(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の電動モータ装置において、前記角度推定異常検出手段が、前記複数の角度推定手段の推定結果の平均値から最も乖離した角度推定手段の推定結果において、前記乖離の量が所定値を超過したときに、前記最も乖離した角度推定手段を異常とする電動モータ装置。
請求項1に記載の電動モータ装置において、前記角度推定異常検出手段が、前記複数の角度推定手段の推定結果を比較した中での最大値および最小値と、これら二値を除く中間値との比較を行い、前記二値のうち前記中間値から大きく乖離した方の角度推定手段の推定結果の乖離量が所定値を超過したときに、前記大きく乖離した方の角度推定手段を異常とする電動モータ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような、電動アクチュエータを使用した電動ブレーキ装置において、電動モータには極めて高い冗長性が求められる場合がある。例えば、モータコイルやセンサ等に異常が発生した場合においても、動作を継続する必要が生じる場合がある。しかし、センサ異常が発生した場合においても動作を継続する技術は提案されるに至っていない。
なお、特許文献2のような、モータコイルを多重化した電動モータの場合、コイル断線等の異常に関しては、異常発生後も電動モータは動作を継続することができるが、角度センサ等の異常発生後も動作を継続する必要がある場合、角度センサを複数搭載しなければならず、コストやスペースが問題となる場合がある。
【0005】
この発明の目的は、角度推定に異常が発生した際にその異常が発生した系統が特定できて、異常発生後も動作を継続することができる冗長性の高い電動モータ装置を提供することである。
この発明の他の目的は、角度センサが1個であっても、異常が発生した系統が特定できて、異常発生後も動作を継続することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の電動モータ装置は、固定子5と回転子6とを有する電動モータ1と、この電動モータ6を制御する制御装置2とを備え、前記制御装置2が、
前記電動モータ1の固定子5と回転子6との相対角度を推定可能な少なくとも3系統以上の角度推定手段23,24,25と、
前記3系統以上の角度推定手段23,24,25による推定角度の比較に基づいて前記角度推定手段23,24,25による検出系統の異常を検出する角度推定異常検出手段26と、
この角度推定異常検出手段26により前記3系統以上のいずれかの角度推定手段23,24,25の検出系統の異常を検出した時に、前記異常が発生していない角度推定手段23,24,25の推定角度を角度推定結果として出力する角度推定結果出力手段27と、
この角度推定結果出力手段27が出力する角度推定結果を用いて前記電動モータ1を制御するモータ制御部16とを有す
る。
【0007】
この構成によると、3系統以上の角度推定手段23,24,25を備え、その推定角度の比較に基づいて角度推定手段23,24,25による検出系統の異常を角度推定異常検出手段26で検出するため、一つの角度推定手段23,24,25の検出系統に異常が発生しても、その異常が発生した角度推定手段23,24,25の検出系統を特定し、残りの角度推定手段23,24,25の推定角度を用いて電動モータの動作を正しく継続することができる。なお、この明細書で言う「角度推定手段の検出系統」は、その角度推定手段による直接推定に用いる角度センサや、間接する推定に用いる電流,電圧センサ等のセンサ類、並びにこのセンサ類で検出される電動モータの検出対象部分、配線等を含む意味であり、以下、単に「系統」と称する場合がある。
前記構成において、前記固定子5が複数の電力系統にそれぞれ接続される複数の励磁機構71,72を有し、
前記角度推定手段23,24,25として、前記固定子5と回転子6との相対角度を所定の角度信号として出力する一つの角度センサ28の出力結果に基づいて角度推定値とする直接角度推定手段23と、前記複数の励磁機構71,72それぞれの端子電圧、電流、および電気的特性のいずれか一つまたは複数から推定する複数の間接角度推定手段24,25とを有する。
