特許第6758706号(P6758706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6758706-補助装具 図000002
  • 特許6758706-補助装具 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758706
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】補助装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   A61F5/02 N
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-172794(P2016-172794)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2018-40069(P2018-40069A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】596071154
【氏名又は名称】森松株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087778
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 明夫
(72)【発明者】
【氏名】高木 基充
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−106716(JP,A)
【文献】 特開2012−90920(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3176428(JP,U)
【文献】 特表2015−532885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01− 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肩に掛止される部位である掛止部と、該掛止部から一体に連設された中間部と、該中間部から一体に連設された介挿部とを有し、該介挿部が腋窩に介挿されて上腕部を外側へ押し上げることにより腕の機能の回復を補助する補助装具であって、
前記掛止部の先端側は、肩から背部の中央へ向けて下がる湾曲形状を成し、
前記介挿部の先端側は、腋窩から上腕部の外側へ向けて上がる湾曲形状を成し、
前記掛止部と前記介挿部を繋ぐ前記中間部は、肩から胸部の縁を経て腋窩へ向けて下がる湾曲形状を成し、
前記介挿部が腋窩に介挿された状態で、前記掛止部と前記中間部とで肩を上側から挟み、前記中間部と前記介挿部とで腕の付け根を下側から挟む、
ことを特徴とする補助装具。
【請求項2】
請求項1に於いて、
前記補助装具は、各々所定の輪郭形状を成す2枚のポリ塩化ビニル樹脂シートの縁全周を溶着して成り、当該2枚のシート間に空気を封入することにより前記形状を成す、
ことを特徴とする補助装具。
【請求項3】
請求項1に於いて、
前記補助装具は発泡スチロール製である、
ことを特徴とする補助装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳梗塞等で半身が不自由となった人が、回復期リハビリテーション病院等で行われる理学療法や作業療法等の合間の時間帯に装着していることで、腕や肩の機能の回復を補助する補助装具に関する。
本発明の補助装具は、他人の介助が無くとも、患者本人が簡単に装着し/取り外すことが可能であるため、気軽に使用できる。
【背景技術】
【0002】
回復期リハビリテーション病院では、理学療法や作業療法等の各種のリハビリが行われるのであるが、そのための時間は比較的短く、合間の時間がかなり長い。その間、何もしないでいることは、患者にとって、精神的な苦痛である。
【0003】
上腕部を身体から離すようにして外側上方へ若干持ち上げると、ダラリと垂れ下がっていた腕の重量で肩に加わっていた力の方向が変わり、回復期の患者にとって楽である。また、肘の伸びる方向も変わるため、血行促進等の効果もあり、回復の助けとなる。
テーピング等で上腕部を持ち上げることも考えられるが、半身が不自由な患者が一人でテーピングを行うことは不可能であり、介助者が必要となるため、現実的ではない。つまり、理学療法や作業療法等の合間の時間帯に気軽に行うことはできない。
【0004】
上腕部を身体から離すようにして外側上方へ若干持ち上げるための装具であって、半身が不自由な患者が一人で装着し/取り外すことができるものは提供されていない。
