(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載されたガイドワイヤでは、ガイドワイヤが閉塞病変に到達し押し込まれた際に、ガイドワイヤを所望の位置で湾曲させることが困難である。この点において、特許文献1に記載されたガイドワイヤには改善の余地がある。
【0009】
また、例えばコイルとワイヤ本体とが固着部材により互いに固着されることで湾曲部が形成された場合には、湾曲部が設けられた部位の径が比較的大きくなる。そのため、押し込み力があまり必要とされないようなカテーテル内や生体内においては、通過性が低下するおそれがある。
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、閉塞病変に到達し押し込まれた際に所望の位置で湾曲し、湾曲部位が先行する形状で閉塞病変を通過することで、押し込み力が必要とされる閉塞病変において血管穿孔が生ずることを抑えることができるガイドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、本発明によれば、可撓性を有する長尺のワイヤ本体と、素線が螺旋状に巻回されて形成されたコイルであって前記ワイヤ本体の先端部の外周に配置され前記先端部を覆うコイルと、を備え、前記コイルは、前記先端部における先端側に配置されたコイル先端部と、前記コイル先端部よりも基端側に配置されたコイル基端部と、前記コイル先端部と前記コイル基端部との間に配置され、前記コイル先端部および前記コイル基端部の前記素線の線径よりも細い線径の前記素線を有するコイル中間部と、を有することを特徴とするガイドワイヤにより解決される。
【0012】
前記構成によれば、素線が螺旋状に巻回されて形成されたコイルは、可撓性を有する長尺のワイヤ本体の先端部の外周に配置され、ワイヤ本体の先端部を覆っている。コイルは、ワイヤ本体の先端部における先端側に配置されたコイル先端部と、コイル先端部よりも基端側に配置されたコイル基端部と、コイル先端部とコイル基端部との間に配置されたコイル中間部と、を有する。そして、コイル中間部の素線の線径は、コイル先端部およびコイル基端部の素線の線径よりも細い。そのため、ガイドワイヤが閉塞病変に到達し押し込まれたときに、コイル中間部がガイドワイヤの湾曲の起点となる。その結果、ガイドワイヤが閉塞病変に到達し押し込まれた際に、ガイドワイヤを所望の位置で湾曲させることが可能になる。
【0013】
コイル中間部において湾曲したガイドワイヤは、湾曲部位が先行する形状で閉塞病変を通過する。そのため、ガイドワイヤの湾曲部位が血管壁に到達した場合であっても、ガイドワイヤから血管壁に伝わる押し込み力は分散される。これにより、血管穿孔が生ずることが抑えられる。また、ガイドワイヤが閉塞病変に到達し押し込まれたときに、コイル中間部が湾曲の起点となるため、押し込み力があまり必要とされないようなカテーテル内や生体内においてガイドワイヤの通過性が低下することが抑えられる。
【0014】
好ましくは、前記ワイヤ本体は、外径が他の部分よりも小さい小径部を有し、前記コイル中間部は、前記ワイヤ本体の長手方向の軸に沿う方向において前記小径部と重なる位置に設けられたことを特徴とする。
【0015】
前記構成によれば、ワイヤ本体は、外径が他の部分よりも小さい小径部を有する。また、コイル中間部は、ワイヤ本体の長手方向の軸に沿う方向において小径部と重なる位置に設けられている。すなわち、ガイドワイヤが押し込まれたときに応力が集中する小径部と重なる位置にコイル中間部が設けられている。そのため、ガイドワイヤが閉塞病変に到達し押し込まれたときに、コイル中間部がガイドワイヤの湾曲の起点となりやすい。すなわち、ガイドワイヤは、コイル中間部において湾曲しやすい。
【0016】
好ましくは、前記ワイヤ本体は、外径が先端方向に向かって漸減したテーパ部であって前記小径部よりも基端側に配置され前記小径部に接続されたテーパ部を有し、前記コイル中間部は、前記軸に沿う方向において前記テーパ部が前記小径部に接続された部分と重なる位置に設けられたことを特徴とする。
【0017】
前記構成によれば、ワイヤ本体は、外径が先端方向に向かって漸減したテーパ部を有する。テーパ部は、小径部よりも基端側に配置され、小径部に接続されている。つまり、テーパ部は、先端側において小径部に接続されている。そして、コイル中間部は、ワイヤ本体の軸に沿う方向においてテーパ部が小径部に接続された部分と重なる位置に設けられている。すなわち、ガイドワイヤが押し込まれたときに応力が集中するテーパ部と小径部との接続部と重なる位置にコイル中間部が設けられている。そのため、ガイドワイヤが閉塞病変に到達し押し込まれたときに、コイル中間部がガイドワイヤの湾曲の起点となりやすい。すなわち、ガイドワイヤは、テーパ部と小径部との接続部と重なる位置に設けられたコイル中間部において湾曲しやすい。
【0018】
好ましくは、前記ワイヤ本体は、平板状に形成された平板部であって前記小径部よりも先端側に配置され前記小径部に接続された平板部を有し、前記コイル中間部は、前記軸に沿う方向において前記小径部が前記平板部に接続された部分と重なる位置に設けられたことを特徴とする。
【0019】
前記構成によれば、ワイヤ本体は、平板状に形成された平板部を有する。平板部は、小径部よりも先端側に配置され、小径部に接続されている。つまり、平板部は、基端側において小径部に接続されている。そして、コイル中間部は、ワイヤ本体の軸に沿う方向において小径部が平板部に接続された部分と重なる位置に設けられている。すなわち、ガイドワイヤが押し込まれたときに応力が集中する小径部と平板部との接続部と重なる位置にコイル中間部が設けられている。そのため、ガイドワイヤが閉塞病変に到達し押し込まれたときに、コイル中間部がガイドワイヤの湾曲の起点となりやすい。すなわち、ガイドワイヤは、小径部と平板部との接続部と重なる位置に設けられたコイル中間部において湾曲しやすい。また、平板部が小径部よりも先端側に配置されているため、リシェイプを容易かつ確実に行うことが可能になり、ガイドワイヤがカテーテル内や生体内に挿入される際の操作性が格段に向上する。
【0020】
好ましくは、前記ワイヤ本体は、外径が他の部分よりも小さい小径部と、外径が先端方向に向かって漸減したテーパ部であって前記小径部よりも基端側に配置されたテーパ部と、を有し、前記コイル中間部は、前記ワイヤ本体の長手方向の軸に沿う方向において前記テーパ部の基端部と重なる位置に設けられたことを特徴とする。
【0021】
前記構成によれば、コイル中間部は、ワイヤ本体の長手方向の軸に沿う方向においてテーパ部の基端部と重なる位置に設けられている。小径部よりも基端側に配置されたテーパ部の基端部と重なる位置にコイル中間部が設けられているため、ガイドワイヤは、ガイドワイヤが押し込まれたときに応力が集中する部分で湾曲しやすい。テーパ部の基端部の外径は、小径部の外径およびテーパ部の先端部の外径よりも大きい。そのため、血管穿孔が生ずることが抑えられるとともに、押し込み力がガイドワイヤの先端に確実に伝達される。
【0022】
好ましくは、前記コイル先端部の外径は、前記コイル基端部の外径よりも小さいことを特徴とする。
【0023】
前記構成によれば、コイル先端部の外径がコイル基端部の外径よりも小さいため、閉塞病変の通過性が向上する。また、ワイヤ本体が小径部やテーパ部を有する場合であっても、コイルの内面とワイヤ本体との間の空間(クリアランス)が一定に確保される。そのため、押し込み力がガイドワイヤの先端に確実に伝達されるとともに、ガイドワイヤが閉塞病変に到達し押し込まれた際に、ガイドワイヤを所望の位置で湾曲させることが可能になる。
