリンパ球上の炎症誘発性サイトカイン並びにケモカインに対する受容体によって媒介される(Cravens P D及びLipsky P Eの文献「Immunol.Cell Biol.」2002;80:497-505)。炎症反応のこの初期誘導は、免疫系が、腫瘍病変を進行させる「密かな特性」を検出する能力の一般的欠如に打ち勝つことを可能にする。この炎症はまた、免疫系が、局所サイトカイン環境によって誘導され、かつ通常はリンパ球が腫瘍に侵入するのを予防する、固形腫瘍病変内の免疫抑制性の微小環境に打ち勝つことを可能にする(Malmberg K J.の文献「Cancer Immunol.Immunother.」2004;53:879-92;Lugade A Aらの文献「J.Immunol.」2005;174:7516-23)。
【0133】
腫瘍細胞の破壊は、細胞膜に挿入されたα-Gal糖脂質と結合する抗Galによって起こる。腫瘍に注入されたα-Gal糖脂質は、腫瘍細胞膜のリン脂質二重層の外葉に自発的に挿入することができる。抗Gal IgM及び/又は抗Gal IgGの、挿入されたα-Gal糖脂質上のα-Galエピトープへの、その後の結合は、補体依存性細胞溶解(CDC)を介する、治療される腫瘍の退縮及び/又は破壊を誘導する。抗Gal IgG分子と、このようなα-Galエピトープとの結合はまた、腫瘍細胞の抗体依存性細胞溶解(ADCC)を促進する。
【0134】
一実施態様では、腫瘍は、補体依存性細胞溶解(CDC)を介して退縮及び/又は破壊を受ける。
【0135】
一実施態様では、腫瘍は、抗体依存性細胞溶解(ADCC)を介して退縮及び/又は破壊を受ける。
【0136】
補体依存性細胞溶解では、α-Galエピトープを発現している腫瘍細胞と(α-Gal糖脂質挿入により)結合する抗Gal IgG及び/又はIgM分子は、補体系を活性化すると考えられる。その後、この補体活性化の結果として、補体C5b-9膜侵襲複合体が形成され、次いで、腫瘍細胞膜に孔を「開け」、腫瘍細胞溶解をもたらす。この補体依存性細胞溶解は、ブタ内皮細胞が溶解される場合にも、同様に見られ、異種移植の超急性拒絶反応がもたらされる(Collins B Hらの文献「J.Immunol.」1995;154:5500-10,)。ADCCでは、エフェクター細胞は、顆粒球、マクロファージ、及びNK細胞である。これらの細胞は、抗Galによって誘導される炎症プロセスが原因で、病変に引き寄せられる。これらは、そのFcγ受容体(FcγR)を介して、腫瘍細胞膜に挿入されたα-Gal糖脂質と結合される抗Gal IgG分子のFc部分と結合する。これらのエフェクター細胞は、腫瘍細胞に一旦付着されると、膜接触領域にそのグランザイム小胞(vesicle)を分泌し、腫瘍細胞膜に孔を生じ、このようにして、これらの腫瘍細胞の破壊を誘導する。α-Galエピトープを発現している細胞のADCC破壊を誘導することにおける抗Gal IgGの有効性は、そのα-Galエピトープを介して抗Galと結合する異種移植ブタ細胞を用いて実証された(Galili,U.の文献「Immunol.Today」1993,14:480-82)。腫瘍細胞が、その細胞表面膜上に発現されたα-Galエピトープを介して抗Galと結合する場合に、類似の抗Gal介在性のADCCプロセスが生じる(Tanemura Mらの文献「J.Clin.Invest.」2000;105:301-10)。
【0137】
抗原提示細胞による腫瘍細胞膜の取り込みは、化学療法不応性の微小転移を退縮及び/又は破壊するために、自己腫瘍抗原に対する防御的な免疫応答の誘導をもたらすことができる。抗Gal IgG抗体は、抗Gal依存性の補体活性化を介して、α-Gal糖脂質が挿入された膜上のα-Galエピトープ又は標的細胞上に付着したC3bと結合し、抗原提示細胞を刺激して、腫瘍抗原(すなわち、例えば、腫瘍関連抗原TAA)を発現している細胞膜を内在化する。次いで、内在化された腫瘍抗原は、治療される腫瘍病変から流入領域リンパ節まで、抗原提示細胞によって輸送されることができる。次いで、これらの腫瘍抗原は、抗原提示細胞によってさらにプロセシングされ、腫瘍特異的なT細胞を活性化する免疫原性の腫瘍ペプチドとして提示されることができる。このプロセスは、全身性の防御的な抗腫瘍免疫応答(すなわち、例えば、自家腫瘍ワクチン)の誘導をもたらす。したがって、α-Gal糖脂質を注入した腫瘍病変は、治療される腫瘍病変におけるものとしての腫瘍抗原を発現している微小転移に対する免疫応答を誘発する自家腫瘍ワクチンに、インサイチューで最終的に変換される。
【0138】
臨床治療様式として、糖脂質は、限定はされないが、皮内注射(すなわち、例えば、メラノーマ腫瘍に);内視鏡的注入(すなわち、例えば、結腸直腸転移に);腹腔鏡的注入(すなわち、例えば、腹部の卵巣、結腸、胃、肝臓、若しくは膵臓の癌転移(例えば腹膜上若しくは肝臓内に);画像誘導下経皮注入(すなわち、例えば、肺腫瘍に);気管支鏡的注入(すなわち、例えば、肺腫瘍に);結腸鏡的注入;又は膀胱鏡的注入(すなわち、例えば、膀胱癌に)を含めた種々の方法によって、癌病変に投与することができる。
【0139】
したがって、一実施態様では、導入することは、限定はされないが、注射、画像誘導下注入、内視鏡法、気管支鏡法、膀胱鏡法、結腸鏡法、腹腔鏡法、及びカテーテル法を含めた手順を含む。
【0140】
一実施態様では、導入することは、非外科的な腫瘍内注入を含む。例えば、導入することは、皮内注射、画像誘導下経皮注入、内視鏡的注入、気管支鏡的注入、膀胱鏡的注入、結腸鏡的注入、及び腹腔鏡的注入から選択される手順を含む。
【0141】
一実施態様では、本発明の糖脂質は、限定はされないが、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、生理食塩水、他の水溶液、又は一般に安全と認められる(Generally Recognized As Safe)(GRAS)他の賦形剤を含めた群から選択される、医薬として許容し得る溶液(すなわち滅菌溶液)に入れて注入される。一実施態様では、糖脂質の溶液はまた、デオキシコール酸塩、又は細胞膜への糖脂質の透過を増大させることができる他の中性界面活性剤も含有することができる。
【0142】
一実施態様では、本発明は、腫瘍切除手術の前に提供されるネオアジュバント療法としての、本発明の糖脂質の原発腫瘍への腫瘍内注入を意図する。一実施態様では、糖脂質による手術前注入によって誘導される急性の炎症反応は、腫瘍病変サイズを縮小させること、また、これをインサイチューで自家腫瘍ワクチンに変換することをもたらす。発明の機構を理解する必要はないが、治療される腫瘍に対する免疫応答は、原発腫瘍の外科的切除時に、検出可能ではない微小転移の免疫破壊を誘発するのを最終的に助けることができると考えられる。手術前投与は、従来のアジュバント療法(すなわち、例えば、化学療法及び放射線)に対して抵抗性の微小転移の免疫学的破壊のおかげで、疾患の再発を予防するのを助けることができ、また、これは、原発腫瘍がするように腫瘍抗原を発現するとさらに考えられる。こうしたネオアジュバント療法は、直接的に、又は画像誘導によって、又は他のあらゆる公知の方法によって注入することができる、あらゆる固形腫瘍又はリンパ腫に施すことができる。
【0143】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に定義した通りの医薬組成物を含むキット、及び任意に、本明細書に定義した通りの方法に従って前記キットを使用するための指示書が提供される。
【0144】
一実施態様では、該キットは、腫瘍内送達装置などの送達装置をさらに含む。
【0145】
本明細書に引用したすべての刊行物及び特許を、それぞれ個々の刊行物又は特許が、あたかも具体的かつ個々に参照によって組み込まれることが示されるがごとく、参照によって本明細書に組み込み、また、刊行物によって引用されたものに関連する方法及び/又は材料を開示及び記載するために、参照によって本明細書に組み込む。あらゆる刊行物の引用は、出願日よりも前のその開示に関するものであり、本発明が、先行開示という理由でこうした刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されるべきでない。
【0146】
以下の実施例は、本発明の実施態様の実例のためのものであるに過ぎない。これらは、本発明を限定するものとみなされるべきではない。
【0147】
(材料及び方法)
