特許第6758666号(P6758666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6758666-三次元造型法及びそれに用いる造型材料 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758666
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】三次元造型法及びそれに用いる造型材料
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20200910BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20200910BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20200910BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20200910BHJP
【FI】
   B29C64/118
   B29C64/314
   B33Y10/00
   B33Y70/00
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-527633(P2018-527633)
(86)(22)【出願日】2017年7月12日
(86)【国際出願番号】JP2017025418
(87)【国際公開番号】WO2018012539
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2019年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-140904(P2016-140904)
(32)【優先日】2016年7月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-199497(P2016-199497)
(32)【優先日】2016年10月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雄俊
(72)【発明者】
【氏名】金築 亮
(72)【発明者】
【氏名】本多 真理子
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−210947(JP,A)
【文献】 特開2017−226140(JP,A)
【文献】 特開平09−012693(JP,A)
【文献】 特開2010−261131(JP,A)
【文献】 特開2008−303494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 − 64/40
B33Y 10/00
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を主体とする線条物を、溶融させて積層させることにより立体形状を作成する三次元造型法において、
前記熱可塑性樹脂は、酸成分がテレフタル酸で、ジオール成分がエチレングリコール及び1,4−ブタンジオールであって該1,4−ブタンジオールが30〜70モル%存在するポリエステル共重合体よりなることを特徴とする三次元造型法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂を主体とする線条物を、溶融させて積層させることにより立体形状を作成する三次元造型法において、
前記熱可塑性樹脂は、酸成分がテレフタル酸及びε−カプロラクトンであって該ε−カプロラクトン5〜20モル%存在し、ジオール成分がエチレングリコール及び1,4−ブタンジオールであって該1,4−ブタンジオールが30〜70モル%存在するポリエステル共重合体よりなることを特徴とする三次元造型法。
【請求項3】
線条物がモノフィラメント糸、モノフィラメント糸を複数本引き揃えてなるマルチフィラメント糸又はモノフィラメント糸或いはマルチフィラメント糸を編組してなる組紐である請求項1又は2記載の三次元造型法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂の融点が200℃以下であり、ガラス転移温度が50℃以下であり、結晶化温度が120℃以下であって、結晶化温度はガラス転移温度よりも20℃以上高い請求項1乃至3のいずれか一項に記載の三次元造型法。
【請求項5】
線条物を溶融させ積層させて得られた立体形状の造型物を、50℃以下の温度に加温して形状変更し、その後、70℃〜120℃の温度で熱処理することにより、ポリエステル共重合体の結晶化を促進させる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の三次元造型法。
【請求項6】
酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコール及び1,4−ブタンジオールであって該1,4−ブタンジオールが30〜70モル%存在するポリエステル共重合体を主体とする線条物よりなる三次元造型法に用いる造型材料。
【請求項7】
酸成分がテレフタル酸及びε−カプロラクトンであって該ε−カプロラクトン5〜20モル%存在し、ジオール成分がエチレングリコール及び1,4−ブタンジオールであって該1,4−ブタンジオールが30〜70モル%存在するポリエステル共重合体を主体とする線条物よりなる三次元造型法に用いる造型材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンターや3Dペンにて造型物を得る三次元造型法に関し、特に、造型物の形状を変更しやすい三次元造型法及びそれに用いる造型材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、3DCADや3DCG(三次元コンピューターグラフィックス)等のデータに基づき、立体形状の造型物を得る三次元造型法が急速に普及している。特に、造型材料として熱可塑性樹脂を用いる熱溶解積層法(FDM法)を採用している3Dプリンターは、廉価版も販売され、家庭においても普及している。
【0003】
熱溶解積層法に用いられる熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂又はポリ乳酸樹脂等の高強度、高剛性又は耐熱性樹脂が主として用いられている(特許文献1、請求項11)。三次元造型法で得られた造型物が所望の形状となっていないとき、形状変更を行う必要が生じるが、熱可塑性樹脂が高強度又は高剛性であると、家庭で形状変更を行うことは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−221568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、造型物の形状を容易に変更しうると共に、変更後において造型物を高強度又は高剛性としうる三次元造型法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、造型材料として特定のものを採用することにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂を主体とする線条物を、溶融させて積層させることにより立体形状を作成する三次元造型法において、熱可塑性樹脂が、酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコール及び1,4−ブタンジオールであって該1,4−ブタンジオールが30〜70モル%存在するポリエステル共重合体(以下、「ポリエステル共重合体A」という。)、又は酸成分がテレフタル酸及びε−カプロラクトンであって該ε−カプロラクトン5〜20モル%存在し、ジオール成分がエチレングリコール及び1,4−ブタンジオールであって該1,4−ブタンジオールが30〜70モル%存在するポリエステル共重合体(以下、「ポリエステル共重合体B」という。)であることを特徴とする三次元造型法に関するものである。なお、ε−カプロラクトンは環状エステルであるが、便宜上、本明細書では酸成分に属するものとする。
【0007】
本発明で用いる造型材料は、酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコール及び1,4−ブタンジオールであって該1,4−ブタンジオールが30〜70モル%存在するポリエステル共重合体Aを主体とする線条物よりなるものである。また、酸成分がテレフタル酸及びε−カプロラクトンであって該ε−カプロラクトン5〜20モル%存在し、ジオール成分がエチレングリコール及び1,4−ブタンジオールであって該1,4−ブタンジオールが30〜70モル%存在するポリエステル共重合体Bを主体とする線条物よりなるものである。さらに、ポリエステル共重合体A及びBの混合物を主体としてもよい。ポリエステル共重合体Aとポリエステル共重合体Bの混合比は任意であり、たとえば、ポリエステル共重合体A:ポリエステル共重合体B=1:0.1〜10(質量比)程度でよく、好ましくはポリエステル共重合体A:ポリエステル共重合体B=1:0.5〜2程度である。また、ポリエステル共重合体Aを芯成分としポリエステル共重合体Bを鞘成分とした芯鞘型線条物又は逆にポリエステル共重合体Bを芯成分としポリエステル共重合体Aを鞘成分とした芯鞘型線条物であってもよい。
【0008】
ポリエステル共重合体A及びBは、公知の重縮合法で製造することができ、一般的に酸成分50モル%とジオール成分50モル%を仕込んで脱水縮合することにより製造することができる。本発明で特徴的なことは、酸成分としてテレフタル酸(必要によりε−カプロラクトンを併せて)を用い、ジオール成分としてエチレングリコール及び1,4−ブタンジオールを用いたことにある。これら各成分は、ガラス転移温度及び結晶化温度の調整のために用いられるものである。
