特許第6759135号(P6759135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759135
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】建設機械の油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20200910BHJP
   F15B 11/17 20060101ALI20200910BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20200910BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   E02F9/22 P
   F15B11/17
   F15B11/02 B
   F15B11/02 C
   F15B11/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-54542(P2017-54542)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-155065(P2018-155065A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】小高 克明
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 昭広
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−249849(JP,A)
【文献】 特開2004−036698(JP,A)
【文献】 特開2002−242904(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0020082(US,A1)
【文献】 特開2003−113809(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/074670(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0218494(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2008−0078856(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/42−3/43
E02F 3/84−3/85
E02F 9/20−9/22
F15B 11/00−11/22
F15B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にオプション機器の装着が可能な作業アタッチメントと、前記作業アタッチメントを駆動するアタッチメントアクチュエータと、前記オプション機器を駆動するオプションアクチュエータと、前記アタッチメントアクチュエータ及び前記オプションアクチュエータを作動させる圧油を供給する第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプを駆動するエンジンと、前記第1油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第1レギュレータ及び前記第2油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第2レギュレータと、前記アタッチメントアクチュエータを操作するアタッチメント操作装置及び前記オプションアクチュエータを操作するオプション操作装置とを備えており、
前記第1レギュレータには前記第1油圧ポンプの吐出圧と前記第2油圧ポンプの吐出圧が導かれ、前記第2レギュレータに前記第1油圧ポンプの吐出圧と前記第2油圧ポンプの吐出圧とが導かれて、前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプの合計馬力を、前記エンジンの所定馬力の範囲内に制御する機構を有し、
前記アタッチメントアクチュエータは前記第1油圧ポンプから吐出される圧油で駆動されるとともに、前記オプションアクチュエータは前記第2油圧ポンプから吐出される圧油で駆動される建設機械の油圧制御装置であって、
前記第2レギュレータへ導かれる前記第1油圧ポンプの吐出圧を遮断する遮断装置と、
前記第2レギュレータへ導かれる前記第1油圧ポンプの吐出圧を遮断する信号を、前記遮断装置に出力するコントローラとを備え
前記オプション機器が操作されたとき、前記コントローラが前記第2レギュレータへ導かれる前記第1油圧ポンプの吐出圧を遮断する信号を前記遮断装置に出力し、前記第2レギュレータに前記第2油圧ポンプの吐出圧のみが導かれることで前記第2レギュレータを個別馬力制御に移行させ、
