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特許6758558シリカゲル製多孔性粒子およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758558
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】シリカゲル製多孔性粒子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/12 20060101AFI20200910BHJP
   C01B 33/16 20060101ALI20200910BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20200910BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20200910BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20200910BHJP
   B01F 17/52 20060101ALI20200910BHJP
   C08F 297/00 20060101ALI20200910BHJP
   C08G 77/02 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   C01B33/12 Z
   C01B33/16
   B01J20/10 D
   B01J20/30
   B01J20/28 Z
   B01F17/52
   C08F297/00
   C08G77/02
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-534430(P2017-534430)
(86)(22)【出願日】2016年8月5日
(86)【国際出願番号】JP2016073210
(87)【国際公開番号】WO2017026425
(87)【国際公開日】20170216
【審査請求日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-158588(P2015-158588)
(32)【優先日】2015年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】505191803
【氏名又は名称】株式会社エマオス京都
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】石塚 紀生
(72)【発明者】
【氏名】小西 京子
(72)【発明者】
【氏名】小田 俊和
(72)【発明者】
【氏名】辻井 敬亘
(72)【発明者】
【氏名】榊原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴哉
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−162504(JP,A)
【文献】 特開2006−104016(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/013651(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/188924(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
B01F 17/00−17/56
B01J 20/00−20/34
C08G 77/00−77/62
C08F 297/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略球状の多孔性粒子を製造する方法であって、
前記多孔性粒子は、平均粒径が0.5〜700μmであり、
前記多孔性粒子は、シリカゲルにより形成され、その内部に、多孔構造が連通している共連続構造の貫通孔を有し、かつ、前記貫通孔の端部が、前記多孔性粒子の外部に向かって開口しており、
前記製造方法は、
シリカモノマーおよびシリカプレポリマーの少なくとも一方とポロゲンとを含む多孔性粒子原料を、分散媒中に分散させて分散液を調製する分散液調製工程と、
前記多孔性粒子原料を前記分散液中で重合させる重合工程と、を含み、
前記分散液調製工程において、前記多孔性粒子原料を、分散剤とともに分散媒中に分散させ、
前記重合工程において、スピノーダル分解により前記貫通孔を形成することを特徴とする前記多孔性粒子の製造方法。
【請求項2】
前記多孔性粒子の長径が短径の1.6倍以下である請求項1記載の製造方法
【請求項3】
前記分散液調製工程において、前記多孔性粒子原料を、分散剤とともに分散媒中に分散させる請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
前記分散剤が、疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックを含んで形成されたブロックコポリマーである請求項記載の製造方法。
【請求項5】
さらに、前記分散剤を製造する分散剤製造工程を含み、
前記分散剤製造工程が、リビングラジカル重合により前記疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックの一方を形成する第1のリビングラジカル重合工程と、
前記第1のリビングラジカル重合工程後に、リビングラジカル重合により前記疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックの他方を形成する第2のリビングラジカル重合工程と、を含む
請求項記載の製造方法。
【請求項6】
前記分散剤が、界面活性剤である請求項記載の製造方法。
【請求項7】
前記界面活性剤が、ノニオン界面活性剤である請求項記載の製造方法。
【請求項8】
疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックを含んで形成されたブロックコポリマーであって、請求項または記載の製造方法における前記分散剤として用いるブロックコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカゲル製多孔性粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔構造が連通している貫通孔を有する多孔体は、種々の用途に利用されている。このような多孔体には、有機ポリマー製のもの(特許文献1等)と、シリカゲル製のもの(特許文献2〜3等)がある。また、近年は、粒子状の多孔体が提案されており、例えば、製造した多孔体を粉砕して粒子状にする方法(特許文献2)と、最初から粒子状の多孔体を製造する方法(特許文献3)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−020960号公報
【特許文献2】特開2014−148456号公報
【特許文献3】特開2015−3860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多孔構造が連通している貫通孔を有する多孔体においては、例えば、クロマトグラフィー用分離カラムの充填剤やカラムリアクター等の用途において、塊状の多孔体よりも取り扱いやすい利点がある。しかし、製造した多孔体を粉砕して粒子状にする方法では、製造した多孔体粒子が不定形で、充填率が低いという問題がある。また、最初から粒子状の多孔体を製造する方法では、粒子表面にスキン層が形成され、孔が塞がれてしまう恐れがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、貫通孔を有するとともに、形状が均質で前記貫通孔が塞がれていないシリカゲル製多孔性粒子およびその製造方法、ならびに前記製造方法に用いるためのブロックコポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の多孔性粒子は、略球状の多孔性粒子であって、前記多孔性粒子は、シリカゲルにより形成され、その内部に、多孔構造が連通している貫通孔を有し、かつ、前記貫通孔の端部が、前記多孔性粒子の外部に向かって開口していることを特徴とする。
【0007】
本発明の多孔性粒子の製造方法は、
シリカモノマーおよびシリカプレポリマーの少なくとも一方を含む多孔性粒子原料を、分散媒中に分散させて分散液を調製する分散液調製工程と、前記多孔性粒子原料を前記分散液中で重合させる重合工程と、を含み、前記重合工程において、スピノーダル分解により前記貫通孔を形成する、前記本発明の多孔性粒子の製造方法である。
【0008】
本発明のブロックコポリマーは、疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックを含んで形成されたブロックコポリマーであって、前記本発明の多孔性粒子の製造方法の前記分散液調製工程において、前記多孔性粒子原料を分散媒中に分散させるための分散剤として用いるブロックコポリマーである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシリカゲル製多孔性粒子は、その内部に貫通孔を有するとともに、形状が略球状の均質な形状で、かつ、前記貫通孔が塞がれていない。また、本発明の多孔性粒子の製造方法および本発明のブロックコポリマーによれば、前記のような特性を有する本発明の多孔性粒子を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例で製造したシリカゲル製多孔性粒子の断面の拡大写真(倍率100倍)である。
図2図2は、実施例で製造したシリカゲル製多孔性粒子の断面の拡大写真(倍率1000倍)である。
図3図3は、実施例で製造したシリカゲル製多孔性粒子の断面の拡大写真(倍率5000倍)である。
図4図4は、実施例で製造したシリカゲル樹脂製多孔性粒子の断面の拡大写真(倍率10000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0012】
[1.シリカゲル製多孔性粒子]
本発明のシリカゲル製多孔性粒子(以下、単に「多孔性粒子」または「本発明の多孔性粒子」という場合がある。)は、前述のとおり、略球形である。本発明の多孔性粒子は、例えば、長径(最も長い径)が、短径(最も短い径)に対し、例えば1.6倍以下、1.4倍以下、または1.2倍以下である。本発明の多孔性粒子は、理想的には、例えば、真球形で、長径と短径とが同じ長さである。