【0009】
ジオール成分としてエチレングリコールと併用される1,4−ブタンジオールは、ジオール成分中、30〜70モル%である。1,4−ブタンジオールが30モル%未満又は70モル%を超えると、ポリエステル共重合体A及びBのガラス転移温度が低下しにくくなる。酸成分としてテレフタル酸と併用されるε−カプロラクトンは、酸成分中、5〜20モル%であるのが好ましい。ε−カプロラクトンを共重合成分として用いると、ポリエステル共重合体Bのガラス転移温度をより低下させることができる。なお、ε−カプロラクトンが20モル%を超えると、ポリエステル共重合体Bが所定温度で結晶化しにくくなる傾向が生じる。
【0010】
ポリエステル共重合体A及び/又はBを主体とする線条物は、直径が1〜3mm程度の連続線条物であり、これを数十〜数百m巻いてリール状として、3Dプリンターに取り付けられる。線条物としては、モノフィラメント糸又はモノフィラメント糸を複数本引き揃えてなるマルチフィラメント糸が用いられる。マルチフィラメント糸を用いる場合は、引き揃えたまま又は撚りを掛けた上で、各モノフィラメント糸を融着させて各モノフィラメント糸がばらけにくいようにするのが、取り扱い上、好ましい。また、線条物としては、モノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸を編組機(製紐機)にて編組して組紐とした後、各モノフィラメント糸を融着させるのが好ましい。組紐は破断強度や屈曲強度等の機械的物性に優れているため、取り扱い上、好ましい。さらに、上記したものに限らず、線条となっているものであれば、どのようなものでも線条物として用いられる。
【0011】
線条物中には、ポリエステル共重合体A及び/又はBの他に、造型物の強度や造形物の形状変更等を調整するために、他の重合体が添加されていてもよい。たとえば、ポリアセタール樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂又はポリウレタン系樹脂を単独で又は混合して添加してもよい。これらの他の重合体は、線条物の内部に添加されていてもよいし、線条物の表面を被覆する状態で添加されていてもよい。他の重合体の添加量は、1〜30質量%程度である。他の重合体の添加量が多すぎると、ポリエステル共重合体A及び/又はBの特性である低加温による形状変更が困難となる。
【0012】
また、線条物中には、所望に応じて種々の添加剤が含有されていてもよい。たとえば、カラー造型物を得るために染料又は顔料を線条物中に添加してもよい。特に、本発明ではガラス転移温度及び結晶化温度で変色するサーモクロミック顔料を線条物中に添加おくと、造型物が変形可能か否か又は造型物が結晶化したか否かを判断でき、好ましいものである。さらに、充填剤、可塑剤、難燃剤、滑剤、耐候剤、酸化防止剤又は耐熱剤等を添加することもできる。なお、添加剤の添加量は0.01〜5質量%程度である。
【0013】
線条物を構成するモノフィラメント糸は、ポリエステル共重合体A及び/又はBを主体とする原料を溶融し、これを紡糸ノズルから押し出すことによって得ることができる。特に、本発明においては、以下の方法でモノフィラメント糸を得るのが好ましい。すなわち、原料を溶融紡糸法によって紡糸した後、延伸してポリエステル共重合体A及び/又はBを結晶化させてモノフィラメント糸を得るのが好ましい。また、溶融紡糸法によって紡糸した後、熱処理してポリエステル共重合体A及び/又はBを結晶化させてモノフィラメント糸を得るのも好ましい。なお、熱処理する際の温度は、ポリエステル共重合体A及び/又はBの結晶化が進行する後述する温度範囲で行うのが良い。かかる方法によって得られたモノフィラメント糸は、ポリエステル共重合体A及び/又はBが結晶化されているため、このモノフィラメント糸で構成される線条物は破断しにくく、また変形しにくいため、取り扱い性が良く、好ましいものである。
【0014】
3Dプリンターに取り付けられた線条物は、フィーダーによって、押出機に送り込まれる。押出機には、押出ノズルとこの押出ノズルを加熱する加熱装置を備えており、加熱装置中で線条物は溶融して、押出ノズルから吐出される。押出機はデータに基づいて移動しており、吐出した溶融物は積層されて立体形状の造型物が得られる。溶融物を積層する際に、必要に応じて加温したり冷却してもよいが、室温中で積層することで十分である。加温する場合も、造型物の結晶化が促進しない程度とするのが好ましい。また、冷却する場合は、造型物が結晶化する恐れが少ないので、任意に行えばよい。なお、本発明で用いる線条物の他に、従来公知の線条物も3Dプリンターに取り付けて、造型物を得てもよい。そして、造型物の特定の部位のみを、本発明で用いる線条物で造型してもよい。また、この場合、本発明で用いる線条物で造型される部位と、従来公知の線条物で造型される部位との接着性を向上させるため、本発明で用いる線条物又は造型された部位に、プラズマ加工等の種々の加工を施してもよい。さらには、従来公知の線条物で主体となる造型物を得ると共に、本発明で用いる線条物によってサポート材を造型してもよい。本発明で用いる線条物でサポート材を造型した場合、加温することによりサポート材が容易に変形し、主体となる造形物から取り外すことが容易になる。また加温により軟化した状態であれば、カッター、ニッパー、彫刻刀、ハサミ等の工具又は刃物類によってサポート材を除去することも容易に可能である。
