特許第6758786号(P6758786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758786
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】タンクの解体方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   E04G23/08 D
   E04G23/08 J
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-132922(P2018-132922)
(22)【出願日】2018年7月13日
(65)【公開番号】特開2020-12236(P2020-12236A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390036663
【氏名又は名称】木村化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】兼清 貢
(72)【発明者】
【氏名】岩井 朗
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−158497(JP,A)
【文献】 特開平10−212835(JP,A)
【文献】 特開平11−131826(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0060231(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第107461039(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、屋根部と、前記底部と前記屋根部とをつなぐ周壁部とを備え、内壁に汚染物質が付着したタンクの解体方法であって、
前記周壁部の複数箇所において、鉛直方向および周方向に部分的に切り込みを入れることによって、前記周壁部を複数のブロック片に区分けする工程と、
前記屋根部を切り離して撤去する工程と、
前記屋根部の撤去後に、前記周壁部の前記ブロック片の周囲の切り残し部を切断し、切り離した前記ブロック片を撤去する工程を、前記周壁部の全てのブロック片に対して行う工程と、
前記屋根部と前記周壁部が撤去された後に残った前記底部を撤去する工程と、
を備えることを特徴とするタンクの解体方法。
【請求項2】
前記周壁部を複数のブロック片に区分けする工程では、少なくとも前記ブロック片の四隅に前記切り残し部を残すように、鉛直方向および周方向に切り込みを入れることを特徴とする請求項1に記載のタンクの解体方法。
【請求項3】
前記鉛直方向の切り込みは、前記周壁部の周方向において略均等の間隔となる複数の位置に入れ、
前記周方向の切り込みは、前記周壁部の高さ方向において略均等の間隔となる複数の位置に入れることを特徴とする請求項1または2に記載のタンクの解体方法。
【請求項4】
前記ブロック片を撤去する工程では、前記ブロック片の周囲の切り残しを切断する前に、上方から吊り下げるための吊り下げ治具を前記ブロック片に取り付け、前記切り残し部の切断により切り離されて、前記吊り下げ治具を介して上方から吊り下げられた前記ブロック片を撤去することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタンクの解体方法。
【請求項5】
前記屋根部を切り離して撤去する工程では、前記周壁部の最も高い位置における周方向の切り残し部を切断することによって前記屋根部を切り離して撤去することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタンクの解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクの解体方法に関し、特に、内壁に汚染物質が付着したタンクの解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質を含有する汚染水を貯留していた汚染水タンクのように、内壁に汚染物質が付着したタンクの解体要望がある。そのようなタンクの解体方法の一例として、特許文献1には、タンクの内壁の面のうち、ダスト惹起領域に選択的に封止剤を散布してから、タンクを解体することによって、内壁に付着した汚染物質の飛散を抑制しつつ、タンクを解体する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−200489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の解体方法では、汚染物質の飛散を抑制するための封止剤を用意する必要があり、また、封止剤を散布する工程が必要になるため、解体の工程が複雑になり、コストの増大を招くという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであり、封止剤を用いることなく、汚染物質の飛散を抑制しつつ、タンクを効率よく解体することができるタンクの解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタンクの解体方法は、
