(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分b)により与えられるリンのモル数と、成分c)により与えられるホウ素のモル数とのモル比が、1.4:1〜5.75:1である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
前記ヒドロカルビル酸性ホスフェートが、前記潤滑油組成物の全重量に基づいて0.01重量%〜5重量%の量で成分(b)を製造するために使用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
前記ヒドロカルビル酸性ホスフェートが、前記潤滑油組成物の全重量に基づいて0.1重量%〜2重量%の量で成分(b)を製造するために使用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
前記ヒドロカルビル酸性ホスフェートが、アミルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、ヘキシルアシッドホスフェート、および2−エチルヘキシルアシッドホスフェートからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
前記ヒドロカルビル酸性ホスフェートが、アミルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、およびヘキシルアシッドホスフェートからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
前記成分b)を製造するために、0.2:0.8の前記酸性ホスフェート成分と前記含窒素化合物とのモル比が使用される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
前記成分b)を製造するために、0.4:0.7の前記酸性ホスフェート成分と前記含窒素化合物とのモル比が使用される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
前記含窒素化合物が、成分iii)から選択され、かつモノ−アルケニルスクシンイミド、ビス−アルケニルスクシンイミド、およびポリイソブチレンスクシンイミドからなる群から選択される、請求項1〜23のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
前記含窒素化合物が、オクタデセニルコハク酸無水物とテトラエチレンペンタミンとを反応させることによって調製されるモノ−アルケニルスクシンイミドである、請求項28に記載の潤滑油組成物。
前記基油が、グループIV基油、グループV基油、およびグループIV基油とグループV基油との混合物から選択される、請求項1〜29のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
清浄剤、腐食防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤および摩擦調整剤からなる群から選択される1種以上の成分をさらに含む、請求項1〜32のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
トランスミッションにおけるギアスカッフィングを低減させる方法であって、請求項1〜34のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を用いて前記トランスミッションを潤滑する工程を含む、方法。
【背景技術】
【0002】
先進的な自動車技術では、トランスミッション、ギア、アクスルハードウェアの保護を改善する必要がある。従来のトランスミッション、ギア、およびアクスル潤滑剤は、比較的高濃度の、ハードウェアを保護するための耐摩耗添加剤および極圧添加剤として一般的に使用されている硫黄含有潤滑剤添加剤を含有している。残念なことに、これらの耐摩耗添加剤および極圧添加剤は、望ましくない結果をもたらす一方で、様々な保護を提供することが多い。例えば、高性能の電子部品、ならびにゴムシールは、硫黄含有化合物との相互作用のために通常より早く損傷する可能性がある。その結果、デュアルクラッチトランスミッション、連続無段トランスミッション、電動式トランスミッション、ハイブリッドトランスミッションを含む、トランスミッション、ギア、アクスル潤滑剤に新しい規格が期待されている。新しい規格では、潤滑剤中の硫黄濃度を低くすることが求められている。したがって、有害な硫黄含有添加剤に頼ることなく、十分なハードウェア保護が必要とされている。
【0003】
潤滑剤組成物から硫黄を低減または排除することが望ましいであろう。ホウ素含有化合物は、ギアスカッフィングを改善することができる耐摩耗保護を提供することができる。例えば、場合によっては、ホウ酸が耐摩耗性成分として使用される。しかしながら、ホウ酸は油溶性ではないという欠点を有し、したがって、潤滑剤組成物中にホウ酸を溶解させるためには、潤滑剤製造プロセスにおいて分散剤をホウ酸でキャッピングするなどの特別な工程を実行する必要がある。
【0004】
本開示は、潤滑剤組成物から硫黄を低減または排除しながら、ホウ酸などの油不溶性成分の潤滑剤への溶解を必要としない単純化された製造方法を提供しようとするものである。さらに、本開示は、ホウ酸キャップ分散剤を使用する潤滑剤組成物と比較して改善された性能を有する潤滑剤添加剤の組み合わせを提供する。さらに、本発明の潤滑剤添加剤の組み合わせは、比較的低い処理速度で使用することができる。
【0005】
主要量の潤滑粘度の油と、少なくとも1種のアルカリ金属ホウ酸塩と、少なくとも40%のジヒドロカルビルテトラスルフィドまたはそれ以上の硫化物を有する少なくとも1種のポリスルフィド混合物と、トリヒドロカルビルホスフェートおよびジヒドロカルビルジチオホスフェート誘導体からなる少なくとも1種の非酸性リン化合物と、を含む貯蔵安定性が改善された潤滑組成物は、US2006/0252656(A1)に開示されている。同様に、改善された貯蔵安定性および負荷効果を有する潤滑油組成物がUS2006/0252657(A1)明細書に開示されている。この組成物は下記4つの成分を含む:(1)アルカリ金属ホウ酸塩、(2)油溶性硫黄化合物、(3)トリアルキルホスファイト、および(4)モノチオホスフェートを本質的に含まない、50%を超える中和酸性ホスフェートの混合物。これらの組成物は油不溶性アルカリ金属ホウ酸塩を使用するという欠点を有する。
【0006】
トランスミッション、ギアおよびアクスル潤滑剤に使用される添加剤の多くは多機能性であり、スカッフィング負荷容量、銅腐食性能およびベアリングピッチング性能のような特性間にしばしば競合が生じる。これらの競合は、添加剤を慎重に選択しバランスをとる必要があることを必然的に意味する。したがって、添加剤会社が性能要件を満たすことは困難であることが証明されており、性能しきい値のいずれもが大幅に改善されることはほとんどない。
【0007】
本開示の目的は、トランスミッションの潤滑のための改善された耐摩耗性を提供するために、ヒドロカルビル酸性ホスフェートのアミン塩と油溶性ボレートとを組み合わせることによって硫黄含有化合物に代わるものを提供することである。本開示は、1つ以上の改善されたスカッフィング負荷容量を有する潤滑剤組成物、ならびにトランスミッションを潤滑し、および/またはギアスカッフィングを低減するための潤滑組成物の使用および使用方法を提供することができる。
【0008】
要約および用語
上述のように本開示は、潤滑油組成物であって、一般に、前記潤滑油組成物の全重量に基づいて、a)50重量%を超える基油と、b)0.01重量%〜10重量%の、式(I)
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Rは1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R
1は水素および1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される)のヒドロカルビル酸性ホスフェートと含窒素化合物との反応生成物であって、含窒素化合物は、
i)式(II)の油溶性アミン
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R
2およびR
3はそれぞれ独立して、水素または1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択され、R
4は1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)、
ii)式(III)の油溶性アミン
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
11はそれぞれ独立して、水素および1〜160個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R
9およびR
10は独立して、2〜20個の炭素原子を含有するヒドロカルビレン基から選択され、nは0〜20の整数であり、n>1の場合、各R
10は同一でも異なっていてもよく、各R
11は同一でも異なっていてもよい)、および
iii)ヒドロカルビル置換スクシンイミド、から選択される、反応生成物と、
c)前記潤滑油組成物の全重量に基づいて、式(IV)
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、R
12、R
13およびR
14はそれぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を含有する炭化水素基から選択される)の油溶性ヒドロカルビルボレートと、を含み、式(IV)のヒドロカルビルボレートは少なくとも6個の炭素原子を含有する、潤滑油組成物に関する。
【0017】
前述の各実施形態において、潤滑油組成物は、成分b)によって与えられるリンのモル数と成分c)によって与えられるホウ素のモル数とのモル比が1:1〜10:1、または1.3:1〜6:1、または1.4:1〜5.75:1であってもよい。
【0018】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、R
12、R
13およびR
14は独立して、直鎖アルキル、分岐アルキル、およびシクロアルキルから選択され得る。
【0019】
前述の各実施形態において、ヒドロカルビルボレート成分c)は、トリエチルボレートおよびトリブチルボレートから選択することができる。
【0020】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、ヒドロカルビル酸性ホスフェートは、アミルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、ヘキシルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートからなる群から選択され得る。好ましくは、ヒドロカルビル酸性ホスフェートは、アミルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、およびヘキシルアシッドホスフェートからなる群から選択され得る。
【0021】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、ヒドロカルビル酸性ホスフェートは、潤滑油組成物の全重量に基づいて0.01重量%〜5重量%、または0.1重量%〜2重量%、または0.15重量%〜1.5重量%の量で、成分(b)を製造するための反応物として使用され得る。
【0022】
前述の各実施形態のそれぞれにおいて、含窒素化合物は、少なくとも8個の炭素原子を含有する式(II)のアミンから選択されてもよい。
【0023】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、成分b)は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、0.1重量%〜5重量%、または0.5重量%〜4重量%、または0.75重量%〜3.75重量%の量で存在してもよい。
