(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態のヒンジ装置を詳細に説明する。ただし、本発明のヒンジ装置は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態のヒンジ装置をカウンター扉等の扉1に取り付けた例を示す。
図1(a)は平面図であり、
図1(b)は側面図である。扉1の上部には、ヒンジ装置2が取り付けられる。扉1の下部には、ヒンジ装置3が取り付けられる。扉1の下部のヒンジ装置3が本実施形態のヒンジ装置3である。
【0015】
扉1の上部のヒンジ装置2は、軸部材4と、ケース5と、を備える。軸部材4は、枠等の本体6の上部に取り付けられるL字状の座金7に取り付けられる。軸部材4は、垂直下方を向く。ケース5は、扉1の上面に開けた穴に嵌められる筒部5aと、扉1の上面に取り付けられるベース5bと、を備える。筒部5aとベース5bとは一体である。筒部5aには、軸部材4が回転可能に嵌められる。扉1は、軸部材4の回りを回転可能である。
【0016】
本実施形態のヒンジ装置3も、軸部材8と、ケース9と、を備える。軸部材8は、本体6の下部に取り付けられるL字状の座金10に取り付けられる。軸部材8は、垂直上方を向く。ケース9は、扉1の下面に開けた穴1aに嵌められる筒部11を備える。扉1は、軸部材8の回りを回転可能である。
【0017】
ヒンジ装置3は、扉1が正逆いずれの方向に回転しても扉1を中立位置に戻す。ヒンジ装置3には、扉1の中立位置の角度を調節する位置調節構造12、扉1が中立位置に戻るときにダンパ力を発生させるダンパ構造13が組み込まれる。ヒンジ装置3、位置調節構造12、ダンパ構造13の構成を順番に説明する。
(ヒンジ装置)
【0018】
図2は、本実施形態のヒンジ装置3の上面側斜視図(
図2(a)は分解斜視図、
図2(b)は組み立てた状態の斜視図)である。
図3は、本実施形態のヒンジ装置3の下面側斜視図(
図3(a)は分解斜視図、
図3(b)は組み立てた状態の斜視図)である。
【0019】
ヒンジ装置3は、ケース9、コイルばね15、コイルばね15の一端部としての第1ばね受け16、コイルばね15の他端部としての第2ばね受け17、軸部材8を備える。以下にヒンジ装置3の各部の構成を説明する。
【0020】
ケース9は、筒部11と、筒部11の下端部に設けられ、扉1の下面に沿って張り出す延長部21と、を備える(
図6も参照)。筒部11と延長部21は、樹脂製であり、成型、切削加工等により一体に形成される。12は位置調節構造である。位置調節構造12の詳細については後述する。
【0021】
筒部11は、その上端部が閉じ(
図2参照)、その下端部が開放する(
図3参照)。
図2に示すように、筒部11の上端部には、端部壁11aが一体に形成される。端部壁11aには、円弧状の溝11bが形成される。この溝11bの一端部が、第1ばね受け16の腕部16aに当接する第1当接部31である。第1当接部31は、成型、切削加工等により筒部11と一体に形成される。第1当接部31と筒部11とは同一部材であり、別部材を接着等で結合したものではない。
【0022】
ケース9が中立位置Pにあるとき、第1当接部31が第1ばね受け16の腕部16aに当接する。ケース9が中立位置Pから
図2に示す一方向(時計方向A)に回転する際には、第1当接部31が第1ばね受け16の腕部16aに当接して第1ばね受け16を時計方向Aに回転させる。一方、ケース9が中立位置Pから
図2に示す他方向(反時計方向B)に回転する際には、第1当接部31は第1ばね受け16の腕部16aから離れて、第1ばね受け16を回転させることはない。溝11bの他端部32は、ケース9が反時計方向Bに例えば90度以上回転したときに、第1ばね受け16の腕部16aに当接してケース9の回転を制限するストッパとして機能する。
【0023】
図3に示すように、筒部11の下端部の開放端部11cは、位置調節構造12のベース23を支持できるように外径が拡大する。開放端部11cには、延長部21が一体に形成される。筒部11の開放端部11cには、筒部11の内側に沿う円弧状の凹部24が形成される。この凹部24の一方の側壁が、第2ばね受け17の腕部17aに当接する第2当接部25である。第2当接部25は、成型、切削加工等により筒部11と一体に形成される。第2当接部25と筒部11とは同一部材であり、別部材を接着等で結合したものではない。
