(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
ここで提案されるインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという。)
の一実施形態について説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るプリンタ1の一部を切り欠いて示す斜視図である。なお、
図1において、符号F、Rr、LおよびRは、それぞれ前、後、左および右を表している。また、
図1に示す符号Yは主走査方向を示している。
図1に示す符号Y1は、主走査方向Yのうち一方から他方へ向かう方向、すなわち、行き方向を示している。
図1に示す符号Y2は、主走査方向Yのうち他方から一方へ向かう方向、すなわち、帰り方向を示している。なお、本実施形態では、行き方向Y1、帰り方向Y2は、それぞれ右から左へ向かう方向、左から右へ向かう方向であるが、それらは逆であってもよい。
図1に示す符号Xは、主走査方向Yと垂直な副走査方向を示している。ただし、主走査方向Yおよび副走査方向Xは特に限定される訳ではなく、プリンタ1の形態等に応じて適宜に設定可能である。
【0012】
本実施形態のプリンタ1は、家庭用のプリンタではなく、所謂業務用のプリンタである。
図1に示すように、プリンタ1は、記録紙5に印刷を行うものである。ここでは、記録紙5が本発明の記録媒体に対応する。記録紙5はロール状の記録媒体であり、所謂ロール紙である。しかし、本発明の記録媒体は、記録紙5に限定されない。例えば、記録媒体は、樹脂製のシートであってもよい。また、記録媒体は、可撓性を有するシートのものに限らず、ガラス基板等の硬い記録媒体であってもよい。
【0013】
本実施形態では、プリンタ1は、記録紙5を支持するプラテン12を備えている。プラテン12には、円筒状のグリッドローラ13が設けられている。グリッドローラ13は、その上面部を露出させた状態でプラテン12に埋設されている。グリッドローラ13は、図示しないフィードモータによって駆動される。グリッドローラ13は、記録紙5を副走査方向Xに移動させる送り機構の一例である。
【0014】
プラテン12の上方には、ガイドレール16が配置されている。ガイドレール16は、プラテン12と平行に配置され、左右方向に延びている。ガイドレール16の下方には、複数のピンチローラ17が略等間隔に配置されている。ピンチローラ17は、グリッドローラ13に対向している。ピンチローラ17は、記録紙5の厚さに応じて上下方向の位置を設定可能に構成されており、グリッドローラ13との間に記録紙5を挟み込む。グリッドローラ13およびピンチローラ17は、記録紙5を狭持しながら副走査方向Xに搬送可能に構成されている。ガイドレール16は、前方に突出した係合部18を有している。
【0015】
また、プリンタ1は、記録ヘッド20を備えている。この記録ヘッド20は、記録紙5に対してインクを吐出する。記録ヘッド20は、行き方向Y1に移動するときにのみ記録紙5に対してインクを吐出する印刷(以下、単方向印刷という。)と、行き方向Y1に移動するときおよび帰り方向Y2に移動するときの両方にて記録紙5に対してインクを吐出する印刷(以下、双方向印刷という。)とを実行可能である。ここでは、記録ヘッド20は、ケース21に収納されている。
【0016】
ケース21の背面には、キャリッジ22が設けられている。キャリッジ22の後側部分には、前向きに凹んだ凹部が形成されている。この凹部には、ガイドレール16の係合部18が係合している。キャリッジ22は、ガイドレール16に沿って摺動可能であり、主走査方向Yに移動可能である。記録ヘッド20は、キャリッジ22を介してガイドレール16によって主走査方向Yに案内される。
【0017】
ケース21の背面上部には、左右に延びる駆動ベルト19の一部が固定されている。駆動ベルト19は、図示しないスキャンモータに接続され、このスキャンモータによって駆動される。記録ヘッド20は、駆動ベルト19を介して、このスキャンモータによって駆動される。
【0018】
記録ヘッド20の上方には、上カバー25が設けられている。上カバー25は、プリンタ1の上側の筐体を構成している。上カバー25の両側には、サイドカバー26L、26Rが設けられている。
【0019】
図2は、プリンタ1の主要要素のブロック図である。プリンタ1は、第1駆動機構23と、第2駆動機構24と、を備えている。第1駆動機構23は、記録ヘッド20を主走査方向Y(
