(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるハードディスク装置および制御方法を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施形態)
本実施形態にかかるハードディスク装置は、複数の媒体面上を各媒体面に対応する記録ヘッドで同時に走査する走査機構を有する。複数の媒体面は、1つまたは複数の記録ディスク上に記録面として設けている。例えば1つの記録ディスクを備える構成であれば、記録ディスクの表面と裏面とを記録面にする。本実施形態では、更に、複数の媒体面のバンド情報を記憶するテーブルと、算出手段と、決定手段と、制御手段とを有する。
【0010】
算出手段は、複数の媒体面における各記録ヘッドの面間相対軌道誤差を算出する。ここで「面間相対軌道誤差」は、複数の媒体面の各記録ヘッドの相対的な位置ずれにより生じる誤差である。この誤差は、衝撃や熱変形などが要因で生じる。この誤差は、僅かなものから大きなものまで様々であり、誤差が大きなものは、1μmオーダとなる。なお、詳しくは後述するが、本実施形態では、面間相対軌道誤差が発生しているものを含めた制御について説明する。
【0011】
決定手段は、各記録ヘッドが走査機構の走査により同時に通過する各媒体面のバンドでのデータアクセス順序を、バンド情報と面間相対軌道誤差とに基づき決定する。例えば、各媒体面のバンドでのデータアクセス順序としてデータの記録順序を決定する。
【0012】
制御手段は、各媒体面のバンドでのデータアクセスを決定手段が決定したデータアクセス順序で行うよう制御する。
【0013】
以下に、本実施形態のハードディスク装置および制御方法について、磁気ディスクに磁気ヘッドにより瓦記録方式で記録するハードディスク装置への適用例を示す。「磁気ディスク」は「記録ディスク」に相当し、「磁気ヘッド」は「記録ヘッド」に相当する。
【0014】
図1は、実施形態にかかるハードディスク装置の構成の一例を示す図である。
図1には、ハードディスク装置の上部カバーを外した場合の筐体内部の構成を示している。
図1に示すように、ハードディスク装置1は磁気ディスク101や、磁気ディスク101の表(おもて)面と裏面のデータの読み取りおよび書込みを行う一組の磁気ヘッド102などを備えている。ここで、磁気ディスク101の「表面」と「裏面」は、「媒体面」の一例である。なお、本実施形態では、磁気ディスクの枚数を1枚として説明するが、磁気ディスクの枚数は、2枚以上であってもよい。その場合、「媒体面」は、複数の磁気ディスクに跨っていてもよい。
【0015】
磁気ディスク101は、SPM(スピンドルモータ)103の回転軸104に装着されており、当該回転軸104の駆動により回転する。
【0016】
一組の磁気ヘッド102は一対のアーム105のそれぞれの先端部に取り付けられている。一対のアーム105は、VCM(Voice Coil Motor)106により共に駆動され、軸107を中心に正負の両方向に決められた範囲内で一体的に回転する。つまり、一対のアーム105とVCM106とは、「走査機構」に対応し、1つのアクチュエータとして備えられている。この1つのアクチュエータの動作により、一組の磁気ヘッド102が破線Rに沿って共に移動(走査)し、それぞれが、この移動過程において磁気ディスク101の表面と裏面の対応するトラックに順次位置決めされる。
【0017】
一組の磁気ヘッド102は、それぞれがリード素子およびライト素子を有し、リード素子により磁気ディスク101上の走査対象の面のデータを読み取り、ライト素子により、それと同じ面にデータを書き込む。
【0018】
この他、ハードディスク装置1は、一組の磁気ヘッド102を磁気ディスク101上から退避してパーキングするランプロード機構108などを備える。
【0019】
図1の紙面の奥行側に位置するハードディスク装置1の底部には、ハードディスク装置1の各部を制御する制御システム(
図3参照)が設けられている。制御システムは、ハードディスク装置1の筐体100に外部接続のために設けられている接続ピン等のインターフェイスを介してホスト40(
