特許第6759078号(P6759078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三栄電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6759078-用紙排出装置 図000002
  • 特許6759078-用紙排出装置 図000003
  • 特許6759078-用紙排出装置 図000004
  • 特許6759078-用紙排出装置 図000005
  • 特許6759078-用紙排出装置 図000006
  • 特許6759078-用紙排出装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759078
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】用紙排出装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 29/52 20060101AFI20200910BHJP
   B65H 31/00 20060101ALI20200910BHJP
   B65H 20/32 20060101ALI20200910BHJP
   B65H 29/20 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   B65H29/52
   B65H31/00 Z
   B65H20/32 A
   B65H29/20
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-229300(P2016-229300)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-83710(P2018-83710A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】505429706
【氏名又は名称】三栄電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】〆野 剛嗣
(72)【発明者】
【氏名】境野 剛
(72)【発明者】
【氏名】守谷 幹夫
【審査官】 松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−212417(JP,A)
【文献】 特開2014−091585(JP,A)
【文献】 特開2008−068950(JP,A)
【文献】 特開2002−302314(JP,A)
【文献】 特開2002−060108(JP,A)
【文献】 特開2005−035789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 5/36−5/38
B65H20/24−20/34
B65H23/00−23/16
B65H23/24−23/34
B65H27/00
B65H29/12−29/24
B65H29/52
B65H31/00−31/40
B41J15/00−15/14
G07B 1/00−9/02
G07G 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な用紙に印字して発行する発券装置に使用され、用紙が切断されるまで当該用紙をループ化して保管するとともに、切断された用紙を排出する用紙排出装置であって、
用紙搬送路の上方を閉止して当該用紙搬送路の上面を構成する閉止状態と、前記用紙搬送路の上方を開放して前記用紙の上向きのループ化を許容する開放状態とを切り換え可能に構成された上側ガイドと、
前記用紙搬送路の下方を閉止して当該用紙搬送路の下面を構成する閉止状態と、前記用紙搬送路の下方を開放して前記用紙の下向きのループ化を許容する開放状態とを切り換え可能に構成された下側ガイドと、
前記上側ガイドの前記閉止状態をロックするロック手段とを備えることを特徴とする用紙排出装置。
【請求項2】
前記下側ガイドは、前記上側ガイドの前記閉止状態がロックされているとき前記用紙搬送路の下方を開放して前記用紙の下向きのループ化を許容し、前記上側ガイドの前記閉止状態のロックが解除されているとき前記用紙搬送路の下方を閉止して前記用紙の下向きのループ化を阻止する、請求項1に記載の用紙排出装置。
【請求項3】
前記下側ガイドの前記開放状態又は前記閉止状態を手動で切り替える切り替えレバーをさらに備える、請求項1又は2に記載の用紙排出装置。
【請求項4】
前記ロック手段によってロックされていない前記上側ガイドは、上向きでループ化しようとする前記用紙の押圧力によって持ち上げられて前記開放状態となる方向に回動し、前記用紙の上向きのループ化が解除されたときに前記押圧力から解放されて前記閉止状態に戻る、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の用紙排出装置。