【0024】
ケース9が中立位置Pから
図3に示す反時計方向Bに回転する際には、第2当接部25が第2ばね受け17の腕部17aに当接して第2ばね受け17を反時計方向Bに回転させる。一方、ケース9が中立位置Pから
図3に示す時計方向Aに回転する際には、第2当接部25は第2ばね受け17の腕部17aから離れて、第2ばね受け17を回転させることはない。凹部24の他方の側壁26は、ケース9が時計方向Aに例えば90度以上回転したときに、第2ばね受け17の腕部17aに当接してケース9の回転を制限するストッパとして機能する。
【0025】
図2に示すように、第1ばね受け16は、コイルばね15の上端部に設けられる。第1ばね受け16は、リング状の本体部16bと、本体部16bの上端面から軸方向に突出する腕部16aと、を備える。本体部16bと腕部16aとは一体に形成される。本体部16bの外径は筒部11の内径と略等しく、本体部16bの内径は軸27の外径に略等しい。本体部16bは、筒部11及び軸27に対して回転可能である。第1ばね受け16を筒部11に入れると、腕部16aが溝11bに入ると共に、筒部11の端部壁11aの外側に突出する。本体部16bの下面には、第1ばね受け16をコイルばね15の端部に取り付けるための穴16b1が形成される(
図3参照)。
【0026】
図3に示すように、第2ばね受け17は、コイルばね15の下端部に設けられる。第2ばね受け17は、リング状の本体部17bと、本体部17bの下端面に設けられ、本体部17bから半径方向に突出する腕部17aと、を備える。本体部17bと腕部17aとは一体に形成される。第1ばね受け16と同様に、本体部17bの外径は筒部11の内径に略等しく、本体部17bの内径は軸27の外径に略等しい。本体部17bは、筒部11及び軸27に対して回転可能である。腕部17aは板状であると共に、本体部17bの下端面に設けられる。第2ばね受け17を筒部11の開放端部11cに収容すると、腕部17aの先端部が凹部24に入る。本体部17bの上面には、第2ばね受け17をコイルばね15の端部に取り付けるための穴17b1が形成される(
図2参照)。
【0027】
コイルばね15は、筒部11内に収容される。コイルばね15の両端部15a,15b(
図2、
図3参照)は、軸方向に延びる。コイルばね15の両端部15a,15bは、第1ばね受け16及び第2ばね受け17に取り付けられる。コイルばね15は、常に巻き込み方向にねじられる。すなわち、ケース9が中立位置Pから時計方向Aに回転する際には、コイルばね15の上端部が時計方向Aに回転して、コイルばね15が巻き込み方向にねじられる。ケース9が中立位置Pから反時計方向Bに回転する際には、コイルばね15の下端部が反時計方向Bに回転して、コイルばね15が巻き込み方向にねじられる。
【0028】
図2に示すように、軸部材8は、L字状の座金10に回転不可能に固定される。軸部材8は、軸27と、第1係合部18と、第2係合部19と、を備える。軸27は、コイルばね15の内側に入れられる。第1係合部18及び第2係合部19は、軸27とは別体である。第1係合部18及び第2係合部19は、軸27に回転不可能に固定される。
【0029】
軸27は、垂直方向に延びる。軸27は、大径の下端部27aと、中間部27bと、小径の上端部27cと、を備える。第2係合部19、ワッシャ20、第2ばね受け17、コイルばね15、第1ばね受け16を軸27に通し、軸27の上端部27cをケース9の端部壁11aの外側の第1係合部18に通し、軸27の上端部27cをかしめることで、ケース9にこれらの部品を組み込むことができる。28は第1係合部18を覆うキャップである。
【0030】
軸27の下端部27aは、断面小判状であり、平行な一対の平坦面を有する。軸27の下端部27aは、座金10の穴に回転不可能に嵌められる。座金10の穴は、軸27の下端部27aと相補的な小判状である。軸27の上端部27cも断面小判状である。軸27の上端部27cは、第1係合部18の穴18aに回転不可能に嵌められる。穴18aは、軸27の上端部27cと相補的な小判状である。