【0013】
本発明の多孔性粒子の粒径(粒子径)は特に限定されないが、平均粒径の下限値が、例えば0.5μm、5μm、7μm、1,000μm(1mm)等であり、平均粒径の上限値が、例えば30,000μm(30mm)、10,000μm(10mm)、1,000μm(1mm)、700μm等である。本発明の多孔性粒子の粒径(粒子径)の範囲は、例えば0.5〜30,000μm(0.5μm〜30mm)、1〜10mm、5〜1,000μm、または7〜700μm等の範囲である。また、本発明において、平均粒径は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置により測定することができる。またはサンプル量が少ないためにレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置での測定が困難な場合は、走査型電子顕微鏡写真(SEM)の画像から平均粒径を概算しても良い。
【0014】
本発明の多孔性粒子は、前述のとおり、シリカゲルにより形成され、その内部に、多孔構造が連通している貫通孔を有し、かつ、前記貫通孔の端部が、前記多孔性粒子の外部に向かって開口している。前記貫通孔は、多孔構造が連通している結果、例えば、屈曲した構造を有する。また、本発明の多孔性粒子は、粒子凝集型構造ではなく、共連続構造の(粒子内部に多孔構造が連通している)貫通孔を有する多孔性粒子である。なお、本発明において、前記「粒子凝集型」の多孔性構造とは、粒子内に孔のない小さい粒子が相互に結合して骨格状を成すと同時に、前記粒子の隙間としての孔を形成している構造をいう。前記「粒子凝集型」の多孔性構造において、さらにその粒子の集合体の外形が略粒状を成すものを粒子凝集型の粒子という。
【0015】
本発明の多孔性粒子において、多孔構造が連通している貫通孔を有することは、例えば、本発明の多孔性粒子の断面または表面の写真により確認できる。また、前記貫通孔の端部が、前記多孔性粒子の外部に向かって開口していることは、例えば、本発明の多孔性粒子の表面の写真により確認できる。本発明の多孔性粒子は、例えば、スキン層(粒子表面を被覆している層)が無いことにより、前記貫通孔の端部が塞がれることなく、前記多孔性粒子の外部に向かって開口している。このスキン層の有無も、本発明の多孔性粒子の表面の写真により確認できる。また、前記多孔性粒子は、他の多孔性粒子と粒子間で結合せず互いに分離していることが好ましい。
【0016】
また、本発明の多孔性粒子は、他の多孔性粒子と粒子間で結合せず互いに分離している複数の多孔性粒子の集合体であっても良い。前記多孔性粒子の集合体のうち、略球状の多孔性粒子(本発明の多孔性粒子)の数が、例えば50%を超え、または70%以上、80%以上、90%以上、等であっても良い。
【0017】
本発明の多孔性粒子において、前記多孔構造が連通している貫通孔は、例えば、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内にメソポアを有する連続気泡構造等であっても良い。前記貫通孔の孔径は、特に限定されないが、例えば10〜1,000,000nm(1mm)、20〜100,000nm、または30〜50,000nmの範囲である。なお、前記貫通孔の孔径を、以下「細孔径」ともいう場合がある。細孔径については、後述するように、本発明の多孔性粒子製造時の各種要素に影響され、前記各種要素の調整により、前記細孔径を調整することが可能である。前記細孔径は、通常は不均一であり、その均一性(分散)の度合いは、例えば、本発明の多孔性粒子製造時の重合反応における系内の熱分布や撹拌の影響で異なる。
【0018】
本発明の多孔性粒子の空孔率(空隙率)は、特に限定されないが、例えば、30〜95体積%、35〜90体積%、または40〜85体積%である。前記空孔率(空隙率)は、例えば、窒素吸着法、水銀圧入法、液体クロマトグラフィー法などにより測定することができる。
【0019】
本発明の多孔性粒子の材質は、前述のとおり、シリカゲルである。すなわち、本発明の多孔性粒子は、例えば、シリカゲルにより、またはシリカゲルを含んで形成されていても良い。なお、本発明において、単に「シリカゲル」という場合、特に断らない限り、前記シリカゲルとしては、例えば、無機シリカでも良いし、ハイブリッドシリカでも良い。なお、前記無機シリカとは、分子中に有機基を含まないシリカゲルをいい、前記ハイブリッドシリカとは、分子中(例えば側鎖等)に有機基を含むシリカゲルをいう。また、前記無機シリカおよびハイブリッドシリカは、それぞれ、分子中に、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。また、本発明の多孔性粒子は、例えば、単一のポリマーから構成されていても良いが、複数のポリマーの混合物またはコポリマー等であっても良い。前記コポリマーは、例えば、ランダムコポリマーでも良いし、ブロックコポリマーでも良い。
【0020】
また、本発明の多孔性粒子は、前記ポリマー(シリカゲル)以外の他の成分を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。前記他の成分としては、特に限定されないが、例えば、無機系のフィラー類(シリカ、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、等)、有機系のフィラー類(アクリル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、等)、ナノファイバー類(カーボンナノファイパーやセルロースナノファイバー、等)等が挙げられる。
【0021】
本発明の多孔性粒子の製造方法は、特に限定されないが、例えば、前記本発明の多孔性粒子の製造方法により製造することができる。
【0022】
[2.多孔性粒子の製造方法]
本発明の多孔性粒子の製造方法は、前述のとおり、モノマーおよびプレポリマーの少なくとも一方を含む多孔性粒子原料を、分散媒中に分散させて分散液を調製する分散液調製工程と、前記多孔性粒子原料を前記分散液中で重合させる重合工程と、を含み、前記重合工程において、スピノーダル分解により前記貫通孔を形成する。
【0023】
本発明の多孔性粒子の製造方法は、例えば、前記分散液調製工程において、前記多孔性粒子原料を、分散剤とともに分散媒中に分散させる。前記分散剤は、例えば、界面活性剤であっても良い。
【0024】
本発明の多孔性粒子の製造方法において、例えば、前記分散剤が、疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックを含んで形成された本発明のブロックコポリマーであっても良い。この場合において、例えば、本発明の多孔性粒子の製造方法が、さらに、前記分散剤(本発明のブロックコポリマー)を製造する分散剤製造工程を含み、前記分散剤製造工程が、リビングラジカル重合により前記疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックの一方を形成する第1のリビングラジカル重合工程と、前記第1のリビングラジカル重合工程後に、リビングラジカル重合により前記疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックの他方を形成する第1のリビングラジカル重合工程と、を含んでいても良い。なお、前記本発明のブロックコポリマーは、疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックを含んで形成されているから、広義の「界面活性剤」ということができる。
【0025】
本発明の製造方法により、多孔構造が連通している貫通孔を有する、外形が略球状の、スキン層がない多孔性粒子を製造することができる。このメカニズムは不明であるが、例えば、前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面を適切な状態に維持することができるためと推測される。具体的には、例えば、前記界面を適切な状態に維持することによって、前記多孔性粒子原料を凝集させずに重合することができるため、前記貫通孔を形成できると考えられる。また、例えば、前記多孔性粒子原料が前記分散媒中に粒子状に分散した状態を維持できるので、略球状の本発明の多孔性粒子を製造できると考えられる。また、例えば、前記界面において、前記多孔性粒子原料中の親水性物質または疎水性物質の一方が偏在すると、それが重合等を起こすことにより、スキン層が形成されるおそれがある。このスキン層により、多孔性粒子表面で貫通孔が塞がれてしまいやすい。しかし、前記界面において、親水性物質と疎水性物質との比を適切な状態に制御することで、スキン層の形成を防止することができる。ただし、このメカニズムは例示であり、本発明をなんら限定しない。
【0026】
前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面を適切な状態に維持する方法は、特に限定されないが、例えば、前記界面活性剤、または広義の界面活性剤である本発明のブロックコポリマー(分散剤)を用いる方法が挙げられる。また、前記界面活性剤または本発明のブロックコポリマー(分散剤)において、後述するように、疎水性部分と親水性部分の比を適切に制御することが好ましい。また、前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面を適切な状態に維持する方法として、例えば、前記分散液を物理的に攪拌する方法等も挙げられる。
【0027】
本発明において「スピノーダル分解」は、多成分混合系が共連続構造を形成して相分離(例えば、2成分混合系が2相分離)する現象、または相分離した状態をいう。「スピノーダル分解」は、例えば、2成分混合系を高温度から急冷し不安定状態においた場合におこる2相分離の過程をいう場合もあるが、本発明では、前記急冷した場合に限定されない。すなわち、本発明において、前記スピノーダル分解を起こさせる方法は、特に限定されず、どのような方法でも良い。例えば、前記多孔性粒子原料が分散媒中に分散され、かつ、前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面を適切な状態に維持したまま、前記多孔性粒子原料を重合または架橋させることで、スピノーダル分解が生じてその構造が固定されると考えられる。前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面を適切な状態に維持する方法は、例えば、前述のとおりである。