【0024】
好ましくは、前記コイル中間部の外径は、前記コイル基端部の外径および前記コイル先端部の外径と同じであることを特徴とする。
【0025】
前記構成によれば、コイル中間部の外径がコイル基端部の外径およびコイル先端部の外径と同じであるため、滑らかなコイル表面が実現される。これにより、コイルが例えば血管壁やカテーテルなどに引っ掛かることが抑えられる。
【0026】
好ましくは、前記コイル中間部の内径は、前記コイル基端部の内径および前記コイル先端部の内径と同じであることを特徴とする。
【0027】
前記構成によれば、コイル中間部の内径がコイル基端部の内径およびコイル先端部の内径と同じであるため、コイルの内面とワイヤ本体との間の空間(クリアランス)が略一定に確保されるとともに、コイル中間部の外径がコイル基端部の外径およびコイル先端部の外径よりも細くなる。そのため、押し込み力がガイドワイヤの先端に確実に伝達されるとともに、ガイドワイヤが閉塞病変に到達し押し込まれた際に、ガイドワイヤを所望の位置で湾曲させやすくすることが可能になる。
【0028】
好ましくは、隣り合う前記素線の横断面における中心同士を結ぶ線は、前記軸と平行であることを特徴とする。
【0029】
前記構成によれば、隣り合う素線の横断面における中心同士を結ぶ線がワイヤ本体の軸と平行であるため、隣り合う素線同士が乗り上げることが抑えられる。これにより、押し込み力がガイドワイヤの先端に確実に伝達される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、閉塞病変に到達し押し込まれた際に所望の位置で湾曲し、湾曲部位が先行する形状で閉塞病変を通過することで、押し込み力が必要とされる閉塞病変において血管穿孔が生ずることを抑えることができるガイドワイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0033】
図1は、本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤを表す断面図である。
図2は、本実施形態に係るガイドワイヤの先端部を拡大して表した拡大図である。
なお、説明の便宜上、
図1および
図2中の右側を「基端」、左側を「先端」という。また、
図1および
図2では、理解を容易にするため、ガイドワイヤの長さ方向を短縮し、ガイドワイヤの太さ方向を誇張して模式的に図示している。つまり、長さ方向と太さ方向の比率は、実際とは異なる。また、
図2では、樹脂被覆層が省略されている。これらは、
図4、
図5、および
図7〜
図9においても同様である。
【0034】
図1に示すガイドワイヤ1は、カテーテル(内視鏡も含む)の管腔に挿入して用いられるカテーテル用ガイドワイヤであって、ワイヤ本体10と、ワイヤ本体10の先端部に設置された螺旋状のコイル4と、を備える。ガイドワイヤ1は、血管の屈曲部や狭窄部における通過性の向上や、血管の分岐部における血管選択性の向上を目的として、冠動脈貫通用カテーテルなどと併用されてもよい。ワイヤ本体10は、可撓性を有する長尺のワイヤであり、先端側に配置された第1ワイヤ2と、第1ワイヤ2の基端側に配置された第2ワイヤ3と、を有する。第1ワイヤ2および第2ワイヤ3は、好ましくは溶接により互いに接合(連結)されている。ガイドワイヤ1の全長は、特に限定されないが、好ましくは例えば約200〜5000mm程度である。
【0035】
第1ワイヤ2は、柔軟性または弾性を有する線材で形成されている。第1ワイヤ2の長さは、特に限定されないが、好ましくは例えば約20〜1000mm程度である。
【0036】
本実施形態では、第1ワイヤ2は、第1径一定部(大径部)21と、第2径一定部(小径部)23と、第1テーパ部(テーパ部)22と、第2テーパ部24と、第3径一定部25と、を有する。第1径一定部21は、本発明の大径部に相当する。第2径一定部23は、本発明の小径部に相当する。第1テーパ部22は、本発明のテーパ部に相当する。第1径一定部21の外径(直径)は、ほぼ一定である。第2径一定部23は、第1径一定部21よりも先端側に位置している。第2径一定部23の外径(直径)は、第1径一定部21の外径よりも小さく、ほぼ一定である。第1テーパ部22は、第1径一定部21と第2径一定部23との間に位置している。第1テーパ部22の外径(直径)は、先端方向に向かって漸減している。第3径一定部25は、第1径一定部21よりも基端側に位置している。第3径一定部25の外径(直径)は、第1径一定部21の外径よりも大きく、ほぼ一定である。第2テーパ部24は、第1径一定部21と第3径一定部25との間に位置している。第2テーパ部24の外径(直径)は、先端方向に向かって漸減している。第3径一定部25、第2テーパ部24、第1径一定部21、第1テーパ部22、および第2径一定部23は、第1ワイヤ2の基端側から先端側に向かってこの順に配置されている。すなわち、第1テーパ部22は、第2径一定部23よりも基端側に配置され、第2径一定部23に接続されている。
【0037】
第1テーパ部22を介して第2径一定部23と第1径一定部21とが形成され、第2テーパ部24を介して第1径一定部21と第3径一定部25とが形成されていることにより、第1ワイヤ2の剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)を先端方向に向かって徐々に減少させることができる。その結果、ガイドワイヤ1は、先端部において良好な狭窄部の通過性および柔軟性を得て、血管等への追従性、安全性を向上させると共に、折れ曲がり等を防止することができる。
【0038】
第1テーパ部22および第2テーパ部24のテーパ角度(外径の減少率)は、ワイヤ本体10の長手方向に沿って一定でもよく、長手方向に沿って変化してもよい。例えば、テーパ角度が比較的大きい箇所と、テーパ角度が比較的小さい箇所と、が複数回交互に繰り返して形成されていてもよい。
【0039】
第1ワイヤ2の基端側の部分(すなわち第3径一定部25)の外径は、第1ワイヤ2の基端まで一定となっている。第1径一定部21の長さは、後述するコイル基端部42の長さよりも短いことが好ましい。ガイドワイヤ1の先端と、第1テーパ部22の基端部(第1テーパ部22と第1径一定部21との境界部)と、の間の長さは、特に限定されないが、5〜200mm程度であることが好ましく、10〜150mm程度であることがより好ましい。
【0040】
第1ワイヤ2の基端(第3径一定部25の基端)には、第2ワイヤ3の先端が好ましくは溶接により接続(連結)されている。つまり、第2ワイヤ3は、接合部(接合面)6において第1ワイヤ2に接続(連結)されている。第2ワイヤ3は、柔軟性または弾性を有する線材で形成されている。
【0041】
第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との溶接方法としては、特に限定されず、例えば、摩擦圧接、レーザを用いたスポット溶接、バットシーム溶接やアプセット溶接等の突き合わせ抵抗溶接などが挙げられる。これの中において、突き合わせ抵抗溶接は、比較的簡単で高い接合強度が得られることから特に好ましい。
【0042】
本実施形態では、第2ワイヤ3の外径(直径)は、長手方向に沿ってほぼ一定である。
