特許第6758668号(P6758668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758668
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】塗装システム、及び塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/16 20180101AFI20200910BHJP
   B05B 17/04 20060101ALI20200910BHJP
   B05B 12/08 20060101ALI20200910BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20200910BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20200910BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20200910BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20200910BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20200910BHJP
   B64C 19/02 20060101ALI20200910BHJP
   B64D 1/18 20060101ALI20200910BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20200910BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   B05B12/16
   B05B17/04
   B05B12/08
   B05D1/02 Z
   B05D7/00 L
   B64C39/02
   B64C13/20 Z
   B64C27/08
   B64C19/02
   B64D1/18
   B64D47/08
   E04F13/07 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-541777(P2018-541777)
(86)(22)【出願日】2016年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2016078656
(87)【国際公開番号】WO2018061112
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2019年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101477
【氏名又は名称】アトミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】川端 裕之
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 真知子
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 晴紀
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0274294(US,A1)
【文献】 特開昭59−179170(JP,A)
【文献】 特開平08−117659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/16−12/36,
17/04−17/06
B05D 1/00− 7/26
B64D 1/16− 1/18
E04F 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の表面を塗装する塗装システムであって、
前記建造物の前記表面に塗料を噴霧するための塗料噴霧器と、
該塗料噴霧器の周囲を覆う覆い部と、
前記塗料噴霧器を支持して飛行する第1飛行体と、前記覆い部を支持して飛行する第2飛行体と、
前記建造物の前記表面を撮影するための撮影手段と、
前記第1飛行体と通信して当該第1飛行体の飛行を制御する第1飛行体操作手段と、
前記第2飛行体と通信して当該第2飛行体の飛行を制御する第2飛行体操作手段と、
前記撮影手段からの画像を受信する画像受信部と、
前記画像受信部が受信した画像を表示する表示部と、をさらに備え、
前記撮影手段が、前記第1飛行体または前記第2飛行体に支持されていることを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
前記第2飛行体が複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の塗装システム。
【請求項3】
前記覆い部は、筒状の部材が周方向に分割された複数の分割部材から構成され、前記複数の分割部材のそれぞれが、前記第2飛行体に支持されていることを特徴とする請求項1または請求項に記載の塗装システム。
【請求項4】
建造物の表面を塗装するための塗装方法であって、
前記建造物の前記表面に塗料を噴霧するための塗料噴霧器が、第1飛行体によって支持され、