【0028】
以下、本発明の多孔性粒子の製造方法について、より具体的に説明する。
【0029】
[2−1.分散液]
本発明の製造方法では、まず、モノマーおよびプレポリマーの少なくとも一方を含む多孔性粒子原料を、分散媒中に分散させて分散液を調製する(分散液調製工程)。前記モノマーおよびプレポリマーは、特に限定されないが、例えば、前記各シリカゲルに対応したモノマーおよびプレポリマーが挙げられる。より具体的には、例えば、TMOS(テトラメトキシシラン)、TEOS(テトラエトキシシラン)、MTMS(メトキシシラン)、SQ(シルセスキオキサン)等が挙げられる。また、有機・無機ハイブリッド系の原料モノマーとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、1,2−ビストリメトキシシリルエタン等のオルガノアルコキシシラン、および、シランカップリング剤の反応部を含む有機高分子化合物とシリカの組合せも挙げられ、これらは、例えば、ハイブリッドシリカの原料モノマーとして用いることができる。前記分散媒としては、特に限定されないが、有機溶媒および水が挙げられ、単独で用いても二種類以上併用しても良い。前記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、イソデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジグライム、トリグライム、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルトリエチレングリコール、メチルジプロピレングリコール、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルシクロプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、カプロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、カプロラクタムなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、炭酸エチル、ニトロメタン、アセトニトリル、ニトロベンゼン、ジオクチルフタレートなどが挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用しても良い。
【0030】
前記分散液中において、前記多孔性粒子原料(モノマーおよびプレポリマーの少なくとも一方)の濃度は、特に限定されないが、前記分散媒に対し、例えば0.01〜10,000g/L、1〜5,000g/L、または5〜3,000g/Lである。
【0031】
また、本発明の多孔性粒子の製造方法は、例えば、前記分散液調製工程において、前記多孔性粒子原料を、分散剤とともに分散媒中に分散させても良い。前記分散剤の濃度は、特に限定されないが、前記分散媒に対し、例えば1〜500g/L、2〜300g/L、または3〜250g/Lである。
【0032】
前記分散剤は、例えば、界面活性剤であっても良い。前記界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、親水性ブロックと疎水性ブロックからなるブロックコポリマー、例えばポリアクリル酸ブロックとポリアクリルエステルブロックからなるブロックコポリマー、ポリオキシエチレンブロックとポリアクリルエステルブロックからなるブロックコポリマー、ポリオキシエチレンブロックとポリオキシプロピレンブロックからなるブロックコポリマー、等が挙げられる。
【0033】
アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、脂肪アルコールのリン酸エステル塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ホルマリン縮合ナフタレンスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、アルキル1級アミン塩、アルキル2級アミン塩、アルキル3級アミン塩、アルキル4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類等が挙げられる。高分子界面活性剤としては、部分ケン化ポリビニルアルコール、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、部分ケン化ポリメタクリル酸塩等が例示される。
【0034】
用いる界面活性剤を選択することにより、得られるシリカゲル製多孔性粒子の平均粒径や粒度分布、粒子の凝集状態を制御することができ、例えば、アニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤を用いることにより、平均粒径を小さく且つ粒度分布を狭くすることができる。また、高分子界面活性剤を用いることにより平均粒径を大きくすると共に、粒子の凝集を抑制することができる。なかでも、界面活性剤として、親水性ブロックと疎水性ブロックからなるブロックコポリマーを用いる場合には、少量の添加で乳化できることから、重合反応時の溶液の粘度を低く保つことができるため撹拌が容易となり好ましい。
【0035】
これらの界面活性剤は、1種類のみ用いても良く、2種類以上併用しても良い。
【0036】
また、例えば、前記分散剤が、疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックを含んで形成されたブロックコポリマーであっても良い。この場合において、例えば、本発明の多孔性粒子の製造方法が、さらに、前記分散剤を製造する分散剤製造工程を含み、前記分散剤製造工程が、リビングラジカル重合により前記疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックの一方を形成する第1のリビングラジカル重合工程と、前記第1のリビングラジカル重合工程後に、リビングラジカル重合により前記疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックの他方を形成する第2のリビングラジカル重合工程と、を含んでいても良い。なお、前記ブロックコポリマー(分散剤)および前記分散剤製造工程については、後述の[2−2.ブロックコポリマー(分散剤)および分散剤製造工程]において詳しく説明する。
【0037】
また、前記分散液調製工程において、前記分散液中に、前記多孔性粒子原料および前記分散剤以外の他の成分を含有させても良い。前記他の成分は、特に限定されないが、例えば、本来の分散に影響を生じない範囲でノニオン活性剤以外の他の界面活性剤、消泡剤等が挙げられる。
【0038】
[2−2.ブロックコポリマー(分散剤)および分散剤製造工程]
以下において、前記ブロックコポリマー(分散剤)および前記分散剤製造工程について詳しく説明する。
【0039】
まず、前記ブロックコポリマーは、疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックを含んで形成されているから、前述のとおり、広義の「界面活性剤」ということができる。また、前記ブロックコポリマーおよび前記分散剤製造工程は、例えば、特開2015−83688号公報の記載と同様もしくはそれに準じても良いし、または、それを参考にしても良い。具体的には、例えば、以下のとおりである。
【0040】
前記ブロックコポリマーは、例えば、前記疎水性ポリマーブロック(以下、単に「疎水性ブロック」または「疎水性ブロックA」または「Aブロック」ということがある。)−前記親水性ポリマーブロック(以下、単に「親水性ブロック」または「親水性ブロックB」または「Bブロック」ということがある。)からなるジブロックコポリマーであっても良い。前記ブロックコポリマーは、例えば、有機ヨウ化物を重合開始化合物とし、有機リン化合物、有機窒素化合物または有機酸素化合物を触媒として、ラジカル発生剤を用いて付加重合性モノマーを重合して得られたブロックコポリマーであっても良い。
【0041】
前記ブロックコポリマー分子中において、前記Aブロック(疎水性ブロック)の含有率は、例えば、5〜95質量%、10〜90質量%、15〜85質量%、または20〜80質量%である。また、前記ブロックコポリマー分子中において、前記Bブロック(親水性ブロック)の含有率は、例えば、5〜95質量%、10〜90質量%、15〜85質量%、または20〜80質量%である。
【0042】
また、前記Aブロック(疎水性ブロック)の原料である疎水性モノマーは、例えば、疎水基を有する(メタ)アクリレート((メタ)アクリス酸エステル)、疎水基を有するビニル化合物、疎水基を有するアリル化合物、等が挙げられる。前記Bブロック(親水性ブロック)の原料である親水性モノマーは、例えば、親水基を有する(メタ)アクリレート((メタ)アクリス酸エステル)、親水基を有するビニル化合物、親水基を有するアリル化合物、等が挙げられる。例えば、前記疎水性モノマーがラウリル(メタ)アクリレートを含み、かつ、親水性モノマーがポリエチレングリコールメタクリレートを含んでいても良い。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」の一方または両方をいい、「(共)重合」とは「重合」と「共重合」の一方または両方を意味する。「(メタ)アクリレート」についても同様である。また、「(ポリ)アルキレン………」は「アルキレン………」と「ポリアルキレン………」の一方または両方をいう。「(ポリ)エチレン………」についても同様である。
【0043】