アセトン、ベンゼン、クロロホルム、酢酸エチル、メタノール、o-キシレン、トルエン、2-プロパノール、及びo-キシレンは、Chimmed社(ロシア連邦(Russian Federation))から得た。アセトニトリルは、Cryochrom社(ロシア連邦(Russian Federation))から得た。DMSO、DMF、CF
3COOH、Et
3N、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、及びN-ヒドロキシスクシンイミドは、Merck社(ドイツ(Germany))から得た。N-メチルモルホリン(NMM)、2-マレイミドプロピオン酸、及び炭酸ジスクシンイミジルは、Fluka社によって供給された。イミノ二酢酸ジメチルエステル塩酸塩は、Reakhim社(ロシア連邦(Russian Federation))から得た。テトラアミン(H
2N-CH
2)
4C x 2H
2SO
4は、Litherland及びMannの文献(1938)「ペンタエリスリトールのアミノ誘導体パートI.調製(The amino-derivatives of pentaerythritol Part I. Preparation)」Journal of the Chemical Society,1588-95によって記載されている通りに合成した。
【0148】
Dowex 50X4-400及びSephadex LH-20は、Amersham Biosciences AB社(スウェーデン(Sweden))から得た。シリカゲル60は、Merck社(ドイツ(Germany))から得た。薄層クロマトグラフィーは、7% H
3PO
4浸漬後の炭化、又はニンヒドリンによる検出を用いて、シリカゲル60 F
254アルミニウムシート(Merck社、1.05554)を使用して実施した。
【0149】
1H NMRスペクトルは、基準として溶媒の残留プロトンのシグナルを使用する、Bruker WM 500MHz装置又はBruker DRX-500分光計を用いて、30℃で記録した([D
6]DMSO、2.500ppm;[D
2]H
2O、4.750ppm;CD
3OD)。
【0150】
(実施例1:式(I)の化合物「Galili-CMG2-DOPE」の調製)
(3-トリフルオロアセトアミドプロピル-3,4-ジ-O-アセチル-2,6-ジ-O-ベンジル-α-D-ガラクトピラノシル-(1→3)-2,4-ジ-O-アセチル-6-O-ベンジル-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-2-アセトアミド-3-O-アセチル-6-O-ベンジル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド(3)の調製(スキームI))
グリコシルアクセプター(3-トリフルオロアセトアミドプロピル)-2-アセトアミド-3-O-アセチル-6-O-ベンジル-2-デオキシ-4-O-(2,4-ジ-O-アセチル-6-O-ベンジル-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド(2)を、Pazyninaらの刊行物(2008)に開示されている方法に従って調製した。グリコシルアクセプター2(500mg、0.59mmol)と、チオガラクトピラノシド1(576mg、1.18mmol)と、NIS(267mg、1.18mmol)と、無水CH
2Cl
2(25ml)と、分子ふるい4Å(500mg)との混合物を、Arの雰囲気中で、-45℃で30分間撹拌した。次いで、TfOH(21μl、0.236mmol)の無水CH
2Cl
2(0.5ml)溶液を添加した。反応混合物を、-45℃で2時間撹拌し、次いで、温度を4時間かけて-20℃に上昇させた。この混合物を、一晩-20℃に維持した。次いで、過剰量のチオガラクトピラノシド1(144mg、0.295mmol)、NIS(66mg、0.295mmol)、及びTfOH(5μl、0.06mmol)を添加し、-20℃で2時間、撹拌を維持し、その後、ゆっくりと室温まで温めさせた(1時間)。次いで、Na
2S
2O
3の飽和水溶液を添加し、混合物を濾過した。濾液を、CHCl
3(300ml)で希釈し、H
2O(2×100ml)で洗浄し、脱脂綿による濾過によって乾燥させ、濃縮した。LH-20(CHCl
3-MeOH)でのゲル濾過により、白色の泡として、生成物3(600mg、80%)がもたらされた。
【化3】
【0151】
(3-アミノプロピル-α-D-ガラクトピラノシル-(1→3)-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド(5)の調製(スキームI))
生成物3(252mg、0.198mmol)を、Zemplenに従って脱アセチル化(8時間、40℃)し、AcOHで中和し、濃縮した。得られた生成物のTLC(CH
3Cl-MeOH、10:1)分析は、2つのスポット:Rf 0.45を有する主要なスポットと、トリフルオロアセチルの部分的喪失の指標である原線上の別のスポット(ニンヒドリン陽性スポット)を示した。したがって、この生成物を、CF
3COOMe(0.1ml)及びEt
3N(0.01ml)(MeOH(10ml)中)での1時間の処理によってN-トリフルオロアセチル化し、濃縮し、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(CHCl
3-MeOH、15:1)にかけて、白色の泡として生成物4をもたらした(163mg、77%)、Rf 0.45(CH
3Cl-MeOH、10:1)。生成物4を、水素化分解(200mg Pd/C、10ml MeOH、2時間)にかけ、濾過し、N-脱フルオロアセチル化(N-defluoroacetylated)(5% Et
3N/H
2O、3時間)させ、濃縮した。Dowex 50X4-400(H
+)上での陽イオン交換クロマトグラフィー(5%アンモニア水での溶離)により、白色の泡として生成物5(90mg、98%)が与えられた。
【化4】
【化5】
【0152】
({[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸メチルエステル(8)の調製(スキームII))
Boc-グリシル-グリシン(23.2g、0.1mol)を150ml塩化メチレンに入れた撹拌懸濁液に、N-メチルモルホリン(11.0ml、0.1mol)を添加し、この溶液を、-15℃に冷却し、クロロギ酸イソブチル(13.64g、0.1mol)を10分間添加した。次いで、この反応混合物に、同じ温度で、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールと、(メトキシカルボニルメチルアミノ)-酢酸メチルエステル(7)(16.1g、0.1mol)の50ml DMF溶液とを添加した。得られた混合物を、0℃で30分間、次いで周囲温度で2時間撹拌し、蒸発乾固させた。残渣を、200mlの塩化メチレンに溶解し、100ml 0.5M HCl及び200ml 2% NaHCO
3水溶液で洗浄した。溶媒を真空中で蒸発させ、残渣をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(3% MeOH(CHCl
3中))で精製して、無色のガラス状物質として、純粋な目的化合物(34.08g、91%)を与えた。TLC:R
f=0.40(5% MeOH(CHCl
3中))、Rf=0.49(7:1(v/v)クロロホルム/メタノール)。
【化6】
R
f 0.49 (7:1 (v/v) クロロホルム/メタノール)。
【0153】
({[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸(9)の調製(スキームII))
{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸メチルエステル(8)(24.42g、65.12mmol)をメタノール(325ml)に入れた撹拌溶液に、0.2M NaOH水溶液(325ml)を添加し、反応混合物を、15分間、周囲温度に維持し、酢酸(5ml)で酸性化し、蒸発乾固させた。シリカゲル上での残渣のカラムクロマトグラフィー(メタノール-酢酸エチル 1:1)により、Na塩(20.44g)として目的化合物が与えられ、これを、メタノール/水/ピリジン混合物(20:10:1、350ml)に溶解し、イオン交換カラム(Dowex 50X4-400、ピリジン型、300ml)に通過させて、Naカチオンを除去した。カラムを、同じ混合物で洗浄し、溶出液を蒸発させ、真空中で乾燥させて、白色固体として純粋な目的化合物(20.15g、86%)を与えた。TLC:R
f=0.47(iPrOH/酢酸エチル/水 4:3:1)。
