【実施例】
【0085】
一般的な方法
血清および免疫グロブリン試薬:血清は、臨床検査室から得られた廃棄試料から収集した。正常なドナーからの精製IgGカッパおよびIgGラムダをBethyl Laboratories(Montgomery, TX)から購入した。
【0086】
試薬:重炭酸アンモニウム、ジチオトレイトール(DTT)、およびギ酸はSigma-Aldrich(St. Louis, MO)から購入した。メロンゲルは、Thermo-Fisher Scientific(Waltham MA)から購入した。水、アセトニトリル、および2-プロパノールは、Honeywell Burdick and Jackson(Muskegon, MI)から購入した。
【0087】
血清:製造業者の説明書に従い、メロンゲルを使用して体積50μLの血清の免疫グロブリンを濃縮した。免疫グロブリンの濃縮後、100mM DTT 25μLおよび50mM重炭酸アンモニウム25μLを添加することによって試料25μLを還元し、次に55℃で15分間インキュベートし、その後注入した。注入を待つ間、試料を9℃で深型96ウェルPCRプレート(容積300μL)に入れた。
【0088】
LC条件:Eksigent Ekspert 200 microLC(Dublin, CA)を分離のために使用した;移動相Aは、水+0.1%ギ酸(FA)であり、移動相Bは、90%アセトニトリル+10% 2-プロパノール+0.1% FAであった。25μL/分で流している、粒子径5μmの1.0×75mm Poroshell 300SB-C3カラムに注入2μLを行い、同時にカラムを60℃で加熱した。80% A/20% Bで25分の勾配を開始し、1分間維持し、1分間かけて75% A/25% Bまで勾配をかけ、次に10分間かけて65% A/35% Bまで勾配をかけ、次に4分間かけて50% A/50% Bまで勾配をかけ、次に2分間かけて95% A/5% Bまで勾配をかけ、5分間維持し、次に1分間かけて80% A/20% Bまで勾配をかけ、次に80% A/20% Bで1分間平衡化した。
【0089】
ESI-Q-TOF MS:自動キャリブラントデリバリーシステム(CDS)備えるTurbo VデュアルイオンソースをESIポジティブモードで用いてABSciex TripleTOF 5600四重極飛行時間型質量分析計(ABSciex, Vaughan ON, CA)でスペクトルを収集した。ソース条件は:IS:5500、Temp:500、CUR:45、GS1:35、GS2:30、CE:50±5であった。TOF MSスキャンは、m/z600〜2500を取得時間100msで取得した。フラグメントイオンスキャンは、m/z350〜2000を取得時間100msで取得した。製造業者によって供給された較正溶液を使用して、機器を5回の注入毎にCDSにより較正した。
【0090】
MSデータ解析:Analyst TF v1.6を機器制御のために使用した。Analyst TF v1.6およびPeakView v1.2.0.3を使用してデータを見た。多価イオンピークの質量中心を使用して、Analyst TFに提供されるBioAnalystソフトウェアにより平均分子質量およびピーク面積値を計算した。以下のBioAnalyst特異的パラメーターを使用して多重イオンのデコンボリューションを行った:質量範囲20,000Da〜28,000Da、水素付加、ステップサイズ1、S/N20、および軽鎖分子質量の計算について20回の繰り返し。
【0091】
生物情報学データ解析:カッパおよびラムダ軽鎖分子質量プロファイルをモデル化するために使用される正規分布は、Boston University ALBaseからのカッパおよびラムダ遺伝子配列を使用して作製した。遺伝子配列をIMGTアライメントツールV-QUEST(Brochet, X et al. Nucleic Acids Res 2008; 36:W503-8)にアップロードし、各配列を可変(V)領域フレーム1(N末端)から連結(J)領域を経て、定常(C)領域の最初までアライメントした。V領域全体からJ領域を含む遺伝子配列だけを使用した(46種のカッパおよび46種のラムダ)。次に、ExPASy Translateツールを使用して、遺伝子配列を対応するアミノ酸配列に翻訳した。次に、ExPASy Compute pI/Mwツールを使用して、このアミノ酸配列を平均分子質量に変換し、次に対応するアイソタイプの定常領域の分子質量に加算した。各分子質量をビン幅100Daで配置し、ソフトウェアパッケージJMP10.0.0を使用してヒストグラムを作成し、平均分子質量を計算し、計算分子質量の正規分布をモデル化した。
