(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758587
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】基板支持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20200910BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20200910BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20200910BHJP
G03F 7/30 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 643A
H01L21/306 R
G03F7/30 502
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-565333(P2018-565333)
(86)(22)【出願日】2016年7月6日
(65)【公表番号】特表2019-521519(P2019-521519A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(86)【国際出願番号】CN2016088754
(87)【国際公開番号】WO2018006283
(87)【国際公開日】20180111
【審査請求日】2019年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】510005650
【氏名又は名称】エーシーエム リサーチ (シャンハイ) インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン フーファ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヂーヨウ
(72)【発明者】
【氏名】ウー ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ワン フゥイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン フーピン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ウェンジュン
【審査官】
杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−537385(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/184628(WO,A1)
【文献】
特開2007−176637(JP,A)
【文献】
特表2004−536444(JP,A)
【文献】
特開2004−172204(JP,A)
【文献】
特開2016−065268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
G03F 7/30
H01L 21/304
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持する回転可能なチャックであって、一のガスパイプに接続されて前記基板にガスを供給すると共にベルヌーイ効果によって基板を吸引する複数の第1注入口と、別の一のガスパイプに接続されて前記基板にガスを供給して前記基板を持ち上げる複数の第2注入口とを画定する回転可能なチャックと、
前記回転可能なチャックの上面に配置され、それぞれが独立したシリンダによって駆動される複数の位置決めピンであって、一のガスパイプに接続された複数の前記シリンダによって駆動される第1位置決めピン群と、別の一のガスパイプに接続された複数の前記シリンダによって駆動される第2位置決めピン群とに分けられた複数の位置決めピンと、
中空軸であって、その内壁が1つのガスパイプにそれぞれ対応し当該ガスパイプにガスを供給する4つのガス溝を画定している中空軸と、
前記中空軸内に設置された回転軸であって、前記回転軸の外壁と前記中空軸の前記内壁との間に空間が形成されるように設置された回転軸と、
前記第1位置決めピン群を駆動する前記複数のシリンダにガスを供給する1つの前記ガス溝の両側に配置された1対のシールリングと、前記第2位置決めピン群を駆動する前記複数のシリンダにガスを供給する1つの前記ガス溝の両側に配置された1対のシールリングとからなる2対のシールリングとを備え、
前記中空軸は、隣接する2つの前記ガス溝の間に排気口を画定しており、1つの前記ガス溝は、前記第1位置決めピン群または第2位置決めピン群を駆動する前記複数のシリンダにガスを供給し、1つの前記ガス溝は前記第1注入口または前記第2注入口にガスを供給し、前記回転軸の前記外壁は、前記中空軸の前記排気口に対応する阻止壁と、前記第1注入口または前記第2注入口にガスを供給する前記ガス溝に面した凹部とを画定することを特徴とする基板支持装置。
【請求項2】