この構成の場合、間接角度推定手段24,25は励磁機構71,72の端子電圧および電気的特性から角度を推定する。すなわち、多重化された励磁コイル等の励磁機構71,72のそれぞれにつき角度センサレス推定を行い、角度センサ28を1系統設けることで、角度推定に異常が発生した際に前記異常が発生した系統を特定する。そのため、角度センサ28を一つとしながら、異常発生後も動作を継続することができる。また、励磁機構7(71,72)を多重化しているため、片方の励磁機構71,72に断線等の異常が生じても、残りの励磁機構71,72で動作を維持することができる。角度センサ28は1系統有するため、例えば電動ブレーキ装置の制動力制御などのように、センサレスのみでは困難である高速かつ高精度な位置決め制御系を実現できる。
【0008】
この発明において、前記角度推定異常検出手段
26が、前記複数の角度推定手段23,24,25の推定結果の平均値から最も乖離した角度推定手段23,24,25の推定結果において、前記乖離の量が所定値を超過したときに、前記最も乖離した角度推定手段23,24,25を異常とする構成であっても良い。
この構成の場合、平均値から最も乖離した角度推定手段23,24,25の推定結果において、乖離の量が所定値を超過したときにその角度推定手段23,24,25を異常として検出するため、角度推定手段23,24,25の異常を簡単にかつ正確に検出することができる。なお、前記「所定値」は、予め取得しておいた様々な駆動条件において発生し得る推定誤差の解析値や実測値に基づいて、任意に定められる値である。
【0009】
この発明において、前記角度推定異常検出手段
26が、前記複数の角度推定手段23,24,25の推定結果を比較した中での最大値および最小値と、これら二値を除く中間値との比較を行い、前記二値のうち前記中間値から大きく乖離した方の角度推定手段23,24,25の推定結果の乖離量が所定値を超過したときに、前記大きく乖離した方の角度推定手段を異常とする構成であっても良い。
この構成の場合、最大値および最小値である二値のうち、中間値から大きく乖離した方の角度推定手段の推定結果の乖離量が所定値を超過したときに、その大きく乖離した方の角度推定手段23,24,25を異常として検出するため、角度推定手段23,24,25の異常を簡単にかつ正確に検出することができる。なお、前記「所定値」は、予め取得しておいた様々な駆動条件において発生し得る推定誤差の解析値や実測値に基づいて、任意に定められる値である。
【0011】
前記直接角度推定手段23と間接角度推定手段24,25とを有する構成の場合に、前記角度推定結果出力手段27は、前記直接角度推定手段23が異常と判断されていない場合は、前記直接角度推定手段23の推定結果を前記角度推定結果として出力するようにしても良い。
直接角度推定手段
23を用いることで、間接角度推定手段24,25では行うことが困難な精度の高い制御が行える。
【0012】
前記固定子5が複数の電力系統9
1,9
2にそれぞれ接続される複数の励磁機構7
1,7
2を有し、各励磁機構71,72に対して間接角度推定手段24,25を有する構成の場合に、前記制御装置2の前記モータ制御部16は、前記角度推定異常検出手段26により、前記複数の間接角度推定手段24,25のうちの何れかが異常と判断された場合、前記異常が判断された間接角度推定手段24,25において推定対象とされた励磁機構7
1,7
2について、前記励磁機構7
1,7
2への電力供給を遮断する励磁機構個別遮断手段
29を有するようにしても良い。
この構成の場合、いずれかの励磁機構7
1,7
2に断線等の異常が発生しても、残りの正常な励磁機構7
1,7
2を用いて電動モータの動作を維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の電動モータ装置は、固定子と回転子とを有する電動モータと、この電動モータを制御する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記電動モータの固定子と回転子との相対角度を推定可能な少なくとも3系統以上の角度推定手段と、前記3系統以上の角度推定手段による推定角度の比較に基づいて前記角度推定手段による検出系統の異常を検出する角度推定異常検出手段と、この角度推定異常検出手段により前記3系統以上のいずれかの角度推定手段の検出系統の異常を検出した時に、前記異常が発生していない角度推定手段の推定角度を角度推定結果として出力する角度推定結果出力手段と この角度推定結果出力手段が出力する角度推定結果を用いて前記電動モータを制御するモータ制御部とを有し、