【0092】
実施例1 - 質量分析を使用する血清中のカッパおよびラムダ軽鎖レパートリーのモニタリング
本発明者らは、生物学的試料中のカッパおよびラムダ軽鎖を同定および定量するために使用することができる異なるポリクローナルカッパおよびラムダ軽鎖分子質量プロファイルを発見した。
図4に、メロンゲル精製されDTT還元された正常プール血清2μLの注入を、microLC-ESI-Q-TOF MSにより上記方法を用いて分析したものから得られたトータルイオンクロマトグラムを示す。強調された領域は、軽鎖がLCカラムから溶離し始める5.0〜6.0分の保持時間ウインドウを表す。
図5に、この1分のウインドウにわたり収集されたスペクトルを合計することによって得られたマススペクトルを、強調された垂直線の隣に示された予想されるポリクローナルカッパ軽鎖の荷電状態とともに示す。
図5に、予想されるポリクローナルカッパおよびラムダ軽鎖についての+11荷電状態の拡大図も示す。
図6に、カッパおよびラムダのポリクローナルな分子質量プロファイルを示している、分子質量に変換後の、デコンボリューションされた
図5のマススペクトルを示す。
図6内の挿入図に、実験的に観測された分子質量プロファイルと優れた一致を示す、遺伝子配列データから計算された正規分布型分子質量プロファイルを示す。カッパポリクローナル軽鎖について計算された平均分子質量は、23,433Daであり、一方でラムダ軽鎖についての平均分子質量は、22,819Daであった。これは、言い換えると、遺伝子配列データを使用してカッパ軽鎖とラムダ軽鎖との間の計算された差よりも19Da(3%)低い614Daの差になる。
【0093】
実施例2 - 軽鎖アイソタイプの標識の確認
2つの分子質量プロファイルが確かにカッパおよびラムダ軽鎖アイソタイプを表していたことを確認するために、正常プール血清から得られた市販の精製IgGカッパ調製物および精製IgGラムダ調製物を、上記方法を用いてmicroLC-ESI-Q-TOF MSにより分析した。
図7に、正常プール血清(上)、IgGカッパが精製された正常プール血清(中央)、およびIgGラムダが精製された正常プール血清(下)についてのデコンボリューション後の分子質量プロファイルを比較した結果を示す。本図は、IgGカッパが精製された正常プール血清中にラムダのポリクローナルな分子質量プロファイルが不在であること、およびIgGラムダが精製された正常プール血清中にカッパのポリクローナルな分子質量プロファイルが不在であることをはっきりと示している。さらに、以前に記載されたトップダウンMSを使用して、IgGカッパが精製された血清試料のアイソタイプおよびIgGラムダが精製された血清試料のアイソタイプを確認した(Barnidge. DR et al. J Proteome Res 2014)。これらの観測は、血清中のポリクローナルカッパ軽鎖がおよそ23,200Daから23,800Daの間に分子質量プロファイルを有し、血清中のポリクローナルラムダ軽鎖がおよそ22,500Daから23,200Daの間に分子質量プロファイルを有するという結果を裏付けている。
【0094】
カッパおよびラムダ軽鎖の分子質量プロファイルを提供することに加えて、本明細書提供のmicroLC-ESI-Q-TOF MS法は、免疫グロブリンが濃縮され、DTTで還元された血清からの各アイソタイプの相対存在量も提供する。
図6に、カッパ軽鎖について計算されたピーク面積が2.40×10
5であると分かった一方で、ラムダ軽鎖についてのピーク面積は7.51×10
4であると分かり、その結果、公表された結果(Haraldsson, A et al. Ann Clin Biochem 1991; 28 (Pt 5):461-6)に類似のカッパ/ラムダ比3.20となった。
【0095】
実施例3 - 非ヒト哺乳類試料中のカッパおよびラムダの測定
4種の他の哺乳類からの血清で追加的な実験を行って、カッパ/ラムダの発現比の差を評価した。
