(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構成では、各筐体の厚み方向で略中央にヒンジ軸が配置されている。このため、ヒンジ軸が筐体の表面に張り出すことがないため筐体を薄型化でき、さらに筐体間を0度位置から360度位置まで回動させることで多様な使用モードに変化させることができる。ところが、各筐体の隣接端面は、回動動作時の干渉を避けため、側面視で円弧状に形成されている。その結果、2枚のディスプレイ間に形成される隙間が大きくなり、2枚のディスプレイを1枚の大画面として利用した際、ディスプレイの中央に幅広な分断部分が形成されてしまう。
【0006】
一方、上記特許文献2の構成では、ヒンジ軸が各筐体間の表面に配置されているため、各筐体の隣接端面を平面に構成できる。このため、2枚のディスプレイ間に形成される隙間を小さくでき、2枚のディスプレイを1枚の大画面として利用した際の分断部分を小さくできる。ところが、この構成では、筐体の表面にヒンジによる凹凸形状が形成されるため、筐体が厚くなる。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、それぞれがディスプレイを有した筐体間を回動可能に連結した構成であっても、筐体を薄型化し、さらにディスプレイ間の隙間を低減することができる携帯用情報機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係る携帯用情報機器は、携帯用情報機器であって、第1の筐体と、前記第1の筐体と隣接する第2の筐体と、前記第1及び前記第2の筐体の内面側にそれぞれ設けられた一対のディスプレイと、前記第1及び前記第2の筐体の互いに隣接する一縁部同士を回動可能に連結することで、前記第1及び前記第2の筐体間を、前記一対のディスプレイが並んで配置される平板形態と、前記一対のディスプレイが対向するように重ねて配置される積層形態と、に変化させるヒンジ機構と、を備え、前記ヒンジ機構は、軸方向が前記一縁部に沿って設けられ、前記第1及び前記第2の筐体の並び方向に沿って並列された少なくとも2本のヒンジ軸と、前記並び方向に沿ってスライド可能に前記第1の筐体に支持され、前記第1の筐体に最も近い第1のヒンジ軸を相対回転可能に支持したスライド支持部と、前記第2の筐体に固定され、前記第2の筐体に最も近い第2のヒンジ軸を相対回転可能に支持した固定支持部と、を有する。
【0009】
このような構成によれば、第1及び第2の筐体間の角度位置に応じてヒンジ機構を適宜スライドさせ、筐体間を近接させた位置或いは離間させた位置に設定できる。このため、平板形態では、筐体間を近接させ、各筐体に設けた各ディスプレイの隣接縁部同士を最接近させることができ、ディスプレイ間の隙間を低減できる。これにより、各ディスプレイを1枚の大画面として違和感なく利用できる。さらに、平板形態から積層形態に変化させる際には、ヒンジ機構をスライドさせて筐体間を離間させることで、筐体間を互いに干渉なく円滑に回動させることができる。しかも当該携帯用情報機器では、ヒンジ機構がスライド構造を有するため、ヒンジ機構を筐体の表面に配置する必要がなく実質的に筐体を薄型化できる。
【0010】
前記ヒンジ機構は、前記平板形態では、各ヒンジ軸が前記筐体と重なる位置に配置され、前記積層形態では、少なくとも1本のヒンジ軸が前記第1及び前記第2の筐体の前記一縁部間に形成される隙間から露出した位置に配置される構成としてもよい。そうすると、平板形態では、筐体間を可及的に近接させることができ、しかもヒンジ軸が外観上で目立たないため、外観品質も向上する。さらに、積層形態では、ヒンジ軸が筐体間に形成される隙間から露出することで、筐体間を相互に干渉なく円滑に回動させることができる。
【0011】
前記第1及び前記第2の筐体は、前記一縁部の端面にそれぞれ平面を有し、前記平板形態では、前記第1及び前記第2の筐体は前記端面の前記平面同士が当接する構成としてもよい。そうすると、平板形態において、筐体間を可及的に近接させることができ、それぞれの筐体に搭載されたディスプレイ間も可及的に近接させることができる。
【0012】
