特許第6758756号(P6758756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758756
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】厚肉成形品の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/10 20060101AFI20200910BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20200910BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   B29C45/10
   B29C45/16
   B29C45/26
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-114963(P2016-114963)
(22)【出願日】2016年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-217850(P2017-217850A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】河本 粋和
(72)【発明者】
【氏名】松崎 孝治
(72)【発明者】
【氏名】山本 惟由
(72)【発明者】
【氏名】須佐 圭呉
(72)【発明者】
【氏名】西田 正三
【審査官】 菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/111381(WO,A1)
【文献】 特公平03−031124(JP,B2)
【文献】 特開平04−049018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/24
45/46−45/63
45/70−45/72
45/74−45/84
B29C 33/00−33/76
39/26−39/36
41/38−41/44
43/36−43/42
43/50
45/26−45/44
45/64−45/68
45/73
49/48−49/56
49/70
51/30−51/40
51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂を射出する1台の射出装置と、固定側金型と2位置にスライドして型締されるスライド金型とからなる1組の金型を複数組使用し、前記複数組の金型に対して同時に射出して複数個の厚肉成形品を得る成形方法であって、
いずれの組の前記スライド金型にも形状が同一の第1、2の凹部が設けられており、
それぞれの組の金型において、前記スライド金型を一方のスライド位置にして型締めし、前記第1の凹部と前記固定側金型との間に1次成形用キャビティを形成し、1次成形により1次成形用キャビティに溶融樹脂を射出して半成形品を得、
半成形品を前記第1の凹部に残した状態で型開きして前記スライド金型を他方のスライド位置にスライドして型締めして、前記第1の凹部の半成形品と前記固定側金型との間に2次成形用キャビティを、そして前記第2の凹部と前記固定側金型との間に1次成形用キャビティをそれぞれ形成し、溶融樹脂を射出して1次成形と2次成形とを実質的に同時に実施して1次成形用キャビティにおいて半成形品を得ると共に2次成形用キャビティにおいて厚肉成形品を成形し、
半成形品を前記第2の凹部に残した状態で型開きして前記スライド金型を一方のスライド位置にスライドして型締めして、前記第2の凹部の半成形品と前記固定側金型との間に2次成形用キャビティを、そして前記第1の凹部と前記固定側金型との間に1次成形用キャビティをそれぞれ形成し、溶融樹脂を射出して1次成形と2次成形とを実質的に同時に実施して1次成形用キャビティにおいて半成形品を得ると共に2次成形用キャビティにおいて厚肉成形品を成形し、
以下同様にしてそれぞれの組の金型において半成形品と厚肉成形品とを同時に成形して前記1台の射出装置から射出する毎に複数組の金型において金型の組数と同数の厚肉成形品を得るようにし、