【請求項5】
前記上側ガイド及び前記下側ガイドよりも前記用紙搬送路の下流側に配置された一対の排出ローラをさらに備え、
前記排出ローラの回転及び停止を制御することによって前記用紙のループ化及びその解除を制御する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の用紙排出装置。
【請求項6】
前記用紙搬送路の下方に設けられ、前記下側ガイドが開放状態のときに前記用紙搬送路と連通して前記用紙の下向きのループを保管する下ループ形成空間をさらに備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の用紙排出装置。
【請求項7】
前記用紙搬送路の上方に設けられ、前記上側ガイドが開放状態のときに前記用紙搬送路と連通して前記用紙の上向きのループを保管する上ループ形成空間をさらに備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の用紙排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙等の長尺な用紙を切断してレシート・チケット等を発行する発券装置に使用され、用紙が切断されるまでループ化して装置内に保管するとともに、切断された用紙を装置外に排出する用紙排出装置(プレゼンタ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レシート・チケット等を発行する発券装置においては、発券中に発券口から排出された紙片を受取人が無理に引き抜いたり、発券口を塞いで用紙の排出を妨害したりすると、印字不良や用紙ジャムの原因となる。これらを未然に防止するため、用紙の印字及び切断が完了するまで用紙を装置内に一時的に保管しておき、切断完了後の用紙の先端を発券口から露出させる機能を備えた用紙排出装置が多く採用されている。特に、無人で稼働するKIOSK端末等の発券装置には有効である。
【0003】
例えば、特許文献1には、用紙搬送路の下方にループ形成空間を設け、排出口からの用紙の排出を阻止している間、印字した用紙の下向きのループをループ形成空間内に一時的に保管し、用紙の印字及び切断完了後に排出口から用紙の頭出しを行い、さらに用紙が受け取られず排出口に残留している場合には用紙を回収することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、用紙搬送路の上方にループ形成空間を設け、排出口からの用紙の排出を阻止している間、印字した用紙の上向きのループをループ形成空間内に一時的に保管する用紙排出装置が記載されている。この用紙排出装置において、用紙搬送路の上面を構成する第2ガイドは、通常搬送時にはループ形成空間を閉止しており、用紙搬送ガイドとして作用するが、用紙をループ化するときには回動してループ形成空間を開放するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−273260号公報
【特許文献2】特開2003−212417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、用紙をループさせるためのループ形成空間は、装置の上方又は下方に設定され、どちらか一方に限定されていた。しかしながら、ループ形成空間を設けるためには一定のスペースが必要であり、ループ形成空間が装置の上方又は下方のどちらかに指定されていると、発券装置内での用紙排出装置の位置が制約されるため、実装設計上の大きな障害となっている。
【0007】
したがって、本発明の目的は、用紙のループを収容するループ形成空間を装置の上方又は下方のどちらか一方の選択を可能にし、しかも簡単な操作により設定することが可能な用紙排出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明による用紙排出装置は、長尺な用紙に印字して発行する発券装置に使用され、用紙が切断されるまで当該用紙をループ化して保管するとともに、切断された用紙を排出する用紙排出装置であって、用紙搬送路の上方を閉止して当該用紙搬送路の上面を構成する閉止状態と、前記用紙搬送路の上方を開放して前記用紙の上向きのループ化を許容する開放状態とを切り換え可能に構成された上側ガイドと、前記用紙搬送路の下方を閉止して当該用紙搬送路の下面を構成する閉止状態と、前記用紙搬送路の下方を開放して前記用紙の下向きのループ化を許容する開放状態とを切り換え可能に構成された下側ガイドと、前記上側ガイドの前記閉止状態をロックするロック手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ループ形成空間を用紙搬送路の上方又は下方のどちらに設けるのかを当該装置の組み込み時に選択することができる。したがって、発券装置に対する用紙排出装置の実装設計の自由度を高めることができる。
