特許第6758477号(P6758477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758477
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】工作機械の主軸装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/12 20060101AFI20200910BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20200910BHJP
   B23B 31/117 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   B23Q11/12 C
   B23B19/02 A
   B23B31/117 601A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-504287(P2019-504287)
(86)(22)【出願日】2017年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2017009818
(87)【国際公開番号】WO2018163428
(87)【国際公開日】20180913
【審査請求日】2019年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 維玖馬
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−150346(JP,A)
【文献】 特開平8−243878(JP,A)
【文献】 実開昭60−128464(JP,U)
【文献】 実開昭62−35751(JP,U)
【文献】 特開平3−213243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 11/12,19/02,31/117,
B23Q 1/70,5/04−5/20,
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに回転可能に支持された中空の主軸を有した工作機械の主軸装置において、
前記ハウジングに固定され、前記主軸内部へと入り込むように形成され、前記主軸の軸線方向に形成された開口部を有した環状のボス部材と、
前記主軸の内周面に対面するように、前記ボス部材の外周面に形成された冷却通路と、
前記主軸の先端部に工具ホルダを引き込んでクランプするドローバーと、
前記ドローバーの後端に結合され前記ドローバーとともに回転するサポート軸と、
前記主軸の内周と前記サポート軸の外周との間の環状空間に設けられ、かつ、前記ハウジングに支持されたアンクランプ装置と、
を具備することを特徴とした工作機械の主軸装置。
【請求項2】
前記冷却通路は、前記主軸の軸線を中心として螺旋状に延設されている請求項に記載の工作機械の主軸装置。
【請求項3】
前記主軸の後端部と前記ハウジングとの間に前記主軸を回転可能に支持する第1の軸受が配設されており、
前記冷却通路は、少なくとも部分的に前記第1の軸受と同一の前記主軸の軸線に垂直な平面内に配置されている請求項に記載の工作機械の主軸装置。
【請求項4】
前記アンクランプ装置は、クランプ位置とアンクランプ位置との間で前記主軸の軸線に沿って往復可能に設けられ、かつ、第2の軸受によって前記主軸の内部で前記サポート軸を回転支持するピストンを具備し、該ピストンは、流体圧力によってクランプ位置からアンクランプ位置へ前記主軸の軸線に沿って主軸前方へ移動することによって、前記ドローバーを主軸前方へ押し出すように形成され、
前記冷却通路は、前記ピストンが前記クランプ位置にあるとき、少なくとも部分的に前記第2の軸受と同一の前記主軸の軸線に垂直な平面内に配置されている請求項に記載の工作機械の主軸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に工具を装着する主軸を効果的に冷却可能とした工作機械の主軸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主軸先端部に装着したエンドミルのような回転工具と、テーブル上に固定されたワークとを相対移動することにより、ワークを所望の形状に加工する工作機械は従来から公知となっている。こうした工作機械では、回転工具は工具ホルダに装着され、該工具ホルダをドローバーによって引込、クランプすることによって、工具が主軸先端部に装着される。そうした主軸装置の一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
