特許第6759061号(P6759061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝電機サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6759061-テレメータ 図000002
  • 特許6759061-テレメータ 図000003
  • 特許6759061-テレメータ 図000004
  • 特許6759061-テレメータ 図000005
  • 特許6759061-テレメータ 図000006
  • 特許6759061-テレメータ 図000007
  • 特許6759061-テレメータ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759061
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】テレメータ
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20200910BHJP
   G05B 19/042 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   H04Q9/00 311J
   G05B19/042
   H04Q9/00 341Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-218118(P2016-218118)
(22)【出願日】2016年11月8日
(65)【公開番号】特開2018-78413(P2018-78413A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】君島 和彦
【審査官】 木村 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−154515(JP,A)
【文献】 特表2016−503985(JP,A)
【文献】 特開2002−342077(JP,A)
【文献】 特開2002−209283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
G05B 19/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備機器と監視制御装置とを備える監視制御システムにおいて用いられるテレメータであって、
通信部と、
前記設備機器と接続されるモジュールが取り付けられるベースユニットと、
前記モジュールの入力ワード数又は出力ワード数を示す入出力種別ごとに前記モジュールの用途を記憶する用途テーブルと、
前記モジュールの入出力種別及び用途の組み合わせに対するプログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラムを実行する演算処理部と、
を備え、
前記演算処理部は、
前記ベースユニットに取り付けられた前記モジュールの入出力種別を取得し、
取得した入出力種別と前記用途テーブルとに基づいて、前記ベースユニットに取り付けられた前記モジュールの用途を取得し、
取得した入出力種別に基づいて、前記ベースユニットに取り付けられた前記モジュールとの入出力に用いるメモリ空間を割り当て、
取得した用途と入出力種別との組み合わせに対応する前記プログラムを、前記ベースユニットに取り付けられた前記モジュールごとに前記記憶部から読み出し、
前記モジュールに応じた前記プログラムを実行して、前記ベースユニットに取り付けられた前記モジュールを介して入出力する信号と前記通信部を介して送受信する信号との間における信号処理を行う、
テレメータ。
【請求項2】
前記演算処理部は、
前記モジュールを介して前記設備機器から取得した信号に対して前記信号処理を行い、前記信号処理により得られた信号を前記通信部へ出力し、
前記通信部は、
前記演算処理部から出力された信号を前記監視制御装置へ送信する、
請求項1に記載のテレメータ。
【請求項3】
前記演算処理部は、
前記通信部を介して前記監視制御装置から取得した信号に対して前記信号処理を行い、前記信号処理により得られた信号を前記モジュールへ出力し、
前記モジュールは、
前記演算処理部から出力された信号を前記設備機器へ出力する、
請求項1又は請求項2に記載のテレメータ。
【請求項4】
前記演算処理部は、
前記通信部を介して前記設備機器から取得した信号を前記監視制御装置へ出力する、
請求項1に記載のテレメータ。
【請求項5】
前記ベースユニットに取り付けられた前記モジュールは、順序づけられており、
前記用途テーブルには、前記モジュールの入出力種別と、入出力種別における順位との組み合わせごとに、前記モジュールの用途が記憶され、