前記固定子が複数の電力系統にそれぞれ接続される複数の励磁機構を有し、前記角度推定手段として、前記固定子と回転子との前記相対角度を所定の角度信号として出力する一つの角度センサの出力結果に基づいて角度推定値とする直接角度推定手段と、前記複数の励磁機構それぞれの端子電圧、電流、および電気的特性のいずれか一つまたは複数から推定する複数の間接角度推定手段とを有するため、角度推定に異常が発生した際にその異常が発生した系統が特定できて、異常発生後も動作を継続することができ、冗長性の高い電動モータ装置となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。この電動モータ装置は、電動モータ1と制御装置2とで構成される。電動モータ1は、図示の例では、その回転出力により駆動される直動機構3と共に電動アクチュエータ4を構成する。直動機構3は、正逆の回転入力を直線往復運動に変換する機構であって、ボールねじ機構またはラックピニオン機構等からなる。電動アクチュエータ4は、例えば、電動ブレーキ装置や射出成形機の駆動、その他の機器の駆動に用いられる。
【0016】
電動モータ1は、固定子であるステータ5と回転子であるロータ6とでなり、例えば永久磁石型の3相の同期モータとされる。電動モータ1は、磁極が回転軸径方向と平行なラジアルギャップモータ(例えば
図3,
図4)と回転軸方向と平行なアキシャルギャップモータ(例えば
図5)と、のいずれであっても良い。ステータ5はステータコイル7(7
1,7
2)と、ステータコア8(
図3〜
図5参照)とでなる。ステータコイル7は、この実施形態では、系統1と系統2との2系統として多重化されている。
図1では、系統1,2を区別する符号(1),(2) を、ステータコイル7
1,7
2を示す各ブロック内に付してある。
ステータコイル7の巻線の形態および多重化の形態は、例えば
図3〜
図5にそれぞれ例示するいずれの形態であっても良い。
【0017】
図3は、ステータコア8の同じスロット8bに複数の系統1,2に接続されたステータコイル7
1,7
2を配置する例を示す。なお、図中では簡単のため内外径方向に二分割されているよう図示するが、例えば各磁極8aの巻かれる部分の内周側と外周側とに別系統に接続されるステータコイル7
1,7
2を配置する構造としても良く、あるいはマグネットワイヤ(図示せず)を二本並べて保持したまま巻線し、別系統のステータコイル7
1,7
2を形成するマグネットワイヤが交互に隣接する構造としても良い。
【0018】
図4は、ステータコア8のスロット8bごとに接続系統1,2を分けてステータコイル7
1,7
2を設ける例を示す。なお、同図の例では、3相交流の相U,V,Wの配置順をU1-V1-W1-U2-V2-W2として配置いるが、U1-U2-V1-V2-W1-W2 のように配置しても良い。
【0019】
図5は、ダブルステータ型アキシャルギャップモータにおいて、複数のステータ5,5をそれぞれ別の系統に接続する例を示す。ロータ6は、磁性体からなるロータ本体6aと永久磁石6bとで構成される。
【0020】
電動モータ1は、その他、例えばアキシャルギャップモータにおいて、
図3や
図4に示す配線構造によって多重化されていてもよい。また、図示の各実施形態は巻線方式として集中巻の例を示すが、分布巻を用いても良い。
【0021】
図1と共に、制御系および電源系を説明する。電動モータ1の各系統のステータコイル7
1,7
2は、それぞれ別の電源装置9
1,9
2に、制御装置2のモータドライバ11
1,11
2を介して接続されている。制御装置2内の制御装置電源12は、制御装置2および角度センサ28等のセンサ系統に必要な電力を適宜供給する電源である。制御装置電源12は、前記電源装置9
1,9
2にOR結合部13を介して接続され、複数の電源装置9
1,9
2のいずれからでも給電可能とされている。制御装置電源12は、電源装置9
1,9
2とは独立して設けられていても良い。前記電源装置9
1,9
2および制御装置電源12には、例えばバッテリ、キャパシタ、AC/DCコンバータ等を用いることができる。なお、電動モータ1の電源として、この実施形態では電源装置9
1,9
2の2系統を有する例を示すが、前記電源装置の数は同図によらず冗長性の要求に応じて適宜定めれば良い。
【0022】
制御装置2はマイクロコンピュータや各種の電子部品を搭載した回路基板等からなり、アクチュエータ制御器15、モータ制御部16、角度推定器17、電流推定器21(21
1,21
2)、および電圧推定器22(22
1,22