1次成形において成形する半成形品はその肉厚および容量が、厚肉成形品の肉厚と容量のそれぞれ1/2になるようにすることを特徴とする厚肉成形品の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形によって厚肉成形品を得る厚肉成形品の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、従来周知のように金型を型締めする型締装置、樹脂を溶融して金型に射出する射出装置、等から構成され、色々な形状の成形品を成形することができる。例えば中空成形品は、いわゆるDSI成形方法によって成形することができる。DSI成形方法は特許文献1等に詳しく説明されているが、固定型金型と、可動側金型とこの可動側金型上でスライドして固定側金型に対して異なる2位置で型締めされるスライド金型とを使用して成形する。すなわち、スライド金型を第1の位置にスライドして型締めし、中空成形品を二つ割り状にした形状の一対の半中空成形品を1次成形によって得る。一対の半中空成形品を金型に残して金型を開き、スライド金型を第2の位置にスライドする。そうすると一対の半中空成形品が対向する。この位置で型締めして溶融樹脂を射出する2次成形を実施する。そうすると一対の半中空成形品が一体化し、中空成形品が得られる。このようなDSI成形方法では、1次成形と2次成形とにおいて射出する樹脂の量や射出圧力が異なるので、射出装置においてスクリュの射出ストロークを1次成形と2次成形とで切換える必要がある。つまり射出条件を射出毎に切換える必要がある。一般的にDSI成形方法を実施する場合には、スライド金型の位置の制御と射出条件の切換えを連動させるために、複雑な射出装置の制御を実施する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願平5−183466号公報
【0004】
射出成形によって成形できる成形品として光学レンズをあげることもできる。光学レンズは中空成形品のように複雑な工程によって成形する必要はないが、成形が難しい成形品の一つである。その理由は、光学レンズは比較的肉厚であり、いわゆる厚肉成形品であるからである。厚肉成形品の成形においては、ヒケ等による成形不良が発生しやすい。そこで光学レンズを成形するときには成形不良を防止するために高い射出圧で樹脂を射出し、比較的高い樹脂圧で比較的長く保圧を実施するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学レンズ等の厚肉成形品を成形するときには、ヒケ等の成形不良の発生を防止するために射出圧を高くしたり、保圧の樹脂圧を高くして保圧時間を長く確保する等の対策が実施されている。これによってある程度成形不良を防止できるが、必ずしも十分ではない。特に光学レンズにおいては光学特性に影響を与える他の成形不良が問題になる。具体的にはボイドである。ボイドは樹脂内の内部応力が負圧になって生じる真空の穴である。厚肉成形品は樹脂が冷却されるときの収縮量が大きいのでボイドが発生し易い。このようなボイドが内部にわずかでも生じると光学レンズとして利用することはできない。射出時に高い射出圧で樹脂を射出するようにすれば樹脂は圧縮される。そうすると冷却されるときの樹脂の体積の収縮を補うことができ比較的ボイドは発生し難い。しかしながら高い射出圧で射出しても完全にボイドの発生を抑制できるとは限らない。また射出圧によって金型が開いてバリの発生の原因にもなる。また圧縮されて密度が大きい状態で固化した樹脂と、密度が小さい状態で固化した樹脂とでは屈折率に相違が生じる。つまり光学レンズを得るときに射出圧力が高すぎると、得られる光学レンズには場所によって密度のムラが生じる虞がある。そうすると光学特性に影響を与えてしまう。つまり高すぎる射出圧力での射出は好ましくない。光学レンズを例に問題を説明したが、光学特性に影響を与えるのは精度良く成形できないからである。そうすると光学レンズにおいて問題が顕著に現れただけで、他の厚肉成形品においても精度の高い成形が困難であることが分かる。
【0006】
本発明は、上記したような問題点を解決した厚肉成形品の成形方法を提供することを目的とし、具体的には得られる厚肉成形品の樹脂の密度が均一であり、内部にボイドが発生せず、品質の高い厚肉成形品を得られる成形方法を提供することを目的としている。また、射出成形機の制御は比較的シンプルであり、コストが小さい厚肉成形品の成形方法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、溶融樹脂を射出する射出装置と、固定側金型と2位置にスライドして型締されるスライド金型とからなる金型とを使用して厚肉成形品を得る成形方法として構成する。スライド金型を一方のスライド位置で型締めして1次成形をすると半成形品が得られ、これをスライド金型に残して型開し、他方のスライド位置で型締めすると半成形品と金型とで2次成形用キャビティが構成される。