図8に、ヒツジ、ヤギ、ウシ、およびウマ由来のプール血清試料についての結果を示す。これらの分子質量プロファイルは、ヒツジ、ヤギ、ウシ、およびウマが、ラムダの質量範囲に入るポリクローナルな免疫グロブリン軽鎖分子質量プロファイルを有することを示している。トップダウンMSをヒツジ血清試料に行って、観測された分子質量プロファイルが実際にラムダアイソタイプであったことを確認した(データは示さず)。ラムダ軽鎖が奇蹄類および偶蹄類において支配的なアイソタイプであるという観測は、以前に公表された観測と一致する(Arun, SS et al. Zentralbl Veterinarmed A 1996; 43:573-6; Sun Y, et al. J Anim Sci Biotechnol 2012; 3:18;およびButler, JE et al Dev Comp Immunol 2009; 33:321-33)。
【0096】
実施例4 - 様々な障害を有する患者におけるカッパ軽鎖とラムダ軽鎖の比
上記方法を用いて、様々な障害を有する患者からの血清試料を調査した。具体的には、多くの場合に多クローン性高ガンマグロブリン血症または高ガンマグロブリン血症と呼ばれる、高レベルの総血清免疫グロブリンを有する患者の血清の軽鎖プロファイルを検査した。
図9に、正常な対照血清(下の線)と比較した高ガンマグロブリン血症を有する患者から採取された血清から観測された+11荷電状態のカッパおよびラムダ軽鎖イオン(上の線)を示す。免疫グロブリン軽鎖の溶離時間からの全てのスペクトルを合計することによってマススペクトルを取得した(データは示さず)。比較すると、高ガンマグロブリン血症を有する患者からの血清中の軽鎖の全体的な存在量が、正常対照からの血清と比較して約2倍高いと見て取れる。加えて、高ガンマグロブリン血症の患者からのスペクトルは、ポリクローナルバックグラウンドを超えて存在する異なるモノクローナル軽鎖を表し、スペクトルにオリゴクローナルな外観を与えている。
【0097】
外れたカッパ/ラムダ軽鎖分子質量比を示した、高ガンマグロブリン血症を有する患者からのいくつかの他の血清試料を分析した。
図10に正常な対照血清(上)、原因不明の慢性炎症応答を有する患者(中央)、ならびに唾液腺および涙腺に関する自己免疫性障害であるシェーグレン症候群を有する患者(下)から観測された+11荷電状態のイオンを示す。慢性炎症を有する患者からの中央のプロファイルは、ラムダ軽鎖の全体的な存在量がカッパ軽鎖の存在量よりも大きいことを示す。カッパ軽鎖の計算されたピーク面積は、4.05×10
5であることが分かり、一方でラムダ軽鎖は、7.44×10
5であることが分かり、その結果、カッパ/ラムダ比は0.54または35:65であり、それは、正常な対照血清で観測されたカッパ/ラムダ比のほぼ正反対である。シェーグレン症候群を有する患者からのプロファイルは、カッパ軽鎖の優位を示す。計算されたカッパ軽鎖のピーク面積は、1.05×10
5であることが分かり、一方でラムダ軽鎖について計算されたピーク面積は2.10×10
4であることが分かり、その結果、カッパ/ラムダ比は5または83:17となる。
【0098】
実施例5 - モノクローナル抗体を有する試料中の軽鎖の同定
カッパ軽鎖およびIgG重鎖を有する治療用組換えモノクローナル抗体HUMIRA(登録商標)(アダリムマブ)が添加された正常血清を使用する実験も行った。
図11に、上記のように行ったLC-MS分析からの軽鎖について観測された応答を示す。図の上に、異なる荷電状態を強調して、多価軽鎖イオンをHUMIRAの多価カッパ軽鎖イオンと共に示す。
図11の下に、m/zスペクトル中の多価イオンをダルトン(Da)の単位でそれらの測定精密分子質量に変換したときに見出される分子質量を示す。本結果は、正常血清に0.01g/dL(100mg/L)添加されたHUMIRAからのカッパ軽鎖が、分子質量23,407Daでポリクローナルバックグラウンドを超えて同定できることを実証している。この分子質量は、HUMIRAのカッパ軽鎖の質量と一致する。
【0099】
実施例6 - モノクローナルガンモパシーを有する患者からの試料
公知のラムダモノクローナル遊離軽鎖を有する患者であり、またカッパ軽鎖およびIgG重鎖を有する治療用組換えモノクローナル抗体REMICADE(登録商標)(インフリキシマブ)で処置もされている患者からの血清を使用する実験も行った。
図12に、上記のように行ったLC-MS分析から軽鎖について観測された応答を示す。図の上に、内因性モノクローナルラムダ軽鎖およびREMICADEからのカッパ軽鎖からの多価軽鎖イオンを示す。
