特許第6759178号(P6759178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759178
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】地上用変圧器装置
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/28 20060101AFI20200910BHJP
   H02B 1/30 20060101ALI20200910BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20200910BHJP
   H01F 27/08 20060101ALI20200910BHJP
   H01F 30/12 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   H02B1/28 E
   H02B1/28 B
   H02B1/30 F
   H01F27/02 A
   H01F27/02 Z
   H01F27/08 150
   H01F30/12 G
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-221648(P2017-221648)
(22)【出願日】2017年11月17日
(65)【公開番号】特開2019-92362(P2019-92362A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2019年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平野 雄大
(72)【発明者】
【氏名】中ノ上 賢治
(72)【発明者】
【氏名】日比野 貴郁
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−129403(JP,A)
【文献】 実開平04−034706(JP,U)
【文献】 実開昭60−135005(JP,U)
【文献】 実開昭57−090309(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/28
H01F 27/02
H01F 27/08
H01F 30/12
H02B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内に変圧器本体を封入した変圧器部と、高圧側端子や一次側ブッシングを収容する一次コンパートメント部と、低圧側端子や二次側ブッシングを収容する二次コンパートメント部と、前記変圧器部、前記一次コンパートメント部および前記二次コンパートメント部を収容する外箱を備え、地上に設置される地上用変圧器装置であって、
前記変圧器部の上方であって、前記外箱の天井板に通気孔を備え、
前記外箱の下部に排水口を備え
前記変圧器のタンクの側面に冷却用の波リブを備え、
変圧器のタンクの上面に、前記排水口側が低くなる傾斜をつけ、
前記タンクの上面の傾斜は、前記冷却用の波リブ側が低くなるように形成したことを特徴とする地上用変圧器装置。
【請求項2】
タンク内に変圧器本体を封入した変圧器部と、高圧側端子や一次側ブッシングを収容する一次コンパートメント部と、低圧側端子や二次側ブッシングを収容する二次コンパートメント部と、前記変圧器部、前記一次コンパートメント部および前記二次コンパートメント部を収容する外箱を備え、地上に設置される地上用変圧器装置であって、
前記変圧器部の上方であって、前記外箱の天井板に通気孔を備え、
前記外箱の下部に排水口を備え、
前記変圧器のタンクの上方に、前記排水口側が低くなる変圧器カバーを取り付けたことを特徴とする地上用変圧器装置。
【請求項3】
請求項に記載の地上用変圧器装置において、
前記変圧器のタンクの側面に冷却用の波リブを備え、前記変圧器カバーは、前記冷却用の波リブ側が低くなるように取り付けたことを特徴とする地上用変圧器装置。
【請求項4】
タンク内に変圧器本体を封入した変圧器部と、高圧側端子や一次側ブッシングを収容する一次コンパートメント部と、低圧側端子や二次側ブッシングを収容する二次コンパートメント部と、前記変圧器部、前記一次コンパートメント部および前記二次コンパートメント部を収容する外箱を備え、地上に設置される地上用変圧器装置であって、
前記変圧器部の上方であって、前記外箱の天井板に通気孔を備え、
前記外箱の下部に排水口を備え、