個別馬力制御に移行した前記第2レギュレータは、前記オプション操作装置の操作量に応じて、前記第2油圧ポンプの押しのけ容積を制御する
ことを特徴とする建設機械の油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の油圧制御装置であって、
前記遮断装置は、前記第2レギュレータへ導かれる前記第1油圧ポンプの吐出圧を遮断する切替弁と、前記オプション操作装置の操作を検出する検出器とから成り、
前記コントローラは、前記検出器から出力された検出信号により前記オプション操作装置の操作が有と判断された場合、前記切替弁を前記第2レギュレータへ導かれる前記第1油圧ポンプの吐出圧を遮断する位置に作動させることを特徴とする建設機械の油圧制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械の油圧制御装置であって、
前記コントローラは、前記第1油圧ポンプの流量を演算する馬力制御演算部を含み、
前記馬力制御演算部は、前記第1油圧ポンプの吐出圧及び前記第2油圧ポンプの吐出圧とエンジン馬力から、ポンプの最大吸収トルクを超えないように前記第1油圧ポンプの流量を演算することを特徴とする建設機械の油圧制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の建設機械の油圧制御装置であって、
遮断させる機能を無効に前記切替弁を切り替える切替スイッチを有したことを特徴とする建設機械の油圧制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械の油圧制御装置において、
前記コントローラは、前記第1油圧ポンプの流量を演算する馬力制御演算部を含み、
前記馬力制御演算部は、前記第1油圧ポンプの吐出圧及び前記第2油圧ポンプの吐出圧とエンジン馬力から、ポンプの最大吸収トルクを超えないように前記第1油圧ポンプの流量を演算することを特徴とする建設機械の油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端部にオプション機器の装着が可能な作業アタッチメントを備えており全馬力制御が可能な油圧ショベルなどの建設機械の油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先端部が変位するように作動する作業アタッチメントを備えた油圧ショベルなどの建設機械では、その先端部にオプション機器が装着される場合がある。例えば、一般的な油圧ショベルでは、作業アタッチメントとして起伏可能なブームと、このブームの先端に上下方向の回動可能に連結されたアームと、このアームの先端に上下方向の回動可能に連結されたバケットとを含んでいるが、汎用性の観点からバケットに代えて種々のオプション機器が装着されることがある。オプション機器としては、コンクリートバイブレータ、草刈り機、ツインヘッダー、ハーベスタ、ブレーカ等がある。これらのオプション機器は、駆動に際してバケットの場合とは異なり、このオプション機器を駆動するオプションアクチュエータに供給される流量として固定流量(一定流量)を要求する。
【0003】
また、前述した油圧ショベルにあって油圧ポンプが2つ以上設けられる場合には、一般に全馬力制御と呼ばれるトルク制御を行うポンプ制御装置が備えられている。この全馬力制御は、例えば2つの油圧ポンプ(以下、「第1油圧ポンプ」「第2油圧ポンプ」という)のそれぞれのレギュレータに第1油圧ポンプと第2油圧ポンプの両方の吐出圧を導き、第1油圧ポンプの吸収トルクと第2油圧ポンプの吸収トルクの和が設定した最大吸収トルクに達すると、それ以上の油圧ポンプの吐出圧の上昇に対して第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプのそれぞれの押しのけ容積を減らすように各レギュレータを制御するものである。これにより、第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプから吐出される圧油で駆動する複数のアクチュエータが単独で駆動される場合は第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプに割り当てられた全馬力を活用でき、原動機出力の有効利用が可能となる。
【0004】
全馬力制御を行うポンプ制御装置が備えられた建設機械においては、複数のアクチュエータを同時に駆動する場合、例えば作業アタッチメントを駆動するアタッチメントアクチュエータの1つであるアームシリンダと、他のアクチュエータとを複合駆動する場合、第1油圧ポンプからの圧油をアームシリンダに供給し、第2油圧ポンプからの圧油を他のアクチュエータに供給することで、アームシリンダと他のアクチュエータの負荷の大小にかかわらず、これらのアクチュエータに対し適正な流量の圧油を供給することができる。
【0005】