【0031】
図2に示すように、第1係合部18は、略円盤状である、第1係合部18の外周部には、ケース9の円弧状の溝11bと略大きさが等しい円弧状の切欠き18bが形成される。このため、第1係合部18は、大径の円弧部18−1と、小径の円弧部18−2と、を備える。円弧部18−2の外側には、第1ばね受け16の腕部16aが存在する。ケース9が中立位置Pにあるとき、腕部16aは、円弧部18−1の一方の肩部33に当接する。
【0032】
第2係合部19は、本体部19aと、本体部19aの下端部に設けられる鍔部19bと、を備える。本体部19aには、V字状の切欠き34が形成される。切欠き34には、第2ばね受け17の腕部17aが入る。ケース9が中立位置Pにあるとき、腕部17aは、本体部19aの一方の側壁35に当接する(
図4参照)。
【0033】
図3に示すように、鍔部19bには、軸27の下端部27aと相補的な小判状の穴19b1が形成される。穴19b1には、軸27の下端部27aが回転不可能に嵌められる。穴19b1の底面には、軸27の中間部27bが貫通する貫通穴19b2が形成される。
【0034】
図2に示すように、鍔部19bには、V字状に尖ったカム36が一体に形成される。カム36は、ダンパ構造13と協働する。ダンパ構造13は、扉1が中立位置Pに戻るときにダンパ力を発生させ、扉1がゆっくり閉まるようにする。ダンパ構造13の構成は後述する。
【0035】
第2係合部19は、座金10の上面に載置される。第2係合部19の鍔部19bの上面には、樹脂製のワッシャ20が載せられる。ケース9は、ワッシャ20を介して第2係合部19に回転可能に支持される。ケース9の回転は、第2係合部19、第1ばね受け16、第2ばね受け17によって案内される。
【0036】
図4は、中立位置Pにあるヒンジ装置3の斜視図(
図4(a)は全体図、
図4(b)は
図4(a)のb部拡大図、
図4(c)は
図4(a)のc部拡大図)である。この
図4では、ケース9の内部の構造をわかり易くするために、ケース9を透明にしている。
【0037】
ケース9が中立位置Pにあるとき、コイルばね15の上端部の第1ばね受け16の腕部16aが軸27に固定された第1係合部18の一方の肩部33に当接し、コイルばね15の下端部の第2ばね受け17の腕部17aが軸27に固定された第2係合部19の一方の側壁35に当接する。また、このとき、ケース9の第1当接部31が第1ばね受け16の腕部16aに当接し、ケース9の第2当接部25が第2ばね受け17の腕部17aに当接する。このとき、コイルばね15はねじれた状態にある。ただし、このとき、コイルばね15が自然状態にあるようにすることもできる。
【0038】
図5は、ケース9を中立位置Pから時計方向A及び反時計方向Bに回転させたときのヒンジ装置3の内部構造を示す。
図5(a)はケース9が中立位置Pにある状態、
図5(b)はケース9が中立位置Pから反時計方向Bに回転した状態、
図5(c)はケース9が中立位置Pから時計方向Aに回転した状態を示す。
図5の上段は、第1係合部18の水平断面図(
図4のi-i線断面図)であり、
図5の中段は、ケース9の端部壁11aの水平断面図(
図4のii-ii線断面図)であり、
図5の下段は、ケース9の開放端部11c及び第2係合部19の水平断面図(
図4のiii-iii線断面図)である。
【0039】
ケース9が中立位置Pにあるとき、
図5(a)の上段に示すように、第1ばね受け16の腕部16aは、第1係合部18の肩部33に当接する。
図5(a)の下段に示すように、第2ばね受け17の腕部17aは、第2係合部19の側壁35に当接する。また、このとき、
図5(a)の中段に示すように、ケース9の第1当接部31が第1ばね受け16の腕部16aに当接し、
図5(a)の下段に示すように、ケース9の第2当接部25が第2ばね受け17の腕部17aに当接する。
【0040】
ケース9が中立位置Pから時計方向Aに回転する際には、
図5(c)の中段に示すように、ケース9の第1当接部31に当接する第1ばね受け16の腕部16aが、ケース9と一緒に時計方向Aに回転する。ここで、