前記演算処理部は、
前記モジュールが前記ベースユニットに取り付けられた位置に基づいて、前記ベースユニットに取り付けられた前記モジュールの順位を入出力種別ごとに定め、
取得した入出力種別及び定めた順位の組み合わせと前記用途テーブルとに基づいて、前記ベースユニットに取り付けられた前記モジュールの用途を取得する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のテレメータ。
【請求項6】
前記通信部が複数ある場合、
前記演算処理部は、複数の前記通信部のうち前記監視制御装置との通信が可能な前記通信部を選択し、選択した前記通信部を介して前記監視制御装置と信号の送受信を行う、
請求項1又は請求項2に記載のテレメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、テレメータに関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道処理施設、海水淡水化施設、焼却施設などの監視制御では、遠隔地に設けられたセンサによる測定や設備機器の制御にテレメータが用いられる。テレメータは、センサや設備機器と接続する入出力インターフェイスを備える。入出力インターフェイスの構成はテレメータの用途に応じて決定されるため、入出力インターフェイスの設定を用途ごとに行う必要があり、テレメータの導入時又は交換時の設定が負担になる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−250810号公報
【特許文献2】特開2003−114704号公報
【特許文献3】特開平07−182013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、テレメータの導入時又は交換時における設定の負担を軽減することができるテレメータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のテレメータは、設備機器と監視制御装置とを備える監視制御システムにおいて用いられる。テレメータは、通信部と、ベースユニットと、用途テーブルと、記憶部と、演算処理部と、を持つ。ベースユニットは、記設備機器と接続されるモジュールが取り付けられる。用途テーブルは、モジュールの入力ワード数又は出力ワード数を示す入出力種別ごとにモジュールの用途を記憶する。記憶部は、モジュールの入出力種別及び用途の組み合わせに対するプログラムを記憶する。演算処理部は、プログラムを実行する。演算処理部は、ベースユニットに取り付けられたモジュールの入出力種別を取得する。演算処理部は、取得した入出力種別と用途テーブルとに基づいて、ベースユニットに取り付けられたモジュールの用途を取得する。演算処理部は、取得した入出力種別に基づいて、ベースユニットに取り付けられたモジュールとの入出力に用いるメモリ空間を割り当てる。演算処理部は、取得した用途と入出力種別との組み合わせに対応するプログラムを、ベースユニットに取り付けられたモジュールごとに記憶部から読み出す。演算処理部は、モジュールに応じたプログラムを実行して、ベースユニットに取り付けられたモジュールを介して入出力する信号と通信部を介して送受信する信号との間における信号処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態によるテレメータを用いた監視制御システムの構成例を示すブロック図。
図2】テレメータに接続される複数の設備機器の具体例を示すブロック図。
図3】テレメータの構成例を示すブロック図。
図4】用途テーブルの記憶内容の一例を示す図。
図5】9個の接続スロットを有するベースユニットに入出力モジュールを取り付けた一例を示す図。
図6図5に示した各入出力モジュールに対する演算処理部の入出力メモリ空間の割り当てを示す図。
図7】ベースユニットに取り付けられた入出力モジュールに対するプログラムを演算処理部が取得する処理を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のテレメータを、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態によるテレメータを用いた監視制御システム100の構成例を示すブロック図である。監視制御システム100は、上下水道処理施設、海水淡水化施設、焼却施設などの監視及び制御を行うために用いられるシステムである。本実施形態では、テレメータの適用例として、監視制御システム100が上水道処理施設に用いられる場合について説明する。
【0008】