前記一次コンパーメント部および前記二次コンパートメント部を気密構造としたことを特徴とする地上用変圧器装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の地上用変圧器装置において、
前記変圧器部に面して、前記外箱の側板および/または背面板に、外気を取り込む下部ギャラリおよび空気を排出する上部ギャラリを設けたことを特徴とする地上用変圧器装置。
【請求項6】
請求項に記載の地上用変圧器装置において、
前記下部ギャラリを、前記下部ギャラリの通気孔の一部が前記外箱の底板の上面よりも低くなるように配置することにより、前記排水口を形成したことを特徴とする地上用変圧器装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の地上用変圧器装置において、
前記天井板の通気孔は、前記一次コンパートメント部および前記二次コンパートメント部から離れた位置に配置したことを特徴とする地上用変圧器装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の地上用変圧器装置において、
前記外箱の天井板の側面および/または背面に通気孔を設けたことを特徴とする地上用変圧器装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の地上用変圧器装置において、
前記外箱の天井板の通気孔は、前記天井板にギャラリを取り付けて形成したことを特徴とする地上用変圧器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上に設置される地上用変圧器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
敷地内や路上などの地上に設置される地上用変圧器装置は、タンク内に変圧器本体を封入した変圧器部、変圧器本体の一次側に一次側導体を接続する一次側ブッシング、変圧器本体の二次側に二次側導体を接続する二次側ブッシング、および、これらを収容する外箱を備えている。また、変圧器装置には、変圧器部を冷却するために、例えばギャラリなどの冷却構造を備えている。
【0003】
例えば特許文献1には、変圧器本体を絶縁媒体が充填された変圧器タンク内に封入した変圧器と、前記変圧器本体の一次側に一次側導体を接続する一次側ブッシングと、前記変圧器本体の二次側に二次側導体を接続する二次側ブッシングと、これらを収納する配電箱とを備え、前記配電箱は、変圧器を収納する第1の収納室と前記一次側ブッシング及び/又は二次側ブッシングとを収納する第2の収納室とから構成されており、前記第1の収納室に対向する側板の下部に外気導入口を形成し、前記第1の収納室に対向する天井板に外気導出口を形成した配電用変圧器装置、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−266065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地上用変圧器装置においては、中身の変圧器部の温度だけではなく、外箱を含めた変圧器装置全体の温度を考慮する必要がある。冷却のためにギャラリを設けてはいるが、変圧器装置は外箱に覆われた構造であることから、変圧器部が冷えづらく、温度上昇が小形化の妨げとなっている。
【0006】
特許文献1では、変圧器を収納した第1の収納室に対向する側板の下部に外気導入口を設け、第1の収納室に対向する天井板に外気導出口を設けて、外気を導入して変圧器の冷却を行うことが記載されているが、外気に含まれる水分は変圧器の稼働時の発熱により蒸発して消滅させると記載されており、積極的に排出することは考慮されていない。
【0007】
本発明は、変圧器部の冷却効率を上げるとともに、進入した雨水を良好に排出できるようにした地上用変圧器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための、本発明の「地上用変圧器装置」の一例を挙げるならば、
タンク内に変圧器本体を封入した変圧器部と、高圧側端子や一次側ブッシングを収容する一次コンパートメント部と、低圧側端子や二次側ブッシングを収容する二次コンパートメント部と、前記変圧器部、前記一次コンパートメント部および前記二次コンパートメント部を収容する外箱を備え、地上に設置される地上用変圧器装置であって、前記変圧器部の上方であって、前記外箱の天井板に通気孔を備え、前記外箱の下部に排水口を備え、前記変圧器のタンクの側面に冷却用の波リブを備え、変圧器のタンクの上面に、前記排水口側が低くなる傾斜をつけ、前記タンクの上面の傾斜は、前記冷却用の波リブ側が低くなるように形成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、変圧器部の冷却効率を上げるとともに、進入した雨水を良好に排出できる。