また、主軸が回転中、軸受や軸受を潤滑する潤滑剤のためのシール部から必然的に発熱するので、主軸は冷却しなければならない。特許文献2には、そうした主軸の冷却装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011−121793号公報
【特許文献2】特開平06−206141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の主軸の冷却装置は、中空の主軸内に固定軸を挿入し、この固定軸内に冷却液を流通させて固定軸を冷却することによって、主軸を冷却するようになっている。然しながら、特許文献2に開示の主軸の冷却装置では、特許文献1に記載されているような内部にドローバーを設けた主軸を冷却することができない。
【0006】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、内部にドローバーのような工具クランプ装置を備えていても効果的に冷却可能とした工作機械の主軸装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、ハウジングに回転可能に支持された中空の主軸を有した工作機械の主軸装置において、前記ハウジングに固定され、前記主軸内部で入り込むように形成され、前記主軸の軸線方向に形成された開口部を有した環状のボス部材と、前記主軸の内周面に対面するように、前記ボス部材の外周面に形成された冷却通路と、前記主軸の先端部に工具ホルダを引き込んでクランプするドローバーと、前記ドローバーの後端に結合され前記ドローバーとともに回転するサポート軸と、前記主軸の内周と前記サポート軸の外周との間の環状空間に設けられ、かつ、前記ハウジングに支持されたアンクランプ装置とを具備する工作機械の主軸装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、主軸に直接冷却液を流通させることなく、主軸の冷却が可能となる。そのため、冷却液を流通させる冷却液通路からの冷却液の漏洩を容易に防止可能となる。そのため、本発明によれば、効果的に主軸を冷却するのみならず、冷却液が漏洩しない信頼性の高い主軸装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の好ましい実施形態による主軸装置の断面図である。
図2図1の主軸装置の要部を拡大して示す部分拡大断面図である。
図3】本発明の主軸装置を備えた工作機械の一例を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
先ず、図3を参照すると、本発明を適用する工作機械の一例が示されている。図3において、工作機械10は、立形マシニングセンタを構成しており、工場の床面に固定された基台としてのベッド12、ベッド12の前方部分(図3では左側)の上面で前後方向またはY軸方向(図3では左右方向)に移動可能に設けられワークWが固定されるテーブル18、ベッド12の後端側(図3では右側)で同ベッド12の上面に立設、固定されたコラム14、該コラム14の前面で左右方向またはX軸方向(図3では紙面に垂直な方向)に移動可能に設けられたX軸スライダ16、X軸スライダ16の前面で上下方向またはZ軸方向に移動可能に取り付けられた主軸装置100を具備している。本例では、主軸装置100は、Z軸に平行な鉛直方向に延びる中心軸線O周りに回転可能に主軸104を支持している。主軸104のテーブル18に対面する先端部に回転工具Tが工具ホルダTHを介して装着される。
【0011】
主軸装置100には、切削液供給管路24を介して切削液供給装置20から切削液が供給される。回転する主軸104内を通して切削液を工具TとワークWとの間の加工領域に供給するために、主軸装置100の後端部には、ジョイントピストン132を備えたロータリージョイント134が配設されている。切削液供給管路24は、例えば、切削液を貯留する切削液タンク(図示せず)と、該切削液タンクから切削液を切削液供給管路24へ送り出す切削液供給ポンプ(図示せず)とを具備することができる。
【0012】
主軸装置100には、また、冷却液供給管路26を介して冷却液供給装置22から冷却液が供給される。冷却液は、詳細に後述するように、冷却液入口ポート140aから、主軸装置100に供給され、冷却通路140、142、136b、144、152を流通し、冷却液出口ポート152aから冷却液戻り管路28を介して冷却液供給装置22に戻される。冷却液供給装置22は、例えば、冷却液を貯留する冷却液タンク(図示せず)と、該冷却液タンク内の冷却液の温度を所定温度に冷却する冷却装置(図示せず)と、冷却液タンクから冷却液を冷却液供給管路26へ送り出す冷却液供給ポンプ(図示せず)とを具備することができる。