2)等を備えている。制御装置2またはその周辺には、その他、例えばアクチュエータ制御器15へのフィードバックや、電動モータ1のサーミスタ設置等、システム構成に必要となる要素が適宜設けられる。
【0023】
制御装置2には、電動アクチュエータ4の制御量に対する指令値が入力され、その入力がアクチュエータ制御器15で制御演算され、モータトルクの指令値が出力される。制御装置2に入力される前記指令値は、例えば電動アクチュエータ4が電動ブレーキ装置等の軸荷重制御アクチュエータであれば、軸荷重指令値、電動アクチュエータ4が電動シフト装置等の位置制御アクチュエータであれば位置指令値等であっても良く、前記指令値に応じた制御量をアクチュエータ制御器15に適宜フィードバックして制御する構成であっても良い。
【0024】
モータ制御部16は、電流変換器18、電流制
御器19(19
1,19
2)、および前記モータドライバ11
1,11
2を有している。モータ制御部16は、この他に、この実施形態では、さらに励磁機構個別遮断手段2
9を備えている。励磁機構個別遮断手段2
9については後に説明する。
電流変換器18は、d軸決定部18a,q軸決定部18bにおいて、モータトルクの指令値をd軸、q軸の電流指令値に変換する構成とすることで、簡潔な制御系を構成できて好適である。しかしながら、電流変換器18は、例えば三相交流電流の振幅と位相等を出力する構成であってもよい。
【0025】
電流制御器19(19
1,19
2)は、例えば電流フィードバック制御や、非干渉器等のフィードフォワード制御を用いて、電流指令値に対してモータ電流が追従するよう制御を行う手段とすることができる。
【0026】
モータドライバ11(11
1,11
2)は、例えばFET等のスイッチ素子を用いてハーフブリッジ回路等を構成し、電動モータ1のモータコイル端子に電源電圧を印加する比率を調整するPWM制御を行う構成されていると、安価で好適であるが、この他に、例えば昇圧回路を別途設けてPAM制御等を行う構成であっても良い。
【0027】
電流推定器21(21
1,21
2)は、モータドライバ11(11
1,11
2)から電動モータ1に印加される電流を推定する手段である。電流推定器21(21
1,21
2)は、センサ素子であると信頼性および性能から好適であり、例えば送電線の磁界を検出する磁気センサを用いても良いが、シャント抵抗やFETの両端の電圧を検出するアンプを用いても良い。センサ素子は安価なもので足りる。電流推定器21は、この他に、印加した電圧と、電動モータ1の抵抗やインダクタンス等の電気的特性から電流の推定を行う構成であっても良い。
【0028】
角度推定器17は、電動モータ1のステータ5とロータ6との相対角度を推定可能な少なくとも3系統の角度推定手段23,24,25と、この3系統の角度推定手段23,24,25による推定角度の比較に基づいてこれらの角度推定手段23,24,25の異常を検出する角度推定異常検出手段26と、この角度推定異常検出手段26により前記3系統のいずれかの角度推定手段23〜2
5の異常を検出した時に、前記異常が発生していない角度推定手段23〜2
5の推定角度を角度推定器17の角度推定結果として出力する角度推定結果出力手段27とを有する。
【0029】
前記モータ制御部16は、前記電流変換器18により前記相対角度を用いて位相制御等のフィードバック制御を行うときに、前記角度推定結果出力手段27が出力する角度推定結果を用いる。
【0030】
前記3種類の角度推定手段23,24,25のうちの一つの角度推定手段23は、角度センサ28の出力結果の信号から角度を推定する直接角度推定手段とされる。角度センサ28は、例えば電動モータ1に備えられてステータ5とロータ6と
の相対角度を所定の形式の角度信号として出力するセンサであり、レゾルバまたは磁気式や光学式のエンコーダ等とされる。
残り二つの角度推定手段24,25は、それぞれ前記2系統のステータコイル7
1,7
2に印加される電圧または電流またはその両方から角度を推定するセンサレス推定手段である間接角度推定手段とされる。前記電流は前記電流推定器21(21
1,21
2)により、前記電圧は前記電圧推定器22(22
1,22
2)により検出される。
【0031】
前記センサレス推定の手法としては、例えば前記モータドライバ11(11
1,11
2)の鎖交磁束位相を推定する手法や、スイッチ素子がOFFの状態における開放コイル端子電圧を検出してモータ角度を推定する手法や、磁気飽和特性やインダクタンスの突極性を検出してモータ角度を推定する手法等を用いることができる。前記センサレス推定の手法として、他の手法を用いても良く、またこれらの手法も含めた複数の手法を併用しても良い。