図3参照)と通信し、ホスト40からのコマンドなどに応じてハードディスク装置1の各部を制御する。
【0020】
図2は、磁気ディスク101の構成についての説明図である。磁気ディスク101は、プラッタの両面に磁性体を有し、両面において、出荷前にサーボライタなどによりサーボ情報が書き込まれたものである。
図2(a)には、サーボ情報が書き込まれたサーボゾーンの配置の一例として磁気ディスク101の一面の放射状に配置されたサーボゾーン101aを示している。表面も裏面も同様の配置とする。磁気ディスク101の半径方向に複数のバンド200が配置される。
図2(a)には、一例として4つのバンド200を示しているが、バンド200の数は適宜決めてよい。バンド200は、多数のトラックを含み、各トラックの周回上のセクタに対し、瓦記録方式によりデータが連続的に記録される。
図2(b)には、バンド200の記録方式を示している。
図2(b)に示すように、本実施形態では、各トラックTr(N)、ただしN=1、2、・・・、において隣接トラックのデータを上書きしながら記録する。なお、以下では、主にバンド200(表面をバンド201とし、裏面をバンド202としたもの)を用いてデータのアクセス順序について説明するが、バンド200への記録は上述した瓦記録方式により行われているものとする。
【0021】
図3は、ハードディスク装置1の制御ブロックの構成の一例を示す図である。なお、
図3において、
図1に示す制御対象と同一のものについては同一の符号を付している。
図3に示すように、ハードディスク装置1は、モータドライバ21、ヘッドアンプ22、RWC(Read/Write Channel)23と、HDC(Hard Disk Controller)24、CPU(Central Processing Unit)25、揮発性メモリ26、及び不揮発性メモリ27を有する。
【0022】
モータドライバ21は、SPM103を駆動し、磁気ディスク101を所定の回転速度で回転させる。また、モータドライバ21は、CPU25からの制御値に応じてVCM106を制御する。このVCM1の制御により、一対のアーム105−1、105−2が共に回転し、表面用の磁気ヘッド102−1が磁気ディスク101の表面のトラックに位置決めされ、裏面用の磁気ヘッド102−2が裏面のトラックに位置決めされる。
【0023】
ヘッドアンプ22及びRWC23は、それぞれ、表面用の磁気ヘッド102−1に対して接続する第1系列と裏面用の磁気ヘッド102−2に対して接続する第2系列との、2系列を1つにまとめて表したものである。ヘッドアンプ22は、系列ごとに、RWC23から入力されるライトデータに応じたライト信号(電流)を、各系列に対応する表面用の磁気ヘッド102−1および裏面用の磁気ヘッド102−2に流す。また、ヘッドアンプ22は、表面用の磁気ヘッド102−1および裏面用の磁気ヘッド102−2から出力された各リード信号を各系列で増幅し、RWC23の、対応する系列に供給する。
【0024】
RWC23は、2系列の信号処理回路である。RWC23は、系列ごとに、HDC24から入力されたライトデータを符号化(コード変調)してヘッドアンプ22に出力する。また、RWC23は、系列ごとに、ヘッドアンプ22から伝送された各リード信号からリードデータを復号化(コード復調)してHDC24に出力する。
【0025】
HDC24は、I/Fバスを介してホスト40との間で行われるデータの送受信の制御などを行う。HDC24は、図示しないホストインターフェイス(ホストI/F)回路を含む。
【0026】
CPU25は、不揮発性メモリ27に記憶されたファームウェアPやバンド対応管理テーブルTに従って、ハードディスク装置1の全体的な制御を行う。例えば、CPU25は、一組の磁気ヘッド102を位置決めするサーボ制御処理やリードおよびライトの制御処理など、各種の制御処理を実行する。リードおよびライトの制御処理では、CPU25は、後述するデーアクセス順序(記録順序など)に従い、ヘッドアンプ22や、RWC23などを制御する。これにより、表面用の磁気ヘッド102−1および裏面用の磁気ヘッド102−2の内の、一方あるいは両方同時に、リードデータの読み取りまたはライトデータの書き込みを行わせる。