【0015】
本発明で用いるポリエステル共重合体A及び/又はBは、その融点が250℃以下であり、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは130〜200℃となっている。また、ガラス転移温度は50℃以下であり、好ましくは30〜50℃となっている。さらに、結晶化温度は120℃以下であり、好ましくはガラス転移温度よりも20℃以上高い温度となっている。なお、結晶化温度とは、ポリエステル共重合体A及び/又はBの結晶化が最も促進される温度である。得られた造型物は、溶融積層中に結晶化温度付近で熱処理されない限り、結晶化が促進されず、非晶領域を多く持つ状態となっている。このため、造型物をガラス転移温度以上に加温すると、容易に形状変更が可能となる。たとえば、ガラス転移温度が30〜50℃程度であると、風呂の湯に浸漬したり、或いは手指で握っていると、容易に形状変更を行うことができる。そして、形状変更した後に、結晶化温度にて熱処理すると、結晶化が進み高強度又は高剛性の造型物とすることができる。たとえば、結晶化温度が100℃程度であると、沸騰水中に浸漬しておくと、結晶化が進み高強度又は高剛性の造型物となる。なお、形状変更した後に熱処理を行わずに、室温程度に冷却した場合は、結晶化は進んでいないが、形状変更した状態で固定した造形物となる。かかる造型物は、ガラス転移温度以上に加温すると、再度形状変更が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る三次元造型法を採用すると、溶融積層して得られた造型物の形状を加温により変更しうると共に、変更後に熱処理することにより造型物を高強度又は高剛性にすることができるという効果を奏する。特に、形状変更は30〜50℃程度で可能であり、熱処理は100℃程度で可能であるため、家庭で造型物の形状変更が容易に行え、また家庭で造型物を容易に高強度又は高剛性にすることができるという効果を奏する。
【実施例】
【0017】
実施例1
テレフタル酸50モル%、エチレングリコール25モル%及び1,4−ブタンジオール25モル%を脱水縮合により共重合してポリエステル共重合体Aを得た。このポリエステル共重合体Aは、その融点が180℃、ガラス転移温度が45℃、結晶化温度が110℃及び比重が1.38であった。このポリエステル共重合体Aを、エクストルーダー型紡糸機にて溶融紡糸し、延伸して、直径1.75mmのモノフィラメント糸よりなる線条物を得た。
【0018】
実施例2
テレフタル酸43モル%、ε−カプロラクトン7モル%、エチレングリコール25モル%及び1,4−ブタンジオール25モル%を脱水縮合により共重合してポリエステル共重合体Bを得た。このポリエステル共重合体Bは、その融点が160℃、ガラス転移温度が30℃、結晶化温度が75℃及び比重が1.38であった。このポリエステル共重合体Bを用い、エクストルーダー型紡糸機にて溶融紡糸し、延伸して、直径1.75mmのモノフィラメント糸よりなる線条物を得た。
【0019】
実施例3
実施例1のポリエステル共重合体Aを、エクストルーダー型紡糸機にて溶融紡糸し、延伸せずに、モノフィラメント糸を得た。そして、このモノフィラメント糸を熱風乾燥機に導入し、無荷重の状態で110℃にて5分間の熱処理を行い、空冷して、直径1.75mmのモノフィラメント糸よりなる線条物を得た。
【0020】
実施例4
実施例2のポリエステル共重合体Bを、エクストルーダー型紡糸機にて溶融紡糸し、延伸せずに、モノフィラメント糸を得た。そして、このモノフィラメント糸を熱風乾燥機に導入し、無荷重の状態で75℃にて5分間の熱処理を行い、空冷して、直径1.75mmのモノフィラメント糸よりなる線条物を得た。
【0021】
実施例5
実施例1のポリエステル共重合体Aを、エクストルーダー型紡糸機にて溶融紡糸し、延伸して、430デシテックスのモノフィラメント糸を得た。このモノフィラメント糸を21本引き揃えたマルチフィラメント糸を芯糸とし、2本引き揃えたマルチフィラメント糸を側糸として、8本角打ち製紐機(編組機)にて編組した組紐を得た。得られた組紐に、170℃で2分間の熱処理を施し、直径1.75mmの組紐よりなる線条物を得た。