【化7】
R
f 0.47 (4:3:1 (v/v/v) i-PrOH/酢酸エチル/水)。
【0154】
({[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸N-オキシスクシンイミドエステル(Boc-Gly
2(MCM)GlyOSu)(10)の調製(スキームII))
{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸(26.40g、73.13mmol)とN-ヒドロキシスクシンイミド(8.70g、75.65mmol)とをDMF(210ml)に入れた氷冷撹拌溶液に、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(14.03g、68.10mmol)を添加した。この混合物を、0℃で30分間、次いで周囲温度で2時間撹拌した。沈殿したN,N'-ジシクロヘキシル尿素を濾過して取り出し、DMF(80ml)で洗浄した。濾液と洗浄液を濃縮し、残渣を、Et
2O(500ml)と共に1時間撹拌した。エーテル抽出物を、デカンテーションし、残渣を濃縮して、白色の泡として目的化合物を与えた(32.57g、97%)。TLC:R
f=0.71(アセトン/酢酸 40:1)。
【化8】
R
f 0.71(40:1(v/v)アセトン/酢酸)。
【化9】
【0155】
(CMG(2)ジアミン(16)の調製(スキームIII及びIV))
エチレンジアミン(11)(808mg、13.47mmol)とEt
3N(1.87ml、13.5mmol)とのDMSO(5ml)溶液を、Boc-Gly
2-(MCM)Gly-OSu(10)(15.42g、33.68mmol)をDMSO(50ml)に入れた撹拌溶液に添加した。反応混合物を、周囲温度で30分間撹拌し、酢酸(1.2ml)で酸性化し、次いで、Sephadex LH-20カラム(カラム体積1200ml、溶離液-MeOH/水 2:1+0.2% AcOH)で分別した。化合物Boc
2MCMG(12)を含有する分画を合わせ、溶媒を蒸発させ、残渣を真空中で濃縮した。生成物を、溶離液として2-プロパノール/酢酸エチル/水(2:6:1)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによってさらに精製した。純粋なBoc
2MCMG(12)を含有する分画を合わせ、溶媒を蒸発させ、残渣を真空中で乾燥させて、無色の泡として、目的のBoc
2MCMG(12)を与えた(8.41g、84%)。TLC:R
f=0.48(iPrOH/酢酸エチル/水 2:3:1)。
【化10】
【0156】
Boc
2MCMG(12)(4.88g、6.535mmol)を塩化メチレン(25ml)に入れた撹拌溶液に、トリフルオロ酢酸(25ml)を添加し、この溶液を、1時間、周囲温度に維持した。次いで、反応混合物を濃縮し、残渣を無水MeOH(50ml)を用いて3回蒸発させて、次いで、残渣をEt
2O(100ml)で3回抽出して、微量のトリフルオロ酢酸を除去した。(白色固体として)もたらされた沈殿を乾燥させて、ビス-トリフルオロ酢酸塩として5.06g(約100%)のMCMG(13)を与えた。TLC:R
f=0.23(エタノール/水/ピリジン/酢酸 5:1:1:1)。
【化11】
【0157】
MCMG(13)(5.06g、6.796mmol)をDMSO(13ml)に入れた撹拌溶液に、Boc-Gly
2-(MCM)Gly-OSu(10)(7.79g、16.994mmol)をDMSO(17ml)及びEt
3N(2.83ml、20.4mmol)に入れた溶液を添加した。この反応混合物を、周囲温度で2時間撹拌した後、酢酸(4.0ml)で酸性化し、Sephadex LH-20カラムクロマトグラフィー(カラム体積1200ml、溶離液-MeOH/水 2:1+0.2% AcOH)で分別した。純粋なBoc
2MCMG(14)を含有する分画を合わせ、溶媒を蒸発させ、残渣を真空中で乾燥させて、無色の泡として、目的のBoc
2MCMG(14)を与えた(8.14g、97%)。TLC:R
f=0.25(iPrOH/酢酸エチル/水 2:3:1)。
【化12】
【0158】
Boc
2MCMG(14)(606mg、0.491mmol)を、CF
3COOH(2ml)に溶解し、この溶液を、30分間、室温に維持した。トリフルオロ酢酸を真空中で蒸発させ、残渣をEt
2Oで3回抽出(25mlのEt
2Oでの粉砕、それに続く濾過)して残留CF
3COOHを除去し、得られた白色粉末を、真空中で乾燥させた。この粉末を、4mLの水に溶解し、次いで、凍結乾燥させた。MCMG(15)(TFA塩)の収量を、定量値として推定した(実際の重量は、水和物の安定性が原因で、理論値よりも約10%大きかった)。TLC:R
f=0.21(エタノール/水/ピリジン/酢酸 5:1:1:1).
【化13】
【0159】
MCMG(15)(約0.49mmol)の水(20mL)溶液に、Et
3N(0.5 mL)を添加し、この溶液を、15時間、室温に維持した。この反応混合物を蒸発乾固させ、残渣をSephadex LH-20カラム上で脱塩した(2つの方法):
【0160】
方法A.残渣を水(3ml)に溶解し、この溶液を、Sephadex LH-20カラム(カラム体積250mL、溶離液-MeOH/水 1:1+0.05M酢酸ピリジン(pyridine acetate))上で脱塩した。塩が混入したCMG(16)を含有する分画を、別々に合わせ、蒸発させ、残渣を再び脱塩した。純粋なCMG(16)を含有する合わせた分画を、蒸発させて約4ml体積とし、凍結乾燥させた。CMG(16)(分子内塩)の収量は、431mg(90%)であった。
【0161】
方法B.残渣を水(3ml)に溶解し、この溶液を、Sephadex LH-20カラム(カラム体積250mL、溶離液-MeOH/水 1:1+1%濃NH
3(aq.))上で脱塩した。純粋なCMG(16)を含有する分画を、蒸発させて約4ml体積とし、凍結乾燥させた。残渣(CMG(16)のアンモニア塩)をiPrOH/水 1:1混合物(10mL)に溶解し、Et
3N(0.2mL)を添加し、溶液を蒸発乾固させた。この手順を2回繰り返し;残渣を4mLの水に溶解し、凍結乾燥させた。CMG(16)の二-Et
3N塩の収量は、549mg(95%)であった。
TLC:R
f=0.50(iPrOH/MeOH/アセトニトリル/水 4:3:3:4+3%濃NH
3(aq.))、又はR
f=0.43(iPrOH/EtOH/MeOH/水 1:1:1:1、0.75M NH
3)。
【化14】
【化15】
【化16】
【0162】
(H
2N-CMG(16)-DOPE(20)の調製(スキームV))
CMG(16)(425mg、0.435mmolの分子内塩)をi-PrOH/水の混合物(i-PrOH/水 3:2、10mL)に入れた、激しく撹拌した溶液に、NaHCO
3(0.435mL、0.435mmol)の1M水溶液、次いでDOPE-Ad-OSu(16)(211mg、0.218mmol)のジクロロエタン(0.4mL)溶液を添加した。反応混合物を、2時間撹拌し、次いで、0.2mLのAcOHで酸性化し、35℃で蒸発させて最小体積とした。固体の残渣を、真空中で乾燥させ(濃密な泡)、次いで、CHCl
3/MeOH混合物(CHCl
3/MeOH 4:1、10mLで数回、TLC制御)で徹底的に抽出した。抽出された残渣は、未反応のCMG(2)及び塩から構成されていた(約50%のCMG(16)が、CMG(16)合成に記載した手順に従って、シリカゲル上でのクロマトグラフィー後に、合わせた残渣及び分画の脱塩によって回収された)。合わせたCHCl
3/MeOH抽出液(CMG(16)-Ad-DOPEアミン、DOPE-Ad- CMG(16)-Ad-DOPE、N-オキシスクシンイミド、及びいくらかのCMG(16)の溶液)を、真空中で蒸発させ、乾燥させた。得られた混合物を、シリカゲルカラム(2.8×33cm、約200mLのシリカゲル(CHCl
3/MeOH 5:1中))上で分離した。この混合物(MeOH/CHCl
3/水の混合物(MeOH/CHCl
3/水 6:3:1+0.5%のピリジン)中)を、カラムに吸着させ、成分を、段階的な3成分グラジエント:MeOH/CHCl
3/水の組成物(6:3:1から6:2:1、次いで6:2:2まで)(すべて0.5%のピリジンを含む)で溶出した。最初にDOPE-Ad-CMG(16)-Ad-DOPE(R
f=0.75、MeOH/CHCl
3/水 3:1:1)、続いて所望のDOPE-Ad-CMG(16)アミン(R
f= 0.63、MeOH/ CHCl