図1参照)に移動させる。本実施形態では、第1駆動機構23は、駆動ベルト19および駆動ベルト19を駆動するスキャンモータによって構成されている。第2駆動機構24は、副走査方向X(
図1参照)に記録ヘッド20と記録紙5とを相対移動させる。本実施形態では、第2駆動機構24は、グリッドローラ13、グリッドローラ13を駆動するフィードモータ、およびピンチローラ17によって構成されている。なお、第1駆動機構23および第2駆動機構24の構成は特に限定されず、例えば、記録媒体を載置したテーブル自体を前後左右に動かす装置を備えていてもよい。
【0020】
また、本実施形態では、プリンタ1は、入力装置30と、制御装置50と、を備えている。ここでは、
図1に示すように、入力装置30は、サイドカバー26Rの前面に設けられている。
図3は、入力装置30を示す図である。入力装置30は、利用者によって、印刷情報31が入力されるものである。この印刷情報31には、印刷時間および画質に関する情報が含まれる。
【0021】
本実施形態では、印刷情報31には、4つの情報32〜35が含まれている。具体的には、印刷情報31には、記録ヘッド20のパス数に関する情報32(以下、パス数情報32という。)と、印刷の解像度に関する情報33(以下、解像度情報33という。)と、記録ヘッド20のスキャン速度に関する情報34(以下、スキャン速度情報34という。)と、双方向印刷および単方向印刷のいずれを行うかに関する情報35(以下、双方向印刷情報35という。)とが含まれている。
【0022】
パス数情報32とは、記録紙5の同一領域上を、記録ヘッド20がインクを吐出しながら通過する回数に関する情報である。このパス数を多くすることによって、印刷の画質がよくなるが、印刷時間は長くなる。パス数情報32によって、主に印刷のスジムラ感を調整することができる。解像度情報33とは、一定の面積の中にどれだけ精細に表現できるかを密度で表したものである。単位面積当たりのインクドット数が増えると、解像度は高くなる。解像度を高くする(言い換えると解像度の値を大きくする)ことによって、印刷の画質がよくなるが、印刷時間は長くなる。解像度情報33によって、主に印刷の画質の粗さを調整することができる。スキャン速度情報34とは、記録ヘッド20の主走査方向Yの移動速度に関する情報である。スキャン速度を速くすることによって、印刷の画質は悪くなるが、印刷時間は短くなる。スキャン速度情報34によって、主に印刷の鮮明度を調整することができる。双方向印刷情報35は、単方向印刷で記録紙5に印刷するか、双方向印刷で記録紙5に印刷するかを選択するものである。双方向印刷を選択することによって、印刷時間は短くなる。双方向印刷情報35によって、主に印刷の鮮明度を調整することができる。本実施形態では、このパス数情報32、解像度情報33、スキャン速度情報34および双方向印刷情報35によって、印刷の画質が決定される。
【0023】
本実施形態では、入力装置30は、表示画面40を備えている。この表示画面40が本発明の表示装置に対応する。ここでは、表示画面40の表面がタッチパネルとなっており、利用者は、記録紙5へ印刷を開始する前において、タッチパネルを操作することで入力装置30にパス数情報32、解像度情報33、スキャン速度情報34、および双方向印刷情報35を入力することができる。
【0024】
本実施形態では、入力装置30の表示画面40には、利用者が印刷情報31の各情報32〜35を設定するための操作手段が設けられている。具体的には、表示画面40には、パス数情報32を設定するためのスライダコントロール42と、解像度情報33を設定するためのスライダコントロール43と、スキャン速度情報34を設定するためのスライダコントロール44と、双方向印刷情報35を設定するためのラジオボタン45とが配置されている。
【0025】
かかるスライダコントロール42〜44において、利用者がつまみ42a〜44aを表示画面40上でドラッグさせることによって、印刷情報31の各情報32〜34の値が変化する。ここでは、つまみ42a〜44aを表示画面40の上へドラッグすると印刷情報31の各情報32〜34の値が大きくなり、表示画面40の下へドラッグすると印刷情報31の各情報32〜34の値が小さくなる。入力装置30は、スライダコントロール42〜44によって、パス数情報32、解像度情報33およびスキャン速度情報34を連続的に入力変更可能に構成されている。本実施形態では、入力装置30は、パス数情報32のパス数および解像度情報33の解像度(dpi)を1ずつ連続で入力変更可能、すなわち、任意の整数で入力変更可能に構成されている。スキャン速度情報34のスキャン速度(msec/line)も、任意の整数で入力変更可能である。ただし、パス数、解像度、およびスキャン速度は、所定数ごとに入力変更可能であってもよい。例えば、入力装置30は、パス数情報32のパス数を2ずつ連続で入力変更可能に構成されていてもよいし、0.5ずつ連続で入力変更可能に構成されていてもよいし、ランダムで入力変更可能に構成されていてもよい。また、解像度の単位はdpiに限定されず、スキャン速度の単位はmsec/lineに限定されない。