監視制御システム100は、複数の設備機器1と、テレメータ2−1、2−2、2−3と、コントローラ兼テレメータ4−1と、コントローラ4−2と、監視制御装置5と、サーバ装置6とを備える。テレメータ2−1、2−2、2−3に共通する事項を説明する際には、テレメータ2と記載する。同様に、コントローラ兼テレメータ4−1とコントローラ4−2とに共通する事項を説明する際には、コントローラ4と記載する。
【0009】
設備機器1は、例えば、水位センサ、濁度センサ、流量センサなどのセンサや、ポンプ、弁、圧縮機、開閉ゲートなどの水処理施設に備えられる機器である。設備機器1は、テレメータ2に接続される。テレメータ2は、接続された一つ又は複数の設備機器1を制御する。設備機器1がセンサである場合、テレメータ2は、設備機器1で計測された値を表す計測データを取得し、取得した計測データをコントローラ4へ送信する。設備機器1がポンプ、弁、圧縮機、開閉ゲートなどである場合、テレメータ2は、コントローラ4から受信する制御指示に基づいて、設備機器1を動作させる。テレメータ2は、設備機器1の状態を示す状態データを取得し、取得した状態データをコントローラ4へ送信する。設備機器1の状態は、例えば、設備機器1がポンプである場合、運転中か停止中かの状態、運転中において自動運転か手動運転かの状態などである。設備機器1が開閉ゲートである場合、設備機器の状態は、開閉ゲートの開度である。
【0010】
図1に示す監視制御システム100では、テレメータ2−1は、専用回線3−1を介して、コントローラ兼テレメータ4−1と通信可能に接続されている。テレメータ2−2は、専用回線3−2を介してテレメータ2−3に通信可能に接続されている。テレメータ2−3は、コントローラ4−2と通信可能に直接接続されている。テレメータ2−1、2−2に接続された設備機器1は、監視制御装置5及びサーバ装置6が設置されている位置から離れた遠隔地に設けられている。専用回線3−1、3−2(以下「専用回線3」とも言う。)は、例えば、通信事業者により提供されるサービスを利用して構成されてもよいし、監視及び制御のために敷設された専用の回線を利用して構成されてもよい。テレメータ2−1、2−2は、設備機器1と専用回線3−1、3−2との間における信号又はデータに対する信号処理を行い、設備機器1とコントローラ4との間における通信を可能にする。テレメータ2−3は、専用回線3−2とコントローラ4−2との間における信号又はデータに対する信号処理を行い、設備機器1とコントローラ4−2との間における通信を可能にする。
【0011】
コントローラ兼テレメータ4−1は、専用回線3−1を介してテレメータ2−1と通信可能に接続され、監視制御装置5及びサーバ装置6とネットワークを介して通信可能に接続されている。コントローラ兼テレメータ4−1は、テレメータ2−3の機能を有する。コントローラ兼テレメータ4−1は、専用回線3−1及びテレメータ2−1をして設備機器1と計測データ及び状態データの送受信を行う。コントローラ4−2は、テレメータ2−3と通信可能に直接接続され、監視制御装置5及びサーバ装置6とネットワークを介して通信可能に接続されている。コントローラ4−2は、テレメータ2−2と専用回線3−2とテレメータ2−3とを介して、設備機器1と計測データ及び状態データの送受信を行う。コントローラ兼テレメータ4−1は、データを専用回線3へ送信する信号へ変換する機能と、専用回線3から受信する信号をデータへ変換する機能とを有している点でコントローラ4−2と異なる。テレメータ2−3は、これらの機能を有している。コントローラ4、監視制御装置5及びサーバ装置6を接続するネットワークは、例えば、LANなどの限られた範囲内の機器を通信可能に接続するネットワークである。
【0012】
監視制御装置5は、コントローラ4及びテレメータ2を介して、設備機器1から取得する計測データ及び状態データに基づいて、上水道処理施設において需要に応じた水の供給を行えるように、設備機器1に対する制御指示を生成する。制御指示は、コントローラ4及びテレメータ2を介して設備機器1へ通知される。
【0013】
監視制御装置5は、計測データ及び状態データに基づいて、上水道処理施設における異常の有無を判定する。監視制御装置5は、異常があると判定した場合には、上水道処理施設を運用する運転員や関係者に警報を出力する。
【0014】
サーバ装置6は、設備機器1から取得される計測データ及び状態データと、監視制御装置5により生成される制御指示と、監視制御装置5から出力される警報の有無とを時系列に記憶する。サーバ装置6は、計測データ、状態データ、制御指示及び警報の有無の時系列に基づいて帳票を作成する。
【0015】
