特許第6759105号(P6759105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759105
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】エンジンマウントの取付構造および方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 5/12 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   B60K5/12 E
【請求項の数】15
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-561637(P2016-561637)
(86)(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公表番号】特表2017-512705(P2017-512705A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】GB2015050824
(87)【国際公開番号】WO2015155500
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2018年3月2日
(31)【優先権主張番号】1406336.6
(32)【優先日】2014年4月8日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】303063311
【氏名又は名称】ベントレー・モーターズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒル,キース
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06374939(US,B1)
【文献】 特開2006−275273(JP,A)
【文献】 独国特許発明第19718049(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 5/00 − 5/12
F16F 1/00 − 6/00
F16M 1/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用のエンジンマウントの取付構造であって、
前記取付構造が、軸線を有する、エンジンマウント取付用の取付部品と、内燃機関取付用のブラケットと、を含み、
前記ブラケットが、前記軸線と平行な方向に前記取付部品を収容するように配置され、
前記ブラケットは、前記ブラケットに前記取付部品を保持させるかまたは前記ブラケットから前記取付部品を解放させるように操作可能な機構を含み、
前記機構は、前記取付部品が前記ブラケットに収容される方向に対して垂直な方向に沿って、前記機構の操作のために作業員が前記機構にアクセス可能である、取付構造。
【請求項2】
前記取付部品は、円筒形の部分を有し、
前記円筒形の部分は、前記取付部品が前記エンジンマウントにはめ込まれたとき、前記円筒形の部分の操作のために作業員が当該円筒形の部分にアクセス可能であり、
前記取付部品の前記軸線は、前記円筒形の部分の軸線である、請求項1に記載の取付構造。
【請求項3】
前記取付部品がスピゴットである、請求項1または2に記載の取付構造。
【請求項4】
前記スピゴットは、当該スピゴットを形成するカラーと、当該カラーを通って伸びる締結具とを含む、請求項3に記載の取付構造。
【請求項5】
前記ブラケットに前記取付部品を保持させるかまたは前記ブラケットから前記取付部品を解放させるように操作可能な前記機構がクランプである、請求項1から4の何れか1項に記載の取付構造。
【請求項6】
前記クランプが、
前記ブラケットの一部を貫通して形成された開口と、
前記開口から前記ブラケットのエッジまで伸びるギャップと、
前記ブラケットに前記ギャップの両側で共に作用し、これによって前記開口のサイズを減じる機構、を含む、請求項5に記載の取付構造。
【請求項7】
前記開口が円形の断面を有する、請求項6に記載の取付構造。
【請求項8】
前記ブラケットに前記開口の両側で共に作用し、これによって前記開口のサイズを減じる前記機構が締結具である、請求項6または7に記載の取付構造。
【請求項9】
前記締結具がボルトである、請求項8に記載の取付構造。
【請求項10】
前記締結具が前記ブラケットの孔に配置される、請求項8または9に記載の取付構造。
【請求項11】
前記孔が、前記取付部品が前記ブラケットに収容される方向に対して直角に伸びる、請求項10に記載の取付構造。
【請求項12】
内燃機関と、請求項1から11までの何れか1項に記載の取付構造と、を含む装置であって、前記ブラケットが前記内燃機関に取り付けられ、前記取付部品が前記エンジンマウントにはめ込まれ、前記ブラケットによって収容されて保持される装置。
【請求項13】
前記エンジンマウントが自動車に取り付けられる、請求項12に記載の装置を含む自動車。
【請求項14】
前記エンジンが、前記エンジンマウントに上からアクセスさせない構造を含む、請求項13に記載の自動車。
【請求項15】
請求項14に記載の自動車からエンジンマウントを取り外す方法であって、
a. 前記ブラケットから前記取付部品を解放するように操作可能な前記ブラケットの前記機構に一側からアクセスする工程と;
b. 前記自動車の構造から前記エンジンマウントを解放する工程と;
c. 前記エンジンマウントを前記エンジンから離れるように下げ、前記ブラケットからそれを取り外す工程と、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンマウントの取付構造と、エンジンマウントの取外し方法に関する。本発明は特に、自動車の内燃機関(internal combustion engine)の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