3/水 3:1:1)が溶出され、最後にCMG(16)(R
f=0.31、MeOH/CHCl
3/水 3:1:1)が溶出された。純粋なCMG(16)-Ad-DOPEアミン(20)を含有する分画を合わせ、蒸発乾固させた。いずれかの低分子量不純物及び可溶化されたシリカゲルを除去するために、残渣を、iPrOH/水 1:2混合物(2mL)に溶解し、Sephadex LH-20カラム(カラム体積130mL、溶離液-
iPrOH/水 1:2+0.25%のピリジン)に通過させた。純粋なCMG(16)-Ad-DOPEアミン(20)を含有する分画を合わせ、蒸発乾固させ(泡立ちを防止するために約20%の2-プロパノールを添加した)、残渣を水(約4mL)に溶解し、凍結乾燥させた。CMG(16)-Ad-DOPEアミン(20)の収量は、270mg(DOPE-Ad-OSuに対して68%、又はCMG(16)に対して34%)であった。
【化17】
【0163】
(Galili-CMG(2)-DOPE(22)の調製(スキームVI))
化合物21(66mg、0.079mmol)を乾燥DMSO(6mL)に入れた撹拌溶液に、15μl Et
3N及び粉末状のH
2N-CMG(2)-DOPE(20)(95mg、0.0495mmol)を、3回に分けて添加した。混合物を、室温で24時間撹拌し、次いで、カラムクロマトグラフィー(Sephadex LH-20、i-PrOH-H
2O、1:2、0.5v% Py、0.25v% AcOH)にかけて、Py塩の形態の未精製化合物22をもたらし;この混合物を、2回、水から凍結乾燥させ、次いで、10mlの水に再び溶解し、Na塩の形態の化合物22を得るためにNaHCO
3の水溶液(50mM)を添加してpH6.5とし、この溶液を凍結乾燥にかけた。化合物22(Na塩)の収量は、114mg(NH
2-CMG
2-DEに対して86%)、Rf 0.6(i-PrOH-MeOH-MeCN-H
2O、4:3:6:4)であった。
【化18】
MALDI TOF 質量スペクトル、M/Z: 2567 (M+Na); 2583 (M+K); 2589 (MNa+Na); 2605 (MNa+K); 2611 (MNa
2+Na)。
【化19】
【化20】
【0164】
(実施例2:式(II)の化合物「Galili-T17 DOPE」の調製)
(3-トリフルオロアセトアミドプロピル-3,4-ジ-O-アセチル-2,6-ジ-O-ベンジル-α-D-ガラクトピラノシル-(1→3)-2,4-ジ-O-アセチル-6-O-ベンジル-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-2-アセトアミド-3-O-アセチル-6-O-ベンジル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド(3)の調製(スキームI))
グリコシルアクセプター(3-トリフルオロアセトアミドプロピル)-2-アセトアミド-3-O-アセチル-6-O-ベンジル-2-デオキシ-4-O-(2,4-ジ-O-アセチル-6-O-ベンジル-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド(2)を、Pazyninaらの刊行物、(2008)Russian Journal of Bioorganic Chemistry 34(5),625-631に開示されている方法に従って調製した。グリコシルアクセプター2(500mg、0.59mmol)と、チオガラクトピラノシド1(576mg、1.18mmol)と、NIS(267mg、1.18mmol)と、無水CH
2Cl
2(25ml)と、分子ふるい4Å(500mg)との混合物を、Arの雰囲気中で、-45℃で30分間撹拌した。次いで、TfOH(21μl、0.236mmol)の無水CH
2Cl
2(0.5ml)溶液を添加した。反応混合物を、-45℃で2時間撹拌し、次いで、温度を4時間かけて-20℃に上昇させた。この混合物を、一晩-20℃に維持した。次いで、過剰量のチオガラクトピラノシド1(144mg、0.295mmol)、NIS(66mg、0.295mmol)、及びTfOH(5μl、0.06mmol)を添加し、-20℃で2時間、撹拌を維持し、その後、ゆっくりと室温まで温めさせた(1時間)。次いで、Na
2S
2O
3の飽和水溶液を添加し、混合物を濾過した。濾液を、CHCl
3(300ml)で希釈し、H
2O(2×100ml)で洗浄し、脱脂綿による濾過によって乾燥させ、濃縮した。LH-20(CHCl
3-MeOH)でのゲル濾過により、白色の泡として、生成物3(600mg、80%)がもたらされた。
【化21】
【0165】
(3-アミノプロピル-α-d-ガラクトピラノシル-(1→3)-β-d-ガラクトピラノシル-(1→4)-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-d-グルコピラノシド(5)の調製(スキームI))
生成物3(252mg、0.198mmol)を、Zemplenに従って脱アセチル化(8時間、40℃)し、AcOHで中和し、濃縮した。得られた生成物のTLC(CH
3Cl-MeOH、10:1)分析は、2つのスポット:R
f 0.45を有する主要なスポットと、トリフルオロアセチルの部分的喪失の指標である原線上の別のスポット(ニンヒドリン陽性スポット)を示した。したがって、この生成物を、CF
3COOMe(0.1ml)及びEt
3N(0.01ml)(MeOH(10ml)中)での1時間の処理によってN-トリフルオロアセチル化し、濃縮し、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(CHCl
3-MeOH、15:1)にかけて、白色の泡として生成物4をもたらした(163mg、77%)、R
f 0.45(CH
3Cl-MeOH、10:1)。生成物4を、水素化分解(200mg Pd/C、10ml MeOH、2時間)にかけ、濾過し、N-脱フルオロアセチル化(5% Et
3N/H
2O、3時間)させ、濃縮した。Dowex 50X4-400(H
+)上での陽イオン交換クロマトグラフィー(5%アンモニア水での溶離)により、白色の泡として生成物5(90mg、98%)が与えられた。
【化22】
【化23】
【0166】
((CF
3COOH・H-Gly
2-NHCH
2)
4C(9)の調製(スキームII))
テトラアミン(H
2N-CH
2)
4C(7)を、Litherland及びMannの刊行物、(1938)「The amino-derivatives of pentaerythritol Part I. Preparation」Journal of the Chemical Society,1588-95に開示されている方法に従って合成した。テトラアミン7(500mg、1.52mmol)を、1M NaHCO
3水溶液(18.2ml)とi-PrOH(9ml)との混合物に入れた撹拌溶液に、Boc-GlyGlyNos(6)(4012mg、12.18mmol)を添加した(CO
2放出、発泡)。反応混合物を、30分間撹拌し、次いで、6mlの1M NaHCO
3水溶液を添加し、混合物を一晩撹拌した。(Boc-Gly
2-HNCH
2)
4C(8)の沈殿を濾過し、メタノール/水の混合物(1:1、20ml)で徹底的に洗浄し、真空中で乾燥させた。収量1470mg(98%)、白色固体。
【化24】
【0167】
(Boc-Gly
2-HNCH
2)
4C(8)(1450mg、1.466mmol)を、CF
3COOH(5ml)に溶解し、この溶液を、2時間、室温に維持した。トリフルオロ酢酸を真空中で除去し、残渣を(CH
3CH
2)
2Oで3回抽出(30mlの(CH
3CH
2)
2Oでの30分間の軽い撹拌、それに続くデカンテーション)して残留CF
3COOHを除去した。固体の残渣を、真空中で乾燥させ、最小体積の水に溶解し、Sephadex LH-20カラムに通過させ、水で溶出した。生成物9を含有する分画を合わせ、蒸発させて、およそ5mlとし、凍結乾燥させた。収量1424mg(93%)、白色固体。TLC:R
f 0.5(エタノール/濃NH
3;2:1(v/v))。
【化25】
【化26】
【0168】
({[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸メチルエステル(11)の調製(スキームIII))
(メトキシカルボニルメチル-アミノ)-酢酸メチルエステル塩酸塩(10)(988mg、5mmol)をDMF(15ml)に入れた撹拌溶液に、Boc-GlyGlyNos(6)(3293mg、10mmol)を添加し、(CH