【0013】
次に、図1、2を参照すると、主軸装置100は、両端が開口した中空のハウジング102と、ハウジング102内に回転可能に支持される主軸104とを具備している。ハウジング102の前端と後端の開口部は、それぞれ環状の前エンドプレート120と後エンドプレート124とによって閉じられる。主軸104は、長手の軸線Oに沿って後端から前端へ延びる空間104aを有した中空円筒状の部材である。また、主軸104の前端部には、工具ホルダTHを装着するテーパ穴104bが形成されている。
【0014】
主軸104は、複数の軸受106、108、110によって回転支持されている。主軸104の後端側に配設された第1の軸受としての軸受110は、軸受ケーシング136を介してハウジング102に固定されている。軸受ケーシング136は環状部材よりなり、内周面に軸受110の外輪を受容する内周溝136aと、外周面に形成された外周溝とを有している。軸受ケーシング136をハウジング102の所定位置に固定すると、ハウジング102の内周面と、前記外周溝との間に環状冷却液通路136bが画成される。環状冷却液通路136bからの冷却液の漏洩を防止するために、軸受ケーシング136とハウジング102との間にOリングのような適当なシール部材を配設することができる。
【0015】
主軸装置100のハウジング102の内には、主軸104を回転駆動するビルトインモータが配設されている。該ビルトインモータは固定側のステータ138aと可動側のロータ138bとを備えている。ステータ138aはハウジング102の内周面に固定される。ロータ138bは、半径方向の微小隙間を介してステータ138aに対向し、主軸104の外周面に固定されている。
【0016】
主軸104には、工具ホルダTHをテーパ穴104b内にクランプするために、主軸104の空間104a内で軸線Oに沿って延設されたドローバー114と、テーパ穴104b内でドローバー114を中心として周方向に等角度間隔に配置された複数のコレット112と、主軸104の空間104a内でドローバー114を中心として配置された複数の皿ばね118とを備えたクランプ装置が配設されている。ドローバー114は、図1、2において軸線Oの左側に示すクランプ位置と、図1、2において軸線Oの右側に示すアンクランプ位置との間で軸線Oに沿って移動可能となっている。
【0017】
ドローバー114は、軸線Oに沿って長手方向に延びる中心孔または切削液通路114aを有した中空状の棒部材より成り、先端部に大径状の係合部114bが形成されている。ドローバー114は、皿ばね118の弾性力により軸線Oに沿ってクランプ位置に向けて付勢される。皿ばね118の大きさおよび数は、工具ホルダTHをテーパ穴104b内に適切にクランプできるように、ドローバー114を軸線Oに沿って所定の引込力で後端方向に付勢できるように適宜選択することができる。
【0018】
軸線Oに沿って長手方向に延びる中心孔または切削液通路116aを有したサポート軸116が、ドローバー114の後端部に結合されている。サポート軸116は、軸線Oに沿ってドローバー114に対して同軸に配置され、かつ、ドローバー114の後端部分に結合されている。サポート軸116とドローバー114は、スプライン結合やポリゴン結合等の周知の手段によって、相互に回転できないが軸線方向には移動可能に結合されている。サポート軸116は、ドローバー114とともに回転し、後述するように、第2の軸受としての軸受130を介してピストン126に回転可能に支持されている。軸受130のための潤滑剤を保持するために、シール部材154、156が、サポート軸116の外周面と、ピストン126の軸部126bの内周面とに緊密に接触するように、サポート軸116と軸部126bとの間に配設されている。
【0019】
ドローバー114が、クランプ位置にあるとき、ロータリージョイント134のジョイントピストン132を主軸104の先端方向に付勢して、ジョイントピストン132をサポート軸116の後端に当接させることによって、ドローバー114の切削液通路114aとサポート軸116の切削液通路116aが連通し、主軸104を貫通する一本の切削液通路が形成される。
【0020】
主軸104のテーパ穴104bには、ドローバー114の係合部114bと係合可能に、主軸104のテーパ穴104b内に配設されている。ドローバー114が、主軸104の軸線Oに沿って後端方向に移動することによって、コレット112は、ドローバー114の係合部114bに係合して径方向外方に付勢される。これによって、コレット112の先端が工具ホルダーTHのテーパ部と係合し、工具ホルダーTHが軸線Oに沿って主軸104の後端方向に引き込まれ、工具ホルダーTHがテーパ穴104b内にクランプされる。ドローバー114が、後述するアンクランプ装置により軸線Oに沿って前方に移動することによって、コレット112と係合部114bの係合が解除される。