この2次成形用キャビティに射出する2次成形を実施すると厚肉成形品が得られる。このような成形方法において、半成形品は、その肉厚および容量が、厚肉成形品の肉厚と容量のそれぞれ1/2になるように成形する。なお、スライド金型は形状が同一の第1、2の凹部を設けるようにし、いずれか一方の凹部に半成形品を残して型閉じすると、1次成形用キャビティと2次成形用キャビティとが同時に形成され、1次成形と2次成形とを実質的に同時に実施できるようにする。このような固定側金型とスライド金型は複数組用意して、1台の射出装置から射出するようにする。
【0008】
かくして、請求項1記載の発明は、上記目的を達成するために、溶融樹脂を射出する1台の射出装置と、固定側金型と2位置にスライドして型締されるスライド金型とからなる1組の金型を複数組使用し、前記複数組の金型に対して同時に射出して複数個の厚肉成形品を得る成形方法であって、いずれの組の前記スライド金型にも形状が同一の第1、2の凹部が設けられており、それぞれの組の金型において、前記スライド金型を一方のスライド位置にして型締めし、前記第1の凹部と前記固定側金型との間に1次成形用キャビティを形成し、1次成形により1次成形用キャビティに溶融樹脂を射出して半成形品を得、半成形品を前記第1の凹部に残した状態で型開きして前記スライド金型を他方のスライド位置にスライドして型締めして、前記第1の凹部の半成形品と前記固定側金型との間に2次成形用キャビティを、そして前記第2の凹部と前記固定側金型との間に1次成形用キャビティをそれぞれ形成し、溶融樹脂を射出して1次成形と2次成形とを実質的に同時に実施して1次成形用キャビティにおいて半成形品を得ると共に2次成形用キャビティにおいて厚肉成形品を成形し、半成形品を前記第2の凹部に残した状態で型開きして前記スライド金型を一方のスライド位置にスライドして型締めして、前記第2の凹部の半成形品と前記固定側金型との間に2次成形用キャビティを、そして前記第1の凹部と前記固定側金型との間に1次成形用キャビティをそれぞれ形成し、溶融樹脂を射出して1次成形と2次成形とを実質的に同時に実施して1次成形用キャビティにおいて半成形品を得ると共に2次成形用キャビティにおいて厚肉成形品を成形し、以下同様にしてそれぞれの組の金型において半成形品と厚肉成形品とを同時に成形して前記1台の射出装置から射出する毎に複数組の金型において金型の組数と同数の厚肉成形品を得るようにし、1次成形において成形する半成形品はその肉厚および容量が、厚肉成形品の肉厚と容量のそれぞれ1/2になるようにすることを特徴とする厚肉成形品の成形方法として構成される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明は、溶融樹脂を射出する射出装置と、固定金型と2位置にスライドして型締されるスライド金型とからなる金型とを使用して厚肉成形品を得る成形方法として構成される。そしてスライド金型を一方のスライド位置にして型締めして1次成形用キャビティを構成し、1次成形により1次成形用キャビティに溶融樹脂を射出して半成形品を得、半成形品を金型に残した状態で型開きしてスライド金型を他方のスライド位置にスライドし、型締めして半成形品と金型とで2次成形用キャビティを構成し、2次成形により2次成形用キャビティに溶融樹脂を射出して厚肉成形品を成形する。つまり厚肉成形品は1次成形と2次成形の2回に分けて積層成形することになる。そして1次成形において成形する半成形品はその肉厚および容量が、厚肉成形品の肉厚と容量のそれぞれ1/2になるように構成されている。従ってそれぞれの成形で射出される樹脂は、厚さが薄くなるので固化するときの収縮量はわずかでありボイド等の成形不良が発生しにくい。収縮し難いので保圧における樹脂圧も小さくて済むし保圧時間も短時間で済む。そうすると得られる厚肉成形品は内部に応力が残留しにくく、密度も均一になる。従って例えば光学レンズを本発明の方法によって成形すると光学特性に優れた品質の高い光学レンズが得られることになる。そして、本発明によると、固定側金型とスライド金型は、複数組使用して1台の射出装置から同時に射出するようにしている。