特許第6758455号(P6758455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6758455
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/12 20060101AFI20200910BHJP
   H04R 3/04 20060101ALI20200910BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   H04R3/12 Z
   H04R3/04
   H04R1/02 102Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-103556(P2019-103556)
(22)【出願日】2019年6月3日
【審査請求日】2019年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】宮本 旅人
(72)【発明者】
【氏名】森 英久
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲遷▼
(72)【発明者】
【氏名】堀野 俊和
【審査官】 中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−071601(JP,A)
【文献】 特開2017−033116(JP,A)
【文献】 特開2014−110049(JP,A)
【文献】 特開2006−054799(JP,A)
【文献】 特開2004−328343(JP,A)
【文献】 特開平11−275686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00−3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイを実装する第1筐体と、
前記第1筐体にヒンジ機構で結合した第2筐体と、
前記第2筐体の、前記ディスプレイに対向可能な第1面に設けられた第1スピーカと、
前記第2筐体の、前記第1面とは反対の第2面に設けられた第2スピーカと、
前記第1筐体および前記第2筐体の姿勢を検出する姿勢センサと、
前記姿勢センサで検出された前記第1筐体および前記第2筐体の姿勢に基づいて使用モードを設定し、前記使用モードに基づいて、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカに出力する音響データの周波数特性を制御する制御部と、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記制御部は、前記使用モードを設定するモード切換部と、
前記モード切換部が設定する使用モードによって前記第1スピーカおよび前記第2スピーカに出力する音響データの周波数特性を調整する音響調整部と、を有する、請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記使用モードは、前記第2筐体に対する前記第1筐体の角度θが15度<θ<190度を満たし、前記第2筐体の前記第2面が載置面に向けられたクラムシェルモードであり、
前記制御部は、前記音響データのうち、高音域データを前記第1スピーカに出力するとともに、前記高音域データに比べて低音域である低音域データを前記第2スピーカに出力する、請求項1または2記載の電子機器。
【請求項4】
前記使用モードは、前記第2筐体に対する前記第1筐体の角度θが190度≦θ<345度を満たし、前記第2筐体の前記第1面が載置面に向けられたスタンドモードであり、
前記制御部は、前記音響データのうち全音域のデータを少なくとも前記第2スピーカに出力する、請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第1筐体と前記第2筐体とは、一方の端部同士が前記ヒンジ機構で結合し、
前記使用モードは、前記第2筐体に対する前記第1筐体の角度θが190度≦θ<345度を満たし、前記第1筐体の他方の端部および前記第2筐体の他方の端部が載置面に向けられたテントモードであり、
前記制御部は、前記音響データのうち全音域のデータを少なくとも前記第2スピーカに出力する、請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第1スピーカは、前記音響データの高音域成分の出力特性が低音域成分の出力特性に比べて優れた高音域用スピーカであり、
前記第2スピーカは、前記音響データの全音域のデータに対応したフルレンジスピーカである、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1スピーカおよび前記第2スピーカは、前記音響データの全音域のデータに対応したフルレンジスピーカである、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばノート型PCなどの電子機器には、スピーカが搭載されている。電子機器に搭載されるスピーカは、ユーザが音を聞き取りやすいように配置されている。