図5(c)の上段に示すように、第1ばね受け16の腕部16aの時計方向Aの回転は、第1係合部18によって妨げられることはない。一方、
図5(c)の下段に示すように、ケース9の第2当接部25は第2ばね受け17の腕部17aから離れ、第2ばね受け17の腕部17aは第2係合部19の側壁35に当接したままである。このため、コイルばね15はねじられ、ケース9にはコイルばね15のねじりを戻す方向、すなわち反時計方向Bの付勢力が働く。ケース9から手を離すと、ケース9が中立位置Pに自動的に戻る。
【0041】
なお、ケース9が中立位置Pから時計方向Aへ90度以上回転したときは、
図5(c)の上段に示すように、第1ばね受け16の腕部16aが第1係合部18の肩部37に当接するか、又は
図5(c)の下段に示すように、ケース9の側壁26が第2ばね受け17に当接するかして、ケース9の90度以上の回転が制限される。
【0042】
ケース9が反時計方向Bに回転する際には、
図5(b)の下段に示すように、ケース9の第2当接部25に当接する第2ばね受け17の腕部17aが、ケース9と一緒に反時計方向Bに回転する。一方、
図5(b)の中段に示すように、ケース9の第1当接部31は第1ばね受け16の腕部16aから離れ、
図5(b)の上段に示すように、第1ばね受け16の腕部16aは第1係合部18の肩部33に当接したままである。このため、コイルばね15はねじられ、ケース9にはねじりを戻す方向、すなわち時計方向Aの付勢力が働く。ケース9から手を離すと、ケース9が中立位置Pに自動的に戻る。
【0043】
なお、ケース9が中立位置Pから反時計方向Bへ90度以上回転したときは、
図5(b)の下段に示すように、第2ばね受け17の腕部17aが第2係合部19の側壁38に当接するか、又は
図5(b)の中段に示すように、ケース9の溝11bの他端部32が第1ばね受け16の腕部16aに当接するかして、ケース9の90度以上の回転が制限される。
【0044】
以上に本実施形態のヒンジ装置3の構成、作用を説明した。本実施形態のヒンジ装置3によれば、以下の効果を奏する。
【0045】
ケース9の第1当接部31と第2当接部25が筒部11と一体に形成されるので、第1当接部31と第2当接部25を正確に位置決めすることができる。したがって、中立位置Pにあるケース9ががたつくのを防止することができる。
【0046】
軸部材8の第1係合部18及び第2係合部19が軸27とは別体であるので、軸27の外側にコイルばね15を嵌めるのが容易であるし、コイルばね15の小径化を図ることができる。コイルばね15の小径化が図れれば、ケース9の筒部11の小径化が図れ、ひいては筒部11が挿入される扉1を薄くすることができる。
【0047】
コイルばね15の一端部にケース9の第1当接部31に当接する第1ばね受け16を設けるので、コイルばね15を安定してねじることができる。
【0048】
コイルばね15の他端部にケース9の第2当接部25に当接する第2ばね受け17を設けるので、コイルばね15を安定してねじることができる。
【0049】
第1ばね受け16に軸27の軸方向に突出する腕部16aを設け、筒部11の端部壁11aに腕部16aが入る溝11bを形成するので、ケース9の筒部11の小径化が図れる。また、溝11bの端部を第1当接部31として利用することができる。
【0050】
第1係合部18が軸27とは別体であると共に、筒部11の端部壁11aの外側に配置されるので、ヒンジ装置3の組み立てが容易である。
【0051】
第2ばね受け17に軸27の半径方向に突出する腕部17aを設け、筒部11の開放端部11cに腕部17aが入る凹部24を形成するので、筒部11の開放端部11cに端部壁を設けずに済み、開放端部11cから部品を挿入することができる。また、凹部24の側壁を第2当接部25として利用することができる。
【0052】
第2ばね受け17が扉1の下面よりも下方に配置されるので、扉1の穴1aの内径を筒部11の開放端部11cに合わせて大きくする必要がなくなり、筒部11が挿入される扉1を薄くすることができる。
(位置調節構造)
【0053】
図6は、位置調節構造12の斜視図である。
図6(a)は位置調節構造12の分解斜視図、
図6(b)は位置調節構造12の組み立てた状態の斜視図である。9はケース、41は位置調節部材としての位置調節ねじ、23はベースである。
