(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明部材と前記基板との間に、前記基板よりも屈折率の低い物質の層が形成されるように、前記有機ELパネルを前記透明部材に取り付ける取付構造を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
前記有機ELパネルは、基板上にハーフミラー、陽極、有機物層、陰極の順で積層されたマイクロキャビティ構造を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る発光装置について詳細に説明する。なお、各図面は各部材の位置関係を説明することを目的としているため、必ずしも実際の各部材の寸法関係を表すものではない。また、各実施形態の説明において、同一または対応する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る発光装置10の概略断面図である。
図1に示す発光装置10は、ハイマウントストップランプ、テールランプ等の車両用灯具として用いることができる。
【0017】
図1に示すように、発光装置10は、車両のリアウィンドウ等の透明部材100に沿って配置される。透明部材100は、発光装置10が取り付けられる第1面100aと、第1面100aに対向する第2面100bを有する。透明部材100が車両のリアウィンドウである場合、第1面100aはリアウィンドウの車内側の面となり、第2面100bはリヤウィンドウの車外側の面となる。
【0018】
発光装置10は、有機ELパネル12と、有機ELパネル12を透明部材100に取り付ける取付構造としての両面テープ11とを備える。
【0019】
有機ELパネル12は、透明部材100と対向して配置される透光性の基板23と、基板23上に配置される透光性の陽極21と、陽極21上に配置される有機物層24と、有機物層24上に配置される非透光性の陰極26と、陽極21、有機物層24および陰極26を覆う透光性の封止部材28と、を有する。封止部材28は、例えば酸化ケイ素であってよい。
【0020】
有機ELパネル12は、基板23の周縁部に沿って貼り付けられた両面テープ11により、透明部材100の第1面100aに取り付けられる。この両面テープ11の厚みより、基板23と透明部材100との間に空気層30が形成される。
【0021】
陽極21としては、ITO(酸化インジウムスズ)等の透明電極が用いられる。陰極26としては、アルミニウム等の非透光性の金属電極が用いられる。陽極21および陰極26を用いて有機物層24に電圧を印加すると、陽極21から正孔が、陰極26からは電子が注入され、有機物層24でそれらが結合する際に生じるエネルギーで蛍光性有機化合物が励起され、発光する。有機物層24で発光した光のうち陽極21に向かう光は、陽極21を通過して基板23の出射面23aから出射される。一方、有機物層24で発光した光のうち陰極26に向かう光は、陰極26で反射した後、有機物層24、陽極21を通過して基板23の出射面23aから出射される。このように、有機ELパネル12は、基本的に片側方向(「前方」とする)にのみ光を出射する。基板23の出射面23aから出射された光は、空気層30を通って第1面100aから透明部材100内に入射し、第2面100bから出射される。
【0022】
図1に示すように、有機物層24および陰極26は、ストライプ状に形成される。すなわち、複数の列状の有機物層24および陰極26が所定の間隔をおいて並列されている。このように有機物層24および陰極26をストライプ状に形成することにより、有機物層24および陰極26が形成されていない領域を介して、発光装置10が透けて見える。これにより、発光装置10を車両のリヤウィンドウに沿って配置した場合には、運転席からの後方視認性を確保することができる。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る発光装置10においては、陰極26は、有機物層24よりも幅広に形成されている。すなわち、陰極26の端部は、有機物層24の端部よりも幅方向に延在している。陰極26における有機物層24より幅広部分と陽極21との間には絶縁層25が設けられている。すなわち、有機物層24の両脇に絶縁層25が設けられており、有機物層24および絶縁層25上に陰極26が設けられている。絶縁層25は、例えばCa(DPM)