前記スライド支持部は、前記第1の筐体に固定されたブラケットと、前記ブラケットに対してスライド可能に支持されたスライド部材と、を有し、前記スライド部材は、前記平板形態では、前記第2の筐体から離間する方向に移動した第1位置に配置され、前記積層形態では、前記第2の筐体に近接する方向に移動した第2位置に配置される構成としてもよい。そうすると、ヒンジ機構のスライド支持部をブラケットとスライド部材を有するユニット構造とすることができ、スライド部材のスライド量やスライド方向が高精度化され、筐体に対する取付作業も容易となる。
【0013】
前記スライド支持部は、さらに、前記スライド部材を前記第1位置で保持する第1保持部と、前記スライド部材を前記第2位置で保持する第2保持部と、を有する構成としてもよい。そうすると、スライド部材のスライド位置を確実に保持しておくことができ、例えば平板形態での使用時にヒンジ機構が誤ってスライドするような誤動作の発生を抑制できる。
【0014】
前記第1保持部は、ラッチ部と、前記ラッチ部を前記第1位置で係止可能な第1係止部と、を有し、前記第2保持部は、前記ラッチ部と、前記ラッチ部を前記第2位置で係止可能な第2係止部と、を有し、前記ラッチ部が、前記スライド部材及び前記ブラケットのうちの一方に設けられ、前記第1係止部及び前記第2係止部が、前記スライド部材及び前記ブラケットのうちの他方に設けられた構成としてもよい。
【0015】
前記第1保持部は、前記スライド部材が前記第1位置にある状態で、前記スライド部材と前記ブラケットとの間を吸着する磁石を有する構成としてもよい。
【0016】
前記スライド支持部は、さらに、前記スライド部材を前記ブラケットに対して前記第1位置から前記第2位置に向かう方向に付勢する弾性部材を有する構成としてもよい。そうすると、筐体間を回動させる際、弾性部材の付勢力によって筐体間を容易に且つ半自動的に離間させることができる。
【0017】
前記ブラケットは、板状部材であり、前記板状部材は、一面が、前記スライド部材の支持面になると共に前記筐体の内面と対向するように配置され、他面が、前記ディスプレイの裏面と対向するように配置された構成としてもよい。そうすると、ヒンジ機構の平坦面であるブラケットの他面と、ディスプレイとの間ヒンジ機構の各部品が配置されない平坦なスペースが形成される。このため、このスペースに電子部品等を効率よく配置できる。
【0018】
少なくとも一方の筐体には、前記平板形態において、前記ヒンジ軸を露出させる開口部が設けられた構成としてもよい。そうすると、平板形態から積層形態に筐体間を回動させる際、ヒンジ機構をスライドさせずに動作を実行することが可能となり、利便性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記態様によれば、それぞれがディスプレイを有した筐体間を回動可能に連結した構成において、筐体を薄型化し、さらにディスプレイ間の隙間を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る携帯用情報機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、一実施形態に係る携帯用情報機器10を閉じた状態での斜視図である。
図2は、
図1に示す携帯用情報機器10を開いた状態での模式的な斜視図である。
図1及び
図2に示すように、携帯用情報機器10は、一対の筐体12A,12Bと、一対のディスプレイ14A,14Bと、一対のヒンジ機構16,16とを備える。本実施形態では携帯用情報機器10として、本のように二つ折りに折り畳み可能なタブレット型PCを例示する。携帯用情報機器10は、携帯電話、スマートフォン又は電子手帳等であってもよい。
【0023】
筐体12A,12Bは、それぞれ四周縁部に側壁を起立形成した矩形の板状部材である。筐体12A,12Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属板や炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板で構成される。筐体12A,12Bの内面12Aa,12Ba側には、ディスプレイ14A,14Bがそれぞれ取り付けられている(
図10も参照)。筐体12A,12Bの内面12Aa,12Baとディスプレイ14A,14Bの裏面14Aa,14Baとの間には、演算装置やメモリ等の各種の電子部品17が収納されている(