【0010】
そして、地上用変圧器装置の外箱や変圧器部の温度に余裕ができ、地上用変圧器装置を小形化し、コストの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1の地上用変圧器装置を示す図である。
図2】本発明の実施例2の地上用変圧器装置を示す側面図である。
図3】本発明の実施例2の地上用変圧器装置の変形例を示す側面図である。
図4】本発明の実施例3の地上用変圧器装置を示す側面図である。
図5】本発明の実施例4の地上用変圧器装置を示す上部平面図である。
図6】従来の地上用変圧器装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例を説明する前に、地上用変圧器装置の構造を説明する。
図6に、地上用変圧器装置の一例を示す。図6(a)は地上用変圧器装置の正面図、図6(b)は上部平面図、図6(c)は側面図、図6(d)は背面図である。地上用変圧器装置1は、高圧側端子や一次側ブッシングを収容する一次コンパートメント部2、低圧側端子や二次側ブッシングを収容する二次コンパートメント部3、タンク7内に変圧器本体を封入した変圧器部4、これらを収容する外箱5、および外箱の開閉扉6からなっている。一次コンパーメント部2には、断路器や保護機構を備えていることもある。
【0013】
外箱5は、例えば箱形をしており、底板5a、側板5b、背面板5c、天井板5dから構成されている。外箱の右側の側板5bおよび背面板5cには、その上部および下部に、ギャラリ9a,9bと呼ばれる通気孔が設けられている。図の例では、一次コンパーメント部2は左側に、変圧器部4は右側背面に、二次コンパーメント部3は右側前面に配置されている。一次および二次コンパートメント部は、JIS C 0920(電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード))6項の、水の浸入に対する保護等級3「散水に対しての保護」に準拠することが定められている。
【0014】
図6に示す地上用変圧器装置において、変圧器部4の冷却は、外箱の右側の側板5bおよび背面板5cに設けたギャラリ9により行われる。下部ギャラリ9aから流入した外気は、変圧器タンク7の側面に設けた波リブ7aに沿って上昇し、変圧器の熱を取り込む。そして、上昇した空気は、上部ギャラリ9bから外部に排出され、放熱する。
【0015】
しかし、上部ギャラリ9bが、外箱5の側板5bおよび背面板5cに設けられているため、上昇する空気の流路が曲げられ、また、外箱5の上部の空気が滞るため、変圧器部の冷却効率が低下してしまう。
【0016】
本発明は、変圧器部の冷却効率を上げるとともに、進入した雨水を良好に排出できるようにするものである。
【0017】
以下、本発明の実施例について図に基づき説明する。
なお、実施例を説明するための各図において、同一の構成要素にはなるべく同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0018】
図1に、本発明の実施例1の地上用変圧器装置を示す。図1(a)は地上用変圧器装置の正面図、図1(b)は上部平面図、図1(c)は側面図、図1(d)は背面図である。地上用変圧器装置1は、高圧側端子や一次側ブッシングを収容する一次コンパートメント部2、低圧側端子や二次側ブッシングを収容する二次コンパートメント部3、タンク7内に変圧器本体を封入した変圧器部4、これらを収容する外箱5、および外箱の開閉扉6からなっている。外箱5は、例えば箱形をしており、底板5a、側板5b、背面板5c、天井板5dから構成されている。図の例では、一次コンパーメント部2は左側に、変圧器部4は右側背面に、二次コンパーメント部3は右側前面に配置されている。一次コンパーメント部2や二次コンパーメント部3と変圧器部4との間には、仕切りが設けられていても良い。また、一次コンパーメント部2や二次コンパーメント部3は、絶縁の点から気密構造とされているのが好ましい。
【0019】
本実施例では、地上用変圧器装置の外箱の天井板5dに通気孔10を設ける。その際、通気孔の位置は、一次コンパーメント部2および二次コンパートメント部3から離れた、変圧器部4の上部とする。また、通気孔10の位置は、変圧器タンクの周囲に設けた波リブ7aの上部の位置とするのが、好ましい。
【0020】
外箱の天井板5dに通気孔10を設けることにより、下部ギャラリ9cから流入した空気は、変圧器タンクの周囲に設けた波リブ7aに沿って上昇し、熱を持った空気は天井板5dの通気孔10からスムーズに排気される。したがって、外箱の天井部に滞ること無く、熱を持った空気を効率的に排気することができる。