【0024】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、成分b)は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、50ppm〜1500ppmのリンを与える量で存在してもよく、前述の実施形態のそれぞれにおいて、成分b)は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、300ppm〜1500ppmのリンを与える量で存在してもよく、または前述の実施形態のそれぞれにおいて、成分b)は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、900ppm〜1200ppmのリンを与える量で存在してもよい。
【0025】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、成分c)は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、5ppm〜400ppmのホウ素を与える量で存在してもよく、または前述の実施形態のそれぞれにおいて、成分c)は、潤滑油組成物の全重量に基づいて10ppm〜350ppmのホウ素を与える量で存在してもよく、前述の実施形態のそれぞれにおいて、成分c)は、潤滑油組成物の全重量に基づいて55ppm〜375ppmのホウ素を与える量で存在してもよい。
【0026】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、成分b)を作製するために、0.2:0.8の酸性ホスフェート成分と含窒素化合物とのモル比を用いることができ、または前述の実施形態のそれぞれにおいて、成分b)を作製するために、0.4:0.7の酸性ホスフェート成分と含窒素化合物とのモル比を用いることができる。
【0027】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、Rは、1〜10個の炭素原子、または1〜6個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり得、R
1は、水素および1〜10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基から選択され得る。
【0028】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、Rは1〜6個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり得、R
1は水素であり得る。
【0029】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、含窒素化合物は、R
2は水素であるか、またはR
2およびR
3は水素である、式(II)のアミンから選択されてもよく、または、前述の実施形態のそれぞれにおいて、含窒素化合物は、n=0であり、R
9は2〜20個の炭素原子を含むヒドロカルビレン基である、式(III)のアミンから選択されてもよく、または、前述の実施形態のそれぞれにおいて、含窒素化合物は、nが2〜5であり、R
5〜R
8およびR
11が水素であり、R
9およびR
10が2個の炭素原子を含むヒドロカルビレン基である、式(III)のアミンから選択されてもよく、または、前述の実施形態のそれぞれにおいて、含窒素化合物は、モノ−アルケニルスクシンイミド、ビス−アルケニルスクシンイミド、およびポリイソブチレンスクシンイミドからなる群から選択されてもよく、または前述の実施形態のそれぞれにおいて、含窒素化合物は、オクタデセニル無水コハク酸とテトラエチレンペンタミンとの反応により調製されるモノ−アルケニルスクシンイミドであり得る。
【0030】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、基油は、少なくとも90%の飽和分を有するグループIIの基油、少なくとも90%の飽和分を有するグループIIIの基油、グループIVの基油、またはグループVの基油またはこれらの基油の2種以上の混合物から選択してよく、または前述の実施形態のそれぞれにおいて、基油はグループIIIの基油であってもよく、または前述の実施形態のそれぞれにおいて基油はグループIVの基油であってもよく、前述の実施形態のそれぞれにおいて、基油は、グループVの基油であってもよく、前述の実施形態のそれぞれにおいて、基油は、グループIIIの基油、グループIVの基油およびグループVの基油のうちの2種以上の混合物であってよい。
【0031】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、組成物はさらに無灰分散剤を含んでもよい。これらの実施形態では、無灰分散剤はボレート化および/またはホスホリレート化されていてもよい。
【0032】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、組成物は、洗浄剤、腐食防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤および摩擦調整剤からなる群から選択される1つ以上の任意成分をさらに含んでもよい。
【0033】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、潤滑組成物はトランスミッション液であり得る。
【0034】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、潤滑組成物はギアオイルであり得る。
【0035】
別の実施形態では、本発明は、前述の潤滑油組成物のいずれか1つを用いてトランスミッションを潤滑する工程を含む、トランスミッション内のギアスカッフィングを低減するための方法に関する。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、前述の潤滑油組成物のいずれか1つを用いてトランスミッションを潤滑する工程を含む、トランスミッションの運転方法に関する。
【0037】
本開示のさらなる特徴および利点は、以下の説明に部分的に記載されてもよく、および/または本開示の実施によって習得されてもよい。本開示の特徴および利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘されている要素および組み合わせによってさらに実現および達成することができる。
【0038】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方は例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載されているように本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【0039】
本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために、以下の用語の定義を提供する。
【0040】
用語「油組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物」、「完全配合潤滑剤組成物」、「潤滑剤」および「トランスミッション液」は、多量の基油と少量の添加剤組成物とを含む最終潤滑製品を指す。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、「添加剤組成物」、および「トランスミッション液添加剤パッケージ」は、主要量の基油ストック混合物を除く潤滑油組成物の部分を指す。
【0042】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、その通常の意味で使用され、それは当業者に周知である。具体的には、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、主に炭化水素の性質を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は独立して、炭化水素置換基、およびハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素および窒素のうちの1つ以上を含む置換炭化水素置換基から選択され、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子ごとに2個以下の非炭化水素置換基が存在する。
【0043】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドロカルビレン置換基」または「ヒドロカルビレン基」はその通常の意味で使用され、それは当業者に周知である。具体的には、それは、炭素原子によって分子の2つの位置で分子の残りの部分に直接結合し、主に炭化水素の性質を有する基を指す。各ヒドロカルビレン基は、独立して、二価炭化水素置換基、およびハロ基、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素および窒素を含む置換二価炭化水素置換基から選択され、およびヒドロカルビレン基中の10個の炭素原子ごとに2個以下の非炭化水素置換基が存在する。
【0044】
本明細書で使用されるとき、用語「重量パーセント」は、他に明示的に述べられていない限り、列挙された成分が組成物全体の重量に対して表すパーセンテージを意味する。
【0045】
本明細書で使用される用語「可溶性」、「油溶性」、または「分散性」は、必ずしもそうとは限らないが、化合物または添加剤が可溶性、溶解性、混和性、またはあらゆる割合で油中に懸濁できることを示す。しかしながら、前述の用語は、それらが、例えば、油が使用される環境においてそれらの意図する効果を発揮するのに十分な程度まで、油に可溶性、懸濁性、溶解性、または安定に分散性であることを意味する。さらに、他の添加剤の追加の配合は、所望ならば、より高レベルの特定の添加剤の配合も可能にし得る。
【0046】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、約1〜約200個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、および/または置換飽和鎖部分を指す。
【0047】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、約3〜約30個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状および/または置換不飽和鎖部分を指す。
【0048】
本明細書で使用される用語「アリール」は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、および/または窒素、および酸素を含むがこれらに限定されないヘテロ原子を含み得る単環および多環芳香族化合物を指す。
【0049】
本明細書で使用される用語「ヒドロカルビレン基」は、炭化水素の2つの異なる炭素のそれぞれから1つの水素原子を除去することによって形成されるジラジカルを指す。
【0050】
「機能液」とは、トラクター作動油、オートマチックトランスミッション液、連続無段トランスミッション液、マニュアルトランスミッション液、電気自動車液、およびハイブリッドトランスミッション液を含むパワートランスミッション液、トラクター作動油、一部のギアオイル、パワーステアリング用作動油、風力タービンで使用される作動油、コンプレッサ、一部の工業用作動油、およびパワートレイン部品に関連する作動油を含む作動油、を含むがこれらに限定されない様々な流体を包含する用語である。例えばオートマチックトランスミッション液のようなこれらの流体の各々の中には、著しく異なる機能特性の流体の必要性を生じさせる、異なる設計を有する様々なトランスミッションのために、様々な異なる種類の流体があることに留意すべきである。これは、動力を生成または伝達するために使用されない「潤滑流体」という用語とは対照的である。
【0051】
本開示を通して、用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、「含有する(contain)」などは、制限のないものと見なされ、明示的に列挙されていない任意の要素、工程、または成分を含むことと理解されたい。「から本質的になる」という語句は、明示的に列挙された任意の要素、工程、または成分、ならびに本発明の基本的および新規な態様に実質的に影響を及ぼさない任意のさらなる要素、工程、または成分を含むことを意味する。本開示はまた、用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、「含有する(contain)」を使用して記載された任意の組成物もまた、その具体的に列挙された成分「から本質的になる」または「からなる」同じ組成物の開示を含むと解釈されるべきであることを企図する。