近年では、複数の使用形態をとることができる電子機器が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−33116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記電子機器は、使用形態によっては、スピーカによる高音質の音響再生が難しい場合があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、使用形態によらず、高音質で音響再生がなされる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ディスプレイを実装する第1筐体と、前記第1筐体にヒンジ機構で結合した第2筐体と、前記第2筐体の、前記ディスプレイに対向可能な第1面に設けられた第1スピーカと、前記第2筐体の、前記第1面とは反対の第2面に設けられた第2スピーカと、前記第1筐体および前記第2筐体の姿勢を検出する姿勢センサと、前記姿勢センサで検出された前記第1筐体および前記第2筐体の姿勢に基づいて使用モードを設定し、前記使用モードに基づいて、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカに出力する音響データの周波数特性を制御する制御部とを備える電子機器を提供する。
【0007】
前記制御部は、前記使用モードを設定するモード切換部と、前記モード切換部が設定する使用モードによって前記第1スピーカおよび前記第2スピーカに出力する音響データの周波数特性を調整する音響調整部と、を有することが好ましい。
【0008】
前記使用モードは、前記第2筐体に対する前記第1筐体の角度θが15度<θ<190度を満たし、前記第2筐体の前記第2面が載置面に向けられたクラムシェルモードであり、前記制御部は、前記音響データのうち高音域データを前記第1スピーカに出力するとともに、前記高音域データに比べて低音域である低音域データを前記第2スピーカに出力することができる。
【0009】
前記使用モードは、前記第2筐体に対する前記第1筐体の角度θが190度≦θ<345度を満たし、前記第2筐体の前記第1面が載置面に向けられたスタンドモードであり、前記制御部は、前記音響データの全音域のデータを少なくとも前記第2スピーカに出力することができる。
【0010】
前記第1筐体と前記第2筐体とは、一方の端部同士が前記ヒンジ機構で結合し、前記使用モードは、前記第2筐体に対する前記第1筐体の角度θが190度≦θ<345度を満たし、前記第1筐体の他方の端部および前記第2筐体の他方の端部が載置面に向けられたテントモードであり、前記制御部は、前記音響データの全音域のデータを少なくとも前記第2スピーカに出力することができる。
【0011】
前記第1スピーカは、前記音響データの高音域成分の出力特性が低音域成分の出力特性に比べて優れた高音域用スピーカであり、前記第2スピーカは、前記音響データの全音域のデータに対応したフルレンジスピーカであってよい。
【0012】
前記第1スピーカおよび前記第2スピーカは、前記音響データの全音域のデータに対応したフルレンジスピーカであってよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、使用形態によらず、高音質で音響再生がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る電子機器の構成例の側面図である。
図2】システム筐体の第1面の平面図である。
図3】システム筐体の第2面の平面図である。
図4】クラムシェルモードの説明図である。
図5】スタンドモードの説明図である。
図6】テントモードの説明図である。
図7】実施形態に係る電子機器における音響出力にかかるブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本実施形態に係る電子機器1の構成例について説明する。
図1は、本実施形態に係る電子機器1の構成例を示す側面図である。図2は、システム筐体102の第1面102cを示す平面図である。図3は、システム筐体102の第2面102dを示す平面図である。以下、図1に即して上下の位置関係を仮に定める。図1における上方は高さ方向である。ここで定めた位置関係は、電子機器1の使用時の姿勢を限定しない。
【0016】
図1に示すように、電子機器1(情報処理装置)は、例えば、ノート型PC(PC:パーソナルコンピュータ)である。電子機器1は、載置面100に載置される。載置面100は、例えば水平面である。
【0017】
電子機器1は、ディスプレイ筐体101(第1筐体)と、システム筐体102(第2筐体)と、一対の第1スピーカ104,104(図2参照)と、一対の第2スピーカ105,105(図3参照)と、一対の姿勢センサ106,106と、制御部107とを備える。
【0018】
ディスプレイ筐体101とシステム筐体102とは、ヒンジ機構121を用いて結合されている。ディスプレイ筐体101は、システム筐体102に対して、ヒンジ機構121がなす回転軸の周りに相対的に回動可能とする。システム筐体102に対するディスプレイ筐体101の角度を「開き角θ」という。開き角θは、システム筐体102の第1面102cとディスプレイ筐体101の第1面101cとがなす角度である。
【0019】
ディスプレイ筐体101の端部のうち、ヒンジ機構121が設けられた端部を第1基端部101b(一方の端部)と呼ぶ。第1基端部101bとは反対側の端部を第1開放端部101a(他方の端部)と呼ぶ。システム筐体102の端部のうち、ヒンジ機構121が設けられた端部を第2基端部102b(一方の端部)と呼ぶ。第2基端部102bとは反対側の端部を第2開放端部102a(他方の端部)と呼ぶ。
【0020】
