特許第6758791号(P6758791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758791
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】回転子コイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/095 20060101AFI20200910BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   H02K15/095
   H02K15/12 D
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-6795(P2019-6795)
(22)【出願日】2019年1月18日
(65)【公開番号】特開2020-115732(P2020-115732A)
(43)【公開日】2020年7月30日
【審査請求日】2019年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 光
(72)【発明者】
【氏名】大角 栄冶
(72)【発明者】
【氏名】井川 弘章
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2566918(JP,B2)
【文献】 特開平08−196064(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/003950(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/175875(WO,A1)
【文献】 特開昭60−055846(JP,A)
【文献】 特開昭57−059454(JP,A)
【文献】 特開昭55−061251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/095
H02K 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突極型回転電機の回転子に取り付けられる回転子コイルの製造方法において、
平角の銅帯を平打巻又は四隅を溶接により接合巻する巻回工程と、前記銅帯に層間絶縁物を挟込んで前記銅帯と層間絶縁物を接着剤により貼り合わせた後、加熱圧縮して回転子巻線を形成する回転子巻線製造工程と、前記回転子巻線の内外面にドライマイカシートを貼り合わせるドライマイカシート貼着工程と、前記ドライマイカシートが貼着された回転子巻線を圧力容器の中に収容し、当該圧力容器の中にワニス又はレジンを注入し加熱脱泡した後、前記圧力容器内を加圧することで浸漬硬化させる浸漬硬化工程と、磁極鉄心の側面に対地間側面絶縁物を巻回した後、対地間上部絶縁物を取り付け、その後、前記回転子コイルを磁極鉄心に装着する装着工程と、を有することを特徴とする回転子コイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水車発電機、同期発電機・電動機のような突極型回転電機の回転子に取り付けられる回転子コイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水車発電機、同期発電機又は電動機に用いられる突極型回転電機の回転子に取り付けられる回転子コイルの従来の製造方法について、図7を参照して説明する。
従来の突極型回転電機の回転子1は、磁極鉄心2に対地間側面絶縁物8と対地間上部絶縁物9が設けられ、銅帯3と層間絶縁物4からなる回転子コイル12が磁極鉄心2に装着されている。
【0003】
この回転子コイル12は、平角の銅帯3を額縁状に平打巻(エッジワイズ)あるいは銅帯3の四隅をロウ付又は溶接により巻上げた後、層間に層間絶縁物4を設け、次に、銅帯3と層間絶縁物4が互いに接着する側に接着剤を塗布し貼り合わせ、各層間をそろえてプレスすることにより製造される。そして、磁極鉄心2の側面に対地間側面絶縁物8を巻回した後、対地間上部絶縁物9を取り付け、磁極鉄心2に回転子コイル12を装着することで、突極型回転電機の回転子1が形成される。
【0004】
しかしながら、この製造方法では回転子コイル12の外面に絶縁が施されておらず、経年劣化による品質低下やゴミ等が付着することで絶縁抵抗の低下を引き起こすという問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、回転子コイル12の外表面にエポキシ樹脂と酸無水物を含有させたプリプレグ絶縁テープを巻回し、減圧容器中で加熱脱気した後、加熱圧縮してプリプレグ絶縁層を硬化させることで、高い絶縁抵抗を維持することが可能な回転子コイル12を形成する製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2566918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の回転子コイルの製造方法は、樹脂を塗布するか、又は樹脂を含有させたプリプレグ絶縁テープを巻回するため、手巻の場合は作業性が悪く、また、自動テーピング機を用いた場合でも、ドライタイプの絶縁テープを使用するよりも製造工程や品質管理が複雑化し、作業時間も長期化する等の課題があった。
本発明の実施形態は、上記課題を解決するためになされたもので、製造工程を簡素化するとともに、品質管理の効率化及び作業時間の短縮化を図ることができる突極型回転電機の回転子コイルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明の実施形態に係る回転子コイルの製造方法の発明は、突極型回転電機の回転子に取り付けられる回転子コイルの製造方法において、平角の銅帯を平打巻又は四隅を溶接により接合巻する巻回工程と、前記銅帯に層間絶縁物を挟込んで前記銅帯と層間絶縁物を接着剤により貼り合わせた後、加熱圧縮して回転子巻線を形成する回転子巻線製造工程と、前記回転子巻線の内外面にドライマイカシートを貼り合わせるドライマイカシート貼着工程と、前記ドライマイカシートが貼着された回転子巻線を圧力容器の中に収容し、当該圧力容器の中にワニス又はレジンを注入し加熱脱泡した後、前記圧力容器内を加圧することで浸漬硬化させる浸漬硬化工程と、磁極鉄心の側面に対地間側面絶縁物を巻回した後、対地間上部絶縁物を取り付け、その後、前記回転子コイルを磁極鉄心に装着する装着工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造工程を簡素化するとともに、品質管理の効率化及び作業時間の短縮化を図ることができる高品質の突極型回転電機の回転子コイルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る突極型回転電機の回転子の部分断面図。