図02参照)。
【0024】
図1及び
図2に示すように、ディスプレイ14Aを搭載した筐体12Aと、ディスプレイ14Bを搭載した筐体12Bとは、その一縁部12Ab,12Bb同士がヒンジ機構16によって回動可能に連結されている。本実施形態のヒンジ機構16は、一縁部12Ab,12Bbの長手方向に並んで一対設けられている。各筐体12A,12Bは、一縁部12Ab,12Bbの端面12Ac,12Bcが平面で形成されている。これら端面12Ac,12Bcは、筐体12A,12Bを開いた状態で互いに対面して当接する(
図2参照)。その結果、筐体12A,12Bが一枚板状に形成され、ディスプレイ14A,14Bが略一体化された大画面を形成する。
【0025】
ディスプレイ14A,14Bは、例えばタッチパネル式の液晶ディスプレイである。ディスプレイ14A,14Bは、それぞれ表示面である表面14Ab,14Bbの外周縁部がベゼル部材18で囲まれている。ベゼル部材18は、一縁部12Ab,12Bbに沿う部分が特に幅狭である。これにより、筐体12A,12Bが、
図2に示すように開かれた際、ディスプレイ14A,14Bの隣接縁部14Ac,14Bc同士が極めて近接する。
【0026】
以下、
図1及び
図2に示すように、携帯用情報機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向、一縁部12Ab,12Bbに沿う方向をY方向と呼んで説明する。X方向については、一方の筐体12Aの一縁部12Abから他縁部12Adに向かう方向をX1方向、他方の筐体12Bの一縁部12Bbから他縁部12Bdに向かう方向をX2方向と呼ぶこともある。
【0027】
次に、ヒンジ機構16による筐体12A,12B間の回動動作を説明する。
図3A〜
図3Fは、本実施形態のヒンジ機構16の原理的な構成と、このヒンジ機構16による筐体12A,12Bの回動動作を模式的に示した説明図である。
図3Aは、筐体12A,12B間を開いて第1使用形態(平板形態)とした状態である。
図3Bは、
図3Aに示す状態から筐体12A,12B間を引き離してヒンジ機構16をスライドさせた状態である。
図3Cは、
図3Bに示す状態から一方の筐体12Aを回動させて第2使用形態とした状態である。
図3Dは、
図3Cに示す状態から一方の筐体12Aを他方の筐体12Bの上に閉じて収納形態(積層形態)とした状態である。
図3Eは、
図3Bに示す状態から一方の筐体12Aを回動させて他方の筐体12Bの下に配置して第3使用形態(積層形態)とした状態である。
図3Fは、
図3Bに示す状態から一方の筐体12Aを僅かに持ち上げた状態である。
【0028】
図3A〜
図3Fに示すように、ヒンジ機構16は、複数本のヒンジ軸20a,20b,20c,20dと、スライド支持部22と、固定支持部24と、弾性部材26とを備える。
【0029】
ヒンジ軸20a〜20dは、Y方向に沿って延在した細径円柱状の棒状部材であり、X方向に沿って並んでいる。本実施形態では、4本のヒンジ軸20a〜20dを軸回りに回転可能に、且つ相互に公転可能な状態で連結した構成を例示している。ヒンジ機構16は、2軸以上のヒンジ軸を有していればよい。
【0030】
スライド支持部22は、一方の筐体12Bに対してX方向にスライド可能な状態で支持されると共に、筐体12Bに最も近いヒンジ軸20dと回転可能な状態で連結されている。弾性部材26は、スライド支持部22を他方の筐体12A側(X1側)に向かって常時付勢している。弾性部材26は、例えば圧縮コイルばねである。スライド支持部22は、他方の筐体12Aから離間する方向に移動した第1位置(
図3A参照)と、他方の筐体12Aに近接する方向に移動した第2位置(
図3B〜
図3E参照)とに移動可能である。詳細は後述するが、スライド支持部22は、第1位置及び第2位置のそれぞれでラッチ構造によって保持される。固定支持部24は、他方の筐体12Aに対して固定されると共に、筐体12Aに最も近いヒンジ軸20aと回転可能な状態で連結されている。
【0031】
次に、ヒンジ機構16によって筐体12A,12B間を回動させ、携帯用情報機器10での各形態に変化させる動作を説明する。