そしてそれぞれのスライド金型は形状が同一の第1、2の凹部が設けられ、スライド金型を一方のスライド位置にして型締めすると、第1の凹部と固定側金型との間に1次成形用キャビティが形成され、1次成形により1次成形用キャビティに溶融樹脂を射出して半成形品を得、半成形品を第1の凹部に残した状態で型開きしてスライド金型を他方のスライド位置にスライドして型締めすると、第1の凹部の半成形品と固定側金型との間に2次成形用キャビティが、そして第2の凹部と固定側金型との間に1次成形用キャビティがそれぞれ形成され、溶融樹脂を射出して1次成形と2次成形とを実質的に同時に実施して1次成形用キャビティにおいて半成形品を得ると共に2次成形用キャビティにおいて厚肉成形品を成形し、半成形品を第2の凹部に残した状態で型開きしてスライド金型を一方のスライド位置にスライドして型締めすると、第2の凹部の半成形品と固定側金型との間に2次成形用キャビティが、そして第1の凹部と固定側金型との間に1次成形用キャビティがそれぞれ形成され、溶融樹脂を射出して1次成形と2次成形とを実質的に同時に実施して1次成形用キャビティにおいて半成形品を得ると共に2次成形用キャビティにおいて厚肉成形品を成形し、以下同様にしてそれぞれの組の金型において半成形品と厚肉成形品とを同時に成形して前記1台の射出装置から射出する毎に複数組の金型において金型の組数と同数の厚肉成形品を得るように構成されている。つまり複数個の厚肉成形品を成形できるので、効率よく成形できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る金型と射出装置の一部を示す図で、その(ア)は金型を断面で、射出装置を一部を示す側面図、その(イ)は金型を構成する一対のスライド金型をパーティング面から見た正面図、その(ウ)は金型を構成する固定側金型をパーティング面から見た正面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る金型の一対のスライド金型を示す図で、その(ア)(イ)は異なるスライド位置を採った状態のスライド金型を示す正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る金型において本発明の実施の形態に係る厚肉成形方法を実施する様子を示す図で、その(ア)〜(カ)は厚肉成形方法の各工程における金型の状態を示す側面断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る金型において本発明の実施の形態に係る厚肉成形方法を実施する様子を示す図で、その(ア)〜(オ)は厚肉成形方法の各工程における金型の状態を示す側面断面図である。
図5】本発明の他の実施の形態に係る金型において厚肉成形方法を実施する様子を示す図で、その(ア)〜(カ)は厚肉成形方法の各工程における金型の状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る厚肉成形方法で成形する成形品は光学レンズであり、射出成形機によって成形する。この成形方法で使用される射出成形機は、従来の射出成形機と同様に、金型を型締めする型締装置、型締めされた金型に溶融樹脂を射出する射出装置等から構成され、図1には金型1と、射出装置20の一部のみが示されている。
【0013】
本実施の形態に係る金型1は、図示されない型締装置の固定盤に設けられている固定側金型2と、可動盤に設けられている可動側金型3と、この可動側金型3上においてスライド可能に設けられている第1、2のスライド金型5a、5bとから構成されている。この金型1は光学レンズを2個ずつ成形できる、いわゆる多数個取りの金型になっており2組から構成されている。あるいは2組から構成されていると見なすことができる。まず固定側金型2は実際には一体的に形成されている。つまり1個の金型であるが、図1の(ウ)において点線で示されているように第1、2の固定側金型2a、2bから構成されていると見ることができる。これらの第1、2の固定側金型2a、2bが後で説明する第1、2のスライド金型5a、5bとそれぞれ対になって型締めされることになる。これらの第1、2の固定側金型2a、2bにはそのパーティング面の中央に凹部、つまり固定側凹部7a、7bが形成され、これらの固定側凹部7a、7bによって光学レンズの片側の面が形成されるようになっている。図1の(ウ)において固定側凹部7a、7bの上方と下方には円8、8、…が点線で描かれているが、実際にはパーティング面と同一面になっており凹凸は形成されていない。これらの円8、8、…の部分は第1、2の固定側金型2a、2bが第1、2のスライド金型5a、5bと型締めされたときにキャビティの一部を構成することになる。固定側金型2には射出装置20から射出される溶融樹脂を導くランナー9、10、11が形成されている。これらのランナー9、10、11は図に示されていない切り換え機構により切換えられて樹脂の流れが制御されるようになっており、円8、8、…の近傍、あるいは固定側凹部7a、7bの近傍に形成されているゲートに接続されている。