3CH
2)
3N(3475μL、25mmol)を添加した。この混合物を、室温で一晩撹拌し、次いで、o-キシレン(70ml)で希釈し、蒸発させた。シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエンで充填、及び酢酸エチルで溶出)により、未精製生成物がもたらされた。この未精製生成物を、クロロホルムに溶解し、水、0.5M NaHCO
3、及び飽和KClで連続的に洗浄した。このクロロホルム抽出物を蒸発させ、生成物をシリカゲルカラム上で精製した(クロロホルムで充填、及び15:1(v/v)クロロホルム/メタノールで溶出)。分画の蒸発、及び残渣の真空中での乾燥により、生成物11の無色の濃厚なシロップが提供された。収量1785mg、(95%)。TLC:R
f=0.49(7:1(v/v)クロロホルム/メタノール)。
【化27】
【0169】
({[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸(12)の調製(スキームIII))
11(1760mg、4.69mmol)をメタノール(25ml)に入れた撹拌溶液に、0.2M NaOH水溶液(23.5ml)を添加し、溶液を、5分間、室温に維持した。次いで、この溶液を、酢酸(0.6ml)で酸性化し、蒸発乾固させた。シリカゲル上での残渣のカラムクロマトグラフィー(酢酸エチルで充填、及び2:3:1(v/v/v)i-PrOH/酢酸エチル/水で溶出)により、回収された11(63mg、3.4%)及び目的化合物12(1320mg)をもたらした。次いで、この中間生成物を、メタノール/水/ピリジン混合物(20:10:1、30ml)に溶解し、イオン交換カラム(Dowex 50X4-400、ピリジン型、5ml)に通過させて、残留ナトリウムカチオンを除去した。次いで、カラムを、同じ溶媒混合物で洗浄し、溶離液を蒸発させ、残渣をクロロホルム/ベンゼン混合物(1:1、50ml)に溶解し、次いで蒸発させ、真空中で乾燥させた。生成物12の収量は、1250mg(74%)、白色固体であった。TLC:R
f 0.47(4:3:1(v/v/v)i-PrOH/酢酸エチル/水)。
【化28】
【0170】
({[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸N-オキシスクシンイミドエステル(Boc-Gly
2(MCMGly)Nos)(13)の調製(スキームIII))
12(1200mg、3.32mmol)とN-ヒドロキシスクシンイミド(420mg、3.65mmol)とをDMF(10ml)に入れた氷冷撹拌溶液に、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(754mg、3.65mmol)を添加した。この混合物を、0℃で30分間、次いで室温で2時間撹拌した。N,N'-ジシクロヘキシル尿素の沈殿を、濾濾過して取り出し、DMF(5ml)で洗浄し、濾液を蒸発させて最小体積とした。次いで、残渣を(CH
3CH
2)
2O(50ml)と共に1時間撹拌し、エーテル抽出物を、デカンテーションによって除去した。残渣を真空中で乾燥させて、白色の泡としてエステル13(1400mg、92%)を提供した。TLC:R
f 0.71(40:1(v/v)アセトン/酢酸)。
【化29】
エステル11(1380mg)を、DMSOに溶解して、6mlの体積を提供し、0.5M溶液として使用した(-18℃で保管した)。
【化30】
【0171】
({CF
3COOH・H-[Gly
2(MCMGly)]Gly
2- NHCH
2}
4C(15)の調製(スキームIV))
(CF
3COOH・H-Gly
2-HNCH
2)
4C(9)(277mg、0.265mmol)をDMSO(2ml)に入れた撹拌溶液に、エステル11(1.591mmol、3.18mlの0.5M溶液(DMSO中))及び(CH
3CH
2)
3N(295μL、2.121mmol)を添加した。混合物を、室温で一晩撹拌し、150μL AcOHで酸性化し、真空中で溶媒を除去した(凍結乾燥)。残渣を(CH
3CH
2)
2Oで3回抽出した(20mlの(CH
3CH
2)
2Oでの30分間の軽い撹拌、それに続くデカンテーション)。固体の残渣を、最小体積のアセトンに溶解し、シリカゲルカラム上で分別した(アセトンで充填、及びアセトン、20:2:1(v/v/v)のアセトン/メタノール/水、及び15:2:1(v/v/v)のアセトン/メタノール/水で溶出)。選択した分画を蒸発させ、残渣を真空中で乾燥させた。純粋な{Boc-[Gly
2(MCMGly)]Gly
2-NHCH
2}
4C(14)の収量は、351mg(68%)、白色固体であった。TLC:R
f 0.38(15:2:1(v/v/v)アセトン/メタノール/水)。
【化31】
【0172】
{Boc-[Gly
2(MCMGly)]Gly
2-NHCH
2}
4C(14)(330mg、0.168mmol)を、CF
3COOH(2ml)に溶解し、この溶液を、40分間室温に維持した。トリフルオロ酢酸を、真空中で蒸発させ、残渣を(CH
3CH
2)
2Oで3回抽出(20mlの(CH
3CH
2)
2Oでの30分間の軽い撹拌、それに続くデカンテーション)して残留CF
3COOHを除去し、次いで、真空中で乾燥させた。{CF
3COOH・H-[Gly
2(MCMGly)]Gly
2-NHCH
2}
4C(15)の収量は、337mg(99%)、白色固体であった。
【化32】
【化33】
【0173】
({CF
3COOH・H-[Gly
2(MCMGly)]
2Gly
2-NHCH
2}
4Cの調製(スキームV))
(CF
3COOH・H-[Gly
2(MCMGly)]Gly
2-HNCH
2)
4C(15)(272mg、0.135mmol)をDMSO(2ml)に入れた撹拌溶液に、エステル(13)(0.809mmol、1.62mlの0.5M溶液(DMSO中))及び(CH
3CH
2)
3N(112μL、0.809mmol)を添加した。混合物を、室温で一晩撹拌し、70μL AcOHで酸性化し、真空中で溶媒を除去した(凍結乾燥)。残渣を(CH
3CH
2)
2Oで3回抽出した(15mlの(CH
3CH
2)
2Oでの30分間の軽い撹拌、それに続くデカンテーション)。固体の残渣を、最小体積の7:1(v/v)アセトン/メタノール混合物に溶解し、シリカゲルカラム上で分別した(アセトンで充填、及び7:1(v/v)アセトン/メタノール、10:2:1(v/v/v)、9:2:1(v/v/v)、8:2:1(v/v/v)アセトン/メタノール/水で溶出)。選択した分画を蒸発させ、残渣を真空中で乾燥させた。純粋な{Boc-[Gly
2(MCMGly)]
2Gly
2-NHCH
2}
4C(16)の収量は、279mg(71%)、白色固体であった。TLC:R
f 0.42(8:2:1(v/v/v)アセトン/メタノール/水)。
【化34】
【0174】
{Boc-[Gly
2(MCMGly)]
2Gly
2-NHCH
2}
4C(16)(269mg、91.65μmol)を、CF
3COOH(2ml)に溶解し、溶液を、40分間、室温に維持した。トリフルオロ酢酸を、真空中で蒸発させ、残渣を(CH
3CH
2)
2Oで3回抽出(15mlの(CH
3CH
2)
2Oでの30分間の軽い撹拌、それに続くデカンテーション)して残留CF
3COOHを除去し、次いで、真空中で乾燥させた。{CF
3COOH・H-[Gly
2(MCMGly)]
2Gly
2-NHCH
2}
4Cの収量は、270mg(98%)、白色固体であった。
【化35】
【0175】
({CF
3COOH・H-[Gly
2(MCMGly)]
3Gly
2-NHCH
2}
4Cの調製(スキームV))
(CF
3COOH・H-[Gly
2(MCMGly)]
2Gly
2-HNCH
2)
4C(175mg、58.5μmol)をDMSO(2ml)に入れた撹拌溶液に、エステル13(0.351mmol、0.702mlの0.5M溶液(DMSO中))及び(CH
3CH
2)
3N(49μL、0.351mmol)を添加した。混合物を、室温で一晩撹拌し、30μL AcOHで酸性化し、真空中で溶媒を除去した(凍結乾燥)。残渣を、最小体積の1:1(v/v)アセトニトリル/水の混合物に溶解し、Sephadex LH-20カラム上で分別した(1:1(v/v)アセトニトリル/水で溶出)。選択した分画を蒸発させ、残渣を真空中で乾燥させた。純粋な{Boc-[Gly
2(MCMGly)]
3Gly
2-NHCH
2}
4Cの収量は、279mg(71%)、白色固体であった。TLC:R