前記阻止壁は直角、多角形、または、円弧状であることを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項3】
前記回転軸は前記基板の背面を洗浄する際に前記回転可能なチャックに接続され、前記回転軸は前記中空軸内において回転する一方、前記中空軸は回転しないことを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項4】
前記4つのガス溝はリング形状であることを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項5】
前記中空軸は、4つの入口を画定しており、各入口は、1つのガス溝に接続されていることを特徴とする請求項1記載の基板支持装置。
【請求項6】
前記回転軸が前記中空軸内で駆動回転されるときに、4つの前記ガスパイプはそれぞれ回転軸と共に回転することを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項7】
各第1注入口は、前記回転可能なチャックの底面に対してある角度傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項8】
各第2注入口は、前記回転可能なチャックの底面に対して直角であり、垂直であることを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項9】
2つの前記位置決めピン群は交互に配置されており、2つの前記位置決めピン群は前記基板を交互に位置決めすることを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項10】
前記回転可能なチャックの前記上面に配置された複数のガイド支柱をさらに備えており、各ガイド支柱は前記基板を保持する保持部を形成するように突出しており、各ガイド支柱の側面は前記基板をガイドして正確に前記保持部に位置させるガイド面であることを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関し、より具体的には、洗浄、エッチング、現像、フォトレジストのコーティングまたは除去等の湿式工程において、ベルヌーイの定理を用いて半導体ウエハ等の基板を支持する基板支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造工程における、洗浄、エッチング、現像、フォトレジストのコーティングまたは除去等の処理工程では、基板表面とも称する基板装置面が中心となることが殆どである。しかしながら、洗浄およびエッチングのように基板背面(非装置面)の処理も同様に重要である。例えば、基板背面に付着した異物によって、基板表面に形成されたパターンがフォトリソグラフィ工程において焦点ボケしたり、前記異物が基板処理装置を汚染することによって、同じ装置で処理する別の基板をも汚染する可能性がある。中でも、背面の金属の異物は、基板を介して拡散し基板表面を汚染する可能性があり、これによって半導体装置の電気的故障を引き起こす可能性もある。
【0003】
半導体装置の品質を確保するには、基板背面洗浄が不可欠となる。基板背面洗浄には、基板を支持する装置が必要となる。このような装置は米国特許No.5,492,566で公知である。前記装置は、前記装置の円形の表面に環状ノズルを備えている。前記ノズルには圧縮ガスが送られ、前記装置と前記基板との間にガスのクッションが形成される。前記基板は、ベルヌーイの定理により装置上方に吸引され、浮遊状態に維持される。前記装置上面の少なくとも1つの突起は、処理中に基板の台として機能する。前記装置では、前記装置に面する基板の下面は突起と接触した状態で維持する必要がある。基板背面処理には、基板の装置面(表面)が前記装置の上面に面する必要がある。前記突起部は装置面のパターンを損傷する可能性があり、基板と前記装置上面との間の隙間高さを調整するのは容易ではない。
【0004】
基板を支持する別の装置は、米国特許No.6,669,808に開示されている。前記装置は、基板を支持する支持部材を有する回転ベース部材の上方に近接吸引部材が設けられている。前記近接吸引部材は、前記支持部材に支持された基板上面の周縁部全体に対して、支持面から下方外側向きにガスを噴射する。前記近接吸引部材の下面である前記支持面は、前記回転ベース部材上の基板と略平行な平面上に配置される。加工液供給部によって、前記回転ベース部材上に支持され回転する前記基板の下面に加工液が供給される。また、基板の下面と回転ベース部材の上面との間の隙間の高さを調整するのは容易ではない。また、上記加工液供給のモデルでは、洗浄効率はさほど良好なものにならない。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明は、回転可能なチャックと、第1質量流量コントローラと、第2質量流量コントローラと、複数の位置決めピン及びガイド支柱と、モータとを備える基板支持装置を提供することを目的とする。基板を支持する前記回転可能なチャックが、複数の第1注入口および第2注入口を画定する。前記第1注入口は、第1ガス流路に接続されて前記基板にガスを供給するとともにベルヌーイ効果によって前記基板を吸引する。前記第2注入口は、第2ガス流路に接続されて前記基板にガスを供給するとともに前記基板を持ち上げる。前記第1質量流量コントローラは前記第1ガス流路に配置されており、前記第1注入口に供給されるガスの流れを制御する。前記第2質量流量コントローラは前記第2ガス流路に配置されており、前記第2注入口に供給されるガスの流れを制御する。前記複数の位置決めピンは前記回転可能なチャックの上面に配置されており、前記基板に所定の処理を行う際に、前記基板の水平移動を防止する。前記複数のガイド支柱は前記回転可能なチャックの上面に配置されており、各ガイド支柱が前記基板を保持する保持部を形成するように突出している。前記モータは、前記回転可能なチャックを回転させるために使用される。