しかしながら、前述した複合駆動中に、一方のアクチュエータが高負荷となる場合には、高負荷のアクチュエータを駆動している油圧ポンプの吐出圧が上昇し、これに伴って第1油圧ポンプと第2油圧ポンプの平均吐出圧が高くなり、他方のアクチュエータに圧油を供給している油圧ポンプの押しのけ容積が減少し、他方のアクチュエータの駆動速度が遅くなってしまう。
【0006】
なお、特許文献1に、複数のアクチュエータ例えばオプションアクチュエータと、アタッチメントアクチュエータとの複合駆動時に、オプションアクチュエータを駆動する油圧ポンプの吐出圧がリリーフ圧まで上昇したことを検知すると、オプションアクチュエータに圧油を供給している油圧ポンプの吐出流量を下げ、アームシリンダに圧油を供給している油圧ポンプの吐出流量を上げることで、アームシリンダの駆動速度の低下を防ぐ作業機械の油圧制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−249849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、オプション機器を構成するコンクリートバイブレータ、草刈り機、ツインヘッダー、ハーベスタ、ブレーカ等においては、上述したようにバケットの場合と異なり、そのオプション機器を駆動するオプションアクチュエータに常に一定の流量を供給することが必要になる。しかしながら、全馬力制御ではオプションアクチュエータとアタッチメントアクチュエータの複合駆動時にあって、アタッチメントアクチュエータの負荷圧が上昇して第1油圧ポンプと第2油圧ポンプの平均吐出圧が上昇すると、オプションアクチュエータに供給される流量が減少して作業性が低下してしまうことがある。
【0009】
特許文献1の従来技術は、前述のようにオプションアクチュエータとアタッチメントアクチュエータの複合駆動時に、オプションアクチュエータに圧油を供給している油圧ポンプの圧力がリリーフ圧に達していることを検知すると、オプションアクチュエータに圧油を供給している油圧ポンプの吐出流量を下げ、アタッチメントに圧油を供給している油圧ポンプの吐出流量を上げることで、アタッチメントアクチュエータに供給される流量を確保するようにしている。しかし特許文献1の従来技術においては、オプションアクチュエータの負荷圧がリリーフ圧までは達していないが高負荷になった場合にも、オプションアクチュエータに圧油を供給している油圧ポンプの吐出流量を減少させるものであり、このような場合にオプションアクチュエータに必要流量が供給されず、作業性が低下してしまう。特許文献1の従来技術は、この点についての配慮がなされていない。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の目的は、全馬力制御を行うものにあって、オプションアクチュエータとアタッチメントアクチュエータの複合駆動時に、オプションアクチュエータとアタッチメントアクチュエータの負荷の差にかかわらず、オプションアクチュエータに必要流量を供給することができる建設機械の油圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明は、先端部にオプション機器の装着が可能な作業アタッチメントと、前記作業アタッチメントを駆動するアタッチメントアクチュエータと、前記オプション機器を駆動するオプションアクチュエータと、前記アタッチメントアクチュエータ及び前記オプションアクチュエータを作動させる圧油を供給する第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプを駆動するエンジンと、前記第1油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第1レギュレータ及び前記第2油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第2レギュレータと、前記アタッチメントアクチュエータを操作するアタッチメント操作装置及び前記オプションアクチュエータを操作するオプション操作装置とを備えており、前記第1レギュレータには前記第1油圧ポンプの吐出圧と前記第2油圧ポンプの吐出圧が導かれ、前記第2レギュレータに前記第1油圧ポンプの吐出圧と前記第2油圧ポンプの吐出圧とが導かれて、前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプの合計馬力を、前記エンジンの所定馬力の範囲内に制御する機構を有し、前記アタッチメントアクチュエータは前記第1油圧ポンプから吐出される圧油で駆動されるとともに、前記オプションアクチュエータは前記第2油圧ポンプから吐出される圧油で駆動される建設機械の油圧制御装置であって、前記第2レギュレータへ導かれる前記第1油圧ポンプの吐出圧を遮断する遮断装置と、前記第2レギュレータへ導かれる前記第1油圧ポンプの吐出圧を遮断する信号を、前記遮断装置に出力するコントローラとを備え、前記オプション機器が操作されたとき、前記コントローラが前記第2レギュレータへ導かれる前記第1油圧ポンプの吐出圧を