【0014】
第1、2のスライド金型5a、5bは、図1の(イ)に示されているように、可動側金型3に形成されている一対の溝12a、12bに沿ってスライド自在に設けられている。第1、2のスライド金型5a、5bには一対のラック14a、14bとピニオン15とからなる駆動機構16が設けられ、連動してスライドされるようになっている。このような第1、2のスライド金型5a、5bは同一の形状であり、それぞれ第1、2の固定側金型2a、2bと型締めされるようになっている。したがって第1の固定側金型2aと第1のスライド金型5a、および第2の固定側金型2bと第2のスライド金型5bは、2組の金型ということができる。第1のスライド金型5aには形状が同じ第1、2の凹部18a、19aが設けられ、第2のスライド金型5bにも形状が同じ第1、2の凹部18b、19bが形成されている。これらの凹部18a、18b、19a、…から光学レンズの一方の面が形成されるようになっている。
【0015】
本実施の形態に係る金型1を備えた射出成形機によって、光学レンズを成形する方法を説明する。最初に駆動機構16を駆動して、図2の(ア)に示されているように、第1のスライド金型5aを上方のスライド位置に、そして第2のスライド金型5bを下方のスライド位置にスライドする。この位置で型締装置を駆動して型締めする。そうすると第1の固定側金型2aと第1のスライド金型5aは、図3の(ア)に示されているように型締めされ、第1のスライド金型5aの第1の凹部18aと第1の固定側金型2aのパーティング面とから、1次成形用のキャビティが形成される。図には示されていないが、このとき第2の固定側金型2bと第2のスライド金型5bも型締めされて、第2のスライド金型5bの第2の凹部19bと第2の固定側金型2bのパーティング面とから、1次成形用のキャビティが形成される。射出装置20からこれらの1次成形用キャビティに樹脂を射出する1次成形を実施する。そうすると図3の(イ)に示されているように、半成形品Hが成形される。図3の(ウ)に示されているように、第1のスライド金型5aにおいては第1の凹部18aに半成形品Hを残すように、そして図に示されていないが第2のスライド金型5bにおいては第2の凹部19bに半成形品Hを残すようにして、型開きする。
【0016】
駆動機構16を駆動して、図2の(イ)および図3の(エ)に示されているように、第1のスライド金型5aを下方のスライド位置に、第2のスライド金型5bを上方のスライド位置にスライドする。この位置で型締装置を駆動して型締めする。そうすると第1の固定側金型2aと第1のスライド金型5aは図3の(オ)に示されているように型締めされ、第1のスライド金型5aの第1の凹部18aに残された半成形品Hと、第1の固定側金型2aの固定側凹部7aとから2次成形用のキャビティが、そして第2の凹部19aと第1の固定側金型2aのパーティング面とから1次成形用のキャビティが構成される。図には示されていないが、第2の固定側金型2bと第2のスライド金型5bとからも同様にして2次成形用のキャビティと1次成形用のキャビティが形成される。1台の射出装置20から、2個の1次成形用キャビティに樹脂を射出する1次成形と、2個の2次成形用キャビティに樹脂を射出する2次成形とを同時に実施する。そうすると2個の厚肉成形品すなわち光学レンズKと、2個の半成形品Hとが同時に成形される。図3の(カ)には、第1の固定側金型2aと第1のスライド金型5aとによって成形される1個の光学レンズKと1個の半成形品Hのみが示されている。
【0017】
型締装置を駆動して、型開きして成形された2個の光学レンズKを取り出す。この型開きにおいては、図4の(ア)に示されているように、第1のスライド金型5aにおいては第2の凹部19aに半成形品Hを、そして図に示されていないが第2のスライド金型5bにおいては第1の凹部18bに半成形品Hをそれぞれ残す。駆動機構16を駆動して、図2の(ア)および図4の(イ)に示されているように、第1のスライド金型5aを上方のスライド位置に、第2のスライド金型5bを下方のスライド位置にスライドする。この位置で型締装置を駆動して型締めする。