前記分散剤(ブロックコポリマー)は、前述のとおり、疎水性ポリマーブロックAおよび親水性ポリマーブロックBを含んで形成されたジブロックの構造で(以下「A−Bジブロックポリマー」という場合がある。)ある。例えば、前記分散液調製工程において、前記分散剤(ブロックコポリマー)を、前記多孔性粒子原料(モノマーおよびプレポリマーの少なくとも一方を含む)とともに前記分散媒中に分散させる。前記多孔性粒子原料が前記分散媒に対し相対的に親水性が高い場合、例えば、親水性ポリマーブロックBが前記多孔性粒子原料に吸着し、前記多孔性粒子原料が凝集してできた粒子の表面を、疎水性ポリマーブロックAが被覆する。これにより、疎水性ポリマーブロックAが、疎水性の前記分散媒に向き合う形となる。逆に、前記多孔性粒子原料が前記分散媒に対し相対的に疎水性が高い場合、例えば、疎水性ポリマーブロックAが前記多孔性粒子原料に吸着し、前記多孔性粒子原料が凝集してできた粒子の表面を、親水性ポリマーブロックBが被覆する。これにより、親水性ポリマーブロックBが、親水性の前記分散媒に向き合う形となる。このようにして、前記多孔性粒子原料が前記分散媒中に粒子状に分散した状態とすることができる。この状態は、例えば、前記多孔性粒子原料が前記分散媒中に乳化(懸濁)した状態ということもできる。これにより、例えば、重合前および重合後の前記分散液の分散安定性や保存安定性を向上させることもできる。
【0044】
なお、前記多孔性粒子原料(モノマーおよびプレポリマーの少なくとも一方を含む)については前述のとおりであるが、例えば、前記多孔性原料が、ラジカル重合性あるいは熱硬化性のモノマーおよびプレポリマーの少なくとも一方を含んでいても良い。また、前記モノマーおよびプレポリマーは、例えば、親水性のモノマーおよびプレポリマーであっても良い。
【0045】
つぎに、前記ブロックコポリマー(分散剤)の製造方法は、例えば、前述のとおり、有機ヨウ化物を重合開始化合物とし、有機リン化合物、有機窒素化合物または有機酸素化合物を触媒として、ラジカル発生剤を用いて付加重合性モノマー(疎水性モノマーおよび親水性モノマー)を重合する製造方法であっても良い。このような製造方法は、例えば、特開2015−83688号公報に記載されている。この製造方法によれば、重金属、臭気、着色、コストなどの問題がない。具体的には、例えば、下記(1)〜(6)の利点がある。

(1)重金属化合物を使用しない;ATRP法やDT法のような重金属化合物を使用しない。
(2)精製が必須ではない;ATRP法やDT法は重金属、RAFT法やMADIX法は硫黄化合物の除去が必要である。
(3)特殊で高価な化合物を必要とせず、市場にある比較的安価な材料が使用でき、よって低コストである;他のリビングラジカル重合方法では特別な化合物が必要である。
(4)重合条件が温和で、従来のラジカル重合方法と同様の条件で重合を行うことができる;NMP法では高温が必要であり、ATRP法では酸素の除去が必要である。
(5)使用するモノマーや溶媒なども精製する必要がなく、様々なモノマーが使用でき、酸基、アミノ基などの様々な官能基を有するモノマーを使用することが可能で、ポリマーブロックに様々な官能基を導入することができる;特にATRP法では酸基がその触媒毒となり、酸基をそのまま使用することはできない。NMP法ではメタクリレートはうまく重合しない。
(6)分子量と構造が制御でき、所望の結合状態のブロックポリマーが容易に得られ、かつ重合率も非常によい。
【0046】
なお、前記説明は例示であって、本発明において、前記ブロックコポリマー(分散剤)の製造方法は、特に限定されない。すなわち、前記ブロックコポリマー(分散剤)の製造方法は、特開2015−83688号公報に記載の方法のみには限定されず、どのような製造方法でも良い。
【0047】
前記Aブロックを形成する疎水性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−メチルプロパン(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、べへニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロデシルメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、t−ブチルベンゾトリアゾールフェニルエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの脂肪族、脂環族、芳香族アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられ、特にラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の長いものが好ましい。前記疎水性モノマーは、1種類のみ用いても良いが、複数種類併用しても良い。
【0048】
Bブロックを構成する親水性モノマーは、特に限定されないが、例えば、ポリグリコール基を有するモノマーが挙げられ、より具体的には、例えば、ポリ(n=2以上)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)テトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノまたはポリ(n=2以上)エチレングリコールモノまたはポリ(n=2以上)プロピレングリコールランダムコポリマーのモノ(メタ)アクリレート、モノまたはポリ(n=2以上)エチレングリコールモノまたはポリ(n=2以上)プロピレングリコールブロックコポリマーのモノ(メタ)アクリレート、などのポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、さらには(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノオクチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノステアリルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノオレイルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノステアリン酸エステル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノオクチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレートなどの(ポリアルキレン)グリコールモノアルキル、アルキレン、アルキンエーテルまたはエステルのモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、特にポリ(n=6以上)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが望ましい。なお、前記nは、前記ポリグリコール基における重合度を表す。また、前記親水性モノマーは、1種類のみ用いても複数種類併用しても良い。
【0049】
また、前記ブロックコポリマー(分散剤)は、前記疎水性ポリマーブロックA(Aブロック)および親水性ポリマーブロックB(Bブロック)のみから形成されていても良いが、それ以外の構成要素を含んで(共重合されて)いても良い。前記AブロックおよびBブロックの基本的性質を変えない範囲で共重合し得るモノマーとしては、従来公知のモノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ビニルヒドロキシベンゼン、クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルエチルベンゼン、ビニルジメチルベンゼン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブテン、ブタジエン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、シクロデセン、ジクロロエチレン、クロロエチレン、フロロエチレン、テトラフロロエチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソシアナトジメチルメタンイソプロペニルベンゼン、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、ヒドロキシメチルスチレンなどのビニル系モノマー、水酸基を含有するモノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、さらには、その他のモノマーとしては、(メタ)アクリロイロキシエチルモノまたはポリ(n=2以上)カプロラクトンなどの前記した(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ε−カプロラクトンやγ−ブチロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られるポリエステル系モノ(メタ)アクリル酸エステル;2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレートや2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルスクシネートなどの前記した(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルに2塩基酸を反応させてハーフエステル化したのち、もう一方のカルボキシル基にアルコール、アルキレングリコールを反応させたエステル系(メタ)アクリレート;グリセロールモノ(メタ)アクリレートやジメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレートなどの3個以上の水酸基をもつ多官能水酸基化合物のモノ(メタ)アクリレート;3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロオクチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレートなどのハロゲン元素含有(メタ)アクリレート;2−(4−ベンゾキシ−3−ヒドロキシフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの如き紫外線を吸収するモノマー、特にこのモノマーは色素の耐光性を向上させるのに共重合するとよい;エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレートなどのα位水酸基メチル置換アクリレート類などが挙げられる。
【0050】