【0010】
本発明において、前記下側ガイドは、前記上側ガイドの前記閉止状態がロックされているとき前記用紙搬送路の下方を開放して前記用紙の下向きのループ化を許容し、前記上側ガイドの前記閉止状態のロックが解除されているとき前記用紙搬送路の下方を閉止して前記用紙の下向きのループ化を阻止することが好ましい。
【0011】
本発明による用紙排出装置は、前記下側ガイドの前記開放状態又は前記閉止状態を手動で切り替える切り替えレバーをさらに備えることが好ましい。この構成によれば、下側ガイドの開放状態及び閉止状態の一方から他方への切り換えを簡単に行うことができる。
【0012】
本発明において、前記ロック手段によってロックされていない前記上側ガイドは、上向きでループ化しようとする前記用紙の押圧力によって持ち上げられて前記開放状態となる方向に回動し、前記用紙の上向きのループ化が解除されたときに前記押圧力から解放されて前記閉止状態に戻ることが好ましい。この構成によれば、用紙の上向きのループを形成して一時保管するモードにおいて、用紙が上向きのループを形成している期間以外でも用紙搬送路の上方が常に開いている事態を回避することができる。したがって、用紙搬送路内にゴミなどが入り込みにくく、装置の信頼性及び安全性を高めることができる。
【0013】
本発明による用紙排出装置は、前記上側ガイド及び前記下側ガイドよりも前記用紙搬送路の下流側に配置された一対の排出ローラをさらに備え、前記排出ローラの回転及び停止を制御することによって前記用紙のループ化及びその解除を制御することが好ましい。この構成によれば、排出ローラによる用紙の送り出し動作を一時停止することで用紙の上向き又は下向きのループ化を図ることができ、用紙の送り出しを再開することで用紙のループ化を解除することができる。
【0014】
本発明による用紙排出装置は、前記用紙搬送路の下方に設けられ、前記下側ガイドが開放状態のときに前記用紙搬送路と連通して前記用紙の下向きのループを保管する下ループ形成空間をさらに備えることが好ましい。この構成によれば、印字された用紙の切断が完了するまで当該用紙を下向きでループさせてその排出を保留することができる。特に、用紙排出装置が組み込まれる発券装置内のレイアウトの関係上、用紙搬送路の上方にループ形成空間を確保することが難しい場合でも、用紙搬送路の下方にループ形成空間を確保して用紙排出装置を正しく動作させることができる。
【0015】
また、本発明による用紙排出装置は、前記用紙搬送路の上方に設けられ、前記上側ガイドが開放状態のときに前記用紙搬送路と連通して前記用紙の上向きのループを保管する上ループ形成空間をさらに備えることが好ましい。この構成によれば、印字された用紙の切断が完了するまで当該用紙を上向きでループさせてその排出を保留することができる。特に、用紙排出装置が組み込まれる発券装置内のレイアウトの関係上、用紙搬送路の下方にループ形成空間を確保することが難しい場合でも、用紙搬送路の上方にループ形成空間を確保して用紙排出装置を正しく動作させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、用紙搬送路の上方又は下方のループ形成空間を簡単な設定により選択可能な用紙排出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態による用紙排出装置を含む発券装置の構成を概略的に示す側面断面図である。
図2図2は、用紙排出装置10の動作モードを説明するための側面断面図であって、(a)は上ループモード、(b)は下ループモードをそれぞれ示している。
図3図3は、上側ガイド15のロック機構の構成の一例を示す図であって、(a)及び(b)はロック状態における平面図及び断面図、(c)及び(d)はロック解除状態における平面図及び断面図である。
図4図4は、用紙排出装置10の動作を説明するための側面断面図であって、(a)は上ループモードでの用紙送り出し動作、(b)は下ループモードでの用紙送り出し動作をそれぞれ示している。
図5図5は、用紙排出装置10の動作を説明するための側面断面図であって、(a)は上ループモードでのループ形成動作、(b)は下ループモードでのループ形成動作をそれぞれ示している。
図6図6は、用紙排出装置10の動作を説明するための側面断面図であって、(a)は上ループモードでのループ解除動作、(b)は下ループモードでのループ解除動作をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態による用紙排出装置を含む発券装置の構成を概略的に示す側面断面図である。