図3Aに示す第1使用形態では、携帯用情報機器10は、各筐体12A,12Bが並んで平板状に配置され、各ディスプレイ14A,14Bも並んで一枚板状の大画面を形成したタブレット型PCの使用モード(大画面タブレットモード)となる。この際、ヒンジ機構16は、スライド支持部22が弾性部材26の付勢力に抗して最もX2側に移動した第1位置にあり、各ヒンジ軸20a〜20dが筐体12A,12Bの内側に収容されている。これにより、筐体12A,12B間は、端面12Ac,12Bc同士が当接し、互いに一枚板状に形成されている。その結果、ディスプレイ14A,14Bは、隣接縁部14Ac,14Bc同士が極めて近接し、一体となって大画面を形成する。これによりユーザは、2枚のディスプレイ14A,14Bを一画面として利用できるため、携帯用情報機器10を大画面のタブレット型PCとして使用できる。
【0032】
図3Aに示す第1使用形態から
図3Cに示す第2使用形態、つまりノート型PCの使用モード(ノートモード)に携帯用情報機器10を変化させる場合について説明する。この場合は、先ず、
図3Bに示すように筐体12Aを筐体12Bから引き離す方向に移動させ、スライド支持部22を筐体12Bに対してX1側に相対移動させる。そうすると、筐体12A,12Bの端面12Ac,12Bc間が離間して隙間Gを形成し、各ヒンジ軸20a〜20dがこの隙間Gに露出する。続いて、ヒンジ機構16を介して筐体12Aを筐体12Bに対して回動させ、例えば筐体12A,12B間を90度〜140度程度の角度位置とする。その結果、携帯用情報機器10は、一方の筐体12Bに対して他方の筐体12Aが起立した角度姿勢のノートモードとなる。これによりユーザは、例えば本体側の筐体12Bのディスプレイ14Bに表示されるキーボード装置を利用して、携帯用情報機器10をノート型PCとして使用できる。
【0033】
なお、
図3Bに示す状態では、筐体12A,12Bの厚み等の条件にもよるが、ヒンジ軸20a〜20dのうちの少なくとも1本が隙間Gに露出していれば、その後の回動動作は可能である。
【0034】
図3Cに示す第2使用形態から
図3Dに示す収納形態、つまりディスプレイ14A,14B間を閉じた状態に携帯用情報機器10を変化させる場合について説明する。この場合は、
図3Cに示す第2使用形態から、さらに筐体12Aを回動させる。そして、
図3Dに示すように、筐体12A,12Bのディスプレイ14A,14B同士が対面して積層された状態、つまりクラムシェルを閉じた状態(0度の角度位置)となる。この状態では、各ディスプレイ14A,14Bは、に閉じられた筐体12A,12Bの内側に収納された収納形態となる。このため、携帯用情報機器10は、筐体12A,12Bを小型化しつつ、ディスプレイ14A,14Bを保護した状態で持ち運びや収納を行うことができる。
【0035】
図3Aに示す第1使用形態から
図3Eに示す第3使用形態、つまり筐体12A,12B間を折り畳んだ状態でのタブレット型PCの使用モード(小画面タブレットモード)に携帯用情報機器10を変化させる場合について説明する。この場合は、ノートモードへの変形時と同様に、先ず、
図3Bに示すように筐体12Aを筐体12Bから引き離す。続いて、ヒンジ機構16を介して筐体12Aを筐体12Bに対してノートモードとは逆方向に回動させる。そして、
図3Eに示すように、筐体12A,12Bが、ディスプレイ14A,14B側とは反対側の外面12Ae,12Be同士が対面して積層された状態となると、筐体12A,12B間が360度の角度位置となった小画面タブレットモードとなる。この小画面タブレットモードは、
図3Dに示す収納形態と同様に筐体12A,12Bが小型化された状態でありながらも、ユーザはディスプレイ14A,14Bの一方を利用できる。このため、ユーザは携帯用情報機器10を小画面のタブレット型PCとして使用できる。
【0036】
なお、本実施形態の携帯用情報機器10は、
図3Aに示す第1使用形態時に、
図3Fに示すように筐体12Aを筐体12Bから僅かに持ち上げると、上記したスライド支持部22のラッチ方式による保持状態が解除される。その結果、スライド支持部22が弾性部材26の付勢力によってX1側へと押し出される。これによりユーザは、
図3Aに示す第1使用形態から筐体12A,12B間を