底部と、屋根部と、前記底部と前記屋根部とをつなぐ周壁部とを備え、内壁に汚染物質が付着したタンクの解体方法であって、
前記周壁部の複数箇所において、鉛直方向および周方向に部分的に切り込みを入れることによって、前記周壁部を複数のブロック片に区分けする工程と、
前記屋根部を切り離して撤去する工程と、
前記屋根部の撤去後に、前記周壁部の前記ブロック片の周囲の切り残し部を切断し、切り離した前記ブロック片を撤去する工程を、前記周壁部の全てのブロック片に対して行う工程と、
前記屋根部と前記周壁部が撤去された後に残った前記底部を撤去する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
前記周壁部を複数のブロック片に区分けする工程では、少なくとも前記ブロック片の四隅に前記切り残し部を残すように、鉛直方向および周方向に切り込みを入れてもよい。
【0008】
前記鉛直方向の切り込みは、前記周壁部の周方向において略均等の間隔となる複数の位置に入れ、
前記周方向の切り込みは、前記周壁部の高さ方向において略均等の間隔となる複数の位置に入れてもよい。
【0009】
前記ブロック片を撤去する工程では、前記ブロック片の周囲の切り残しを切断する前に、上方から吊り下げるための吊り下げ治具を前記ブロック片に取り付け、前記切り残し部の切断により切り離されて、前記吊り下げ治具を介して上方から吊り下げられた前記ブロック片を撤去するようにしてもよい。
【0010】
前記屋根部を切り離して撤去する工程では、前記周壁部の最も高い位置における周方向の切り残し部を切断することによって前記屋根部を切り離して撤去してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタンクの解体方法によれば、屋根部を切り離した後、周壁部をブロック片ごとに順に解体するので、汚染面積の小さいブロック片ごとに撤去することができ、汚染物質の飛散を抑制することができる。また、周壁部の複数箇所において、鉛直方向および周方向に部分的に切り込みを入れておくことにより、ブロック片の周囲の切り残し部を切断してブロック片をタンクから切り離す際の作業時間を短くすることができる。これにより、汚染物質が付着したブロック片を切り離して撤去するまでの作業時間を短くすることができ、効率よく解体することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のタンクの解体方法によって解体されるタンクの一例を示す斜視図である。
図2】タンクの解体片の仮置き場所の一例を示す平面図である。
図3】タンクの周壁部の複数箇所において、鉛直方向に部分的に切り込みを入れた状態を示す斜視図である。
図4】タンクの周壁部の複数箇所において、周方向に部分的に切り込みを入れた状態を示す斜視図である。
図5】鉛直方向の切り込みおよび周方向の切り込みを入れた周壁部の展開図である。
図6】タンクの屋根部に取り付けられている吊り金具に、クローラークレーンのシャックルを取り付けた状態を示す斜視図である。
図7】タンクの周壁部のブロック片の上部における所定の位置の2箇所に、シャックルを取り付けるための取り付け孔を設けた状態を示す部分拡大図である。
図8】クローラークレーンのフックにリフティングマグネットを取り付けて、リフティングマグネットを、底部の上方の位置まで移動させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明のタンクの解体方法によって解体されるタンク10の一例を示す斜視図である。タンク10の内壁には、汚染物質が付着している。汚染物質とは、人体に有害な物質であって、例えば、放射性セシウム、放射性ストロンチウムなどの放射性物質や、カドミウム、ヒ素などの重金属類などである。一例として、タンク10は、放射性物質を含有する汚染水を貯蔵するために用いられていたものであり、内壁に放射性物質が付着している。
