【実施例】
【0018】
図1に示すように、スーツケース10は、ケース本体11と、このケース本体11にヒンジ12で繋がれた蓋体13と、ケース本体11に設けた伸縮ハンドル15及び非伸縮形のハンドル16とを備えている。
更に、スーツケース10は、底部17に、車輪ユニット20を備えている。
【0019】
スーツケース10は、図から90°回転させて、ケース本体11を下にし、蓋体13を上にすることや、側面の脚19を床18に当てるようにすることができる。
本発明では、便宜上、
図1の状態で上下を定める。すなわち、車輪ユニット20側を「下」、ハンドル16側を「上」とする。
【0020】
車輪ユニット20は、ケース本体11の底部17に2個、蓋体13の底部17に2個の合計4個を備えることを基本とするが、ケース本体11(又は蓋体13)に2個のみを備えるようにしてもよい。
1個の車輪ユニット20は、1個の車輪21を備えている。よって、本発明は、少なくとも2個の車輪21を備えるスーツケース10に関するものである。
車輪21は、双輪型、単輪型の何れであってもよい。
【0021】
図2(b)に示すように、車輪ユニット20は、車輪21を収納する凹部22を有するハウジング23と、このハウジング23から上に延びる筒部24とを備えている。筒部24はハウジング23に一体形成されるものと、別体でハウジング23に締結されるものの何れであってもよい。
【0022】
図2(a)に示すように、筒部24はリッド25で塞がれている。
また、
図2(c)に示すように、車輪21は旋回可能なキャスター輪である。車輪21は非旋回輪であっても差し支えに。そして、凹部22から外れた位置にて、ハウジング23に制動部材26が設けられている。
【0023】
図3(a)に示すように、筒部24に、上下移動自在に、昇降部材27が収納され、この昇降部材27がリターンばね28で下方へ付勢され、昇降部材27から縦軸31が下方に延び、この縦軸31に車軸ホルダ32が旋回自在に設けられ、この車軸ホルダ32に車軸33を介して車輪21が回転自在に設けられている。縦軸31は、クッションばね34により、昇降部材27を起点として下方へ付勢されている。なお、符号27の部材は、筒部24を基準にすると昇降するように見えるため、便宜的に昇降部材と呼ぶ。
【0024】
クッションばね34は、リターンばね28より柔らかく、床18上の凹凸に車輪21が乗り上げたときに、衝撃を吸収する役割を果たす。クッションばね34が一定長さ縮むと、リターンばね28が縮み始める。
【0025】
制動部材26は、例えば、円柱部26aと、この円柱部26aの上部に設けた鍔部26bとからなる。制動部材26は、ハウジング23に設けた穴35及び円筒部23aに、上から投入される。穴35は円柱部26aの外径に対応し、鍔部26bよりは十分に小径である。投入された制動部材26に、付勢部材36を載せ、この付勢部材36をプラグ37で抑える。
【0026】
付勢部材36はコイルスプリング、ゴム、弾性プラスッチックの何れであってもよい。 プラグ37は、コイン溝を備え、コインで開閉することができる。ただし、プラグ37は、円筒部23aにねじ込む他、かしめや接着によって固定してもよい。ただし、制動部材26の先端(図では下面)が床18と接触して摩耗することを考慮すると、付勢部材36は、実施例のように、容易に交換できるようにすることが推奨される。
【0027】
車輪ユニット20は、プッシュプッシュ機構40を更に備えている。
プッシュプッシュ機構40は、例えば、昇降部材27から上へ延びる板部41と、筒部24に設けた円柱状のボス部42と、このボス部42に揺動自在に嵌められるロックピン43とを有する。
筒部24にビス44で止められた縦長のカバー45で、ロックピン43を覆うことより、ロックピン43の抜け止めを図る。すなわち、ロックピン43は図面表裏方向にのみ揺動する。
【0028】
図3(b)に示すように、板部41には、略ハート形のループ溝50が彫られており、このループ溝50に、ロックピン43のピン先43aが嵌っている。
ロックピン43は上下を逆にしてもよい。要はピン先43aがループ溝50に嵌ればよい。
【0029】
図4に示すように、ループ溝50は、上下に延びる第1溝51と、この第1溝51の下端から図左下へ斜めに延びる第2溝52と、この第2溝の下端(出口)から図右下へ延びる第3溝53と、この第3溝53の出口から図右上へ延びる第4溝54と、この第4溝54の出口から図右下へ延びる第5溝55と、この第5溝55の出口から上へ延びる第6溝56と、この第6溝56の上端から図左上へ延びて第1溝51に合流する第7溝57とからなる。
【0030】
