(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の電気化や自動運転技術の発展、センサー、モニター、カーナビゲーションシステムの高性能化等に伴い、自動車業界において、プリント基板(以下、単に「基板」という場合がある。)の需要が大幅に増加している。また、通信機器、バッテリー、コードレス製品等の需要も大きくなっており、これらの製品においても、基板の需要が大幅に増加している。
かかるニーズに対して、プリント基板業界における生産能力が不足気味になっており、生産性の向上が求められている。
【0003】
基板には、スルーホールを設ける必要があり、ドリルを使用した孔あけ加工が行われる。この際、基板上の傷やバリの発生を防止するために、アルミニウム等の孔あけ加工用当て板が使用される。生産性の点から、数枚の基板を重ねた上で、その上に、孔あけ加工用当て板(以下、単に「当て板」という場合がある。)を載せた状態で、全ての基板に一挙に孔あけ加工が行われるのが通常である。
この際、アルミニウム等の孔あけ加工用当て板の表面に、潤滑層を形成することで、ドリルの折損を防止したり、孔の内壁を整えたり、孔の位置精度を向上させたりすることが行われている。
【0004】
孔あけ加工用当て板の表面の潤滑層については、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、分子量10000以上のポリエチレングリコール20〜90重量%と水溶性滑剤80〜10重量%との混合物にて形成した水溶性滑剤シートが開示されている。特許文献2には、ポリエーテルエステル20〜90重量%と水溶性滑剤80〜10重量%との混合物で形成された水溶性滑剤シートが開示されている。特許文献3には、変性ポリアミドからなるマトリックス樹脂及び無機系粉末充填剤で構成される潤滑性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
しかし、これらの潤滑層は、当て板との密着性が十分ではなく、そのため、潤滑層が基板から部分的に剥離して、厚さに不均一が生じたり、孔あけ加工時に凹凸が発生し、ドリル折損や孔の位置精度が低下したりする、といった問題を生じていた。
【0006】
特許文献4に記載の発明では、かかる当て板と潤滑層との密着性に起因する問題を解決すべく、特定のポリ酢酸ビニルの部分ケン化物からなる下塗り層を介して潤滑層を当て板の上に形成しており、異常の少ない潤滑層を得ている。特許文献4の発明では、歩留まり良くプリント基板の孔開け加工を行うことができるが、生産スピード等の点ではまだ課題が残っている。
【0007】
前述のように、様々な産業界におけるプリント基板の需要の大幅な増加に伴い、生産性の向上が求められているところ、高い歩留まりで生産性の高いプリント基板の孔開け加工方法の開発が望まれている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0015】
本発明の孔あけ加工用当て板の製造方法により製造される孔あけ加工用当て板は、プリント基板にスルーホールを設けるためのドリルを使用した孔あけ加工の際に使用されるものである。
孔あけ加工用当て板は、アルミニウム製の板の少なくとも片方の表面に潤滑層が形成されている。
【0016】
アルミニウム製の板に関して、特に限定はなく、例えば、軟質アルミニウム板、半硬質アルミニウム板、硬質アルミニウム板等が挙げられる。アルミニウム製の板の厚さは、50〜300μmが好ましい。
【0017】
本発明の孔あけ加工用当て板の製造方法では、孔あけ加工用当て板の潤滑層形成用化合物(A)と、下塗り層形成用化合物(B)とを一液中に含有する塗布液を、一液でアルミニウム製の板に塗布することによって、潤滑層の密着性を上げながら潤滑層を該表面に一液で形成する。
本発明では、潤滑層形成に要する時間を大幅に短縮しつつ、当て板上に強固に密着した潤滑層とすることができ、孔あけ加工の際に不具合が発生しにくい。
【0018】
本発明の孔あけ加工用当て板の製造方法に使用する塗布液は、潤滑層形成用化合物(A)を含有する。潤滑層形成用化合物(A)は、孔あけ加工の際に、ドリルが当て板表面で横滑りして、孔の位置がずれたり、ドリルの折損を防止したりするために塗布液に添加される。
【0019】
潤滑層形成用化合物(A)の例としては、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導体、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリアクリル酸ソーダ、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、等の水溶性樹脂が例示できる。
【0020】
ポリアルキレンオキサイドとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドポリプロピレンオキサイド共重合体、ポリプロピレンオキサイドポリブチレンオキサイド共重合体等が例示できる。
水溶性、潤滑層の安定性、下塗り層形成用化合物(B)との相溶性、潤滑性能の観点から、ポリエチレンオキサイド又はポリエチレンオキサイドポリプロピレンオキサイド共重合体が好ましい。
【0021】
ポリアルキレンオキサイドの平均分子量は、5000以上が好ましく、10000以上が特に好ましい。また、300000未満が好ましく、200000未満が特に好ましい。
ポリアルキレンオキサイドは、分子量の異なるものを、複数併用してもよい。
【0022】
ポリアルキレンオキサイド誘導体としては、ポリオキシエチレンメチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンエーテル;ポリオキシエチレンやし油脂肪酸ソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノスオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリソルベート;等が例示できる。