【0015】
タンク10は、底部11と、屋根部12と、底部11と屋根部12とをつなぐ周壁部13とを備え、円筒形状を有する。なお、図1では、屋根部12に取り付けられている、後述する吊り金具は省略している。
【0016】
タンク10は、例えば鉄製である。ただし、タンク10の構成材料が鉄に限定されることはない。
【0017】
タンク10の高さTは約15mである。また、平面視で円形の底部11および屋根部12の直径Rは、約11mである。このタンクの容積は、約1425m2である。ただし、解体対象のタンクの大きさおよび形状が上述した大きさおよび形状に限定されることはない。
【0018】
以下に、本発明のタンクの解体方法について説明する。ここでは、複数のタンク10を順次解体する例について説明する。
【0019】
タンク10の解体を行うためにまず、解体によって得られる解体片の仮置き場所と、作業車の作業エリアとを確保する。作業車は、必要に応じて用意すればよいが、例えば、クレーン車、高所作業車、クローラークレーンなどを用いることができる。
【0020】
図2は、タンク10の解体片の仮置き場所の一例を示す平面図である。第1の仮置き場T1は、解体された屋根部12を仮置きする場所であり、第2の仮置き場T2は、解体された底部11を仮置きする場所である。また、第3の仮置き場T3は、周壁部13を小さく解体した解体片を仮置きする場所である。第1の仮置き場T1、第2の仮置き場T2、および、第3の仮置き場T3は、作業効率上、解体前のタンク10が置いてある位置から近い位置にあることが好ましい。
【0021】
図2では、解体対象である複数のタンク10が複数列および複数行にわたって配置されている状態を示している。タンク10を解体する順番に特に制約はないが、例えば、コーナー部に位置するタンク10aから、タンク10b、タンク10cの順に解体していき、1列目の全てのタンク10の解体が終了すると、2列目のタンク10を順に解体する。
【0022】
なお、タンク10の外側に備え付けられており、後述する切断作業の際に邪魔になる梯子、手摺り、踊り場、雨水配水管などは、タンク10の解体前に撤去しておくことが好ましい。
【0023】
まず初めに、タンク10の周壁部13の複数箇所において、鉛直方向に部分的に切り込み31を入れる(図3参照)。例えば、周方向に略均等の間隔となる複数の位置に鉛直方向の切り込みを入れる。ここでは、周方向に略均等の間隔となる4箇所に、鉛直方向に切り込み31を入れる例を挙げて説明する。切り込み31は、タンク10の周壁部13の厚みを貫通するように入れる。周壁部13の厚みは、例えば13mmである。
【0024】
より詳しくは、周壁部13の上端から所定の距離L1の範囲と、周壁部13の下端から所定の距離L2の範囲を除いて、鉛直方向に切り込み31を入れる。所定の距離L1およびL2は、例えば0.5mである。
【0025】
切り込み31は、例えば、高所作業車の作業床の上に立つ作業員が電動カッター、ガス切断機、エアープラズマ切断機などを用いて入れることができる。ただし、切り込みを入れるための工具が上記工具に限定されることはない。
【0026】
続いて、タンク10の周壁部13の複数箇所において、周方向に部分的に切り込み41を入れる(図4参照)。周壁部13の複数箇所において、鉛直方向および周方向に部分的に切り込みが入れられることによって、周壁部13が複数のブロック片130に区分けされる。ブロック片130は、周方向に隣り合う2つの鉛直方向の切り込み31と、高さ方向に隣り合う2つの周方向の切り込み41とによって囲まれる領域である。
【0027】
周方向の切り込み41は、鉛直方向の切り込み31と交わらないように、部分的に入れる。一例として、図4に示すように、高さH1〜H6の6箇所のそれぞれの位置において、周方向の8箇所に切り込み41を入れる。周方向の切り込み41は、鉛直方向の切り込み31と同様に、周壁部13の厚みを貫通するように入れる。
【0028】
周壁部13の下端から高さH1の位置までの距離は、底部11の厚みと略同じであり、例えば、約0.5mである。また、周壁部13の上端から高さH6の位置までの距離は、屋根部12の厚みと略同じであり、例えば、約0.5mである。高さH1の位置と高さH2の位置との間、高さH2の位置と高さH3の位置との間、高さH3の位置と高さH4の位置との間、高さH4の位置と高さH5の位置との間、高さH5の位置と高さH6の位置との間の距離は、略均一である。
【0029】