【0006】
前記基板の下面と前記回転可能なチャックの上面との間に隙間を形成して、前記基板の前記下面と前記回転可能なチャックの前記上面とが接触して、前記基板の前記下面が汚染されることを防止し、前記隙間の高さは、前記第1注入口および第2注入口に供給されるガスの流れを制御することによって調整可能であり、前記基板はベルヌーイの定理によって安定した浮遊状態を維持することができる。
【0007】
本発明は回転可能なチャックと、複数の位置決めピンと、中空軸と、回転軸と、二組のシールリングとを備える基板支持装置を提供することをもう1つの目的とする。前記回転可能なチャックは、基板を支持するために用いられ、複数の第1注入口および複数の第2注入口を画定する。前記第1注入口は、ガスパイプに接続されて前記基板にガスを供給するとともにベルヌーイ効果によって前記基板を吸引する。前記第2注入口は、別のガスパイプに接続されて前記基板にガスを供給するとともに前記基板を持ち上げる。前記複数の位置決めピンは前記回転可能なチャックの上面に配置されている。前記複数の位置決めピンは、第1位置決めピン群と第2位置決めピン群とに分けられる。各位置決めピンは独立したシリンダによって駆動される。第1位置決めピン群を駆動する複数のシリンダが一のガスパイプに接続されている。第2位置決めピン群を駆動する複数のシリンダが別の一のガスパイプに接続されている。前記中空軸の内壁は4つのガス溝を画定し、各ガス溝は1つのガスパイプ1つに対応しており、当該ガスパイプにガスを供給する。前記回転軸は中空軸内に設置され、前記回転軸の外壁と前記中空軸の前記内壁との間に空間を形成する。1対のシールリングが、第1位置決めピン群を駆動する複数のシリンダにガスを供給する1つのガス溝の両側に配置されている。1対のシールリングが、第2位置決めピン群を駆動する複数のシリンダにガスを供給する1つのガス溝の両側に配置されている。前記中空軸は、隣接する2つのガス溝の間に排気口を画定している。1つのガス溝は、前記第1位置決めピン群または第2位置決めピン群を駆動する複数のシリンダにガスを供給し、別の1つのガス溝は第1注入口または第2注入口にガスを供給する。前記回転軸の前記外壁は、前記中空軸の排気口に対応する阻止壁と、前記第1注入口または前記第2注入口にガスを供給するガス溝に面した凹部とを画定する。
【0008】
本発明は、前記回転軸の前記外壁に画定された阻止壁および凹部を活用して、中空軸に形成され前記基板表面にガスを供給するガス溝に前記空間内の粒子が侵入することを防止し、前記粒子によって前記基板表面が汚染されることを防止する。したがって、半導体装置の品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は、添付の図面および以下の実施形態の説明を参照することによって、当業者に明らかとなるであろう。
【
図1】本発明に係る基板支持装置の一例を示す断面図である。
【
図4】前記基板支持装置の位置決めピンの斜視図である。
【
図5】前記基板支持装置に対して基板を出し入れするエンドエフェクタを示す上面図である。
【
図6A】処理する基板を前記エンドエフェクタによって基板支持装置に載置する手順を示す図である。
【
図6B】処理する基板を前記エンドエフェクタによって基板支持装置に載置する手順を示す図である。
【
図6C】処理する基板を前記エンドエフェクタによって基板支持装置に載置する手順を示す図である。
【
図6D】処理する基板を前記エンドエフェクタによって基板支持装置に載置する手順を示す図である。
【
図6E】処理する基板を前記エンドエフェクタによって基板支持装置に載置する手順を示す図である。
【
図7A】処理する基板を前記エンドエフェクタによって基板支持装置から取り外す手順を示す図である。
【
図7B】処理する基板を前記エンドエフェクタによって基板支持装置から取り外す手順を示す図である。
【
図7C】処理する基板を前記エンドエフェクタによって基板支持装置から取り外す手順を示す図である。
【
図7D】処理する基板を前記エンドエフェクタによって基板支持装置から取り外す手順を示す図である。
【
図7E】処理する基板を前記エンドエフェクタによって基板支持装置から取り外す手順を示す図である。
【
図7F】処理する基板を前記エンドエフェクタによって基板支持装置から取り外す手順を示す図である。
【
図8】本発明の別の実施形態に係る基板支持装置の一例を示す正面図である。