前記ブロックコポリマー(分散剤)の分子量は、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下GPC)におけるスチレン換算の数平均分子量(以下数平均分子量はGPCのスチレン換算を言い、単に分子量という)で、例えば1,000以上、1,500以上、2,000以上または3,000以上であり、例えば300,000以下、100,000以下、または50,000以下である。前記分子量の範囲は、例えば、1,000〜300,000、好ましくは1,500〜100,000、さらに好ましくは2,000〜50,000、さらに好ましくは3,000〜50,000である。前記多孔性粒子原料の、前記分散媒中への分散安定性の観点からは、前記ブロックコポリマー(分散剤)の分子量が1,000以上であることが好ましい。また、前記ブロックコポリマー(分散剤)の、前記分散媒に対する溶解性の観点からは、前記ブロックコポリマー(分散剤)の分子量が300,000以下であることが好ましい。前記ブロックコポリマー(分散剤)の分子量が大きすぎると分散媒中での分散剤同士の凝集や分子間の絡まりが強くなりすぎて前記多孔性粒子原料の分散が出来ないおそれがある。
【0051】
前記ブロックコポリマー(分散剤)における、重量平均分子量と数平均分子量の比である分散度(以下PDIと称す)は、特に限定されない。リビングラジカル重合では非常に小さいPDI(〜1.3)の高分子分散剤とすることができるが、本発明では前記ブロックコポリマー(分散剤)が前記したブロック構造をとることが重要であるので、PDIは大きくは関与しない。しかし、あまりに広いPDIであると、前記ブロックコポリマー(分散剤)が、分子量の大きいポリマーから分子量の小さいポリマーまで含むことになり、前記した分子量範囲以外の現象が起こる可能性があり好ましくない。本発明で用いる前記ブロックコポリマー(分散剤)では、PDIは好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下である。
【0052】
つぎに、前記ブロックコポリマー(分散剤)中における疎水性ブロックと親水性ブロックの質量比は、特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。この疎水性ブロックと親水性ブロックの質量比を適切に制御することで、例えば、本発明の多孔性粒子の製造方法において、前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面を適切な状態に維持することができる。これによって、例えば、前記多孔性粒子原料が前記分散媒中に粒子状に分散した状態を維持できるので、略球状の本発明の多孔性粒子を製造できる。また、例えば、前記疎水性ブロックと親水性ブロックの質量比を適切に制御することで、前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面において、親水性物質と疎水性物質との比を適切な状態に制御することができる。例えば、前記界面において、親水性物質または疎水性物質の一方が偏在すると、それが重合等を起こすことにより、スキン層が形成されるおそれがある。このスキン層により、多孔性粒子表面で貫通孔が塞がれてしまいやすい。しかし、前記界面において、親水性物質と疎水性物質との比を適切な状態に制御することで、スキン層の形成を防止することができる。ただし、これらの説明は例示であって、本発明を限定しない。
【0053】
つぎに本発明で用いる前記ブロックコポリマー(分散剤)を得る重合方法(製造方法)について説明する。この重合方法は、特に限定されないが、例えば、前述のとおり、有機ヨウ化物を重合開始化合物とし、有機リン化合物、有機窒素化合物または有機酸素化合物を触媒として、ラジカル発生剤を用いて付加重合性モノマー(疎水性モノマーおよび親水性モノマー)を重合する方法であっても良い。この重合方法は、金属化合物やリガンドを使用せず、ニトロキサイド、ジチオカルボン酸エステルやザンテートなどの特殊な化合物を使用しなくてもよく、従来の付加重合性モノマーとラジカル発生剤である重合開始剤を使用するラジカル重合に、有機ヨウ化物である開始化合物と触媒を併用するだけで、容易に行えるリビングラジカル重合である。
【0054】
上記重合方法は、下記一般反応式1
【数1】
で表される反応機構で進み、ドーマント種Polymer−X(P−X)の成長ラジカルへの可逆的活性反応であると考えられる。この重合機構は触媒の種類によって変わる可能性があるが、つぎのように進むと考えられる。上記式1では、重合開始剤から発生したP・がXAと反応して、in siteで触媒A・が生成する。A・はP−Xの活性化剤として作用して、この触媒作用によってP−Xは高い頻度で活性化する。
【0055】
さらに詳しくは、ヨウ素(X)が結合した開始化合物の存在下、重合開始剤から生じるラジカルが、触媒の活性水素や活性ハロゲン原子を引き抜き、触媒ラジカルA・となる。ついでそのA・が開始化合物のXを引き抜きXAとなり、その開始化合物がラジカルとなって、そのラジカルにモノマーが重合し、すぐにXAからXを引き抜き、停止反応を防止する。さらに熱などによってA・が末端XからXを引き抜きXAと末端ラジカルとなってそこにモノマーが反応して、すぐに末端ラジカルにXを与え安定化させる。この繰り返しで重合が進行して分子量や構造の制御ができる。但し、場合によっては、副反応として、二分子停止反応や不均化を伴うことがある。
【0056】
前記リビングラジカル重合を開始させる開始化合物は、従来公知の有機ヨウ化物であって特に限定されない。具体的に例示すると、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化t−ブチル;アイオドフェニルメタン、アイオドジフェニルメタン、アイオドトリフェニルメタン、2−アイオド−1−フェニルエタン、1−アイオド−1−フェニルエタン、1−アイオド−1,1−ジフェニルエタン、ジヨードメタンなどのアルキルヨウ化物;アイオドジクロロメタン、アイオドクロロメタン、アイオドトリクロロメタン、アイオドジブロモメタンなどのヨウ素原子を含む有機ハロゲン化物;1−アイオドエタノール、1−アイオドプロパノール、2−アイオドプロパノール、2−アイオド−2−プロパノール、2−アイオド−2−メチルプロパノール、2−フェニル−1−アイオドエタノール、2−フェニル−2−アイオドエタノールなどのヨウ化アルコール;それらのヨウ化アルコールを酢酸、酪酸、フマル酸などのカルボン酸化合物とのエステル化合物;アイオド酢酸、α−アイオドプロピオン酸、α−アイオド酪酸、α−アイオドイソ酪酸、α−アイオド吉草酸、α−アイオドイソ吉草酸、α−アイオドカプロン酸、α−アイオドフェニル酢酸、α−アイオドジフェニル酢酸、α−アイオド−α−フェニルプロピオン酸、α−アイオド−β−フェニルプロピオン酸、β−アイオドプロピオン酸、β−アイオド酪酸、β−アイオドイソ酪酸、β−アイオド吉草酸、β−アイオドイソ吉草酸、β−アイオドカプロン酸、β−アイオドフェニル酢酸、β−アイオドジフェニル酢酸、β−アイオド−α−フェニルプロピオン酸、β−アイオド−β−フェニルプロピオン酸などのヨウ化カルボン酸;それらヨウ化カルボン酸のメタノール、エタノール、フェノール、ベンジルアルコール、さらには前記したヨウ化アルコールなどとのエステル化物;それらのヨウ化カルボン酸の酸無水物;それらのヨウ化カルボン酸のクロライド、ブロマイドなどの酸無水物;ヨードアセトニトリル、2−シアノ−2−アイオドプロパン、2−シアノ−2−アイオドブタン、1−シアノ−1−アイオドシクロヘキサン、2−シアノ−2−アイオドバレロニトリルなどのシアノ基含有ヨウ化物などが挙げられる。また、ヨウ素を2つもつ2官能開始化合物も使用でき、例えば、1,2−ジアイオドエタン、1,2−ジアイオドテトラフロロエタン、1,2−ジアイオドテトラクロロエタン、1,2−ジアイオド−1−フェニルエタン、前記したα−アイオドイソ酪酸などのヨウ化カルボン酸とエチレングリコールなどのジオール、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミンとの反応物などが挙げられる。なお、「アイオド」は「ヨード」と同義であり、ヨウ化物を表す。以下において同様である。また、前記開始化合物は、1種類のみ用いても2種類以上併用しても良い。
【0057】
また、これらの化合物は、例えば、市販品をそのまま使用しても良いし、従来公知の方法で得ることもできる。例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物とヨウ素の反応によって得られるし、または前記した有機ヨウ化物のヨウ素の代わりにブロマイド、クロライドなどの他のハロゲン原子が置換した有機ハロゲン化物を、第4級アンモニウムアイオダイドやヨウ化ナトリウムなどのヨウ化物塩を使用しハロゲン交換反応させて本発明で用いる有機ヨウ化物を得ることができる。それらは特に限定されない。
【0058】
前記触媒としては、例えば、前記開始化合物のヨウ素原子を引き抜き、ラジカルとなる有機リン化合物、有機窒素化合物、または有機酸素化合物であって、好ましくは、ヨウ素原子を含むハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート系化合物である有機リン化合物、またはイミド系化合物、ヒダントイン系化合物である有機窒素化合物、またはフェノール系化合物、アイオドオキシフェニル化合物、ビタミン類である有機酸素化合物の1種以上から選ばれる。これらの化合物は特に限定されないが、具体的に例示すると、リン化合物では、ヨウ素原子を含むハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート系化合物であり、例えば、ジクロロアイオドリン、ジブロモアイオドリン、三ヨウ化リン、ジメチルフォスファイト、ジエチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、ジパーフロロエチルフォスフィネート、ジフェニルフォスファイト、ジベンジルフォスファイト、ビス(2−エチルヘキシル)フォスファイト、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フォスファイト、ジアリルフォスファイト、エチレンフォスファイト、エトキシフェニルフォスフィネート、フェニルフェノキシフォスフィネート、エトキシメチルフォスフィネート、フェノキシメチルフォスフィネートなどが挙げられる。