【0043】
第2ワイヤ3の外径は、第1ワイヤ2の第3径一定部25の外径とほぼ等しい。これにより、第1ワイヤ2の第3径一定部25の基端と、第2ワイヤ3の先端と、が接合された際、接合部6の外周に第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との間の外径差による段差は、ほとんど生じない。これにより、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との接合部6において、連続した面が構成される。
【0044】
第2ワイヤ3は、第1ワイヤ2の第1径一定部21の外径よりも大きい外径を有する。第2ワイヤ3の外径は、例えば、第1ワイヤ2の第1径一定部21の外径の1.02〜5倍程度である。
【0045】
第2ワイヤ3の長さは、特に限定されないが、20〜4800mm程度であることが好ましく、1400〜3000mm程度であることがより好ましい。
【0046】
第1ワイヤ2の平均外径は、第2ワイヤ3の平均外径よりも小さい。これにより、ガイドワイヤ1は、先端側に配置された第1ワイヤ2上では柔軟性に富んだ性質を有し、基端側に配置された第2ワイヤ3上では比較的剛性が高い性質を有する。そのため、ガイドワイヤ1は、先端部の柔軟性と、優れた操作性(押し込み性、トルク伝達性等)と、を両立することができる。
【0047】
第1ワイヤ2および第2ワイヤ3の構成材料としては、特に限定されず、それぞれ、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等SUSの全品種)、ピアノ線、コバルト系合金、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む)などの各種金属材料が挙げられる。そのなかでも特に、第1ワイヤ2および第2ワイヤ3の構成材料は、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む)であることが好ましく、より好ましくは超弾性合金である。
【0048】
超弾性合金は、比較的柔軟であるとともに、復元性を有し、曲がり癖が付き難い性質を有する。そのため、第1ワイヤ2の材料として超弾性合金が使用されることにより、ガイドワイヤ1は、先端側の部分に十分な柔軟性と曲げに対する復元性を得ることができる。また、複雑に湾曲・屈曲する血管等に対する追従性が向上し、ガイドワイヤ1は、より優れた操作性を得ることができる。第1ワイヤ2が湾曲・屈曲変形を繰り返しても、第1ワイヤ2に備わる復元性により曲がり癖が付かないので、ガイドワイヤ1の使用中に第1ワイヤ2に曲がり癖が付くことによる操作性の低下が防止される。
【0049】
擬弾性合金には、引張りによる応力−ひずみ曲線のいずれの形状も含まれ、As、Af、Ms、Mf等の変態点が顕著に測定できるものも、できないものも含まれる。また、擬弾性合金には、応力により大きく変形(歪)し、応力の除去により元の形状にほぼ戻るものは全て含まれる。
【0050】
超弾性合金の好ましい組成としては、49〜52原子%NiのNi−Ti合金等のNi−Ti系合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(Xは、Be、Si、Sn、Al、Gaのうちの少なくとも1種)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等が挙げられる。このなかでも特に好ましいものは、上記のNi−Ti系合金である。なお、Ni−Ti系合金に代表される超弾性合金は、後述する樹脂被覆層8、9との密着性にも優れている。
【0051】
コバルト系合金は、ワイヤとして使用されたときに高い弾性率を有し、かつ適度な弾性限度を有している。このため、コバルト系合金で構成されたワイヤは、トルク伝達性に優れ、座屈等の問題が極めて生じ難い。コバルト系合金は、構成元素としてCoを含むものであれば、いかなるものであってもよいが、Coを主成分として含むもの(Co基合金:合金を構成する元素中で、Coの含有率が重量比で最も多い合金)が好ましく、Co−Ni−Cr系合金であることがより好ましい。このような組成の合金が用いられることにより、前述した効果がさらに顕著なものとなる。また、このような組成の合金は、高い弾性係数を有し、かつ高弾性限度としても冷間成形可能で、高弾性限度を有する。これにより、ワイヤの座屈の発生が十分に防止されつつ、ワイヤの小径化が可能である。また、ワイヤは、所定部位の挿入に対して十分な柔軟性と剛性とを備えることができる。
【0052】
Co−Ni−Cr系合金は、例えば、28〜50wt%Co−10〜30wt%Ni−10〜30wt%Cr−残部Feの組成からなる合金や、その一部が他の元素(置換元素)で置換された合金等であることが好ましい。置換元素の含有は、その種類に応じた固有の効果を発揮する。例えば、置換元素として、Ti、Nb、Ta、Be、Moから選択される少なくとも1種が含まれることにより、第2ワイヤ3の強度のさらなる向上等が図られる。なお、Co、Ni、Cr以外の元素が含まれる場合、置換元素全体の含有量は30wt%以下であることが好ましい。
【0053】
また、Co、Ni、Crの一部は、他の元素で置換されてもよい。例えば、Niの一部がMnで置換されてもよい。これにより、例えば、加工性のさらなる改善等が図られる。また、Crの一部がMoおよび/またはWで置換されてもよい。これにより、弾性限度のさらなる改善等が図られる。コバルト系合金は、Co−Ni−Cr系合金の中でも、Moを含む、Co−Ni−Cr−Mo系合金であることが特に好ましい。
【0054】
Co−Ni−Cr系合金の具体的な組成としては、例えば、(1)40wt%Co−22wt%Ni−25wt%Cr−2wt%Mn−0.17wt%C−0.03wt%Be−残部Fe、(2)40wt%Co−15wt%Ni−20wt%Cr−2wt%Mn−7wt%Mo−0.15wt%C−0.03wt%Be−残部Fe、(3)42wt%Co−13wt%Ni−20wt%Cr−1.6wt%Mn−2wt%Mo−2.8wt%W−0.2wt%C−0.04wt%Be−残部Fe、(4)45wt%Co−21wt%Ni−18wt%Cr−1wt%Mn−4wt%Mo−1wt%Ti−0.02wt%C−0.3wt%Be−残部Fe、(5)34wt%Co−21wt%Ni−14wt%Cr−0.5wt%Mn−6wt%Mo−2.5wt%Nb−0.5wt%Ta−残部Fe等が挙げられる。本発明でいうCo−Ni−Cr系合金とは、これらの合金を包含する概念である。
【0055】
第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とは、互いに異なる材料で構成されていてもよく、同一または同種の金属材料で構成されていてもよい。ここで、「同種」とは、合金において主とする金属材料が等しいことをいう。これにより、接合部6の接合強度がより高くなり、接合部6の外径が小さくても、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との離脱等が生ずることが抑えられ、優れたトルク伝達性等が発揮される。
【0056】