図3Bに示す状態へと容易に変化させることができ、高い操作性が得られる。
【0037】
次に、ヒンジ機構16の具体的な構成例を説明する。
図4は、
図3Aに示す第1使用形態でのヒンジ機構16の状態を示す平面図である。
図5は、
図4に示す状態から筐体12A,12B間を引き離してヒンジ機構16をスライドさせた状態での平面図である。
図6は、
図4に示すヒンジ機構16及びその周辺部の拡大図である。
図7は、
図5に示すヒンジ機構16及びその周辺部の拡大図である。
図8は、
図4に示すヒンジ機構16及びその周辺部の拡大斜視図である。
図9は、
図5に示すヒンジ機構16及びその周辺部の拡大斜視図である。
図4〜
図9では、筐体12A,12Bを中実体として図示し、その一部に凹状部を形成してヒンジ機構16を配設した状態を図示している。但し、筐体12A,12Bは、実際の構成では、上面開口がディスプレイ14A,14Bで閉じられ、内部に電子部品17等が収納された箱体となっている(
図10参照)。
【0038】
図4〜
図9に示すように、各ヒンジ機構16は、ヒンジ軸20a〜20dと、スライド支持部22と、固定支持部24と、弾性部材26と、ブラケット28と、第1保持部30と、第2保持部32とを備える。
図4及び
図5に示すように、各ヒンジ機構16は、X方向及びY方向に直交する平面に対して対称構造である。
【0039】
図6〜
図9に示すように、ヒンジ軸20a〜20dは、それぞれ複数枚がY方向に積層された複数組の連結板34a〜34eによって連結されている。連結板34aは、X1側端部が固定支持部24の固定板36と固定され、X2側端部がヒンジ軸20aを回転可能に支持している。連結板34bは、ヒンジ軸20a,20b間を連結すると共に、ヒンジ軸20a,20bをそれぞれ回転可能に支持している。連結板34cは、ヒンジ軸20b,20c間を連結すると共に、ヒンジ軸20b,20cをそれぞれ回転可能に支持している。連結板34dは、ヒンジ軸20c,20d間を連結すると共に、ヒンジ軸20c,20dをそれぞれ回転可能に支持している。連結板34eは、X2側端部がスライド支持部22のスライド部材38と固定され、X1側端部がヒンジ軸20dを回転可能に支持している。これにより、連結板34a〜34eは、各ヒンジ軸20a〜20dをそれぞれ軸回りに回転可能に支持すると共に、相互に公転可能に連結している。連結板34a〜34eは、ヒンジ軸20a〜20dのY方向両端部にそれぞれ設けられている。
【0040】
スライド支持部22は、ブラケット28に対してスライド可能に支持されたスライド部材38を有する。ブラケット28は、Y方向両端にそれぞれX方向に延びた壁部が起立した板状部材であり、筐体12Bに固定されている。ブラケット28及びスライド部材38は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属板である。スライド部材38には、最もX2側のヒンジ軸20dを支持した連結板34eが固定されている。これによりスライド部材38は、ヒンジ軸20a〜20d及び連結板34a〜34eと共に、筐体12Bに対してX方向にスライド可能である。また、スライド部材38は、連結板34eを介してヒンジ軸20dを相対回転可能に支持している。
【0041】
スライド部材38の略中央には、X方向に延びた矩形のガイド孔38aが形成されている。ガイド孔38a内には、ガイドブロック40及び弾性部材26が配設されている。ガイドブロック40は、ブラケット28に固定されている。これによりスライド部材38は、ガイド孔38aがガイドブロック40に摺動することで、X方向のスライドがガイドされる。弾性部材26は、ガイド孔38aのX1側内面とガイドブロック40のX1側外面との間に掛け渡された圧縮コイルばねである。弾性部材26は、スライド部材38をブラケット28に対してX1方向に常時付勢している。このようにスライド支持部22は、ブラケット28にスライド部材38を支持させたユニット構造となっている。このため、スライド部材38のスライド量やスライド方向が高精度化され、さらに筐体12A,12Bに対する取付作業も容易である。
【0042】