2であってよい。
【0024】
有機物層24で発光した光の一部は、基板23の出射面23aで反射する。出射面23aへの入射角が小さい反射光は陰極26で遮光されるが、入射角が大きい反射光は陰極26で遮光されず、列状の陰極26の間の領域を通過し、有機ELパネル12の後方に漏れる可能性がある。本実施形態に係る発光装置10では、上記のように陰極26を有機物層24よりも幅広に形成したことにより、出射面23aでの反射角が大きい反射光を陰極26の幅広部分で遮光することができる。これにより、基板23の出射面23aでの反射光が有機ELパネル12の後方に漏れるのを防止または少なくとも抑制できる。発光装置10を車両のリヤウィンドウに沿って配置した場合には、自車の発光装置10が発した光が運転席方向に向かい難くなるので、運転者の眩惑を防止できる。
【0025】
図2は、陰極26の幅の設定方法について説明するための図である。ここでは、基板23の出射面23aからの反射光が後方に漏れないために最低限必要な陰極26の幅について考察する。なお、
図2では簡略化のため陽極の図示を省略している。
【0026】
図2に示すように、有機物層24の端部から出射された後、入射角θ
Iで基板23の出射面23aに入射して反射し、陰極26の端部を通過する光L1が、封止部材28と空気との界面28aに入射角θ
I’で入射し、全反射(屈折角θ
R=90°)する条件を考える。光L1の入射角θ
Iよりも小さい入射角で出射面23aに入射する光L2は、陰極26で遮光されるため、有機ELパネル12の後方には漏れない。一方、光L1の入射角θ
Iよりも大きい入射角で出射面23aに入射する光L3は、封止部材28の界面28aで反射するため、有機ELパネル12の後方には漏れない。
【0027】
基板23の屈折率をn
1、封止部材28の屈折率をn
2、空気の屈折率をn
air=1とする。また、基板23の厚さをdとし、陰極26における有機物層24より幅広部分の幅をL
Nとする。このとき、以下の(1)〜(3)式が成り立つ。
L
N≧2dtanθ
I (1)
n
1sinθ
I=n
2sinθ
I’ (2)
n
2sinθ
I’=n
airsinθ
R (3)
(1)〜(3)式から、以下の(4)式を導くことができる。
L
N≧2dtan(arcsin(1/n
1)) (4)
従って、(4)式を満たすように陰極26の幅広部分の幅L
Nを設定することにより、基板23の出射面23aからの反射光が後方に漏れるのを防止することができる。
【0028】
図3は、基板23の厚さdと陰極26の幅広部分の幅L
Nとの関係を示す図である。
図3は、L
N=2dtan(arcsin(1/n
1))をn
1=1.5としてプロットしたものである。
図3から分かるように、反射光が後方に漏れるのを防止するためには、基板23の厚さdが大きくなるほど、陰極26の幅広部分の幅L
Nを大きくする必要がある。例えば基板23の厚さdが0.05mm〜1.0mmの場合、陰極26の幅広部分の幅L
Nを0.09mm〜1.8mm以上に設定する必要がある。
【0029】
図4は、本発明の別の実施形態に係る発光装置40の概略断面図である。
図4に示す発光装置40も、車両のリアウィンドウ等の透明部材100に沿って配置され、ハイマウントストップランプ、テールランプ等の車両用灯具として用いることができる。
【0030】
発光装置40は、有機ELパネル12と、有機ELパネル12を透明部材100に取り付ける取付構造としての両面テープ11とを備える。両面テープ11の厚みより、基板23と透明部材100との間に空気層30が形成される。
【0031】
有機ELパネル12は、透明部材100と対向して配置される透光性の基板23と、基板23上に配置される透光性の陽極21と、陽極21上に配置される有機物層24と、有機物層24上に配置される非透光性の陰極26と、陽極21、有機物層24および陰極26を覆う透光性の封止部材28と、封止部材28上に形成される遮光膜42とを有する。遮光膜42は、例えばAlを蒸着した粘着シートで形成されてよい。
【0032】
本実施形態に係る発光装置40において、有機物層24、陰極26および遮光膜42は、ストライプ状に形成される。すなわち、複数の列状の有機物層24および陰極26が所定の間隔をおいて並列されており、各列状の有機物層24および陰極26の上方に封止部材28を介して列状の遮光膜42が形成されている。これにより、有機物層24、陰極26および遮光膜42が形成されていない領域を介して、発光装置40が透けて見える。これにより、発光装置40を車両のリヤウィンドウに沿って配置した場合には、運転席からの後方視認性を確保することができる。