ディスプレイ筐体101の第1面101cには、ディスプレイ103が搭載されている。ディスプレイ103は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(EL:Electro-Luminescence)ディスプレイなどである。ディスプレイ筐体101の第1面101cとは反対面を第2面101dという。
【0021】
システム筐体102において、第2開放端部102aから第2基端部102bに向かう方向を「後方」と呼ぶ。後方の反対の方向を「前方」と呼ぶ。図2における左方および右方を、それぞれ「左方」および「右方」と呼ぶ。左方および右方を「左右方向」と総称する。
【0022】
図2に示すように、システム筐体102の第1面102cには、キーボード108およびタッチパッド109が搭載されている。キーボード108とタッチパッド109は、入力デバイスを構成する。入力デバイスには、キーボード108およびタッチパッド109のほか、タッチセンサ(図示せず)およびマウス(図示せず)が含まれてもよい。第1面102cは、開き角θが0度のとき、ディスプレイ103に対向する。そのため、第1面102cは、ディスプレイ103に対向可能な面である。
図1に示すように、システム筐体102の第1面102cとは反対面を第2面102dという。第2面102dには、1または複数の脚部110が形成されている。
【0023】
図2に示すように、第1スピーカ104,104は、システム筐体102の第1面102cに設けられている。第1スピーカ104,104は、第1面102cの後部、すなわち第2基端部102bに近い位置に設けられている。第1スピーカ104,104は、左右方向に間隔をおいて形成されている。なお、図2では脚部110の図示を省略する。
【0024】
図3に示すように、第2スピーカ105,105は、システム筐体102の第2面102dに設けられている。第2スピーカ105,105は、第2面102dの前部、すなわち第2開放端部102aに近い位置に設けられている。第2スピーカ105,105は、左右方向に間隔をおいて形成されている。
【0025】
電子機器1の使用モード(使用形態)について、図4図6を参照して説明する。電子機器1の使用モードは、クラムシェルモード、スタンドモード、およびテントモードのうち少なくとも1つを含む。図4はクラムシェルモードの説明図である。図5はスタンドモードの説明図である。図6はテントモードの説明図である。
【0026】
図4に示すように、クラムシェルモードでは、開き角θは一例として15度<θ<190度(例えば、90度≦θ≦180度)を満たす。クラムシェルモードでは、システム筐体102は、載置面100に沿う姿勢をとる。システム筐体102は、載置面100に載置される。システム筐体102の第2面102dは載置面100に向けられている。第2面102dは、例えば、載置面100に平行である。クラムシェルモードでは、ディスプレイ103、キーボード108およびタッチパッド109(図2参照)が使用可能である。
なお、システム筐体102の第2面102dが載置面100に向けられていない場合でも、開き角θが前記範囲にあれば、クラムシェルモードと判定してもよい。
【0027】
図5に示すように、スタンドモードでは、開き角θは一例として190度≦θ<345度(例えば、270度≦θ<345度)を満たす。スタンドモードでは、システム筐体102の第1面102cは載置面100に向けられている。システム筐体102は、載置面100に沿う姿勢をとる。システム筐体102は、載置面100に載置される。第1開放端部101aは第1基端部101bより高い位置にある。
【0028】
図6に示すように、テントモードでは、開き角θは一例として190度≦θ<345度(例えば、270度≦θ<345度)を満たす。テントモードでは、第1開放端部101aおよび第2開放端部102aは載置面100に向けられ、載置面100に当接(着地)している。ディスプレイ筐体101およびシステム筐体102は、載置面100に載置される。第1基端部101bは第1開放端部101aより高い位置にある。第2基端部102bは第2開放端部102aより高い位置にある。
【0029】
クラムシェルモード(図4参照)、スタンドモード(図5参照)およびテントモード(図6参照)では、ユーザは、ディスプレイ103に対面する位置で電子機器1を操作することができる。
【0030】
図1に示すように、姿勢センサ106,106は、ディスプレイ筐体101およびシステム筐体102にそれぞれ設けられている。姿勢センサ106としては、例えば、3Dジャイロセンサ、3D加速度センサなどを採用できる。3Dジャイロセンサは、3つの互いに直交する検出軸を備え、3次元空間における角速度を検出できる。3D加速度センサは、3つの互いに直交する検出軸を備え、3次元空間における加速度を検出できる。
【0031】
ディスプレイ筐体101に設けられた姿勢センサ106は、ディスプレイ筐体101の姿勢を検出する。第2筐体102に設けられた姿勢センサ106は、システム筐体102の姿勢を検出する。
ディスプレイ筐体101およびシステム筐体102の姿勢は、少なくとも開き角θに基づいて定義される。ディスプレイ筐体101およびシステム筐体102の姿勢は、開き角θに加えて、ディスプレイ筐体101およびシステム筐体102の方向(向き)、水平面に対するディスプレイ筐体101およびシステム筐体102の傾斜角度などによって定義してもよい。
【0032】
図7は、電子機器1における音響出力に関するブロック図である。
図7に示すように、制御部107は、モード切換部72と、音響調整部74とを有する。モード切換部72は、姿勢センサ106(図1参照)からの入力に基づいて、電子機器1(図1参照)の使用モードを設定する。