【0052】
本開示のさらなる詳細および利点は、以下の説明に部分的に記載され、かつ/または本開示の実施によって習得され得る。本開示の詳細および利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘される要素および組み合わせによって実現され達成され得る。前述の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方は例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載されているように本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本明細書に開示されるのは、潤滑油組成物であって、前記潤滑油組成物の全重量に基づいて、
a)50重量%を超える基油と、
b)0.01重量%〜10重量%の式(I)
【0055】
(式中、Rは1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R
1は水素および1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される)のヒドロカルビル酸ホスフェートと、
含窒素化合物との反応生成物であって、前記含窒素化合物は、
i)式(II)
【0057】
(式中、R
2およびR
3はそれぞれ独立して、水素または1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択され、R
4は1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)の油溶性アミン、および、
ii)式(III)
【0059】
(式中、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
11はそれぞれ独立して、水素および1〜160個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、
R
9およびR
10は独立して、2〜20個の炭素原子を含有するヒドロカルビレン基から選択され、nは0〜20の整数であり、n>1の場合、各R
10は同一でも異なっていてもよく、および各R
11は同一でも異なっていてもよい)の油溶性アミン、および
iii)少なくとも一つのアミン基を含む、ヒドロカルビル置換スクシンイミド、から選択される、反応生成物と、
c)式(IV)
【0061】
(式中、R
12、R
13およびR
14はそれぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択される)の油溶性ヒドロカルビルボレートと、を含み、式(IV)のヒドロカルビルボレートは少なくとも6個の炭素原子を含有する、潤滑油組成物である。
【0062】
基油
本開示によるトランスミッション液組成物、ギアオイルおよびアクスル潤滑剤などの潤滑油の配合に使用するのに適した基油は、適切な潤滑粘度を有する任意の適切な合成油もしくは天然油またはそれらの混合物から選択され得る。天然油としては、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)、ならびに液体石油および溶剤処理または酸処理されたパラフィン、ナフテンまたは混合パラフィン−ナフテン型の鉱物系潤滑油などの鉱物系潤滑油が挙げられ得る。石炭または頁岩から誘導された油もまた適切であり得る。基油は、100℃で2〜15cSt、またはさらなる例として2〜10cStの粘度を有することができる。さらに、気液プロセスから誘導された油も適している。
【0063】
適切な合成基油としては、ジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコールおよびアルコール、ポリブテンを含むポリ−α−オレフィン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ならびにポリシリコーン油が挙げられ得る。合成油には、重合オレフィンおよび共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマーなど)、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ−(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)など、およびそれらの混合物、アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ−ノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)ベンゼンなど)、ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニルなど)、アルキル化ジフェニルエーテルおよびその誘導体、類似体および同族体など、の炭化水素油が含まれる。
【0064】
末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などによって修飾されているアルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマーならびにそれらの誘導体は、使用され得る別の種類の既知の合成油を構成する。このような油としては、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合によって製造された油、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルエーテルおよびアリールエーテル(例えば、1000の平均分子量を有するメチル−ポリイソプロピレングリコールエーテル、分子量500〜1000を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量1000〜1500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)またはそのモノ−およびポリカルボン酸エステル、例えば、酢酸エステル、混合C
3−C
8脂肪酸エステル、またはテトラエチレングリコールのC
13オキソ酸ジエステル、によって例示される。
【0065】
使用され得る別の種類の合成油は、ジカルボン酸と(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)と様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルが挙げられる。これらのエステルの具体例としては、ジブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ−n−ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸とを反応させることによって形成される複合エステルなどが含まれる。
【0066】
合成油として有用なエステルには、C
5〜C
12モノカルボン酸ならびにポリオールおよびポリオールエーテル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなど、から作製されるものも含まれる。
【0067】
したがって、本明細書に記載のトランスミッション液組成物を製造するのに使用できる基油は、単一の基油でも2種以上の基油の混合物でもよい。特に、1種以上基油は、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesに明記されているように、グループI〜V内の基油のいずれかから望ましくは選択することができる。そのような基油群は以下の通り表1に示される。
【0069】
一変形形態では、前述の実施形態のそれぞれにおいて、基油は、少なくとも90%の飽和分を有するグループIIの基油、少なくとも90%の飽和分を有するグループIIIの基油、グループIVの基油、グループVの基油、または2種以上のこれらの基油の混合物から選択できる。あるいは、基油は、グループIIIの基油、もしくはグループIVの基油、もしくはグループVの基油であってよく、また基油は、グループIIIの基油、グループIVの基油およびグループV基油のうちの2種以上の混合物であってよい。
【0070】
基油は、少量または多量のポリ−アルファ−オレフィン(PAO)を含有してもよい。典型的には、ポリ−アルファ−オレフィンは、4〜30個、または4〜20個、または6〜16個の炭素原子を有するモノマーから誘導される。有用なPAOの例には、オクテン、デセン、それらの混合物などから誘導されたものが含まれる。PAOは、100℃で2〜15、または3〜12、または4〜8cStの粘度を有し得る。PAOの例には、100℃で4cStのポリ−アルファ−オレフィン、100℃で6cStのポリ−アルファ−オレフィン、およびそれらの混合物が含まれる。鉱油と前述のポリ−アルファ−オレフィンとの混合物を使用することができる。
【0071】
基油は、フィッシャー−トロプシュ合成炭化水素から誘導された油であってよい。フィッシャー−トロプシュ合成炭化水素は、フィッシャー−トロプシュ触媒を使用して、H
2およびCOを含有する合成ガスから製造される。そのような炭化水素は典型的には基油として有用であるためにさらなる処理を必要とする。例えば、炭化水素は、米国特許第6,103,099号または第6,180,575号に開示されている方法を用いて水素異性化でき、米国特許第4,943,672号または第6,096,940号に開示されている方法を用いて水素化分解および水素化異性化でき、米国特許第5,882,505号に開示された方法を用いて脱ロウでき、または米国特許第6,013,171号、第6,080,301号または第6,165,949号に開示されている方法を用いて水素異性化および脱ロウできる。
【0072】
上に開示した種類の、天然のまたは合成の(ならびにこれらのうちの任意の2つ以上の混合物の)、未精製油、精製油、および再精製油を基油に使用することができる。未精製油は、さらなる精製処理なしに天然または合成供給源から直接得られるものである。例えば、乾留処理操作から直接得られたシェールオイル、一次蒸留から直接得られた石油、またはエステル化プロセスから直接得られおよびさらに処理することなく使用されたエステル油は未精製油であろう。精製油は、それらが1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製工程でさらに処理されていることを除いて、未精製油と同様である。溶剤抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、ろ過、浸透などの多くのそのような精製技術が当業者に知られている。再精製油は、既に使用された精製油に適用される精製油を得るために使用されるものと同様の方法によって得られる。そのような再精製油は再生油または再処理油としても知られており、使用済み添加剤、汚染物質、および油分解生成物の除去を目的とした技術によってさらに加工されることが多い。
【0073】
基油は、本明細書の実施形態に開示されるような添加剤組成物と組み合わされて、マルチビークルトランスミッション液組成物を提供し得る。したがって、基油は、本明細書に記載の流体組成物中に、潤滑油組成物の全重量に基づいて、30重量%超〜95重量%、例えば40重量%〜90重量%、および50重量%超の範囲の量で存在してもよい。
【0074】
含窒素化合物とヒドロカルビル酸性ホスフェートとの反応生成物
この潤滑組成物は、0.01重量%〜10重量%の含窒素化合物と酸性ホスフェートとの反応生成物を含有する。これらの反応生成物は、少なくとも1種のヒドロカルビルアミンと少なくとも1種のヒドロカルビル酸性ホスフェートの塩であり得る。そのような塩の例は、米国特許第5,354,484号および第5,763,372号に教示されているもののようなリン酸エステルの油溶性アミン塩を含むことができ、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。リン酸エステルのアミン塩は、リン酸エステルをアミンまたはアンモニアと反応させることによって調製することができる。塩は別々に形成することができ、次いでリン酸エステルの塩を潤滑組成物に添加することができる。
【0075】
