【実施例】
【0023】
(実施例1)
(成膜装置)
図8に、本実施例のMOCVD法に用いられる薄膜成膜装置を示す。
図8(A)において、11は気化器、12はヒータ、13は反応容器、14は配管、15は略円錐状のシャワーノズル、16は反応ガスを直接、反応容器(反応チャンバー)に供給するためのガス供給口、17はヒータである。
【0024】
シャワーノズル15は、必要に応じてその内部で原料ガスに酸素を混合することが可能である。シャワーノズル15には、反応容器13内に配置された誘電体膜を成膜するための被成膜基板Pが所定間隔を存して対向されている。また、シャワーノズル15には、その中心から拡開する外壁15aとノズル表面15bとの間に周壁15cが一体に設けられている。
【0025】
この周壁15cは、外壁15aとノズル表面15bとの距離を確保するためのもので、ノズル表面15bの中央付近と端部付近との原料ガスの流速差を小さくすることができる。なお、周壁15cの高さhは、シャワーノズル15の最大高さ、即ち、配管14の導入口14aからノズル表面15bの中心までの高さHの半分以上(h>H/2)とすることが好ましい。
【0026】
これにより、気化器11で気化されたキャリアガスがシャワーノズル15を通して反応容器13内に導入する際、ノズル表面15bの中央付近と端部付近との原料ガスの流速差が緩和され、ノズル表面15bから反応容器13内に導入される際の圧力差を緩和し(図の矢印の長さで示す)、略均一な誘電体膜を被成膜基板Pに成膜することができる。
【0027】
ところで、上記実施例では、配管14にシャワーノズル15が一体に連続するようなものを開示したが、例えば、
図3(B)に示すように、配管14の先端よりも上方でシャワーノズル15が接続されたものでも良い。
【0028】
(原料ガス、反応ガス)
窒化ハフニウム(HfN)薄膜を作成には、TEMAH(Hf[NCH3C2H5]4、テトラキスメチルエチルアミノハフニウム)とECH(エピクロロヒドリン(C3H5ClO))を原料溶液とする。
薄膜原料のTEMHA,ECHとECHについて、キャリアガスはAr、N2等とする。
反応ガスは、アンモニア(NH3)の他に、例えば、O3、H2+N2、O2、H2S、CO、N2等である。
反応ガスは、キャリアガスAr又はN2で希釈して供給する。
膜の化学量論比を満たすような割合で反応性ガス(アンモニアガス等)と原料溶液を調整する。
窒化ハフニウム(HfN)の他、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ハフニウム(HfO)、窒化ニオブ(Nb3N5)の薄膜を作成する場合は、原料溶液を適宜変更する。
【0029】
(シャワーヘッド)
図11に本例に係る薄膜成膜装置で用いるシャワーヘッドを示す。
反応容器13(反応チャンバー)に設けられたシャワーヘッド41は、シャワーノズル42とシャワープレート43から構成されている。
反応ガスを直接、反応容器13(反応チャンバー)に供給するガス供給口16は、シャワーヘッド41に設けられている。
シャワープレート43に、原料ガスの流路とアンモニアガス等の流路が別々に形成されている。
この構成は、基板到達前に、原料ガスが反応ガスであるアンモニアガスなどとシャワープレートの上流では両者が混合しないようにする手段である。
また、シャワーヘッド41内に原料ガス及び反応ガスの供給通路を冷却するための手段を有している。
【0030】
(気化器)
図8、
図9に、本例に係る気化器を示す。
本例の気化器では、分散部を構成する分散部本体1の内部に形成されたガス通路2と、ガス通路2に加圧されたキャリアガス3を導入するためのガス導入口4と、ガス通路2を通過するキャリアガスに原料溶液5を供給するための手段(原料供給孔)6と、分散された原料溶液5を含むキャリアガスを気化部22に送るためのガス出口7と、ガス通路2内を流れるキャリアガスを冷却するための手段(冷却水)18と、を有する分散部8と、一端がMOCVD装置の反応管に接続され、他端が分散部8のガス出口7に接続された気化管20と、気化管20を加熱するための加熱手段(ヒータ)21と、を有し、前記分散部8から送られてきた、原料溶液が分散されたキャリアガスを加熱して気化させるための気化部22と、を有する。