固定支持部24は、筐体12Aに対して固定された固定板36を有する。固定板36には、最もX1側のヒンジ軸20aを支持した連結板34aが固定されている。これにより固定板36は、スライド部材38、ヒンジ軸20a〜20d、連結板34a〜34e及び筐体12Aと共に、筐体12Bに対してX方向にスライド可能である。また、固定板36は、連結板34aを介してヒンジ軸20aを相対回転可能に支持している。本実施形態の場合、固定板36は、一対のヒンジ機構16,16間に亘って延在した長板であり、各ヒンジ機構16の固定支持部24で共用されている(
図4及び
図5参照)。各ヒンジ機構16のそれぞれに専用の固定板36を用いてもよい。
【0043】
第1保持部30は、スライド部材38を最もX2側にスライドした第1位置(
図6参照)で保持し、第1使用形態での使用時に筐体12A,12B間が離間する誤動作を抑制する機構である。第1保持部30は、ラッチ部42と、係止ブロック44に形成された第1係止部44aとを有する。本実施形態の場合、ラッチ部42及び係止ブロック44は、スライド部材38のY方向両端側にそれぞれ設けられている。これら一対のラッチ部42及び係止ブロック44は、X方向及びY方向に直交する平面に対して対称構造となっている。
【0044】
ラッチ部42は、ステンレス等の薄い金属板で形成された板ばねである。ラッチ部42は、X方向に沿って配置された弓形状であり、中央にスライド部材38の外側を向いて突出した係止突起42aが形成されている。係止ブロック44は、ブラケット28に固定された金属や樹脂のブロックである。係止ブロック44は、X方向に延在するように設けられ、X2側端部に第1係止部44aが形成され、第1係止部44aよりもX1側に第2係止部44bが形成されている。第1係止部44a及び第2係止部44bは、係止ブロック44の側面を凹ませた凹状部であり、ラッチ部42の係止突起42aを係止可能である。第1係止部44aと第2係止部44bとのX方向のピッチは、スライド部材38のスライド量と一致している。第1保持部30は、ラッチ部42の係止突起42aが第1係止部44aに係止されることで、スライド部材38を第1位置で保持することができる。
【0045】
第1保持部30は、さらに、磁石46と、被吸着体48とを有する。磁石46及び被吸着体48は、Y方向に並んで一対設けられている。磁石46は、スライド部材38に固定されている。被吸着体48は、磁石46と吸着可能な磁石又は鉄板等であり、ブラケット28に固定されている。磁石46がブラケット28にもうけられ、被吸着体48がスライド部材38に設けられてもよい。第1保持部30は、磁石46が被吸着体48に吸着することで、スライド部材38を第1位置で安定して保持することができる。第1保持部30は、ラッチ部42及び第1係止部44aの組と、磁石46及び被吸着体48の組のうち、一方の組のみで構成されてもよい。
【0046】
第2保持部32は、スライド部材38が最もX1側にスライドした第2位置(
図6参照)で保持し、筐体12A,12B間の回動中に筐体12A,12B間が接近して互いに干渉するような誤動作の発生を抑制する機構である。第2保持部32は、ラッチ部42と、係止ブロック44に形成された第2係止部44bとを有する。第2保持部32は、ラッチ部42の係止突起42aが第2係止部44bに係止されることで、スライド部材38を第2位置で保持することができる。
【0047】
各保持部30,32は、ラッチ部42がブラケット28に設けられ、係止ブロック44がスライド部材38に設けられた構成としてもよい。また、第1保持部30の磁石46及び被吸着体48は、筐体12A,12Bの端面12Ac,12Bcに臨む位置に設けてもよいし、これと併用してもよい(
図4及び
図5中に2点鎖線で示す磁石46及び被吸着体48参照)。
【0048】
従って、このようなヒンジ機構16では、携帯用情報機器10を
図3Aに示す第1使用形態(大画面タブレットモード)とした状態では、
図5、
図6及び
図8に示すように、スライド部材38が最もX2側に移動した第1位置に配置されている。この状態では、第1保持部30を構成するラッチ部42の係止突起42aが第1係止部44aに係止され、さらに磁石46が被吸着体48に吸着している。つまりヒンジ機構16が収縮し、筐体12A,12B間が最も近接した状態となっている。この際、各ヒンジ軸20a〜20dは、筐体12A,12Bの内側に収納されている。
【0049】