【0020】
図1に示すように、発券装置100は、ロール紙等の連続用紙に印字するプリンタ部1と、プリンタ部1で印字された用紙Pを発券口10aまで案内する用紙排出装置10とを備えている。用紙排出装置10はプリンタ部1から独立しており、プリンタ部1の前方に着脱自在に取り付けられている。発券装置100の使用形態によっては用紙をループさせて一時保管する機能を必要としない場合もあることから、用紙排出装置10は発券装置100に対して選択的に設置可能となっている。
【0021】
用紙排出装置10は、筐体11と、筐体11内に設けられ、印字済み用紙Pを発券口まで案内する用紙搬送路12と、用紙搬送路12の下流側(発券口10a寄り)に設けられ、プリンタ部1で印字されて搬送されてきた用紙Pを把持し、発券口10aまでさらに搬送する一対の排出ローラ13と、用紙搬送路12上の用紙の有無を検知する用紙有無センサ17a,17bとを備えている。
【0022】
用紙搬送路12は、その上方及び下方にそれぞれ設置された上側ガイド15及び下側ガイド16によってその進行方向が規定されている。上側ガイド15及び下側ガイド16は、プリンタ部1から搬送されてきた用紙Pを一対の排出ローラ13の位置まで案内する上下一対の用紙ガイド部材であるが、ループ形成空間を用紙搬送路12の上方又は下方に切り換えることができるように構成されている。すなわち、上側ガイド15は用紙搬送路12の上面を構成する可動部材であり、用紙搬送路12の上方を開放又は閉止することができるように構成されている。また下側ガイド16は用紙搬送路12の下面を構成する可動部材であり、用紙搬送路12の下方を開放又は閉止することができるように構成されている。図1は、上側ガイド15及び下側ガイド16が共に閉止状態である場合を示している。
【0023】
一対の排出ローラ13は、上側ガイド15及び下側ガイド16よりも用紙搬送路12の下流側に設けられている。一対の排出ローラ13は、上下に対向する駆動ローラ13aと従動ローラ13bとの組み合わせからなり、特に駆動ローラ13aが下側、従動ローラ13bが上側に配置されている。駆動ローラ13は、プリンタ部1の動作を制御する制御部によって正逆回転及び停止が制御される。プリンタ部1内の印字ヘッド2で印字された用紙Pはプラテンローラ3の回転によって前方に送り出され、用紙排出装置10内に進入し、用紙搬送路12を通って排出ローラ13の位置まで搬送される。
【0024】
図2は、用紙排出装置10の動作モードを説明するための側面断面図であって、(a)は上ループモード(b)は下ループモードをそれぞれ示している。
【0025】
図2(a)に示すように、上側ガイド15は、回転軸15aを中心に回動自在な構成であり、用紙搬送路12の上方を閉止して当該用紙搬送路12の上面を構成する閉止状態と、用紙搬送路12の上方を開放して用紙Pの上向きのループ化を許容する開放状態とを切り換え可能に構成されている。ただし、後述するロック機構によりロックされると回動できなくなり、ロックが解除されているときだけ回動することができる。上側ガイド15の回転軸15aは用紙搬送路12の幅方向と平行に設けられており、用紙搬送路12の下流側(発券口10a寄り)に配置されている。上側ガイド15の先端15bは用紙搬送路12の上流側の下方から下流側の上方に向かって開くように構成されている。
【0026】
図2(a)及び(b)に示すように、下側ガイド16は、回転軸16aを中心に回動可能な構成であり、用紙搬送路12の下方を閉止して当該用紙搬送路12の下面を構成する閉止状態と、用紙搬送路12の下方を開放して用紙Pの下向きのループ化を許容する開放状態とを切り換え可能に構成されている。すなわち、下側ガイド16は図2(a)に示す略水平姿勢と図2(b)に示す略垂直姿勢のどちらかを取ることができ、略水平姿勢のときには用紙搬送路12の下方が閉止されるので、用紙Pを下向きでループさせることができなくなる。略垂直姿勢のときには用紙搬送路12の下方が開放されるので、用紙Pを下向きでループさせることが可能となる。
【0027】
下側ガイド16は切り替えレバー19と一体的に形成されており、切り替えレバー19を操作することで開放状態又は閉止状態を手動で切り替えることができる。切り替えレバー19を持ち上げる方向に回動させると下側ガイド16が略水平姿勢となり、用紙搬送路12の下方が閉止される。また、切り替えレバー19を押し下げる方向に回動させると下側ガイド16が略垂直姿勢となり、用紙搬送路12の下方が開放される。このように、切り替えレバー19を操作することで下側ガイド16の姿勢を簡単に切り替えることができる。
【0028】
