特許第6758380号(P6758380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6758380新規ヒドロキシピラノン化合物、この製造方法及びこれを含む化粧料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758380
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】新規ヒドロキシピラノン化合物、この製造方法及びこれを含む化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 309/40 20060101AFI20200910BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20200910BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200910BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   C07D309/40CSP
   A61K8/49
   A61Q19/00
   A61Q19/08
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-528731(P2018-528731)
(86)(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公表番号】特表2018-536005(P2018-536005A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】KR2016013927
(87)【国際公開番号】WO2017095121
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2019年9月6日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0169644
(32)【優先日】2015年12月1日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0159460
(32)【優先日】2016年11月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ロ,ホ シク
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジェ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン ジン
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−530840(JP,A)
【文献】 特開平7−118134(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0062443(KR,A)
【文献】 特表2006−507287(JP,A)
【文献】 RHO, H. S. et al.,Kojyl cinnamate ester derivatives promote adiponectin production during adipogenesis in human adipose tissue-derived mesenchymal stem cells,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2014年,24(9),pp. 2141-2145
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K8/00−8/49
A61Q19/00−19/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるヒドロキシピラノン化合物:
[化学式1]

【請求項2】
下記反応式1で表され、
下記化学式2のピラノン化合物と化学式3のシクロヘキセニルエステル化合物を反応させて製造する化学式1のヒドロキシピラノン化合物の製造方法:
[反応式1]


(前記反応式1において、Xはハロゲン元素で あり 、MはLi、NaまたはKである)
【請求項3】
下記化学式1で表されるヒドロキシピラノン化合物を有効成分として含む化粧料組成物:
[化学式1]

【請求項4】
前記化粧料組成物は、脂肪細胞分化促進能を有することを特徴とする請求項3に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年12月1日付韓国特許出願第10−2015−0169644号 及び2016年11月28日付韓国特許出願第10−2016−0159460号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、脂肪細胞分化促進能を有する新規ヒドロキシピラノン化合物及びこの製造方法、そしてこれを有効成分として含む化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚の基本的な構造は、皮下脂肪組織によって維持されており、このような皮下脂肪組織は、皮膚のボリュームと強度を左右する役割をする。したがって、皮膚のボリューム及び弾力を維持して向上させるためには、皮膚の外郭層にある真皮や表皮に弾力を付与する方法より脂肪組織の体積を増加させることが根本的な解決策になり得る。
【0004】