【0027】
なお、RWC23、HDC24、及びCPU25を含むハードウェア構成は、コントローラ20として1チップの集積回路(システムオンチップ)により実現可能である。
【0028】
モータドライバ21、ヘッドアンプ22、揮発性メモリ26、不揮発性メモリ27は、コントローラ20のCPU25に接続されている。
【0029】
不揮発性メモリ27は、CPU25により書き換え可能に構成されており、ファームウェアPやバンド対応管理テーブルTなどを記憶する。
【0030】
揮発性メモリ26は、DRAM(Dynamic RAM)またはSRAM(Static RAM)などによって構成される。揮発性メモリ26は、コマンドキュー、バッファ、及びワーキングエリアを含む。
【0031】
コマンドキューは、HDC24で受信された複数のコマンドを受信された順にキューイングする。複数のコマンドのそれぞれは、磁気ディスク101にアクセスするための論理アドレスを含む。
【0032】
バッファは、ライトバッファ及びリードバッファを有する。ライトバッファは、磁気ディスク101へのライトデータの書き込みを指示するコマンド(例えば、ライトコマンド)によって磁気ディスク101へと書き込まれるデータを一時的に格納する。リードバッファは、磁気ディスク101からのリードデータの読み出しを指示するコマンド(例えば、リードコマンド)によって磁気ディスク101から読み出されるデータを一時的に格納する。
【0033】
続いて、ハードディスク装置1における複数の媒体面へのアクセス制御について説明する。表面用の磁気ヘッド102−1と裏面用の磁気ヘッド102−2とは、ハードディスク装置1の出荷後などの後発的な要因により、磁気ディスク101の破線R(
図1参照)に沿った移動方向において相対的な位置ずれを起こすことがある。この位置ずれは、例えば、衝撃による片方のアーム105の回転軸方向への機械的なずれや、アクチュエータを構成する部品の熱変形などにより生じるもので「面間相対軌道誤差」とも呼ぶ。ここで「面間相対軌道誤差」は、ある媒体面と別の媒体面における破線Rの軌道上の各磁気ヘッドの誤差を指す。
【0034】
図4は、ハードディスク装置1のCPU25の機能ブロックの構成の一例を示す図である。CPU25は、ファームウェアP(
図3参照)を揮発性メモリ26に読出して実行することにより、
図4に示すように、制御部301と、算出部302と、決定部303と、設定部304とを実現する。ここで、制御部301と設定部304とが「制御手段」に対応する。算出部302が「算出手段」に対応する。決定部303が「決定手段」に対応する。
【0035】
制御部301は、サーボ制御やデータアクセス制御などを行う。具体的に、制御部301は、モータドライバ21を介してVCM106を制御し、表面用の磁気ヘッド102−1と裏面用の磁気ヘッド102−2とを任意のトラックに位置決めさせる。また、制御部301は、後述する順序データに基づき、磁気ディスク101の表面と裏面に対する記録(書き込み)および読み取りのデータアクセスを制御する。
【0036】
算出部302は、表面用の磁気ヘッド102−1と裏面用の磁気ヘッド102−2から再生されたサーボ情報に基づき表面用の磁気ヘッド102−1と裏面用の磁気ヘッド102−2との面間相対軌道誤差を算出する。
【0037】
決定部303は、バンド対応管理テーブルT(
図3参照)を読み取り、後述する順序データを決定する。バンド対応管理テーブルTには、磁気ディスク101の表面と裏面のそれぞれのバンド200の後述する先頭半径やバンド幅などのバンド情報が設定されている。
【0038】
設定部304は、制御部301により順序データに基づいてデータが各バンド200へ記録されたことを条件に、当該順序データをバンド対応管理テーブルTに設定する。制御部301はバンド対応管理テーブルTから当該順序データを読み取り、各バンド200からデータを当該順序データの順に再生する。
【0039】
続いて、算出部302による面間相対軌道誤差の算出方法について説明する。面間相対軌道誤差は、例えば表面用の磁気ヘッド102−1と裏面用の磁気ヘッド102−2とから再生されるそれぞれのサーボ情報に基づいて算出することができる。