図5は、鉛直方向の切り込み31および周方向の切り込み41を入れた周壁部13の展開図である。図5に示すように、高さH1〜H6の6箇所のそれぞれの位置において、鉛直方向の切り込み31と交わらないように、周方向の8箇所に周方向の切り込み41が入れられている。周方向の切り込み41の長さL21は、例えば約4.3mである。
【0030】
ここでは、高さH1〜H6の6箇所のそれぞれの位置において、周方向に切り込み41が入れられていない部分を切り残し部42と呼ぶ。切り残し部42には、図4および図5に示すように、鉛直方向の切り込み31が設けられていない位置における切り残し部42aと、鉛直方向の切り込み31が設けられている位置における切り残し部42bがある。
【0031】
周方向に隣り合う2つの切り込み41の間の距離L11は、例えば約0.4mである。したがって、鉛直方向の切り込み31が設けられていない位置における切り残し部42aの長さは、例えば約0.4mである。また、鉛直方向の切り込み31の両側に位置する切り残し部42bの長さは、L11/2であり、例えば約0.2mである。
【0032】
なお、切り残し部42の長さは、タンク10の形状を維持することができる長さを適宜設定することができる。
【0033】
周方向の切り込み41も、鉛直方向の切り込み31と同様、例えば、高所作業車の作業床の上に立つ作業員が電動カッター、ガス切断機、エアープラズマ切断機などを用いて入れることができる。
【0034】
続いて、以下の(A1)〜(A3)の手順により、タンク10から屋根部12を切り離し、撤去する。
(A1)タンク10の屋根部12に取り付けられている吊り金具61に、クローラークレーンのシャックル(連結金具)62を取り付けて、屋根部12が切り離されたときに、クローラークレーンで吊り下げることができるようにする(図6参照)。
(A2)高さH6の位置における周方向の切り残し部42(42a、42b)を全て切断する。これにより、屋根部12がタンク10から切り離される。切り残し部42の切断は、例えば、電動カッター、ガス切断機、エアープラズマ切断機などを用いて行うことができる。
(A3)クローラークレーンで切り離された屋根部12を吊り下げた状態で、第1の仮置き場T1(図2参照)に運ぶ。
【0035】
ただし、屋根部12は、切り離されたときに、上方から吊り下げて落下しないように維持できればよく、そのための方法がクローラークレーンで吊り下げる方法に限定されることはない。
【0036】
続いて、以下の(B1)〜(B4)の手順により、タンク10から周壁部13を切り離して撤去する。周壁部13は、円弧状のブロック片130に分けて解体する。
(B1)ブロック片130の上部における所定の位置の2箇所に、シャックルを取り付けるための取り付け孔70を設ける(図7参照)。
(B2)取り付け孔70に、上方から吊り下げるための吊り下げ治具であるクレーン車のシャックルを取り付け、ブロック片130が切り離されたときに、クレーン車で吊り下げることができるようにする。
(B3)ブロック片130の下部における周方向の切り残し部42(42a、42b)を切断する。これにより、ブロック片130が切り離される。切り残し部42の切断は、例えば、電動カッター、ガス切断機、エアープラズマ切断機などを用いて行うことができる。
(B4)切り離されたブロック片をクレーン車で、第3の仮置き場T3(図2参照)に運ぶ。
【0037】
上記(B1)〜(B4)の工程を、上層のブロック片130の全てに対して順に行う。すなわち、高さH5の位置における切り残し部42(42a、42b)を切断することによって、上層のブロック片130を順に切り離し、第3の仮置き場T3に運ぶ。続いて、その下の層の全てのブロック片に対して、上記(B1)〜(B4)の工程を順に行う。すなわち、高さH4の位置における切り残し部42(42a、42b)を切断することによって、ブロック片130を順に切り離し、第3の仮置き場T3に運ぶ。そのような工程を繰り返すことにより、周壁部13をブロック片130ごとに切り離し、全てのブロック片130を、第3の仮置き場T3に運ぶ。
【0038】
最後に、タンク10の底部11を、第2の仮置き場T2(図2参照)に運ぶ。具体的には、まず、クローラークレーンのフック71にリフティングマグネット72を取り付けて、リフティングマグネット72を、底部11の上方の位置まで移動させる(図8参照)。続いて、リフティングマグネット72を下降させて、磁力により、リフティングマグネット72を円板状の底部11の上面11aに密着させる。最後に、クローラークレーンにより、底部11を第2の仮置き場T2(図2参照)に運ぶ。
【0039】