具体的に、人体は老化が進むにつれ、皮膚にしわが生成され、同時に皮膚弾力も減少する。しわの生成と弾力減少といった皮膚の老化は、皮膚の構成要素であるコラーゲン(collagen)、エラスチン(elastin)といった皮膚纎維の分解及び減少と共に脂肪細胞の活性減少、またはこれによる脂肪球(lipid droplet)の減少によって生じる複合現象である。そのため、ヒトの脂肪細胞分化を促進して脂肪球を生成及び蓄積することができれば、皮膚のしわを及び弾力を改善できるようになる。
【0005】
最近、脂肪細胞を利用した各種研究の傾向に関して調べて見ると、現在、脂肪細胞を利用した研究は、皮膚のボリューム感及び弾力の増加のための研究を含む多様な分野で活発に進められてきているのであり、その中でも脂肪前駆細胞(preadipocyte)は、インスリンといった分化誘導物質によって脂肪細胞に分化される特性を有しているので、一般的に広く使われている。
【0006】
特に、このような脂肪前駆細胞の中で、最近注目を浴びているのは、脂肪細胞に関する中間葉幹細胞(mesenchymal stem cell)である。脂肪由来の中間葉幹細胞は、脂肪前駆細胞を脂肪細胞に分化させるために使用される方法と類似した方法を利用して、分化させることができるので(Exp.Cell Res.2006、312、1856−1864)、脂肪細胞分化の研究に広く用いられている(Science1999、284、143−146)。そして、このような脂肪由来の中間葉幹細胞は、脂肪細胞だけでなく、軟骨細胞、骨細胞などの他の類型の細胞にも分化できるということが知られており(J.Cell Sci.2006、119、2204−2213)、身体のほとんどの組職に分布していることから、その活用の可能性に限りがないものと考えられている。
【0007】
今まで、皮膚のボリューム及び弾力度を改善すべく脂肪細胞分化を促進するために、実際に様々な試みがあったのであるが、先行研究の結果によると、ケイ皮酸化合物が脂肪細胞分化促進の効果を奏することが報告された。また、ケイ皮酸母核を含むヒドロキシピラノン誘導体で、ケイ皮酸よりも脂肪細胞分化促進効果が大きく増加することを確認した報告があり、これに関しては、多様な誘導体の構造活性相関関係を分析した結果、ケイ皮酸の二重結合が重要な役割をすることが確認された。
【0008】
しかし、このような脂肪細胞分化促進のための物質が、実際に化粧料組成物などに含まれて、人体内で十分な程度の皮膚のボリューム及び弾力度の増加効能を示すには、その効果が依然として微々たるものであり、消費者が化粧料組成物に対する最大の使用満足感を得難いものであった。
【0009】
したがって、より改善された効能の脂肪細胞分化促進用物質に対する開発が必要な実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ヒドロキシピラノン誘導体及びこの製造方法(韓国登録特許第10−0482668号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した従来の問題点を解決するために、本発明の発明者らは、前述した先行研究結果を基に、既存の化合物よりも脂肪細胞分化促進効果を改善させられる化合物に対する多角的な研究を進めた結果、ヒドロキシピラノン化合物のうち、3−(2,6,6−トリメチル−シクロヘキス−2−エニル)−プロペン酸(3−(2,6,6−timethyl−cyclohex−2−enyl)propenoic acid)の母核を含む新規な化合物を製造し、前記新規化合物でもって脂肪細胞の分化促進効果が向上されることを確認し、本発明を完成した。
【0012】
したがって、本発明の目的は、脂肪細胞の分化促進効果を向上させる新規なヒドロキシピラノン化合物を提供することである。
【0013】
また、本発明の別の目的は、前記新規なヒドロキシピラノン化合物を製造する方法を提供することである。
【0014】
また、本発明の別の目的は、前記新規なヒドロキシピラノン化合物を有効成分として含む化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、下記化学式1で表されるヒドロキシピラノン化合物を提供する:
【0016】
[化学式1]

【0017】
また、本発明は、下記反応式1で表され、下記化学式2の化合物と化学式3の化合物を反応させて製造する化学式1のヒドロキシピラノン化合物の製造方法を提供する:
【0018】
[反応式1]


(前記反応式1において、X及びMは、明細書内で説明したとおりである)
【0019】
また、本発明は、前記化学式1で表されるヒドロキシピラノン化合物を有効成分として含む化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるヒドロキシピラノン化合物は、従来のセレチノイドG(Seletinoid G)またはその他の脂肪細胞分化促進用化合物に比べて、より向上された脂肪細胞分化促進効果を有する。
【0021】
具体的に、前記化合物は、ヒト中間葉幹細胞が脂肪細胞に分化する現象を促進させることで脂肪球を生成し、皮膚のボリュームと弾力を増進させる効果を奏することができるので、多様な化粧料製品へと剤形化して消費者の満足感を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明では、下記化学式1で表される新規なヒドロキシピラノン化合物を示す:
【0023】
[化学式1]

【0024】
