特許第6758461号(P6758461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758461
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】機械室レスエレベータの改修方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/00 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   B66B7/00 K
   B66B7/00 C
   B66B7/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-141271(P2019-141271)
(22)【出願日】2019年7月31日
(62)【分割の表示】特願2017-220812(P2017-220812)の分割
【原出願日】2014年8月12日
(65)【公開番号】特開2019-182665(P2019-182665A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良直
(72)【発明者】
【氏名】島林 啓太
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−99270(JP,A)
【文献】 特開平04−213581(JP,A)
【文献】 特開2002−145544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路の下部に設置されている既設の巻上機を撤去する工程と、
前記昇降路の下部に新たな返し車を設置する工程と、
前記昇降路内の上部に新たな巻上機を設置する工程と
を含む機械室レスエレベータの改修方法。
【請求項2】
昇降路内に設置された既設の巻上機を撤去することなく、新たな巻上機を前記昇降路内に設置する工程と、
前記既設の巻上機の駆動シーブを返し車として使用する工程と、
前記既設の巻上機のコイル部分を取り外すことによって、前記既設の巻上機の駆動力を発生させなくする工程と
を含む機械室レスエレベータの改修方法。
【請求項3】
前記既設の巻上機は、前記昇降路の下部に設置されており、
前記新たな巻上機は、前記昇降路内の上部に設置される請求項2記載の機械室レスエレベータの改修方法。
【請求項4】
昇降路内の下部に設置された既設の巻上機を撤去することなく、新たな巻上機を前記昇降路内の上部に設置する工程と、
前記既設の巻上機を返し車として使用する工程と
を含む機械室レスエレベータの改修方法。
【請求項5】
前記昇降路内の上部に設置されている上部支持体から上部返し車を取り外す工程をさらに含み、
前記新たな巻上機は、前記上部支持体に設置される請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の機械室レスエレベータの改修方法。
【請求項6】
昇降路内の上部に設置されている上部支持体から上部返し車を取り外す工程と、
前記昇降路内に設置された既設の巻上機を撤去することなく、新たな巻上機を前記上部支持体に設置する工程と、
前記既設の巻上機を返し車として使用する工程と
を含む機械室レスエレベータの改修方法。
【請求項7】
前記既設の巻上機は、軸方向寸法が軸方向に直角な方向の寸法よりも大きい胴長巻上機、又は軸方向寸法が軸方向に直角な方向の寸法よりも小さい薄型巻上機であり、
前記新たな巻上機は、軸方向寸法が軸方向に直角な方向の寸法よりも小さい薄型巻上機である請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の機械室レスエレベータの改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機械室レスエレベータの改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの改修方法では、既設のかごの上部にかご吊り車を取り付けるとともに、既設の釣合おもりの上部に釣合おもり吊り車を取り付ける。また、機械室に設置された機械台から巻上機を撤去する。そして、新たな巻上機及びエンドブラケットを機械台に設置する。この後、巻上機、かご吊り車及び釣合おもり吊り車に主索を巻き掛け、主索の両端をエンドブラケットに接続する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−220078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような機械室を持つタイプのエレベータの改修では、既設の機械台に新たな巻上機を設置するので、巻上機の取付寸法及び外形寸法の変更が比較的容易である。これに対して、従来の機械室レスエレベータでは、昇降路内の寸法上の制約が厳しいため、取付寸法及び外形寸法が改修前の巻上機と同一の巻上機を改修前と同じ位置に設置していた。また、取付寸法及び外形寸法が改修前とは異なる巻上機を設置する場合、昇降路内の全ての機器を撤去し新設する工法をとっており、改修工期がかなり長くなっていた。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、多くの機器を流用しつつ、取付寸法及び外形寸法が改修前とは異なる巻上機を設置することができる機械室レスエレベータの改修方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る機械室レスエレベータの改修方法は、昇降路の下部に設置されている既設の巻上機を撤去する工程と、昇降路の下部に新たな返し車を設置する工程と、昇降路内の上部に新たな巻上機を設置する工程とを含む。