【0054】
上記のように、第2部材としてのケース9は、筒部11と、延長部21と、を備える。ケース9の延長部21は、筒部11の開放端部11cと一体に形成される。ケース9は、第1部材としての軸部材8に対して回転軸42を中心にして回転可能である。
【0055】
位置調節ねじ41は、頭部41aと、ねじ部41bと、を備える。位置調節ねじ41は、回転軸42と直角な方向を向く。
【0056】
延長部21には、位置調節ねじ41が螺合するねじ穴21aが形成される。延長部21の側面には、位置調節ねじ41の頭部41aと相補的な切欠き21bが形成される。頭部41aの外径は、延長部21の厚さよりも大きい。頭部41aの一部は、延長部21から上方向に突出する。
【0057】
ベース23は、扉1の下面に沿って延びる略長方形の板状である。ベース23の長さ方向の一端部には、円状の穴23aが形成される。穴23aの径は、ケース9の筒部11の外径に略等しい。ベース23は、ケース9に対してケース9の回転軸42を中心にして揺動可能である。
【0058】
ベース23には、位置調節ねじ41の頭部41aが入る略長方形の開口23bが形成される。ベース23の開口23bの縁が位置調節ねじ41の頭部41aに係合する。ドライバ等の工具を用いて位置調節ねじ41を回すと、ケース9に対して位置調節ねじ41がその軸方向に移動し、頭部41aに係合するベース23が回転軸42を中心にして時計方向及び反時計方向に揺動する。
【0059】
ベース23には、ベース23を扉1に取り付けるための締結部材43a,43b,43c(
図4参照)が通る通し穴44a,44b,44cが形成される。締結部材43aは、ベース23を扉1に取り付けるためのねじである。ケース9の延長部21には、締結部材43aの頭部との干渉を避けるための逃げ穴21cが形成される。締結部材43bは、ベース23を扉1に取り付けるための皿ねじである。ベース23の通し穴44bの下面には、締結部材43bの頭部とダンパ構造13との干渉を避けるための円錐形のざぐり穴44b1(
図7参照)が形成される。締結部材43cは、ベース23とダンパ構造13を扉1に共締めするためのねじである。ダンパ構造13のダンパケース51には、締結部材43cを通す通し穴51aが形成される(
図8参照)。また、ベース23には、ダンパ構造13のダンパケース51を位置決めするための曲げ片45が形成される。
【0060】
図6に示すように、ケース9とベース23とは、回転軸42と略平行な連結軸46a,46bで連結される。ケース9の延長部21には、連結軸46a,46bが通る略円弧状の長穴47a,47bが形成される。ベース23には、連結軸46a,46bが通る通し穴48a,48bが形成される。ケース9の長穴47a,47bとベース23の通し穴48a,48bに連結軸46a,46bを通した後、連結軸46a,46bの先端部はワッシャ49a,49bによってベース23に固定される。ベース23は、ケース9の長穴47a,47bの範囲内でケース9に対して揺動可能である。
【0061】
図7は、位置調節構造12の底面図である。
図7(b)はケース9の中心線L1とベース23の中心線L2を一致させた状態を示し、
図7(a)は位置調節ねじ41を緩め、ベース23をケース9に対して時計方向に揺動させた状態を示し、
図7(c)は位置調節ねじ41を締め、ベース23をケース9に対して反時計方向に揺動させた状態を示す。
【0062】
上記のように、ベース23はケース9に対して回転軸42を中心にして揺動可能である。そして、これらの間には、位置調節ねじ41が架け渡される。このため、位置調節ねじ41を回すと、回転軸42を中心にしたケース9とベース23とのなす角度α(ケース9の中心線L1とベース23の中心線L2とのなす角度α)を調節できる。ベース23には扉1が取り付けられるので、扉1の位置を調節できる。ベース23に扉1を取り付けた状態で、扉1の先端の位置を見ながら扉1の位置の調節が可能なので、扉1の位置調節が容易である。
(ダンパ構造)
【0063】