【0023】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンモノカプレート、ポリグリセリンモノミリステート、ポリグリセリンモノラウレート、ポリグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンモノオレート等が挙げられる。
【0024】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリベヘネート等が挙げられる。
【0025】
セルロース誘導体としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0026】
潤滑層形成用化合物(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
塗布液における、潤滑層形成用化合物(A)の含有率は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。また、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。
なお、上記潤滑層形成用化合物(A)の含有率は、潤滑層形成用化合物(A)を2種以上含有するときは、その合計の含有率を意味する。
上記範囲内であると、塗布が好適にでき、潤滑層が良質となり、孔あけ加工の際に不具合が発生しにくい。
【0028】
本発明の孔あけ加工用当て板の製造方法に使用する塗布液は、下塗り層形成用化合物(B)を含有する。下塗り層形成用化合物(B)は、潤滑層とアルミニウムの当て板との密着性を向上させ、潤滑層の剥離に伴う不具合(孔の位置のずれ、ドリルの折損等)を防止するために塗布液に添加される。
【0029】
下塗り層形成用化合物(B)の例としては、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体の部分ケン化物、酢酸ビニル・塩化ビニル・(無水)マレイン酸共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル・(無水)マレイン酸共重合体の部分ケン化物が例示できる。
なお、「(無水)マレイン酸」とは、「マレイン酸及び/又は無水マレイン酸」を示す。
【0030】
下塗り層形成用化合物(B)の重合度は、200以上であることが好ましく、250以上であることがより好ましく、300以上であることが特に好ましい。また、1000以下であることが好ましく、900以下であることがより好ましく、700以下であることが特に好ましい。
上記範囲内であると、潤滑層形成用化合物(A)との相溶性に優れ、当て板と潤滑層との密着性が良好となる。
【0031】
「ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物」、「酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体の部分ケン化物」、「酢酸ビニル・塩化ビニル・(無水)マレイン酸共重合体の部分ケン化物」とは、それぞれ、「ポリ酢酸ビニル」、「酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体」、「酢酸ビニル・塩化ビニル・(無水)マレイン酸共重合体」における酢酸ビニル構造単位の一部が、加水分解によりビニルアルコール構造単位に変換された構造の化合物をいう。
このうち、潤滑層形成用化合物(A)との相溶性、当て板と潤滑層との密着性等の観点から、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物が最も好ましい。
【0032】
これらの化合物におけるケン化度は、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることが特に好ましい。また、95%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、60%以下であることが特に好ましい。
なお、「ケン化度」とは、[ビニルアルコール構造単位の数/(酢酸ビニル構造単位の数+ビニルアルコール構造単位の数)]×100で表される。
ケン化度が上記下限以上であると、水溶性が十分となり、潤滑層形成用化合物(A)との相溶性が良好となる。また、ケン化度が上記上限以下であると、潤滑層の潤滑性が良好となり、孔あけの際の不具合が発生しにくい。
【0033】
下塗り層形成用化合物(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
塗布液における、下塗り層形成用化合物(B)の含有率は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが特に好ましい。また、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
上記下塗り層形成用化合物(B)の含有率は、下塗り層形成用化合物(B)を2種以上含有するときは、その合計の含有率を意味する。
上記範囲内であると、塗布が好適にでき、潤滑層と当て板との密着性が十分となりやすい。
【0035】
塗布液は、下塗り層形成用化合物(B)1質量部に対して、潤滑層形成用化合物(A)を、2質量部以上の割合で含有することが好ましく、3質量部以上の割合で含有することがより好ましく、5質量部以上の割合で含有することが特に好ましい。また、70質量部以下の割合で含有することが好ましく、60質量部以下の割合で含有することがより好ましく、50質量部以下の割合で含有することが特に好ましい。
なお、上記潤滑層形成用化合物(A)の含有量は、潤滑層形成用化合物(A)を2種以上含有するときは、その合計量を意味し、上記下塗り層形成用化合物(B)の含有量は、下塗り層形成用化合物(B)を2種以上含有するときは、その合計量を意味する。