この場合、第1ワイヤ2および第2ワイヤ3は、それぞれ、前述した超弾性合金で構成されていることが好ましく、その中でもNi−Ti系合金で構成されていることがより好ましい。これにより、ワイヤ本体10の先端側において優れた柔軟性が確保されるとともに、ワイヤ本体10の基端側の部分では、十分な剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)が確保される。その結果、ガイドワイヤ1は、優れた押し込み性やトルク伝達性を得て良好な操作性を確保しつつ、先端側においては良好な柔軟性、復元性を得て血管、胆管、膵管への追従性、安全性を向上させることができる。
【0057】
第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とが互いに異なる材料で構成される場合、第1ワイヤ2は、前述した超弾性合金で構成されていることが好ましく、特にNi−Ti系合金で構成されていることが好ましい。第2ワイヤ3は、前述したステンレス鋼で構成されていることが好ましい。
【0058】
また、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とがそれぞれ、金属組成や物理的特性の異なる擬弾性合金同士、あるいはステンレス鋼同士で構成されていてもよい。
【0059】
なお、上記では、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とが接合された態様を例に挙げて説明したが、ワイヤ本体10は、接合部のない一部材のワイヤであってもよい。その場合のワイヤの構成材料としては、前述と同様の材料が挙げられる。ワイヤの構成材料は、特にステンレス鋼、コバルト系合金、擬弾性合金であることが好ましい。
【0060】
ワイヤ本体10の先端部の外周には、ワイヤ本体10の先端部を覆うようにコイル4が配置されている。コイル4の設置により、カテーテルの内壁や生体表面に対するワイヤ本体10の表面の接触面積が少なくなる。これにより、摺動抵抗が低減される。その結果、ガイドワイヤ1の操作性がより向上する。
【0061】
コイル4は、先端側に位置するコイル先端部41と、コイル先端部41よりも基端側に配置されたコイル基端部42と、コイル先端部41とコイル基端部42との間に配置されたコイル中間部43と、を有する。
【0062】
コイル先端部41は、素線(細線)411が螺旋状に巻回された部材であり、第1ワイヤ2の少なくとも先端側の部分を覆うように設置されている。
図1および
図2に表したガイドワイヤ1では、第1ワイヤ2の先端側の部分は、コイル先端部41の内側のほぼ中心部に挿通されている。また、第1ワイヤ2の先端側の部分は、コイル先端部41の内面と非接触で挿通されている。すなわち、コイル先端部41は、第1ワイヤ2から離れた状態(第1ワイヤ2と非接触の状態)で第1ワイヤ2の少なくとも先端側の部分を覆っている。
【0063】
コイル基端部42は、素線(細線)421が螺旋状に巻回された部材であり、コイル先端部41よりも基端側の部分であって第1ワイヤ2の先端側の部分を覆うように設置されている。
図1および
図2に表したガイドワイヤ1では、第1ワイヤ2の先端側の部分は、コイル基端部42の内側のほぼ中心部に挿通されている。また、第1ワイヤ2の先端側の部分は、コイル基端部42の内面と非接触で挿通されている。すなわち、コイル基端部42は、第1ワイヤ2から離れた状態(第1ワイヤ2と非接触の状態)で第1ワイヤ2の少なくとも先端側の部分を覆っている。
【0064】
コイル中間部43は、素線(細線)431が螺旋状に巻回された部材であり、コイル先端部41とコイル基端部42との間に位置する第1ワイヤ2の部分を覆うように配置されている。
図1および
図2に表したガイドワイヤ1では、コイル中間部43に覆われた第1ワイヤ2の部分は、コイル中間部43の内側のほぼ中心部に挿通されている。また、コイル中間部43に覆われた第1ワイヤ2の部分は、コイル中間部43の内面と非接触で挿通されている。すなわち、コイル中間部43は、第1ワイヤ2から離れた状態(第1ワイヤ2と非接触の状態)でコイル先端部41とコイル基端部42との間に位置する第1ワイヤ2の部分を覆っている。
【0065】
図2に表したように、コイル中間部43は、ワイヤ本体10の長手方向の軸11に沿う方向において第2径一定部23と重なる位置に設けられている。また、コイル中間部43は、ワイヤ本体10の軸11に沿う方向において第1テーパ部22が第2径一定部23に接続された部分(第1テーパ部22と第2径一定部23との境界部)と重なる位置に設けられている。すなわち、本実施形態のコイル中間部43は、第1テーパ部22と第2径一定部23との境界部付近を覆うように配置されている。
【0066】
コイル4の外径(コイル外径)は、コイル中間部43を除いて、長手方向に沿ってほぼ一定である。本願明細書において「コイルの外径(コイル外径)」とは、コイルの素線の外径(線径)ではなく、素線が螺旋状に巻回されたコイル全体の外径をいう。すなわち、コイル先端部41の外径およびコイル基端部42の外径のそれぞれは、長手方向に沿ってほぼ一定である。また、コイル中間部43の外径は、コイル基端部42の外径およびコイル先端部41の外径よりも小さい。
【0067】
コイル4の最大外径Dmaxは、0.25〜0.89mm程度であることが好ましく、0.25〜0.46mm程度であることがより好ましい。コイル4の最小外径Dminは、0.10〜0.86mm程度であることが好ましく、0.15〜0.38mm程度であることがより好ましい。また、最大外径Dmaxと最小外径Dminとの比Dmin/Dmaxは、0.3〜0.95程度であることが好ましく、0.44〜0.83程度であることがより好ましい。最大外径Dmaxおよび最小外径Dminがこのような範囲であると、前述した効果がより顕著に発揮される。また、コイル4の最大外径Dmaxは、第2ワイヤ3の直径とほぼ等しいことが好ましい。
【0068】
コイル4の全長L0は、特に限定されないが、5〜500mm程度であることが好ましく、30〜300mm程度であることがより好ましい。また、コイル基端部42の長さをL1としたとき、L1/L0は、0.05〜0.9であることが好ましい。また、コイル中間部43が設けられた位置は、ガイドワイヤ1の先端から基端に向かって例えば約1〜3mmの位置であることが好ましい。
【0069】
コイル先端部41の素線411の線径(直径)は、コイル基端部42の素線421の線径(直径)と略同じである。一方で、コイル中間部43の素線431の線径(直径)は、コイル先端部41の素線411の線径およびコイル基端部42の素線421の線径よりも細い。
図2に表したように、コイル中間部43の素線431の線径は、コイル先端部41の側およびコイル基端部42の側からコイル中間部43の中央部に向かって漸減している。
【0070】
素線411、421、431のうちの最大直径dmaxは、0.23〜0.87mm程度であることが好ましく、0.23〜0.44mm程度であることがより好ましい。本実施形態では、最大直径dmaxは、コイル先端部41の素線411およびコイル基端部42の素線421の少なくともいずれかの線径である。素線411、421、431のうちの最小直径dminは、0.06〜0.20mm程度であることが好ましく、0.08〜0.15mm程度であることがより好ましい。本実施形態では、最小直径dminは、コイル中間部43の素線431の線径である。また、最大直径dmaxと最小直径dminとの比dmin/dmaxは、0.1〜0.9程度であることが好ましく、0.18〜0.44程度であることがより好ましい。最大直径dmaxおよび最小直径dminがこのような範囲であると、最小外径Dminおよび最大外径Dmaxの条件とも相まって、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0071】