【
図9】
図8に示す前記基板支持装置の上面図である。
【
図14】本発明の別の実施形態に係る基板支持装置の一例を示す正面図である。
【
図22A】本発明による阻止壁の別の実施形態を示す図である。
【
図23A】本発明による阻止壁の別の実施形態を示す図である。
【
図24】
図8に示す基板支持装置および
図14に示す基板支持装置を用いて、粒子の増加量の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜
図4を参照して、本発明の基板支持装置について記載する。基板支持装置は、半導体ウエハを処理するために、半導体ウエハ等、円盤形状の物体を支持するのに適した円形の回転可能なチャック101を有している。回転可能なチャック101の下には、中空の筐体102が配置されており回転可能なチャック101の下面に結合されている。また、回転軸103が設けられており、中空の筐体102を結合している。回転軸103は中空である。回転軸103の上端は中空の筐体102の底部に固定されており、回転軸103の下端はモータ104に接続されており、回転軸103を回転させて、垂直軸を中心に回転可能なチャック101を回転させる。
【0011】
複数の、例えば、6つの位置決めピン105は、回転可能なチャック101上面の外縁に一様に配置されており、基板107に対して洗浄工程等の所定の工程が行われる際に、基板107の水平移動を防止する。各位置決めピン105はその上端に位置決め溝1051を画定している。基板107の周縁部は位置決め溝1051に係合しており、基板107の水平移動を規制する。位置決めピン105は、全て独立したシリンダ401によって駆動され、基板107を位置決めする際には内方向に移動し、基板107を解放する際には外方向へ移動する。すべての位置決めピン105は、交互に配置された2つのグループ105a、105bに分けられている。基板107の洗浄工程中、2つの位置決めピン群105a、105Bは、基板107の周縁部が完全に洗浄されるように、基板107を交互に位置決めする。すなわち、基板107の洗浄工程において、まず第1位置決めピン群105aが、基板107を位置決めする。このとき、第2位置決めピン群105bは、基板107と非接触状態に維持される。しばらく基板107を洗浄した後、第1位置決めピン群105aは基板107を解放し、第2位置決めピン群105bが、基板107を位置決めする。なお、基板107はまず第2位置決めピン群105bによって位置決めされてもよい。
【0012】
複数の、例えば、6つのガイド支柱106が、回転可能なチャック101上面の外縁に配置されている。各ガイド支柱106は、対応する位置決めピン105に隣接している。ガイド支柱106は、ガイド支柱106の側面が、回転可能なチャック101に載置される基板107をガイドするガイド面となるように円錐形状に形成されている。ガイド支柱106の底部は、基板107が回転可能なチャック101上に載置されたときに当該基板107を保持するための保持部1061を形成するように外方向に突出しており、基板107の下面と回転可能なチャック101の上面との間に隙間111が形成される。これにより、基板107の下面と回転可能なチャック101の上面とが接触して、基板107の下面が汚染されることが防止される。
【0013】
回転可能なチャック101は、これを貫通する複数の第1注入口109および第2注入口110を画定している。第1注入口109が、回転可能なチャック101上に円弧状に、回転可能なチャック101の中心から離れた位置に形成されている。各第1注入口109は、回転可能なチャック101の底面に対してある角度傾斜している。第2注入口110が、回転可能なチャック101上に円弧状に、回転可能なチャック101の中心近傍の位置に形成されている。第2注入口110は全て、回転可能なチャック101に対して直角であり、垂直である。各第1注入口109は第1ガスパイプ112に接続され、第2注入口110は第2ガスパイプ113に接続されている。第1ガスパイプ112と第2ガスパイプ113は共に中空の筐体102内を通っている。第1ガスパイプ112と第2ガスパイプ113は、それぞれ中空の筐体102を介して回転軸103に収容されている。第1ガスパイプ112内には、第1注入口109を介して基板107に供給されるガスを浄化する第1フィルタ114が配置されている。第2ガスパイプ113内には、第2注入口110を介して基板107に供給されるガスを浄化する第2フィルタ115が配置されている。第1ガスパイプ112は、基板支持装置の外側に配置された第1ガス管に接続され、ガス供給源に接続されている。第1ガスパイプ112と第1ガス管とは、第1注入口109に接続され第1注入口109にガスを供給する第1ガス流路を形成している。第1質量流量コントローラ(MFC)116が第1ガス流路に配置されており、第1注入口109に供給されるガスの流れを制御する。具体的には、第1質量流量コントローラ116は第1ガス管に配置されており、第1ガスパイプ112に供給されるガスの流れを制御する。第1ガスパイプ112と第1ガス管との接合部は、ガス漏れを防止するための磁性流体によって封入されている。第2ガスパイプ113は、基板支持装置の外側に配置された第2ガス管に接続され、ガス供給源に接続されている。第2ガスパイプ113と第2ガス管とは、第2注入口110に接続され第2注入口110にガスを供給する第2ガス流路を形成している。第2質量流量コントローラ117が第2ガス流路に配置されており、第2注入口110に供給されるガスの流れを制御する。具体的には、第2質量流量コントローラ117は第2ガス管に配置されており、第2ガスパイプ113に供給されるガスの流れを制御する。第2ガスパイプ113と第2ガス管との接合部は、ガス漏れを防止するための磁性流体によって封入されている。