例えば、図4に示すように、開き角θが15度<θ<190度を満たし、かつシステム筐体102の第2面102dが載置面100に向けられている場合、電子機器1の使用モードはクラムシェルモードであると設定できる。
図5に示すように、電子機器1の開き角θが190度≦θ<345度を満たし、かつシステム筐体102の第1面102cが載置面100に向けられている場合、電子機器1の使用モードはスタンドモードであると設定できる。
【0033】
図6に示すように、第1筐体101が前方に行くほど下降するように傾斜している場合、第1開放端部101aは載置面100に向けられているといえる。第2筐体102が前方に行くほど下降するように傾斜している場合、第2開放端部102aは載置面100に向けられているといえる。
電子機器1の開き角θが190度≦θ<345度を満たし、かつ、第1開放端部101aおよび第2開放端部102aが載置面100に向けられている場合、電子機器1の使用モードはテントモード(図6参照)であると設定できる。
【0034】
音響調整部74は、前記使用モードに応じて、第1スピーカ104および第2スピーカ105に出力する音響データの周波数特性を調整する。音響調整部74は、ハイパスフィルタ86と、ローパスフィルタ88とを有する。ハイパスフィルタ86は、音響データ78から高音域データ(高域周波数のデータ。第1音域データ)を抽出する。ローパスフィルタ88は、音響データ78から低音域データ(低域周波数のデータ。第2音域データ)を抽出する。低音域データは、高音域データに比べて低音域のデータである。音響データ78は、記憶部(図示略)に記憶されているデータでもよいし、通信回線からリアルタイムで供給されるデータでもよい。
【0035】
高音域とは、例えば1kHz以上(例えば1kHz以上、20kHz以下)の周波数帯域である。低音域とは、例えば1kHz未満(例えば300Hz以上、1kHz未満)の周波数帯域である。
【0036】
モード切換部72は、スイッチ76に働きかけ、電子機器1の使用モードに応じた切換え処理を行う。電子機器1の使用モードがクラムシェルモード(図4参照)である場合、音響調整部74は、第1スピーカ104に対して、音響データ78を、ハイパスフィルタ86を通して出力させる。ハイパスフィルタ86を経た音響データ78は、出力部80を介して第1スピーカ104に出力される。音響データ78は、ハイパスフィルタ86に通すことにより低域音がカットされるため、第1スピーカ104はツイータとして機能する。
【0037】
音響調整部74は、第2スピーカ105に対して、音響データ78を、ローパスフィルタ88を通して出力させる。ローパスフィルタ88を経た音響データ78は、出力部82を介して第2スピーカ105に出力される。音響データ78は、ローパスフィルタ88に通すことにより高域音がカットされるため、第2スピーカ105はウーファとして機能する。
【0038】
図4に示すように、クラムシェルモードでは、システム筐体102は第1面102cが上向きとなる姿勢をとるため、第1スピーカ104は上向きとなり、第2スピーカ105は下向きとなる。
【0039】
第2スピーカ105は載置面100に対向するため、指向性の高い高域音については載置面100によって遮られたり、反射することが考えられる。
これに対し、電子機器1では、前述のように、第2スピーカ105からの出力は、指向性の低い低域音が主であるため、載置面100の影響を受けずに周囲に伝搬される。一方、第1スピーカ104は、ユーザが再生音を聴き取りやすい適正な場所(システム筐体102の上面)に配置されている。そのため、高域音は減衰せずにユーザに届く。したがって、ユーザは低域音および高域音を適正に聴きとることができる。第1スピーカ104は、高域での特性に優れたスピーカを使用できることから、高音質となる。第2スピーカ105は、高域音を少なくできるため、高域音が載置面100で反射することによる不自然な反響音を抑制できる。よって、電子機器1は、クラムシェルモードにおいて、高音質の音響再生が可能である。
【0040】
図7に示すように、電子機器1の使用モードがスタンドモード(図5参照)であるとき、音響調整部74は、第2スピーカ105に対して、音響データ78を、ハイパスフィルタ86およびローパスフィルタ88を通さずに出力する。そのため、第2スピーカ105には、高音域と低音域の両方を含むフルレンジ(全音域、全周波数帯域)の音響データ78が出力される。第2スピーカ105は、フルレンジのスピーカとして機能する。
音響調整部74は、第1スピーカ104に対しては、音響データ78を出力しなくてもよい。音響調整部74は、フルレンジの音響データ78を第1スピーカ104に出力してもよい。
【0041】
図5に示すように、スタンドモードでは、システム筐体102は第2面102dが上向きとなる姿勢をとるため、第2スピーカ105は上向きとなる。
スタンドモードでは、第2スピーカ105は、ユーザが再生音を聴き取りやすい適正な場所(システム筐体102の上面)に配置されている。そのため、高域音は減衰せずにユーザに届く。したがって、ユーザは低域音および高域音を適正に聴きとることができる。よって、高音質の音響再生が可能である。
【0042】
図7に示すように、電子機器1の使用モードがテントモード(図6参照)であるとき、音響調整部74は、第2スピーカ105に対して、音響データ78を、ハイパスフィルタ86およびローパスフィルタ88を通さずに出力する。そのため、第2スピーカ105には、高音域と低音域の両方を含むフルレンジ(全音域、全周波数帯域)の音響データ78が出力される。第2スピーカ105は、フルレンジのスピーカとして機能する。