本実施形態の場合、素線411、素線421および素線431の横断面の形状は、それぞれ、円であるが、これだけには限定されない。素線411、素線421および素線431の少なくともいずれかの横断面の形状は、例えば楕円、四角形(特に長方形)等であってもよい。本願明細書において「素線の横断面」とは、素線の長手方向に延びる軸に対して垂直な平面で切断したときの切り口(切断面)をいう。
【0072】
また、
図1に表したガイドワイヤ1のコイル先端部41、コイル基端部42およびコイル中間部43では、外力を付与しない状態で、螺旋状に巻回された素線同士が隙間なく密に配置されているが、これと異なり、素線同士の間にやや隙間が空いていてもよい。
【0073】
コイル先端部41(素線411)、コイル基端部42(素線421)およびコイル中間部43(素線431)の構成材料は、金属材料、樹脂材料のいずれでもよい。但し、素線411、素線421および素線431のうちの少なくとも素線421は金属材料で構成されていることが好ましく、素線411、素線421および素線431の全てが金属材料で構成されていることがより好ましい。
【0074】
素線411、素線421および素線431を構成する金属材料としては、それぞれ、第1ワイヤ2および第2ワイヤ3の構成材料で挙げた材料と同様のものが挙げられる。また、その他の金属として、例えば、コバルト系合金、金、白金、タングステン等の貴金属またはこれらを含む合金(例えば白金−イリジウム合金)等が挙げられる。特に、素線411、素線421および素線431が貴金属のようなX線不透過材料で構成された場合には、ガイドワイヤ1の先端部にX線造影性が得られる。これにより、術者は、X線透視下で先端部の位置を確認しつつガイドワイヤ1を生体内に挿入することができる。
【0075】
また、コイル先端部41(素線411)とコイル基端部42(素線421)とコイル中間部43(素線431)とが、互いに異なる材料で構成されていてもよい。その好ましい例としては、素線411および素線431がNi−Ti合金等の超弾性合金で構成され、素線421がステンレス鋼で構成される場合が挙げられる。この場合には、コイル4におけるトルク伝達性、押し込み性が確保されるとともにコイル4の先端側においてより柔軟性に富む性質が得られる。コイル先端部41、コイル基端部42およびコイル中間部43が互いに異なる材料で構成される他の例としては、素線411および素線431がX線不透過材料で構成され、素線421がX線を比較的透過する材料(ステンレス鋼等)で構成される場合が挙げられる。
【0076】
コイル先端部41(素線411)、コイル基端部42(素線421)およびコイル中間部43(素線431)の全てがX線造影性を有さない場合には、別途X線造影性を有するマーカが設置されていてもよい。後述するように、樹脂被覆層8中にX線不透過材料によるフィラーを分散することは、その一例である。
【0077】
図1に示すように、コイル4は、ワイヤ本体10に対し2箇所で固定されている。すなわち、コイル先端部41の先端部は、固定材料(固定部)51により第1ワイヤ2の先端に固定されている。コイル基端部42の基端部は、固定材料(固定部)53により第1ワイヤ2の途中(第1径一定部21と第2テーパ部24の境界付近)に固定されている。コイル4がこのような箇所でワイヤ本体10に固定されることにより、ガイドワイヤ1の先端部(コイル4が存在する部位)の柔軟性が損なわれることなく、コイル先端部41およびコイル基端部42がそれぞれ確実に固定される。
【0078】
なお、コイル4は、ワイヤ本体10に対し3箇所で固定されていてもよい。この場合には、例えば、コイル基端部42の先端部は、固定材料(固定部)により第1ワイヤ2の途中(例えば第1テーパ部22の基端部付近)に固定される。コイル4がこのような箇所でワイヤ本体10に固定されることにより、ガイドワイヤ1の先端部(コイル4が存在する部位)の柔軟性が損なわれることなく、コイル先端部41およびコイル基端部42がそれぞれより確実に固定される。
【0079】
固定材料51、53は、それぞれ、半田(ろう材)で構成されている。なお、固定材料51、53は、半田に限らず、接着剤でもよい。また、コイル4のワイヤ本体10に対する固定方法は、前記のような固定材料によるものに限らず、例えば、溶接でもよい。また、血管等の生体管腔の内壁の損傷を防止するために、固定材料51の先端面は、丸みを帯びていることが好ましい。
【0080】
図1に示すように、ワイヤ本体10は、外周面(外表面)の全部または一部を覆う被覆層として、樹脂被覆層8、9を有している。
図1に表した実施形態では、樹脂被覆層8がコイル4の外周に設けられている。また、樹脂被覆層9が第1ワイヤ2の一部および第2ワイヤ3の外周に設けられている。特に
図1に表したガイドワイヤ1では、樹脂被覆層8内に素線411、素線421および素線431の全部または一部が設けられている。
【0081】
樹脂被覆層8、9は、種々の目的で設けられている。一例として、樹脂被覆層8、9は、ガイドワイヤ1の摩擦(摺動抵抗)を低減し、摺動性を向上させることによってガイドワイヤ1の操作性を向上させることがある。
【0082】
ガイドワイヤ1の摩擦(摺動抵抗)の低減を図るためには、樹脂被覆層8、9は、以下に述べるような摩擦を低減し得る材料で構成されていることが好ましい。これにより、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁ガイドワイヤ1との摩擦抵抗(摺動抵抗)が低減されて摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好になる。また、ガイドワイヤ1の摺動抵抗が低くなることで、ガイドワイヤ1がカテーテル内で移動および/または回転した際に、ガイドワイヤ1のキンク(折れ曲がり)やねじれ、特に接合部6付近におけるキンクやねじれがより確実に防止される。
【0083】
このような摩擦を低減し得る材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)、またはこれらの複合材料が挙げられる。
【0084】
その中でも特に、フッ素系樹脂(またはこれを含む複合材料)が用いられた場合には、ガイドワイヤ1とカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)がより効果的に低減され、摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好になる。また、これにより、ガイドワイヤ1がカテーテル内で移動および/または回転した際に、ガイドワイヤ1のキンク(折れ曲がり)やねじれ、特に溶接部付近におけるキンクやねじれをより確実に防止することができる。
【0085】
また、フッ素系樹脂(またはこれを含む複合材料)が用いられた場合には、焼きつけ、吹きつけ等の方法により、樹脂材料が加熱された状態で、ワイヤ本体10への被覆が行われる。これにより、樹脂被覆層8、9は、特に優れた密着性を有する。
【0086】