本開示のアミン塩は、式(I)のヒドロカルビル酸性ホスフェートと、式(II)および(III)のアミンから選択される少なくとも1種のアミン化合物との反応によって調製することができる。例えば、油溶性アミン塩は、室温以上でリン酸エステルとアミンとを混合することによって調製することができる。一般に、室温で最大約1時間の期間混合することで十分である。本開示の塩を形成するためにリン酸エステルと反応したアミンの量は、リン酸1当量あたり少なくとも1当量のアミン(窒素基準)であり、当量比は一般に約1である。
【0076】
このようなアミン塩の製造方法はよく知られておりそして文献に報告されている。例えば、米国特許第2,063,629号、第2,224,695号、2,447,288号、2,616,905号、3,984,448号、4,431,552号、5,354,484号、Pesin et al,Zhurnal Obshchei Khimii,Vol,31 No.8,pp.2508−2515(1961)、およびPCT国際出願公開第WO87/07638号を参照されたい、これらのすべての開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
あるいは、塩は、添加剤濃縮物または完全に配合された組成物自体を形成する際の酸性リン酸エステルを上述のアミンと混合するときにその場で形成され得る。
【0078】
ヒドロカルビル酸性ホスフェートのアミン塩は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、50〜1500ppmのリン、または300〜1500ppmのリン、または900〜1200ppmのリンを与えるのに十分な量で存在してもよい。
【0079】
ヒドロカルビル酸性ホスフェート
本開示の反応生成物成分(b)を製造するために使用されるヒドロカルビル酸性ホスフェートは、式(I)によって表され、
【0081】
式中、Rは1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R
1は水素および1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。
【0082】
一態様では、Rは1〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R
1は水素および1〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。別の態様では、RおよびR
1は独立して、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。別の態様では、Rは1〜6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択され、R
1は水素および1〜6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。別の態様では、Rは1〜6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R
1は水素である。
【0083】
式(I)の化合物を調製する例示的な方法は、少なくとも1種の式ROH(式中、Rはヒドロカルビル基であってよい)のヒドロキシ化合物と、式P
2O
5のリン化合物とを反応させることを含む。このようにして得られるリン化合物は、リン化合物の混合物であってよく、および一般にモノ−およびジヒドロカルビル置換リン酸の混合物である。
【0084】
本開示のリン酸エステルの調製に使用されるヒドロキシ化合物は、式ROH(式中、Rはヒドロカルビル基であってよい)によって特徴付けることができる。リン化合物と反応したヒドロキシ化合物は式ROH(式中、ヒドロカルビル基Rは約1〜約30個の炭素原子を含むことができる)のヒドロキシ化合物の混合物を含むことができ、しかしながら、最終的に調製される置換リン酸エステルのアミン塩が本開示の潤滑組成物に可溶であることが必要である。一般に、R基は少なくとも約1個の炭素原子、例えば約1〜約30個の炭素原子を含有するであろう。
【0085】
R基は、アルキル、アリール、アルカリール、および脂環式炭化水素基などの脂肪族または芳香族であり得る。式ROHの有用なヒドロキシ化合物の非限定的な例には、例えば、エチルアルコール、イソプロピル、n−ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、2−エチル−ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、アミルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、メチルシクロヘキサノールおよびアルキル化ナフトールなどが含まれる。
【0086】
一態様では、アルコールROHは脂肪族アルコールであってよく、例えば少なくとも約4個の炭素原子を含有する第一脂肪族アルコールであってよい。したがって、本開示において有用であり得る例示的な一価アルコールROHの例としては、アミルアルコール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール、2−メチルブタノール、および2−メチル−1−プロパノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、フィトール、ミリシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールが挙げられる。
【0087】
別の態様では、ROHは、少なくとも約4個の炭素原子を含有する第二脂肪族アルコールであり得る。したがって、第二脂肪族アルコールの非限定的な例には、イソプロパノール、イソオクタノール、2−ブタノール、およびメチルイソブチルカルビノール(4−メチル−1−ペンタン−2−オール)が含まれる。市販のアルコール(混合物を含む)も本明細書では企図されており、これらの市販のアルコールは、本明細書では特定されていないが本開示の主な目的を損なわないアルコールの少量を含むことができる。
【0088】
さらなる態様では、第一アルコールの混合物、第二アルコールの混合物、および第一/第二アルコールの混合物を含むがこれらに限定されないアルコールの混合物を使用することができる。
【0089】
反応中のヒドロキシ化合物ROHとリン反応物P
2X
5のモル比は、約1:1〜約4:1の範囲内、例えば約3:1であり得る。反応は、約50℃を超える温度から任意の反応物または所望の生成物の組成物温度までのような高温で2つの反応物を単に混合することによって行うことができる。一態様では、温度は約50℃〜約150℃の範囲であってよく、そして最も頻繁には約100℃未満であり得る。反応は、温度制御および反応物の混合を容易にする溶剤の存在下で実施することができる。溶剤は、一方または両方の反応物が可溶性であるか、または生成物が可溶性である任意の不活性の液状物質であり得る。そのような溶剤には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ナフサ、ジエチルエーテルカルビトール、ジブチルエーテルジオキサン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、四塩化炭素またはクロロホルムが含まれる。
【0090】
上記反応の生成物は酸性であるが、その化学構造は正確には分かっていない。しかしながら、この生成物は主にリン酸のモノ−およびジエステルからなる酸性ホスフェートの混合物であり、そのエステル基はアルコールROHから誘導される証拠が示されている。例えば、ヒドロカルビル酸性ホスフェートは、以下のものの混合物であり得る。
【0092】
式中、RおよびR
1は上記の通りである。
【0093】
好ましいヒドロカルビル酸性ホスフェートとしては、アミルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、ヘキシルアシッドホスフェート、および2−エチルヘキシルアシッドホスフェートが挙げられる。より好ましくは、ヒドロカルビル酸性ホスフェートは、アミルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、およびヘキシルアシッドホスフェートを含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、ヒドロカルビル酸性ホスフェートは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、0.01重量%〜5重量%、または0.1重量%〜2重量%、または0.15重量%〜1.5重量%の量で成分(b)を製造するための反応物として使用され得る。
【0095】
含窒素化合物
本開示によれば、1個以上の第一、第二もしくは第三アミノ基を含有する任意の適切なアミンもしくはポリアミン、またはヒドロカルビル置換スクシンイミドを使用して反応生成物(b)を製造することができる。一実施形態では、アミンは式(II)のアミンであってよく、
【0097】
式中、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素または1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択され、およびR
4は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0098】
一実施形態では、アミンは、R
2が水素であり、R
3およびR
4が独立して、1〜20個の炭素原子、または2〜18個の炭素原子、または4〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される式(II)のモノアミンであり得る。別の実施形態において、R
2およびR
3は水素であり、R
4は1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。好ましい態様において、R
2、R
3、およびR
4からの炭素原子の合計数は少なくとも8個の炭素原子である。特に好適なヒドロカルビル基は、直鎖状または分岐状アルキル基であってよい。
【0099】
一態様では、式(II)のモノアミンは、第一、第二第三アミノ基を含んでよい。
【0100】
別の実施形態では、アミンは式(III)のアミンであってよく、
【0102】
式中、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
11はそれぞれ独立して、水素および1〜160個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R
9およびR
10は独立して、2〜20個の炭素原子を含有するヒドロカルビレン基から選択され、nは0〜20の整数であり、n>1の場合、各R
10は同一でも異なっていてもよく、各R
11は同一でも異なっていてもよい。他の実施形態では、n=0である。
【0103】
別の態様では、式(III)のアミンは、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
11はそれぞれ独立して、水素および1〜160個の炭素原子を含むヒドロカルビル基から選択され、R
9およびR
10は独立して、2〜20個の炭素原子を含有するヒドロカルビレン基から選択され、nは1〜20の整数であり、n>1の場合、各R
10は同一でも異なっていてもよく、各R
11は同一でも異なっていてもよい、ポリアミンであってよい。
【0104】
別の実施形態では、nは1〜20の整数であり、R
11はアミノ基で置換されているヒドロカルビルである。式(III)のポリアミンは、少なくとも2個のアミノ基を含み、および第一、第二、および第三アミノ基の少なくとも1個、またはそれらの混合物を含むことができる。
【0105】
別の実施形態では、含窒素化合物は、ヒドロカルビル置換スクシンイミドが少なくとも1個のアミン基を含む、ヒドロカルビル置換スクシンイミドであってよい。好ましくは、ヒドロカルビル置換スクシンイミドは、モノ−アルケニルスクシンイミド、ビス−アルケニルスクシンイミド、およびポリイソブチレンスクシンイミドからなる群から選択される。
【0106】