【0033】
図4に示すように、本実施形態に係る発光装置40においては、陰極26は、有機物層24と同じ幅に形成されている。一方、遮光膜42は、有機物層24よりも幅広に形成されている。すなわち、遮光膜42の端部は、有機物層24の端部よりも幅方向に延在している。
【0034】
有機物層24で発光した光の一部は、基板23の出射面23aで反射する。出射面23aへの入射角が小さい反射光は陰極26で遮光されるが、入射角が大きい反射光は陰極26で遮光されず、列状の陰極26の間の領域を通過し、有機ELパネル12の後方に漏れる可能性がある。本実施形態に係る発光装置40では、上記のように封止部材28上にストライプ状の遮光膜42を設け、該遮光膜42を有機物層24よりも幅広に形成したことにより、出射面23aでの反射角が大きい反射光を遮光膜42の幅広部分で遮光することができる。これにより、基板23の出射面23aでの反射光が有機ELパネル12の後方に漏れるのを防止または少なくとも抑制できる。発光装置40を車両のリヤウィンドウに沿って配置した場合には、自車の発光装置40が発した光が運転席方向に向かい難くなるので、運転者の眩惑を防止できる。
【0035】
図5は、遮光膜42の幅の設定方法について説明するための図である。ここでは、基板23の出射面23aからの反射光が後方に漏れないために最低限必要な遮光膜42の幅について考察する。なお、
図5では簡略化のため陽極の図示を省略している。
【0036】
図5に示すように、有機物層24の端部から出射された後、入射角θ
Iで基板23の出射面23aに入射して反射した光L4が、封止部材28と空気との界面28aにおける遮光膜42の端部で全反射(屈折角θ
R=90°)する条件を考える。光L4の入射角θ
Iよりも小さい入射角で出射面23aに入射する光L5は、遮光膜42で遮光されるため、有機ELパネル12の後方には漏れない。一方、光L4の入射角θ
Iよりも大きい入射角で出射面23aに入射する光L6は、封止部材28の界面28aで反射するため、有機ELパネル12の後方には漏れない。
【0037】
基板23の屈折率をn
1、空気の屈折率をn
air=1とする。また、基板23の厚さをdとし、封止部材28の厚さをDとし、遮光膜42における有機物層24より幅広部分の幅をL
Fとする。このとき、以下の(5)および(6)式が成り立つ。
L
F≧2dtanθ
I+Dtanθ
I (5)
n
1sinθ
I=sinθ
R (6)
(5)および(6)式から、以下の(7)式を導くことができる。
L
F≧2dtan(arcsin(1/n
1))+Dtan(arcsin(1/n
1)) (7)
従って、(7)式を満たすように遮光膜42の幅広部分の幅L
Fを設定することにより、基板23の出射面23aからの反射光が後方に漏れるのを防止することができる。
【0038】
図6は、基板23の厚さdと遮光膜42の幅広部分の幅L
Fとの関係を示す図である。
図6は、L
F=2dtan(arcsin(1/n
1))+Dtan(arcsin(1/n
1))をn
1=1.5、封止部材28の厚さD=0.2mmとしてプロットしたものである。
図6から分かるように、反射光が後方に漏れるのを防止するためには、基板23の厚さdが大きくなるほど、遮光膜42の幅広部分の幅L
Fを大きくする必要がある。例えば基板23の厚さdが0.05mm〜1.0mmの場合、遮光膜42の幅広部分の幅L
Fを0.27mm〜2.0mm以上に設定する必要がある。
【0039】
図7は、封止部材28の厚さDと遮光膜42の幅広部分の幅L
Fとの関係を示す図である。
図7は、L
F=2dtan(arcsin(1/n
1))+Dtan(arcsin(1/n
1))をn
1=1.5、基板23の厚さd=0.1mmとしてプロットしたものである。
図7から分かるように、反射光が後方に漏れるのを防止するためには、封止部材28の厚さDが大きくなるほど、遮光膜42の幅広部分の幅L
Fを大きくする必要がある。例えば封止部材28の厚さDが0.05mm〜1.0mmの場合、遮光膜42の幅広部分の幅L
Fを0.22mm〜1.1mm以上に設定する必要がある。
【0040】