図2】(a)は第1の実施形態に係る回転子巻線の構成図、(b)は領域aの拡大図。
図3】第1の実施形態に係る回転子コイルの模式図。
図4】(a)は磁極鉄心の構成図、(b)は本実施形態に係る回転子コイルを装着した後の磁極鉄心の構成図。
図5】第2の実施形態に係る回転子コイルの模式図。
図6】各実施形態に係る回転子コイルの誘電正接特性を示す図。
図7】従来の突極型回転電機の回転子の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る回転子コイルの製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る回転子コイルの製造方法について、図1図4を参照して説明する。
【0015】
(構成)
図1は突極型回転電機の回転子1の部分断面図で、銅帯3、層間絶縁物4及びドライマイカテープ5からなる回転子コイル7が磁極鉄心2に装着されている。
【0016】
この回転子巻線6を製造する場合は、まず、平角の銅帯3を額縁状に平打巻するか、あるいは四隅を銀ロウ付又は溶接により接合巻し(巻回工程)、次に、図2(a)に示すように、銅帯3と層間絶縁物4の互いに接着する側に接着剤を塗布し貼り合せた後、各層間を揃えてプレスし、回転子巻線6を形成する(回転子巻線製造工程)。ここで図2(b)は図2(a)の領域aの拡大図である。
【0017】
次に、図3に示すように、回転子巻線6全体をドライマイカテープ5で巻回する(ドライマイカテープ巻回工程)。巻回方法は1/2重巻、突合せ巻等、対象物の寸法と絶縁の強度に合わせて適宜変更可能である。また、巻回手段として自動テーピング機を用いることが可能である。
【0018】
次に、ドライマイカテープ5で巻回された回転子巻線6全体をワニス又はレジンに浸漬し硬化させ、回転子コイル7を形成する(浸漬硬化工程)。
そして、図4(a)に示す磁極鉄心2の側面に対地間側面絶縁物8を巻回した後、対地間上部絶縁物9を取り付け、その後、図4(b)に示すように回転子コイル7を磁極鉄心2に装着する(装着工程)。
【0019】
なお、接着剤については接着性、耐熱性を考慮するとエポキシ系の接着剤を用いることが望ましいが、耐熱クラス等に応じて、他の接着剤を用いてもよい。
【0020】
(作用効果)
本実施形態によれば、回転子コイル7の内外面の絶縁としてドライマイカテープ5を巻回することで、絶縁性能の優れた高品質の回転子コイルを製造することができるとともに、製造工程の簡素化及び作業時間の短縮化を図ることができる。
【0021】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る回転子コイルの製造方法について説明する。本実施形態では、ドライマイカテープの代わりにドライマイカシートを用いる構成としている。
【0022】
まず、第1の実施形態と同様に、平角の銅帯3を額縁状に平打巻するか、あるいは四隅を銀ロウ付又は溶接により巻上げ(巻回工程)、次に、図3に示すように、銅帯3と層間絶縁物4の互いに接着する側に接着剤を塗布し貼り合せた後、各層間を揃えてプレスし、回転子巻線6を形成する(回転子巻線製造工程)。
【0023】
次に、図6に示すように、回転子巻線6の全体に接着剤を塗布し、次いで、その側面及び上下の大きさに合わせて切断したドライマイカシート10に接着剤を塗布した後、回転子巻線6の側面に貼り付ける(ドライマイカシート貼着工程)。
【0024】
ドライマイカシート10を2枚、3枚と貼り合せる場合は、1枚目のドライマイカシート10の上と2枚目、3枚目のドライマイカシート10に接着剤を塗布して貼り合せていく。
【0025】
次に、回転子巻線6全体をワニス又はレジンに浸漬し硬化させ、回転子コイル7を形成する(浸漬硬化工程)。
そして、第1の実施形態と同様に、図4(a)に示す磁極鉄心2の側面に対地間側面絶縁物8を巻回した後、対地間上部絶縁物9を取り付け、その後、図4(b)に示すように回転子コイル7を磁極鉄心2に装着する(装着工程)。
【0026】
本第2の実施形態によれば、回転子巻線6の内外面の絶縁材としてドライマイカシート10を用いたことで、絶縁性能の優れた高品質の回転子コイルを製造することができるとともに、製造工程のさらなる簡素化及び作業時間の短縮化を図ることができる。
【0027】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る回転子コイルの製造方法について説明する。
第3の実施形態では、回転子巻線6をワニス又はレジンに浸漬、硬化させる際に、圧力容器を用いる構成としている。
【0028】
具体的には、上記第1及び第2の実施形態で説明した浸漬硬化工程において、ドライマイカテープ5が巻回された回転子巻線6又はドライマイカシート10が貼着された回転子巻線6を圧力容器内に収納し、ワニス又はレジンを注入した後、加熱脱泡させ、その後、圧力容器内を加圧する(図示せず)。
【0029】
これによりドライマイカテープ5又はドライマイカシート10にワニス又はレジンを充填させることが可能となるとともに、回転子巻線6との間に空隙が生じるのを防ぐことができるため、回転子コイル7の絶縁性能及び品質をさらに向上させることができる。
【0030】
[実証試験]
図6は、従来及び上記第1乃至第3の実施形態に係る製造方法によって製造された回転子コイル7の絶縁性能を誘電正接試験(「tanδ」試験)によって検証した実証試験結果である。
【0031】
図6において、Aは従来の製造方法によって製造された回転子コイル7の誘電正接線、B、Cは、それぞれ第1及び第2の実施形態に係る製造方法によって製造された回転子コイル7の誘電正接線、Dは第3の実施形態に係る製造方法によって製造された回転子コイル7の誘電正接線である。
【0032】
図6からわかるように、第3の実施形態に係る製造方法で製造した回転子コイル7が最も絶縁性能が良好で、次いで第1及び第2の実施形態に係る製造方法で製造した回転子コイル7の絶縁性能が良好であり、いずれも従来の方法で製造された回転子コイル12よりも絶縁性能が優れていることがわかる。
【0033】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1…回転子、2…磁極鉄心、3…銅帯、4…層間絶縁物、5…ドライマイカテープ、6…回転子巻線、7、12…回転子コイル、8…対地間側面絶縁物、9…対地間上部絶縁物、10…ドライマイカシート

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7