ヒドロカルビル置換スクシンイミドは、ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはその無水物とポリアミンとを反応させることによって調製することができる。ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはその無水物のヒドロカルビル部分は、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有しおよび主に炭化水素の性質を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、炭化水素置換基、およびハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素および窒素のうちの1つ以上を含む置換炭化水素置換基から独立に選択され、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子ごとに2個以下の非炭化水素置換基が存在する。
【0107】
好ましい実施形態では、ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはその無水物のヒドロカルビル部分は、アルケン、例えばイソブチレンなどのブテンポリマーから誘導することができる。本明細書に用いるのに好適なポリイソブテンには、少なくとも60%、例えば70%〜90%以上の末端ビニリデン含有量を有するポリイソブチレンまたは高反応性ポリイソブチレンから形成されるものが含まれる。適切なポリイソブテンは、BF
3触媒を用いて調製されたものを含み得る。ポリアルケニル置換基の平均数分子量は、上記のようにゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される、例えば100〜5000、例えば500〜5000の広い範囲にわたって、変化し得る。
【0108】
ジカルボン酸またはその無水物は、無水マレイン酸以外のカルボン酸反応物、例えばマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、無水エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸など、から選択することができ、対応する酸ハロゲン化物およびC
1−C
4脂肪族エステルを含む。ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはその無水物を製造するために使用される反応混合物中のジカルボン酸またはその無水物とヒドロカルビル部分とのモル比は、広く変更できる。したがって、モル比は5:1〜1:5、例えば3:1〜1:3に変更できる。ジカルボン酸または無水物とヒドロカルビル部分との特に好適なモル比は1:1〜1.6:1未満である。
【0109】
ヒドロカルビル置換スクシンイミドを調製するために、任意の多数のポリアミンを使用することができる。非限定的な例示的ポリアミンとしては、アミノグアンジンビカーボネート(AGBC)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン9TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)および重質ポリアミン(heavy polyamine)が挙げられ得る。重質ポリアミンは、TEPAおよびPEHAなどの少量のポリアミンオリゴマーを有するが、主に1分子あたり7個以上の窒素原子、2個以上の第一アミン、および従来のポリアミン混合物よりも広範な分岐を有するポリアルキレンポリアミンの混合物を含み得る。ヒドロカルビル置換スクシンイミドを調製するために使用され得るさらなる非限定的ポリアミンは、米国特許第6,548,458号に開示されており、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。この開示の一実施形態では、ポリアミンはテトラエチレンペンタミン(TEPA)から選択することができる。
【0110】
一実施形態では、ヒドロカルビル置換スクシンイミドは、C
9−C
20アルケニルコハク酸無水物とポリアミン、例えば、オクタデセニルコハク酸無水物とテトラエチレンペンタミンから調製することができる。別の実施形態では、ヒドロカルビル置換スクシンイミドはアルケニルスクシンイミドおよびポリイソブチレンスクシンイミドを含む。
【0111】
適切なアミンとしては、エチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ブチレンポリアミン、またはそれらの混合物などの脂肪族ポリアミンが挙げられる。一実施形態では、脂肪族ポリアミンはエチレンポリアミンであってよい。一実施形態において、脂肪族ポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ビス−2−エチルヘキシルアミン、ポリアミンスチルボトムス(polyamine still bottoms)、ジプロピレントリアミン、ジ−(1−2−ブチレン)トリアミン、テトラ−(1,2−プロピレン)ペンタミン)、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。ポリアミンスチルボトムスは商品名E100(商標)で販売されている。他の適切なアミンは、2−エチルヘキシルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、およびC
9−C
20の分岐第一アミン、例えばPrimene(商標)81−R、高度に分岐したアルキル鎖を有する第一脂肪族アミンである。そのような脂肪族ポリアミンは各末端に第一アミン基を有するので、それらはモノ−アルケニルスクシンイミドおよびビスアルケニルスクシンイミドを形成することができる。他の適切なアミンとしては、その中に第三アルキル基を有するC
9−C
15第一アミンが挙げられる。市販のエチレンポリアミン混合物は、少量の分岐種および環状種例えばN−アミノエチルピペラジン、N、N’−ビス(アミノエチル)ピペラジン、N、N’−ビス(ピペラジニル)エタン、C
9〜C
20分岐第一アミン(例えば、Primene(商標)81−R)および類似の化合物を含有し得る。
【0112】
好ましくは、0.2:0.8、または0.4:0.7の酸性ホスフェート成分と含窒素化合物とのモル比が、反応生成物を製造するために使用される。ある場合には、モル過剰の含窒素化合物を用いて反応生成物を製造することにより、潤滑組成物中の未反応の酸性ホスフェートを最小にすることが望ましく可能である。
【0113】
油溶性ヒドロカルビルボレート
本開示の油溶性ヒドロカルビルボレート(c)は、式(IV)で表すことができ、
【0115】
式中、R
12、R
13およびR
14はそれぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を含有する炭化水素基から選択され、式(IV)のヒドロカルビルボレートは少なくとも6個の炭素原子を含有する。好ましくは、各炭化水素基は、直鎖状、分岐状、飽和、および不飽和であり得る。適切な炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基が挙げられ得るが、これらに限定されない。特に好適な炭化水素基は、直鎖状または分岐状アルキル基であり得る。いくつかの実施形態では、R
12、R
13およびR
14は独立して、直鎖状アルキル、分岐状、アルキル、およびシクロアルキル基から選択される。
【0116】
適切なヒドロカルビルボレートとしては、トリアルキルボレート、例えば、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリブチルボレート、トリ−s−ブチルボレート、トリ−イソブチルボレート、トリ−t−ブチルボレート、トリアミルボレート、トリヘキシルボレート、トリフェニルボレート、トリベンジルボレートなどが挙げられる。
【0117】
油溶性ヒドロカルビルボレートは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、5ppm〜400ppmのホウ素、または55ppm〜375ppmのホウ素を与える量で存在する。本明細書の潤滑油組成物は、1:1〜10:1、または1.3:1〜6:1、または1.4:1〜5.75:1の、成分b)から与えられるリンのモル数と成分c)から与えられるホウ素のモル数のモル比を有することができる。
【0118】
摩擦調整剤
トランスミッション液組成物に添加することができる他の成分は摩擦調整剤である。摩擦調整剤は、低滑り速度で表面(例えば、トルクコンバータクラッチまたはシフトクラッチの部材)間の摩擦を減少または増加させるために、本明細書に記載されるようなトランスミッション液組成物に使用される。典型的には、望ましい結果は、正の勾配を有する摩擦対速度(μ−v)曲線であり、これは順に、「スティックスリップ」挙動(例えば、シャダー、ノイズ、そして激しいシフト)を最小にする滑らかなクラッチ係合をもたらす。
【0119】
摩擦調整剤としては、脂肪族アミンまたはエトキシル化脂肪族アミン、エーテルアミン、アルコキシル化エーテルアミン、サルコシン化合物、脂肪族脂肪酸アミド、アシル化アミン、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、ポリオールエステル、脂肪族カルボン酸エステル−アミド、イミダゾリン、第三アミン、脂肪族ホスホネート、脂肪族ホスフェート、脂肪族チオホスホネート、脂肪族チオホスフェートなどのような化合物が挙げられ、化合物を適切に油溶性にするために、脂肪族基は通常1個以上の炭素原子を含む。さらなる例として、脂肪族基は8個以上の炭素原子を含み得る。1種以上の脂肪族コハク酸または無水物をアンモニア第一アミンと反応させることによって形成される脂肪族置換スクシンイミドもまた適切である。
【0120】
摩擦調整剤は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、50〜800重量ppm、望ましくは150〜500重量ppmの窒素をトランスミッション液組成物に供給するのに十分な量でトランスミッション液組成物中に存在することが望ましい。
【0121】
他の摩擦調整剤化合物もまた、本明細書に記載のトランスミッション液組成物に含まれてもよい。例えば、一群の摩擦調整剤には、N−脂肪族ヒドロカルビル置換基がアセチレン性不飽和を含まずかつ14〜20個の範囲の炭素原子を有する少なくとも1個の直鎖脂肪族ヒドロカルビル基である、N−脂肪族ヒドロカルビル置換ジエタノールアミンが含まれる。
【0122】
使用可能な他の摩擦調整剤は、(i)同一または異なるヒドロキシアルキル基がそれぞれ2〜4個の炭素原子を含有し、かつ脂肪族基が10〜25個の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビル基である、少なくとも1種のジ(ヒドロキシアルキル)脂肪族第三級アミンと、(ii)ヒドロキシアルキル基が2〜4個の炭素原子を含有し、かつ脂肪族基が10〜25個の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビル基である少なくとも1つのヒドロキシアルキル脂肪族イミダゾリンと、の組み合わせに基づくものである。この摩擦調整剤系に関するさらなる詳細については、米国特許第5,344,579号を参照されたい。
【0123】
一般的に言えば、本明細書に記載のトランスミッション液組成物は、適切には2.5重量%まで、望ましくは0.05重量%〜2.2重量%、そして好ましくは1.8重量%まで、またはわずか1.25重量%までの、さらに別の例として、最も好ましくは0.75〜1重量%の、トランスミッション液組成物中1種以上の全摩擦調整剤を適切に含有することができる。
【0124】
その他のオプション部品
本明細書に記載のトランスミッション液組成物はまた、上記の成分に加えてオートマチックトランスミッション液組成物に使用される種類の従来の添加剤を含んでもよい。そのような添加剤としては、分散剤添加剤、洗浄剤添加剤、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆添加剤、金属不活性化剤、消泡剤、流動点降下剤、空気連行添加剤、シール膨潤剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
分散剤
使用され得る分散剤添加剤は、ヒドロカルビル−ジカルボン酸または無水物とポリアミンとの反応生成物であり得る。ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはその無水物のヒドロカルビル部分は、ブテンポリマー、例えばイソブチレンのポリマーから誘導することができる。本明細書に用いるのに好適なポリイソブテンには、少なくとも60%、例えば70%〜90%以上の末端ビニリデン含有量を有するポリイソブチレンまたは高反応性ポリイソブチレンから形成されるものが含まれる。適切なポリイソブテンは、BF