図8は、本発明のさらに別の実施形態に係る発光装置80の概略断面図である。
図1に示す発光装置10も、車両のリアウィンドウ等の透明部材100に沿って配置され、ハイマウントストップランプ、テールランプ等の車両用灯具として用いることができる。
【0041】
発光装置80は、有機ELパネル12と、有機ELパネル12を透明部材100に取り付ける取付構造としての透明フレーム82とを備える。透明フレーム82は、透明樹脂で形成された有底矩形状のフレームであり、その底面82aに有機ELパネル12の封止部材28が貼り付けられる。透明フレーム82は、支持部82bを備えており、該支持部82bが透明部材100の第1面100aに取り付けられることにより、有機ELパネル12が固定される。透明フレーム82の支持部82bは、有機ELパネル12の基板23と透明部材100とが所定距離離間するように形成される。これにより、基板23と透明部材100との間には空気層30が形成される。
【0042】
図1に示す発光装置10、
図4に示す発光装置40および
図8に示す発光装置80では、いずれも有機ELパネル12の基板23と透明部材100との間に空気層30が形成されている。有機ELパネル12の基板23と透明部材100との間に空気層を形成せず、例えば基板23および透明部材100と屈折率の近いテープを挟んだ場合、基板23の出射面23aや透明部材100の第1面100aでの反射光は少なくなるが、透明部材100の第2面100bでの反射光がストライプ状の陰極26の間を通って後方に漏れる可能性がある。そこで、上記実施形態に係る発光装置では、有機ELパネル12の基板23と透明部材100との間に敢えて空気層30を形成し、透明部材100の第1面100aでの反射光が後方に漏れにくくしている。空気層30の厚さは、50μm〜10cm程度とすることが望ましい。本発明者が行ったシミュレーションによると、50μm以下の場合、後方への漏れ光が増加する傾向があった。また、車両に搭載することを考慮すると、空気層30の厚さを大きくしすぎることは現実的ではなく、10cm以下とすることが望ましい。なお、基板23の出射面23aでの反射光は、上述したように陰極26や遮光膜42で遮光されるので、後方には漏れにくい。
【0043】
上記の実施形態では、有機ELパネル12の基板23と透明部材100との間に空気層30を形成したが、空気層に限定されず、基板23よりも屈折率の低い物質の層が形成されていればよい。
【0044】
図9(a)および(b)は、発光装置の変形例を説明するための図である。
図9(a)は、
図1で説明した発光装置10を示す。
図9(b)は、変形例に係る発光装置90を示す。
【0045】
図9(a)に示す発光装置10は、基板23上に、陽極21、有機物層24、陰極26の順で積層された積層構造を有する。このような積層構造の場合、有機物層24で発光した光の輝度分布はランバーシアン分布となる。
【0046】
一方、
図9(b)に示す発光装置90は、基板23上にハーフミラー92、陽極21、有機物層24、陰極26の順で積層されたマイクロキャビティ構造を備える。このマイクロキャビティ構造は、有機物層24から発する光を多重反射させることで特定の波長の光を増強選択するものである。このようなマイクロキャビティ構造の場合、正面方向が高く、正面方向以外が低い輝度分布となる。
【0047】
図9(a)に示す発光装置10において、正面方向以外に向かう光のうち基板23の出射面23aへの入射角が小さい光は、出射面23aで反射後に陰極26の幅広部分で遮光されるが、
図2で説明したような十分な陰極26の幅が確保されていない場合、入射角が大きい光は出射面23aで反射後に陰極26の幅広部分で遮光されず、後方に漏れる可能性がある。
【0048】
一方、
図9(b)に示す発光装置90では、マイクロキャビティ構造を採用していることにより、出射面23aへの入射角が大きい光の輝度は小さくなる。従って、出射面23aで反射後に後方に漏れる光を低減することができる。逆に言えば、本変形例に係る発光装置90によれば、陰極26の幅を
図9(a)に示す発光装置10ほど大きくしなくても、後方に漏れる光が低減できることになる。つまり、本変形例に係る発光装置90によれば、陰極26の幅を小さくして開口率を向上することができるので、透過性の高い発光装置を実現できる。
【0049】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。