音響調整部74は、第1スピーカ104に対しては、音響データ78を出力しなくてもよい。音響調整部74は、フルレンジの音響データ78を第1スピーカ104に出力してもよい。
【0043】
図6に示すように、テントモードでは、システム筐体102は第2面102dがユーザ側に向いた姿勢をとるため、第2スピーカ105は、ユーザが再生音を聴き取りやすい適正な場所に配置されている。そのため、高域音は減衰せずにユーザに届く。したがって、ユーザは低域音および高域音を適正に聴きとることができる。よって、高音質の音響再生が可能である。
【0044】
このように、電子機器1では、いずれの使用モード(例えば、クラムシェルモード、スタンドモードおよびテントモード)においても高音質で音響再生がなされる。
【0045】
制御部107の動作は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現される。制御部107の動作は、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。
【0046】
第1スピーカ104および第2スピーカ105の具体的な構成としては、例えば、次の2つを挙げることができる。
【0047】
(第1の構成例)
第1の構成例では、第1スピーカ104として、高周波数帯(高音域)の音響再生に特化したスピーカ(高音域用スピーカ)を使用できる。高音域用スピーカは、音響データの高音域成分の出力特性が低音域成分の出力特性に比べて優れている。出力特性としては、例えば、音圧、指向性、音割れしにくさなどが挙げられる。第2スピーカ105は、低周波数から高周波数に及ぶ全周波数帯域(全音域)の音響データに対応したスピーカ(フルレンジスピーカ)である。
【0048】
第1の構成例を採用する場合、第1スピーカ104および第2スピーカ105は、次のように使用することができる。クラムシェルモードでは、第1スピーカ104には、ハイパスフィルタ86(図7参照)を経た音響データ(高音域データ)が出力される。第2スピーカ105には、ローパスフィルタ88(図7参照)を経た音響データ(低音域データ)が出力される。
【0049】
スタンドモードおよびテントモードでは、第1スピーカ104には音響データは出力されない。第2スピーカ105には全周波数帯域の音響データ(全音域データ)が出力される。
第1の構成例は、第1スピーカ104として高音域用スピーカを使用できるため、電子機器1の小型化およびコスト抑制などを図ることができる。
【0050】
(第2の構成例)
第2の構成例では、第1スピーカ104および第2スピーカ105は、いずれも全周波数帯域に対応したスピーカ(フルレンジスピーカ)である。
第2の構成例を採用する場合、クラムシェルモードでは、第1スピーカ104には、ハイパスフィルタ86(図7参照)を経た音響データ(高音域データ)が出力される。第2スピーカ105には、ローパスフィルタ88(図7参照)を経た音響データ(低音域データ)が出力される。
【0051】
スタンドモードおよびテントモードでは、第1スピーカ104には音響データが出力されなくてもよい。第1スピーカ104には全音域データが出力されてもよい。第2スピーカ105には全音域データが出力される。
第2の構成例は、第1スピーカ104および第2スピーカ105としてフルレンジスピーカを使用するため、多様な音響再生が可能となる。
【0052】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られず、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
前記実施形態では、電子機器としてノート型PCを例示したが、実施形態の電子機器はこれに限らない。実施形態の電子機器は、スマートフォン、携帯電話端末などにも適用可能である。電子機器の使用モードとしては、クラムシェルモード、スタンドモードおよびテントモードのほか、タブレットモード、ブックモードなどがある。
【符号の説明】
【0053】
1…電子機器、72…モード切換部、74…音響調整部、100…載置面、101…ディスプレイ筐体(第1筐体)、102…システム筐体(第2筐体)、102c…第1面、102d…第2面、103…ディスプレイ、104…第1スピーカ、105…第2スピーカ、106…姿勢センサ、107…制御部、121…ヒンジ機構、θ…システム筐体に対するディスプレイ筐体の角度。
【要約】
【課題】使用形態によらず、高音質で音響再生がなされる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器1は、ディスプレイ103を実装する第1筐体101と、第1筐体101にヒンジ機構121で結合した第2筐体102と、第2筐体102の第1面102cに設けられた第1スピーカ104と、第2筐体102の第2面102dに設けられた第2スピーカ105と、第1筐体101および第2筐体102の姿勢を検出する姿勢センサ106と、姿勢センサ106で検出された第1筐体101および第2筐体102の姿勢に基づいて使用モードを設定し、前記使用モードに基づいて、第1スピーカ104および第2スピーカ105に出力する音響データの周波数特性を制御する制御部107と、を備える。
【選択図】図1
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図7