第1使用形態から筐体12A,12B間を回動させる場合は、筐体12Aを筐体12Bから引き離す方向に移動させる。そうすると、ラッチ部42の係止突起42aが第1係止部44aから離脱し、磁石46が被吸着体48から離脱する。これにより、スライド部材38が弾性部材26の付勢力を受けてX1側にスライドし、同時に筐体12Aが筐体12Bから離間するようにX1側にスライドする。そして、ラッチ部42の係止突起42aが第2係止部44bに係止されると、第2保持部32によってスライド部材38が第2位置で保持される。つまり、
図3B、
図5、
図7及び
図9に示すように、ヒンジ機構16が伸長し、筐体12A,12B間が最も離間した状態となる。この際、各ヒンジ軸20a〜20dは、筐体12A,12B間に形成された隙間Gに露出している。そこで、その後は、ヒンジ機構16を介して筐体12A,12B間を適宜回動させることで、携帯用情報機器10を第2使用形態、第3使用形態又は収納形態に変化させることができる。
【0050】
なお、本実施形態の携帯用情報機器10において、第1使用形態から筐体12A,12B間を離間させる動作は、
図3Fに示すように筐体12Aを筐体12Bから僅かに持ち上げるだけで実施できる。つまり
図4、
図6及び
図8に示す状態から筐体12A,12B間を多少回動させると、筐体12A,12B間には筐体12Aを筐体12Bに対してX1側に移動させる引き離し力が付与される。これにより筐体12Aが筐体12Bから僅かに離間するため、ラッチ部42の係止突起42aが第1係止部44aから離脱し、磁石46も被吸着体48から離脱する。その結果、弾性部材26の付勢力によってスライド部材38、つまり筐体12AがX1側へと自動的にスライドする。このため、ユーザは、大きな力を使うことなく、筐体12A,12B間を容易に離間させることができる。
【0051】
図10は、携帯用情報機器10の内部構造を模式的に示した側面断面図である。
図10に示すように、本実施形態のヒンジ機構16では、ブラケット28及び固定板36の下面28a,36aにヒンジ軸20a〜20d、連結板34a〜34e、スライド部材38、弾性部材26及び磁石46等が配設されている。なお、
図10に示すように、本実施形態では、筐体12A,12Bに取り付けられた支持プレート49A,49Bの上面でディスプレイ14A,14Bを支持した構成を例示しているが、ディスプレイ14A,14Bの取付構造は他の構造でもよい。
【0052】
従って、ヒンジ機構16は、凹凸形状を構成するヒンジ軸20a〜20dやスライド部材38等の各部品を、ブラケット28及び固定板36と筐体12A,12Bの内面12Aa,12Baとの間に収容している。一方、ブラケット28及び固定板36の上面28b,36bは、ディスプレイ14A,14Bの裏面14Aa,14Baと対向する姿勢で配置されている。これによりヒンジ機構16の平坦面である上面28b,36bとディスプレイ14A,14Bとの間に凹凸形状のないスペースが形成されるため、このスペースに電子部品17等を効率よく配置できる。ブラケット28及び固定板36の上面28b,36bを下面として、筐体12A,12Bの内面12Aa,12Ba上に載置し、ディスプレイ14A,14Bの裏面14Aa,14Baとブラケット28及び固定板36との間に、ヒンジ軸20a〜20dやスライド部材38等の各部品を配置した構成としてもよい。
【0053】
図11は、変形例に係る携帯用情報機器10Aを第1使用形態とした状態で外面12Ae,12Be側から見た平面図である。
図12は、
図11に示す携帯用情報機器10Aを第3使用形態(小画面タブレットモード)に変化させた状態を模式的に示した側面断面図である。
【0054】
この携帯用情報機器10Aは、
図11に示す第1使用形態(大画面タブレットモード)において、筐体12Bのヒンジ軸20a〜20dに重なる部分の外面12Beを切除した開口部50を備える。開口部50は、一縁部12Bb(端面12Bc)側が開口した切欠形状部である。このため、携帯用情報機器10Aでは、
図11に示す第1使用形態から
図12に示す第3使用形態(小画面タブレットモード)に変化させる際、
図3Bに示すような筐体12A,12B間の引き離し動作が不要となる。具体的には、
図11に示す第1使用形態から