【0026】
双方向印刷情報35のラジオボタン45には、OFFボタン45aとONボタン45bとが含まれる。OFFボタン45aは単方向印刷に対応し、ONボタン45bは双方向印刷に対応する。以下では、OFFボタン45a、ONボタン45bをそれぞれ単方向印刷ボタン45a、双方向印刷ボタン45bと称する。単方向印刷ボタン45aを選択することで、単方向印刷の設定となる。一方、双方向印刷ボタン45bを選択することで、双方向印刷の設定となる。このように、本実施形態では、入力装置30は、双方向印刷情報35のラジオボタン45によって、単方向印刷および双方向印刷の入力変更が可能に構成されている。
【0027】
また、入力装置30の表示画面40には、印刷プレビュー画像36および予想印刷時間37が表示される。印刷プレビュー画像36とは、記録紙5に印刷物を印刷する前に、印刷物がどのように印刷されるかを表示する画像である。ここでは、印刷プレビュー画像36は、実際に記録紙5に印刷される画像である。このことによって、つまみ42a〜44aまたはラジオボタン45を操作して印刷情報31の各情報32〜35を入力することで、実際に印刷される画像がどのように印刷されるかを確認することができる。
【0028】
ただし、印刷プレビュー画像36は、サンプル画像であってもよい。この場合、入力装置30には、画像の種類が選択できる選択ボタンが設けられているとよい。この画像の種類とは、例えば、写真、イラストまたは文字などである。利用者が上記選択ボタンで印刷する画像の種類を選択し、その選択した種類のサンプル画像が印刷プレビュー画像36に表示される。このことによって、利用者は、選択した画像の種類に適合した画質であることを確認しながら、印刷情報31の各情報32〜35の入力を行うことができる。
【0029】
ところで、画像の種類によって、画質の「スジムラ感」、「粗さ」および「鮮明度」の優先度が変わる。例えば、画像が写真の場合、「粗さ」の優先度が一番高く、「スジムラ感」の優先度が一番低くなる。また、画像がイラストの場合、「スジムラ感」の優先度が一番高く、「鮮明度」の優先度が一番低くなる。そのため、本実施形態では、選択された画像の種類によって、印刷情報31の各情報32〜34のつまみ42a〜44aの操作量に対する、パス数情報32の値、解像度情報33の値およびスキャン速度情報34の値の変化量を適宜変更してもよい。例えば、画像の種類として写真が選択された場合、画質の「粗さ」の優先度が一番高いため、画像の種類としてイラストが選択された場合と比べて、解像度情報33のつまみ43aの操作量に対する解像度情報33の値の変化量を大きくしてもよい。また、画像の種類としてイラストが選択された場合、「スジムラ感」の優先度が一番高いため、画像の種類として写真が選択された場合と比べて、パス数情報32のつまみ42aの操作量に対するパス数情報32の値の変化量を大きくしてもよい。このことによって、選択された画像の種類に適合した画質を簡単かつ確実に得ることができる。
【0030】
予想印刷時間37は、印刷物が記録紙5に印刷されるのに要する時間のことである。印刷プレビュー画像36および予想印刷時間37は、パス数情報32、解像度情報33、スキャン速度情報34、および双方向印刷情報35の変更に伴って変化する。利用者は、印刷プレビュー画像36を見ることによって印刷の画質を知ることができ、予想印刷時間37を見ることにより印刷時間を知ることができる。なお、表示画面40には、他の情報(例えば、色の濃さ、色の種類等)を指定する項目等を表示してもよい。
【0031】
また、表示画面40には、仮想的なボタンが配置されていてもよい。例えば、表示画面40には、印刷プレビュー画像36を表示するための印刷プレビュー表示ボタン46、記録紙5へ印刷を開始するための印刷開始ボタン47、および、記録紙5への印刷をキャンセルするためのキャンセルボタン48が配置されていてもよい。この各種ボタンが表示画面40上で押されると、入力装置30は、押されたボタンの入力情報、および/または、印刷情報31に関する情報を制御装置50に送信する。
【0032】