図12の下に、m/zスペクトルの中の多価イオンをダルトン(Da)の単位でそれらの測定精密分子質量に変換したときに見出される分子質量を示す。本結果は、内因性モノクローナルラムダ軽鎖(22,606Da)および投与されたREMICADEからのカッパ軽鎖(23,433Da)が、ポリクローナルバックグラウンドを超えて明らかに目に見えることを実証している。加えて、内因性ラムダ軽鎖は、ラムダの分子質量分布内に位置し、一方でRemicadeからのカッパ軽鎖は、正確な分子質量(24,433Da)でカッパの分子質量分布内にある。
【0100】
実施例7 - モノクローナル抗体が添加された試料中の重鎖の同定
カッパ軽鎖およびIgG重鎖を有する治療用組換えモノクローナル抗体HUMIRA(登録商標)(アダリムマブ)が添加された正常血清を使用して実験を行った。
図13に、上記のように行ったLC-MS分析から重鎖について観測された応答を示す。図の上に、重鎖多価イオンをHUMIRA重鎖の多価イオンと共に、それらの異なる荷電状態を強調して示す。
図13の下に、m/zスペクトルにおける多価イオンをそれらの測定精密分子質量にダルトン(Da)単位で変換したときに見出された分子質量を示す。本結果は、正常血清に0.5g/dL(5g/L)添加されたHUMIRAからのIgG重鎖が、ポリクローナルバックグラウンドを超えて、グリコシル化を有するHUMIRA重鎖の質量に対応する分子質量50,636Daで同定できることを実証している。非グリコシル化形態も47,140Daに観測される。本方法は、モノクローナル免疫グロブリンに関連するグリコフォームがポリクローナルバックグラウンドを超えて観測される限り、ポリクローナルバックグラウンドを超えたモノクローナル免疫グロブリンを同定することに焦点を合わせており、本方法は、分子質量により重鎖をアイソタイピングすることができる。
【0101】
実施例8
本明細書提供の方法を用いてHIV感染患者からの血清試料を分析し、それによりオリゴクローナルな免疫応答が実証された(
図15)。この種のクローンの分布は、現行のゲルに基づく免疫グロブリンの特徴づけによるものでは不可能である。
【0102】
実施例9
CSFおよび血清試料。Clinical Immunology LaboratoryのOCBアッセイから廃棄試料を収集した。
【0103】
等電点ゲル電気泳動法に続くIgG免疫ブロット法(IgG IEF)OCBアッセイ。Clinical Immunology Laboratoryによって開発されたIgG IEF OCBアッセイを行うための標準的な作業手順に従い、Helena Laboratories(Beaumont, TX)からの試薬セットを使用した。
【0104】
試薬。重炭酸アンモニウム、ジチオトレイトール(DTT)、およびギ酸は、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)から購入した。メロンゲルは、Thermo-Fisher Scientific(Waltham MA)から購入した。水、アセトニトリル、および2-プロパノールは、Honeywell BurdickおよびJackson (Muskegon, MI)から購入した。ヒト尿から精製されたカッパおよびラムダモノクローナル軽鎖は、Bethyl Laboratories (Montgomery, TX)から購入した。
【0105】
質量分析アッセイのためのCSFの調製。50mM重炭酸アンモニウム緩衝液、pH8.0中に溶解させた200mM DTT 20μLを添加することにより、体積20μLのCSFを還元し、次に55℃で30分間インキュベートした。注入を待つ間、試料を9℃で深型96ウェルPCRプレート(容積300μL)に入れた。
【0106】
質量分析アッセイ用の血清調製。メロンゲル180μLを使用して体積20μLの血清の免疫グロブリンを濃縮し、次に前記のようにDTTを添加することによって試料20μLを還元した。Barnidge DR, Dasari S, Botz CM, et al. Using Mass Spectrometry to Monitor Monoclonal Immunoglobulins in Patients with a Monoclonal Gammopathy. J Proteome Res. 2014 Feb 11を参照されたい。
【0107】