【0032】
前記角度推定異常検出手段
26による異常検出の方法としては、例えば、前記複数の角度推定手段23,24,25の推定結果の平均値から最も乖離した角度推定手段23,24,25の推定結果において、前記乖離の量が所定値を超過したときに、前記最も乖離した角度推定手段23,24,25を異常とする方法とされる。
この構成の場合、平均値から最も乖離した角度推定手段23,24,25の推定結果において、乖離の量が所定値を超過したときにその角度推定手段23,24,25を異常として検出するため、角度推定手段23,24,25の異常を簡単にかつ正確に検出することができる。なお、前記「所定値」は、予め取得しておいた様々な駆動条件において発生し得る推定誤差の解析値や実測値に基づいて、任意に定められる値である。
【0033】
また、角度推定異常検出手段
26による異常検出の方法は、上記の他に、前記角度推定異常検出手段
26が、前記複数の角度推定手段23,24,25の推定結果を比較した中での最大値および最小値と、これら二値を除く中間値との比較を行い、前記二値のうち前記中間値から大きく乖離した方の角度推定手段23,24,25の推定結果の乖離量が所定値を超過したときに、前記大きく乖離した方の角度推定手段を異常とする方法であっても良い。
この構成の場合、最大値および最小値である二値のうち、中間値から大きく乖離した方の角度推定手段の推定結果の乖離量が所定値を超過したときに、その大きく乖離した方の角度推定手段23,24,25を異常として検出するため、この構成によっても、角度推定手段23,24,25の異常を簡単にかつ正確に検出することができる。前記「所定値」は、予め取得しておいた様々な駆動条件において発生し得る推定誤差の解析値や実測値に基づいて、任意に定められる値である。
【0034】
前記角度推定結果出力手段27は、前記直接角度推定手段23が異常と判断されていない場合は、前記直接角度推定手段23の推定結果を前記角度推定結果として出力するようにしても良い。
【0035】
前記励磁機構個別遮断手段
29は、前記角度推定異常検出手段26により前記複数の間接角度推定手段24,25のうちの何れかが異常と判断された場合、前記異常が判断された間接角度推定手段24,25において参照された励磁機構7
1,7
2について、その励磁機構7
1,7
2への電力供給を遮断する手段である。この実施形態において、前記間接角度推定手段24,25の系統によるセンサレス推定が異常となる状況は、例えばモータコイルの断線や焼損、あるいはモータドライバの破損等、センサレス推定を行っている電動モータ1のモータコイルの駆動自体が不可となっている可能性がある。従って、前記間接推定手段24,25の何れかの系統が異常と診断された場合は、同時に前記異常が発生したセンサレス推定を行っているモータコイル系統への電力供給を停止する処理としている。励磁機構個別遮断手段
29による電力供給の遮断の形態は、例えば、モータドライバ11
1,11
2への電力供給をスイッチング手段(図示せず)等により遮断する形態であっても、また電流変換器18から出力する電流指令を零と形態であっても、その他の形態であっても良い。
【0036】
図2は、角度推定器17による異常判定および角度推定値の出力の処理例を示すフロー図である。同図において、ステップS1〜S6までは
図1の角度推定異常検出手段26が行う処理、他の各ステップは、角度推定結果出力手段27が行う処理である。
まず、前ステップまでに異常がなかったか否かを判定する(ステップS1)。通常は異常無しである。この場合、角度センサ28の出力からの回転角度の推定結果θ
1、および各ステータコイル7
1,7
2におけるモータ電圧/電流からの回転角度の推定値θ
2,θ
3を、直接角度推定手段23および第1および第2の間接角度推定手段24,25から取得する(ステップS2,3)。直接角度推定手段23および第1および第2の間接角度推定手段24,25は、常に角度の推定処理を行っている。
【0037】
取得した回転角度の推定値から、平均値θave を次式によって演算する(ステップS4)。
θave=(θ
1+θ
2+θ
3)/3
この求められた平均値θaveから最も乖離している推定結果θx(x=1,2,3)を判定する(ステップS5)。
この最も乖離している推定結果θxの平均値θaveからの乖離量が閾値を超過しているか否かを判定する(ステップS6)。前記閾値は、設計等により任意に定められる値である。
