(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758759
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】グレーチングとその製造方法
(51)【国際特許分類】
E03F 5/06 20060101AFI20200910BHJP
C23C 2/06 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
E03F5/06 Z
C23C2/06
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-176573(P2016-176573)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2018-40212(P2018-40212A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100079636
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 佳尚
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆男
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 利将
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 開道
(72)【発明者】
【氏名】木戸 信之
(72)【発明者】
【氏名】中原 広志
【審査官】
富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】
実公平5−23670(JP,Y2)
【文献】
特開2005−213890(JP,A)
【文献】
特開平9−71996(JP,A)
【文献】
特開平10−2001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F1/00−11/00
C23C2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインバーとクロスバーを格子状に組合わせ、一側面に鋼板を被せて取着手段により取着し、全体が亜鉛メッキされたグレーチングにおいて、前記取着手段が前記メインバー間のクロスバーに嵌合する一つの凹溝と、該凹溝両側の溶接部を備え、凹溝にクロスバーを嵌合させた状態で凹溝両側の溶接部がそれぞれ鋼板に溶接される細板状の取付金具よりなることを特徴とするグレーチング。
【請求項2】
前記溶接部は取付金具に形成される孔の孔縁であることを特徴とする請求項1記載のグレーチング。
【請求項3】
グレーチングの一側面に鋼板を当て、ついで取付金具の凹溝にクロスバーを嵌合させ、該クロスバーを押え込んだ状態で凹溝両側の溶接部を鋼板に溶接し、その後メッキ槽内の溶融亜鉛に漬けて亜鉛メッキを行うことを特徴とする請求項1記載のグレーチングの製造方法。
【請求項4】
グレーチング、鋼板及び取付金具を個々に亜鉛メッキしたのち、グレーチングの一側面に鋼板を当て、ついで取付金具の凹溝にクロスバーを嵌合させ、該クロスバーを押え込んだ状態で凹溝両側の溶接部を鋼板に溶接することを特徴とする請求項1記載のグレーチングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板が被せて溶接され、亜鉛メッキされたグレーチングと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グレーチングは一般に、メインバーとクロスバーを組合わせて格子状に形成され、多くが錆止めのために亜鉛メッキされ、側溝用の溝蓋として使用されているが、ハイヒールのかかとが格子の目の中に入り込んで足を取られる、といった問題を解消するためにグレーチングにカバープレートを溶接にて取付けたもの(特許文献1)、車椅子の車輪や杖の嵌り込み防止のため、グレーチングに被覆板を取付けたもの(特許文献2)、グレーチングに化粧板を止着具により取付けたもの(特許文献3)などが知られ、溝蓋以外には工場の建屋内外で通路として用いられることもある。
【0003】
工場で通路として用いられるグレーチングには、物の落下防止と、滑り止めのため縞鋼板が溶接にて取付けられていることが多く、縞鋼板を溶接したグレーチングは縞鋼板と共に錆止めのため亜鉛メッキされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2−23667号
【特許文献2】特開2005−213890号
【特許文献3】特開平10−2001号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グレーチングに被せた鋼板とグレーチングを溶接し、溶接後亜鉛メッキする方法においては次のような問題がある。
【0006】
(1)鋼板とグレーチングを溶接するとき、溶接時に加えられる熱により、鋼板とグレーチングの板厚や形状の相違による熱膨張の違いから反りや曲がりといった歪みが発生する。こうした歪みは溶接後、メッキ槽の溶融亜鉛(温度440〜470℃)に漬けて亜鉛メッキする際にも同様に生ずる。こうした歪みは製品として有害であることから修正が必要とされ、修正は工具を用いて歪み箇所を叩くか、或いはプレスで加圧して行っているが、歪みは鋼板の板厚やその性状によって変わり、一様でないため、修正作業を自動化することは困難である。そこで従来は前述の修正作業を人手により行っているが、それには多くの人員と労力を必要とする。
(2)鋼板とグレーチングを溶接する際、溶接個所を見誤らないようにするため、鋼板の溶接個所にマーキングが必要である。
(3)鋼板とグレーチングを溶接後、亜鉛メッキしたとき、溶接個所の隙間よりメッキ前処理工程の前処理液が洩れ出ることがある。
【0007】