【0040】
図5は、面間相対軌道誤差の算出方法の一例を示す図である。算出部302は、磁気ディスク101上の表面用の磁気ヘッド102−1がある位置のサーボ情報と裏面用の磁気ヘッド102−2がある位置のサーボ情報とから、それぞれの位置を読み取り、
図5に示す破線R上の面間相対軌道誤差ΔRを算出する。面間相対軌道誤差ΔRは、磁気ディスク101の半径に対して十分に小さい場合、直線近似してもよい。
【0041】
例えば表面用の磁気ヘッド102−1がある位置のグレイコードと裏面用の磁気ヘッド102−2がある位置のグレイコードとから、それぞれのトラック番号を読み取り、トラックのピッチ間隔などから面間相対軌道誤差ΔRを算出する。なお、面間相対軌道誤差ΔRは、以下の説明において表面用の磁気ヘッド102−1が裏面用の磁気ヘッド102−2よりも先行する場合に、ΔR>0の関係を満たすものとする。
【0042】
続いて、決定部303が決定する順序データについて説明する。
図6は、順序データの説明図である。
図6には、磁気ディスク101の表面101−1(
図7参照)と裏面101−2(
図7参照)のそれぞれのバンド201(
図7参照)とバンド202(
図7参照)に対して決定すべきアクセス順序を示すパラメータを示している。アクセス順序は、一面に先発してアクセスする「先発」と、複数面に同時にアクセスする「同時」と、一面に後発してアクセスする「後発」とに区分している。
図6において「A」が「先発」を表し、「B」が「同時」を表し、「C」が後発を表す。また、表面を「1」、裏面を「2」に区分している。従って、
図6において、例えばパラメータA1は「表面/先発」を表し、パラメータB1は「表面/同時」を表し、パラメータC1は表面/後発を表し、パラメータA2は裏面/先発を表す。このように、同時にアクセスする媒体面が2枚の場合、組み合わせが6通りとなる。
【0043】
各パラメータA1、B1、C1、A2、B2、C2には、決定部303が後述する計算により求めるバンド範囲を設定する。
【0044】
続いて、順序データ(
図6参照)のパラメータA1、B1、C1、A2、B2、C2に設定するバンド範囲の算出方法について説明する。本実施形態では、磁気ディスク101の表面と裏面とのバンドの対応関係としてケース1〜ケース4までを挙げてケースごとに説明する。
【0045】
図7は、磁気ディスク101の表面と裏面とのバンド200の対応関係の一例(ケース1)を示す図である。
図7には、磁気ディスク101の表面101−1のバンド201と裏面101−2のバンド202とが共に、先頭半径が等しくかつバンド幅が等しいときのものを示している。ここで「先頭半径」とは、バンド内の複数のトラックの内の最外周のトラック半径のことを指す。また、「バンド幅」は、バンド内の最外周トラック(先頭トラック)から最内周トラック(最終トラック)までの半径方向の幅を指す。
【0046】
図7には、また、磁気ディスク101の表面101−1および裏面101−2において面間相対軌道誤差ΔRが発生している場合の表面用の磁気ヘッド102−1と裏面用の磁気ヘッド102−2との位置関係を含めている。
図7において、矢印Y1が示す方向が、破線R(
図1参照)上の磁気ディスク101の回転中心部側から外周部側へ向けての方向を表す。また、矢印Y2が示す方向が、表面用の磁気ヘッド102−1および裏面用の磁気ヘッド102−2がそれぞれ磁気ディスク101の表面101−1および裏面101−2にデータを瓦記録方式により書き込む際の移動方向を表す。
【0047】
ここでは一例として、表面用の磁気ヘッド102−1が裏面用の磁気ヘッド102−2よりもデータを書き込む際の移動方向に面間相対軌道誤差ΔRだけ先行しているものを示している。つまり、矢印Y2が示す方向に磁気ヘッド102−2が面間相対軌道誤差ΔRを保ちながら磁気ヘッド102−1に追随して移動する。この場合にΔR>0となる。なお、これとは反対に、裏面用の磁気ヘッド102−2が表面用の磁気ヘッド102−1よりもデータを書き込む際の移動方向に面間相対軌道誤差ΔRだけ先行する場合もあり得る。この場合にΔR<0となる。
【0048】