図2は、テレメータ2−1、2−2に接続される複数の設備機器1の具体例を示すブロック図である。図2に示す例では、テレメータ2には、配水池に設けられる複数の設備機器1が接続されている。設備機器1は、水位計1a、流量計1b、弁1c、ポンプ1d及び警報器1eである。
【0016】
水位計1aは、配水池における水位を計測し、計測した水位を表す計測データをアナログ信号としてテレメータ2へ出力する。流量計1bは、配水池から供給される水の単位時間あたりの流量を計測し、計測した流量を表す計測データをパルス信号としてテレメータ2へ出力する。弁1cは、開度を示す制御指示をテレメータ2から入力し、制御指示で示された開度により水の流量を制御する。弁1cに対する制御指示は、アナログ信号で与えられる。
【0017】
ポンプ1dは、運転又は停止のいずれかを示す制御指示をディジタル信号としてテレメータ2から入力し、制御指示に応じて動作する。ポンプ1dは、現在の動作状態と故障の有無とを示す状態データをディジタル信号としてテレメータ2へ出力する。警報器1eは、テレメータ2の異常の有無を示す信号を入力する。警報器1eは、入力した信号が異常ありを示す場合、備えられたブザー又はベルにより警報音を発生させる。
【0018】
テレメータ2は、コントローラ4を介して監視制御装置5から受信する制御指示に基づいて弁1c及びポンプ1dを制御することにより、配水池に蓄えられた水を需要家へ供給する。
【0019】
図2に示す例では、テレメータ2は、水位計1aからのアナログ信号、流量計1bからのパルス信号、及び、ポンプ1dからのディジタル信号を入力する必要がある。加えて、テレメータ2は、弁1cへのアナログ信号、及び、ポンプ1dへのディジタル信号を出力する必要がある。このように、テレメータ2は、接続する設備機器1に応じた信号を入出力する機能を有する必要がある。テレメータ2は、信号の種別と入力又は出力との組み合わせに応じた入出力モジュールを備えることにより、設備機器1との接続及び信号の入出力を可能にしている。
【0020】
図3は、テレメータ2の構成例を示すブロック図である。テレメータ2は、ベースユニット21と、一つ又は複数の入出力モジュール22と、CPUモジュール23と、通信モジュール24とを備える。
【0021】
ベースユニット21は、順序づけされた複数の接続スロット211〜21nを有する。図3に示すテレメータ2の構成において、ベースユニット21は、n個の接続スロットを有する。ベースユニット21が有する接続スロット数は、テレメータ2の用途に応じて定められる。接続スロット211には、CPUモジュール23が取り付けられる。接続スロット212には、通信部としての通信モジュール24が取り付けられる。接続スロット213〜21nには、設備機器1と接続するための入出力モジュール22がそれぞれ取り付けられる。図3に示すベースユニット21には、(n−2)個の入出力モジュールを取り付けることができる。接続スロット213〜21nに取り付けられた入出力モジュール22は、設備機器1とCPUモジュール23との間におけるデータの入出力を可能にする。接続スロット211〜21nは、順位が一意に定まるように順序づけがされている。例えば、接続スロット211、接続スロット212、…、接続スロット21nの順に順位が付けられている。
【0022】
入出力モジュール22は、ワード単位でデータをCPUモジュール23と入出力する。本実施形態では、1ワードを16ビットとして説明する。入出力モジュール22には、CPUモジュール23と入出力するデータのワード数と、入力又は出力との組み合わせに基づいて、入出力種別が割り当てられる。入出力種別における「入力」とは、設備機器1から入出力モジュール22への信号の伝達を意味する。入出力種別における「出力」とは、入出力モジュール22から設備機器1への信号の伝達を意味する。入出力種別におけるワード数は、入出力メモリ空間において、入出力モジュール22が占有するワード数である。入出力メモリ空間は、入出力モジュール22とCPUモジュール23との間でデータの入出力を行う際に用いられるメモリ空間である。入出力種別は、例えば、出力1ワード、出力2ワード、出力4ワード、入力1ワード、入力2ワード、入力4ワードなどがある。入出力モジュール22は、設備機器1との間で入出力する信号の電圧値又は電流値の値又は変化で表される値と、CPUモジュール23と入出力するワード単位のディジタル値との間における変換を行う。
【0023】
入出力モジュール22から設備機器1への出力には、例えば、各ワードに含まれるビット単位での5〜24Vの電圧による直流信号出力(ディジタル出力)、ビット単位でのリレー接点出力、各ワードにおけるビット数を電圧値又は電流値の分解能として有するアナログ信号出力などがある。設備機器1から入出力モジュールへの入力には、例えば、各ワードに含まれるビット数分の12〜24V又は100〜120Vを上限とした直流信号入力(ディジタル入力)、1〜5Vの電圧又は4〜20mAの電流の変化を有するアナログ信号入力、5V又は12Vを上限電圧としたパルス信号入力などがある。