液体クロマトグラフィー。Eksigent MicroLC 200 Plus System(Foster City, CA)を使用して免疫グロブリンを分離し、その後前記のようにABSciex TripleTOF 5600四重極飛行時間型質量分析計(ABSciex, Vaughan ON, Canada)でイオン化および検出を行った。Barnidge DR, Dasari S, Botz CM, et al. Using Mass Spectrometry to Monitor Monoclonal Immunoglobulins in Patients with a Monoclonal Gammopathy. J Proteome Res. 2014 Feb 11を参照されたい。
【0108】
MSデータの分析。Analyst TF v1.6を機器制御のために使用した。Analyst TF v1.6およびPeakView v1.2を使用してデータを見た。分析のために使用したマススペクトルは、軽鎖について公知のLC保持時間にわたり全てのマススペクトルを合計することによって得た。特定の荷電状態m/z値のピーク質量中心を使用して、前記のようにCSFおよび血清中の特異的モノクローナル免疫グロブリンの存在量を評価した。Barnidge DR, Dasari S, Ramirez-Alvarado M, et al. Phenotyping polyclonal kappa and lambda light chain molecular mass distributions in patient serum using mass spectrometry. J Proteome Res. 2014 Nov 7;13(11):5198-205を参照されたい。精密な分子計算は、BioAnalyst(商標)を使用してタンパク質からの全ての多価イオンをデコンボリューションすることによって行った。
【0109】
結果。
図16に、ゲルに基づくOCBアッセイおよび質量分析に基づくOCBアッセイにおける段階を図示する。ゲルアッセイ(
図16の上)は、IEFゲル電気泳動法(1)に続いて、受動的ニトロセルロースブロット法(2)、抗IgG抗体、およびIgGを視覚化するための二次抗体(3)を使用する。工程は手作業であり、完了するのに数時間かかる。質量分析アッセイは、IgGについて血清試料を濃縮するためにメロンゲルを使用し、一方でCSF試料は1:1希釈される(1)。両方の試料はDTTで還元され、その後microLC-ESI-Q-TOF MSにより分析される(3)。全工程は自動化可能であり、1時間かかる。
図17に、IgG IEFによりOCB陰性であった患者から取得された、一致したCSFおよび血清についてのmiRAMMの結果を示す。本図は、還元された軽鎖からの+11荷電状態のポリクローナルなカッパおよびラムダの分子質量分布が、正規分布していることを示す。
図18に、IgG IEFによりCSFおよび血清のOCBが一致した患者からの、一致したCSFおよび血清についてのmiRAMMの結果を示す。両方の試料においてポリクローナルバックグラウンドを超えて複数のカッパおよびラムダ軽鎖が観察される。CSFのカッパ軽鎖領域に検出された大きなバンドは、計算分子質量23,529.37Daを有し、一方で血清中に見出された軽鎖は、計算分子質量23,528.75Daを有し、差は0.62Daであった。これらの結果は、CSFおよび血清における「バンド」を一致させることに対するmiRAMMの並外れた特異性を実証している。CSF特異的クローンを同定するためのmiRAMMの能力を
図19および
図20に示す。
図19に、IgG IEFによってCSFに独特なカッパOCBバンドを有する患者由来の一致した血清およびCSFについてのmiRAMMの結果を示し、一方で
図20に、IgG IEFによってCSFに独特なラムダOCBバンドを有する患者由来の一致した血清およびCSFについてのmiRAMMの結果を示す。2つの図は、血清試料には存在しない複数のクローン状軽鎖のピークがCSF試料中に存在することをはっきりと実証している。
【0110】
患者56人のコホートをmiRAMMにより分析して、その性能をIgG IEFによるOCBと比較した。多数のクローン軽鎖が、3よりも大きいシグナル対ノイズ比でCSF中から独特に同定された場合、試料を陽性と呼んだ。コホートは、陽性24人および陰性32人のIgG IEFのOCBの結果を含んでいた。患者をmiRAMMにより盲検的に分析したとき、同じ患者が、陽性22人、陰性34人と記録された。不一致の2人は、miRAMMによりCSF中にはっきりしたクローン状軽鎖を実際に有したが、これらの軽鎖の存在量は、S/Nカットオフの3をわずかに下回った。
【0111】