【0021】
ドローバー114が皿ばね118の弾性力により後方に移動することで、コレット112が径方向に拡開し、その内径を広げ、テーパ穴104bに挿入された工具ホルダTHのテーパ面とフランジ後端面(図示せず)とがテーパ穴104bの内面(テーパ面)と主軸104の前端面104cとに当接し、いわゆる二面拘束で工具ホルダTHがテーパ穴104bにクランプされる。本実施形態では、工具ホルダTHは、1/10ショートテーパのHSKシャンクであるが、工具ホルダーTHは、7/24テーパのBTシャンクであってもよい。工具ホルダーTHがBTシャンクの場合、工具ホルダーTHのシャンク部の後端部に固定されたプルスタッドをコレット112が挟持するように構成される。
【0022】
主軸104の後方部分には、主軸104の空間104aにアンクランプ装置が配設される。アンクランプ装置は、後エンドプレート124の中心開口部124aを通して主軸104の空間104a内に挿入されるボス部としてのシリンダ128と、主軸104とドローバー114との間の環状空間内でドローバー114の軸線方向に往復移動可能なピストン126とを備えている。ボス部はシリンダ128とは異なる中空円筒状の部材から形成してもよい。
【0023】
シリンダ128は、後エンドプレート124に固定される大径のフランジ部128aと、フランジ部128aに結合される中空の円筒形状の胴部128bとを具備している。シリンダ128を後エンドプレート124に取り付けたとき、胴部128bは主軸104の軸線Oに沿って主軸104の空間104a内に挿入される。
【0024】
また、シリンダ128の胴部128bの外周面には、軸線Oを中心とした螺旋溝が形成されている。本実施形態では、中空円筒形状のカバー部材148が、シリンダ128の胴部128bの外周面に密着するように配設され、螺旋溝とカバー部材148とによって、軸線Oを中心とした螺旋冷却液通路142が画成される。螺旋冷却液通路142は、好ましくは、主軸104の先端側の端部を入口とし、主軸104の後端側の端部を出口とする。シリンダ128の胴部128bとカバー部材148との間にOリングのような適当なシール部材を配設してもよい。
【0025】
ピストン126は、大径の当接部126aと、当接部126aから軸線Oに沿って後端方向に延び、胴部128bの内周面に沿って摺動可能に胴部128b内に配置される小径の軸部126bとを有している。上述のサポート軸116を回転可能に支持する一対の軸受130は、軸部126bの内周面と、サポート軸116の外周面との間に配設される。こうした、ピストン126は、サポート軸116と共に回転することなく、シリンダ128に対して軸方向に摺動可能にシリンダ128の胴部128b内に配置される。
【0026】
ピストン126とシリンダ128とが係合することにより、第1の圧力室150aと第2の圧力室150bとが形成される。より詳細には、ピストン126の当接部126aには、シリンダ128の胴部128bの先端部分を受容する環状溝126cが形成されており、ピストン126の環状溝126cとシリンダ128の胴部128bの先端部分とが係合することにより、図2に示すように、第1の圧力室150aと第2の圧力室150bとが形成される。
【0027】
第1と第2の圧力室150a、150bには、流体供給装置(図示せず)から所定圧力の流体が供給される。図示しない油圧ポートを介して、第1の圧力室150aに所定の圧力に加圧された圧力流体を供給することにより、ピストン126が軸線Oに沿って主軸104の先端方向へ前進し、ピストン126の当接部126aがドローバー114の後端に当接する。第1の圧力室150aに更に圧力流体を供給し続けることによって、ピストン126は、皿ばね118の弾性力に抗して、ドローバー114をアンクランプ位置(図1、2において軸線Oの右側に示す状態)へ向けて更に先端方向に押し出す。こうして、工具ホルダTHがアンクランプされる。この間、第2の圧力室150bから圧力流体が排出される。
【0028】