前記塗料噴霧器の周囲を覆う覆い部が、第2飛行体によって支持され、
前記建造物の前記表面を撮影するための撮影手段が、前記第1飛行体または前記第2飛行体に支持され、
第1飛行体操作手段が、前記第1飛行体と通信して当該第1飛行体の飛行を制御し、
第2飛行体操作手段が、前記第2飛行体と通信して当該第2飛行体の飛行を制御し、
画像受信部が受信した前記撮影手段からの画像を表示部に表示し、
前記覆い部の内側で、前記塗料噴霧器が前記建造物の前記表面に塗料を噴霧することを特徴とする塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装システム、及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、建築物の外壁塗装を行う際、当該建築物の外壁に沿って足場が設置され、適宜な場所に養生が設置された後、塗装作業が行われることがある(例えば、特許文献1参照)。塗装作業が完了した後、足場や養生が取り外される。
【0003】
しかしながら、外壁塗装を行う際、足場や養生の設置や取り外しをするための費用が発生するとともに、それに伴い工期も長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−318510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低コスト化と作業効率の向上を図った塗装システム、及び塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建造物の表面を塗装する塗装システムであって、前記建造物の前記表面に塗料を噴霧するための塗料噴霧器と、該塗料噴霧器の周囲を覆う覆い部と、前記塗料噴霧器を支持して飛行する第1飛行体と、前記覆い部を支持して飛行する第2飛行体と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
以上のような本発明によれば、第1飛行体が、塗料の噴霧(塗装作業)が必要な場所を飛行することで、塗料噴霧器により建造物の表面に塗料が噴霧される。また、覆い部は第2飛行体によって支持され、塗料噴霧器は、覆い部の内側で塗料を噴霧するから、外部への塗料の飛散が防止される。これによれば、従来技術のように、足場や養生を設置せずとも、塗装作業を行うことができる。即ち、足場や養生の設置や取り外しをするための費用を削減しつつ、これに伴う工期を短縮することができる。従って、低コスト化と作業効率の向上を図ることができる。
【0008】
また、本発明の塗装システムでは、前記第2飛行体が複数設けられていることが好ましい。これによれば、覆い部が、複数の第2飛行体により安定的に支持される。
【0009】
また、本発明の塗装システムでは、前記建造物の前記表面を撮影するための撮影手段をさらに備え、前記撮影手段が、前記第1飛行体または前記第2飛行体に支持されていることが好ましい。これによれば、撮影手段により、塗装面を撮影することができる。従って、塗装面の画像を地上で視認しつつ、作業者が塗装作業を行うことができる。
【0010】
また、本発明の塗装システムでは、前記第1飛行体と通信して当該第1飛行体の飛行を制御する第1飛行体操作手段と、前記第2飛行体と通信して当該第2飛行体の飛行を制御する第2飛行体操作手段と、前記撮影手段からの画像を受信する画像受信部と、前記画像受信部が受信した画像を表示する表示部と、をさらに備えていることが好ましい。これによれば、第1飛行体操作手段により第1飛行体の飛行を制御し、第2飛行体操作手段により第2飛行体の飛行を制御しつつ、撮影手段により撮影された建造物の表面(塗装面)の画像を画像受信部で受信して、表示部で当該画像を表示することができる。従って、作業者が、建造物の表面から離れた位置にいても、塗装面の画像を地上で視認しつつ、塗装作業を行うことができる。
【0011】
また、本発明の塗装システムでは、前記覆い部は、例えば筒状の部材が周方向に分割された複数の分割部材から構成され、前記複数の分割部材のそれぞれが、前記第2飛行体に支持されていることが好ましい。これによれば、例えば、筒状の覆い部が進入できないような狭い場所を塗装する場合にあっても、分割部材を、その径方向に一方向に互いに位置をずらした状態で、当該一方向に直交する他方向に近付けることで、当該他方向の寸法を小さくすることができるから、筒状の覆い部が進入できないような狭い場所を塗装することが可能となる。
【0012】
一方、本発明は、建造物の表面を塗装するための塗装方法であって、前記建造物の前記表面に塗料を噴霧するための塗料噴霧器が、第1飛行体によって支持され、前記塗料噴霧器の周囲を覆う覆い部が、第2飛行体によって支持され、前記覆い部の内側で、前記塗料噴霧器が前記建造物の前記表面に塗料を噴霧することを特徴とする。
【0013】