上述した方法により、タンク10が解体される。複数のタンク10を上述した方法によって解体することにより、第1の仮置き場T1には、複数の屋根部12が積層され、第2の仮置き場T2には、複数の底部11が積層される。また、第3の仮置き場T3には、同一形状のブロック片130が置かれる。
【0040】
上述したように、本発明のタンクの解体方法は、
(1)周壁部13の複数箇所において、鉛直方向および周方向に部分的に切り込みを入れることによって、周壁部13を複数のブロック片130に区分けする工程と、
(2)屋根部12を切り離して撤去する工程と、
(3)屋根部12の撤去後に、周壁部13のブロック片130の周囲の切り残し部42を切断し、切り離したブロック片を撤去する工程を、周壁部13の全てのブロック片130に対して行う工程と、
(4)屋根部12と周壁部13が撤去された後に残った底部11を撤去する工程と、
を備える。屋根部12を切り離した後、周壁部13をブロック片130ごとに順に解体するので、汚染面積の小さいブロック片ごとに撤去することができ、汚染物質の飛散を抑制することができる。また、周壁部13の複数箇所において、鉛直方向および周方向に部分的に切り込みを入れておくことにより、切り残し部42を切断してブロック片130をタンク10から切り離すための作業時間を短くすることができる。これにより、汚染物質が付着したブロック片130を切り離して撤去するまでの作業時間を短くすることができる。
【0041】
また、複数のタンク10を解体する際に、複数のタンク10に対して、上述した鉛直方向の切り込み31と周方向の切り込み41を入れて、切り残し部42を切断してブロック片130を順次切り離していくことにより、トータルの解体作業時間を短くすることができる。
【0042】
また、鉛直方向および周方向に部分的に切り込みを入れることにより、解体がタンク10の下部に到達するまでの間、タンク10の形状を維持することができるので、安全性にも優れる。上述した実施形態では、少なくともブロック片130の四隅に切り残し部42を残すように、鉛直方向および周方向に切り込みを入れるので、より確実に形状を維持することができる。
【0043】
また、上述した実施形態では、鉛直方向の切り込み31を、周壁部13の周方向において略均等の間隔となる複数の位置に入れ、周方向の切り込み41を、周壁部13の高さ方向において略均等の間隔となる複数の位置に入れるので、切り離されるブロック片130の形状を略同一とすることができる。これにより、ブロック片130を整然とした状態で第3の仮置き場T3に置くことができるとともに、最終的に全てのブロック片130を同一形状のキャスク(収容容器)に収容することができる。
【0044】
なお、ブロック片130の大きさは任意に設定することができ、例えば、キャスクに収容可能な大きさとすることができる。
【0045】
上述した実施形態では、ブロック片130の周囲の切り残し部42を切断する前に、上方から吊すための吊り下げ治具(クレーン車のシャックル)をブロック片130に取り付け、切り残し部42の切断により切り離されて、上方から吊されたブロック片130を撤去するので、切り離したブロック片130が落下するのを防ぎつつ、撤去することができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、周壁部13の最も高い位置における周方向の切り残し部42を切断することによって屋根部12を切り離して撤去するので、屋根部12を切り離してから撤去するまでの作業時間を短縮することができる。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0048】
例えば、解体対象のタンクの形状は、円筒形状であるものとして説明したが、円筒形状に限定されることはない。
【0049】
上述した実施形態では、周壁部13の周方向に略均等の間隔となる4箇所に、鉛直方向の切り込み31を入れる例を示したが、鉛直方向の切り込み31を入れる箇所が4箇所に限定されることはない。また、周壁部13の高さH1〜H6の6箇所のそれぞれの位置において、周方向の8箇所に切り込み41を入れる例を示したが、周方向の切り込み41を入れる箇所が上記箇所に限定されることもない。
【符号の説明】
【0050】
10 タンク
11 底部
12 屋根部
13 周壁部
31 鉛直方向の切り込み
41 周方向の切り込み
42(42a、42b) 切り残し部
61 吊り金具
62 シャックル
70 取り付け孔
71 クローラークレーンのフック
72 リフティングマグネット
130 ブロック片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8