次に、制御装置50について説明する。本実施形態では、制御装置50は、マイクロコンピュータからなっており、プリンタ1の内部に設けられている。
図2に示すように、制御装置50は、第1駆動機構23と、第2駆動機構24と、入力装置30とに電気的に接続されている。制御装置50は、画像データ記憶部51と、受信部52と、印刷情報表示部53と、画像生成部54と、画像表示部55と、印刷時間算出部56と、印刷時間表示部57と、画像記録部58と、を有している。
【0033】
画像データ記憶部51は、記録紙5に印刷する印刷物の画像データを記憶する。なお、ここでは、画像データ記憶部51はプリンタ1の内部に設けられているが、無線または有線で通信可能なパーソナルコンピュータ等に設けられてもよい。
【0034】
受信部52は、入力装置30に入力された印刷情報31を受信する。本実施形態では、表示画面40に配置された印刷情報31の各情報32〜34のスライダコントロール42〜44、または、双方向印刷情報35のラジオボタン45によって、各情報32〜35の入力情報が変更される毎に、受信部52は、変更された印刷情報31の情報を受信する。また、受信部52は、表示画面40に配置された印刷プレビュー表示ボタン46または印刷開始ボタン47が押されたタイミングで、印刷情報31の各情報32〜35を受信する。
【0035】
印刷情報表示部53は、入力装置30で入力された印刷情報31を表示画面40に表示する。具体的には、印刷情報31のパス数情報32、解像度情報33またはスキャン速度情報34の値を変更するスライダコントロール42〜44、もしくは、双方向印刷情報35のラジオボタン45が操作されると、印刷情報表示部53は、その操作された情報の変更後の情報を表示画面40に表示する。
【0036】
画像生成部54は、受信部52が受信した印刷情報31に基づいて印刷紙5の印刷プレビュー画像36を生成する。本実施形態では、画像生成部54には、印刷プレビュー画像36を生成するための計算式が予め用意されている。そして、画像生成部54は、利用者が表示画面40の印刷プレビュー表示ボタン46を押したとき、画像データ記憶部51に記憶された印刷物の画像データ、印刷情報31のパス数情報32、解像度情報33、スキャン速度情報34および双方向印刷情報35に関する情報を数値化した上で、各情報を上記計算式に代入する。画像生成部54は、上記計算式によって印刷プレビュー画像36を生成する。なお、画像生成部54の印刷プレビュー画像36を生成する方法は、上記計算式に限定されない。例えば、画像生成部54には、印刷プレビュー画像36を生成するためのマップが予め用意されており、画像生成部54は、そのマップと印刷情報31の各情報32〜35とを利用して印刷プレビュー画像36を生成してもよい。画像表示部55は、画像生成部54によって生成された印刷プレビュー画像36を入力装置30の表示画面40に表示する。
【0037】
印刷時間算出部56は、入力装置30に入力された印刷情報31に基づいて記録紙5への印刷に要する印刷時間(予想印刷時間)を算出する。本実施形態では、印刷時間算出部56には、予想印刷時間を算出するための計算式が予め用意されている。そして、利用者が入力装置30によって印刷情報31の各情報32〜35の何れかの入力情報を変更したとき、印刷時間算出部56は、印刷情報31のパス数情報32、解像度情報33、スキャン速度情報34および双方向印刷情報35に関する情報を数値化した上で、これらの情報を上記計算式に代入する。印刷時間算出部56は、上記計算式から予想印刷時間を算出する。なお、印刷時間算出部56の予想印刷時間を算出する方法は、上記計算式に限定されない。例えば、印刷時間算出部56には、予想印刷時間を算出するためのマップが予め用意されており、印刷時間算出部56は、そのマップと印刷情報31の各情報32〜35とを利用して予想印刷時間を算出してもよい。印刷時間表示部57は、印刷時間算出部56によって算出された予想印刷時間を入力装置30の表示画面40に表示する。
【0038】
画像記録部58は、入力装置30に入力された印刷情報31に基づいて記録ヘッド20、第1駆動機構23および第2駆動機構24を制御し、記録紙5に印刷物の印刷を行う。画像記録部58は、単方向印刷と双方向印刷とが可能に構成されている。画像記録部58が単方向印刷を行うか、双方向印刷を行うかは、双方向印刷情報35によって決定される。本実施形態では、利用者が表示画面40上の印刷開始ボタン47を押すと、画像記録部58は、画像データ記憶部51に記憶された印刷する印刷物の画像データを読み込んで、記録紙5への印刷を開始する。ここで、画像記録部58は、印刷情報31の各情報32〜35に基づいて、記録ヘッド20における記録紙5へのインクの吐出タイミングまたは吐出量等を制御する。また、画像記録部58は、印刷情報31の各情報32〜35に基づいて、第1駆動機構23が記録ヘッド20を主走査方向Yへ移動させる速度、および、第2駆動機構24が記録紙5を副走査方向Xに移動させる速度およびタイミング等を制御する。