ケース1では、磁気ヘッド102−1が磁気ヘッド102−2よりも先発してバンド201内に入り、磁気ヘッド102−1がバンド201内の面間相対軌道誤差ΔRの距離に到達するタイミングで磁気ヘッド102−2がバンド202内に入る。それから、磁気ヘッド102−1と磁気ヘッド102−2とがそれぞれバンド201とバンド202とを同時に通過し、磁気ヘッド102−1がバンド201を抜けてから面間相対軌道誤差ΔRの距離の移動後に磁気ヘッド102−2がバンド202を抜ける。
【0049】
そこで、
図7において、表面101−1のバンド201と裏面101−2のバンド202のそれぞれのバンド幅をrとする。すると、
図7から、表面用の磁気ヘッド102−1が裏面用の磁気ヘッド102−2よりも先発してバンド201内を進むことができる距離はΔRであり、表面用の磁気ヘッド102−1と裏面用の磁気ヘッド102−2とが表面101−1と裏面101−2とを同時にアクセスすることができる距離はr−ΔRとなる。また、磁気ヘッド102−1がバンド201を抜けてから磁気ヘッド102−2がバンド202を抜けるまでの距離はΔRとなる。
【0050】
従って、ケース1の場合、パラメータA1、B1、C1、A2、B2、C2のバンド範囲は、それぞれ、ΔR、r−ΔR、なし、なし、r−ΔR、ΔRが対応する。つまり、パラメータA1はバンド201の先頭からΔRまでの範囲にあるトラックが対応し、パラメータB1はパラメータA1の範囲の終わりからr−ΔRまでの範囲にあるトラックが対応し、パラメータC1は対応するトラックがなく、パラメータA2も対応するトラックがなく、パラメータB2はバンド202の先頭からr−ΔRまでの範囲にあるトラックが対応し、パラメータC2はパラメータB2の範囲の終わりからΔRまでの範囲にあるトラックが対応する。
【0051】
CPU25は、この設定に従い、バンド201のバンド範囲「A1」を表面用の磁気ヘッド102−1により単独で記録させ、続いて、同時に、バンド201のバンド範囲「B1」を表面用の磁気ヘッド102−1により、バンド202のバンド範囲「B2」を裏面用の磁気ヘッド102−2により記録させ、そして、バンド202の残りのバンド範囲「C2」を裏面用の磁気ヘッド102−2により単独で記録させるように制御する。
【0052】
なお、本実施形態では、表面101−1と裏面101−2とに、説明のために一組のバンドを示している。各バンドは、各磁気ヘッドが走査機構の走査により同時に通過するバンドである。これ以外にも、矢印Y2の方向に、多数のバンドを含んでいてもよい。
【0053】
図8は、磁気ディスク101の表面101−1と裏面101−2とのバンドの対応関係のその他の一例(ケース2)を示す図である。
図8には、磁気ディスク101の表面101−1のバンド201と裏面101−2のバンド202のそれぞれの先頭半径がオフセットを有し、かつバンド幅が等しいときのものを示している。
【0054】
図8において、先頭半径のオフセットをΔrとする。なお、本例においてΔrは、磁気ディスク101において瓦記録方向と逆方向を正とする。すると、ケース2の場合、パラメータA1、B1、C1、A2、B2、C2は、それぞれ、ΔR+Δr、r−(ΔR+Δr)、なし、なし、r−(ΔR+Δr)、ΔR+Δrが対応する。
【0055】
CPU25は、この設定に従い、バンド201のバンド範囲「A1」を表面用の磁気ヘッド102−1により単独で記録させ、続いて、同時に、バンド201のバンド範囲「B1」を表面用の磁気ヘッド102−1により、バンド202のバンド範囲「B2」を裏面用の磁気ヘッド102−2により記録させ、そして、バンド202の残りのバンド範囲「C2」を裏面用の磁気ヘッド102−2により単独で記録させるように制御する。
【0056】
図9は、磁気ディスク101の表面101−1と裏面101−2とのバンドの対応関係のその他の一例(ケース3)を示す図である。
図9には、磁気ディスク101の表面101−1のバンド201と裏面101−2のバンド202のそれぞれの先頭半径がオフセットを有し、かつバンド幅が異なるときのものを示している。
【0057】