f 0.42(8:2:1(v/v/v)のアセトン/メタノール/水)。{Boc-[Gly
2(MCMGly)]
3Gly
2-NHCH
2}
4Cを含有する分画を合わせ、蒸発させて、およそ2ml体積とし、凍結乾燥させた。初期収量は、215mg(94%)であった。シリカゲルカラム上でのさらなる精製(アセトニトリルで充填、及び4:5:2(v/v/v)のi-PrOH/アセトニトリル/水で溶出)により、169mgのBoc-[Gly
2(MCMGly)]
3Gly
2-NHCH
2}
4Cがもたらされた(収率74%、白色固体)。TLC:R
f 0.45(4:5:2(v/v/v)のi-PrOH/アセトニトリル/水)。
【化36】
【0176】
{Boc-[Gly
2(MCMGly)]
3Gly
2-NHCH
2}
4C(146mg、37.36μmol)を、CF
3COOH(1ml)に溶解し、この溶液を、40分間、室温に維持した。トリフルオロ酢酸を、真空中で蒸発させ、残渣を(CH
3CH
2)
2Oで3回抽出して(10mlの(CH
3CH
2)
2Oでの30分間の軽い撹拌、それに続くデカンテーション)、残留CF
3COOHを除去し、次いで、真空中で乾燥させた。{CF
3COOH・H-[Gly
2(MCMGly)]
3Gly
2-NHCH
2}
4Cの収量は、147mg(99%)、白色固体であった。
【化37】
【0177】
({CF
3COOH・H-[Gly
2(MCMGly)]
4Gly
2-NHCH
2}
4Cの調製(スキームV))
(CF
3COOH・H-Gly
2(MCMGly)]
3-HNCH
2)
4C(68mg、17.16μmol)をDMSO中(1ml)に入れた撹拌溶液に、エステル13(0.137mmol、0.275mlの0.5M溶液(DMSO中))及び(CH
3CH
2)
3N(14.3μL、0.103mmol)を添加した。この混合物を、室温で一晩撹拌し、100μL AcOHで酸性化し、溶媒を真空中で除去した(凍結乾燥)。残渣を、最小体積の1:1(v/v)アセトニトリル/水の混合物(0.25% AcOH)に溶解し、Sephadex LH-20カラム上で分別した(1:1(v/v)アセトニトリル/水(0.25% AcOH)で溶出)。{Boc-[Gly
2(MCMGly)]
4Gly
2-NHCH
2}
4Cを含有する分画を合わせ、蒸発させて、およそ2ml体積とし、凍結乾燥させた。収量は、81mg(96%)、白色固体であった。TLC:R
f 0.24(4:5:2(v/v/v)i-PrOH/アセトニトリル/水)。
【化38】
【0178】
{Boc-[Gly
2(MCMGly)]
4Gly
2-NHCH
2}
4C(74mg、15.16μmol)を、CF
3COOH(1ml)に溶解し、この溶液を、40分間、室温に維持した。トリフルオロ酢酸を、真空中で蒸発させ、残渣を(CH
3CH
2)
2Oで3回抽出して(10mlの(CH
3CH
2)
2Oでの30分間の軽い撹拌、それに続くデカンテーション)、残留CF
3COOHを除去し、次いで、真空中で乾燥させた。{CF
3COOH・H-[Gly
2(MCMGly)]
4Gly
2-NHCH
2}
4Cの収量は、72mg(96%)、白色固体であった。
【化39】
【0179】
({CF
3COOH・H-[Gly
2(MCMGly)]
5Gly
2-NHCH
2}
4C(23)の調製(スキームV)。)
(CF
3COOH・H-Gly
2(MCMGly)]
4-HNCH
2)
4C(16.8mg、3.403μmol)をDMSO(1ml)に入れた撹拌溶液に、エステル13(27.2μmol、63μlの0.5M溶液(DMSO中))、及び(CH
3CH
2)
3N(3μl、21.6μmol)を添加した。この混合物を、室温で一晩撹拌し、100μL AcOHで酸性化し、溶媒を真空中で除去した(凍結乾燥)。残渣を、最小体積の1:1(v/v)アセトニトリル/水の混合物(0.25% AcOH)に溶解し、Sephadex LH-20カラム上で分別した(1:1(v/v)アセトニトリル/水(0.25% AcOH)で溶出)。{Boc-[Gly
2(MCMGly)]
5Gly
2-NHCH
2}
4C(22)を含有する分画を合わせ、蒸発させて、およそ1ml体積とし、凍結乾燥させた。収量は、19mg(95%)、白色固体であった。TLC:R
f 0.15(4:3:2(v/v/v)i-PrOH/アセトニトリル/水)。
【化40】
【0180】
{Boc-[Gly
2(MCMGly)]
5Gly
2-NHCH
2}
4C(22)(19mg、3.25μmol)を、CF
3COOH(0.5ml)に溶解し、この溶液を、40分間、室温に維持した。トリフルオロ酢酸を、真空中で蒸発させ、残渣を(CH
3CH
2)
2Oで3回抽出して(5mlの(CH
3CH
2)
2Oでの30分間の軽い撹拌、それに続くデカンテーション)、残留CF
3COOHを除去し、次いで、真空中で乾燥させた。{CF
3COOH・H-[Gly
2(MCMGly)]
5Gly
2-NHCH
2}
4C(23)の収量は、20mg(99%)、白色固体であった。
【化41】
【0181】
([CF
3COOH・H-(Gly
2CMGly)
5Gly
2-NHCH
2]
4C、Et
3N塩(24)の調製(スキームV))
生成物23(463mg、0.07835mmol)の水(26mL)溶液に、Et
3N(523μL、3.761mmol)を添加し、この溶液を、18時間、室温に維持した。蒸発後、残渣を真空中で凍結乾燥させた。生成物24の収量は、587mg(98%)、白色固体であった。TLC:R
f 0.39(1:2:1(v/v/v)CHCl
3/MeOH/水)。
【化42】
MALDI TOF 質量スペクトル、M/Z: 5174, M+H; 5196, M+Na。
【化43】
【0182】
(活性化された1,2-O-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DE-Ad-OSu)(27)の調製(スキームVI))
アジピン酸ビス(N-ヒドロキシサクシニミジル)(25)(70mg、205μmol)を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(1.5ml)に入れた溶液に、1,2-O-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(7)(40μmol)(クロロホルム(1.5ml)中)、それに続いてトリエチルアミン(7μl)を添加した。この混合物を、2時間、室温に維持し、次いで、酢酸で中和し、真空中である程度濃縮した。残渣のカラムクロマトグラフィー(Sephadex LH-20、1:1 クロロホルム-メタノール、0.2%酢酸)により、無色のシロップとして生成物27(37mg、95%)がもたらされた。
【化44】
【化45】
R
f 0.5 (クロロホルム-メタノール-水、6:3:0.5。
【0183】
([H-(Gly
2CMGly)
5Gly
2-NHCH
2]
3[DE-CO(CH
2)
4CO-(Gly
2CMGly)
5Gly
2-NHCH
2]C、Na、Et
3N塩(28)の調製(スキームVI))
生成物24(522mg、0.06821mmol)を水/2-プロパノール混合物(16mL、2:3)に入れた撹拌溶液に、1M NaHCO
3(547μL、0.547mmol)と、DE-Ad-OSu(27)(66.1mg、0.06821mmol)のジクロロエタン(368μL)溶液とを添加し、溶液を、1.5時間、室温で撹拌した。AcOH(94μL)での酸性化後、溶液を蒸発させ、残渣を真空中で乾燥させた。乾燥させた混合物を、3mLの水/MeOH(15:1)に溶解し、C18逆相カラム(約45mLの相を、75% MeOHで、次いで水/MeOH 15:1で洗浄)に吸着させた。物質を、水/MeOH(15:1-50mL;9:1-50mL;7.5:2.5-50mL;1:1-50mL;2.5:7.5-100mL)で連続的に溶出した。未反応の24を、水/MeOH 15:1で(Na塩(NMRデータによる)、116mg、30.8%の回収率)、また水/MeOH 9:1で(Et
3N塩(NMRデータによる)、63mg、13.6%の回収率)溶出した。目的の(H-CMG5)
3C(CMG
5-Ad-DE)(28)を、水/MeOH 1:1で溶出した。純粋な凍結乾燥させた生成物28の収量は、135mg((24)に対して25.5%)、白色固体であった。TLC(1:2:1(v/v/v)MeOH/酢酸エチル/水):24のR
f 0.06;28のR
f 0.17。
(H-CMG
5)
3C(CMG