窒素化合物ではイミド系化合物、ヒダントイン系化合物であり、例えば、スクシンイミド、2,2−ジメチルスクシンイミド、α,α−ジメチル−β−メチルスクシンイミド、3−エチル−3−メチル−2,5−ピロリジンジオン、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、5−メチルヘキサヒドロイソインドール−1,3−ジオン、2−フェニルスクシンイミド、α−メチル−α−フェニルスクシンイミド、2,3−ジアセトキシスクシンイミド、マレイミド、フタルイミド、4−メチルフタルイミド、N−クロロフタルイミド、N−ブロモフタルイミド、N−ブロモフタルイミド、4−ニトロフタルイミド、2,3−ナフタレンカルボキシイミド、ピロメリットジイミド、5−ブロモイソインドール−1,3−ジオン、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−アイオドスクシンイミド、ヒダントイン、ジアイオドヒダントインなどが挙げられる。酸素化合物としては、芳香環に水酸基を有するフェノール性水酸基であるフェノール系化合物、そのフェノール性水酸基のヨウ素化物であるアイオドオキシフェニル化合物、ビタミン類であり、例えば、フェノール類としてフェノール、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t−ブチルフェノール、t−ブチルメチルフェノール、カテコール、レソルシノール、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、ジ−t−ブチルメトキシフェノール、ヒドロキシスチレンを重合したポリマーまたはそのヒドロキシフェニル基担持ポリマー微粒子などが挙げられる。これらはモノマーの保存として重合禁止剤として添加されているので、市販品のモノマーを精製せずそのまま使用することで効果を発揮することもできる。アイオドオキシフェニル化合物としてはチモールジアイオダイドなどが挙げられ、ビタミン類としてはビタミンC、ビタミンEなどが挙げられる。
【0059】
前記触媒の量としては、特に限定されないが、例えば、前記重合開始剤のモル数未満である。前記触媒のモル数が多すぎると、重合が制御されすぎて重合が進行しないおそれがある。
【0060】
つぎに、本発明で使用される重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、通常用いられている有機過酸化物やアゾ化合物等の、従来公知の重合開始剤を使用することができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシル−3,3−イソプロピルヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、ジクミルヒドロパーオキシド、アセチルパーオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキシド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチレート)、2,2’−アゾビス(メトキシジメチルバレロニトリル)などが挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用しても良い。
【0061】
前記重合開始剤の使用量は特に限定されないが、例えば、モノマーモル数に対して0.001〜0.1モル倍、さらに好ましくは0.002〜0.05モル倍である。前記重合開始剤の使用量があまりに少ないと重合が不十分になる恐れがあり、また、多すぎると付加重合モノマーだけのポリマーができてしまう恐れがある。
【0062】
以上のとおり、有機ヨウ化物である開始化合物、付加重合性モノマー、重合開始剤および触媒を少なくとも使用して重合することによって、本発明で用いる前記ブロックコポリマー(分散剤)を得ることができる。上記重合は、有機溶剤を使用しないバルクで重合を行ってもよいが、溶媒を使用する溶液重合が好ましい。用いる有機溶剤は特に限定されず、本発明に使用する有機ヨウ化物、触媒、付加重合性モノマーおよび重合開始剤を溶解する溶媒であればよい。前記有機溶剤を例示すると、ヘキサン、オクタン、デカン、イソデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジグライム、トリグライム、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルトリエチレングリコール、メチルジプロピレングリコール、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルシクロプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、カプロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、カプロラクタムなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、炭酸エチル、ニトロメタン、アセトニトリル、ニトロベンゼン、ジオクチルフタレートなどが挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用しても良い。
【0063】
重合液の固形分(モノマー濃度)としては、特に限定されないが、例えば5〜80質量%、好ましくは20〜60質量%である。重合をスムーズに完結させる観点からは、前記モノマー濃度が低すぎないことが好ましい。また、重合液の粘度が高くなりすぎ、攪拌が困難になったり、重合率が悪くなったりすることを防止する観点からは、前記モノマー濃度が高すぎないことが好ましい。
【0064】
重合温度は特に限定されず、0℃〜150℃、さらに好ましくは30℃〜120℃である。重合温度は、それぞれの重合開始剤の半減期によって調整される。また、重合時間は、モノマーがなくなるまで重合を続けることが好ましいが、特に限定されず、例えば、0.5時間〜48時間、実用的な時間として好ましくは1時間〜24時間、さらに好ましくは2時間〜12時間である。
【0065】
前記重合反応の雰囲気は、特に限定されず、例えば大気中でそのまま重合してもよく、すなわち、系内に通常の範囲内で酸素が存在してもよいし、必要に応じて、酸素を除去するため窒素やアルゴン気流下で行ってもよい。また、使用する材料は、蒸留、活性炭やアルミナで不純物を除去してもよいが、市販品をそのまま使用できる。また、重合は、遮光下で行ってもよいし、ガラスのような透明容器中で行ってもなんら問題はない。
【0066】
前記ブロックコポリマー(分散剤)の製造方法(重合方法)の操作およびメカニズムは、例えば、以下のとおりである。まず、1官能の有機ヨウ化物を開始化合物として、少なくとも酸基を有する付加重合性モノマーを前記方法によって重合し、1つのポリマーブロック(Aブロックとする)を得る。このポリマー末端はヨウ素基で置換されているため安定化しており、再度モノマーを添加し、熱などによって解離させ、あるいは更に少しラジカル開始剤を少し追加して再び重合を開始することができる。
【0067】
このAブロックを取り出して精製して、再び有機溶剤に溶解させ、これを開始化合物として、次のモノマーを追加して、好ましくは触媒および重合開始剤を追加して重合することにより、ポリマー末端ヨウ素が解離して再度重合が開始し、BブロックがAブロックに連結したジブロックポリマーを得ることができる。また、Aブロックを形成後、ポリマーを取り出さずにそのままBブロックモノマーを加えて、好ましくは触媒および重合開始剤を加えて重合を行うことによって前記ブロックコポリマー(分散剤)を得ることができる。
【0068】
同様にして、上記ブロックの生成を逆にして、先に親水性のポリマーであるBブロックモノマーを重合して、ついで疎水性基を有するモノマーを少なくとも含むモノマーを重合してA−Bのジブロックポリマー(前記ブロックコポリマー)を得てもよい。
【0069】
本発明で用いる重合では、例えば、開始化合物の量によってポリマーの分子量をコントロールすることができる。より具体的には、例えば、開始化合物のモル数に対してモノマーのモル数を設定することで、任意の分子量、または分子量の大小を制御できる。例えば、開始化合物を1モル使用して、分子量100のモノマーを500モル使用して重合した場合、1×100×500=50,000の理論分子量を与えるものであり、すなわち、設定分子量として、
[開始化合物1モル×モノマー分子量×モノマー対開始化合物モル比]
で算出することができる。
【0070】
しかし、本発明で用いる重合方法では、二分子停止や不均化の副反応を伴う場合があり、上記の理論分子量にならない場合がある。これらの副反応がないポリマーが好ましいが、カップリングして分子量が大きくなっても、停止して分子量が小さくなっていてもよい。また、重合率が100%でなくてもよく、残ったモノマーは留去したり、ブロックポリマーを析出する際に除去したり、所望のブロックポリマーを得た後、重合開始剤や触媒を加えて重合を完結させてもよい。本発明で用いるジブロックポリマーを生成、含有していればよく、それぞれのブロックポリマー単位を含んでいてもなんら問題はない。好ましくは、本発明のブロックポリマーを50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含有する前記ブロックコポリマー(分散剤)であればよい。また、前記した副反応を伴うことによってPDIは広くなるが、そのPDIは特に限定されず、好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下である。
【0071】
以上のようにして、有機ヨウ化物を開始化合物として、付加重合性モノマー、重合開始剤および触媒を少なくとも使用して重合することによって、本発明で用いる前記ブロックコポリマー(分散剤)であるジブロックポリマーを得ることができる。ただし、前述のとおり、この製造方法(重合方法)は任意であり、本発明で用いる前記ブロックコポリマー(分散剤)は、どのような方法で製造しても良い。
【0072】
[2−3.重合による多孔性粒子の製造]
本発明の多孔性粒子の製造方法は、具体的には、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0073】