市場と規制が求める、自動車の精巧さと性能の高度化は、自動車において、より高度で、より大きく、より強力な内燃機関と、より多くの補助装置を装備することにつながる。エンジンと補助装置は限られたスペースに収容される必要があるので、自動車のエンジンルームが益々過密になり、パッケージング上の重大な問題を引き起こしている。
【0003】
自動車の内燃機関は、エンジンから自動車の構造へのノイズ、振動や耳障りな音の伝達を制限し、エンジンを支持するエンジンマウントを介して、自動車に取り付けられる。エンジンマウントの特徴は、使用中に調整可能であること、たとえば、アイドリング中は、自動車からエンジンを防振するのに適切な柔軟なセッティングであり、自動車運転中は、エンジンのよりよい制御を提供するより硬いセッティングである。
【0004】
この特徴が精巧さを増した結果として、エンジンマウントは、自動車の耐用期間中に交換、すなわち調整または修理のために取り外され交換されることが意図される、いわゆる、修理サービスアイテムになった。その結果として、エンジンマウントを容易に取り外して交換できることが望ましい。
【0005】
従来の装置において、複数の直角ブラケットが自動車エンジンブロックの側面にはめ込まれ、ブラケットを水平に通りブロックの孔へ至る複数のボルトによって固定されている。各ブラケットは、エンジンブロックから一般に水平に離れて突き出ており、それぞれのエンジンマウントに支持されている。ボルトが、各ブラケットの開口を通って下方へ伸びて、エンジンマウントのねじ式開口または取付部品に収容され、これによってブラケットをエンジンマウントに固定する。次いで、各エンジンマウントは、自動車の構造にはめ込まれた、典型的にはエンジンルームの構造部品またはサブフレームにはめ込まれたブラケットによって支持されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この装置に関する問題は、エンジンマウントを取り外すのに、エンジンマウント上のボルトにアクセスし、そのネジを抜く必要が生じることである。エンジンマウントは一般に、エンジンの底部の方に位置するため、エンジンが自動車の過密なエンジンルームにはめ込まれた状態では、ボルトに到達するのはしばしば困難かまたは不可能である。これは幅の広いV型およびW型エンジンでは特に問題であり、結果として、エンジンマウントを取り外すのに、エンジンを取り外し、および/または部分的にエンジンを分解する必要がある。
【0007】
本発明の実施の形態は、この問題を考慮して成されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、内燃機関用エンジンマウントの取付構造であって、前記取付構造が、エンジンマウント取付用の軸を有する取付部品と、内燃機関取付用ブラケットと、を含み、前記ブラケットが、前記軸と実質的に平行な方向に前記取付部品を収容するように配置され、前記ブラケットに前記取付部品を保持させるかまたは前記ブラケットから前記取付部品を解放させるように操作可能な機構を含み、前記取付部品が前記ブラケットに収容される方向に対して実質的に垂直な方向に沿って前記機構がアクセス可能である。
【0009】
これによって、(従来のエンジンマウント装置の場合と同様に)取付部品を取り外してブラケットからエンジンマウントを解放するために、取付部品にアプローチする必要がある方向に対して一般に直角の方向からブラケットにアプローチし、ブラケットから取付部品を解放することにより、ブラケットからエンジンマウントを解放することができる。したがって、これによって、取付部品にアクセスし取付部品を取り外すことが不可能な状況において、ブラケットからエンジンマウントを解放することができ、結果として、エンジンからエンジンマウントを解放することができる。
【0010】
前記取付部品がエンジンマウントにはめ込まれたとき、前記取付部品がアクセス可能な実質的に円筒形の部分を有してもよい。前記取付部品の前記軸が前記円筒形の部分の軸であってもよい。前記取付部品がスピゴットであってもよく、カラーを通って伸びる締結具であってもよい。
【0011】
前記ブラケットに前記取付部品を保持または前記ブラケットから前記取付部品を解放させるように操作可能な前記機構がクランプであってもよい。前記クランプが、前記ブラケットの一部を通って形成された開口と、前記開口から前記ブラケットのエッジまで伸びるギャップと、前記ブラケットに前記ギャップの両側で共に作用し、これによって前記開口のサイズを減じる機構と、を含んでもよい。前記開口が一般に円形の断面を有してもよい。前記ブラケットに前記開口の両側で共に作用する機構が締結具であってもよく、ボルトであってもよい。前記締結具が前記ブラケットの孔に配置されてもよい。前記孔が、前記取付部品が前記ブラケットに収容される方向に対して実質的に直角に伸びてもよい。
【0012】
また、本発明の他の態様は、内燃機関と、上記取付構造と、を含む装置であって、前記ブラケットが前記内燃機関に取り付けられ、前記取付部品が前記エンジンマウントにはめ込まれ、前記ブラケットによって収容されて保持される装置を提供する。また、本発明の他の態様は、前記エンジンマウントが自動車に取り付けられる、上記装置を含む自動車を提供し、前記エンジンが、前記エンジンマウントに上からアクセスさせない構造を含んでもよい。
【0013】
また、本発明の他の態様は、自動車からエンジンマウントを取り外す方法であって、前記ブラケットから前記取付部品を解放するように操作可能な前記ブラケットの前記機構に一側からアクセスする工程と;前記自動車の構造から前記エンジンマウントを解放する工程と;前記エンジンマウントを前記エンジンから離れるように下げ、前記ブラケットからそれを取り外す工程と、を含んでいる。