また、樹脂被覆層8、9の材料としてシリコーン樹脂(またはこれを含む複合材料)が用いられた場合には、樹脂被覆層8、9がコイル4やワイヤ本体10に被覆される際に、加熱されなくても、確実かつ強固に密着した樹脂被覆層8、9が形成される。すなわち、樹脂被覆層8、9の材料としてシリコーン樹脂(またはこれを含む複合材料)が用いられた場合には、反応硬化型の材料等を用いることが可能になるため、樹脂被覆層8、9は室温にて形成される。このように、室温にて樹脂被覆層8、9が形成されることにより、簡便にコーティングができるとともに、接合部6における第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との接合強度が十分に維持された状態にてガイドワイヤ1の操作を行うことが可能になる。
【0087】
また、他の一例として、樹脂被覆層8、9(特に先端側の樹脂被覆層8)は、ガイドワイヤ1が血管等に挿入される際の安全性の向上を目的として設けられる。この目的のためには、樹脂被覆層8、9は柔軟性に富む材料(軟質材料、弾性材料)で形成されていることが好ましい。
【0088】
このような柔軟性に富む材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等の熱可塑性エラストマー、ラテックスゴム、シリコーンゴム等の各種ゴム材料、またはこれらのうちに2以上を組み合わせた複合材料が挙げられる。
【0089】
特に、樹脂被覆層8、9の材料として前述した熱可塑性エラストマーや各種ゴム材料が用いられた場合には、ガイドワイヤ1の先端部の柔軟性がより向上する。そのため、血管等への挿入時に、血管内壁等が傷つけられることがより確実に防止され、安全性が極めて高くなる。
【0090】
このような樹脂被覆層8、9は、それぞれ、2層以上の積層体でもよい。また、樹脂被覆層8と樹脂被覆層9とは、同一材料で形成されていても、互いに異なる材料で形成されていてもよい。例えば、ガイドワイヤ1の先端側に位置する樹脂被覆層8は、前述した柔軟性に富む材料(軟質材料、弾性材料)で形成される。また、ガイドワイヤ1の基端側に位置する樹脂被覆層9は、前述した摩擦を低減し得る材料で形成される。これにより、摺動性(操作性)の向上と安全性の向上の両立が図られる。
【0091】
樹脂被覆層8、9の厚さは、特に限定されず、樹脂被覆層8、9の形成目的や構成材料、形成方法等を考慮して適宜設定される。通常は、樹脂被覆層8、9の厚さ(平均)は、共に1〜100μm程度であることが好ましく、1〜30μm程度であることがより好ましい。樹脂被覆層8、9の厚さが薄すぎると、樹脂被覆層8、9の形成目的が十分に発揮されないことがあり、また、樹脂被覆層8、9の剥離が生じるおそれがある。一方で、樹脂被覆層8、9の厚さが厚すぎると、ガイドワイヤ1の物理的特性に影響を与えるおそれがあり、また樹脂被覆層8、9の剥離が生じるおそれがある。
【0092】
なお、本実施形態では、コイル4やワイヤ本体10の外周面(表面)に、樹脂被覆層8、9の密着性を向上するための処理(粗面加工、化学処理、熱処理等)が施されていたり、樹脂被覆層8、9の密着性を向上し得る中間層が設けられたりしていてもよい。
【0093】
樹脂被覆層8は、コイル4の先端(固定材料51を含む)を露出することなく覆っており、しかも、樹脂被覆層8の先端は、丸みを帯びた形状であることが好ましい。これにより、ガイドワイヤ1が血管等の生体管腔内に挿入される際、生体管腔の内壁の損傷がより有効に防止され、安全性が高くなる。
【0094】
また、樹脂被覆層8中には、造影性を有する材料(前記X線不透過材料等)によるフィラー(粒子)が分散されていてもよい。これにより、樹脂被覆層8に造影部が形成される。
【0095】
ガイドワイヤ1の少なくとも先端部の外面には、親水性材料がコーティングされていることが好ましい。本実施形態では、ガイドワイヤ1の先端から第2テーパ部24の基端付近に至るまでの領域におけるガイドワイヤ1の外周面に、親水性材料がコーティングされている。これにより、親水性材料が湿潤して潤滑性を生じ、ガイドワイヤ1の摩擦(摺動抵抗)が低減され、摺動性が向上する。従って、ガイドワイヤ1の操作性が向上する。なお、樹脂被覆層8は、このような潤滑性を生ずるコーティング層として設けられていてもよい。
【0096】
親水性材料としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド(PGMA−DMAA)のブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0097】
このような親水性材料は、多くの場合、湿潤(吸水)により潤滑性を発揮し、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁とガイドワイヤ1の摩擦抵抗(摺動抵抗)を低減する。これにより、ガイドワイヤ1の摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好になる。
【0098】
図3は、本実施形態に係るガイドワイヤがCTO病変を通過する状態を表す断面図である。
図3(a)は、ガイドワイヤの先端がCTO病変に到達した状態を表す断面図である。
図3(b)は、ガイドワイヤの湾曲部位が先行する形状でCTO病変を通過する状態を表す断面図である。なお、
図3(a)および
図3(b)は、本実施形態に係るガイドワイヤが冠動脈貫通用カテーテルと併用された例を表している。
【0099】
本実施形態に係るガイドワイヤ1は、例えばPTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠状動脈血管形成術)のような、外科的手術が困難な部位の治療、または人体への低侵襲を目的とした治療や、心臓血管造影などの検査に用いられるカテーテルを誘導するために使用される。PTCAを必要とする血管は、複雑に湾曲している。また、石灰化等により血管の一部が完全に閉塞したCTO病変(完全閉塞病変)に対するPTCAでは、比較的強い押し込み力をガイドワイヤの先端側に伝達する必要がある。このように、PTCAを必要とする血管は複雑に湾曲している一方で、CTO病変に対するPTCAではガイドワイヤを比較的強い力で押し込む必要があるため、ガイドワイヤが血管を突き破る血管穿孔が生ずるおそれがある。
【0100】
これに対して、本実施形態に係るガイドワイヤ1では、コイル中間部43の素線431の線径は、コイル先端部41の素線411の線径およびコイル基端部42の素線421の線径よりも細い。そのため、
図3(a)に表した矢印A1のように、ガイドワイヤ1がCTO病変62に到達し押し込まれたときに、
図3(b)に表したように、コイル中間部43がガイドワイヤ1の湾曲の起点となる。そのため、ガイドワイヤ1に対して、予め意図した位置で湾曲させることができる。すなわち、ガイドワイヤ1がCTO病変62に到達した際に、ガイドワイヤ1を所望の位置で湾曲させることが可能になる。
【0101】
図3(b)に表したように、コイル中間部43において湾曲したガイドワイヤ1は、湾曲部位が先行する形状でCTO病変62を通過する。そのため、ガイドワイヤ1の湾曲部位が血管壁61に到達した場合であっても、ガイドワイヤ1から血管壁61に伝わる押し込み力は分散される(
図3(b)に表した矢印A2、矢印A3および矢印A4参照)。これにより、血管穿孔が生ずることが抑えられる。また、ガイドワイヤ1がCTO病変62に到達し押し込まれたときにコイル中間部43が湾曲の起点となるため、押し込み力があまり必要とされないようなカテーテル内や生体内においてガイドワイヤ1の通過性が低下することが抑えられる。すなわち、本実施形態に係るガイドワイヤ1は、押し込み力があまり必要とされないようなカテーテル内や生体内においては、