図2(a)に示すように、上側ガイド15が開いて用紙搬送路12の上方を開放し、且つ下側ガイド16が用紙搬送路12の下方を閉止している場合には、用紙Pを上向きでループさせることができ、用紙搬送路12の上方の空間は、上向きでループ化した用紙Pを収容する上ループ形成空間Saとなる。
【0029】
また、図2(b)に示すように、上側ガイド15が閉じて用紙搬送路12の上方を閉止し、且つ下側ガイド16が用紙搬送路12の下方を開放している場合には、用紙Pを下向きでループさせることができ、用紙搬送路12の下方の空間は、下向きでループ化した用紙Pを収容する下ループ形成空間Sbとなる。本実施形態において、下側ガイド16よりも下方の筐体11の内部は空洞であり、筐体11内に下ループ形成空間Sbが設けられている。
【0030】
上ループ形成空間Saが開放空間(自由空間)であるのに対し、下ループ形成空間Sbは、用紙排出装置10の筐体11に囲まれた閉空間である。下ループ形成空間Sbをより自由な空間とするためには、用紙排出装置10の筐体11の底面を設けないことが好ましい。このようにした場合、用紙Pの下向きのループの長さが筐体11の底面によって制限されないので、用紙の下向きのループを筐体11の下端よりも下方に突き抜けさせて十分な大きさのループを形成することが可能となる。
【0031】
図3は、上側ガイド15のロック機構の構成の一例を示す図であって、(a)及び(b)はロック状態における平面図及び断面図、(c)及び(d)はロック解除状態における平面図及び断面図である。
【0032】
図3(a)〜(d)に示すように、本実施形態による用紙排出装置10は、上側ガイド15の開閉動作をロックするロック機構18を有している。上側ガイド15のロック機構18は、回転軸18aを中心に水平方向に回動可能な係止片18bと、係止片18bの上面に設けられたつまみ部18cとを有し、つまみ部18cを操作して係止片18bの先端部を上側ガイド15と係合させることで回転軸15aを中心とする上側ガイド15の回動動作をロックすることができる。
【0033】
図3(a)及び(b)に示すように、係止片18bの先端部が上側ガイド15の一部と平面視で重なっているときには上側ガイド15の開放動作、すなわち上側ガイド15の上下方向への回動が規制され、閉止状態が維持される。一方、図3(c)及び(d)に示すように、係止片18bをロック位置から90度回転させると、係止片18bの先端部が上側ガイド15の一部と平面視で重ならなくなるので、上側ガイド15の上下方向への回動の規制が解除され、上側ガイド15は回動自在な状態となる。
【0034】
図4図6は、用紙排出装置10の動作を説明するための側面断面図であって、特に図4図6の(a)は上ループモードでの動作、図4図6の(b)は下ループモードでの動作をそれぞれ示している。
【0035】
まず用紙Pの上向きのループを選択する場合、図2(a)、図3(c)及び(d)、及び図4(a)に示すように上側ガイド15をロック解除状態(回動可能)とし、下側ガイド16を略水平姿勢に設定する。このような設定により、上側ガイド15を開放状態にすることができ、用紙搬送路12を上ループ形成空間Saと連通させて用紙Pの上向きのループを形成することが可能となる。また用紙Pの下向きのループを選択する場合、図2(b)、図3(a)及び(b)、及び図4(b)に示すように上側ガイド15をロック状態(回動不可)とし、下側ガイド16を略垂直姿勢に設定する。このような設定により、下側ガイド16が開放状態となり、用紙搬送路12が下ループ形成空間Sbと連通するので、用紙Pの下向きのループを形成することが可能となる。
【0036】
一般的に、用紙Pのループ形成空間は、用紙搬送路12の上方又は下方のどちらか一方に限定されており、他方を選択することはできない。しかし、本実施形態においては上側ガイド15のロック機構18及び下側ガイド16の切り替えレバー19を操作することで用紙搬送路12の上方又は下方のどちらでも選択することができる。なお、このような用紙Pのループの向きの選択(ループ形成空間の選択)は、用紙排出装置10を発券装置100に組み込む際に最初に一度だけ行われるものであり、発券装置100の運用中に定期的又は不定期に行われることはない。
【0037】
プリンタ部1で印字されて用紙排出装置10内に送り込まれた用紙Pの先端部は、図4(a)及び(b)に示すように用紙搬送路12を通って排出ローラ13の直前の位置に到達する。用紙有無センサ17aが用紙Pの先端部を検知すると、排出ローラ13が回転動作を開始し、用紙Pの先端部は一対の排出ローラ13間に引き込まれて挟圧保持される。次に下流側の用紙有無センサ17bが用紙Pの先端部を検知すると、用紙Pの先端が発券口10aから出ないように排出ローラ13は回転を一時停止する。プリンタ部1による印字動作がさらに継続されると、用紙排出装置10内に送り込まれる用紙Pの長さがさらに長くなるが、用紙Pの先端部の送り出しは排出ローラ13によって止められているので、行き場を失った用紙Pはプリンタ部1と排出ローラ13との間で撓んでループ化し、用紙排出装置10内で一時的に保管される。このとき、上ループモードの場合には図5(a)に示すように上向きでループ化し、下ループモードの場合には図5(b)に示すように下向きでループ化する。