【発明の効果】
【0007】
この発明の機械室レスエレベータの改修方法は、多くの機器を流用しつつ、取付寸法及び外形寸法が改修前とは異なる巻上機を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態1による改修前の機械室レスエレベータを示す概略の平面図である。
図2図1の機械室レスエレベータを示す概略の正面図である。
図3図2のかご返し車及び釣合おもり返し車の支持構造を示す概略の斜視図である。
図4図1の機械室レスエレベータの改修後の状態を示す概略の平面図である。
図5図4の機械室レスエレベータを示す概略の正面図である。
図6図5の巻上機の支持構造を示す概略の斜視図である。
図7図5の巻上機の支持構造の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による改修前の機械室レスエレベータを示す概略の平面図、図2図1の機械室レスエレベータを示す概略の正面図である。図において、かご1及び釣合おもり2は、懸架体3(図1では省略)により昇降路4内に吊り下げられている。懸架体3としては、複数本のロープ又は複数本のベルトが用いられている。
【0010】
釣合おもり2は、かご1と同じ高さに位置するときにかご1の背面に対向するように、乗場から見てかご1の後方に配置されている。また、釣合おもり2は、真上から見て、かご1の幅方向(図1の左右方向)の中心に対して一側(図1の右側)へ寄せて配置されている。
【0011】
昇降路4内の下部(ピット)には、既設の巻上機である巻上機5が設置されている。巻上機5は、懸架体3を介してかご1及び釣合おもり2を昇降させる。また、巻上機5は、巻上機本体6と駆動シーブ7とを有している。巻上機本体6は、駆動シーブ7を回転させるモータと、駆動シーブ7の回転を制動するブレーキとを有している。懸架体3は、駆動シーブ7に巻き掛けられている。
【0012】
さらに、巻上機5としては、軸方向寸法が軸方向に直角な方向の寸法よりも大きい胴長巻上機が用いられている。さらにまた、巻上機5は、真上から見て、その軸線がかご1の幅方向の中心線に対して傾斜するように配置されている。
【0013】
巻上機5は、真上から見て大部分がかご1と重なるように、かご1の後部の釣合おもり2が寄せられている側とは反対側の角部の真下に配置されている。但し、駆動シーブ7の懸架体3の引き出し部分は、真上から見てかご1と重なっていない。
【0014】
昇降路4内には、かご1の昇降を案内する第1及び第2のかごガイドレール8a,8bと、釣合おもり2の昇降を案内する第1及び第2の釣合おもりガイドレール9a,9bとが設置されている。かごガイドレール8a,8bは、かご1の前後方向(図1の上下方向)の中間部でかご1の両側に配置されている。
【0015】
かご1の下部には、第1及び第2のかご吊り車11a,11bが設けられている。釣合おもり2の上部には、釣合おもり吊り車12が設けられている。かご吊り車11a,11b及び釣合おもり吊り車12は、それらの回転軸が水平、かつかご1の幅方向に直角となるように配置されている。
【0016】
昇降路4内の上部(頂部)には、上部支持体13(図1では省略)が設置されている。上部支持体13は、かごガイドレール8a,8b及び釣合おもりガイドレール9a,9bにより支持されている。上部支持体13には、上部返し車としてのかご返し車14及び釣合おもり返し車15が支持されている。
【0017】
かご返し車14は、真上から見て、駆動シーブ7と第2のかご吊り車11bとの間に配置されている。また、かご返し車14は、その回転軸が水平、かつかご1の幅方向に平行となるように配置されている。
【0018】
釣合おもり返し車15は、真上から見て、駆動シーブ7と釣合おもり吊り車12との間に配置されている。また、釣合おもり返し車15は、その回転軸が水平、かつかご1の幅方向に直角となるように配置されている。
【0019】
上部支持体13のかごガイドレール8a近傍には、かご側綱止め(図示せず)が設けられている。懸架体3の第1の端部は、かご側綱止めに接続されている。上部支持体13の釣合おもり返し車15と釣合おもりガイドレール9aとの間の部分には、釣合おもり側綱止め16が設けられている。懸架体3の第2の端部は、釣合おもり側綱止め16に接続されている。
【0020】
懸架体3は、第1の端部側から順に、第1のかご吊り車11a、第2のかご吊り車11b、かご返し車14、駆動シーブ7、釣合おもり返し車15及び釣合おもり吊り車12に巻き掛けられている。即ち、図1及び図2のエレベータは、2:1ローピング方式のエレベータである。
【0021】