図ではピン先43aは、「使用位置」58にある。
第1溝51にあるピン先43aは、矢印(1)のように、第2溝52及び第3溝53を下がる。次に、ピン先43aは、矢印(2)のように、第4溝54を上がる。この第4溝54の出口が「収納位置」59となる。
ピン先43aは、矢印(3)のように第5溝55を通り、矢印(4)のように第6溝56及び第7溝57を通って、「使用位置」58へ戻る。
【0031】
図3(a)では、車輪21は凹部22から出ており、底部17が床18から十分に離れているため、車輪21は「使用位置」にある。すなわち、
図3(b)に示すように、ピン先43aは、第1溝51の「使用位置」58にある。
スーツケース10を横移動すると、車輪21が床18上を回転する。床18に凹凸があると車輪21は上下に移動する。この移動が軽微であれば、クッションばね34が伸縮して衝撃を吸収し、昇降部材27は昇降しない。
【0032】
凹凸が大きいときには、リターンばね28も伸縮する。このときには昇降部材27が若干上下する。ピン先43aは上下に延びる第1溝51に嵌っているため、昇降部材27の上下動は許容される。
【0033】
車輪21を、「使用位置」から「収納位置」へ移動するときには、スーツケース10の上面を利用者の手で押し下げる。
すると、
図3(a)において、ハウジング23、筒部24、及びロックピン43が下がる。対して、車輪21、縦軸31、昇降部材27及び板部41は静止している。
図3(b)において、ループ溝50に対してピン先43aが下がる。
この下げ動作は、制動部材26が床18に当たり、底部17が更に少し下がるまで続けられる。底部17が更に少しさがるときに、付勢部材36は縮む。
【0034】
図4において、ピン先43aは、矢印(1)、矢印(2)のように、第1溝51、第2溝52、第3溝53を下がり、第3溝53の出口で止まる。
利用者が手を緩めることにより、ピン先43aは矢印(3)のように移動し、「収納位置」59に至る。第4溝34と第5溝35とが、上に凸のV字を呈しているため、「収納位置」では、ピン先43aはループ溝50でロックされる。
【0035】
図5(b)に示すように、ピン先43aは「収納位置」59にある。
図5(a)に示すように、制動部材26は床18に接しており、且つ車輪21は凹部22に収納されている。昇降部材27は、縮んでいるリターンばね28により大きな力で下方へ付勢されている。昇降部材27と共に板部41は下がろうとする。
図5(b)において、ピン先43aが「収納位置」59にてループ溝50に嵌っており、ロックピン43がループ溝50、すなわち板部41の下がりを防止する。
結果、
図5(a)、(b)に示す「収納位置」が維持される。
【0036】
ところで、車輪21は、どの位置であっても回転(空転)するため、床18が傾いていると、スーツケース10が横移動することがある。制動部材26を備えていると、「収納位置」で制動部材26が床18接し、制動部材26と床18との間に摩擦力が発生する。この摩擦力がスーツケース10の横移動を防ぐ制動力となる。
よって、「収納位置」にて、スーツケース10が横に移動することはない。
【0037】
「収納位置」から「使用位置」へ戻すには、利用者は手でスーツケース10の上面(又は側面上部)を押し下げる。
すると、
図5(a)において、ハウジング23、筒部24及びロックピン43が下がる。
図5(b)において、ピン先43aが第5溝55を通って、第5溝55の出口まで移動する。
次に、手を緩めると、
図5(a)において、リターンばね28が延びて、ハウジング23、筒部24及びロックピン43が上がる。結果、
図3(a)、(b)に戻る。
【0038】
なお、
図4中、矢印(2)の移動と、矢印(3)に移動に際しては、制動部材26は付勢部材36が縮む側に移動する。すなわち、付勢部材36の伸縮により、
図4で説明した作用が円滑に実施される。
【0039】
また、
図5において、制動部材26と付勢部材36とを合体して、ゴム片や軟質プラスチック片で制動部材を構成してもより。ゴム片や軟質プラスチックが弾性変形しつつ制動力を発生するからである。
ただし、ゴム片や軟質プラスチックは摩耗により損耗するため、交換頻度が高まる。
【0040】
対して、制動部材26と付勢部材36とを組み合わせ、制動部材26を硬質樹脂や軽金属で構成すれば、損耗は抑制できる。仮に損耗しても軽微であるため、交換頻度は低い。よって、制動部材26と付勢部材36との組み合わせが推奨される。
【0041】
以上に述べたように、本発明のスーツケース10は、利用者の手で押し下げると、車輪21が使用位置から収納位置へ相対的に移動しこの位置でロックされ、次に、利用者の手で押し下げると、車輪21が収納位置から使用位置に戻る。利用者はスーツケース10を押し下げるだけであるから、姿勢は楽である。