【0038】
用紙Pの上向きのループを形成する上ループモードの場合、下側ガイド16が略水平姿勢で固定されているで、用紙Pは下向きのループを形成することができず、用紙Pのループは略水平状態の上側ガイド15の先端を上方に押し上げながらループ化し、これにより揺動自在に変位できる上側ガイド15は図5(a)に示す略直立姿勢となる。用紙Pのループがなくなると、上側ガイド15は自重によって回動して図4(a)に示す略水平状態に戻る。
【0039】
用紙Pの下向きのループを形成する下ループモードの場合、上側ガイド15が略水平状態の閉止姿勢で固定されているので、図5(a)に示すように用紙Pのループは上側ガイド15を押し上げながら上向きのループを形成することができない。しかし、下側ガイド16が略垂直姿勢で固定されており、下ループ形成空間Sbが開放されているので、図5(b)に示すように用紙Pは下向きでループ化することができる。
【0040】
プリンタ部1による印字及び用紙Pの送り出し動作が終了すると、図6(a)及び(b)に示すように印字後の位置に設けられたカッター4によって用紙Pが切断される。その後、排出ローラ13が回転を再開し、用紙Pの先端部が発券口10aから頭出しされる。したがって、受取人は用紙Pを引き出して受け取ることができる。印字動作中や切断処理前に用紙Pを発券口10aから頭出しすると、受取人が無理に引き抜いたり、発券口10aを塞いで用紙排出を妨害したりしたときに、印字不良や用紙ジャムの原因となる。しかし、印字動作が終了して用紙Pを切断した後にその頭出しを行った場合にはそのような問題を解決することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態による用紙排出装置10は、用紙搬送路12の上方に設けられた上ループ形成空間Saを開放又は閉止する上側ガイド15及び用紙搬送路12の下方に設けられた下ループ形成空間Sbを開放又は閉止する下側ガイド16の開閉状態を変更できるように構成されているので、用紙Pのループの向きを簡単な操作により選択することができ、用紙排出装置10の実装設計の自由度を向上させることができる。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0043】
例えば、上記実施形態においては、上側ガイド15のロック手段として、係止片18bを90度回転させるとその先端部が上側ガイド15と係合して上側ガイド15の回動動作をロックするロック機構18を例に挙げたが、本発明はこのような構成に限定されず、様々なロック手段を採用することができる。上記のように、上側ガイド15のロック操作は頻繁に行われるものではないので、できるだけ単純な構成で簡単かつ確実にロック及びロック解除できることが好ましい。したがって、例えば上側ガイド15をねじ止めにより固定することも可能である。
【0044】
また、上記実施形態においては、下側ガイド16の開閉状態を切り替えレバー19で切り替えているが、用紙排出装置10に対して下側ガイド16を着脱可能な構成としてもよい。この場合、下側ガイド16を用紙排出装置10に装着しているときには下側ガイド16が用紙搬送路12の下面を構成しており、また下側ガイド16を用紙排出装置10から取り外しているときには用紙搬送路12の下方が開放されて下ループ形成空間Sbと連通する構成となる。
【0045】
さらに上記実施形態においては、上側ガイド15は、用紙Pのループからの押圧力によって開き、また押圧力から開放されると自重で閉じるように構成されているが、本発明はこのような構成に限定されず、開放状態又は閉止状態を手動で選択的に設定できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 プリンタ部
2 印字ヘッド
3 プラテンローラ
4 カッター
10 用紙排出装置
10a 発券口
11 筐体
12 用紙搬送路
13 排出ローラ
13a 駆動ローラ
13b 従動ローラ
15 上側ガイド
15a 上側ガイドの回転軸
15b 上側ガイドの先端
16 下側ガイド
16a 下側ガイドの回転軸
17a,17b 用紙有無センサ
18 ロック機構
18a ロック機構の回転軸
18b ロック機構の係止片
18c ロック機構のつまみ部
19 切り替えレバー
100 発券装置
P 用紙
Sa 上ループ形成空間
Sb 下ループ形成空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6