前記化学式1のヒドロキシピラノン化合物のIUPAC名は、3−(2,6,6−トリメチル−シクロヘキス−2−エニル)−プロペン酸 5−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−ピラン−2−イルメチルエステル(3−(2,6,6−Trimethyl−cyclohex−2−enyl)−propenoic acid 5−hydroxy−4−oxo−4H−pyran−2−ylmethyl ester)である。
【0025】
前記化学式1の化合物は、常温で、玄米の色の固体化合物である。
【0026】
本発明で示すヒドロキシピラノン化合物は、異性体を含む。このとき、「異性体」は、特に光学異性体(optical isomers、例えば、本質的に純粋なエナンチオマー(essentially pure enantiomers)、本質的に純粋なジアステレオマー(essentially pure diastereomers)またはこれらの混合物)だけでなく、配座異性体(conformation isomers、すなわち、一つ以上の化学結合について、その角度のみが異なる異性体)、位置異性体(position isomers、特に、互変異性体(tautomers))または幾何異性体(geometric isomers、例えば、シス−トランス異性体)を含む。
【0027】
前記化学式1で表される化合物は、下記反応式1で表すように、下記化学式2のピラノン化合物と化学式3のシクロヘキセニルエステル化合物を反応させて製造する:
【0028】
[反応式1]


(前記反応式1において、Xはハロゲン元素であり、MはLi、NaまたはKである)
【0029】
前記反応式1を見ると、化学式1の化合物は、ピラノン化合物のハロゲン元素と、シクロヘキセニルエステル化合物の金属との間の結合反応によって製造される。
【0030】
ここで、化学式2のピラノン化合物において、Xはハロゲン元素であり、ここでのハロゲン元素はF、Cl、BrまたはIであってもよく、好ましくはClである。このような化学式2の化合物は市販のものを購入して使用するか、または直接製造して使用することができる。
【0031】
本発明の実施例では、XがClである5−ヒドロキシ−2−(クロロメチル)−4H−ピラン−4−オンを使用したのであり、これは、5−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−4H−ピラン−4−オンをチオニルクロリド(SOCl)と反応させて直接製造して使用した。
【0032】
また、化学式3のシクロヘキセニルエステル化合物は、3−(2,6,6−トリメチル−シクロヘキス−2−エニル)−プロペン酸(3−(2,6,6−timethyl−cyclohex−2−enyl)propenoic acid)のイオン化塩の形態であって、3−(2,6,6−トリメチル−シクロヘキス−2−エニル)−プロペン酸(3−(2,6,6−timethyl−cyclohex−2−enyl)propenoic acid)のカルボキシ基にカチオン(M)が結合した形態で存在する。
【0033】
前記カチオン(M)は、Li、Na、Kで構成される群から選択される1種である。好ましくは、3−(2,6,6−トリメチル−シクロヘキス−2−エニル)−プロペン酸(3−(2,6,6−timethyl−cyclohex−2−enyl)propenoic acid)と、Naとのイオン結合物であってもよく、これを製造するために、3−(2,6,6−トリメチル−シクロヘキス−2−エニル)−プロペン酸(3−(2,6,6−timethyl−cyclohex−2−enyl)propenoic acid)と、水酸化ナトリウムとを、一緒にメタノールに溶かしてイオン化した後、メタノールを蒸溜することで得ることができる。
【0034】
本発明の好ましい実施例としては、化学式2の化合物としての5−ヒドロキシ−2−(クロロメチル)−4H−ピラン−4−オンと、化学式3の化合物としてのソジウム(ナトリウム)3−(2,6,6−トリメチル−シクロヘキス−2−エニル)−プロペノエート (Sodium 3−(2,6,6−timethyl−cyclohex−2−enyl)propenoate)とのエステル結合を通じて、化学式1のヒドロキシピラノン化合物を製造した。
【0035】
ここで、反応は、本発明で特に限定しないのであり、前記ハロゲン−金属結合反応が十分に成される条件下で行うことができる。
【0036】
反応温度は、溶媒の還流温度、一例として50ないし250℃で0.5ないし5時間、好ましくは、1ないし3時間行う。
【0037】
ここで、溶媒は、化学式2及び3の化合物を十分に溶解させることができるものであれば、いずれも可能であり、一例としてN,N−ジメチルホルムアミド(N,N−dimethylformamide、DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、エーテル、メタノール、ヘキサン、シクロヘキサン、ピリジン、N−メチルピロリドン及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種が可能であり、好ましくは、DMFを使用する。
【0038】
反応後には、前記溶媒を蒸溜した後、通常の洗浄、乾燥、精製などの後処理過程を経て高純度の化合物を得る。
【0039】
本発明による化学式1のヒドロキシピラノン化合物は、様々な分野に適用可能であり、好ましくは、化粧料組成物の有効成分として使用することができる。ここで、前記化学式1の化合物は、脂肪細胞分化を促進することで脂肪球を生成及び蓄積することができるので、皮膚のしわ及び弾力を改善する。
【0040】