遮断する信号を前記遮断装置に出力し、前記第2レギュレータに前記第2油圧ポンプの吐出圧のみが導かれることで前記第2レギュレータを個別馬力制御に移行させ、個別馬力制御に移行した前記第2レギュレータは、前記オプション操作装置の操作量に応じて、前記第2油圧ポンプの押しのけ容積を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る建設機械の油圧制御装置は、オプションアクチュエータとアタッチメントアクチュエータの複合駆動時に、オプションアクチュエータとアタッチメントアクチュエータの負荷の差にかかわらず、オプションアクチュエータに必要流量を供給しオプションアクチュエータを速度の低下を生じることなく作動させて、オプション機器によって行われる作業の作業性の低下を防ぐことができる。また、オプション機器が操作されないときには、全馬力制御によってエンジン馬力を効率的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る油圧制御装置が備えられた建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
図2図1に示す油圧ショベルに備えられた本発明の第1実施形態に係る油圧制御装置を示す油圧回路図である。
図3】第1実施形態に備えられたコントローラの構成及びコントローラに関連する機器を示すブロック図である。
図4図3に示したコントローラにおける処理手順を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態における特性を示す図で、(a)は全馬力制御におけるポンプ圧とポンプ流量の関係を示す特性図、(b)は本実施形態のコントローラで実施される特有の制御におけるポンプ圧とポンプ流量の関係を示す特性図、(c)は操作装置から出力される操作信号圧力とポンプ流量の関係を示す特性図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る油圧制御装置を示す油圧回路図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る油圧制御装置を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る建設機械の油圧制御装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態に係る油圧制御装置を備えた建設機械は油圧ショベルであり、走行体1a、及び走行体1a上に旋回可能に設けられ運転室1cを有する旋回体1bとから成るベースマシン1と、このベースマシン1に取り付けられた作業アタッチメント2とを備えている。作業アタッチメント2は、ベースマシン1の旋回体1bに起伏可能に取り付けられたブーム4と、このブーム4の先端部に取り付けられて上下方向に回動可能に連結されたアーム5とを含んでいる。作業アタッチメント2の先端部には、通常備えられるバケットに代えてオプション機器3が装着されている。オプション機器3は、例えばブレーカによって構成されている。
【0016】
ベースマシン1の旋回体1bと、ブーム4との間には伸縮可能なブームシリンダ6が介設され、このブームシリンダ6は、圧油の供給を受けて伸縮することによりブーム4を起立方向に動かす。また、ブーム4とアーム5との間にはアームシリンダ7が開設され、このアームシリンダ7は圧油の供給を受けて伸長することによりアーム5を引き方向に(ブーム4に近づく方向に)回動させる。ブームシリンダ6及びアームシリンダ7はアタッチメントアクチュエータを構成している。
【0017】
また、アーム5とオプション機器3との間にはバケットシリンダ8が介設され、このバケットシリンダ8は圧油の供給を受けて伸長することにより、オプション機器3を引き方向に(アーム5に近づく方向に)回動させる。オプション機器3には、このオプション機器3を駆動する図2に示すオプションアクチュエータ9が設けられている。オプションアクチュエータ9が圧油の供給を受けて作動することにより、オプション機器3が駆動する。
【0018】
図2に示すように、第1実施形態に係る油圧制御装置は、第1油圧ポンプ10aと、第2油圧ポンプ10bと、パイロットポンプ11と、これらの第1油圧ポンプ10a、第2油圧ポンプ10b、及びパイロットポンプ11を回転駆動するエンジン12とを備えている。
【0019】
また、第1油圧ポンプ10a及び第2油圧ポンプ10bに接続された弁装置13と、第1油圧ポンプ10aの吐出圧及び第2油圧ポンプ10bの吐出圧を一定圧に保持するメインリリーフ弁30とを備えている。
【0020】
弁装置13は、流量制御弁14〜16の弁グループと、流量制御弁17〜20の弁グループの2つの弁グループを有している。流量制御弁14〜16は、第1油圧ポンプ10aの吐出路21aにつながるセンタバイパスライン22a上に位置し、第2油圧ポンプ10bは第2油圧ポンプ10bの吐出路21bにつながるセンタバイパスライン22b上に位置している。