図1および
図2に表したような略直線形状を呈する。
【0102】
また、コイル中間部43は、ワイヤ本体10の長手方向の軸11に沿う方向において第2径一定部23と重なる位置に設けられている。すなわち、第2径一定部23の外径が第1径一定部21の外径よりも小さいため、ガイドワイヤ1が押し込まれたときに応力が集中する第2径一定部23と重なる位置にコイル中間部43が設けられている。そのため、ガイドワイヤ1がCTO病変62に到達し押し込まれたときに、コイル中間部43がガイドワイヤ1の湾曲の起点となりやすい。すなわち、ガイドワイヤ1は、コイル中間部43において湾曲しやすい。
【0103】
また、コイル中間部43は、ワイヤ本体10の軸11に沿う方向において第1テーパ部22が第2径一定部23に接続された部分(第1テーパ部22と第2径一定部23との境界部)と重なる位置に設けられている。すなわち、コイル中間部43は、第1テーパ部22と第2径一定部23との境界部付近を覆うように配置されている。すなわち、ガイドワイヤ1が押し込まれたときに応力が集中する第1テーパ部22と第2径一定部23との接続部と重なる位置にコイル中間部43が設けられている。そのため、ガイドワイヤ1がCTO病変62に到達し押し込まれたときに、コイル中間部43がガイドワイヤ1の湾曲の起点となりやすい。すなわち、ガイドワイヤ1は、第1テーパ部22と第2径一定部23との接続部と重なる位置に設けられたコイル中間部43において湾曲しやすい。これにより、ガイドワイヤ1がCTO病変62に到達した際に、ガイドワイヤ1を所望の位置で湾曲させることが可能になり、血管穿孔が生ずることが抑えられる。
【0104】
また、コイル中間部43の内径(コイル内径)は、コイル先端部41の内径(コイル内径)およびコイル基端部42の内径(コイル内径)と同じである。そのため、コイル4の内面とワイヤ本体10との間の空間(クリアランス)が略一定に確保される。そのため、押し込み力がガイドワイヤ1の先端に確実に伝達されるとともに、ガイドワイヤ1を所望の位置で湾曲させやすくすることが可能になる。
【0105】
また、前述したように、コイル中間部43の外径は、コイル基端部42の外径およびコイル先端部41の外径よりも細い。具体的には、コイル中間部43の素線431の線径が、コイル先端部41の側およびコイル基端部42の側からコイル中間部43の中央部に向かって漸減している。そのため、ガイドワイヤ1は、コイル中間部43の中央部において湾曲しやすく、湾曲部位が先行する形状でCTO病変62を通過する。これにより、比較的良好なガイドワイヤ1の通過性が得られる。さらに、コイル中間部43とコイル先端部41との境界部、およびコイル中間部43とコイル基端部42との境界部において、段差が生ずることが抑えられる。そのため、コイル先端部41、コイル中間部43およびコイル基端部42にわたって、滑らかなコイル表面が実現される。これにより、コイル4が例えば血管壁やカテーテルなどに引っ掛かることが抑えられる。
【0106】
なお、本実施形態では、
図2に表したように、コイル中間部43がワイヤ本体10の長手方向の軸11に沿う方向において第1テーパ部22が第2径一定部23に接続された部分と重なる位置に設けられた場合を例に挙げて説明した。但し、コイル中間部43の配置は、これだけには限定されない。例えば、
図8に関して後述するように、コイル中間部43は、ワイヤ本体10の長手方向の軸11に沿う方向において第1テーパ部22の基端部と重なる位置に設けられていてもよい。あるいは、
図9に関して後述するように、コイル中間部43は、ワイヤ本体10の長手方向の軸11に沿う方向において第2径一定部23が平板部26に接続された部分と重なる位置に設けられていてもよい。この詳細については、後述する。
【0107】
図4は、本実施形態の第1変形例に係るガイドワイヤを表す断面図である。
図4は、
図2と同様に、本変形例に係るガイドワイヤの先端部を拡大して表した拡大図に相当する。
【0108】
第1に係るガイドワイヤ1Aでは、コイル4Aの外径(コイル外径)は、長手方向に沿ってほぼ一定である。すなわち、コイル先端部41の外径、コイル基端部42の外径およびコイル中間部43の外径のそれぞれは、長手方向に沿ってほぼ一定である。また、コイル中間部43の外径は、コイル基端部42の外径およびコイル先端部41の外径と同じである。この点において、本変形例に係るガイドワイヤ1Aは、
図1および
図2に関して前述したガイドワイヤ1とは異なる。その他の構造は、
図1および
図2に関して前述したガイドワイヤ1と同様である。
【0109】
本変形例に係るガイドワイヤ1Aによれば、コイル中間部43の外径がコイル基端部42の外径およびコイル先端部41の外径と同じであるため、滑らかなコイル表面が実現される。これにより、コイル4Aが、例えば血管壁やカテーテルなどに引っ掛かることが抑えられる。また、
図1〜
図3に関して前述した効果と同じ効果が得られる。
【0110】
図5は、本実施形態の第2変形例に係るガイドワイヤを表す断面図である。
図5は、
図4と同様に、本変形例に係るガイドワイヤの先端部を拡大して表した拡大図に相当する。
【0111】
第2変形例に係るガイドワイヤ1Bのコイル4Bにおいて、隣り合う素線411、421、431の横断面における中心同士を結ぶ線L2、L3は、ワイヤ本体10の軸11と平行である。その他の構造は、
図1および
図2に関して前述したガイドワイヤ1の構造と同様である。
【0112】
本変形例によれば、隣り合う素線411、421、431同士が乗り上げることが抑えられる。これにより、押し込み力がガイドワイヤ1Bの先端に確実に伝達される。また、
図1〜
図3に関して前述した効果と同じ効果が得られる。
【0113】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態に係るガイドワイヤの構成要素が、
図1〜
図5に関して前述した第1実施形態に係るガイドワイヤ1、1A、1Bの構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0114】
図6は、本発明の第2実施形態に係るガイドワイヤを表す断面図である。
図7は、本実施形態に係るガイドワイヤの先端部を拡大して表した拡大図である。
【0115】
本実施形態に係るガイドワイヤ1Cにおいて、コイル4Cの外径(コイル外径)は、先端方向に向かって漸減した部分を有する。具体的には、コイル先端部41は、外径D1が長手方向に沿ってほぼ一定である部分を有する。また、コイル基端部42は、外径D2が長手方向に沿ってほぼ一定である部分を有する。一方で、コイル先端部41、コイル基端部42およびコイル中間部43の少なくともいずれかは、外径が先端方向に向かって漸減した部分を有する。すなわち、コイル外径が先端方向に向かって漸減した部分は、コイル先端部41、コイル基端部42およびコイル中間部43の少なくともいずれかに存在する。
【0116】
そのため、
図6に表したように、コイル先端部41の外径D1は、コイル基端部42の外径D2よりも小さい。コイル4Cの外径の減少に伴い、ガイドワイヤ1Cの外径も先端に向かって徐々に減少する。この点において、本実施形態に係るガイドワイヤ1Cは、