3触媒を用いて調製されたものを含み得る。ポリアルケニル置換基の平均数分子量は、上記のようにゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される、例えば100〜5000、例えば500〜5000の広い範囲にわたって、変化し得る。
【0126】
ジカルボン酸またはその無水物は、無水マレイン酸以外のカルボン酸反応物、例えばマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、無水エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸など、から選択することができ、対応する酸ハロゲン化物およびC
1−C
4脂肪族エステルを含む。ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはその無水物を製造するために使用される反応混合物中の無水マレイン酸とヒドロカルビル部分とのモル比は、広く変更できる。したがって、モル比は5:1〜1:5、例えば3:1〜1:3に変更できる。無水物とヒドロカルビル部分との特に好適なモル比は、1:1〜1.6:1未満である。
【0127】
分散添加剤を調製する場合と同様に、任意の多数のポリアミンを使用することができる。非限定的な例示的ポリアミンとしては、アミノグアニジンビカーボネート(AGBC)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)および重質ポリアミンが挙げられ得る。重質ポリアミンは、TEPAおよびPEHAなどの少量のポリアミンオリゴマーを有するが、主に1分子あたり7個以上の窒素原子、2個以上の第一アミン、および従来のポリアミン混合物よりも広範な分岐を有するポリアルキレンポリアミンの混合物を含み得る。ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤を調製するために使用され得るさらなる非限定的なポリアミンは、米国特許第6,548,458号に開示されており、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示の一実施形態では、ポリアミンはテトラエチレンペンタミン(TEPA)から選択することができる。
【0128】
一実施形態では、分散剤添加剤は式(V)の化合物であり得、
【0130】
式中、mは0または1〜5の整数を表し、そしてR
15は上で定義されたヒドロカルビル置換基である。一実施形態では、mは3であり、R
15は、ポリイソブテニル置換基、例えば、少なくとも60%、例えば70%〜90%以上の末端ビニリデン含有量を有するポリイソブチレンから誘導されるものである。式(V)の化合物は、ポリイソブテニルコハク酸無水物(PIBSA)のような、ヒドロカルビル置換コハク酸無水物と、ポリアミン例えばテトラエチレンペンタミン(TEPA)との反応生成物であり得る。
【0131】
上記式(V)の化合物は、化合物中、(A)ポリイソブテニル置換コハク酸無水物と(B)ポリアミンのモル比が4:3〜1:10の範囲内であってもよい。特に有用な分散剤は、GPCにより決定された500〜5000の範囲の数平均分子量(Mn)を有するポリイソブテニル置換コハク酸無水物のポリイソブテニル基および一般式H
2N(CH
2)
x--[NH(CH
2)
x]
y--NH
2を有する(B)ポリアミンを含有し、式中、xは2〜4の範囲内にあり、yは1〜2の範囲内にある。
【0132】
いくつかの実施形態において、分散剤は無灰分散剤であり得る。いくつかの実施形態では、潤滑組成物は、ボロネート化および/またはホスホリレート化された少量の無灰分散剤をさらに含んでもよい。したがって、一実施形態では、分散剤添加剤は、10,000重量ppmまでの、例えば0.5〜0.8重量%の窒素含有量と、0:1〜0.8:1のホウ素+リン対窒素((B+P)/N)重量比を有する。潤滑組成物中の分散剤の量は、潤滑組成物の全重量に基づいて、窒素に関して、例えば300〜1000重量ppm、より好ましくは400〜900重量ppmの範囲であり得る。
【0133】
金属洗浄剤
本明細書に記載の潤滑組成物に含まれ得る金属清浄剤は、一般的に、長い疎水性尾部を有する極性頭部を含むことができ、そこで極性頭部が酸性有機化合物の金属塩を含む。塩は実質的に化学量論量の金属を含有していてもよく、その場合それらは通常は正塩または中性塩として記載され、0〜150未満の全塩基価またはTBN(ASTM D2896により測定)を有する。酸化物または水酸化物のような過剰の金属化合物を二酸化炭素のような酸性ガスと反応させることによって大量の金属塩基を含ませることができる。得られた過塩基性清浄剤は、無機金属塩基(例えば、水和炭酸塩)のコアを取り囲む中和された清浄剤のミセルを含む。
【0134】
適切な洗浄剤基質としては、フェネート、カリキサレート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、アルキルフェノール、またはメチレン架橋フェノールが挙げられる。適切な洗浄剤およびそれらの製造方法は、US7,732,390およびその中に引用されている参考文献を含む多数の特許公報にさらに詳細に記載されている。洗浄剤基質は、これらに限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、またはそれらの混合物のようなアルカリまたはアルカリ土類金属で塩を加えてもよい。いくつかの実施形態では、洗浄剤はバリウムを含まない。1種以上の金属、例えばカルシウムとマグネシウムの両方が存在してもよい。カルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物もまた適切であり得る。
【0135】
適切な洗浄剤の例には、カルシウムフェネート、カルシウムカリキサレート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリチレート、カルボン酸カルシウム、リン酸カルシウム、カルシウムアルキルフェノール、カルシウムメチレン架橋フェノール、マグネシウムフェネート、マグネシウムカリキサレート、マグネシウムサリキサレート、マグネシウムサリチレート、カルボン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、モノ−および/またはジチオリン酸マグネシウム、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、ナトリウムフェネート、ナトリウム硫黄含有フェネート、ナトリウムスルホネート、ナトリウムカリキサレート、ナトリウムサリキサレート、ナトリウムサリチレート、カルボン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、モノ−および/またはジチオリン酸ナトリウム、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはナトリウムメチレン架橋フェノールが含まれるが、これらに限定されない。
【0136】
過塩基性洗浄剤添加剤は当該技術分野において周知である。「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論量を超える、スルホネート、カルボキシレート、およびフェネートの金属塩などの金属塩に関する。そのような塩は、100%を超える変換レベルを有し得る(すなわち、それらは、酸をその「正常の」「中性の」塩に変換するのに必要とされる理論量の100%を超える金属を含み得る)。しばしばMRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性および化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の全化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比を示すために使用される。正塩または中性塩では、金属比は1であり、過塩基性塩では、MRは1より大きい。それらは一般に過塩基性、高塩基性、または超塩基性塩と呼ばれ、有機硫黄酸、カルボン酸、またはフェノールの塩であり得る。
【0137】
潤滑油組成物の過塩基化清浄剤は、すべてASTM D−2896の方法により測定して、約130mgKOH/グラム以上、またはさらなる例として、約150mgKOH/グラム以上、または約200mgKOH/グラム以上、または約250mgKOH/グラム以上、または約300mgKOH/グラム以上の全塩基価(TBN)を有することができる。そのような洗浄剤組成物が不活性希釈剤、例えばプロセスオイル、通常は鉱油中、で形成される場合、全塩基価は希釈剤を含む組成物全体の塩基性度、および洗浄剤組成物に含有され得る他の物質(例えば促進剤など)を反映する。
【0138】
適切な過塩基性清浄剤の例としては、過塩基性カルシウムフェネート、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性カルシウムスルホネート、過塩基性カルシウムカリキサレート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性カルシウムサリチレート、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性カルシウムリン酸、過塩基性カルシウムモノ−および/またはジチオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性マグネシウムスルホネート、過塩基性マグネシウムカリキサレート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性マグネシウムサリチレート、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウムモノ−および/またはジチオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、または過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
適切な金属清浄剤の具体例は、150〜450TBNのTBNを有する過塩基性カルシウムまたはマグネシウムスルホネート、150〜300TBNのTBNを有する過塩基性カルシウムまたはマグネシウムフェネートまたは硫化フェネート、および130〜350のTBNを有する過塩基性カルシウムまたはマグネシウムサリチレートであり得る。そのような塩の混合物も使用することができる。
【0140】
過塩基性洗浄剤は、1.1:1、または2:1、または4:1、または5:1、または7:1、または10:1の金属と基質の比を有し得る。
【0141】
金属含有清浄剤は、潤滑組成物の防錆性能を改善するのに十分な量で潤滑組成物中に存在してもよい。例えば、潤滑組成物中の清浄剤の量は、0.5重量%〜5重量%の範囲であり得る。さらなる例として、金属含有清浄剤は、好ましくは1.0重量%〜3.0重量%の量で存在し得る。金属含有清浄剤は、潤滑組成物の全重量に基づいて10〜5000ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在してもよい。さらに好ましい例として、金属含有清浄剤は、40〜900ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在してもよい。潤滑組成物中の清浄剤の特に好ましい量は、潤滑組成物に60〜600ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属を与え得る。
【0142】
腐食防止剤
防錆剤または腐食防止剤もまた、本明細書に記載の潤滑組成物に含まれてもよい。そのような材料には、モノカルボン酸およびポリカルボン酸が含まれる。適切なモノカルボン酸の例は、オクタン酸、デカン酸およびドデカン酸である。適切なポリカルボン酸には、トール油脂肪酸、オレイン酸、リノール酸などのような酸から製造されるような二量体および三量体酸が含まれる。
【0143】