以上のような本発明によれば、第1飛行体が、塗料の噴霧(塗装作業)が必要な場所を飛行することで、塗料噴霧器により建造物の表面に塗料が噴霧される。また、覆い部は第2飛行体によって支持され、塗料噴霧器は、覆い部の内側で塗料を噴霧するから、外部への塗料の飛散が防止される。これによれば、従来技術のように、足場や養生を設置せずとも、塗装作業を行うことができる。即ち、足場や養生の設置や取り外しをするための費用を削減しつつ、これに伴う工期を短縮することができる。従って、低コスト化と作業効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塗装システム、及び塗装方法によれば、足場や養生を設置せずとも、塗装作業を行うことができる。従って、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る塗装システムを示す斜視図である。
図2図1に示された塗装システムを説明するための模式図である。
図3図1に示された塗装システムの変形例を説明するための模式図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る塗装システムを示す斜視図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る塗装システムを示す斜視図である。
図6】本発明の第4実施形態に係る塗装システムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る塗装システム1を、図1図2を参照して説明する。本実施形態の塗装システム1は、図1図2に示すように、建築物B(建造物)の屋根Rの表面を塗装するためのものであり、高さ方向に異なる位置にある下方側飛行体2(第1飛行体)及び上方側飛行体3(第2飛行体)と、下方側飛行体2及び上方側飛行体3を制御するモバイル機器としてのタブレット4と、上方側飛行体3に支持された覆い部5と、下方側飛行体2に支持された塗料噴霧器6と、を有して構成されている。なお、本実施形態における「高さ方向に異なる位置にある」との表現は、必ずしも下方側飛行体2と上方側飛行体3が、鉛直方向の上下に位置していなくともよく、鉛直方向に交差する位置にあることも含まれる。また、本実施形態において「建造物」とは、地上に立設された建造物のみならず、塗装する際に足場が必要な飛行体等の物体も含む概念とする。
【0017】
下方側飛行体2及び上方側飛行体3は、フライトコントローラ(不図示)を有し、それぞれが、独立して飛行するように、タブレット4の操作により無人飛行する。
【0018】
また、下方側飛行体2及び上方側飛行体3は、それぞれ例えば4つのロータ20(図示例では4つ)を持つヘキサコプターから成り、合計が5000mA/h以上のバッテリ(不図示)が4つ以上に分散して搭載されていることが望ましい。これにより、下方側飛行体2及び上方側飛行体3は、最大30分以上の連続飛行と、最大4kg以上の重量物が搭載可能な性能を有している。さらに、下方側飛行体2及び上方側飛行体3は、防水、防塵仕様を有して構成されているとともに、空中で静止するホバリングが可能とし、ホバリング状態から垂直、水平への移動も可能とするような機能を有して構成されている。
【0019】
下方側飛行体2には、その下面に、塗装面Sを塗装するための塗料噴霧器6が支持されている。この下方側飛行体2は、上方側飛行体3により支持された覆い部5の内側を飛行することで、屋根Rの表面において、塗装が必要な箇所(塗装面S)に塗料を噴霧する。このような下方側飛行体2は、塗装が必要な箇所(塗装面S)を飛行するようにタブレット4により操縦(制御)されている。即ち、タブレット4は、下方側飛行体2(第1飛行体)と通信して、当該下方側飛行体2の飛行を制御する第1飛行体操作手段を有している。
【0020】
上方側飛行体3には、その下面に、塗装面S(屋根Rの表面)を撮影するためのステレオカメラ7(撮影手段)が搭載されている。ステレオカメラ7とは、対象物を複数の異なる方向から同時に撮影することにより、その奥行き方向の情報も撮影できるようにしたカメラのことである。ステレオカメラ7には、撮影データを送信するためのデータ送信部(不図示)が内蔵され、データ送信器により、撮影データが適宜、タブレット4の受信部41に送信される。また、ステレオカメラ7は、ズームイン(被写体を画面内で次第に大きくとらえていくこと)またはズームアウト(被写体を画面内で次第に小さくとらえていくこと)するように、タブレット4により制御される。
【0021】
このような上方側飛行体3は、制御部のROMに記憶された所定の飛行ルートを飛行するように制御されている。即ち、上方側飛行体3は、塗装面Sを、一方から他方へ、他方から一方へと、その全面を隙間なく飛行するように予め制御されている。こうして、上方側飛行体3は、塗装面Sを予め定められた飛行ルートで飛行するように制御されている。即ち、タブレット4は、上方側飛行体3(第2飛行体)と通信して、当該上方側飛行体3の飛行を制御する第2飛行体操作手段を有している。
【0022】
タブレット4は、電池(不図示)と、制御部(不図示)と、受信部41(画像受信部)を含む無線送受信部40と、操作部(不図示)と、表示部(不図示)と、を備えて構成されている。電池は、タブレット4に電源を供給する。操作部及び表示部は、タッチセンサが設けられた操作パネルから構成されている。無線送受信部40は、例えば、ステレオカメラ7から撮影データを受信するための受信部41と、下方側飛行体2、ステレオカメラ7及び、塗料噴霧器6を制御するための制御信号を送信するための送信部42と、を有して構成されている。これらの無線送受信部40、操作部、表示部は、制御部によって制御されている。