図9において、先頭半径のオフセットをΔrとし、バンド201とバンド202のそれぞれのバンド幅をr1、r2とする。すると、ケース3の場合、パラメータA1、B1、C1、A2、B2、C2は、それぞれ、ΔR+Δr、r1−(ΔR+Δr)、なし、なし、r1−(ΔR+Δr)、r2−{r1−(ΔR+Δr)}が対応する。
【0058】
CPU25は、この設定に従い、バンド201のバンド範囲「A1」を表面用の磁気ヘッド102−1により単独で記録させ、続いて、同時に、バンド201のバンド範囲「B1」を表面用の磁気ヘッド102−1により、バンド202のバンド範囲「B2」を裏面用の磁気ヘッド102−2により記録させ、そして、バンド202の残りのバンド範囲「C2」を裏面用の磁気ヘッド102−2により単独で記録させるように制御する。
【0059】
図10は、磁気ディスク101の表面101−1と裏面101−2とのバンドの対応関係のその他の一例(ケース4)を示す図である。
図10には、
図9の別の例を示している。ケース4は、バンド201のバンド幅が更にある場合で、表面用の磁気ヘッド102−1により後発の記録も行うケースである。
【0060】
ケース4の場合、パラメータA1、B1、C1、A2、B2、C2は、それぞれ、ΔR+Δr、r2、r1−(ΔR+Δr)−r2、なし、r2、なし、が対応する。
【0061】
CPU25は、この設定に従い、バンド201のバンド範囲「A1」を表面用の磁気ヘッド102−1により単独で記録させ、続いて、同時に、バンド201のバンド範囲「B1」を表面用の磁気ヘッド102−1により、バンド202のバンド範囲「B2」を裏面用の磁気ヘッド102−2により記録させ、そして、バンド201の残りのバンド範囲「C1」を表面用の磁気ヘッド102−1により単独で記録させるように制御する。
【0062】
ここでは、一例としてケース1〜ケース4を挙げたが、その他のケースを適宜含めてよい。CPU25は、パラメータA1、B1、C1、A2、B2、C2のバンド範囲を上記のように求めて、その結果に基づいて磁気ディスク101の表面101−1と裏面101−2のそれぞれのバンドへ記録制御を行う。読み取り時には、CPU25は、記録時に設定したパラメータ値に基づいて、磁気ディスク101の表面101−1と裏面101−2のそれぞれのバンドからデータを読み取る制御を行う。
【0063】
続いて、ハードディスク装置1における磁気ディスク101の表面101−1と裏面101−2のそれぞれのバンドへのアクセス制御動作について説明する。
【0064】
図11は、ハードディスク装置1におけるCPU25の制御フローの一例を示す図である。
図11に示すように、CPU25は、先ず、バンド対応管理テーブルT(
図3参照)を参照し、記録対象アドレスに対応する、同時記録対象のバンド201、バンド202を決定する(S1)。
【0065】
続いて、CPU25は、バンド対応管理テーブルTのバンド情報から、バンド201のバンド幅r1、バンド202のバンド幅r2、および、バンド201とバンド202のそれぞれの先頭半径のオフセットΔrを算出する(S2)。
【0066】
続いて、CPU25は、バンド201が属する媒体面に対応する磁気ヘッド、つまり本実施形態では磁気ディスク101の表面101−1に対応する磁気ヘッド(表面用の磁気ヘッド102−1)と、バンド202が属する媒体面に対応する磁気ヘッド、つまり本実施形態では磁気ディスク101の裏面101−2に対応する磁気ヘッド(裏面用の磁気ヘッド102−2)との、面間相対軌道誤差ΔRを算出する(S3)。
【0067】
ここで、ΔR>0のとき、表面用の磁気ヘッド102−1が裏面用の磁気ヘッド102−2よりも瓦記録の方向に面間相対軌道誤差ΔRだけ先行する。ΔR<0のときは、裏面用の磁気ヘッド102−2が表面用の磁気ヘッド102−1よりも瓦記録の方向に面間相対軌道誤差ΔRだけ先行する。また、Δr>0のとき、バンド201はバンド202と比較して先頭が瓦記録方向よりにずれており、Δr<0のとき、バンド202がバンド201と比較して先頭が瓦記録方向よりにずれている。
【0068】
つまり、面間相対軌道誤差ΔRとオフセットΔrの和(ΔR+Δr)の正負で、どちらのバンドを先発して記録するか、すなわち先発記録領域として設定するべきかを判断することができるため、次のように判定処理を行う。
【0069】