本発明は、一側面に鋼板を取着し、全体が亜鉛メッキされたグレーチングにおいて、鋼板がグレーチングに歪みを生ずることなく取付けることができるように構成したグレーチングと、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、メインバーとクロスバーを格子状に組合わせ、一側面に鋼板を被せて取着手段により取着し、全体が亜鉛メッキされたグレーチングにおいて、前記取着手段が前記メインバー間のクロスバーに嵌合する一つの凹溝と、該凹溝両側の溶接部を備え、凹溝にクロスバーを嵌合させた状態で凹溝両側の溶接部がそれぞれ鋼板に溶接される細板状の取付金具よりなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、溶接部は取付金具に形成される孔、好ましくは丸孔の孔縁であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明のグレーチングの製造方法であって、グレーチングの一側面に鋼板を当て、ついで取付金具の凹溝にクロスバーを嵌合させ、該クロスバーを押え込んだ状態で凹溝両側の溶接部を鋼板に溶接し、その後メッキ槽内の溶融亜鉛に漬けて亜鉛メッキを行うことを特徴とし、
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明のグレーチングの製造方法であって、グレーチング、鋼板及び取付金具を個々に亜鉛メッキしたのち、グレーチングの一側面に鋼板を当て、ついで取付金具の凹溝にクロスバーを嵌合させ、該クロスバーを押え込んだ状態で凹溝両側の溶接部を鋼板に溶接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、鋼板とグレーチングとは溶接しないため、溶接による歪みは生じない。取付金具と鋼板は溶接されるが、取付金具は一つの凹溝と、その両側に溶接部を有するだけの小さな部品であるため、溶接時に歪みが生ずることはほとんどない。また鋼板においては、取付金具がメインバーに沿って複数か所で溶接されることにより溶接部間に歪みが生じたとしても、クロスバーが嵌合する凹溝内でのクリアランスにより歪みが吸収され、鋼板に反りや曲がりといった歪みが生ずることはほとんどなく、歪みの修正作業が不要となる。また取付金具はクロスバーに凹溝を嵌合させることにより位置決めされ、溶接個所をマーキングする必要がない。
【0012】
溶接が線状に行われる場合、溶接線と直交する方向での強度は弱いが、請求項2に係る発明のように、溶接が孔周縁で行われると、どの方向に対しても溶接強度を均一化させることができる。また孔周縁での溶接は溶接個所の知得が容易に行え、見誤りによる溶接ミスを生じ難い。
【0013】
請求項3に係る発明は、取付金具を溶接することにより鋼板を取付けたグレーチングを次工程で亜鉛メッキするものであるが、取付金具と鋼板の溶接部は比較的小さいため、溶接部からメッキ前処理工程の前処理液が滲み出る、といった問題が生じ難い。
【0014】
請求項4に係る発明は、亜鉛メッキしたグレーチングと鋼板を同じく亜鉛メッキした取付金具で連結するもので、各部品を亜鉛メッキした後、後付けするものであるから、メッキ前処理工程の前処理液が滲み出る、といった問題を生じない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】取付金具により鋼板を取付けたグレーチングの要部の底面図。
【
図4】鋼板にグレーチングを取付けるときの状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、メインバー1aと、ロッド状のクロスバー1bを格子状に組合わせ、メインバー1a両端を端板1cで連結したグレーチング1の上(表)側に縞鋼板2を取付金具3により取付けたグレーチング要部(図においてはコーナ部分)の底面図であり、
図2は
図1のA−A線における断面で、取付金具3は、板幅がメインバー1a間に収まるほどの長さの短い細幅鋼板をプレスにより打ち抜き加工して
図3に示すように中央に任意断面形状の凹溝4、好ましくは逆V字形の凹溝4を、その両側に矩形、菱形、楕円形、その他任意形状の孔、好ましくは図示するような円形の孔5を形成したものよりなっている。
【0017】
縞鋼板2は、滑り止めのための断面小突起の突条2aよりなる筋を縦横に形成したものよりなっていて、グレーチング1と同形同大の矩形をなし、グレーチング1に取付けるときには、突条2aを下向きにして加工面上に置き、ついで
図4に示すように、グレーチング1の上下を逆にし、クロスバー1bを下向きにした状態で、縞鋼板上にグレーチング全体が縞鋼板2を覆うようにして取付ける。次に取付金具3をメインバー間において凹溝4をクロスバー1bに図の上方よりあてがい、メインバー1aに沿うようにして装着する。その後、取付金具3の凹溝両側に位置する孔5の孔縁に沿って溶接し、グレーチング1のクロスバー1bを取付金具3の凹溝4に嵌合させ、取付金具3により押え込んだ状態でグレーチング1と縞鋼板2を一体的に連結する。図中、6は孔5の孔縁の溶接部を示す。取付金具3による連結は、グレーチング1の複数か所、例えばグレーチング1の前後左右のコーナにおいてそれぞれ行われる。
【0018】
以上のようにして縞鋼板2を連結したグレーチング1は溶融亜鉛が満たされるメッキ槽(図示しない)の溶融亜鉛に漬け、亜鉛メッキを行う。
【0019】
前記実施形態では、取付金具3の溶接によりグレーチング1に縞鋼板2を取付けたのちに亜鉛メッキを行うようになっているが、別の実施形態ではグレーチング1、縞鋼板2及び取付金具3が個々に亜鉛メッキされ、その後、前記実施形態と同様、取付金具3が縞鋼板2に溶接ワイヤーを用いて溶接され、前記縞鋼板2がグレーチング1に連結される。この場合、溶接ワイヤーには亜鉛メッキ層に支障を生ずることがないように、亜鉛メッキ用の溶接ワイヤーが用いられる。
【0020】
前記実施形態は、グレーチング1に縞鋼板2を取付けた例を示したが、用途に応じて前述のカバープレート、被覆板、或いは化粧板が取付けられる。
【符号の説明】
【0021】
1・・グレーチング
2・・縞鋼板
3・・取付金具
4・・凹溝
5・・丸孔
6・・溶接部