前記ヒドロキシピラノン化合物が化粧料組成物に有効成分として使用される場合、その含量は剤形によって差があり、0.001ないし99重量%で使われてもよい。前記範囲で有効成分を含む場合、本発明が図る効果を示すのに適切なだけでなく、組成物の安定性及び溶解度をいずれも満たすことができるのであり、費用対比効果の側面でも最も効率的である。
【0041】
化粧料組成物は、当業界で通常製造される如何なる剤形でも製造されうるのであり、例えば、溶液懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化されてもよいが、これに限定されない。より詳しくは、日焼け止め、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、パック、スプレーまたはパウダーの剤形で製造されてもよい。
【0042】
また、本発明による化粧料組成物は、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性または親油性活性剤、脂質小嚢(リポソーム)または化粧品に通常使われる任意の他の成分のような化粧品学または皮膚科学分野で通常使われる補助剤を含んでもよい。前記補助剤は、化粧品学または皮膚科学分野で一般に使われる量で導入される。
【0043】
前記剤形がペースト、クリームまたはゲルの場合は、担体成分として動物性オイル、植物性オイル、ワックス、パラフィン、澱粉、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛などが利用されてもよい。
【0044】
前記剤形がパウダーまたはスプレーの場合には、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケートまたはポリアミドパウダーが利用されてもよく、特に、スプレーの場合は、さらにクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルといったプロペラントを含むことができる。
【0045】
前記剤形が溶液または乳濁液の場合は、担体成分として溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が利用され、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0046】
前記剤形が懸濁液の場合は、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールといったプロペラント液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリンアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルといったプロペラント懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラカントなどが利用されてもよい。
【0047】
以下、本発明の内容及び効果について、より詳しく説明するために、実施例及び試験例を提示する。ただし、下記内容は、本発明に関する一例示に該当するだけで、本発明の権利範囲及び効果がこれに限定されない。
【0048】
実施例:3−(2,6,6−トリメチル−シクロヘキス−2−エニル)−プロペン酸 5−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−ピラン−2−イルメチルエステル(Trimethyl−cyclohex−2−enyl)−propenoic acid 5−hydroxy−4−oxo−4H−pyran−2−ylmethyl ester)の製造
【0049】
下記反応式2によって本発明の化学式1のヒドロキシピラノン化合物である3−(2,6,6−トリメチル−シクロヘキス−2−エニル)−プロペン酸 5−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−ピラン−2−イルメチルエステル(3−(2,6,6−Trimethyl−cyclohex−2−enyl)−propenoic acid 5−hydroxy−4−oxo−4H−pyran−2−ylmethyl ester)を製造した。
【0050】
[反応式2]

【0051】
前記反応式2を行う詳細な過程は下記のとおりである。
【0052】
50gの5−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−4H−ピラン−4−オン(0.35mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド250mlに溶かし、10℃の氷水浴で冷却してチオニルクロリド50g(0.42mol)を30分間滴加した。常温で2時間撹拌した後、氷水2000mlに反応液を加えた。生成された固体をろ過し、酢酸エチル1000mlに固体(ろ過物)を溶かした。硫酸マグネシウムと活性炭を加えて乾燥、脱色してろ過した後、ろ液を濃縮し、ヘキサンを加えて結晶を得た。真空乾燥して反応生成物である化学式2−1の5−ヒドロキシ−2−(クロロメチル)−4H−ピラン−4−オン39.5g(70%)を、黄色い固体で得た。
【0053】
次いで、3−(2,6,6−トリメチル−シクロヘキス−2−エニル)−プロペン酸(3−(2,6,6−timethyl−cyclohex−2−enyl)propenoic acid)5g(0.026mol)と水酸化ナトリウム1.3g(0.031mol)をメタノール40mlに溶かし、メタノールを蒸溜した後の残渣をN,N−ジメチルホルムアミド70mlに溶かして化学式3−1の化合物を製造した。