【0039】
以上、本実施形態に係るプリンタ1の構成について説明した。
【0040】
次に、本実施形態のプリンタ1を使用して記録紙5に印刷物を印刷する手順について簡単に説明する。まず、
図1に示すように、利用者はプリンタ1に記録紙5をセットする。そして、利用者は、
図3に示すように、入力装置30の表示画面40上の印刷情報31のパス数情報32、解像度情報33およびスキャン速度情報34のスライダコントロール42〜44のつまみ42a〜42a、ならびに、双方向印刷情報35のラジオボタン45を操作して、各情報32〜35を適宜入力する。印刷情報31の各情報32〜35の入力情報が変更されると、制御装置50の受信部52は、印刷情報31の各情報32〜35の入力情報を受信する。そして、印刷時間算出部56は、受信部52が受信した印刷情報31の各情報32〜35に基づいて予想印刷時間37を算出する。印刷時間表示部57は、印刷時間算出部56によって算出された予想印刷時間37を表示画面40に表示する。
【0041】
次に、利用者は、表示画面40の印刷プレビュー表示ボタン46を押す。このとき、制御装置50の受信部52は、印刷情報31の各情報32〜35の入力情報を受信する。そして、画像生成部54は、受信部52が受信した印刷情報31の各情報32〜35に基づいて印刷プレビュー画像36を生成する。画像表示部55は、画像生成部54によって生成された印刷プレビュー画像36を表示画面40に表示する。そして、利用者は印刷プレビュー画像36と予想印刷時間37を見て、利用者が所望しない印刷の画質または印刷時間であった場合、再度、印刷情報31の各情報32〜35を適宜変更する。利用者が所望する印刷の画質および印刷時間が得られた場合、入力装置30の表示画面40上の印刷開始ボタン47を押す。
【0042】
印刷開始ボタン47が押されると、制御装置50の画像記録部58は、画像データ記憶部51に記憶された印刷する印刷物の画像データを読み込んで、記録紙5への印刷を開始する。ここで、画像記録部58は、印刷情報31の各情報32〜35に基づいて、記録ヘッド20における記録紙5へのインクの吐出タイミングまたは吐出量等を制御する。また、画像記録部58は、印刷情報31の各情報32〜35に基づいて、第1駆動機構23における記録ヘッド20が主走査方向Yへ移動する速度、および、第2駆動機構24における副走査方向Xに記録紙5を移動させる速度を制御する。このようにして、利用者が入力した印刷情報31の各情報32〜35に基づいた印刷時間および画質で記録紙5に印刷物を印刷する。
【0043】
なお、本実施形態では、入力装置30は、記録ヘッド20による記録紙5への印刷途中において、利用者による印刷情報31の入力変更が可能に構成されている。換言すると、記録紙5への印刷途中であっても、利用者は、表示画面40上の印刷情報31の各情報32〜34のスライダコントロール42〜44のつまみ42a〜44a、ならびに、双方向印刷情報35のラジオボタン45を操作して、各情報32〜35を適宜変更することが可能である。ここでは、記録紙5への印刷開始後に、表示画面40の印刷開始ボタン47は、印刷情報変更ボタン47に変更されている。利用者は、各情報32〜35を変更し、印刷情報変更ボタン47を押す。このとき、制御装置50の画像記録部58は、入力装置30に印刷情報31の変更が入力されると、記録紙5への印刷途中であっても、変更された印刷情報31の各情報32〜35に基づいて、記録ヘッド20、第1駆動機構23および第2駆動機構24を制御する。
【0044】
このことによって、印刷途中において、利用者は印刷情報31の入力を変更することができる。そして、印刷途中であっても、変更した印刷情報31に基づいて、印刷時間および印刷の画質を変更することができる。仮に、利用者にとって最適ではない印刷時間または画質であっても、印刷途中に印刷情報31の入力を変更することができるため、一から印刷のやり直しをしなくてもよい。
【0045】
以上のように、本実施形態では、プリンタ1は、利用者によって、印刷時間および画質に関する情報である印刷情報31が入力される入力装置30を備えている。この印刷情報31には、パス数情報32と、解像度情報33と、スキャン速度情報34と、双方向印刷情報35とが含まれている。入力装置30は、パス数情報32、解像度情報33およびスキャン速度情報34を連続的に入力変更可能に構成されている。