【0024】
CPUモジュール23は、演算処理部231と用途テーブル232と記憶部233とを備える。演算処理部231は、ベースユニット21及び入出力モジュール22を介して設備機器1と入出力するデータに対する所定の信号処理を行う。所定の信号処理はプログラムとして定められている。所定の信号処理を定めるプログラムは、記憶部233に記憶されている。演算処理部231は、通信モジュール24を介してコントローラ4から制御指示を取得する。演算処理部231は、制御指示に従って設備機器1を制御する信号を生成する。演算処理部231により生成された信号は、ベースユニット21及び入出力モジュール22を介して設備機器1へ出力される。演算処理部231は、入出力モジュール22及びベースユニット21を介して設備機器1から入力されるデータに対して、入出力種別に応じた信号処理を行う。演算処理部231は、データに対する信号処理により得られた信号を、通信モジュール24を介してコントローラ4へ送信する。
【0025】
用途テーブル232には、入出力モジュール22の入出力種別と、各入出力種別における入出力モジュール22の順位との組み合わせごとに、入出力モジュール22の用途が記憶されている。各入出力種別における入出力モジュール22の順位は、ベースユニット21に接続されている同じ入出力種別を有する入出力モジュール22間における順位である。例えば、ベースユニット21の接続スロット213〜21nそれぞれに同じ入出力種別の入出力モジュール22が取り付けられている場合、(n−2)個の入出力モジュール22の順位は、接続スロット213〜21nの順序に応じて、1〜(n−2)番目になる。
【0026】
図4は、用途テーブル232の記憶内容の一例を示す図である。用途テーブル232は、入出力種別と、1番目、2番目、・・・、m番目それぞれの順位との項目の列を有する。なお、mは(n−2)より小さい整数である。用途テーブル232の行は、入出力種別ごとに存在する。入出力種別と当該入出力種別における順位との組み合わせに対して、用途が記憶されている。図4に示す例では、用途として、リレー出力、アナログ出力、ディジタル出力、パルス入力、ディジタル入力がある。入出力種別において、「Y」は出力を表し、「X」は入力を表す。「1W」、「2W」、「4W」、「8W」は、1ワード、2ワード、4ワード、8ワードをそれぞれ表す。
【0027】
図4に示す例では、入出力種別「出力1ワード」の入出力モジュール22が接続スロット213に接続され、入出力種別「出力1ワード」の入出力モジュール22が接続スロット214に接続されている場合、前者の用途は「リレー出力」であり、後者の用途は「パルス出力」である。図3に戻り、テレメータ2の構成の説明を続ける。
【0028】
記憶部233には、入出力モジュール22の入出力種別及び用途の組み合わせに対応するプログラムであって演算処理部231において実行されるプログラムが記憶されている。演算処理部231がプログラムを実行することにより、入出力モジュール22のデータに対して用途に応じた信号処理が行われる。通信モジュール24は、専用回線3を介した通信を行う。テレメータ2−1、2−2においては、通信モジュール24は、演算処理部231とコントローラ4との間におけるデータの専用回線3を介した伝送を行う。通信モジュール24は、例えば、イーサネット(登録商標)の規格に準拠した通信、他の公知の通信規格に準拠した通信、あるいは独自の通信規格に従った通信を行う。通信モジュール24は、モデムやルータとして実装されてもよい。なお、演算処理部231は、予め設定されたIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイなどを用いて、ルータの先に存在する装置と通信を行うようにしてもよい。
【0029】
演算処理部231が入出力モジュール22のデータに対して行う用途に応じた信号処理は、例えば、用途が「ディジタル出力」である場合、コントローラ4から取得される制御指示を設備機器1が取得できるように、一定時間延ばしたディジタル信号として出力する処理である。ディジタル信号を一定時間延ばす場合の時間は、入出力モジュール22に備えられたスイッチで設定できるようにしてもよい。ディジタル信号を一定時間延ばす処理に替えて、演算処理部231は、次の制御指示が取得されるまで、ディジタル信号を連続して出力してもよい。
【0030】