【0021】
また、本実施例においては、下部ギャラリ9cの位置を下げ、外箱の底板5aの上面の高さよりも下に、下部ギャラリ9cの通気孔の一部を配置する。天井板5dに通気孔10を設けると、降雨の際に雨水が変圧器部に侵入するが、外箱の底板5aの上面の高さよりも下に、下部ギャラリ9cの通気孔の一部を配置することにより、雨水の排水流路が形成され、下部ギャラリの9cの通気孔から外箱内に浸入した水を排水することができる。なお、雨水の排水流路としては、下部ギャラリとは別に、外箱5の側板5bまたは背面板5cに排水口を設けても良い。
【0022】
本実施例によれば、地上用変圧器装置の外箱の天井板に通気孔を設けることにより、変圧器部の冷却効率を上げるとともに、下部ギャラリの位置を下げ、外箱の底板の上面の高さよりも下に下部ギャラリの通気孔の一部を配置することにより、天井板の通気孔から進入した雨水を良好に排出することができる。そして、地上用変圧器装置の外箱や変圧器部の温度に余裕ができ、地上用変圧器装置を小形化し、コストの増大を抑制することができる。
【実施例2】
【0023】
図2に、本発明の実施例2の地上用変圧器装置を示す。図2は、地上用変圧器装置の右側面図を示す。
【0024】
本実施例では、変圧器タンクの上面に傾斜を設ける。タンク上面の傾斜は、ギャラリ側が低くなるように、図の例では、背面側が低くなるように設ける。外箱の右側の側面にギャラリを設けている場合には、右側面側が低くなるように設けてもよい。また、タンク上面の傾斜は、一次または二次コンパーメント部ではなく、変圧器タンクの周囲に設けた波リブに向かって、侵入した雨水が流れるようにするのが好ましい。
【0025】
本実施例によれば、天井板の通気孔から侵入した雨水は、タンク上面の傾斜に沿って流れ、下部ギャラリの通気孔から良好に排出することができる。また、雨水が変圧器タンクの周囲に設けた波リブに沿って流れることにより変圧器を冷却し、さらに冷却効率を上げることができる。
【0026】
図3に、本発明の実施例2の地上用変圧器装置の変形例を示す。この変形例では、変圧器タンクの上面に傾斜を設けるに代えて、変圧器タンクの上側に、傾斜した変圧器タンクの上面カバー15を取り付ける。上面カバー15の傾斜は、ギャラリ側が低くなるように、図の例では、背面側が低くなるように設ける。
【0027】
この変形例では、図2の実施例の効果に加えて、変圧器の構造自体は変更する必要がなく、上面カバーを傾斜して取り付ければ良いので、製造が容易である。
【実施例3】
【0028】
図4に、本発明の実施例3の地上用変圧器装置を示す。図3は、地上用変圧器装置の右側面図を示す。
【0029】
本実施例では、天井板5dの側面に通気孔を設けたものである。なお、図示していないが、天井板の背面側の側面にも通気孔を設けるのが好ましい。天井板の側面に通気孔を設けることにより、外箱の上部に熱せられた空気が滞ることなく、変圧器部の冷却効率を上げることができる。
【実施例4】
【0030】
図5に、本発明の実施例4の地上用変圧器装置を示す。図5は、地上用変圧器装置の上部平面図を示す。
【0031】
本実施例では、天井板に複数の孔から成る通気孔を設けるに代えて、ギャラリを取り付ける。すなわち、天井板5dに、ギャラリ取付用の大きめの穴を空け、この穴にギャラリ13を取り付ける。本実施例によれば、ギャラリを用いることにより、通気孔の形成が容易となる。また、取り外し可能、取り替え可能となる。
【0032】
以上、各実施例で説明したように、本発明によれば、天井板に通気孔を形成することにより、熱を持った空気を効率的に排気可能である。天井板の通気孔から侵入した水は、外箱の下部の排水口から排水することができる。そして、地上用変圧器装置の温度に余裕ができ、地上用変圧器装置の小形化、コスト増大を抑制することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 地上用変圧器装置
2 一次コンパートメント部
3 二次コンパートメント部
4 変圧器部
5 外箱
5a 外箱の底板
5b 外箱の側板
5c 外箱の背面板
5d 外箱の天井板
6 開閉扉
7 変圧器タンク
7a タンクの波リブ
9a 下部ギャラリ
9b 上部ギャラリ
9c 下げた下部ギャラリ
10 天井板の通気孔
11 傾斜した変圧器タンク上面
12 天井板の側面孔
13 天井板のギャラリ
15 変圧器タンクの上面カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6