図示しない工具交換装置によって、アンクランプされた工具Tが、主軸104のテーパ穴104bから工具ホルダTHと共に抜去され、新工具Tがテーパ穴104bに挿入された後、第1の圧力室150aから圧力流体を排出することによって、ピストン126およびドローバー114が、皿ばね118の弾性力により、軸線Oに沿って主軸104の後端方向に後退する。この間、第2の圧力室150bには、所定圧力の圧力流体が供給される。ドローバー114が皿ばね118の弾性力により後退する間、コレット112がドローバー114の係合部114bに係合することによって、コレット112はテーパ穴104b内で半径方向に付勢され、テーパ穴104b内の工具ホルダTHと係合して、工具ホルダTHをテーパ穴104b内に引き込む。ドローバー114がクランプ位置に到達すると、工具ホルダTHは主軸104のテーパ穴104b内に完全に引き込まれ、ドローバー114は停止する。ドローバー114がクランプ位置に到達した後、第2の圧力室150bに更に圧力流体を供給し続けると、ピストン126はドローバー114の後端から離反する(図1、2において軸線Oの左側に示す状態)。
【0029】
本実施形態では、冷却液通路は、シリンダ128に形成された冷却液入口ポート140aと螺旋冷却液通路142の入口との間に延びる入口側冷却液通路140、螺旋冷却液通路142、螺旋冷却液通路142の出口と環状冷却液通路136bとの間に延びる中間冷却液通路144、環状冷却液通路136bおよび環状冷却液通路136bと冷却液出口ポート152aとの間に延びる出口側冷却液通路152を含む。本実施形態では、入口側冷却液通路140はシリンダ128内に形成され、中間冷却液通路144はシリンダ128、後エンドプレート124および軸受ケーシング136内に形成され、出口側冷却液通路152は軸受ケーシング136およびハウジング102内に形成される。
【0030】
中間冷却液通路144において、シリンダ128と後エンドプレート124との間、後エンドプレート124と軸受ケーシング136との間にOリングのような適当なシール部材を配設することができる。同様に、出口側冷却液通路152において、軸受ケーシング136とハウジング102との間にもOリングのような適当なシール部材を配設することができる。また、冷却液入口ポート140aおよび冷却液出口ポート152aはニップルのような適当な継手部材によって形成することができる。
【0031】
本実施形態によれば、冷却液通路、特にシリンダ128の螺旋冷却液通路142を流通する冷却液によって、ボス部としてのシリンダ128が冷却され、特にシリンダ128の胴部128bの螺旋溝を覆うカバー部材148の外周面が周囲よりも低温になる。これによって、シリンダ128の周囲、特にカバー部材148の外周面に接する空気が冷却され、該冷却された空気によって、主軸104の後端部が冷却される。
【0032】
螺旋冷却液通路142が軸線Oに関して横断方向に軸受110と隣り合うように螺旋冷却液通路142を配置する、つまり、螺旋冷却液通路142と軸受110とが少なくとも部分的に軸線Oに垂直な平面内に配置されていることによって、軸受110を効果的に冷却することができる。シリンダ128と主軸104との間、特にカバー部材148の外周面と主軸104の内周面との間の間隔を調節することで、螺旋冷却液通路142による冷却効果を調節することができる。軸受110は、軸線Oに関して横断方向に隣り合う環状冷却液通路136bによっても効果的に冷却される。
【0033】
更に、冷却されたシリンダ128に密着するピストン126の軸部126bが冷却され、該軸部126bに密着する軸受130およびシール部材154、156が冷却される。特に、図1、2において軸線Oの左側に示すように、ドローバー114がクランプ位置にあるとき、螺旋冷却液通路142が軸線Oに関して横断方向に軸受130およびシール部材154、156と隣り合うように螺旋冷却液通路142を配置する、つまり、螺旋冷却液通路142と軸受130とが少なくとも部分的に軸線Oに垂直な平面内に配置されていることによって、主軸104の回転中に軸受130およびシール部材154、156から発生する熱を効果的に除去することが可能となる。
【0034】
このように、本実施形態では、冷却通路140、142、136b、144、152は、主軸装置100の静止した部材を通過するので、冷却液の漏洩を容易かつ確実に防止しながら主軸装置100の後端部分を効果的に冷却することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 工作機械
22 冷却液供給装置
26 冷却液供給管路
28 冷却液戻り管路
100 主軸装置
102 ハウジング
104 主軸
104a 空間
110 軸受
114 ドローバー
116 サポート軸
124 後エンドプレート
126 ピストン
128 シリンダ
130 軸受
136 軸受ケーシング
136b 環状冷却液通路
140 入口側冷却液通路
140a 冷却液入口ポート
142 螺旋冷却液通路
図1
図2
図3