用途が「ディジタル入力」である場合において2ワードのBCD(Binary-Coded decimal)データを読み込む際に、演算処理部231は、2ワードの同時性を確保するために、該当する2ワードを複数回読み出し、読み出した2ワードが一致したときに取得する信号処理を行う。用途が「パルス入力」である場合、演算処理部231は、パルス信号をカウントして、積算値を取得する信号処理を行う。積算開始及び積算値の初期化は、監視制御装置5又はコントローラ4から指示されたタイミングで行ってもよいし、周期的に行ってもよい。
【0031】
また、用途が「リレー出力」である場合、演算処理部231は、自装置における異常の有無を定期的に判定し、異常があるときに警報器を動作させる信号処理を行う。演算処理部231は、用途が「リレー出力」の入出力モジュール22の有無により、異常有無の判定の実施を選択できるようにしてもよい。また、用途が「ディジタル入力」又は「アナログ入力」である場合、演算処理部231は、入出力モジュール22から取得するデータを加工せずに、通信モジュール24を介してコントローラ4へ送信してもよい。
【0032】
また、用途が「アナログ出力」の入出力モジュール22と、用途が「ディジタル出力」の入出力モジュール22とがベースユニット21に取り付けられている場合、演算処理部231は、アナログ出力が有効であることを示すストローブ信号をディジタル出力の入出力モジュール22から出力させてもよい。
【0033】
図5は、9個の接続スロット211〜219を有するベースユニット21に、CPUモジュール23、通信モジュール24及び入出力モジュール22a〜22gを取り付けた一例を示す図である。接続スロット211には、CPUモジュール23が取り付けられている。接続スロット212には、通信モジュール24が取り付けられている。接続スロット213には、用途が「リレー出力(RO16)」であり入出力種別が「出力1ワード(Y1W)」である入出力モジュール22aが取り付けられている。接続スロット214には、用途が「ディジタル入力(DI32)」であり入出力種別が「入力2ワード(X2W)」である入出力モジュール22bが取り付けられている。接続スロット215には、用途が「パルス入力(DI16)」であり入出力種別が「入力1ワード(X1W)」である入出力モジュール22cが取り付けられている。接続スロット216には、用途が「アナログ入力(AI8)」であり入出力種別が「入力1ワード(X1W)」である入出力モジュール22dが取り付けられている。接続スロット217には、用途が「パルス出力(DO16)」であり入出力種別が「出力1ワード(Y1W)」である入出力モジュール22eが取り付けられている。接続スロット218には、用途が「ディジタル出力(DO32)」であり入出力種別が「出力4ワード(Y4W)」である入出力モジュール22fが取り付けられている。接続スロット219には、用途が「アナログ出力(AO4)」であり入出力種別が「出力2ワード(Y2W)」である入出力モジュール22gが取り付けられている。
【0034】
図5に示したように入出力モジュール22a〜22gがベースユニット21に取り付けられている場合、図2に示した水位計1a、流量計1b、弁1c、ポンプ1d及び警報器1eとの接続は、例えば次のようになる。水位計1aは入出力モジュール22dに接続され、水位計1aから出力されるアナログ信号を入出力モジュール22dへ入力される。流量計1bは入出力モジュール22cに接続され、流量計1bから出力されるパルス信号は入出力モジュール22cへ入力される。弁1cは入出力モジュール22gに接続され、入出力モジュール22gから出力されるアナログ信号に応じて弁1cの開度が制御される。ポンプ1dは入出力モジュール22b、22fに接続され、入出力モジュール22gから出力されるディジタル信号に基づいてポンプ1dは運転と停止との切り替えを行う。ポンプ1dが運転中であるか否かを示す情報と、ポンプ1dに故障があるか否かを示す情報とを示すディジタル信号がポンプ1dから入出力モジュール22bへ入力される。警報器1eは入出力モジュール22aに接続され、入出力モジュール22aから出力されるリレー接点出力が警報器1eに入力される。警報器1eは、リレー接点出力が途絶した場合に警報音を出力する。
【0035】
図6は、図5に示した各入出力モジュール22a〜22gに対する演算処理部231の入出力メモリ空間の割り当てを示す図である。同図において、縦方向がワード・アドレス(W000,W001,…,W018,…)を示し、横方向が各ワードにおけるビット・アドレス(0,1,2,…,C,D,E,F)を示している。ベースユニット21における接続スロット213〜219の順序に従って、入出力モジュール22a〜22gに対して順に入出力メモリ空間が割り当てられている。
【0036】