まず、モノマーおよびプレポリマーの少なくとも一方を含む多孔性粒子原料を、前記ブロックコポリマー(分散剤)を予め添加している分散媒中に分散させて分散液を調製する(分散液調製工程)。多孔性粒子原料については、前述のとおりである。前記分散液調整工程は、具体的には、例えば、シリカモノマーおよびシリカプレポリマーの少なくとも一方を含むとともにポロゲンとなる溶媒を含む多孔性粒子原料と、前記ブロックコポリマー(分散剤)を予め添加している疎水性有機溶剤(分散媒)とを混合して多孔性粒子原料を疎水性有機溶剤中に粒子状に分散させる。そして、その後、例えば、前記分散液を加熱して前記重合工程を行う。そして、重合によりシリカゲル製の多孔性粒子を得る(重合工程)。その後、必要に応じ、前記多孔性粒子から、溶媒、未反応物等を除去する。
【0074】
原料であるシリカモノマーおよびシリカプレポリマーについては前述のとおりである。なかでも、ポロゲンに溶解可能なシリカモノマーおよびシリカプレポリマーが特に好ましい。
【0075】
本発明において、用語「ポロゲン」とは、細孔形成剤としての不活性溶媒又は不活性溶媒混合物を指称する。ポロゲンは、重合のある段階で多孔性ポリマーを形成させる重合反応中に存在し、所定の段階でこれを反応混合物中から除去することによって、三次元網目状骨格構造および連通する空隙を有する多孔体が得られる。
【0076】
本発明において、前記ポロゲンは、例えば、前記多孔性粒子原料を溶解させることができ、かつ前記多孔性粒子原料が重合した後、反応誘起相分離を生じさせることが可能な溶媒である。前記ポロゲンとしては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類等が挙げられる。中でも分子量200〜20,000程度のポリエチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましく、特に分子量200〜20,000程度のポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。前記ポロゲンは、1種類のみ用いても良いし、2種類以上併用しても良い。
【0077】
本発明においては、ポロゲンとして、水酸基を有し、水酸基価100(mgKOH/g)以上のポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体を使用することが望ましい。水酸基価が100(mgKOH/g)より小さくなると粘度が高くなり、形成されるシリカゲル製多孔体の孔径を大きくすることが困難になったり、シリカゲル製多孔体への親水性の付与効果が低下することがある。シリカゲル製多孔体表面の水酸基量とポロゲンの水酸基当量とは密接な関係にあり、ポロゲンの水酸基価が小さくなるに連れてシリカゲル製多孔体表面に現れる水酸基量も減少し、表面の親水性が低下するためと考えられる。
【0078】
また、前記多孔性粒子原料は、前述のとおり、例えば、シリカモノマーおよびシリカプレポリマーの少なくとも一方を含むとともにポロゲンとなる溶媒を含む。この多孔性粒子原料は、例えば、前記シリカモノマーおよびシリカプレポリマーの少なくとも一方を、前記ポロゲンに混合して均一化することにより調製することができる。
【0079】
前記多孔性粒子原料中のポロゲンとなる溶媒の含有割合は、例えば、得られるシリカゲル製多孔性粒子の細孔径、細孔分布等に影響し、ポロゲンの含有割合が多いと細孔径は大きく、少ないと細孔径は小さくなる傾向にある。また、ポロゲンの含有割合が多いと細孔分布はブロードとなり、少ないとシャープとなる傾向にある。
【0080】
前記多孔性粒子原料中のポロゲン溶媒の含有割合は、前記多孔性粒子原料中に含まれる前記シリカモノマーおよびシリカプレポリマーの少なくとも一方に対して、通常50〜300重量%であることが好ましく、100〜200重量%であることがより好ましい。ポロゲンの含有割合が上記下限以上であるとより空孔率の高い多孔質構造を形成することができ、他方、上記上限以下であると得られる多孔性粒子の空孔率を適度な範囲に抑えることができ、機械的強度が向上する傾向にある。
【0081】
前記多孔性粒子原料の調製方法としては特に制限されず、常温で又は加温しながら前記シリカモノマーおよびシリカプレポリマーの少なくとも一方を混合する方法を採用してもよく、常温で又は加温しながら前記シリカモノマーおよびシリカプレポリマーの少なくとも一方をポロゲン中に添加して混合ないしは溶解させる方法を採用してもよい。
【0082】
つぎに、前記分散液調製工程において、例えば、十分に剪断力を与えて撹拌すれば、前記多孔性粒子原料を粒子状に分散させることが可能である。この場合において、前記粒子の大きさや粒径分布を考慮して適切な方法をとることが出来る。例えば、前記多孔性粒子原料の分散方法としては、十分な剪断力を与えられる方法で良い。より具体的には、例えば、プロペラ型、パドル型、タービン型、スクリュー型などの各種の形状の撹拌羽根を有する装置だけでなく、自転・公転ミキサーや試験管の底部を高速旋回して内容液を撹拌する「ボルテックスミキサー」、超音波撹拌、膜乳化法など公知の方法が使用できる。出来るだけ粒径が一定になる方法を選ぶことが好ましい。
【0083】
前記分散液調整工程においては、前述のとおり、例えば、前記多孔性粒子原料と、前記ブロックコポリマー(分散剤)を予め添加している疎水性有機溶剤(分散媒)とを混合して前記多孔性粒子原料を疎水性有機溶剤中に粒子状に分散させても良い。前記ブロックコポリマー(分散剤)を予め添加している疎水性有機溶剤(分散媒)中において、前記ブロックコポリマー(分散剤)濃度は、特に限定されないが、例えば、前述のとおり1〜500g/L、2〜300g/L、または3〜250g/Lである。前記ブロックコポリマー濃度を上記下限以上とすると、粒径の制御が容易であったり、重合時の凝集を抑制することができ、上記上限以下とすると、重合時に泡が立ったり粘度が上昇することを抑制でき、製造が容易となる。そして、前述のとおり、前記多孔性粒子原料を疎水性有機溶剤中に粒子状に分散させた油中水滴型の乳化物を形成した状態で、次の重合工程を行うことができる。
【0084】
また、前記多孔性粒子原料を前記分散液中で重合させる重合工程において、分散剤(例えば、前記ブロックコポリマーまたは界面活性剤)の使用量は、特に限定されないが、前記シリカモノマー、前記シリカプレポリマー、およびポロゲンの合計量に対して、例えば、1〜20重量%、または2〜10重量%程度である。前記分散剤の使用量は、例えば、得られる多孔性粒子の平均粒径や粒度分布、粒子の凝集に影響する。前記分散剤の使用量が多いと平均粒径や粒度分布、粒子の凝集を制御とすることができ、少ないと泡立ちや粘度を低く保つことができる傾向にある。よって、前記分散剤の使用量が上記下限以上であると、原料混合液を均一に乳化できて粒度分布を狭い範囲にすることができたり、粒子の凝集を抑制することができる。また、上記上限以下であると、泡立ちや粘度の上昇を抑制することができ、製造が容易となる。
【0085】
前記重合工程において、反応温度は、特に限定されず、適宜設定可能である。前記反応温度は、基本的には原料モノマーおよび原料プレポリマーによって決まり、また、撹拌速度やポロゲン、界面活性剤の使用量等によっても異なるが、例えば、20〜250℃、40〜220℃、または50〜200℃である。前記加熱温度は、例えば、得られる多孔性粒子の細孔径に影響する。加熱温度が高いと得られる多孔性粒子の細孔径が小さくなり、加熱温度が低いと得られる多孔性粒子の細孔径が大きくなる傾向がある。加熱温度が適度に高いと付加重合反応が円滑に進行し、加熱温度が適度に低いと反応速度が速くなり過ぎることを防止し、多孔質構造をうまく形成することができる。
【0086】
前記重合工程において、反応時間も特に限定されず、適宜設定可能である。前記反応時間は、撹拌速度、加熱温度やポロゲン、界面活性剤の使用量等によっても異なるが、例えば、0.01〜100hr、0.05〜24hr、または0.1〜20hrである。前記反応時間は、例えば、得られる多孔性粒子の反応率に影響する。反応時間が長いと反応率が高く未反応物が少ないため機械的強度が高くなる傾向があり、反応時間が短いと反応率が低く未反応物が多いため機械的強度が低くなる傾向がある。反応時間が適度に長いと付加重合反応が十分に進行して所望の多孔質構造を形成でき、適度に短いと撹拌による破砕などの可能性を低減することができる。
【0087】
また、前記重合工程において、前記分散液を攪拌しながら反応を行うことが好ましい。攪拌速度は特に限定されず、加熱温度や反応スケール、ポロゲン、界面活性剤の使用量等によっても異なるが、例えば、10〜20,000rpm、30〜10,000rpm、50〜5,000rpm、50〜800rpm、または100〜400rpmである。なお、「rpm」は、1分間あたりの回転数を表す。前記撹拌速度は、例えば、得られる多孔性粒子の粒径に影響する。一般的に、撹拌速度が大きいと得られる多孔性粒子の粒径が小さくなり、撹拌速度が小さいと得られる多孔性粒子の粒径が大きくなる傾向がある。撹拌速度が適度に大きいと相分離等が抑制され、均一な粒径のものを得ることができ、撹拌速度が適度に小さいと粒子径が小さくなりすぎず、泡立ちも抑制可能である。
【0088】
前記重合工程が終了したら、前述のとおり、必要に応じ、前記多孔性粒子からポロゲン、溶媒、未反応物等を除去する。具体的には、例えば、前記多孔性微粒子を含む分散媒を多量の洗浄用溶媒で希釈して沈降粒子を遠心分離機で分けることを繰り返して十分に洗浄した後、減圧乾燥機で前記洗浄用溶媒を除く。なお、前記洗浄用溶媒は、分散媒とポロゲンに対する溶解性が高い溶媒が好ましく、また、沸点が低く除去しやすい溶媒が好ましい。前記洗浄用溶媒としては、具体的には、メチルエチルケトン等が挙げられる。このようにして、本発明の多孔性粒子を得ることが出来る。
【0089】
また、製造した前記多孔性粒子は、例えば、物理的処理または化学的処理による表面の改質等を行っても良い。前記物理的処理または化学的処理は、例えば、クロマトグラフィー用の分離剤としての特性を向上させる目的で行うことができる。前記物理的処理または化学的処理としては、例えば、表面親水化、表面疎水化、官能基導入等が挙げられる。
【0090】