図8は、ヒンジ装置3、ダンパ構造13、座金10の分解斜視図である。座金10は、本体6に取り付けられる垂直部10aと、水平部10bと、を備える。水平部10bには、軸部材8が回転不可能に取り付けられる。水平部10bには、軸部材8の下端部27aが回転不可能に嵌められる穴10cが形成される。穴10cは、軸部材8の下端部27aと相補的な小判状である。軸部材8には、カム36が設けられる。
【0064】
図9は、ダンパ構造13の分解斜視図である。ダンパ構造13は、ダンパケース51と、リニアダンパ52と、スライダ53と、を備える。ダンパケース51は、扉1の下面に沿って延びる略直方体状である。ダンパケース51には、リニアダンパ52の収容空間51dが形成される。ダンパケース51の上部には、ケース9の延長部21(
図8参照)との干渉を避けるための段差51bが形成される。
【0065】
図8に示すように、ダンパケース51は、締結部材43cによってベース23の下面に取り付けられる。ベース23は、締結部材43a,43b(
図4参照)によって扉1の下面に取り付けられる。ダンパケース51の一端部には、締結部材43cが通る通し穴51aが形成される。ダンパケース51の肩部には、ベース23にダンパケース51を位置決めするために、ベース23の曲げ片45が嵌まる凹部51cが形成される。
【0066】
図9に示すように、スライダ53は、ダンパケース51の収容空間51dにスライド可能に嵌められる。スライダ53は、四角形の筒状である。スライダ53の先端部には、V字状の凸部53aが形成される。53bはスライダ53の抜け止めである。
【0067】
リニアダンパ52は、本体部52bと、本体部52bに対して移動可能なロッド52aと、を備える。本体部52bには、リニアダンパ52を伸長状態に復帰させる復帰スプリング(図示せず)が組み込まれる。また、本体部52bには、粘性流体が充満する。ロッド52aの基端部には、本体部52b内を移動するピストンが設けられる。ピストンが本体部52b内を移動して、ダンパ力が発生する。
【0068】
リニアダンパ52は、スライダ53とダンパケース51との間に挟まれる。ダンパケース51には、リニアダンパ52の位置を調節する位置調節ねじ54が螺合する。位置調節ねじ54の先端は、リニアダンパ52に当接する。位置調節ねじ54を回すと、リニアダンパ52の位置が調節され、ダンパ力が調節される。
【0069】
図10は、ダンパ構造13の動作図(ヒンジ装置3の底面図)である。
図10(a)はケース9の中立位置Pを示し、
図10(b)はケース9が中立位置Pから約90度反時計方向(
図2のA方向)に回転した状態を示し、
図10(c)はケース9が中立位置Pから約90度時計方向(
図2のB方向)に回転した状態を示す。
【0070】
中立位置Pから時計方向及び反時計方向に回転したケース9には、コイルばね15(
図2参照)によって中立位置Pに戻る付勢力が働く。ケース9は、軸部材8を中心にして回転し、中立位置Pに自動的に戻る。このとき、リニアダンパ52は、ダンパケース51に収容されていて、ケース9と一緒に軸部材8を中心にして回転する。リニアダンパ52は、常に軸部材8の方向を向く。
【0071】
ケース9が中立位置Pに戻る際には、軸部材8のカム36とスライダ53の凸部53aとが当接し、スライダ53がダンパケース51内に押し込まれる。このため、リニアダンパ52が圧縮され、リニアダンパ52にダンパ力が発生し、ケース9がゆっくり中立位置Pに戻る。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施形態に具現化可能である。
【0073】
上記実施形態では、第1係合部及び第2係合部を軸と別体にしているが、第1係合部及び第2係合部のいずれか一方を軸と一体にすることもできる。
【0074】
上記実施形態では、ケースを中立位置から回転させた例を説明したが、軸部材を中立位置から回転させることもできる。
【0075】
上記実施形態では、ヒンジ装置を扉の下部に配置し、第2ばね受けを扉の下面よりも下方に配置しているが、ヒンジ装置を扉の上部に配置し、第2ばね受けを扉の上面よりも上方に配置することもできる。
【0076】
上記実施形態のヒンジ装置の各部品の構成は一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲で他の構成を採用し得る。