【0021】
弁装置13の流量制御弁14は、アタッチメントアクチュエータであるバケットシリンダ8を駆動させるアタッチメント操作装置23の操作により、また、流量制御弁20は、オプション機器3を駆動させるオプション操作装置24の操作によりそれぞれ切り換えられる。アタッチメント操作装置23及びオプション操作装置24は、パイロットポンプ11の吐出圧(一時圧)を元圧にして操作量に応じた操作信号圧力を生成する。
【0022】
なお図示しないが、流量制御弁15,16,17〜19についても、それぞれのアクチュエータに対応する他のアタッチメント操作装置を含むパイロット操作装置からの操作信号圧力により切り替えられる。
【0023】
流量制御弁14が切り替えられると、第1油圧ポンプ10aの圧油が管路25aまたは管路25bを通ってはバケットシリンダ8に供給される。また、流量制御弁20が切り替えられると第2油圧ポンプ10bの圧油が管路26aまたは管路26bを通ってオプションアクチュエータ9に供給される。なお、流量制御弁15,16,17〜19が切り替えられると、第1油圧ポンプ10a及び第2油圧ポンプ10bの圧油が該当するアクチュエータ、例えば図1に示したブームシリンダ6、アームシリンダ7に、あるいは図示しない旋回モータ、走行モータに供給される。
【0024】
第1油圧ポンプ10a及び第2油圧ポンプ10bは、斜板式または斜軸式の可変容量型油圧ポンプである。第1油圧ポンプ10aには、この第1油圧ポンプ10aの斜板または斜軸の傾転、すなわち押しのけ容積を制御する第1レギュレータ28aが設けられている。同様に、第2油圧ポンプ10bには、この第2油圧ポンプ10bの押しのけ容積を制御する第2レギュレータ28bが設けられている。
【0025】
パイロットポンプ11の吐出路29には、パイロットポンプ11の吐出圧を一定圧に保持するパイロットリリーフ弁31が接続されている。パイロットポンプ11とパイロットリリーフ弁31とで、パイロット油圧源を構成している。
【0026】
第1油圧ポンプ10a及び第2油圧ポンプ10bは、第1レギュレータ28a及び第2レギュレータ28bによって全馬力制御と呼ばれるトルク制御を行っている。第1レギュレータ28aには管路32aを通って第1油圧ポンプ10aの吐出圧が導かれ、管路32bを通って第2油圧ポンプ10bの吐出圧が導かれる。同様に、第2レギュレータ28bにも管路32aを通って第1油圧ポンプ10aの吐出圧が導かれ、管路32bを通って第2油圧ポンプ10bの吐出圧が導かれる。この構成により、第1油圧ポンプ10aと第2油圧ポンプ10bの合計馬力がエンジン12の所定馬力の範囲内となるように制御される。
【0027】
第1油圧ポンプ10a及び第2油圧ポンプ10bのポンプ流量すなわち吐出流量は、図5(a)に示すように設定された馬力線図(PQ線図)に則って制御される。第1レギュレータ28a及び第2レギュレータ28bに導かれた平均吐出圧PAが、
PA=(P1+P2)・・・(1)
〔P1:第1油圧ポンプ10aの吐出圧、P2:第2油圧ポンプ10bの吐出圧〕
のとき、第1油圧ポンプ10a及び第2油圧ポンプ10bのポンプ流量は同図5(a)のQpとなる。すなわち、第1油圧ポンプ10aと第2油圧ポンプ10bの平均吐出圧が上昇してくると、ポンプの吸収馬力がエンジン馬力を超えないように流量が減少する方向に制御される。
【0028】
トルク制御弁50は、パイロットポンプ11からの圧油を減圧した制御圧力を第1レギュレータ28a及び第2レギュレータ28bに導く。制御圧力が小さくなるほどポンプ容量が大きくなるように、図5(a)に示すように馬力特性を制御する。
【0029】
また、第1レギュレータ28a及び第2レギュレータ28bは、アタッチメント操作装置23及びオプション操作装置24を含む各パイロット操作装置によって生成された操作信号圧力の増加に応じてポンプ流量を増加させるポジティブコントロール制御を行っている。
【0030】
アタッチメント操作装置23を含む図示しないパイロット操作装置によって、センタバイパスライン22a上の流量制御弁14〜16が切り替え操作された場合には、該当するパイロット操作装置から生成された操作信号圧力に応じてポンプ流量制御弁33aが切り替えられ、図5(c)に示すように操作信号圧力が大きくなるに従って第1油圧ポンプ10aのポンプ流量が大きくなるように制御される。また、センタバイパスライン22b上の流量制御弁17〜20が切り替え操作された場合には、該当するパイロット操作装置から生成された操作信号圧力に応じてポンプ流量制御弁33bが切り替えられ、同図5(c)に示すように操作信号圧力が大きくなるに従って第2油圧ポンプ10bのポンプ流量が大きくなるように制御される。
【0031】
第1レギュレータ28a及び第2レギュレータ28bは、第1油圧ポンプ10a及び第2油圧ポンプ10bのそれぞれについて全馬力制御で得られたポンプ流量と、ポジティブコントロール制御で得られたポンプ流量の低位選択がなされて、第1油圧ポンプ10a及び第2油圧ポンプ10bの押しのけ容積を制御する。