【0014】
基板支持装置を用いた基板107の背面を洗浄する手順を
図5、
図6A〜6Eに示す。基板107を回転可能なチャック101の上方へ移動させる際に、エンドエフェクタ501が用いられる。エンドエフェクタ501は、ベース部601を有している。ベース部601の底面の外縁部は下方に突出し円形傾斜部602を形成しており、エンドエフェクタ501が基板107を搬送する際に、基板107がベース部601の底面に接触して基板107が汚染しないようにしている。傾斜部602の一部はさらに下方に突出しており、エンドエフェクタ501における基板107の動きを規制する停止部605を形成している。傾斜部602の底面には、基板107が傾斜部602に位置しているか否かを検出するための接触センサ604が配置されている。基板107が傾斜部602に当たると、押圧部603が駆動されて基板107を停止部605に当接させ、基板107をエンドエフェクタ501に確実に配置する。押圧部603は、シリンダによって駆動することができる。
【0015】
図6Aに示すように、エンドエフェクタ501は、基板107を回転可能なチャック101の上方に搬送する。このとき、第1ガス管と第2ガス管は閉じられており、第1注入口109および第2注入口110にガスを供給する必要はない。その後、エンドエフェクタ501は下方に移動して基板107をガイド支柱106に近接させる。このとき、第2ガス管が開放され、第2ガスパイプ113及び第2注入口110を介して基板107の表面にガスが供給される。基板107の背面洗浄のために、基板107の表面は、回転可能なチャック101の上面に対向するように配置される。基板107の表面への汚染を防止するために、基板107の表面に供給されるガスは、第2フィルタ115によって浄化される。第2注入口110から吐出されたガスは、基板107を所定の高さに持ち上げ、押圧部603が
図6Bに示すように外方向に引っ張られて基板107を解放する。次に、第2ガス管が閉じられ、基板107へのガス供給を停止する。基板107は、自重によってガイド支柱106の側面に沿って
図6Cに示す保持部1061に落下し、保持部1061に保持される。第2ガス管が再び開放され、
図6Dに示すように、第2注入口110から吐出されたガスによって、基板107の表面と回転可能なチャック101の上面との間に隙間111が形成されるように、第2質量流量コントローラ117を介して第2注入口110に供給されるガスの流れを調節することによって基板107を持ち上げる。エンドエフェクタ501が離れ、少なくとも1つのノズル108が基板107の背面上方に移動して、基板107の背面洗浄用の洗浄液を噴射する。基板107の背面洗浄の際には、第1ガス管を開放し、第1注入口109を介してガスを吐出させて、ベルヌーイ効果により基板107を吸引する。これにより、背面洗浄用に基板107が安定した浮遊状態に維持される。モータ104によって回転可能なチャック101が回転している間、第1位置決めピン群105aによって基板107が位置決めされ、ノズル108から基板107の背面に洗浄液が噴射される。回転可能なチャック101が回転し第1注入口109から外方向にガスが吐出されているので、ガスの流れによって基板107の背面に噴射される洗浄液が基板107の表面に到達することが妨げられる。一定期間洗浄した後、第1位置決めピン群105aに代わって、第2位置決めピン群105bが基板107の位置決めを行う。このようにして、基板107の周縁部を完全に洗浄する。
【0016】
ノズル108は、基板107の背面洗浄後、
図7A〜
図7Fに示すように移動する。エンドエフェクタ501は基板107の背面上方に移動し、第1ガス管が閉じられて、第1注入口109を介して行う基板107へのガスの供給を停止する。一方、
図7Bに示すように、第2ガス管は開放されたままであり、ガスを供給して基板107を持ち上げる。エンドエフェクタ501は、下方に移動して基板107を閉鎖する。その後、第2質量流量コントローラ117によって、第2注入口110を介して基板107に供給されるガスの流量が増加することによって、
図7Cに示すように基板107が持ち上げられて傾斜部602の下面に到達する。エンドエフェクタ501が上に移動し、
図7Dに示すように基板107もガスによって傾斜部602の下面まで持ち上げられる。接触センサ604が基板107を検出して、押圧部603が基板107を押して停止部605に当接させ、
図7Eに示すように基板107をエンドエフェクタ501に確実に配置する。最終的に第2ガス管が閉じられ、