図1および
図2に関して前述したガイドワイヤ1とは異なる。その他の構造は、
図1および
図2に関して前述したガイドワイヤ1と同様である。
【0117】
本実施形態に係るガイドワイヤ1Cによれば、ガイドワイヤ1Cの生体内(カテーテル内)への挿入操作に際しての操作性が向上するとともに、ガイドワイヤ1Cの外径の減少により、柔軟性が徐々に増し、かつ応力集中が防止される。これにより、耐キンク性や安全性が向上する。また、コイル先端部41は外径D1が長手方向に沿ってほぼ一定である部分を有し、コイル基端部42は外径D2が長手方向に沿ってほぼ一定である部分を有するため、ガイドワイヤ1Cがカテーテル内や生体内へ挿入される際の挿入抵抗がより低減される。
【0118】
また、コイル先端部41の外径D1がコイル基端部42の外径D2よりも小さいため、CTO病変62の通過性が向上する。また、ワイヤ本体10が第2径一定部23や第1テーパ部22を有する場合であっても、コイル4Cの内面とワイヤ本体10との間の空間(クリアランス)か略一定に確保される。そのため、押し込み力がガイドワイヤ1Cの先端に確実に伝達されるとともに、ガイドワイヤ1Cを所望の位置で湾曲させることが可能になる。
【0119】
図7に表したように、コイル中間部43の素線431は、コイル4Cの外面が連続するようにコイル先端部41の素線411とコイル基端部42の素線421との間に配置されている。そのため、滑らかなコイル表面が実現される。これにより、コイル4Cが、例えば血管壁やカテーテルなどに引っ掛かることが抑られる。
【0120】
なお、コイル中間部43の素線431は、コイル4Cの内面が連続するようにコイル先端部41の素線411とコイル基端部42の素線421との間に配置されていてもよい。この場合には、コイル4Cの内面とワイヤ本体10との間の空間(クリアランス)が略一定に確保されるとともに、コイル中間部43の外径がコイル先端部41の外径およびコイル基端部42の外径よりも細くなる。そのため、押し込み力がガイドワイヤ1Cの先端に確実に伝達されるとともに、ガイドワイヤ1CがCTO病変62に到達し押し込まれた際に、ガイドワイヤ1Cを所望の位置で湾曲させやすくすることが可能になる。
【0121】
また、隣り合う素線411、421、431の横断面における中心同士を結ぶ線がワイヤ本体10の縦断面における外面(外形線)と平行になるように、コイル中間部43の素線431は、コイル先端部41の素線411とコイル基端部42の素線421との間に配置されていてもよい。本願明細書において「ワイヤ本体の縦断面」とは、ワイヤ本体10の長手方向の軸11上の平面で切断したときの切り口(切断面)をいう。この場合には、隣り合う素線411、421、431同士が乗り上げることが抑えられる。これにより、押し込み力がガイドワイヤ1Cの先端に確実に伝達される。また、
図1〜
図3に関して前述した効果と同じ効果が得られる。
【0122】
図8は、本実施形態の第1変形例に係るガイドワイヤを表す断面図である。
図8は、
図7と同様に、本変形例に係るガイドワイヤの先端部を拡大して表した拡大図に相当する。本変形例では、
図6および
図7に関して前述したガイドワイヤ1Cと同様に、コイル中間部43の素線431が、コイル4Dの外面が連続するようにコイル先端部41の素線411とコイル基端部42の素線421との間に配置された場合を例に挙げて説明する。これは、
図9に関して後述する第2変形例においても同様である。
【0123】
第1変形例に係るガイドワイヤ1Dにおいて、コイル4Dのコイル中間部43は、ワイヤ本体10の長手方向の軸11に沿う方向において第1テーパ部22の基端部と重なる位置に設けられている。また、コイル中間部43は、ワイヤ本体10の軸11に沿う方向において第1テーパ部22が第1径一定部21に接続された部分(第1テーパ部22と第1径一定部21との境界部)と重なる位置に設けられている。すなわち、本変形例のコイル中間部43は、第1テーパ部22と第1径一定部21との境界部付近を覆うように配置されている。その他の構造は、
図6および
図7に関して前述したガイドワイヤ1Cの構造と同様である。
【0124】
本変形例によれば、ガイドワイヤ1Dは、ガイドワイヤ1Dが押し込まれたときに応力が集中する部分で湾曲しやすい。第1テーパ部22の基端部の外径は、第2径一定部23の外径および第1テーパ部22の先端部の外径よりも大きい。そのため、血管穿孔が生ずることが抑えられるとともに、押し込み力がガイドワイヤ1Dの先端に確実に伝達される。
【0125】
図9は、本実施形態の第2変形例に係るガイドワイヤを表す断面図である。
図9は、
図7と同様に、本変形例に係るガイドワイヤの先端部を拡大して表した拡大図に相当する。
【0126】
第2変形例に係るガイドワイヤ1Eにおいて、第1ワイヤ2Aは、第1径一定部21と、第2径一定部23と、第1テーパ部22と、平板部26と、を有する。すなわち、
図1および
図2に関して前述した第1ワイヤ2と比較して、本変形例の第1ワイヤ2Aは、平板部26をさらに有する。平板部26は、第2径一定部23の先端側に位置し、平板状に形成されている。第1径一定部21、第1テーパ部22、第2径一定部23、および平板部26は、第1ワイヤ2Aの基端側から先端側に向かってこの順に配置されている。すなわち、平板部26は、第2径一定部23よりも先端側に配置され、第2径一定部23に接続されている。
【0127】
平板部26は、平板状(リボン状)をなしており、所望の形状に変形(リシェイプ:形状付け)されて用いられることがある。すなわち、術者は、誘導するカテーテル等の先端部を血管の形状に対応させたり、分岐した血管に円滑に誘導したりするために、ガイドワイヤの先端部を予め所望の形状に曲げて使用することがある。このように、ガイドワイヤの先端部を所望の形状に曲げることは、リシェイプあるいは予備成形などと呼ばれる。
【0128】
平板部26の長さは、特に限定されないが、5〜200mm程度であることが好ましく、10〜150mm程度であることがより好ましい。
【0129】
コイル4Eのコイル中間部43は、ワイヤ本体10の長手方向の軸11に沿う方向において第2径一定部23が平板部26に接続された部分(第2径一定部23と平板部26との境界部)と重なる位置に設けられている。すなわち、本変形例のコイル中間部43は、第2径一定部23と平板部26との境界部付近を覆うように配置されている。その他の構造は、
図6および
図7に関して前述したガイドワイヤ1Cの構造と同様である。
【0130】
本変形例によれば、ガイドワイヤ1Eが押し込まれたときに応力が集中する第2径一定部23と平板部24との接続部と重なる位置にコイル中間部43が設けられている。そのため、ガイドワイヤ1EがCTO病変62に到達し押し込まれたときに、コイル中間部43がガイドワイヤ1Bの湾曲の起点となりやすい。すなわち、ガイドワイヤ1Eは、第2径一定部23と平板部24との接続部と重なる位置に設けられたコイル中間部43において湾曲しやすい。これにより、ガイドワイヤ1EがCTO病変62に到達し押し込まれた際にガイドワイヤ1Eを所望の位置で湾曲させることが可能になり、血管穿孔が生ずることが抑えられる。また、リシェイプを容易かつ確実に行うことが可能になり、ガイドワイヤ1Eがカテーテル内や生体内に挿入される際の操作性が格段に向上する。
【0131】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。