上記範囲内だと、潤滑層と当て板との密着性が十分となりやすく、また、潤滑層の性能が十分に発揮され、孔あけの際の不具合が発生しにくくなる。また、水又は水性溶媒又はこれらの混合溶媒に対する溶解性、溶液としての相溶性、溶媒留去後の固体の層における相溶性、安定性等が良好となる。
【0036】
本発明の孔あけ加工用当て板の製造方法に使用する塗布液は、ブロッキング防止剤を含有していてもよい。
ブロッキング防止剤は、潤滑層を形成後、乾燥する際に、潤滑層形成用化合物(A)のべたつきによるブロッキング(タック)を防止する目的で塗布液に添加される。また、ブロッキング防止剤の添加により、結晶微細化による潤滑層の割れを防止することができる。
【0037】
ブロッキング防止剤の例としては、アミノ酸、脂肪酸エステル、アルカリ金属塩、ジカルボン酸等が挙げられる。
【0038】
アミノ酸の例としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、シスチン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、ヒスチジン等が挙げられる。
このうち、ブロッキング防止や潤滑層の割れの防止の効果が高い点から、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、フェニルアラニン、グリシン、ロイシンが特に好ましい。
【0039】
脂肪酸エステルの例としては、ソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンステアレート、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、トリアシルグリセロール等が挙げられる。
【0040】
アルカリ金属塩の例としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、りん酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、ケイ酸カリウム、りん酸カリウム、クエン酸カリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0041】
ジカルボン酸の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0042】
塗布液における、ブロッキング防止剤の含有率は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが特に好ましい。また、1質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.7質量%以下であることが特に好ましい。
上記範囲内であると、ブロッキング防止や潤滑層の割れの防止の効果が十分に発揮されやすい。
【0043】
ブロッキング防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、上記含有率は、合計含有率である。
【0044】
本発明の孔あけ加工用当て板の製造方法に使用する塗布液は、耐水性付与剤を含有していてもよい。
耐水性付与剤は、潤滑層に適度な耐水性を与える。すなわち、耐水性付与剤は、空気中の水分により潤滑層中の成分が溶解し、アルミニウム板の表面から潤滑剤が剥離するのを防止する。
【0045】
耐水性付与剤の例としては、変性ポリビニル、ポリエステル、ポリアミド、ロジン等が挙げられる。
【0046】
変性ポリビニルの例としては、スチレン−酢酸ビニル系ブロック共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、メチルビニルエーテル・(無水)マレイン酸共重合物、アニオン変性ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0047】
ポリエステルの例としては、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
ポリエステル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が5〜50℃程度のものが好ましい。
【0048】
ポリアミドの例としては、重合脂肪酸系ポリアミド、重合石油系ポリアミド等が挙げられる。
「重合脂肪酸系ポリアミド」とは、重合脂肪酸(不飽和脂肪酸の重合体)とジアミンとの縮合体をいい、不飽和脂肪酸の例としては、リノール酸;オレイン酸;リシノール酸;ひまし油、大豆油、亜麻仁油等に含有される不飽和脂肪酸;等が挙げられる。
「重合石油系ポリアミド」とは、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン等を原料とした、一般的なポリアミドである。
【0049】
ロジンの例としては、WWロジン、水添ロジン、ロジン変性フェノール樹脂、マレイン化ロジン、マレイン酸変性ロジン樹脂、エステルガム、硬化ロジン、ロジンアルカリ石鹸、アクリル化ロジン、重合ロジン等が挙げられる。
【0050】
塗布液における、耐水性付与剤の含有率は、0.001質量%以上であることが好ましく、0.003質量%以上であることがより好ましく、0.005質量%以上であることが特に好ましい。また、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることが特に好ましい。
上記範囲内であると、耐水性付与の効果を十分に発揮しやすく、潤滑層の剥離が発生しにくい。
【0051】
耐水性付与剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、上記含有率は、合計含有率である。
【0052】
本発明の孔あけ加工用当て板の製造方法に使用する塗布液の溶媒は、潤滑層形成用化合物(A)や下塗り層形成用化合物(B)等を溶解することができるものであれば特に限定は無く、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノ−ル等のアルコール;等が例示できる。これらの溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