【0022】
実施例6
実施例2のポリエステル共重合体Bを用いること及び熱処理の条件を150℃で2分間とすることの他は、実施例5と同一の方法で、直径1.75mmの組紐よりなる線条物を得た。
【0023】
実施例7
実施例1のポリエステル共重合体A50質量%と実施例2のポリエステル共重合体B50質量%を均一に混合した混合物を得た。この混合物をエクストルーダー型紡糸機にて溶融紡糸し、延伸して、直径1.75mmのモノフィラメント糸よりなる線条物を得た。
【0024】
実施例8
実施例1のポリエステル共重合体A95質量%とポリオレフィン系樹脂(ダウ・ケミカル社製、商品名「エンゲージ 8200」)5質量%を均一に混合した混合物を得た。この混合物をエクストルーダー型紡糸機にて溶融紡糸し、延伸して、直径1.75mmのモノフィラメント糸よりなる線条物を得た。
【0025】
実施例9
実施例2のポリエステル共重合体B90質量%とポリエステル系樹脂(ユニチカ社製、商品名「エリーテル UE−3210」)10質量%を均一に混合した混合物を得た。この混合物をエクストルーダー型紡糸機にて溶融紡糸し、延伸して、直径1.75mmのモノフィラメント糸よりなる線条物を得た。
【0026】
比較例1
融点165℃、ガラス転移温度60℃、結晶化温度110℃及び比重が1.24のポリ乳酸を、エクストルーダー型紡糸機にて溶融紡糸し、延伸して、直径1.75mmのモノフィラメント糸よりなる線条物を得た。
【0027】
実施例1〜9及び比較例1で得られた線条物を用い、XYZ printing社製の3Dプリンター(Davinci Pro)にて、縦80mm、横10mm、厚さ2mmの直方体よりなる10種の造型物を得た。これらの造型物の垂れ試験を以下の方法で行った。すなわち、この造型物を、図1に示す如く、台(図1で濃墨で表した部分)上に縦方向の端部を載置したうえで、両面テープで固定し、台から60mm張り出した状態で5分間放置した。これを25℃及び50℃で行い、造型物の張り出した端縁が当初の状態から、何mm垂れたか(垂れ長)を測定した。その結果を表1に示した。
【0028】
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
垂 れ 長 (mm)
━━━━━━━━━━━━━
25℃ 50℃
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 0 21
実施例2 1 32
実施例3 0 23
実施例4 1 31
実施例5 0 22
実施例6 1 33
実施例7 1 25
実施例8 0 11
実施例9 1 33
比較例1 0 2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0029】
表1の結果から分かるように、実施例1〜9に係る方法で得られた造型物は、ガラス転移温度以上である50℃に加温すると、形状変更が可能な程度に柔らかくなる。一方、比較例1に係る方法で得られた造型物は、ポリ乳酸のガラス転移温度が60℃であるため、50℃の加温では、形状変更が可能な程度に柔らかくならない。なお、60℃以上に加温すれば、比較例1に係る方法で得られた造型物も柔らかくなって形状変更が可能となるが、家庭で60℃以上に加温すると、火傷の危険があるため好ましくない。
【0030】
次に、得られた直方体よりなる10種の造型物を、各々、所定の温度で5分間放置して熱処理した。すなわち、実施例1、3、5及び8に係る方法で得られた造型物については110℃で、実施例2、4、6及び9に係る方法で得られた造型物については70℃で、実施例7に係る方法で得られた造型物については100℃で、比較例1に係る方法で得られた造型物については110℃で熱処理した。そして、前記した方法で垂れ長を測定した。その結果を表2に示した。
【0031】
[表2]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
垂 れ 長 (mm)
━━━━━━━━━━━━━
25℃ 50℃
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 0 0
実施例2 0 0
実施例3 0 0
実施例4 0 0
実施例5 0 0
実施例6 0 0
実施例7 0 0
実施例8 0 0
実施例9 0 0
比較例1 0 0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0032】
表2の結果から分かるように、実施例1〜9に係る方法で得られた造型物は、熱処理前ではガラス転移温度に加温すると柔らかくなるが、熱処理後ではガラス転移温度に加温しても剛性を保持していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】垂れ長を測定する際の造型物の台からの張り出し状態を示した側面図である。
図1