図12に示す第3使用形態に向かって筐体12A,12B間を回動させると、ヒンジ機構16は筐体12Bの外面12Beに形成された開口部50を通って各ヒンジ軸20a〜20dが回動するため、各ヒンジ軸20a〜20dが筐体12Bに干渉しない。このため、当該携帯用情報機器10Aは、モード変化時の操作性が一層向上する。
【0055】
以上のように、本実施形態の携帯用情報機器10は、筐体12A,12Bの互いに隣接する一縁部12Ab,12Bb同士を回動可能に連結することで、筐体12A,12B間を、ディスプレイ14A,14Bが並んで配置される平板形態と、ディスプレイ14A,14Bが重ねて配置される積層形態である収納形態或いは第3使用形態とに変化させるヒンジ機構16を備える。このヒンジ機構16は、2本以上のヒンジ軸20a〜20dと、筐体12A,12Bの並び方向に沿ってスライド可能な状態で筐体12Bに支持され、筐体12Bに最も近いヒンジ軸20dを相対回転可能に支持したスライド支持部22と、筐体12Aに固定され、筐体12Aに最も近いヒンジ軸20aを相対回転可能に支持した固定支持部24とを有する。
【0056】
従って、当該携帯用情報機器10は、筐体12A、12B間の角度位置に応じてヒンジ機構16が適宜スライドし、筐体12A,12B間を近接させた位置或いは離間させた位置に設定できる。このため、当該携帯用情報機器10は、
図3A及び
図4に示すように、筐体12A,12B間を開いてディスプレイ14A,14Bを並んで配置した平板形態(第1使用形態)では、筐体12A,12B間を近接させることができる。これにより、ディスプレイ14A,14Bの隣接縁部14Ac,14Bc同士を最接近させ、その間の隙間を低減することができるため、ディスプレイ14A,14Bを1枚の大画面として違和感なく利用できる。さらに、当該携帯用情報機器10は、このような平板形態から積層形態に変化させる際には、ヒンジ機構16をスライドさせて筐体12A,12B間を離間させることで、筐体12A,12B間を互いに干渉なく円滑に回動させることができる。しかも当該携帯用情報機器10では、ヒンジ機構16がスライド構造を有するため、ヒンジ機構16を筐体12A,12Bの表面に配置する必要がない。つまり、ヒンジ機構16が筐体12A,12Bの表面に張り出して凹凸形状を形成しないため、実質的に筐体12A,12Bを薄型化することができる。
【0057】
この際、各筐体12A,12Bは、隣接する端面12Ac,12Bcにそれぞれ平面を有し、
図3Aに示す平板形態では、筐体12A,12Bは端面12Ac,12Bcの平面同士が当接する。このため、平板形態において、筐体12A,12B間を可及的に近接させることができ、ディスプレイ14A,14B間も可及的に近接させることができる。
【0058】
当該携帯用情報機器10は、
図3Aに示す平板形態では、各ヒンジ軸20a〜20dが筐体12A,12Bと重なる位置に配置される。このため、筐体12A,12B間を可及的に近接させることができ、しかもヒンジ軸20a〜20dが目立たないため、外観品質も向上する。さらに、当該携帯用情報機器10は、
図3Dや
図3Eに示す積層形態では、ヒンジ軸20a〜20dが筐体12A,12B間に形成される隙間Gから露出する。このため、ヒンジ機構16は、筐体12A,12Bの隣接する端面12Ac,12Bcが平面で形成されている場合であっても、筐体12A,12B間を円滑に回動させることが可能となっている。
【0059】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0060】
上記では、一対の筐体12A,12Bと一対のディスプレイ14A,14Bを備えた構成を例示したが、それぞれディスプレイが搭載された3体以上の筐体を備えた構成としてもよい。例えば3体構造の筐体の場合、中央の筐体の両側部にそれぞれ筐体がヒンジ機構16を用いて連結された観音開き構造等とすればよい。
【0061】
上記では、筐体12A,12B間を
図3Aに示す第1使用形態から、
図3Dに示す収納形態及び
図3Eに示す第3使用形態へと回動可能な構成を例示した。しかしながら、筐体12A,12B間は、
図3Aに示す第1使用形態から、
図3Dに示す収納形態又は
図3Eに示す第3使用形態のいずれか一方側のみに回動可能な構成であってもよい。