【0023】
制御部は、処理プログラムを格納したROMと、ROMに記憶された処理プログラムに従って各種の処理を行うCPUと、例えば、無線送受信部40により受信した撮影データを格納するためのRAMと、を備えて構成されている。無線送受信部40は、下方側飛行体2のフライトコントローラや、ステレオカメラ7や、塗料噴霧器6と無線で通信可能に構成されている。
【0024】
覆い部5は、その軸方向の両端に開口部5a、5bを有する円筒状に形成されて、軸が上下に延在するように設けられた円筒部材51と、この円筒部材51の上端に設けられて当該円筒部材51を支持する支持リング52と、支持リング52に設けられたホイール部53と、を有して構成されている。円筒部材51は、例えばポリエチレンのラッセル編みのシート等、軽量で噴霧ミストの飛散を防止できる材質のシートから構成されている。ホイール部53は、支持リング52の中心(中心軸)Pを通って支持リング52の径方向に延在する複数の棒状部53Aを有して放射状に構成されている。
【0025】
さらに、覆い部5は、上端が上方側飛行体3に固定され、下端が支持リング52の中心Pに固定されて、覆い部5を支持する支持部材54を有している。この支持部材54により、覆い部5が上方側飛行体3に支持されて、覆い部5が、上方側飛行体3の移動に連動して移動するように構成されている。
【0026】
塗料噴霧器6は、塗料が貯留された塗料タンク61と、塗料タンク61の下面に固定されて、塗料タンク61に貯留された塗料を噴霧する噴霧器62と、を有して構成されている。塗料噴霧器6は、下方側飛行体2の下面に固定されている。塗料噴霧器6には、ポンプモータ(不図示)が搭載され、コンプレッサーを用いずに噴霧される。塗料タンク61に貯留される塗料として、水性で、飛散の少ない高粘度の建築塗料が用いられる。このような塗料噴霧器6は、下方側飛行体2の下面に直交する軸を中心とした円形の範囲内に、塗料を噴霧するように構成されている。即ち、本実施形態では、塗料噴霧器6は、塗料を下方に向けて噴霧するように、下方側飛行体2に固定されている。
【0027】
噴霧器62には、塗料の噴霧の開始と、噴霧の停止を可能とするように、タブレット4により制御されている。即ち、噴霧器62には、タブレット4からの制御信号を受信するための信号受信部(不図示)が内蔵されている。さらに、噴霧器62には、塗装面S(屋根Rの表面)から噴霧器62の噴霧部(不図示)までの距離を適宜測定して、当該距離をタブレット4に送信するためのデータ送信部(不図示)が内蔵されている。
【0028】
このような塗料噴霧器6は、下方側飛行体2に支持されて、下方側飛行体2とともに覆い部5の内側を移動自在となるように、タブレット4により制御されている。そして、塗料噴霧器6は、覆い部5の内側において、塗装面S(屋根Rの表面)から噴霧器62の噴霧部(不図示)までの離間距離を適宜測定し、適宜な場所で噴霧を開始し、適宜な場所で噴霧を停止するように、タブレット4により制御されている。
【0029】
次に、上述した構成の塗装システム1を用いて、建築物Bの屋根Rの表面を塗装する塗装方法を説明する。
【0030】
タブレット4の制御部に格納されたROMには、上方側飛行体3の飛行経路が予め記憶されている。また、上方側飛行体3は、覆い部5の下端が、屋根Rの表面から僅かに離間した位置を飛行するように制御される。塗装システム1は、上方側飛行体3が覆い部5を支持した状態で、作業者の操作パネルの操作(以下、単に「操作」と記す)により、上方側飛行体3が飛行を開始する。下方側飛行体2は、塗料噴霧器6を支持しつつ覆い部5の内側に位置している。上方側飛行体3は、予め定められた飛行経路を飛行する。上方側飛行体3の飛行(移動)に連動して、覆い部5が移動する。
【0031】
続いて、タブレット4の操作により、下方側飛行体2が飛行を開始する。この際、塗料噴霧器6は、下方側飛行体2に支持されて覆い部5の内側に位置している。また、タブレット4の操作により、ステレオカメラ7の撮影が開始される。また、ステレオカメラ7により撮影された撮影データは、適宜、タブレット4の受信部41に受信されて、タブレット4の表示部に表示される。作業者は、表示部に表示された撮影データを視認する。
【0032】
作業者は、表示部に表示された撮影データを視認しつつ、下方側飛行体2を操縦することで、下方側飛行体2を、塗装が必要な箇所(塗装面S)の上方に飛行させる。そして、噴霧器62のデータ送信部により送信された、塗装面S(屋根Rの表面)から噴霧器62の噴霧部(不図示)までの離間距離を、タブレット4で受信しつつ、当該離間距離が適宜な距離になった際に、塗装面Sへの塗料の噴霧を開始する。下方側飛行体2により支持された状態で、噴霧器62が塗料を噴霧しつつ、上方側飛行体3が、予め記憶された飛行経路を飛行する。そして、上方側飛行体3が予め記憶された飛行経路を飛行完走する。塗装面Sへの塗料の噴霧を停止して、下方側飛行体2の操作を停止する。こうして、塗装作業が完了する。
【0033】