【0032】
図2に示すように、オプション操作装置24の操作量を検出する検出器、例えば圧力センサ34aと、アタッチメント操作装置23の操作量を検出する検出器、例えば圧力センサ34bとを備えている。
【0033】
この第1実施形態は、第2レギュレータ28bへ導かれる第1油圧ポンプ10aの吐出圧を遮断する遮断装置と、オプション機器3が操作されたとき、第2レギュレータ28bへ導かれる第1油圧ポンプ10aの吐出圧を遮断する信号を遮断装置に出力するコントローラ40とを備えている。
【0034】
遮断装置は、第2レギュレータ28bへ導かれる第1油圧ポンプ10aの吐出圧を遮断する電磁弁から成る切替弁43と、前述した圧力センサ34aとから成っている。コントローラ40は、圧力センサ34aから出力された検出信号によりオプション機器3の操作が有と判断された場合、切替弁43を第2レギュレータ28bへ導かれる第1油圧ポンプ10aの吐出圧を遮断する位置に作動させる。
【0035】
図3に示すように、コントローラ40は、切替弁制御部41とポンプ流量制御部42とを含む構成となっている。ポンプ流量制御部42は、ポジティブコントロール演算部42aと、馬力制御演算部42bと、ポンプ容量決定部42cとを含んでいる。ポジティブコントロール演算部42aは、圧力センサ34a,34bから出力された信号に基づくポジティブコントロール制御による第1油圧ポンプ10aのポンプ流量、及び第2油圧ポンプ10bのポンプ流量を演算する。
【0036】
馬力制御演算部42bは、第1油圧ポンプ10aの吐出圧を検出する第1ポンプ吐出圧センサ44a、及び第2油圧ポンプ10bの吐出圧を検出する第2ポンプ吐出圧センサ44bから出力された信号と、エンジン12の馬力とに基づいて、ポンプの最大吸収トルクを超えないように第1油圧ポンプ10aのポンプ流量を演算する。
【0037】
ポンプ容量決定部42cは、ポジティブコントロール演算部42aから出力された第1油圧ポンプ10aのポンプ流量と、馬力制御演算部42bから出力された第1油圧ポンプ10aのポンプ流量のうちの低位のポンプ流量に基づいて、第1油圧ポンプぬわちの容量を決定して、該当する制御信号をポンプ流量制御弁33aに出力する。また、ポジティブコントロール演算部42aから出力された第2油圧ポンプ10bのポンプ流量に基づいて、第2油圧ポンプ10bの容量を決定して、該当する制御信号をポンプ流量制御弁33bに出力する。
【0038】
以下に第1実施形態に備えられたコントローラ40の処理動作を図4のフローチャートに基づいて説明する。今例えばオプション機器3を駆動するオプションアクチュエータ9と、アタッチメントアクチュエータであるバケットシリンダ8の複合操作が行われようとしているものとする。
【0039】
[ステップS1] 圧力センサ34aから出力される信号に基づいてオプション操作装置24が操作されたかが判別される。オプション操作装置24が操作されたと判別されたときには、ステップS2に進む。
【0040】
[ステップS2] コントローラ40の切替弁制御部41は、切替弁43をONとして遮断位置である図2における下段位置に切り替える信号を出力する。これにより、第2レギュレータ28bに導かれる第1油圧ポンプ10aの吐出圧は遮断され、全馬力制御から個別馬力制御に移行する。
【0041】
このとき、第2レギュレータ28bへは第2油圧ポンプ10bの吐出圧のみが導かれるので、平均吐出圧Paは、
Pa=P2/2・・・(2)
となる。
【0042】
通常の全馬力制御では、例えばオプション機器3と作業アタッチメント2が複合操作された際に、第1油圧ポンプ10aの吐出圧が高くなると、第2油圧ポンプ10bのポンプ流量は図5(a)のQpまで低下してしまうが、この第1実施形態における制御においては、第2油圧ポンプ10bのポンプ流量は図5(b)のQ2(>Qp)になるため、オプション機器3と作業アタッチメント2を同時に駆動した場合に、オプション機器3のオプションアクチュエータ9に一定流量である必要流量を供給することができる。
【0043】
全馬力制御においては、第1油圧ポンプ10aと第2油圧ポンプ10bの合計馬力がエンジン12の馬力を超えないようにポンプ流量を制御しているため、第2油圧ポンプ10bのポンプ流量を通常の全馬力制御によって決まるポンプ流量よりも大きくなるように制御すると、第1油圧ポンプ10aと第2油圧ポンプ10bの合計馬力がエンジン12の馬力を超えてしまいラグダウンやエンストを引き起こす虞がある。
【0044】
そこで第1実施形態では、コントローラ40の馬力制御演算部42bにおいて、エンジン12の馬力(Xe)と第2油圧ポンプ10bの吸収馬力(Xp)の差を第1油圧ポンプ10aの吸収馬力とし、第1油圧ポンプ10aと第2油圧ポンプ10bの合計馬力がエンジン12の馬力を超えないようにしている。第1油圧ポンプ10aのポンプ流量は、次式で表される。