図7Fに示されるように、エンドエフェクタ501によって基板107が離される。
【0017】
上述の説明において、ガスは窒素ガスなどの不活性ガスであってもよい。ガスの選択については処理の必要条件によって異なる。基板107の下面と回転可能なチャック101の上面との間の隙間111の高さは、第1注入口109および第2注入口110に供給されるガスの流れを制御することによって調整可能であり、基板107はベルヌーイの定理によって安定した浮遊状態を維持することができる。さらに、第1ガス管は、基板107の背面洗浄の際に洗浄液を供給するときにのみ開放するので、基板107の背面洗浄にかかるコストを低減することが可能である。上記基板支持装置は背面の洗浄に適しているだけでなく、エッチング工程などにも適していると認識されるべきである。
【0018】
図8〜
図13には、本発明の別の実施形態に係る基板支持装置の一例が示されている。基板支持装置200は、回転可能なチャック201を有している。回転可能なチャック201は、これを貫通する複数の第1注入口209および複数の第2注入口210を画定している。複数の位置決めピン205は、回転可能なチャック201上面の外縁に一様に配置されており、基板に対して洗浄工程等の所定の工程が行われる際に、基板の水平移動を防止する。複数の位置決めピンは、2つのグループに分けられている。第1位置決めピン群205aと第2位置決めピン群205bとは、交互に配置されている。各位置決めピンは独立したシリンダによって駆動される。また、基板支持装置200は、回転軸203と中空軸219とを有している。回転軸203は中空軸219に設置され、基板支持装置200に基板を支持させて基板背面洗浄時に、駆動装置によって回転駆動されるものであり、洗浄工程において基板を回転させるものである。中空軸219の内壁は、第1ガス溝221と、第2ガス溝223と、第3ガス溝225と、第4ガス溝227とを画定している。第1ガス溝221、第2ガス溝223、第3ガス溝225、第4ガス溝227はリング形状である。中空軸219はまた、第1ガス溝221に接続する第1入口231と、第2ガス溝223に接続する第2入口233と、第3ガス溝225に接続する第3入口235と、第4ガス溝227に接続する第4入口237とを画定する。第1ガスパイプ241が、第1ガス溝221と第1位置決めピン群205aを駆動する複数のシリンダとを接続している。第2ガスパイプ243が、第2ガス溝223と第2位置決めピン群205bを駆動する複数のシリンダとを接続している。第3ガスパイプ245が、第3ガス溝225と複数の第1注入口209とを接続している。第4ガスパイプ247が、第4ガス溝227と複数の第2注入口210とを接続している。第1ガスパイプ241、第2ガスパイプ243、第3ガスパイプ245、第4ガスパイプ247はそれぞれ、回転軸203が回転駆動される際に、回転軸203と共に回転する。基板の洗浄工程において、回転軸203は回転する一方、中空軸219は回転しない。
【0019】
複数ののガイド支柱206は、回転可能なチャック201上面の外縁に配置されている。ガイド支柱206は、回転可能なチャック201に載置される基板をガイドする。ガイド支柱206の底部は、基板が回転可能なチャック201上に載置されたときに当該基板を保持するための保持部を形成するように外方向に突出しており、基板の下面と回転可能なチャック201の上面との間に隙間が形成される。これにより、基板の下面と回転可能なチャック201の上面とが接触して、基板の下面が汚染されることが防止される。
【0020】
基板背面洗浄時に、基板支持装置200を用いて基板を支持する場合、基板表面が回転可能なチャック201の上面に対向するように配置される。第4入口237、第4ガス溝227、及び、第4ガスパイプ247を介して浄化ガスが複数の第2注入口210に供給される。複数の第2注入口210から吐出された浄化ガスは、基板表面に供給されて基板を所定の高さに持ち上げる。これにより、基板表面が基板支持装置200の上面に接触せず、基板表面の汚染を回避できる。第3入口235、第3ガス溝225、及び、第3ガスパイプ245を介して浄化ガスが複数の第1注入口209に供給される。複数の第1注入口209から吐出された浄化ガスは、基板表面に供給されて、ベルヌーイ効果によって基板を吸引する。これにより、背面洗浄用に基板が安定した浮遊状態に維持される。第1入口231、第1ガス溝221、第1ガスパイプ241を介して浄化ガスが第1位置決めピン群205aを駆動する複数のシリンダに供給される。これによって、第1位置決めピン群205aが複数のシリンダに駆動されて内方向に移動し基板を位置決めする、または、外方向に移動して基板を解放する。第2入口233、第2ガス溝223、第2ガスパイプ243を介して浄化ガスが第2位置決めピン群205bを駆動する複数のシリンダに供給される。これによって、第2位置決めピン群205bが複数のシリンダに駆動されて内方向に移動し基板を位置決めする、または、外方向に移動して基板を解放する。基板の洗浄工程において、第1位置決めピン群205aおよび第2位置決めピン群205bは、基板の周縁部が完全に洗浄されるように、基板を交互に位置決めする。