以上のような塗装システム1によれば、下方側飛行体2(第1飛行体)が、塗料の噴霧(塗装作業)が必要な場所を飛行することで、塗料噴霧器6により建築物Bの表面に塗料が噴霧される。また、覆い部5は上方側飛行体3(第2飛行体)によって支持され、塗料噴霧器6は、覆い部5の内側で塗料を噴霧するから、外部への塗料の飛散が防止される。これによれば、足場や養生を設置せずとも、塗装作業を行うことができる。即ち、足場や養生の設置や取り外しをするための費用を削減しつつ、これに伴う工期を短縮することができる。従って、低コスト化と作業効率の向上を図ることができる。
【0034】
また、下方側飛行体2及び上方側飛行体3が、タブレット4の操作により無人飛行することにより、作業者が高所で作業することなく、地上の拠点で塗装作業をすることが可能となり、作業者による高所作業の危険性を回避することができる。また、下方側飛行体2及び上方側飛行体3が、遠隔操作により無人飛行する場合には、飛行体の操縦者が最低一人で作業を行うことができるため、作業者の人数を減らすことができる。即ち、塗装作業に伴うコストの低減を図ることができる。また、作業者の技量によって、塗装面Sの仕上がりに差異が生じ難くすることができる。
【0035】
また、塗装システム1では、建築物Bの屋根Rの表面を撮影するためのステレオカメラ7(撮影手段)を備えている。これによれば、ステレオカメラ7(撮影手段)により、塗装面Sを撮影することができる。従って、塗装面Sを画像で視認しつつ、塗装作業を行うことができる。
【0036】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形例も本発明に含まれる。
【0037】
上述した第1実施形態では、ステレオカメラ7(撮影手段)は、上方側飛行体3の下面に搭載されているが、本発明はこれに限定されるものではない。撮影手段は、上方側飛行体3の下面に搭載されていなくとも、塗装面Sを撮影可能な場所に搭載されていればよい。
【0038】
また、上述した第1実施形態では、ステレオカメラ7(撮影手段)は、上方側飛行体3の下面に搭載されているが、本発明はこれに限定されるものではない。撮影手段は、下方側飛行体2の任意の場所に、塗装面Sを撮影するように搭載されていてもよい。
【0039】
また、上述した第1実施形態では、タブレット4が、制御部(不図示)と、受信部41(画像受信部)を含む無線送受信部40と、操作部(不図示)と、表示部(不図示)と、を備えて構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の塗装システムは、図3に示すように、ホストコンピュータ(不図示)を備えた管制システムを有し、ホストコンピュータが、制御部(不図示)と、受信部41(画像受信部)を含む無線送受信部40と、操作部と、表示部(不図示)と、を備えて構成されていてもよい。この場合には、タブレットは、省略してもよい。即ち、作業者が、塗装現場に赴いて、下方側飛行体2を操作せずとも、ホストコンピュータを用いて、下方側飛行体2を遠隔操作することで、下方側飛行体2を操作できるようにしてもよい。なお、図3において、第1実施形態と略同一機能乃至略同一構成を有する部材には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に係る塗装システムを、図4を参照して説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る塗装システム11を示す斜視図である。なお、図4において、第1実施形態と略同一機能乃至略同一構成を有する部材には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0041】
第2実施形態に係る塗装システム11は、1つの下方側飛行体12(第1飛行体)及び複数(図示例では2つ)の上方側飛行体13(第2飛行体)と、2つの上方側飛行体13に支持された覆い部15と、下方側飛行体12に支持された塗料噴霧器6と、を有して構成されている。また、2つの上方側飛行体3には、それぞれにステレオカメラ7が搭載されている。
【0042】
覆い部15は、上面視が半円状の弧状面部15A、15B(分割部材)を有している。即ち、覆い部15は、円筒状(筒状)の部材が周方向に2分割されて構成されている。これら2つの弧状面部15A、15Bは、それぞれ、各上方側飛行体13に支持されている。2つの弧状面部15A、15Bは、図4に示すように、弧状面部15A,15Bの径方向に一方向に互いに位置をずらした状態で、弧状面部15A、15Bの径方向において、当該一方向に直交する他方向に接離可能となるように制御されている。ここで、弧状面部15A、15Bにおいて、その径方向の一方向の相対的な位置ずれをちいさくすれば、塗料噴霧器6の全周を覆った状態とすることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、弧状面部15A、15Bは、上面視が半円状(C字状)となるように形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。弧状面部15A、15Bは、上面視がコ字状またはV字状となるように形成されていてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、覆い部15は、円筒状の部材が周方向に2分割されて構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。筒状の部材が3以上に分割されていてもよい。