5-Ad-DE) Na
1(Et
3N)
20 (28):
【化46】
MALDI TOF 質量スペクトル、M/Z: 6028, M+H; 6050, M+Na。
【化47】
【0184】
(Galili-T-17-DE(30)の調製(スキームVII))
化合物28(4.3mg、5μmol)及びEt
3N(0.5μl)(H
2O(0.75ml)中)を、1.5時間にわたり3回に分けて、化合物29(5mg、6μmol)を乾燥DMSO(0.3mL)に入れた撹拌溶液に添加した。この混合物を、室温で24時間撹拌し、次いで、カラムクロマトグラフィー(Sephadex LH-20、MeOH-H
2O、3:7)にかけ、未精製生成物30をもたらした。この生成物を、水から凍結乾燥させ、残渣を3mlの水に溶解し、NaHCO
3の水溶液(10mM)を添加してpH6.5とし、この溶液を凍結乾燥させて、Na塩として3.7mgの化合物30を提供した。
【化48】
MALDI TOF 質量スペクトル、M/Z: 8188 (M+Na); 8204 (M+K); 8226 (MNa+K)。
【0185】
(実施例3:式(III)の化合物「GalNAc-Gal-GlcNAc-Ad-DOPE」の調製)
(3-アミノプロピル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル-(1→3)-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド(5)(スキームI)の調製)
塩化グリコシルである3,4,6-トリ-O-アセチル-2-アジド-2-デソキシ-β-D-ガラクトピラノシルクロライド(1)を、Paulsenらの刊行物(1978)「Darstellung selektiv blockierter 2-azido-2-desoxy-
d-gluco-und-
d-galactophyranosylhalogenide:Reaktivitat und
13C-NMR-Spektren」Carbohydrate Research,64,339-364に開示されている方法に従って調製した。グリコシルアクセプター(3-トリフルオロアセトアミドプロピル)-2-アセトアミド-3-O-アセチル-6-O-ベンジル-2-デオキシ-4-O-(2,4-ジ-O-アセチル-6-O-ベンジル-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド(2)を、Pazyninaらの刊行物(2008)Russian Journal of Bioorganic Chemistry 34(5),625-631に開示されている方法に従って調製した。
【0186】
グリコシルアクセプター(420mg、0.5mmol)、トリフル酸銀(257mg、1.0mmol)、テトラメチル尿素(120μl、1.0mmol)、及び新たにか焼した分子ふるい4Åを、乾燥ジクロロメタン(20ml)に入れた溶液を、30分間、暗中で室温で撹拌した。ふるい4Åの別の部分を添加し、塩化グリコシル(350mg、1.0mmol)を乾燥ジクロロメタン(3ml)に入れた溶液を添加した。この混合物を、室温で20時間撹拌した。この樹脂を濾過し、メタノール(4×10ml)で洗浄し、次いで、溶媒を蒸発させた。シリカゲル上でのクロマトグラフィー(5〜7%イソプロパノール(クロロホルム中)での溶離)は、アノマーの混合物(α/β=3.0(
1H-NMR分光法によって決定された場合))として407mg(70%)の生成物3をもたらした。
【0187】
生成物3(407mg、0.352mmol)をメタノール(30ml)に入れた溶液を、16時間、400mgの10% Pd/C上で水素化分解にかけた。次いで、樹脂を濾過して取り出し、メタノール(4×10ml)で洗浄し、生成物を真空中で濃縮した。乾燥した残渣を、16時間、20℃で、2:1のピリジン-無水酢酸混合物(6ml)でアセチル化し、試薬をトルエンと共に同時蒸発させた。シリカゲル上での2つのクロマトグラフィーステップ(10%イソプロパノール(酢酸エチル中)での、また5〜10%メタノール(クロロホルム中)での溶離)により、160mg(42%)の生成物4及び39mg(10%)の生成物4βがもたらされた。
【0188】
2Mナトリウムメチラート(sodium methylate)のメタノール(200μl)溶液を、生成物4(160mg、0.149mmol)の無水メタノール(4ml)溶液に添加した。この溶液を、1時間後に蒸発させ、4mlの水を添加し、溶液を16時間維持し、その後、Dowex-H
+カラム上でクロマトグラフィー分離(1Mアンモニアでの溶離)した。溶出液を蒸発させ、凍結乾燥させて、87.2mg(91%)の3-アミノプロピルトリサッカライド(5)をもたらした。
【0189】
1H NMRスペクトルは、Bruker BioSpin社の分光計で、303Kで記録した。固有のプロトンに関する化学シフト(δ)が、参照としてHOD(4.750)、CHCl
3(δ 7.270)を使用して、ppmで提供される。結合定数(J)は、Hzで提供される。
1H NMRスペクトルにおけるシグナルは、スピン-スピンデカップリング(二重共鳴)及び2D-
1H,
1H-COSY実験の技術を使用して割り当てた。
【0190】
旋光性の値は、デジタル旋光計Perkin Elmer 341で25℃で測定した。質量スペクトルは、マトリックスとしてジヒドロキシ安息香酸を使用して、MALDI-TOF Vision-2000分光計で記録した。
4:
【化49】
MS, [C
43H
60N
3F
3O
25]H
+についてのm/z計算値: 1076.35, 実測値、1076。
4β:
【化50】
MS, [C
43H
60N
3F
3O
25]H
+についてのm/z計算値: 1076.35, 実測値、1076。
5:
【化51】
MS, [C
25H
45N
3O
16]H
+についてのm/z計算値: 644.28; 実測値、644. [α]
546 nm +128 (c 0.3; MeCN-H
2O, 1:1)。
5β:
【化52】
MS, [C
25H
45N
3O
16]H
+についてのm/z計算値: 644.28; 実測値、644. [α]
546 nm +6 (c 0.3; MeCN-H
2O, 1:1)。
【化53】
【0191】
(活性化された1,2-O-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE-Ad-ONSu)(8)の調製(スキームII))
アジピン酸ビス(N-ヒドロキシサクシニミジル)(6)(70mg、205μmol)を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(1.5ml)に入れた溶液に、1,2-O-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(7)(40μmol)(クロロホルム(1.5ml)中)、それに続いてトリエチルアミン(7μl)を添加した。この混合物を、2時間、室温に維持し、次いで、酢酸で中和し、真空中である程度濃縮した。残渣のカラムクロマトグラフィー(Sephadex LH-20、1:1 クロロホルム-メタノール、0.2%酢酸)により、無色のシロップとして生成物8(37mg、95%)がもたらされた。
1H NMRスペクトルは、Bruker DRX-500分光計で取得した。化学シフトは、CD
3ODに対して、ppm(δ)で提供される。TLCは、シリカゲル60 F
254プレート(Merck社)上で実施し、化合物は、8%のリン酸水溶液で染色し、続いて200℃超で加熱することによって検出した。
8:
【化54】
R
f 0.5 (クロロホルム-メタノール-水、6:3:0.5。
【化55】
【0192】
(GalNAcα1-3Galβ1-4GlcNAc-Ad-DOPE(9)の調製(スキームIII))
生成物8(33μmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(1ml)に入れた溶液に、30μmolの3-アミノプロピルトリサッカライド5と5μlのトリエチルアミン(Et
3N)を添加した。混合物を室温で2時間、撹拌した。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2-EtOH-H
2O;6:5:1)は、81%の収率の構築物9を提供した。
9:
【化56】
【化57】
【0193】
(生物学データ)
(抗Gal動員アッセイ)
CHO-K1細胞を、細胞培養フラスコから収集し、計数し、PBSに再懸濁して、5×10