別の有用な種類の防錆剤は、例えば、テトラプロペニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸無水物、テトラデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸無水物などのアルケニルコハク酸およびアルケニルコハク酸無水物腐食防止剤である。アルケニル基中に8〜24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸とポリグリコールのようなアルコールとの半エステルも有用である。他の適切な防錆剤または腐食防止剤はエーテルアミン、酸性ホスフェート、アミン、エトキシル化アミン、エトキシル化フェノール、エトキシル化アルコール等のポリエトキシル化化合物、イミダゾリン、アミノコハク酸またはその誘導体などを含む。そのような防錆剤または腐食防止剤の混合物を使用することができる。本明細書に記載の潤滑組成物中に存在する場合の腐食防止剤の全量は、潤滑組成物の全重量に基づいて5.0重量%まで、または0.01〜2.0重量%の範囲であり得る。
【0144】
酸化防止剤
いくつかの実施形態において、酸化防止剤化合物は、本明細書に記載の潤滑組成物に含まれていてもよい。酸化防止剤としては、とりわけ、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、硫化フェノール系酸化防止剤、および有機亜リン酸エステルが挙げられる。フェノール系酸化防止剤の例には、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、第三ブチル化フェノールの液体混合物、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ter−t−ブチルフェノール)、および混合メチレン架橋ポリアルキルフェノール、および4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)が挙げられる。N、N’−ジ−sec−ブチルアルファフェニレンジアミン、4−イソプロピルアミノジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、および環状アルキル化ジフェニルアミン。例としては、立体障害性第三ブチル化フェノール、ビスフェノールおよびケイ皮酸誘導体、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0145】
芳香族アミン系酸化防止剤には、次式を有するジアリールアミンが含まれるが、これらに限定されず、
【0147】
式中、R’およびR’’はそれぞれ独立して、6〜30個の炭素原子を有する置換または非置換のアリール基を表す。アリール基の置換基の例には、1〜30個の炭素原子を有するアルキルのような脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲン基、カルボン酸もしくはエステル基、またはニトロ基が含まれる。
【0148】
アリール基は、好ましくは置換または非置換のフェニルまたはナフチルであり、特にアリール基の一方または両方は、4〜30個の炭素原子、好ましくは4〜18個の炭素原子、最も好ましくは4〜9個の炭素原子を有する少なくとも1個のアルキルで置換されている。一方または両方のアリール基、例えばモノ−アルキル化ジフェニルアミン、ジ−アルキル化ジフェニルアミン、またはモノ−およびジ−アルキル化ジフェニルアミンの混合物が置換されていることが好ましい。
【0149】
使用され得るジアリールアミンの例には、これらに限定されないが、ジフェニルアミン、各種アルキル化ジフェニルアミン、3−ヒドロキシジフェニルアミン、N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン、モノブチルジフェニル−アミン、ジブチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、モノテトラデシルジフェニルアミン、ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、モノオクチルフェニル−アルファ−ナフチルアミン、フェニル−ベータ−ナフチルアミン、モノヘプチルジフェニルアミン、ジヘプチル−ジフェニルアミン、p−配向スチレン化ジフェニルアミン、混合ブチルオクチルジフェニルアミンおよび混合オクチルスチリルジフェニルアミンが含まれる。
【0150】
硫黄含有酸化防止剤としては、それらの製造に使用されるオレフィンの種類および酸化防止剤の最終硫黄含有量によって特徴付けられる硫化オレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。高分子量オレフィン、すなわち168〜351g/モルの平均分子量を有するオレフィンが好ましい。使用可能なオレフィンの例には、アルファ−オレフィン、異性化アルファ−オレフィン、分岐オレフィン、環状オレフィン、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0151】
アルファ−オレフィンとしては、C
4〜C
25のアルファ−オレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。アルファ−オレフィンは、硫化反応の前または硫化反応の間に異性化され得る。内部二重結合および/または分岐を含有するアルファオレフィンの構造異性体および/または配座異性体もまた使用され得る。例えば、イソブチレンは、α−オレフィン1−ブテンの分岐オレフィン対応物である。
【0152】
オレフィンの硫化反応に使用することができる硫黄源には、元素硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、および硫化プロセスの異なる段階で一緒に添加されるこれらの混合物が含まれる。
【0153】
不飽和油は、それらの不飽和のために、硫化されそして酸化防止剤として使用されてもよい。使用可能な油脂の例には、コーン油、キャノーラ油、綿実油、グレープシード油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ココナッツ油、ナタネ油、ベニバナ種子油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ種子油、獣脂、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0154】
最終潤滑組成物に供給される硫化オレフィンまたは硫化脂肪油の量は、硫化オレフィンまたは脂肪油の硫黄含有量および最終潤滑組成物に供給されるべき所望のレベルの硫黄に基づく。例えば、20重量%の硫黄を含有する硫化脂肪油またはオレフィンを、1.0重量%の処理量で最終潤滑組成物に添加すると、最終潤滑組成物に2000ppmの硫黄が供給される。10重量%の硫黄を含有する硫化脂肪油またはオレフィンは、1.0重量%の処理量で最終潤滑組成物に添加されると、1000ppmの硫黄を最終成潤滑組成物に供給することになる。硫化オレフィンまたは硫化脂肪油は、最終潤滑組成物に200ppm〜2000ppmの硫黄を供給することが望ましい。本明細書に記載の潤滑組成物中の酸化防止剤の全量は、潤滑組成物の全重量に基づき0.01〜3.0全重量%の範囲であり得る。さらなる例として、酸化防止剤は、0.1重量%〜1.0重量%の好ましい量で存在してもよい。
【0155】
極圧剤
潤滑剤組成物は任意に1種以上の極圧剤を含有してもよい。油溶性の極圧剤には、硫黄およびクロロ硫黄含有極圧剤、塩素化炭化水素系EP剤およびリン系EP剤が含まれる。そのようなEP剤の例は塩素化ワックス、有機硫化物および多硫化物例えば、硫化ポリイソブチレン、硫化脂肪酸、ジベンジルジスルフィド、ビス(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、および硫化ディールスアルダー付加物、リン硫化炭化水素例えば、硫化リンとテルペンチンまたはオレイン酸メチルとの反応生成物、亜リン酸エステル(phosphorus ester)例えば、ジヒドロカルビルおよびトリヒドロカルビルホスファイト、例えばジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイト、ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイトおよびポリプロピレン置換フェニルホスファイト、金属チオカルバメート例えば亜鉛ジオクチルジチオカルバメートおよびバリウムヘプチルフェノール二酸、アルキルおよびジアルキルリン酸のアミン塩例えばジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩を含み、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましい極圧剤は硫化ポリイソブチレンおよび硫化脂肪酸である。
【0156】
極圧剤は、潤滑剤組成物中に存在する場合、10重量%までの量で存在してもよく、または潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の全重量に基づいて0.001〜2重量%、好ましくは0.01〜0.3重量%、より好ましくは0.02〜0.15重量%、最も好ましくは0.03〜0.1重量%の極圧剤を含有してもよい。
【0157】
シール膨潤剤
本明細書に記載の潤滑組成物は、エラストマー材料の膨潤を引き起こすアルコール、アルキルベンゼン、置換スルホランまたは鉱油などのシール膨潤剤を任意に含有してもよい。アルコール型シール膨潤剤は低揮発性直鎖アルキルアルコールである。適切なアルコールの例には、デシルアルコール、トリデシルアルコールおよびテトラデシルアルコールが含まれる。本明細書に記載の組成物と共に使用するためのシール膨潤剤として有用なアルキルベンゼンの例には、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニル−ベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼンなどが含まれる。置換スルホランの例は、米国特許第4,029,588号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。シール膨潤剤として有用な鉱油は、典型的には、高いナフテン含有量または芳香族含有量を有する低粘度鉱油である。本明細書に記載の潤滑組成物に使用する場合、シール膨潤剤は、潤滑組成物の全重量に基づいて、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、最も好ましくは5〜15重量%を含むであろう。
【0158】
消泡剤
いくつかの実施形態では、消泡剤は、本明細書に記載の潤滑組成物での使用に適した他の成分を形成することができる。消泡剤は、シリコーン、ポリアクリレートなどから選択することができる。存在する場合、本明細書に記載の潤滑組成物中の消泡剤の量は、潤滑組成物の全重量に基づいて1.0重量%まで、または0.001重量%〜0.1重量%の範囲であり得る。さらなる例として、消泡剤は0.004重量%〜0.10重量%の好ましい量で存在してもよい。
【0159】
粘度指数向上剤
潤滑剤組成物は任意に1種以上の粘度指数向上剤を含有してもよい。適切な粘度指数向上剤としては、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン−イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、α−オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、またはそれらの混合物が挙げられる。粘度指数向上剤は星型ポリマーを含むことができ、適切な例は米国特許出願公開第2012/0101017(A1)号に記載されている。
【0160】
本明細書の潤滑剤組成物はまた、粘度指数向上剤に加えて、または粘度指数向上剤の代わりに、1種以上の分散剤粘度指数向上剤を任意に含有してもよい。適切な分散剤粘度指数向上剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(例えば、無水マレイン酸)とアミンとの反応生成物で官能化されているエチレン−プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、またはアミンと反応したエステル化された無水マレイン酸−スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0161】