なお、特開2016−000875号公報(特許文献1)には、肩に装着するための関節用サポータや、サポータ用支持具について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−000875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上腕部を身体から離すようにして外側上方へ押し上げ得る装具であって、理学療法や作業療法の合間等の暇な時間帯に、半身が不自由な患者が、介助者の助け無く一人で装着し/取り外すことができる装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の構成を、下記[1]〜[3]に記す。なお、この項([課題を解決するための手段])と次項([発明の効果])に於いて、符号は理解を容易にするために付したものであり、本発明を符号の構成に限定する趣旨ではない。
【0008】
[1]構成1
肩H1に掛止される部位である掛止部11と、該掛止部11から一体に連設された中間部13と、該中間部13から一体に連設された介挿部15とを有し、該介挿部15が腋窩H9に介挿されて上腕部H31を外側へ押し上げることにより腕H3の機能の回復を補助する補助装具であって、
前記掛止部11の先端側は、肩H1から背部H5の中央H50へ向けて下がる形状を成し、
前記介挿部15の先端側は、腋窩H9から上腕部H31の外側H311へ向けて上がる形状を成し、
前記掛止部11と前記介挿部15を繋ぐ前記中間部13は、肩H1から胸部H7の縁H71を経て腋窩H9へ向けて下がる形状を成し、
前記介挿部15が腋窩H9に介挿された状態で、前記掛止部11と前記中間部13とで肩H1を上側から挟み、前記中間部13と前記介挿部15とで腕H3の付け根H30を下側から挟む、
ことを特徴とする補助装具。
介挿部15は、腋窩H9に介挿された状態で上腕部H31を外側へ押し上げ得る程度に太く、また、押し上げ得る程度に硬い。患者の体格や回復の程度によっても異なるが、太さは、例えば、500cc〜1500ccのペットボトル程度である。
掛止部11の先端側が背部H5の中央H50へ向けて下がるように体表に沿って湾曲する形状を成し、介挿部15の先端側が上腕部H31の外側H311へ向けて上がるように体表に沿って湾曲する形状を成し、掛止部11と介挿部15を繋ぐ中間部13が肩H1から胸部H7の縁H71を経て腋窩H9へ向けて下がるように体表に沿って湾曲する形状を成すと、装具全体としては、略螺旋状の湾曲形状を成す。
介挿部15が腋窩H9に介挿された状態で、掛止部11と中間部13とで肩H1を上側から弾性的に挟み、中間部13と介挿部15とで腕H3の付け根H30を下側から弾性的に挟むように構成すると、本補助装具が、より外れ難くなる。
【0009】
[2]構成2
構成1に於いて、
前記補助装具は、各々所定の輪郭形状を成す2枚のポリ塩化ビニル樹脂シートの縁全周を溶着して成り、当該2枚のシート間に空気を封入することにより前記形状を成す、
ことを特徴とする補助装具。
[3]構成3
構成1に於いて、
前記補助装具は発泡スチロール製である、
ことを特徴とする補助装具。
【発明の効果】
【0010】
構成1は、肩H1に掛止される部位である掛止部11と、該掛止部11から一体に連設された中間部13と、該中間部13から一体に連設された介挿部15とを有し、該介挿部15が腋窩H9に介挿されて上腕部H31を外側へ押し上げることにより腕H3の機能の回復を補助する補助装具であって、前記掛止部11の先端側は、肩H1から背部H5の中央H50へ向けて下がる形状を成し、前記介挿部15の先端側は、腋窩H9から上腕部H31の外側H311へ向けて上がる形状を成し、前記掛止部11と前記介挿部15を繋ぐ前記中間部13は、肩H1から胸部H7の縁H71を経て腋窩H9へ向けて下がる形状を成し、前記介挿部15が腋窩H9に介挿された状態で、前記掛止部11と前記中間部13とで肩H1を上側から挟み、前記中間部13と前記介挿部15とで腕H3の付け根H30を下側から挟むことを特徴とする補助装具であるため、介助者の助けが無くとも、理学療法や作業療法の合間等の暇な時間帯に、患者が一人で装着し/取り外すことができる。また、装着することにより、ダラリと垂れ下がっていた腕の重量で肩に加わっていた力の方向が変わるため患者にとって楽であり、肘の伸びる方向も変わるため、血行促進等の効果もあり、回復の助けともなる。