【0021】
回転軸203と中空軸シャフト219との摩擦を避けるために、回転軸203と中空軸219とは接触せず、回転軸203と中空軸219との間に微小な空間が形成されている。シリンダに供給されるガスの圧力が、第1位置決めピン群205aと第2位置決めピン群205bを駆動できるほどのものとなるように、第1シールリング対251と第2シールリング対253がそれぞれ、第1ガス溝221と第2ガス溝223の両側に配置されており、これにより第1ガス溝221および第2ガス溝223のガスが回転軸203と中空軸219との間の空間から漏れることを防止する。しかし、回転軸203が回転すると、回転軸203とシールリング251、253との摩擦により粒子が生成される。特に回転軸203と、第3ガス溝225に最も近いシールリング253との摩擦により生成される粒子は、回転軸203と中空軸219との間の空間を介して第3ガス溝225に到達し、さらに第3ガスパイプ245を介して基板表面に到達し得る。中空軸219は、ガスを排出する排気口255を画定しており、ガス圧力を回転軸203と中空軸219との間の空間に放出する。ガスと共に一部の粒子が排出され、ガスの運動エネルギーによってその空間を上方向に移動して第3ガス溝225に到達し、さらに背面の洗浄工程中の基板表面にまで達する。空間内の粒子の移動経路が、
図11及び
図13に矢印で示されている。このため、この問題を解決し、半導体装置の品質を向上させるための解決策を見出す必要がある。
【0022】
図14〜
図21には、本発明の別の実施形態に係る基板支持装置が示されている。また、基板支持装置300は、回転可能なチャック301と、回転軸303と、中空軸319とを有している。回転可能なチャック301は基板を支持するために用いられる。回転軸303は、中空軸319の中に設置されている。回転軸303は回転可能なチャック301に接続され、回転軸303が駆動装置によって駆動され中空軸319内を回転している間、回転可能なチャック301を回転させる。基板背面洗浄時に基板支持装置300を用いて基板を支持する場合、回転軸303が中空軸319内を回転するが、中空軸319は回転しない状態で維持される。
【0023】
図15に示すように、回転可能なチャック301は、これを貫通する複数の第1注入口309および複数の第2注入口310を画定している。複数の位置決めピン305および複数のガイド支柱306が、回転可能なチャック301上面の外縁に配置されている。複数の位置決めピン305は、2つのグループに分けられている。第1位置決めピン群305aと第2位置決めピン群305bとは交互に配置され、基板の水平移動を防止する。位置決めピン305は、全て独立したシリンダによって駆動され、基板を位置決めする際には内方向に移動し、基板を解放する際には外方向へ移動する。基板の洗浄工程中、2つの位置決めピン群305a、305Bは、基板の周縁部が完全に洗浄されるように、基板を交互に位置決めする。各ガイド支柱306は、隣接する2つの位置決めピンの間に配置されている。各ガイド支柱306は、回転可能なチャック301上に載置される基板を正確に案内するガイド面と、基板を回転チャック301上に載置する際に基板を保持するための保持部とを備えている。これにより、基板の下面と回転可能なチャック301の上面との間に隙間が形成され、基板の下面と回転可能なチャック301の上面とが接触して基板の下面が汚染されることを防止する。基板支持装置300が基板背面洗浄に使用される場合、基板の下面が基板表面である。
【0024】
中空軸319の内壁は、第1ガス溝321と、第2ガス溝323と、第3ガス溝325と、第4ガス溝327とを画定している。第1ガス溝321、第2ガス溝323、第3ガス溝325、第4ガス溝327はリング形状である。中空軸319はまた、第1ガス溝321に接続する第1入口331と、第2ガス溝323に接続する第2入口333と、第3ガス溝325に接続する第3入口335と、第4ガス溝327に接続する第4入口337とを画定する。第1ガスパイプ341は、第1位置決めピン群305aを駆動する複数のシリンダにガスを供給する第1ガス溝321に接続されている。第2ガスパイプ343は、第2位置決めピン群305bを駆動する複数のシリンダにガスを供給する第2ガス溝323に接続されている。第3ガスパイプ345は、複数の第1注入口309にガスを供給する第3ガス溝325に接続されている。第4ガスパイプ347は、複数の第2注入口310にガスを供給する第4ガス溝327に接続されている。第1ガスパイプ341、第2ガスパイプ343、第3ガスパイプ345、第4ガスパイプ347はそれぞれ、回転軸303が回転駆動される際に、回転軸303と共に回転する。
【0025】