Q1=(Xe−Xp)/P1・・・(3)
〔Xp=P2・Q2〕
この式(3)で求められたポンプ流量Q1がバケットシリンダ8に供給される。ステップS3の次は、ステップS4に進む。
【0045】
[ステップS4] 圧力センサ34aから出力される信号に基づいて、オプション操作装置24の操作が継続されているかが判別される。オプション操作装置24の操作が継続されていると判別されたときは、ステップS3に戻る。オプション操作装置24の操作が停止したと判別されたときはステップS5に進む。
【0046】
[ステップS5] コントローラ40の切替弁制御部41は、切替弁43をOFFとして連通位置である図3における上段位置に切り替える信号を出力する。これにより第1油圧ポンプ10aの吐出圧が第2レギュレータ28bに導かれる状態となり、通常の全馬力制御に復帰する。
【0047】
この第1実施形態にあっては、前述したようにオプションアクチュエータ9と、アタッチメントアクチュエータであるバケットシリンダ8との複合駆動時に、オプションアクチュエータ9とバケットシリンダ8の負荷の差にかかわらず、オプションアクチュエータ9に必要流量を供給しオプションアクチュエータ9を速度の低下を生じることなく作動させて、オプション機器3によって行われる作業の作業性の低下を防ぐことができる。また、オプション機器3が操作されないときには、全馬力制御によってエンジン12の馬力を効率的に使用することができる。
【0048】
[第2実施形態]
図6に示すように、第2実施形態は、第2レギュレータ28bへ導かれる第1油圧ポンプ10aの吐出圧を遮断する遮断装置が、第2レギュレータ28bへ導かれる第1油圧ポンプ10aの吐出圧を遮断する油圧式の切替弁43bと、この切替弁43bを切り替えるオプション操作装置24とによって構成されている。その他の構成は第1実施形態と同等である。
【0049】
この第2実施形態は、オプション機器3を駆動させるためにオプション操作装置24が操作されると、オプション操作装置24の操作に伴って生成された操作信号圧力が切替弁43bの制御部に与えられて、切替弁43bは図6において下段位置に切り替えられる。これにより前述した第1実施形態と同様に、第2レギュレータ28bへ導かれる第1油圧ポンプ10aの吐出圧が遮断されて、コントローラ40により全馬力制御から個別馬力制御に切り替えられる。このように構成した第2実施形態も、第1実施形態と同等の効果が得られる。
【0050】
[第3実施形態]
図7に示すように、この第3実施形態は、遮断させる機能を無効に切替弁43を切り替える切替スイッチ60を有した構成となっている。例えば、オプション操作装置24の操作レバーの上部に切替スイッチ60を設けてある。
【0051】
コントローラ40は、切替スイッチ60から出力された信号に応じて切替弁43を作動させて、第2レギュレータ28bに導かれる第1油圧ポンプ10aの吐出圧を遮断し、全馬力制御から個別馬力制御に切り替える。
【0052】
このように構成した第3実施形態は、第1実施形態と同等の効果が得られる他、オプション機器3の駆動を意図しているオペレータがオプション操作装置24に設けた切替スイッチ60を操作した場合にのみ、オプションアクチュエータ9に対する要求流量を確保した個別馬力制御を実施することができる。
【0053】
なお、切替スイッチ60は、オプション操作装置24に設けることには限定されない。例えばオプション操作装置24がペダルによって構成されている場合には、レバー操作されるオプションアクチュエータ9とは異なるアクチュエータのパイロット操作装置に、切替スイッチ60を設けてもよい。また、図1に示す運転室1c内に配置されたモニタのスイッチ操作部に切替スイッチ60を組み込む構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 ベースマシン
1a 走行体
1b 旋回体
1c 運転室
2 作業アタッチメント
3 オプション機器
4 ブーム
5 アーム
6 ブームシリンダ
7 アームシリンダ
8 バケットシリンダ(アタッチメントアクチュエータ)
9 オプションアクチュエータ
10a 第1油圧ポンプ
10b 第2油圧ポンプ
11 パイロットポンプ
12 エンジン
13 弁装置
14〜20 流量制御弁
23 アタッチメント操作装置
24 オプション操作装置
28a 第1レギュレータ
28b 第2レギュレータ
30 メインリリーフ弁
31 パイロットリリーフ弁
33a ポンプ流量制御弁
33b ポンプ流量制御弁
34a 圧力センサ
34b 圧力センサ
40 コントローラ
41 切替弁制御部
42 ポンプ流量制御部
42a ポジティブコントロール演算部
42b 馬力制御演算部
42c ポンプ容量決定部
43 切替弁
43b 切替弁
44a 第1ポンプ吐出圧センサ
44b 第2ポンプ吐出圧センサ
50 トルク制御弁
60 切替スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7