構成2や構成3によると、本補助装具に適した具体的な素材例を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態の補助装具を示し、(a)は左腕・左肩に装着した状態を斜め後方から見た斜視図、(b)は(a)の補助装具の斜視図。
図2図1の補助装具を示し、(a)は左腕・左肩に装着した状態を後方から見た斜視図、(b)は左腕・左肩に装着した状態を前方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図示の例は左腕・左肩に装着するための補助装具であるが、右腕・右肩用の補助装具の場合は、左右が反対の対称形となる他は、図示の例と同様に構成できる。
【0013】
本補助装具は、発泡スチロール製であり、図示のように、掛止部11、介挿部15、及び、掛止部11と介挿部15を繋ぐ中間部13から成る。これら3つの部位は一体に連設されており、全体として略螺旋状の形状を成す。
この全体形状は、例えば、この全体形状を成す複数の部分をそれぞれ発泡スチロールから削りだした後、接着することによって構成することができる。
【0014】
掛止部11は、肩H1に掛止される部位であり、その先端側は、肩H1から背部H5の中央H50へ向けて体表に沿って下がる湾曲形状を成す。
介挿部15は、腋窩(脇の下)H9に介挿されて上腕部H31を外側へ押し上げることにより腕H3や肩H1の機能回復を補助するための部位であり、その先端側は、腋窩H9から上腕部H31の外側H311へ向けて体表に沿って上がる湾曲形状を成す。
中間部13は、掛止部11と介挿部15を繋ぐ部位であり、肩H1から胸部H7の縁H71を経て腋窩H9へ向けて体表に沿って下がる湾曲形状を成す。
【0015】
本補助装具を患者が装着した状態では、左の肩H1が、掛止部11の先端側と、中間部13の掛止部寄りの部位とで、上側から挟み込まれるとともに、左の腕H3の付け根(腋窩H9,脇の下)H311の部分が、介挿部15の先端側と、中間部13の介挿部15寄りの部位とで、下側から挟み込まれる。このように上下から挟み込まれるため、本補助装具は簡単には外れ難く、患者は、理学療法や作業療法等のリハビリの合間に想定される通常の動作を、本補助装具を特別に意識することなく行うことができる。言い換えれば、リハビリの合間に装着していても、生活に支障は無い。
【0016】
介挿部15の中で腋窩(脇の下)H9に介挿される部位の太さは、患者の体格や回復の程度に合わせて、例えば、直径5cm〜15cm程度に設定されている。このため、腋窩H9に介挿された状態では、上腕部が外側上方へ押し上げられて、その結果、ダラリと垂れ下がっていた腕の重量で肩に加わっていた力の方向が変わるとともに、肘の伸びる方向も変わるため、回復期の患者にとって楽である。また、血行促進等の効果もあるため、機能回復の助けともなると考えられる。
【0017】
介挿部15の中で腋窩H9に介挿される部位の太さや硬さは、上腕部を外側上方へ押し上げ得る太さや硬さとして決められるが、他の部位、即ち、介挿部15の先端側、掛止部11、及び、中間部13の太さや硬さは、それぞれ当該の機能を奏し得るものであり、且つ、装着した状態で患者の生活に支障が無いものであれば、任意である。
【0018】
例えば、本補助装具を、樹脂製又は軽い金属製の芯材(掛止部,中間部,介挿部に相当する部位を備えた芯材)と、該芯材の周面上に厚みを形成するように設ける厚み材とで構成し、介挿部の中で腋窩H9に介挿される部位の周囲にのみ厚み材を設けるように構成してもよい。この厚み材は、例えば、芯材の周面上に布を多層に巻き付ける等して構成することができる。或いは、紙粘土を付着させる等して構成することもできる。
【0019】
前述の実施の形態では、補助装具を発泡スチロールで構成しており、それにより、軽量化も達成しているが、本発明の補助装具は、発泡スチロール製に限定されない。本補助装具の機能を奏し得るものであれば、適宜の素材を使用することができる。
【0020】
例えば、2枚の塩化ビニル等の軟質樹脂シートの縁を溶着し、両シート間に空気を吹き入れて封入して、図示の形状のように立体化してもよい。そのようにすると、若干の弾力を有するため、装着した状態で、より患者の体表にフィットするようになる。
さらに、吹き入れ口に開閉自在な栓を設け、必要に応じて空気の吹き入れ/排出を行い得るようにしてもよい。そのようにすると、使用しないときには、邪魔にならないように小さく折り畳むこともできる。
【符号の説明】
【0021】
11 掛止部
13 中間部
15 介挿部
H1 肩
H3 腕
H30 腕の付け根
H31 上腕部
H311 上腕部の外側
H5 背部
H50 背部の中央
H7 胸部
H71 胸部の縁
H9 腋窩
図1
図2