粘度指数向上剤および/または分散剤粘度指数向上剤の合計量は、存在する場合、潤滑剤組成物の全重量に基づいて、30重量%までであり得、または0.001重量%〜25重量%、または0.01重量%〜20重量%、または0.1重量%〜15重量%、または0.1重量%〜8重量%、または0.5重量%〜5重量%であり得る。
【0162】
流動点降下剤
潤滑剤組成物は任意に1種以上の流動点降下剤を含有してもよい。適切な流動点降下剤としては、無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレートもしくはポリアクリルアミドまたはそれらの混合物が挙げられる。流動点降下剤は、存在する場合、潤滑剤組成物の全重量に基づいて、0.001重量%〜1重量%、または0.01重量%〜0.5重量%、または0.02重量%〜0.04重量%の量で存在してもよい。
【0163】
一実施形態では、潤滑剤組成物は、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーなどの1種以上の抗乳化剤を含むことができる。
【0164】
本明細書に記載の潤滑組成物を配合するのに使用される添加剤は、個々にまたは様々な部分的な組み合わせで基油にブレンドすることができる。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤+希釈剤例えば炭化水素溶剤)を使用してすべての成分を同時にブレンドすることが適切である。添加剤濃縮物の使用は、添加剤濃縮物の形態である場合には成分の組み合わせによってもたらされる相互相溶性を利用する。また、濃縮物の使用は混合時間を短縮しそして混合エラーの可能性を少なくする。
【0165】
一般論として、適切な潤滑組成物は、以下の表2に列挙された範囲の添加剤成分を含み得る。
【0167】
上記の各成分のパーセンテージは、列挙された成分を含有する最終潤滑油組成物の全重量に基づく、各成分の重量%を表す。潤滑油組成物の残部は1種以上の基油からなる。
【0168】
本明細書に記載の組成物を配合するのに使用される添加剤は、個々にまたは様々な部分的な組み合わせで基油に混合されてもよい。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤+希釈剤例えば炭化水素溶剤)を同時に使用してすべての成分を混合することが適切であり得る。
【0169】
本明細書に開示される潤滑剤組成物は、トランスミッション液、ギアオイルまたはアクスル潤滑剤であり得る。したがって、本開示はまた、そのようなトランスミッション液、ギア油およびアクスル潤滑剤を包含する。
【0170】
本発明の特に有利な用途は、電気自動車およびハイブリッド電気自動車の技術にある。電気自動車およびハイブリッド自動車は、スカッフィング損傷からギアを強力に保護する必要がある。また、電気自動車およびハイブリッド自動車は、一般的に使用されている硫黄含有耐摩耗剤および極圧剤によって容易に損傷を受ける可能性がある、より高度な電子材料およびシールを使用する傾向がある。
【0171】
本明細書ではまた、トランスミッションまたはギアを上記の潤滑油組成物で潤滑する工程を含む、トランスミッションまたはギアのギアスカッフィングを低減する方法も開示する。本明細書に記載の潤滑油組成物を用いて前記トランスミッションを潤滑する工程およびトランスミッションを作動させる工程を含む、トランスミッションを作動させる方法もまた本開示の範囲内である。
【0172】
本発明はまた、トランスミッション、ギアおよびアクスルの潤滑のための本明細書に記載の潤滑油組成物の使用、ならびにトランスミッションまたはギアのギアスカッフィングを低減するための本明細書に記載の潤滑油組成物の使用に関する。
【実施例】
【0173】
以下の実施例は例示的であり、本開示の方法および組成物を限定するものではない。以下の実施例において、トランスミッション液組成物への酸性ホスフェートのアミン塩の取り込みのギアスカッフィングに対する影響を測定した。
【0174】
表3は、比較例CE1〜CE5および本発明の実施例1〜4の組成を要約する。表4は、本発明の実施例5〜8で使用された成分を要約する。
【0175】
含窒素化合物とヒドロカルビル酸性ホスフェートとの反応生成物
A−1:アミルアシッドホスフェートとアミンとの重量比0.64を有する、15.0%のリン含有量を有するアミルアシッドホスフェートとビス−(2−エチルヘキシル)アミンとの反応生成物。
A−2:メチルアシッドホスフェートは分岐第一アミンで塩に処理され、塩に処理された成分は9.5%のリン含有量を有する。
A−3:ジ−ヘキシルおよびモノ−ヘキシルホスフェート混合物は、C
12−C
14ジアルキルおよびトリアルキルアミで塩に処理され、この塩に処理された成分は、4.8%のリン含有量を有し、ホスフェートとアミンとの重量比が約0.5である。
A−4:オクタデセニルコハク酸無水物とテトラエチレンペンタミン(TEPA)とをモル比2で反応させた後、アミルアシッドホスフェートと反応させて作製されたリン含有量15.0%のアルケニルスクシンイミド反応生成物、表中に別段の記載がない限り、アミルアシッドホスフェートとアルケニルスクシンイミド反応生成物の重量比は0.44である。
【0176】
油溶性ヒドロカルビルボレート
B−1:4.7%のBを有するトリブチルボレート。
B−2:7.4%のBを有するトリエチルボレート。
【0177】
分散剤
D−1:950MWのPIB基を有するPIBSA−ポリアミン分散剤。
D−2:0.76%のPおよび0.35%のBを有する、950MWのPIB基を有するホスホリレート化およびボレート化PIBSA−ポリアミン分散剤。
【0178】
基油
以下の各実施例は、グループIVおよびVの基油の混合物を含む。
【0179】
【表3】
【0180】
【表4】
【0181】
ギアスカッフィングを評価するために、比較例CE1〜CE5および本発明の実施例1〜8のトランスミッション液をCEC L−84−02を用いて試験した。この試験は減速ギア、ハイポイドギア、オートマチックトランスミッションギアなどに対する油の耐スカッフィング性を測定する。試験には、幅10mm、ホイール幅20mmのFZG A10型ピニオンを使用する。モーターを、初期潤滑油温度90℃で7分30秒の全運転時間の間、2880rpmのホイール回転速度および16.6m/sの周速度で運転する。報告された結果には、負荷ステージの不合格が含まれる。典型的には、より高い負荷ステージの不合格を報告する潤滑剤についてより良い結果が得られる。
【0182】
表3において、本発明の実施例1〜4は、酸性ホスフェートのアミン塩と油溶性ヒドロカルビルボレートとの組み合わせを含む潤滑組成物が、酸性ホスフェートのアミン塩およびボレートの一方のみを含む比較例CE1〜CE5の類似の潤滑組成物と比較して、FZG試験の結果において有意な改善をもたらすことを示す。
【0183】
表3において、CE5は、0.36重量%の過塩基性カルシウムスルホネートをさらに含む唯一の例であり、これは、CE4の配合物と比較した場合、3〜5への中程度の不合格負荷ステージの上昇をもたらした。しかしながら、本発明の実施例2は、酸性ホスフェートのアミン塩とボレートとの組み合わせが、カルシウムスルホネート清浄剤の必要性を排除しながら、FLS等級の有意な上昇をもたらしたことを実証する。
【0184】
表4において、本発明の実施例5〜8はそれぞれ、酸性ホスフェートのアミン塩、油溶性ヒドロカルビルボレート、およびホスホリル化およびボレート化PIBSA−ポリアミン分散剤を含有していた。本発明の実施例5〜8はまた、FLS評価における有意な上昇を実証する。
【0185】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考察および本明細書に開示された実施形態の実施から当業者には明らかであろう。本明細書および特許請求の範囲を通して使用されるように、「a」および/または「an」は1つ以上を指すことがある。特記しない限り、明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量、百分率、比、反応条件などの特性を表すすべての数字は、「約」という用語が存在するか否かにかかわらず、「約」という用語によってすべての場合において修飾されていると理解されるべきである。したがって、そうでないと示されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本開示によって得られることが求められる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、そして均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮してそして通常の丸め技法を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。本開示の広い範囲を説明する数値範囲およびパラメータは近似値であるとしても、特定の実施例に記載された数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。明細書および実施例は例示としてのみ考慮されることを意図しており、開示の真の範囲および精神は特許請求の範囲によって示される。したがって、そうでないと示されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本開示によって得られることが求められる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。
【0186】
前述の実施形態は、実際にはかなりの変形が可能である。したがって、実施形態は、上に記載された特定の例示に限定されることを意図しない。むしろ、前述の実施形態は、法律の問題として利用可能なそれらの均等物を含めて、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内にある。
【0187】
特許権者は、開示された実施形態を公にすることを意図しておらず、開示された修正または変更が文字通り特許請求の範囲内に入らない可能性がある限り、それらは均等論の一部であると見なされる。
【0188】
本明細書を通じて多くの箇所で、様々な文書を参照してきた。このような引用された文書はすべて、あたかも本明細書に完全に記載されているかのように、本開示に完全に明示的に組み込まれる。
【0189】
本明細書に開示された各成分、化合物、置換基またはパラメータは、単独でまたは本明細書に開示された他の各成分、化合物、置換基またはパラメータの1つ以上と組み合わせて使用するために開示されると解釈されるべきである。
【0190】
本明細書に開示されている各成分、化合物、置換基またはパラメータについての各量/値または量/値の範囲は、本明細書に開示されている他の任意の成分、化合物、置換基またはパラメータについて開示されている各量/値または量/値の範囲と組み合わせて開示されていると解釈されるべきであり、したがって、本明細書に開示されている2つ以上の成分、化合物、置換基またはパラメータについての量/値または量/値の範囲の任意の組み合わせもまた、本明細書の目的のために互いに組み合わせて開示されていると、理解されるべきである。
【0191】
本明細書に開示された各範囲は、同数の有効数字を有する開示された範囲内の各特定の値の開示として解釈されるべきであることがさらに理解される。したがって、1〜4の範囲は、値1、2、3および4の明示的な開示として解釈されるべきである。
【0192】
さらに、本明細書に開示された各範囲の各下限は、同一の成分、化合物、置換基またはパラメータについて、各範囲の各上限および各範囲内の各特定の値と組み合わせて開示されると解釈される。したがって、この開示は、各範囲の各下限値を各範囲の各上限値もしくは各範囲内の各特定の値と組み合わせることによって、または各範囲の各上限を各範囲内の各特定の値と組み合わせることによって、導き出されるすべての範囲の開示として解釈されるべきである。
【0193】
さらに、明細書または実施例に開示されている成分、化合物、置換基またはパラメータの具体的な量/値は、範囲の下限または上限の開示として解釈されるべきであり、したがって、その構成要素、化合物、置換基またはパラメータの範囲を形成するための用途において、他のどこかに開示されている同じ成分、化合物、置換基またはパラメータについての範囲の下限または上限または特定の量/値と組み合わせることができる。