【0046】
一般的に、インクジェットプリンタにおいては、印刷時間と画質との関係は単純ではない。
図4は、印刷時間と画質との関係の一例を示したグラフである。
図4に示すように、一般的なプリンタでは、印刷時間によって、印刷時間の変化に伴う画質の変化量が異なる場合がある。例えば、印刷時間を時間t1から時間t2へと、変化量Δt分長くした場合、画質は画質a1から画質a2となる。このとき、画質の変化量はΔb1となる。他方、印刷時間を時間t2から時間t3へと、同様の変化量Δt分長くした場合、画質は画質a2から画質a3となる。このとき、画質の変化量はΔb2となる。Δb2は、Δb1よりも小さい。このように、ある範囲t2〜t3の印刷時間の中では、印刷時間を短くさせても画質はそれほど低下しない反面、他の範囲t1〜t2の印刷時間の中では、印刷時間を僅かに短くさせただけで画質が大きく低下する場合がある。また、印刷しようとする印刷物によっても、印刷時間の変化に伴う画質の変化量が異なる場合がある。例えば、印刷物が文字の場合には、印刷時間を短くしても画質はそれほど低下しない一方、印刷物が写真の場合には、印刷時間を僅かに短くしただけで画質が大きく低下する場合がある。
【0047】
本実施形態では、利用者が印刷情報31のパス数情報32、解像度情報33、スキャン速度情報34、および双方向印刷情報35を個々に入力変更することができる。また、パス数情報32、解像度情報33およびスキャン速度情報34は、連続的に入力変更可能であるため、上述した印刷モードが限られた数しかない従来のプリンタに比べて、印刷時間および画質を細かく設定することができる。このことによって、印刷時間を短くさせても画質はそれほど低下しない印刷時間の範囲(
図4では、例えばt2〜t3の間)において、画質を低下させずに印刷時間を短縮することが簡単にできる。よって、利用者の所望する印刷時間および画質のバランスで印刷を行うことが簡単にできる。また、印刷時間の変化に伴う画質の変化量が異なる印刷物であっても、同じプリンタ1で利用者の所望する印刷時間および画質のバランスで印刷を行うことが簡単にできる。
【0048】
特に、パス数情報32が入力変更可能であるため、印刷のスジムラ感を調整することができる。よって、利用者にとってスジムラ感を許容範囲に抑えつつ、印刷時間を短縮することができる。また、解像度情報33が入力変更可能であるため、画質の粒状感および粗さを調整することができる。よって、利用者にとって粒状感および粗さを許容範囲に抑えつつ、印刷時間を短縮することができる。また、スキャン速度情報34が入力変更可能であるため、印刷の全体的な画質の微調整を行うことができる。スキャン速度情報34および双方向印刷情報35によって、画質の鮮明度を調整することができる。本実施形態では、パス数情報32、解像度情報33、スキャン速度情報34および双方向印刷情報35によって、印刷の画質を決定することができる。よって、利用者にとって最適な印刷時間および画質のバランスで印刷を行うことができる。
【0049】
また、本実施形態のような業務用のプリンタ1では、1回の印刷に要する時間が長い。そのため、印刷時間の短縮の効果は、家庭用プリンタに比べて大きい。本実施形態では、印刷時間および画質を利用者が細かく設定することができ、画質をあまり低下させずに印刷時間を短縮することが簡単であるため、業務用のプリンタでは特に有用である。
【0050】
また、本実施形態では、
図2に示すように、制御装置50は、入力装置30に入力された印刷情報31を受信する受信部52と、受信部52が受信した印刷情報31に基づいて印刷プレビュー画像36を生成する画像生成部54と、画像生成部54によって生成された印刷プレビュー画像36を表示画面40に表示する画像表示部55と、を有する。このことによって、利用者は、印刷プレビュー画像36を見ることで、印刷の画質を事前に確認することができる。利用者は、印刷プレビュー画像36を見ながら、印刷の画質を設定することができる。よって、利用者にとって最適な印刷の画質を容易に得ることができる。また、利用者にとって最適な印刷の画質が得られないための印刷のやり直しを防ぐことができるため、インクの無駄遣いを防ぐことができる。
【0051】