6細胞/mlの細胞密度とした。各糖脂質を、9本の1.5ml遠沈管にわたり、管内の最終体積が100μlとなるように、PBSで連続的に希釈した。各管に、100μlのCHO-K1細胞懸濁液を添加し、次いで、これらの管を、37℃で1時間インキュベートした。1時間後、細胞を、400gでの3分間の遠心分離によってペレット化し、500μlのPBS+0.1% BSAに再懸濁した。これを、さらに2回繰り返して、細胞を洗浄した。最終の洗浄後、細胞を、100μlのモノクローナル抗Gal IgG1(PBS+0.1% BSAで1:8希釈したもの)に再懸濁した。これらの管を、氷上で30分間インキュベートし、30分後、細胞を、400gでの3分間の遠心分離によってペレット化し、500μlのPBS+0.1% BSAに再懸濁した。これを、さらに2回繰り返して、細胞を洗浄した。最終の洗浄後、細胞を、100μlのFITC結合マウス抗ヒトIgG(Biolegend社)に再懸濁し、これらの管を、氷上で30分間インキュベートした。30分後、細胞を、400gでの3分間の遠心分離によってペレット化し、500μlのPBS+0.1% BSAに再懸濁した。これを、さらに2回繰り返して、細胞を洗浄した。最終の洗浄後、細胞を、2.5μlの7-AAD(Biolegend社)を含有する200μlのPBS+0.1% BSAに再懸濁した。氷上での5分のインキュベーション後、細胞を、Cytomics FC500フローサイトメーター(Beckman Coulter社)で分析した。死細胞は、分析から除外した。
【0194】
実施例1(Galili-CMG2-DOPE)及び実施例2(Galili-T17 DOPE)として本明細書で調製した化合物を、抗gal動員アッセイで試験し、その結果は、
図1及び2で見ることができる。これらの結果は、実施例1として本明細書で調製した化合物(Galili-CMG2-DOPE)(これは、分子の単一のアルファ-Gal糖と単一の脂質部分との間にCMGスペーサーを有する、アルファ-Gal糖脂質である)が、CHO-K1細胞の原形質膜を組み込み、抗Gal抗体による認識のためのアルファ-Galエピトープを提示することを実証する(
図1参照)。これらの結果はまた、実施例2として本明細書で調製した化合物(Galili-T17 DOPE)(これは、分枝CMGリンカーによって2又は3個のアルファ-Gal糖に付着した単一の脂質部分を有する糖脂質の混合物である)が、CHO-K1細胞の原形質膜を組み込み、等濃度の実施例1の単一のアルファ-Gal分子よりも多い抗Gal抗体を動員することを実証する。
【0195】
(補体依存性細胞傷害)
CHO-K1細胞を、細胞培養フラスコから収集し、計数し、PBSに再懸濁して、5×10
6細胞/mlの細胞密度とした。各糖脂質を、9本の1.5ml遠沈管にわたり、これらの管内の最終体積が100μlとなるように、PBSで連続的に希釈した。各管に、100μlのCHO-K1細胞懸濁液を添加し、これらの管を、37℃で1時間インキュベートした。1時間後、これらの管を、5分間、氷上に置き、次いで、細胞を、500μlの氷冷PBSで3回洗浄した。細胞を、250μlの最終体積の氷冷PBSに再懸濁し、50μlの分割量を、96ウェルプレートの2連のウェルに移した。細胞を含有する各ウェルに、50μlの100%の通常の又は熱失活(56℃で30分)させたヒト血清補体(Innovative Research社)を、ヒト血清の最終濃度が50%となるように添加した。プレートを、37℃で1時間インキュベートし、その後、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer社)で読み取りされるCellTiter-Glo試薬(Promega社)を使用して、細胞生存率を測定した。
【0196】
実施例1(Galili-CMG2-DOPE)、実施例2(Galili-T17 DOPE)、及び実施例3(GalNAc-Gal-GlcNAc-Ad-DOPE)として本明細書で調製した化合物を、補体依存性細胞傷害アッセイで試験し、その結果を、下の表1、及び
図3から5で見ることができる。
【0197】
表1:補体依存性細胞傷害アッセイの結果
【表1】
【0198】
これらの結果は、実施例1として本明細書で調製した化合物(Galili-CMG2-DOPE;すなわち単一のアルファ-Gal CMG分子)で標識されたCHO-K1細胞が、ヒト血清補体によって溶解されることを実証する(
図3参照)。これらの結果はまた、実施例2として本明細書で調製した化合物(Galili-T17 DOPE;すなわち二量体/三量体アルファ-Gal分子)で標識されたCHO-K1細胞が、同じ濃度の単一のアルファ-Gal分子(すなわち、実施例1として本明細書で調製した化合物(Galili-CMG2-DOPE))と共にインキュベートされた細胞よりも、ヒト血清補体による溶解を受けやすいことも実証する。これらの結果はまた、実施例3として本明細書で調製した化合物(GalNAc-Gal-GlcNAc-Ad-DOPE;すなわちGalNAcアルファ糖抗原を有する糖脂質分子)で標識されたCHO-K1細胞が、ヒト血清補体によって溶解されることも実証する。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
式(I)、(II)、及び(III)の化合物:
(化1)
から選択される糖脂質化合物、又はその医薬として許容し得る塩。
(構成2)
構成1記載の糖脂質化合物又はその医薬として許容し得る塩を含む、医薬組成物。
(構成3)
腫瘍の治療に使用するための、構成1記載の糖脂質化合物若しくはその医薬として許容し得る塩、又は構成2記載の医薬組成物。
(構成4)
前記腫瘍が、固形腫瘍、骨髄腫、又はリンパ腫である、構成3記載の使用のための糖脂質又は組成物。
(構成5)
前記腫瘍が、腹膜、肝臓、膵臓、肺、膀胱、前立腺、子宮、子宮頸部、膣、骨髄、乳房、皮膚、脳、リンパ節、頭頸部、胃、腸、結腸、腎臓、精巣、及び卵巣から選択される器官に由来する腫瘍である、構成3又は構成4記載の使用のための糖脂質又は組成物。
(構成6)
前記腫瘍が、原発腫瘍及び/又は転移を含む、構成3から5のいずれか1記載の使用のための糖脂質又は組成物。
(構成7)
前記腫瘍が、メラノーマ、肉腫、神経膠腫、又は癌細胞を含む、構成3から6のいずれか1記載の使用のための糖脂質又は組成物。
(構成8)
注射による投与用である、構成3から7のいずれか1記載の使用のための糖脂質又は組成物。
(構成9)
単回投与又は反復投与で投与される、構成3から8のいずれか1記載の使用のための糖脂質又は組成物。
(構成10)
局所軟膏、局所ローション、又は局所液剤などの、局所適用である、構成3から9のいずれか1記載の使用のための糖脂質又は組成物。
(構成11)
1以上の医薬として許容し得る担体(1又は複数)、希釈剤(1又は複数)、及び/又は賦形剤(1又は複数)をさらに含む、構成3から10のいずれか1記載の使用のための糖脂質又は組成物。
(構成12)
1以上の追加の治療薬をさらに含む、構成3から11のいずれか1記載の使用のための糖脂質又は組成物。
(構成13)
前記1以上の追加の治療薬が、抗CTLA-4、抗PD-1、及び抗PD-L1抗体、特に抗PD-1抗体などの、免疫系下方調節の1以上の全身性阻害剤を含む、構成12記載の使用のための糖脂質又は組成物。
(構成14)
対象における腫瘍を治療する方法であって、
a)i)細胞表面を有する複数の癌細胞を含む少なくとも1つの腫瘍を含む対象;及び
ii)構成1記載の糖脂質化合物若しくはその医薬として許容し得る塩、又は構成2記載の医薬組成物
を提供することと;
b)前記糖脂質又は組成物を腫瘍に導入することと
を含む、前記方法。
(構成15)
前記対象が、ヒトなどの、ヒト又はマウスである、構成14記載の方法。
(構成16)
前記導入ステップが、注射、画像誘導下注入、内視鏡法、気管支鏡法、膀胱鏡法、結腸鏡法、腹腔鏡法、及びカテーテル法から選択される手順を含む、構成14又は構成15記載の方法。
(構成17)
腫瘍内炎症を誘導することをさらに含む、構成14から16のいずれか1記載の方法。
(構成18)
前記対象が、腫瘍を外科的に除去するために以前に治療された、構成14から17のいずれか1記載の方法。
(構成19)
前記対象が、腫瘍を除去するために以前に治療されていない、構成14から18のいずれか1記載の方法。
(構成20)
前記腫瘍が、退縮を起こす又は破壊される、構成14から19のいずれか1記載の方法。
(構成21)
前記導入ステップが、対象における二次性腫瘍の退縮又は破壊をさらに含む、構成14から20のいずれか1記載の方法。