【0031】
(実施例2)
図1は、実施例のHfN膜の製造における、仮想成膜レートと、NH
3流量との関係の図である。サセプタ温度を400℃、300℃、260℃、200℃、100℃とした条件での仮想成膜レートと、NH
3流量との関係の図である。
【0032】
図1によって、以下の事項が判明した。
260℃以下では、ほぼ熱分解しない。NH
3流量が、1CCM以下では、極端に、仮想成膜レートが低下していることからである。
しかし、260℃以下の条件であっても、NH
3流量によって、HfN膜の成膜が可能となる。
サセプタ温度を400℃、300℃、260℃、200℃、100℃のいずれの条件において、NH
3流量の影響が大きい。
【0033】
図2は、実施例のHfN膜の製造における、HfN膜中の酸素量と、経過日数との関係の図である。
【0034】
図2によって、以下の事項が判明した。
熱分解で成膜したHfN膜(400℃、300℃にて、NH
3流量を0とした条件)は、酸素量が、0.06〜0.21と数値が高く、経過日数にて、酸素量が増加傾向があり、膜質が悪いことが判明した。
NH
3流量が、1CCMの条件では、酸素量が、0.05〜0.14と数値が高く、膜質がまだ、悪い。
NH
3流量が5CCMの条件のHfN膜は、酸素量が、0.04以下であり、大気中での経過日数でも、酸素量は変化していない。
【0035】
図3は、実施例のHfN膜の製造における、XRF分析強度と、NH
3流量との関係の図である。サセプタ温度は、300℃である。
NH
3流量が3CC以下の条件では、XRF分析強度(O/Hf,N/Hf,C/Hf)
の数値が、変化しており、膜質が悪い。
一方、NH
3流量が5CC以下の条件では、XRF分析強度(O/Hf,N/Hf,C/Hf)の数値が、安定しており、膜質が良好である。
【0036】
図4は、実施例のHfN膜の製造における、サセプタ温度260℃の条件での、仮想成膜レートと、NH
3流量との関係の図である。
NH
3流量が、9CCMにて、仮想成膜レートが、0.33にて、最大になることが判明した。NH
3流量が、9CCM〜15CCMの間が、成膜レートが、安定する条件となる。
【0037】
図5は、実施例のHfN膜の製造における、サセプタ温度260℃における、XRF分析強度のO/Hf,N/Hf,C/Hfと、NH
3流量との関係の図である。
O/Hf,N/Hf,C/Hfの特性図より、NH
3流量が、5CCMでは、XRF分析強度O/Hfは、安定しておらず、一方NH
3流量が、9CCMで、安定の傾向にある。
【0038】
図6は、実施例のHfN膜の製造における、サセプタ温度260℃における、HfN膜中の酸素量(atomic%)と、経過日数との関係の図である。
NH
3流量が、9CCM〜15CCMの条件にて、HfN膜中の酸素量(atomic%)
が経過日数に対して、安定化していることが判明した。
NH
3流量が、9CCM未満、あるいは15CCMを超えた場合には、HfN膜中の酸素量(atomic%)は、経過日数に対して、増加傾向にあり、好ましくない。
【0039】
図7は、実施例のHfN膜の製造における、仮想成膜レートと、サセプタ温度との関係の図である。サセプタ温度が、260℃から400℃にかけて、サセプタ温度が高くなるほど、成膜レートが低下している。また、NH
3流量が、9CCMと、20CCMを比較すると、NH
3流量が増加すると、成膜レートが、低下することが判明した。
【0040】
前記の一連のデータより、HfN膜の製造に関して、成膜温度が、260℃、NH
3流量が9CCM以上、15CCM以下の成膜条件が最適であることが判明した。
表1に発明品1,2,3,4,5,6の、XPS分析(atomic%)、N/Hfの
測定結果を示す。
また、表2に、比較品1,2,3,4,5,6,7,8のXPS分析(atomic%)、N/Hfの測定結果を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】