【0038】
最も乖離している推定結果θxの前記乖離量が閾値を超過していない場合は、いずれの系統も異常無しであり、角度推定結果出力手段27は、角度センサ28からの推定結果である直接角度推定手段23の角度推定値θ
1を、角度推定器17からの角度推定結果θとして出力する(ステップS7)。一般にレゾルバ等の角度センサ出力は、角度センサレス推定結果より高精度である場合が多いため、この実施形態では、角度センサ28の系統出力が正常と判断される場合は角度センサ28の出力を用い、高精度な角度検出を可能としている。なお、必ずしも角度センサ28の出力を用いなくても良く、例えば全推定結果θ
1,θ
2,θ
3の平均を採る等の処理を行ってもよい。後に説明するステップS12,13の処理も、上記と同様な理由で角度センサ28の出力を用いるようにしている。
【0039】
前記判定ステップS6において、最も乖離している推定結果θxの前記乖離量が閾値を超過して場合は、その超過している推定結果θxが角度センサ28からの推定結果θ
1であるか否かを判定し(ステップS8)、推定結果θ
1ではない場合は、前記と同様に推定結果θ
1を、角度推定器17からの角度推定結果θとして出力する(ステップS7)。
【0040】
ステップS8の判定により、超過している推定結果θxが角度センサ28からの推定結果θ
1である場合は、残り二つの推定結果θ
1,θ
2を用い、例えば次式、
θ=(θ
1+θ
2)/2
の結果となるθを、角度推定結果θとして出力する(ステップS9)。
【0041】
最初の判断ステップS1において、前ステップまで異常判定があった場合は、θ
1,θ
2,θ
3のうち、異常判定されていない2系統の推定結果を取得する(ステップS10)。
この2系統の判定結果が概ね等しいか否かを判定する(ステップS11)。概ね等しいか否かは、例えば、2系統の判定結果の差が、適宜定められる閾値以内であるか否かで行う。概ね等しくない場合は角度推定不能であり(ステップS15)、その場合は、角度推定結果出力手段27は、角度推定結果として角度推定不能の信号を出力する。モータ制御部
16は、例えば電流変換器18において、前記角度推定不能の信号に応じて定められている処理、例えばモータ停止または低トルク回転等の制御を行う。
【0042】
前記判断ステップS11で、2系統の推定結果が概ね等しい場合は、最初のステップS1で異常有りとされた系統が角度センサ28の系統であるか否かを判定する(ステップS12)。角度センサ28の系統が正常である場合は、角度センサ28の系統の推定値θ
1を角度推定器17の角度推定結果θとして出力する(ステップS13)。角度センサ28の系統が異常である場合は、残り2系統の推定結果θ
2,θ
3の平均値を、角度推定器17の角度推定結果θとして出力する(ステップS14)。
【0043】
なお、
図2のフロー図の例では、ステップS4〜S5による角度推定系の異常判定について、平均値との比較を行うようにしたが、この他に、全ての系の推定結果θ
1,θ
2,θ
3の最大値と、最小値と、それ以外の中間値とを導出し、最大値および最小値のうちの中間値から最も乖離した結果について、乖離量を判断する処理としても良い。
【0044】
この構成の電動モータ装置によると、以上のように、角度推定器17は、前記複数の角度推定結果を適宜参照して現在の電動モータ1の回転角度を推定することができ、例えば角度センサ28が正常な場合は角度センサ28の値を優先して使用する。角度推定異常検出手段26は、例えばある1系統の角度推定結果が他の角度推定結果と乖離した場合において、前記乖離した角度推定手段23〜24の系統を異常と判断する。この時、ある1系統が異常と判断された場合においても、残り2系統が正常であると、電動モータ1の制御を継続することができる。
【0045】
また、励磁コイルとなるステータコイル7について、多重化されたステータコイル7
1,7
2のそれぞれに角度センサレス推定を行い、角度センサ28を1系統設けることで、角度推定に異常が発生した際に、その異常が発生した角度推定の系統が特定でき、異常発生後も動作を継続することができる冗長性の高い電動モータ装置となる。
角度センサ28を1系統有することで、例えば電動ブレーキ装置の制動力制御など、センサレスのみでは困難である高精度位置決め制御系を実現できる。
【0046】
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。