また、本実施形態では、制御装置50は、入力装置30に入力された印刷情報31に基づいて記録紙5への印刷に要する印刷時間を算出する印刷時間算出部56と、印刷時間算出部56によって算出された印刷時間を表示画面40に表示する印刷時間表示部57と、を有する。このことによって、利用者は、印刷が開始される前に、印刷に要する予想印刷時間37を知ることができる。利用者は、予想印刷時間37を見ながら、印刷情報を入力することができる。したがって、利用者にとって最適な印刷時間を容易に設定することができる。印刷プレビュー画像36と予想印刷時間37とを見ながら各情報32〜35を適宜変更することにより、利用者にとって最適な印刷時間および画質の組み合わせを得ることができる。
【0052】
以上、
ここで提案されるインクジェットプリンタの一実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、
ここで提案されるインクジェットプリンタは他の種々の形態で実施することが可能である。
【0053】
<変形例>
上述した実施形態では、
図1に示すように、入力装置30は、プリンタ1のサイドカバー26Rの前面に設けられていた。入力装置30はプリンタ本体(プリンタ1のうち入力装置30以外の部分)と一体化されていた。しかし、本発明の入力装置は、プリンタ本体と別体であってもよい。例えば、入力装置は、パーソナルコンピュータであって、プリンタ本体の制御装置と有線または無線で通信可能なものであってもよい。この場合、パーソナルコンピュータのキーボードおよびマウスによって印刷情報を入力するものであってもよい。
【0054】
上述した実施形態では、
図3に示すように、印刷情報31には、パス数情報32と、解像度情報33と、スキャン速度情報34と、双方向印刷情報35とが含まれていた。しかし、印刷情報31には、少なくともパス数情報32が含まれていればよく、解像度情報33と、スキャン速度情報34と、双方向印刷情報35とは、省略することが可能である。また、印刷情報31には、各情報32〜35以外の情報が含まれていてもよい。例えば、印刷情報31には、カラー印刷またはモノクロ印刷を選択できる情報が含まれていてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、印刷情報31のパス数情報32と、解像度情報33と、スキャン速度情報34とは、それぞれスライドコントロール42〜44を操作することで、入力装置30に値が入力されていた。しかし、表示画面40上に印刷情報31の各情報32〜34を設定するためのテキストボックスが配置されており、利用者がそのテキストボックスに値を直接入力することで、入力装置30に印刷情報31の各情報32〜34を入力するものであってもよい。
【0056】
上述した実施形態では、入力装置30への入力は、表示画面40上のタッチパネルで行われていた。しかし、入力装置30への入力は、表示画面40の周りに物理的に配置され、上述した印刷情報31の各情報32〜35を操作するための各種ボタンによって行われてもよい。この場合、利用者がこのボタンを操作することによって、印刷情報31の各情報32〜35に関する情報が入力される。
【0057】
ここで、インクジェットプリンタは、記録媒体に対してインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを主走査方向に移動させる第1駆動機構と、前記主走査方向と垂直な副走査方向に前記記録ヘッドと前記記録媒体とを相対移動させる第2駆動機構と、利用者によって、印刷時間および画質に関する情報である印刷情報が入力される入力装置と、前記入力装置に入力された前記印刷情報に基づいて前記記録ヘッド、前記第1駆動機構および前記第2駆動機構を制御する制御装置と、を備えていてもよい。前記印刷情報には、少なくとも前記記録ヘッドのパス数に関する情報が含まれていてもよい。前記入力装置は、前記パス数を連続的に入力変更可能に構成されていてもよい。
【0058】
前記インクジェットプリンタによれば、入力装置は、パス数を連続的に入力変更可能に構成されているため、上述した印刷モードが限られた数しかない従来のプリンタに比べて、利用者は印刷時間および画質を細かく設定することができる。よって、利用者の所望する印刷時間および画質のバランスで印刷を行うことが簡単にできる。また、印刷時間の変化に伴う画質の変化量が異なる印刷物であっても、同じプリンタで利用者の所望する印刷時間および画質のバランスで印刷を行うことが簡単にできる。
【0059】
インクジェットプリンタの好ましい一態様によれば、前記印刷情報には、印刷の解像度に関する情報が含まれている。前記入力装置は、前記解像度を連続的に入力変更可能に構成されている。
【0060】