【0054】
前記製造された化学式3−1の化合物に、前記製造した化学式2−1の5−ヒドロキシ−2−(クロロメチル)−4H−ピラン−4−オン4.2g(0.026mol)を加えて110℃のオイル浴槽で2時間加熱撹拌した。溶媒を蒸溜して残渣を酢酸エチル300mlに溶かした後、酢酸エチル溶液を5%塩酸と蒸溜水で洗浄し、硫酸マグネシウムと活性炭を加えて乾燥、脱色した。次いで、不溶物をろ過してろ液を減圧下で蒸発させ、反応生成物5.9g(69%の収率)を玄米色(非常に薄い黄色)の固体で得た。
【0055】
TLC(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)Rf=0.43
H NMR(DMSO−d、δ): 9.22(s、1H)、8.09(s、1H)、6.75(m 、1H)、6.46(s、1H)、5.95(d、1H、J =16.2Hz)、5.50(s、1H)、5.02(s、2H)、2.45(m、2H)、2.00(m、2H)、1.42(m、1H)、1.20( m、2H )、0.88(s 、3H)、0.80(s、3H)
【0056】
試験例:脂肪細胞分化促進効果の確認
前記実施例で製造した化合物の脂肪細胞分化促進効果を調べるために下記のように行った。
【0057】
アディポネクチンは、脂肪細胞で分泌する代表的なタンパク質ホルモンである。このようなアディポネクチンは、脂肪細胞が分化することにつれ、その発現が増加すると報告されている。よって、本発明で示す新規化合物で処理した時、脂肪細胞分化促進の指標であるアディポネクチンが細胞培養培地で発現される量を測定し、脂肪細胞分化促進効果を確認した。
【0058】
脂肪細胞分化は、人間の脂肪由来中間葉幹細胞(human adipose tissue derived mesenchymal stem cells、hAT−MSCs)を、ロンザ社(Lonza、Inc.Walkersville、MD、USA)から購入し、ロンザ社のガイドラインにしたがって培養した。脂肪細胞分化は、インドメタシン(indomethacin)の代わりにトログリタゾン(troglitazone、TRO)を使用して脂肪由来中間葉幹細胞の脂肪細胞分化を誘導した点を除いて、ロンザ社で勧める方法を使って行った。具体的に、中間葉幹細胞の培養液にインスリン1g/ml、デキサメタゾン(Dexamethasone、DEXA)1M、イソブチルメチルキサンチン(isobutylmethylxanthine、IBMX)0.5mM及びTRO 2Mを混合して作った脂肪細胞分化用培地(以下、IDXという)を入れて培養し、中間葉幹細胞を脂肪細胞に分化させた。
【0059】
アディポネクチンの発現量を測定するために、分化14日目に前記脂肪細胞分化用培地を採取した後、アディポネクチンELISA Kit(R&D systems、cat.No.DY1065)を利用し、アディポネクチンの量を定量した(各データ値は、対照群で補正した)。アディポネクチンELISA Kitを利用した具体的な測定方法は、次のとおりである。
【0060】
先ず、キャプチャー(Capture)抗体を96−ウェルプレートに反応させ、洗浄バッファ溶液で洗った後、下記表1に示した物質を加えて常温で2時間反応させる。その後、各段階へ移動する度に3回ずつ洗浄(washing)しながら、検出抗体(detection antibody)、HRP酵素(HRP enzyme)、基質溶液(substrate solution)、反応終了溶液(stop solution)を順に加えてプロトコールに示された時間だけ反応させる。最終反応後、分光光度計(Spectrophotometer)を利用して450nmの波長で吸光度を測定する。
【0061】
前記過程を通じて得られた結果を表1に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
前記表1を参照すれば、アディポネクチン発現量確認実験でコウジ酸を処理した場合は、アディポネクチンの発現量が増加しなかった。一方、本発明によって実施例の化学式1の化合物であるヒドロキシピラノン誘導体を処理した場合は、陽性対照群であるグリベンクラミドとほぼ同じように発現量が増加したことが確認できた。これは、従来の脂肪細胞分化促進化合物で処理した場合に比べても顕著に増加された発現量に当たる。
【0064】
したがって、本発明による化学式1のヒドロキシピラノン化合物は、脂肪細胞分化促進能が優れており、これを有効成分として含む化粧料組成物は、皮膚のボリューム及び弾力を増進することができることを確認した。
【0065】
以下、本明細書の一側面による化粧料組成物の剤形例を示す。ただし、本発明によるヒドロキシピラノン化合物を含む化粧料剤形は下記例に限定されない。
【0066】
剤形例1(化粧水)
下記表2に記載された組成で通常の方法によって化粧水を製造した。
【0067】
【表2】
【0068】
剤形例2(ミルクローション)
下記表3に記載された組成で通常の方法によってミルクローションを製造した。
【0069】
【表3】
【0070】
剤形例3(栄養クリーム)
下記表4に記載した組成で通常の方法によって栄養クリームを製造した。
【0071】
【表4】
【0072】
剤形例4(マッサージクリーム)
下記表5に記載された組成で通常の方法によってマッサージクリームを製造した。
【0073】
【表5】
【0074】
剤形例5(パック)
下記表6に記載した組成で通常の方法によってパックを製造した。
【0075】
【表6】