本発明の多孔性粒子の用途は特に限定されないが、例えば、新規な吸着分離剤としてとして非常に有用である。より具体的には、本発明の多孔性粒子は、例えば、クロマトグラフィー用の分離剤として用いることができる。前記クロマトグラフィーの分離対象物としては、例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸等の生体関連物質やそれ以外の化学物質の分離、等が挙げられる。また、本発明の多孔性粒子の用途は、これに限定されず、例えば、化粧品用フィラー、タイヤ用フィラー、塗料・インキ用のフィラー、徐放性薬剤用基剤、反応触媒を担持してカラムリアクター用充填剤、殺菌剤、電池用セパレータ等、種々の用途に使用可能である。なお、電池用セパレータの場合は、例えば、本発明の多孔性粒子を、電極の表面にコーティングして電池用セパレータとすることができる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0092】
<合成例:A−Bブロックコポリマー(分散剤)の合成>
以下の合成例1〜2のようにして、疎水性ポリマーブロックAおよび親水性ポリマーブロックBから形成されたA−Bブロックコポリマー(分散剤)を製造(合成)した。これらのブロックコポリマーは、構成するモノマーがすべて(メタ)アクリレート系モノマーで、A鎖のポリマーブロックが、疎水性基を有する(メタ)アクリレートであり、B鎖のポリマーブロックが親水性基を有する(メタ)アクリレートを構成成分とする。また、GPCにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が2,000〜100,000であり、そのPDIが1.6以下であり、疎水性基を有する(メタ)アクリレートからなるAのポリマーブロックの数平均分子量が80,000未満かつ全体の構成成分の20〜95質量%である。なお、以下において、各物質の部数は、特に断らない限り、質量部(重量部)である。
【0093】
[合成例1]
撹拌機、還流コンデンサー、温度計および窒素導入管を取り付けた反応容器に、トルエン5.23部、ラウリルメタクリレート(以下、LMAと略記)5部、ヨウ素0.0495部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、V−70と略記)0.909部、アゾビスジメチルイソバレロニトリル(以下、V−65と略記)0.0183部、およびテトラブチルアンモニウムヨージド(以下、BNIと略す)0.0726部を仕込んで、窒素を流しながら60℃で撹拌した。16時間重合して、ポリマーブロックAを得た。これをサンプリングして、固形分を測定し、不揮発分から換算した重合転化率は90%であった。この時のGPCの示差屈折計での数平均分子量(以下、RI−Mnと略記)は16,500であり、PDIは1.27であった。
【0094】
次いで、トルエン2.33部、ポリエチレングリコールメタクリレート(以下、PEGMAと略記)9.34部、V−70を0.121部、加え、さらに、上記と同じ60℃で3時間重合することにより、B鎖を形成、B鎖の数平均分子量は2,100、PDIは1.28、重合転化率は87%であった。このようにしてA−Bブロックコポリマーの溶液を得た。この重合溶液をほぼ同重量のテトラヒドロフランで溶解後、大量のメタノール中に沈殿させ暫く放置した後上澄み液を除去して遠心分離した。その後、得られた沈殿物を同様にテトラヒドロフランに溶解しメタノール中へ沈殿させる工程を2回行った後、得られた沈殿物を乾燥して半流動体状のA−Bブロックコポリマー(分散剤)を得た。収率は41%であった。得られたA−Bブロックコポリマーの数平均分子量は18,700、PDIは1.27であった。以下、このようにして得られた本合成例(合成例1)のブロックコポリマー(分散剤)を「ブロックコポリマーK−1」と称す。
【0095】
[合成例2]
撹拌機、還流コンデンサー、温度計および窒素導入管を取り付けた反応装置に、ジメチルジグリコール(以下、DMDGと略す)33.4部、LMA100部、ヨウ素1.5部、テトラブチルアンモニウムヨージド(以下、BNIと略す)0.7部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名:V−70、和光純薬社製)3.8部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名:V−65、和光純薬社製)1.0部を添加した。そして、アルゴンガスを導入しながら撹拌し、マントルヒーターにて60℃に昇温した。反応系をそのまま60℃に保ち、3時間重合してポリマーブロックAを得た。重合の進行を、反応系中のH−NMR測定により算出したところ、重合率は89%であった。また、THF溶媒によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(検出器:示唆屈折率計)により分子量を算出し、数平均分子量(以下、Mnと略す)が5900、重量平均分子量(以下、Mwと略す)で8200であった。その分子量分布(以下、PDI値と略す)は1.40であった。
【0096】
次いで、上記に続けて反応系にPEGMAを147部、V−65を0.7部、DMDG49部添加し、60℃で所定時間1時間重合して、ポリマーブロックBを形成した。重合の進行を、H−NMR測定により算出した結果、PEGMAの重合率は23%であった。また、GPCより分子量を測定したところ、ブロック共重合体全体のMnが9700、Mwで12000であった。PDI値は1.24であった。
【0097】
上記のようにして得られた重合溶液337部をほぼ同量のTHFで希釈後、飽和食塩水で洗浄することでDMDGと未反応のPEGMAを除き、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮、80℃で乾燥させることでA−Bブロックコポリマーからなる高分子添加剤を118部得た。なお、洗浄操作でDMDGと未反応PEGMAが除ききれなかった場合は、水中で透析(透析膜:スペクトラ/ポア6、MWCO1,000)を用い、その後凍結乾燥した。以下、このようにして得られた本合成例(合成例2)のブロックコポリマー(分散剤)を「ブロックコポリマーK−2」と称す。
【0098】
以下の実施例では、本発明の多孔性粒子を製造した。
【0099】
〔実施例1〕
<シリカモノマー組成物の調製>
50mlのビーカーにポロゲンとしてのポリエチレンオキサイド(略称;PEO、重量平均分子量1万)1.12gと0.01M酢酸10mLを入れてスターラーチップで溶解させた。溶解した後氷水で冷やして撹拌しながらテトラメトキシシラン(略称;TMOS)4.5mlを入れて透明な均一溶液になるまで撹拌し(15分程度)、透明になったことを確認した(加水分解完了)。
【0100】
<分散液調製工程>
円筒状のガラス製サンプル瓶(内径19mm、高さ60mmの)に、分散媒としてドデカン15gに前記A−Bブロックコポリマー(分散剤)K−1を0.9g溶解したものの中に前記シリカ混合物を加え、分散液を調製した。
【0101】
<重合工程および後処理>
前記分散液を、撹拌翼で常温で毎分2000回転で10分間撹拌後、毎分回転数を50回転に下げて高温浴槽中温度40℃で90分間反応させることにより、重合を行った。これにより、微粒子状に分散状態となっているシリカ組成物が粒子の状態で固化した。この重合工程により得られたものをMEKに入れ十分撹拌した後、遠心分離機を用いて粒子を分離した。このMEKによる洗浄工程を10回繰り返してポロゲンや残存モノマー等を十分に除去した後、減圧乾燥してシリカゲルからなる球形の多孔性粒子を2.6g得た。前記多孔性粒子の平均粒径は、12μmであった。また、前記球形の多孔性粒子(球形微粒子)の外観と粒子表面のSEM写真を図1〜4に示した。図1〜4は、本実施例の粒子表面の写真をそれぞれ示す。また、各図は、それぞれ、倍率が100倍、1000倍、5000倍および10000倍の写真をである。図1〜4の各図に示すとおり、このシリカゲル製多孔性粒子は、その内部に、多孔構造が連通している貫通孔を有し、かつ、表面にスキン層が無く、前記貫通孔の端部が、前記多孔性粒子の外部に向かって開口していた。
【0102】
〔実施例2〕
分散剤として、ブロックコポリマーK−1に代えてブロックコポリマーK−2を用いる以外は実施例1と同様にしてシリカゲルからなる球形の多孔性粒子を2.6g得た。前記多孔性粒子の平均粒径は、11μmであった。また、前記球形の多孔性粒子(球形微粒子)の外観と粒子表面および粒子内部のSEM写真は、図1〜4(実施例1)と同様の結果を示していた。すなわち、このシリカゲル製多孔性粒子は、その内部に、多孔構造が連通している貫通孔を有していた。また、このシリカゲル製多孔性粒子の表面にはスキン層が無く、前記貫通孔の端部が、前記多孔性粒子の外部に向かって開口していた。
【0103】
〔実施例3〕
分散剤として、ブロックコポリマーK−1に代えてノニオン性界面活性剤「ユニルーブ10MS−250KB」(日油株式会社の商品名)を用いる以外は実施例1と同様にしてシリカゲルからなる球形の多孔性粒子を3.3g得た。前記多孔性粒子の平均粒径は、12μmであった。また、前記球形の多孔性粒子(球形微粒子)の外観と粒子表面および粒子内部のSEM写真は、図1〜4(実施例1)と同様の結果を示していた。すなわち、このシリカゲル製多孔性粒子は、その内部に、多孔構造が連通している貫通孔を有していた。また、このシリカゲル製多孔性粒子の表面にはスキン層が無く、前記貫通孔の端部が、前記多孔性粒子の外部に向かって開口していた。
【0104】
なお、実施例1〜3のデータを、下記表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
さらに、実施例1〜3の多孔性粒子をクロマトグラフィー用の分離剤として用いたところ、良好な分離特性を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上説明した通り、本発明によれば、貫通孔を有するとともに、形状が均質で前記貫通孔が塞がれていないシリカゲル製多孔性粒子およびその製造方法ならびにその製造方法に用いるブロックコポリマーを提供することができる。本発明の多孔性粒子の用途は特に限定されないが、例えば、新規な吸着分離剤としてとして非常に有用である。より具体的には、本発明の多孔性粒子は、例えば、クロマトグラフィー用の分離剤として用いることができる。前記クロマトグラフィーの分離対象物としては、例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸等の生体関連物質やそれ以外の化学物質の分離、等が挙げられる。また、本発明の多孔性粒子の用途は、これに限定されず、例えば、化粧品用フィラー、タイヤ用フィラー、塗料・インキ用のフィラー、徐放性薬剤用基剤、反応触媒を担持してカラムリアクター用充填剤、等、種々の用途に使用可能である。
図1
図2
図3
図4