【0045】
以上のような塗装システム11によれば、覆い部15は、筒状の部材が周方向に分割された2つ(複数)の弧状面部15A、15B(分割部材)から構成され、2つの弧状面部15A、15B(分割部材)のそれぞれが、上方側飛行体13(第2飛行体)に支持されている。これによれば、例えば、筒状の覆い部15が進入できないような狭い場所を塗装する場合にあっても、弧状面部15A、15B(分割部材)を、その径方向に一方向に互いに位置をずらした状態で、その径方向において、当該一方向に直交する他方向に近付けることで、他方向の寸法を小さくすることができるから、筒状の覆い部が進入できないような狭い場所を塗装することが可能となる。
【0046】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る塗装システムを、図5を参照して説明する。図5は、本発明の第3実施形態に係る塗装システム21を示す斜視図である。なお、図5において、第1、第2実施形態と略同一機能乃至略同一構成を有する部材には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0047】
第3実施形態に係る塗装システム21は、図5に示すように、建築物B(建造物)の外壁面H(表面)を塗装するためのものであり、1つの下方側飛行体2(第1飛行体)及び1つの上方側飛行体3(第2飛行体)と、上方側飛行体3に支持された覆い部25と、下方側飛行体2に支持された塗料噴霧器26と、を有して構成されている。
【0048】
覆い部25は、上面視が半円状の弧状面部を有して構成されている。弧状面部は、図3に示すように、その中心軸Pを含む面Fが、建築物Bの外壁面Hと対向するように配置されている。即ち、本実施形態では、覆い部25、及び塗装面Sを含む建築物Bの外壁面Hによって、塗料噴霧器26の周囲が覆われている。
【0049】
塗料噴霧器26は、塗料が貯留された塗料タンク63と、塗料タンク63の下面に固定されて、塗料タンク63に貯留された塗料を噴霧する噴霧器64と、を有して構成されている。噴霧器64は、塗料タンク63の下面に固定されている。このような塗料噴霧器26は、下方側飛行体2の下面に沿った軸を中心とした円形の範囲内に、塗料を噴霧するように構成されている。即ち、本実施形態では、塗料噴霧器26は、塗料を側方に向けて噴霧するように、下方側飛行体2に固定されている。
【0050】
以上のような塗装システム21によれば、覆い部25は、上面視が半円状の弧状面部を有して構成されている。また、塗料噴霧器26は、塗料を側方に向けて噴霧するように、下方側飛行体2に固定されている。これによれば、建築物Bの外壁面Hを塗装することが可能となる。
【0051】
(第4実施形態)
続いて、第4実施形態に係る塗装システムを、図6を参照して説明する。図6は、本発明の第4実施形態に係る塗装システム31を示す斜視図である。なお、図6において、第1〜第3実施形態と略同一機能乃至略同一構成を有する部材には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
第4実施形態に係る塗装システム31は、建築物B(建造物)の屋根Rの表面を塗装するためのものであり、高さ方向に異なる位置にある下方側飛行体2(第1飛行体)及び上方側飛行体23(第2飛行体)と、上方側飛行体23に支持された覆い部35と、下方側飛行体2に支持された塗料噴霧器6と、を有して構成されている。
【0053】
上方側飛行体23は、複数(図示では4)設けられている。また、4つの上方側飛行体23には、それぞれにステレオカメラ7が搭載されている。
【0054】
覆い部35は、上下に開口する角筒部36と、この角筒部36の上端に設けられて当該角筒部を支持する矩形縁部37と、を有して構成されている。角筒部36は、例えばポリエチレンのラッセル編みのシートから構成されている。矩形縁部37は、一対の長辺部37A、37Bと、一対の短辺部37C、37Dと、を有して上面視が長方形状となるように形成されている。各長辺部37A、37Bは、その両端から所定の間隔をあけた位置に、支持部材54の下端が固定されている。
【0055】
以上のような塗装システム31によれば、上方側飛行体23(第2飛行体)が複数設けられ、各覆い部5が、各上方側飛行体23(第2飛行体)に支持されている。これによれば、覆い部5が複数の上方側飛行体23(第2飛行体)により安定的に支持される。
【0056】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び、目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
1、11、21、31 塗装システム
2 上方側飛行体(第1飛行体)
3、13、23 下方側飛行体(第2飛行体)
5、15、25、35 覆い部
15A、15B 弧状面部(分割部材)
6、16、26 塗料噴霧器
7 ステレオカメラ(撮影手段)
B 建築物(建造物)
R 屋根
H 外壁面(表面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6