例えば、入出力モジュール22bに対して、入出力メモリ空間においてワード・アドレスW001〜W002の2ワードが割り当てられている。演算処理部231は、ワード・アドレスW001〜W002の入出力メモリ空間からデータを読み出すことにより、入出力モジュール22bが設備機器1から受信したデータを取得することができる。入出力モジュール22eに対しては、入出力メモリ空間においてワード・アドレスW012の1ワードが割り当てられている。演算処理部231は、ワード・アドレスW012の入出力メモリ空間に対してデータを書き込むことにより、入出力モジュール22e介して設備機器1へデータを送信することができる。
【0037】
ここで、設備機器1が接続されないテレメータ2−3について説明する。テレメータ2−3も、図3を用いて説明した構成を備える。テレメータ2−3における演算処理部231は、通信モジュール24によりテレメータ2−2から受信したデータをコントローラ4へ出力する。すなわち、設備機器1において得られた計測データ及び状態データは、テレメータ2−2及び専用回線3−2を経由してテレメータ2−3で受信され、コントローラ4へ出力される。また、演算処理部231は、コントローラ4から取得した制御指示を通信モジュール24へ出力し、通信モジュール24に制御指示をテレメータ2−3へ送信させる。
【0038】
図7は、ベースユニット21に取り付けられた入出力モジュール22に対するプログラムを演算処理部231が取得する処理を示したフローチャートである。プログラムの取得処理を開始すると、演算処理部231は、変数iに1を代入する(ステップS101)。演算処理部231は、i番目の接続スロット21iに入出力モジュール22が取り付けられているか否かを判定する(ステップS102)。
【0039】
接続スロット21iに入出力モジュール22が取り付けられていない場合(ステップS102、NO)、演算処理部231は、処理をステップS109へ進める。接続スロット21iに入出力モジュール22が取り付けられている場合(ステップS102、YES)、演算処理部231は、接続スロット21iに取り付けられている入出力モジュール22から入出力種別を取得する(ステップS103)。演算処理部231は、取得した入出力種別に含まれるワード数分の入出力メモリ空間を重複なくW000から順に割り当てる(ステップS104)。
【0040】
演算処理部231は、接続スロット21iに接続されている入出力モジュール22の順位を、取得した入出力種別に基づいて取得する(ステップS105)。具体的には、演算処理部231は、プログラムの取得処理において、同じ入出力種別を既に取得したか否かを判定する。同じ入出力種別を取得していない場合には、接続スロット21iに接続されている入出力モジュール22の順位は、1番目になる。同じ入出力種別を既にm回取得している場合には、接続スロット21iに接続されている入出力モジュール22の順位は、(m+1)番目になる。
【0041】
演算処理部231は、ステップS103で取得した入出力種別とステップS105で取得した順位との組み合わせに対応する用途を、用途テーブル232から取得する(ステップS106)。演算処理部231は、ステップS106で取得した用途に対応するプログラムを記憶部233から読み出して取得する(ステップS107)。
【0042】
演算処理部231は、接続スロット211〜21nの全てに対してステップS102の判定処理を行ったか否かを判定する(ステップS108)。接続スロット211〜21nの全てに対して判定処理を行っていない場合(ステップS108、NO)、演算処理部231は、変数iの値を1増加させ(ステップS109)、処理をステップS102へ戻す。接続スロット211〜21nの全てに対して判定処理を行っていた場合(ステップS108、YES)、演算処理部231は、プログラムの取得処理を終了させる。
【0043】
図5に示した構成において、図7に示したプログラムの取得処理が行われると、演算処理部231は、以下のようにして、入出力モジュール22a〜22gそれぞれに対するプログラムを取得する。
【0044】
プログラムの取得処理の1回目のループにおいて、演算処理部231は、接続スロット213に取り付けられている入出力モジュール22aから入出力種別「Y1W」を取得する。入出力種別「Y1W」の取得はプログラムの取得処理において1回目であるので、演算処理部231は、入出力モジュール22aの順位を「1番目」とする。演算処理部231は、入出力種別「Y1W」と順位「1番目」との組み合わせに対応する用途「リレー出力」を用途テーブル232から取得する。演算処理部231は、用途「リレー出力」に対応するプログラムを記憶部233から読み出して取得する。同様にして、演算処理部231は、入出力モジュール22b〜22dに対応するプログラムを記憶部233から読み出して取得する。