基板背面洗浄時に、基板支持装置300を用いて基板を支持する場合、基板表面が回転可能なチャック301の上面に対向するように配置される。第4入口337、第4ガス溝327、及び、第4ガスパイプ347を介して浄化ガスが複数の第2注入口310に供給される。複数の第2注入口310から吐出された浄化ガスは、基板表面に供給されて基板を所定の高さに持ち上げる。これにより、基板表面が回転可能なチャック301の上面に接触せず、基板表面の汚染を回避できる。第3入口335、第3ガス溝325、及び、第3ガスパイプ345を介して浄化ガスが複数の第1注入口309に供給される。複数の第1注入口309から吐出された浄化ガスは、基板表面に供給されて、ベルヌーイ効果によって基板を吸引する。これにより、背面洗浄用に基板が安定した浮遊状態に維持される。第1入口331、第1ガス溝321、第1ガスパイプ341を介して浄化ガスが第1位置決めピン群305aを駆動する複数のシリンダに供給される。これによって、第1位置決めピン群305aが複数のシリンダに駆動されて内方向に移動し基板を位置決めする、または、外方向に移動して基板を解放する。第2入口333、第2ガス溝323、第2ガスパイプ343を介して浄化ガスが第2位置決めピン群305bを駆動する複数のシリンダに供給される。これによって、第2位置決めピン群305bが複数のシリンダに駆動されて内方向に移動し基板を位置決めする、または、外方向に移動して基板を解放する。基板背面洗浄工程において、第1位置決めピン群305aおよび第2位置決めピン群305bは、基板の周縁部が完全に洗浄されるように、基板を交互に位置決めする。
【0026】
回転軸303の外壁と中空軸319の内壁との間には微小な空間が形成されており、回転軸303と中空軸319との摩擦を回避して粒子の生成を回避している。シリンダに供給されるガスの圧力が、第1位置決めピン群305aと第2位置決めピン群305bを駆動できるように、第1シールリング対351と第2シールリング対353がそれぞれ、第1ガス溝321と第2ガス溝323の両側に配置されており、これにより第1ガス溝321および第2ガス溝323のガスが回転軸303と中空軸319との間の空間から漏れることを防止する。中空軸319は、第3ガス溝325に最も近いシールリング353に隣接する排気口355を画定する。
【0027】
回転軸303とシールリング351、353との摩擦によって発生した粒子が、第3ガス溝325に到達してさらに第3ガスパイプ345を介して基板表面に到達するのを防止するために、回転軸303の外壁は排気口355に対応する阻止壁322を画定している。回転軸303の外壁はまた、第3ガス溝325に面した(matching)リング形状の凹部324を画定している。第3ガスパイプ345は、複数の第1注入口309に浄化ガスを供給する凹部324に接続されている。基板背面洗浄時に、回転軸303と、第3ガス溝325に最も近いシールリング353との摩擦によって発生した粒子は、回転軸303と中空軸319との間の空間を上方向に移動し、阻止壁322に阻止される。一実施形態では、阻止壁322は直角である。阻止壁322によって粒子が阻止されると、粒子は上方へ移動し、排気口355に向かって移動する。粒子の移動経路は
図18及び
図21に示されており、矢印で示されている。同時に、回転軸303と中空軸319との間にあるガスは排気口355を介して排気される。したがって、ガスと共に粒子が排出される。また、ある圧力を有する浄化ガスが凹部324に供給され、ガス圧力によって、空間内のガスが第3ガス溝325に流入することを防止し、排気口355を介して排気ガスと合流させる。これによって、粒子が第3ガス溝325に到達することはなく、基板表面が汚染されることを防止する。シールリング351、353の良好なシール効果によって、全体的に回転軸303、シールリング351、別のシールリング353との摩擦によって発生する粒子が、第3ガス溝325に到達することはない。
【0028】
図22A及び
図22Bに示すように、本発明の別の実施形態において、阻止壁422は多角形であり、粒子の移動経路は
図22Bに矢印で示される通りである。
【0029】
図23A及び
図23Bに示すように、本発明の別の実施形態において、阻止壁522は円弧状であり、粒子の移動経路は
図23Bに矢印で示される通りである。
【0030】
図24は
図8に示す基板支持装置および
図14に示す基板支持装置を用いて、粒子の増加量の比較を示す図である。
図24において、「Old chuck」は、
図8に示す基板支持装置であり、「New Chuck」は、
図14に示す基板支持装置である。
図24から、基板背面洗浄時に、
図14に示す基板支持装置を用いて基板を支持した場合、粒子の増加が明らかに減少することがわかる。
【0031】
本発明は、阻止壁322、422、または、522、および回転軸303に画定された凹部324を用いることによって、空間内の粒子が第3ガス溝325に流入することを防止し、排気口355を介して排気ガスに合流させることによって、第3ガス溝325に到達して基板表面を汚染することを防止する。したがって、半導体装置の品質が改善される。
【0032】
本発明の前述の説明は、例示および説明のために提示されたものである。本発明の正確な開示として限定または網羅するものではなく、上記の教示内容に鑑みて多くの修正および変形が可能であることは自明である。当業者に自明な改変および変形は、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内に含まれる。