【0014】
以下、本発明がよりよく理解されるように、添付図面を参照して例示のみを目的としてその実施の形態を記述する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、自動車の従来のエンジンマウント装置の部分的な斜視図である。
図2図2は、図1の装置を別の方向から見た部分的な斜視図であり、エンジンブロックは示されていない。
図3図3は、図1のエンジンマウントの組み込みに必要な工程を示した図である。
図4図4a〜図4dは、本発明の装置のエンジンマウントをブラケットにはめ込む工程の斜視図であり、図4eは、図4cと図4dに示されたブラケットの部分平面図である。
図5図5は、本発明のエンジンマウントの斜視図である。
図6図6は、図5のエンジンマウントを取り外す工程の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施の形態においては、最上部、底部、側面およびこれらと同類の用語が、図面に示される位置関係、すなわち使用が意図される位置関係において装置に言及するために使用されるが、他の実施の形態の限定として取られるべきではない。
【0017】
図1〜3を参照すると、従来の装置において、内燃機関が、自動車のエンジンルームで複数(図では1つ)の金属直角ブラケット1によって支持されている。各ブラケット1は、ブラケットの開口5からブロック2の孔を通る、4本のボルト3または他の適切な締結具によって、エンジンのブロック2に取り付けられている。ブラケットにおける開口5はすべて短い孔を画定し、これらの孔の軸は実質的に平行で、自動車が水平面上にあるとき、一般に水平な方向に伸びている。
【0018】
各ブラケット1は、このブラケットがエンジンブロック2に固定されるとき、エンジンブロックから離れて突出する、突出直角部6を含んでいる。この部分の自由端は、(乗り物が水平面上にあるとき)一般に垂直の軸を有する短い孔を画定する、実質的に円形の開口7を画定する板構造を含んでいる。ボルト8はこの開口7を通ってエンジンマウント9へと下方に伸び、エンジンマウント9は適切なブラケットを介して自動車に取り付けられている。
【0019】
図示する装置において、エンジンマウント9は、エンジンブロック2にはめ込まれたとき、ボルト8のヘッドへのアクセスを妨げるエンジンマニホールドおよびターボチャージャー装置10の下に位置している。
【0020】
したがって、図3に示すように、従来の取付シーケンスでは、第一にブラケット1をエンジンマウント9にボルト8で留め、次いでブラケット1をエンジンブロックにボルト3で留め、次いでマニホールドとターボチャージャーアセンブリ10をエンジンブロックにはめ込む。その結果、エンジンルームにエンジンを組み込むことができ、エンジンマウント9がブラケットを介して自動車の構造に適切に固定される。
【0021】
したがって、修理または交換のためにエンジンマウント9を取り外すときには、車両からエンジンを取り外し、それを部分的に分解する必要があり、不便で時間がかっている。
【0022】
一方、図4図6に示すように、本発明は他のブラケット11を提供している。このブラケット11は、従来のブラケット1の開口5と同様の開口12を含み、ボルト13でエンジンブロックに取り付け可能である。また、ブラケット11は実質的に円形の開口14を画定する板構造17を含み、この開口14が、開口12によって画定される孔に対して一般に直角の軸を有する短い孔を画定し、使用中に開口14の軸は一般に垂直である。しかしながら、ブラケット11は、板構造から材料の細片が切り取られ、開口14から板構造のエッジに伸びる一般に平行な面のギャップ15となっている点で、従来のブラケット1とは異なっている。孔16は板構造の他の外側エッジからギャップ15へと延び、このエッジは、ギャップ15が形成されているエッジに対してほぼ直角にギャップ15へと伸び、ギャップ15の反対側の内部ねじ式孔へと続いている。
【0023】
ボルト18が孔16に導入され、ギャップ15の両側で板構造の部分を引き寄せるために締め付けられ、開口14のサイズを僅かに減じることができる。
【0024】
この改良ブラケットの使用に関して、ボルト8が、円筒状のカラー19を通って、エンジンマウント9の最上部に通される。このボルトによりカラー19がエンジンマウント9に固定される。このカラー19は、エンジンマウント9上にスピゴットを形成する、実質的に円筒状の外表面を有している。カラー19がブラケット11の開口14にぴったり入るように、カラー19のサイズが合わせられ、ブラケット11にボルト18が挿入され、締め付けられ、カラー19を、つまりエンジンマウント9をブラケット11に対してクランプできる。
【0025】
これによって、エンジンマウント9をはめ込むことができ、ボルト8を取り外さなくても、ブラケット11から取り外すことができる。目的とする装置では、エンジンマウント9の側面からボルト18にアクセスできるが、図1および図2に示すように、ボルト8にはアクセスできない。
【0026】
したがって、既存の装置とは対照的に、エンジンを取り外したり分解したりしなくても、エンジンマウントを取り外すことができる。図6に示すように、単にボルト18を緩めるかまたは取り外しさえすれば、カラー19をブラケット11から取り外すことができる。次いで、エンジンマウント9が自動車の構造から分離されたら、それを取り外すことができる。逆の手順で、エンジンマウントを再度はめ込んだり、取替品のエンジンマウントをはめ込んだりできる。如何なる修正もエンジンマウント9に行われていない。
【0027】
上記実施の形態は例示として記述されたものであり、添付のクレームで限定される発明の範囲から逸脱しない範囲で多くの変形例が可能である。
図1
図2
図3
図4a-4e】
図5
図6