【0045】
プログラムの取得処理の5回目のループにおいて、演算処理部231は、接続スロット217に取り付けられている入出力モジュール22eから入出力種別「Y1W」を取得する。入出力種別「Y1W」の取得はプログラムの取得処理において2回目であるので、演算処理部231は、入出力モジュール22eの順位を「2番目」とする。演算処理部231は、入出力種別「Y1W」と順位「2番目」との組み合わせに対応する用途「パルス出力」を用途テーブル232から取得する。演算処理部231は、用途「パルス出力」に対応するプログラムを記憶部233から読み出して取得する。同様にして、演算処理部231は、入出力モジュール22f、22gに対応するプログラムを記憶部233から読み出して取得する。
【0046】
演算処理部231は、プログラムの取得処理を行うことにより、ベースユニット21に取り付けられた入出力モジュール22に割り当てるべきワード数を取得して、各入出力モジュール22に対して入出力メモリ空間を割り当てることができる。演算処理部231は、入出力種別及び順位の組み合わせと用途テーブル232とに基づいて、各入出力モジュール22の用途を取得することができ、入出力モジュール22の用途に応じたプログラムを記憶部233から取得することができる。
【0047】
プログラムの取得処理によって、テレメータ2においてベースユニット21に取り付けられた各入出力モジュール22に対する入出力メモリ空間の割り当てを、取り付けられている入出力モジュール22を人が確認しながら行う必要がなくなる。人手を介さないことにより、入出力メモリ空間の割り当ての設定ミスが発生することを防ぐことができる。入出力メモリ空間を割り当てる作業が不要となることにより、テレメータの導入時又は交換時における設定の負担を軽減することができる。
【0048】
また、プログラムの取得処理によって、取り付けられる入出力モジュール22に応じたデータの信号処理の設定をベースユニット21に取り付けられた入出力モジュール22を人が確認しながら行う必要がなくなる。人手を介さないことにより、信号処理の設定における誤りの発生を防ぐとともに、テレメータの導入時又は交換時における設定の負担を軽減することができる。
【0049】
なお、CPUモジュール23が通信機能と通信ポートとを備える場合、通信ポートと通信モジュール24とのうち、演算処理部231は、通信が可能な一方を使用して、コントローラ4と通信してもよい。また、ベースユニット21に複数の通信モジュール24が取り付けられている場合、演算処理部231は、いずれか一つの通信モジュール24を選択して使用してもよいし、各通信モジュール24に対する順位に基づいていずれか一つの通信モジュール24を選択して使用してもよい。
【0050】
また、接続スロット211にCPUモジュール23を取り付け、接続スロット212に通信モジュール24を取り付けた構成例を説明したが、CPUモジュール23及び通信モジュール24は、接続スロット211〜21nのいずれに取り付けられてもよい。
【0051】
また、用途テーブル232は、入出力種別と各入出力種別における入出力モジュール22の順位との組み合わせごとに入出力モジュール22の用途を記憶することに代えて、入出力種別ごとに入出力モジュール22の用途を記憶してもよい。
【0052】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ベースユニット21に取り付けられた入出力モジュール22の入出力種別を取得し、入出力種別に基づいて入出力モジュール22にメモリ空間を割り当て、入出力種別に応じたプログラムを実行して入出力モジュール22に割り当てたメモリ空間を介した設備機器1との信号の入出力を行う演算処理部231を持つことにより、テレメータの導入時又は交換時における設定の負担を軽減することができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1…設備機器、1a…水位計、1b…流量計、1c…弁、1d…ポンプ、1e…警報器、2,2−1,2−2,2−3…テレメータ、3,3−1,3−2…専用回線、4,4−2…コントローラ、4−1…コントローラ兼テレメータ、5…監視制御装置、6…サーバ装置、21…ベースユニット、22,22a,22b,22c,22d,22e,22f,22g…入出力モジュール、23…CPUモジュール、24…通信モジュール(通信部)、100…監視制御システム、211,212,213,214,215,216,217,218,219,21n…接続スロット、231…演算処理部、232…用途テーブル、233…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7