なお、利用者が押す部位は、スーツケース10の上面を基本とするが、スーツケース10の側面上部であってもよく、利用者の好みにより選択される。
【0042】
次に、本発明の変更例を
図6に基づいて、説明する。
図6において、
図3と共通する構成要素には、
図3の符号を準用して、詳細な説明を省略する。
すなわち、
図3では、縦軸31の軸線に沿って、クッションばね34とリターンばね28が、直列に配列されていたが、
図6では、クッションばね34の外側にリターンばね28を同心円状に並列に配置したことが相違する。その他の構成は
図3と同じである。
【0043】
ただし、クッションばね34に比較して、リターンばね28を短くして、リターンばね28の上端とリッド25の下面との間に、クリアランス47を設ける。
車輪21が床18上の小さな凹凸に乗り上げるときには、車輪21と共に昇降部材27が上下する。このとき、クッションばね34が伸縮して衝撃を吸収する。
【0044】
車輪21がクリアランス47の高さを超えるような大きな凹凸に乗り上げるときにも、車輪21と共に昇降部材27が上下する。このときには、クッションばね34とリターンばね28とが伸縮して衝撃を吸収する。
【0045】
図3の構造では、クッションばね34が昇降部材27の下にあるため、収納位置において、車輪21が若干上下する可能性がある。この点、
図6の構造であれば、クッションばね34が昇降部材27の上にあるため、収納位置において車輪21が上下することはない。
【0046】
次に、本発明の更なる変更例を
図7に基づいて、説明する。
図7に示すように、プッシュプッシュ機構40は、いわゆる、ノック式ボールペンに採用されているものであってもよい。
ノック式ボールペンに採用されているプッシュプッシュ機構40は、縦軸31の上端に設けられる非回転子61と、この非回転子61の上に配置される回転子62と、この回転子62を非回転子61へ付勢するリターンばね28と、筒部24の内面に上下に延びるように形成されている複数条の突条63とからなる。
【0047】
図7に示すプッシュプッシュ機構40は、
図3に示すプッシュプッシュ機構40よりは、縦長ではあるが、全体にスリムである。
【0048】
非回転子61に、隣り合う一対の突条63間に嵌る非旋回羽根64が設けられ、上面に三角歯65が形成されている。この三角歯65は、歪な三角形状を呈している。
回転子62にも、隣り合う一対の突条63に嵌る旋回羽根66が設けられ、下面に三角歯67が形成されている。この三角歯67も、歪な三角形状を呈している。
突条63の上面は、所定方向に傾く傾斜面68となっている。
【0049】
図7からスーツケース10と共にハウジング23が押し下げられると、突条63は旋回羽根66及び非旋回羽根64に沿って下がる。
突条63の傾斜面68が旋回羽根66の下に達すると、下の三角歯67で上の三角歯65に回転力が付与される。結果、回転子62と共に旋回羽根66が僅かに回転し、見かけ上、突条63の上面に旋回羽根66が載る。
以上により、車輪21は「収納位置」に保持される。
なお、非旋回羽根64は突条63に嵌ったままであるから、旋回しない。
【0050】
「収納位置」で、スーツケース10と共にハウジング23が押し下げられると、突条63が下がる。旋回羽根66より傾斜面68が下がると、旋回羽根66が自由になる。旋回羽根66は、傾斜面68により回され、突条63と突条63の間(隣り)に移動する。
すると、回転子62は上下に移動可能となる。
縮んでいたリターンばね28が伸びて、
図7に示す「使用位置」に戻る。
【0051】
プッシュプッシュ機構40は、
図7に示す構造と、
図3に示す構造の何れであってもよい。更には、プッシュプッシュ機構40は、
図3と同等の作用を発揮するものであれば、
図3や
図7とは異なる構造のものであってもよい。
【0052】
尚、
図3(a)において、ハウジング23を省いて、筒部24、昇降部材27及びプッシュプッシュ機構40をスーツケース10に直接取付けてもよい。
ただし、本実施例のように、ハウジング23を要部とする車輪ユニット20であれば、車輪ユニット20単位でスーツケース10に脱着できる。プッシュプッシュ機構40の組立、調整が車輪ユニット20の段階で実施できる。使用中に、プッシュプッシュ機構40に不具合が起こったときには、車輪ユニット20単位で交換できる。
【0053】
また、スーツケース10は、トランクや旅行鞄や大型バッグを含み、狭義のスーツケースに限定されるものではない。