図3図2のかご返し車14及び釣合おもり返し車15の支持構造を示す概略の斜視図である。かご返し車14は、かごガイドレール8bの近傍で上部支持体13の下部に配置されている。上部支持体13は、互いに間隔をおいて配置された第1及び第2の返し車梁17a,17bを有している。返し車梁17a,17bは、かご1の幅方向に平行、かつ水平に配置されている。釣合おもり返し車15は、返し車梁17a,17b間に配置されている。
【0022】
次に、上記のような既設の機械室レスエレベータの改修方法について説明する。図4図1の機械室レスエレベータの改修後の状態を示す概略の平面図、図5図4の機械室レスエレベータを示す概略の正面図である。実施の形態1の改修方法では、上部支持体13から釣合おもり返し車15を取り外し、上部支持体13の釣合おもり返し車15が取り付けられていた位置に新たな巻上機(上部巻上機)21を設置する。
【0023】
また、昇降路4の下部の巻上機(下部巻上機)5の駆動シーブ7を改修後のエレベータの下部返し車として使用する。さらに、昇降路4の下部の巻上機5からコイル部分を取り外して、駆動シーブ7の回転に対する磁気的な抵抗を無くす。即ち、改修後のエレベータでは、巻上機5は駆動力を発生せず、下部返し車としてのみ使用される。そして、新たな巻上機21の駆動力により、かご1及び釣合おもり2が昇降する。
【0024】
新たな巻上機21は、軸方向寸法が軸方向に直角な寸法よりも小さい薄型巻上機である。また、新たな巻上機21は、巻上機本体22と駆動シーブ23とを有している。巻上機本体22は、駆動シーブ23を回転させるモータと、駆動シーブ23の回転を制動するブレーキとを有している。巻上機21は、駆動シーブ23の回転軸が水平、かつかご1の幅方向に直角となるように配置されている。
【0025】
懸架体3は、第1の端部側から順に、第1のかご吊り車11a、第2のかご吊り車11b、かご返し車14、駆動シーブ(下部返し車)7、新たな巻上機21の駆動シーブ23及び釣合おもり吊り車12に巻き掛けられている。即ち、図4及び図5のエレベータも、2:1ローピング方式のエレベータである。
【0026】
図6図5の巻上機21の支持構造を示す概略の斜視図である。巻上機本体22は、第2の返し車梁17b上に支持されており、駆動シーブ23は、返し車梁17a,17b間の空間の真上に配置されている。これにより、懸架体3の駆動シーブ23から下方へ向かう部分は、返し車梁17a,17b間の空間を通っている。他の構成は、改修前と同様であるが、必要に応じて新たな機器と交換してもよい。
【0027】
このような機械室レスエレベータの改修方法では、昇降路4内の上部の釣合おもり返し車15が配置されていた位置に新たな巻上機21を設置するので、多くの機器を流用しつつ、取付寸法及び外形寸法が改修前とは異なる巻上機21を設置することができる。これにより、最新の巻上機21を使用しつつ、改修工期の短縮を図ることができる。
【0028】
また、巻上機21を昇降路4内の上部に配置することができるため、万一ピットが冠水しても、巻上機21が濡れることがない。
【0029】
さらに、既設の巻上機5の駆動シーブ7を改修後のエレベータの下部返し車として使用するので、巻上機5の動力を切った後でも駆動シーブ7をそのまま残すことができ、廃棄物を削減することができる。
【0030】
さらにまた、既設の巻上機5のコイル部分を取り外して抵抗を無くすので、駆動シーブ7を下部返し車として使用しても余計な負荷がかかることがない。
【0031】
また、新たな巻上機21として薄型巻上機を用いたので、釣合おもり返し車15が設置されていたスペースに巻上機21を容易に設置することができる。
【0032】
なお、図6では返し車梁17b上に巻上機21が直接設置されているが、例えば図7に示すように、返し車梁17a,17b間に一対の巻上機台24a,24bを架設し、巻上機台24a,24b上に巻上機21を設置してもよい。即ち、返し車梁17a,17b上に巻上機台24a,24bを介して巻上機21を設置してもよい。この場合、巻上機21にかかる荷重を返し車梁17a,17bに分散して作用させ、返し車梁17a,17bに生じる応力を改修前に近くすることができる。
【0033】
また、上記の例では、駆動シーブ23がかご1側を向くように巻上機21が設置されているが、駆動シーブ23がご1とは反対側を向くように、即ち、巻上機本体22がかご1側を向くように巻上機21を設置してもよい。この場合、かご1上から巻上機本体22の保守点検を容易に行うことができる。
【0034】
さらに、上記の例では、釣合おもり返し車15を新たな巻上機21と交換したが、昇降路4の上部に配置された機器のレイアウトによっては、かご返し車14を新たな巻上機21と交換してもよい。
さらにまた、既設の巻上機5の駆動シーブ7を返し車として使用せず、巻上機5を撤去し、新たな返し車を昇降路4の下部に設置してもよい。
また、上記の例では、既設の巻上機5として胴長巻上機を示したが、既設の巻上機は薄型巻上機であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 かご、2 釣合おもり、3 懸架体、4 昇降路、5 既設の巻上機(下部巻上機)、7 駆動シーブ(下部返し車)、13 上部支持体、15 釣合おもり返し車(上部返し車)、17a 第1の返し車梁、17b 第2の返し車梁、21 新たな巻上機(上部巻上機)、24a,24b 巻上機台。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7