そうすると第1の固定側金型2aと第1のスライド金型5aは図4の(ウ)に示されているように型締めされ、第1のスライド金型5aの第2の凹部19aに残された半成形品Hと、第1の固定側金型2aの固定側凹部7aとから2次成形用のキャビティが、そして第1の凹部18aと第1の固定側金型2aのパーティング面とから1次成形用のキャビティが構成される。図には示されていないが、第2の固定側金型2bと第2のスライド金型5bとからも同様にして2次成形用のキャビティと1次成形用のキャビティが形成される。1台の射出装置20から、2個の1次成形用キャビティに樹脂を射出する1次成形と、2個の2次成形用キャビティに樹脂を射出する2次成形とを同時に実施する。そうすると2個の光学レンズKと2個の半成形品Hとが同時に成形される。図4の(エ)には、第1の固定側金型2aと第1のスライド金型5aとによって成形される1個の光学レンズKと1個の半成形品Hのみが示されている。型締装置を駆動して、型開きして成形された2個の光学レンズKを取り出す。このとき、図4の(オ)に示されているように、第1のスライド金型5aにおいては第1の凹部18aに半成形品Hを、そして図に示されていないが第2のスライド金型5bにおいては第2の凹部19bに半成形品Hをそれぞれ残す。以下同様にして成形する。
【0018】
本実施の形態に係る厚肉成形方法によって光学レンズKを得るとき、半成形品Hはその肉厚が、光学レンズKの肉厚の略1/2になるように成形するようにする。また半成形品Hはその容量が光学レンズKの容量の略1/2になるように成形する。つまり本実施の形態に係る厚肉成形方法は、いわゆる積層成形であり1次成形と2次成形の射出量が同量になるようにする成形方法であると言える。このように半成形品H、および光学レンズKを成形するので1次成形と2次成形とで射出される樹脂の厚さは薄い。そうすると冷却時の樹脂の収縮を小さくすることができヒケやボイドの発生を抑制できる。また冷却時間を早くすることができ生産効率を上げることができる。
【0019】
本実施の形態に係る厚肉成形方法は、色々な変形が可能である。上の説明では2組の金型を使用するので1回の射出毎に2個の光学レンズKを成形することができた。これを応用すれば3組、あるいはそれより多数の組の金型を使用して多数の光学レンズKを同時に成形できることは明らかである。これらは多数個取りの成形方法である。これに対して本実施の形態に係る厚肉成形方法を応用すれば、少ない樹脂しか射出できない小型の射出装置によって、大型の光学レンズを成形することもできる。この場合、2回の射出によって1個の光学レンズを成形することになる。このような実施例を説明する。
【0020】
この成形方法においては、図5の(ア)に示されているような、1個の固定側金型2と、可動側金型3上でスライドする1個のスライド金型5とを使用する。固定側金型2には固定側凹部7が、そしてスライド金型5にはスライド側凹部18が、それぞれ1個ずつ形成されている。所定のスライド位置で型締めすると図5の(イ)に示されているように、固定側金型2のパーティング面とスライド金型5のスライド側凹部18とから1次成形用のキャビティが構成される。このキャビティに射出装置20から樹脂を射出して半成形品Hを成形する。図5の(ウ)に示されているように、半成形品Hをスライド側凹部18に残して型開きし、図5の(エ)に示されているようにスライド金型5をスライドする。型締めすると、半成形品Hと固定側金型2の固定側凹部7とから2次成形用のキャビティが構成される、射出装置20から樹脂を射出すると、図5の(オ)に示されているように光学レンズKが成形される。図5の(カ)に示されているように型開きして光学レンズKを得る。スライド金型5を図5の(ア)に示されているようにスライドして、成形を繰り返す。このように成形するので、少量の樹脂しか射出できない小型の射出装置20であっても、大型の光学レンズKを成形することができる。なお、この実施の形態においても、半成形品Hはその肉厚が、光学レンズKの肉厚の略1/2になるように、そしてその容量が光学レンズKの容量の略1/2になるように成形する。これによってヒケやボイドを防止することができるが、この実施の形態においては他の目的もある。毎回の射出において同量の射出をするようにすると、射出装置20において常に射出量を一定にすることができるので、1次成形と2次成形とでスクリュの射出ストロークや射出圧の条件を変更する必要がないからである。
【符号の説明】
【0021】
1 金型
2a、2b 第1、2の固定側金型
3 可動側金型
5a、5b 第1、2のスライド金型
7a、7b 固定側凹部
16 駆動機構
18a、18b 第1、2の凹部
20 射出装置
図1
図2
図3
図4
図5