上記態様によれば、利用者が入力変更可能な印刷情報には、記録ヘッドのパス数に関する情報の他に、印刷の解像度に関する情報が含まれている。このことによって、印刷時間および印刷の画質をより細かく設定することができる。特に、印刷の解像度に関する情報が利用者によって入力変更可能であるため、画質の粒状感を調整することができる。よって、利用者にとって最適な画質の粒状感を簡単に得ることができる。
【0061】
インクジェットプリンタの好ましい他の一態様によれば、前記印刷情報には、前記記録ヘッドの前記主走査方向の移動速度であるスキャン速度に関する情報が含まれている。前記入力装置は、前記スキャン速度を連続的に入力変更可能に構成されている。
【0062】
上記態様によれば、利用者が入力変更可能な印刷情報には、記録ヘッドのパス数に関する情報の他に、スキャン速度に関する情報が含まれている。このことによって、印刷時間および印刷の画質をより細かく設定することができる。特に、スキャン速度に関する情報が利用者によって入力変更可能であるため、印刷の全体的な画質の微調整を行うことができる。よって、利用者にとって最適な印刷の画質を簡単に得ることができる。
【0063】
インクジェットプリンタの好ましい他の一態様によれば、前記主走査方向のうち一方から他方へ向かう方向を行き方向とし、他方から一方へ向かう方向を帰り方向とした場合、前記制御装置は、前記行き方向に移動するときにのみ前記記録ヘッドからインクを吐出させる単方向印刷と、前記行き方向に移動するときおよび前記帰り方向に移動するときの両方にて前記記録ヘッドからインクを吐出させる双方向印刷とが可能に構成されている。前記印刷情報には、前記単方向印刷および前記双方向印刷に関する情報が含まれている。前記入力装置は、前記単方向印刷および前記双方向印刷の入力変更が可能に構成されている。
【0064】
上記態様によれば、利用者が入力変更可能な印刷情報には、記録ヘッドのパス数に関する情報の他に、単方向印刷および双方向印刷に関する情報が含まれている。このことによって、印刷時間をより細かく設定することができる。したがって、利用者にとって最適な印刷時間が得られ易くなる。なお、双方向印刷にすることによって、単方向印刷よりも印刷時間を短くすることができる。
【0065】
インクジェットプリンタの好ましい他の一態様によれば、前記制御装置は、前記入力装置に入力された前記印刷情報を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記印刷情報に基づいて印刷プレビュー画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部によって生成された前記印刷プレビュー画像を表示装置に表示する画像表示部と、を有する。
【0066】
上記態様によれば、利用者は、印刷プレビュー画像を見ることで、印刷の画質を確認することができる。利用者は、印刷プレビュー画像を見ながら、印刷の画質を設定することができる。よって、利用者にとって最適な印刷の画質を容易に得ることができる。また、利用者にとって最適な印刷の画質が得られないことに起因した印刷のやり直しを防ぐことができるため、インクの無駄遣いを防ぐことができる。
【0067】
インクジェットプリンタの好ましい他の一態様によれば、前記制御装置は、前記入力装置に入力された前記印刷情報に基づいて前記記録媒体への印刷に要する印刷時間を算出する印刷時間算出部と、前記印刷時間算出部によって算出された前記印刷時間を前記表示装置に表示する印刷時間表示部と、を有する。
【0068】
上記態様によれば、利用者は、印刷が開始される前に、印刷に要する印刷時間を知ることができる。利用者は、表示装置に表示された印刷時間を見ながら、印刷情報を入力することができる。したがって、利用者にとって最適な印刷時間を容易に設定することができる。
【0069】
インクジェットプリンタの好ましい他の一態様によれば、前記入力装置は、前記記録ヘッドによる前記記録媒体への印刷途中において、利用者による前記印刷情報の入力変更が可能に構成されている。前記制御装置は、前記入力装置に前記印刷情報の変更が入力されると、変更された前記印刷情報に基づいて前記記録ヘッド、前記第1駆動機構および前記第2駆動機構を制御する。
【0070】
上記態様によれば、印刷途中において、利用者は印刷情報の入力を変更することができる。そして、印刷途中であっても、変更した印刷情報に基づいて、制御装置は印刷時間および印刷の画質を変更する。このことによって、仮に、利用者にとって最適ではない印刷時間または印刷の画質であっても、印刷途中に印刷情報の入力を変更することができるため、一から印刷のやり直しをしなくてもよい。