先ず、CPU25は、ΔR+Δrが正かどうかを判断する(S4)。ΔR+Δrが正の場合(S4:Yes判定)、CPU25は、バンド201の先発記録領域「A1」を有効にし、バンド202の先発記録領域「A2」を無効にする(S4−1)。「有効」では、対応するパラメータのバンド範囲を計算し、計算結果を設定する。「無効」では、対応するパラメータのバンド範囲を「0」とする。「有効」と「無効」の処理は、以下においても同様とする。
【0070】
ΔR+Δrが負の場合(S4:No判定)、バンド201の先発記録領域「A1」を無効にし、バンド202の先発記録領域「A2」を有効にする(S5−1)。なお、図示を省略しているが、ΔR+Δr=0の場合(S4:No判定)には、バンド201の先発記録領域「A1」とバンド202の先発記録領域「A2」とを共に無効にし、ステップS5−1に続く後述の処理を行う。
【0071】
以下、バンド201が先行記録される場合(S4−1に続く処理)について説明する。先ず、CPU25は、バンド201の後発記録領域「C1」が有効かバンド202の後発記録領域「C2」が有効かを判断する(S4−2)。
【0072】
具体的に、バンド201の先発記録領域「A1」を除いた幅、すなわちr1−(ΔR+Δr)が、バンド202の幅r2を超えるとき、バンド201とバンド202の同時記録が終了した時点で、バンド201の後部に記録されるべき領域が残存する。したがって、CPU25は、r1−(ΔR+Δr)>r2の判定により、バンド201の後発記録領域「C1」が有効かバンド202の後発記録領域「C2」が有効かを判断する。
【0073】
r1−(ΔR+Δr)<r2の場合(S4−2:No判定)、CPU25は、バンド201の同時記録領域「B1」とバンド202の同時記録領域「B2」とを有効にし(S11)、更にバンド201の後発記録領域「C1」を無効にし、バンド202の後発記録領域「C2」を有効にする(S12)。なお、図示を省略しているが、r1−(ΔR+Δr)=r2の場合(S4−2:No判定)には、バンド201の後発記録領域「C1」とバンド202の後発記録領域「C2」とを共に無効にし、ステップS12に続く処理を行う。
【0074】
続いて、CPU25は、決定した順序データの順に記録を実施する。つまり、r1−(ΔR+Δr)<r2の場合(S4−2:No判定)、先発記録領域「A1」に先発して記録を実施し(S13)、続いて同時記録領域「B1」と「B2」に同時記録を実施し(S14)、そして、後発記録領域「C2」に後発して記録を実施する(S15)。r1−(ΔR+Δr)=r2の場合(S4−2:No判定)、先発記録領域「A1」に先発して記録を実施し(S13)、続いて同時記録領域「B1」と「B2」に同時記録を実施し(S14)、ステップS15の処理はとばす。
【0075】
これに対し、r1−(ΔR+Δr)>r2の場合(S4−2:Yes判定)、CPU25は、バンド201の同時記録領域「B1」とバンド202の同時記録領域「B2」とを有効にし(S21)、更にバンド201の後発記録領域「C1」を有効にし、バンド202の後発記録領域「C2」を無効にする(S22)。
【0076】
続いて、CPU25は、決定した順序データの順に記録を実施する。つまり、この場合、先発記録領域「A1」に先発して記録を実施し(S23)、続いて同時記録領域「B1」と「B2」に同時記録を実施し(S24)、そして、後発記録領域「C1」に後発して記録を実施する(S25)。
【0077】
以下、バンド202が先行記録される場合(S5−1に続く処理)について説明する。先ず、CPU25は、バンド201の後発記録領域「C1」が有効かバンド202の後発記録領域「C2」が有効かを判断する(S5−2)。
【0078】
具体的に、バンド202の先発記録領域「A2」を除いた幅が、バンド201の幅r1を超えるとき、バンド201とバンド202の同時記録が終了した時点で、バンド202の後部に記録されるべき領域が残存する。したがって、CPU25は、r2−(ΔR+Δr)>r1の判定により、バンド201の後発記録領域「C1」が有効かバンド202の後発記録領域「C2」が有効かを判断する。
【0079】