また、実施例及び比較例における薬品の詳細は、以下の通りである。
【0054】
「ポリエチレンオキサイドA」
平均分子量10000以上15000未満のポリエチレンオキサイド。
【0055】
「ポリエチレンオキサイドB」
平均分子量15000以上50000未満のポリエチレンオキサイド。
【0056】
「ポリエチレンオキサイドC」
平均分子量50000以上200000未満のポリエチレンオキサイド。
【0057】
「ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物」
重合度600、ケン化度45%であるポリ酢酸ビニルの部分ケン化物。
【0058】
実施例1
[塗布液の調製]
以下の組成の塗布液1を調製した。
【0059】
(塗布液1組成)
・水 37.1質量部
・メタノール 19.2質量部
・ポリエチレンオキサイドA 25.0質量部
・ポリエチレンオキサイドB 10.8質量部
・ポリエチレンオキサイドC 6.3質量部
・ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物 1.0質量部
・メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合物 0.008質量部
・グリシン 0.6質量部
【0060】
[潤滑層の形成]
厚さ150μmのアルミニウム板の片方の表面に、塗布液1を、膜厚が25μmとなるように塗布することで、潤滑層を有する孔あけ加工用当て板を作製した。
【0061】
[孔あけ加工]
厚さ0.8mmのプリント基板をサンプルとして、0.25μm及び0.30μmの孔を作製した。プリント基板は4枚重ねた状態で、最も上のプリント基板の上に、作製したアルミニウムの当て板を、潤滑層が上を向くようにして載せた状態で、孔あけ加工を実施した。
【0062】
比較例1
実施例1において、表面に潤滑層を形成していないアルミニウム板を当て板として使用した以外は、実施例1と同様にして、孔あけ加工を実施した。
【0063】
比較例2
[塗布液の調製]
以下の組成の塗布液2及び塗布液3を調製した。
【0064】
(塗布液2組成)
・水 10.0質量部
・メタノール 70.0質量部
・ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物 19.85質量部
・メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合物 0.15質量部
【0065】
(塗布液3組成)
・水 38.5質量部
・メタノール 16.5質量部
・ポリエチレンオキサイドA 26.4質量部
・ポリエチレンオキサイドB 11.4質量部
・ポリエチレンオキサイドC 6.6質量部
・グリシン 0.65質量部
【0066】
[潤滑層の形成]
厚さ150μmのアルミニウム板の片方の表面に、塗布液2を、膜厚が1μmとなるように塗布した。次いで、塗布液3を、膜厚が25μmとなるように塗布することで、潤滑層を有する孔あけ加工用当て板を作製した。
【0067】
[孔あけ加工]
実施例1と同様にして、孔あけ加工を実施した。
【0068】
比較例3
比較例2において、塗布液2を使用せず、厚さ150μmのアルミニウム板の片方の表面に直接、塗布液3を、膜厚が25μmとなるように塗布した以外は、比較例2と同様にして、孔あけ加工用当て板を作製し、孔あけ加工を実施した。
【0069】
実施例2
実施例1において、塗布液1の代わりに以下の組成の塗布液4を使用した以外は、実施例1と同様にして、孔あけ加工用当て板を作製し、孔あけ加工を実施した。
【0070】
(塗布液4組成)
・水 24.3質量部
・メタノール 43.3質量部
・ポリエチレンオキサイドA 13.2質量部
・ポリエチレンオキサイドB 5.7質量部
・ポリエチレンオキサイドC 3.3質量部
・ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物 9.9質量部
・メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合物 0.08質量部
・グリシン 0.33質量部
【0071】
実施例3
実施例1において、塗布液1の代わりに以下の組成の塗布液5を使用した以外は、実施例1と同様にして、孔あけ加工用当て板を作製し、孔あけ加工を実施した。
【0072】
(塗布液5組成)
・水 21.4質量部
・メタノール 48.6質量部
・ポリエチレンオキサイドA 10.5質量部
・ポリエチレンオキサイドB 4.6質量部
・ポリエチレンオキサイドC 2.6質量部
・ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物 11.9質量部
・メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合物 0.09質量部
・グリシン 0.26質量部
【0073】
各実施例及び比較例において、以下に示す項目を評価した。結果を表1に示す。
【0074】
<作業効率>
孔あけ加工用当て板の作製(潤滑層の形成)に要する作業時間を、以下の基準で評価した。
○:比較例2の作業時間よりも30%以上短縮
【0075】
<密着性>
当て板と潤滑層との密着性を、以下の基準で評価した。
○:JIS−K5400 碁盤目法・碁盤目テープ法にて、潤滑層の剥がれが無い。
×:JIS−K5400 碁盤目法・碁盤目テープ法にて、潤滑層の剥がれが認められる。
【0076】
<折損>
ドリルの折損を、以下の基準で評価した。
○:外観確認により折損無し
×:外観確認により折損有り
【0077】
<孔位置>
プリント基板の孔位置を、以下の基準で評価した。
○:良品
×:不良品
【0078】
<内壁>
プリント基板の孔の内壁の状態を、以下の基準で評価した。
○:内壁へのメッキの未着無し
×:内壁へのメッキの未着有り
【0079】
【表1】