miRAMMはまた、免疫グロブリンを定量するためにも使用することができる。精製されたモノクローナルカッパおよびラムダ軽鎖標準をOCB陽性CSF中に希釈した。1〜50μg/mLの範囲のカッパまたはラムダ軽鎖を使用して希釈系列を作った。カッパおよびラムダ標準についてのピーク面積は、R2値0.999および0.992で直線的に希釈された。OCB陽性CSFを使用して日間および日内精度を計算したところ、20回の反復からの日内精度は8.1%であり、一方で10日にわたり計算した日間精度は12.8%であった。
図21におけるマススペクトルに、CSF試料中に添加された4つの異なる濃度のカッパ軽鎖標準からの重ね合わせたマススペクトルを示す。緑色の線で示すカッパ軽鎖標準ピークは、12.5μg/mL標準であり、一方で青色の線は、1.5μg/mL標準を表す。各カッパ軽鎖標準の存在量における変化が、患者自身のカッパ軽鎖の一定の存在量に隣接して見られる。
【0112】
実施例10
方法。日常的な臨床PEL/IFE検査により以前に分析された血清試料556個をMADLI-TOF MS(Microflex LT, Bruker Daltonics)により評価した。分析前に、Capture Select(商標)(Hu)LC-カッパおよびLC-ラムダ親和性樹脂(Life Technologies)を用いて血清から無傷の免疫グロブリンを単離し、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP-HCl, Thermo Scientific)で還元した。ドライドドロプレット法およびマトリックスとしてα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸を使用して、精製した試料をMALDI-TOF分析用に調製した。正イオンモードでレーザー500ショットを合計して質量分析を行った。
【0113】
結果。スペクトル分析のために、軽鎖のMH+1およびMH+2荷電状態のイオン分布を正常血清のスペクトルと比較した。任意のモノクローナル異常が正常パターンから識別された。アッセイされた556個の試料のうち、IFEにより陽性であった試料421個中406個(96%)から異常なパターンが同定された。異常は、IFEにより陰性であった試料126個中23個(18%)でも認められた。IFEにより判定不能であった試料9個のうち異常が認められたのは2個であった。
【0114】
実施例11
異なる免疫グロブリンアイソタイプに対して親和性を有する単一ドメイン抗体フラグメントから溶離したタンパク質を分析することによってマススペクトルを生成した。簡潔には、健康な成人の血清試料43個から各アイソタイプについてアイソタイプ特異的なm/z分布を引き出すために使用されるマススペクトルを生成した。試料を1×PBSで10倍希釈した(患者試料100μL+1×PBS 900μL)。各単一ドメイン抗体フラグメント(IgG、IgA、IgM、カッパおよびラムダ定常領域をターゲティングする)10μLをアガロースビーズ(50%ビーズ+50% 1×PBS)と結合させたものを希釈済み試料200μLに添加し、RTで30分間インキュベートした。上清をビーズから除去した。次にビーズを1×PBS 200μL中で2回、次に水200μL中で2回洗浄した。次に50mM TCEPを有する5%酢酸80μLをビーズに添加し、RTで5分間インキュベートした。次に、マトリックス0.6μL(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)をスポットした96ウェルMALDIプレート上の各ウェルに上清0.6μLをスポットした。続いて、さらなるマトリックス0.6μLを試料の上にスポットする。MALDI-TOF質量分析計を使用して正イオンモードでレーザー500ショットを合計して質量分析を行う。質量/電荷(m/z)範囲9,000〜32,000m/zを取得した。次に、各SDAFについて生成したマススペクトルを重ね合わせ、軽鎖および重鎖レパートリーによって占有されている特異的m/z領域を有する異なるピークの存在により、Mタンパク質を検出およびアイソタイピングした。
【0115】
他の態様
本発明がその詳細な説明と共に記載されているが、前述の説明は、例証目的であって、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定する意図はないことを理解されたい。他の局面、利点、および改変は、添付の特許請求の範囲に含まれる。