r2−(ΔR+Δr)>r1の場合(S5−2:Yes判定)、CPU25は、バンド201の同時記録領域「B1」とバンド202の同時記録領域「B2」とを有効にし(S31)、更にバンド201の後発記録領域「C1」を無効にし、バンド202の後発記録領域「C2」を有効にする(S32)。
【0080】
続いて、CPU25は、決定した順序データの順に記録を実施する。つまり、ΔR+Δr<0(S4:No判定)かつr2−(ΔR+Δr)>r1(S5−2:Yes判定)の場合、先発記録領域「A2」に先発して記録を実施し(S33)、続いて同時記録領域「B1」と「B2」に同時記録を実施し(S34)、そして、後発記録領域「C2」に後発して記録を実施する(S35)。
【0081】
ΔR+Δr=0(S4:No判定)かつr2−(ΔR+Δr)>r1(S5−2:Yes判定)の場合、ステップS33の処理をとばし、同時記録領域「B1」と「B2」に同時記録を実施し(S34)、そして、後発記録領域「C2」に後発して記録を実施する(S35)。
【0082】
これに対し、r2−(ΔR+Δr)<r1の場合(S5−2:No判定)、CPU25は、バンド201の同時記録領域「B1」とバンド202の同時記録領域「B2」とを有効にし(S41)、更にバンド201の後発記録領域「C1」を有効にし、バンド202の後発記録領域「C2」を無効にする(S42)。なお、図示を省略しているが、r2−(ΔR+Δr)=r1の場合(S5−2:No判定)には、バンド201の後発記録領域「C1」とバンド202の後発記録領域「C2」とを共に無効にする。
【0083】
続いて、CPU25は、決定した順序データの順に記録を実施する。つまり、ΔR+Δr<0(S4:No判定)かつr2−(ΔR+Δr)<r1(S5−2:No判定)の場合、先発記録領域「A2」に先発して記録を実施し(S43)、続いて同時記録領域「B1」と「B2」に同時記録を実施し(S44)、そして、後発記録領域「C1」に後発して記録を実施する(S45)。
【0084】
ΔR+Δr=0(S4:No判定)かつr2−(ΔR+Δr)<r1(S5−2:No判定)の場合、ステップS43の処理をとばし、同時記録領域「B1」と「B2」に同時記録を実施し(S44)、そして、後発記録領域「C1」に後発して記録を実施する(S45)。
【0085】
ΔR+Δr=0(S4:No判定)かつr2−(ΔR+Δr)=r1(S5−2:No判定)の場合、ステップS43の処理をとばし、同時記録領域「B1」と「B2」に同時記録を実施し(S44)、ステップS45の処理をとばす。
【0086】
ΔR+Δr<0(S4:No判定)かつr2−(ΔR+Δr)=r1(S5−2:No判定)の場合、先発記録領域「A2」に先発して記録を実施し(S43)、続いて同時記録領域「B1」と「B2」に同時記録を実施し(S44)、ステップS45の処理をとばす。
【0087】
ステップS15、S25、S35、S45の後、CPU25は、順序データをバンド対応管理テーブルTに保存し(S50)、アクセス制御動作を終了する。
【0088】
なお、CPU25は、データの読取時は、バンド対応管理テーブルTに対してステップS50で保存した順序データに基づいて複数の記録面から同時読み取りを行う。
【0089】
以上のように、本実施形態のハードディスク装置は、複数の媒体面における各記録ヘッドの面間相対軌道誤差を算出し、各記録ヘッドが走査機構の走査により同時に通過する各媒体面のバンドでのデータアクセス順序を、バンド情報と面間相対軌道誤差とに基づき決定する。そして、各媒体面のバンドでのデータアクセスを、決定したデータアクセス順序で行うよう制御する。このため、面間相対軌道誤差が生じていても、この面間相対軌道誤差は、各媒体面のデータアクセス順序により吸収される。
【0090】
つまり、メカ部品を追加しなくても面間相対軌道誤差を吸収することが可能で、メカ設計の複雑化を回避することができる。
【0091】
本実施形態では、バンド対応管理テーブルTからバンド情報を読み取っているが、バンド情報は、出荷前に予め記録された固定のものであってもよいし、ユーザ側で動的に生成したものであってもよい。
【0092】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。