特許第6759211号(P6759211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759211
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】エアバッグモジュール
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20200910BHJP
   B60R 21/233 20060101ALI20200910BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20200910BHJP
   B60R 21/239 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   B60R21/207
   B60R21/233
   B60R21/2338
   B60R21/239
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-534341(P2017-534341)
(86)(22)【出願日】2015年12月23日
(65)【公表番号】特表2018-500238(P2018-500238A)
(43)【公表日】2018年1月11日
(86)【国際出願番号】US2015000275
(87)【国際公開番号】WO2016105519
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年9月21日
(31)【優先権主張番号】62/096,678
(32)【優先日】2014年12月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518287353
【氏名又は名称】ジョイソン セイフティ システムズ アクイジション エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィパスラモントン、ポンジェット ポール
(72)【発明者】
【氏名】キバット、ジョナサン リチャード
(72)【発明者】
【氏名】イ、スン ウ
(72)【発明者】
【氏名】リトル、アレックス
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−208434(JP,A)
【文献】 特開2009−018715(JP,A)
【文献】 特表2006−513083(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/133280(WO,A1)
【文献】 特開2007−186135(JP,A)
【文献】 特開2006−248511(JP,A)
【文献】 特開2010−023592(JP,A)
【文献】 特開2008−024286(JP,A)
【文献】 特開2011−057143(JP,A)
【文献】 特開2014−141159(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/151928(WO,A1)
【文献】 特表2007−510581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 − 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両座席の乗員を保穫するためのエアバッグモジュールであって、
膨張可能なエアバッグと、
前記エアバッグを膨張させるための膨張ガスを生成するように構成されたインフレータと、
を備え
前記エアバッグは、展開前に前記車両座席内に収容され、
前記エアバッグは、膨張完了時の形状として、前記車両座席側の後部と、乗員に近い側で前記後部から前方へ突出する乗員寄り突出部と、乗員から遠い側で前記後部から前方へ突出する外側寄り突出部とからなり、前記乗員寄り突出部と前記外側寄り突出部との間には、上下方向に沿った割れ目が形成されており、
前記エアバッグは、
前記乗員寄り突出部における乗員に近い側の面と、前記後部の背面と、前記外側寄り突出部における乗員から遠い側の面とが、連続する単一の部材となるように構成された主パネル、並びに、
前記乗員寄り突出部における乗員から遠い側の面、及び、前記外側寄り突出部における乗員に近い側の面となる一対の中央パネル
により構成され、
前記主パネルにおいて、前記乗員寄り突出部における乗員に近い側の面と、前記外側寄り突出部における乗員から遠い側の面とが、対称な形状に形成されている、
エアバッグモジュール。
【請求項2】
前記乗員寄り突出部と前記外側寄り突出部と、前記後部で前記膨張ガスが流通可能である請求項1に記載のエアバッグモジュール。
【請求項3】
前記エアバッグは、一対の内部テザーを含み、前記内部テザーの各々は前記乗員寄り突出部における前記乗員から遠い側の面の後部側端部から前記後部までを連結し、前記外側寄り突出部における前記乗員に近い側の面の後部側端部から前記後部までを連結している請求項1に記載のエアバッグモジュール。
【請求項4】
前記内部テザーは、単一の繊維材料パネルで形成された請求項3に記載のエアバッグモジュール。
【請求項5】
両を巻き込む側面衝突からその車両の客室の乗員を保護するための乗員保護装置であって、
インフレータと、
張可能なエアバッグとを備え、
前記インフレータと、展開前の前記エアバッグとが、車両座席内に収容され、
前記エアバッグは、前記車両の前方に向かって展開するように構成され、
前記エアバッグは、膨張完了時の形状として、前記車両座席側の後部と、乗員に近い側で前記後部から前方へ突出する乗員寄り突出部と、乗員から遠い側で前記後部から前方へ突出する外側寄り突出部とからなり、前記乗員寄り突出部と前記外側寄り突出部との間には、上下方向に沿った割れ目が形成されており、
前記エアバッグは、
前記乗員寄り突出部における乗員に近い側の面と、前記後部の背面と、前記外側寄り突出部における乗員から遠い側の面とが、運続する単一の部材となるように構成された主パネル、並びに、
前記乗員寄り突出部における乗員から遠い側の面、及び、前記外側寄り突出部における乗員に近い側の面となる一対の中央パネル
により構成され、
前記主パネルにおいて、前記乗員寄り突出部における乗員に近い側の面と、前記外側寄り突出部における乗員から遠い側の面とが、対称な形状に形成されている、
乗員保護装置。
【請求項6】
前記エアバッグは、前記後部から前記中央パネルに向けて延び、前記中央パネルに接続された一対の内部テザーを含む請求項5に記載の乗員保護装置。
【請求項7】
前記内部テザーは、単一の繊維材料パネルで形成された請求項6に記載の乗員保護装置。
【請求項8】
前記エアバッグは、前記乗員寄り突出部における乗員から遠い側の面と、前記外側寄り突出部における乗員に近い側の面のいずれか一方に設けられた少なくとも1個の排気開口を含み、前記インフレータで発生した膨張ガスが前記排気開口を通じて前記乗員寄り突出部における乗員から遠い側の面と、前記外側寄り突出部における乗員に近い側の面との間に排気される請求項5に記載の乗員保護装置。
【請求項9】
両を巻き込む側面衝突からその車両の客室の乗員を保護するための乗員保護装置であって、
インフレータと、
張可能なエアバッグとを備え、
前記インフレータと、展開前の前記エアバッグとが、車両座席内に収容され
前記エアバッグは、前記車両の前方に向かって展開するように構成され、
前記エアバッグは、膨張完了時の形状として、前記車両座席側の後部と、乗員に近い側で前記後部から前方へ突出する乗員寄り突出部と、乗員から遠い側で前記後部から前方へ突出する外側寄り突出部とからなり、前記乗員寄り突出部と前記外側寄り突出部との間には、上下方向に沿った割れ目が形成されており、
前記エアバッグは、
前記乗員寄り突出部における乗員から遠い側の面と、前記乗員寄り突出部における乗員に近い側の面と、前記後部の背面と、前記外側寄り突出部における乗員から遠い側の面と、前記外側寄り突出部における乗員に近い側の面とが、連続する単一の部材となるように構成された主パネル
により構成されている、
乗員保護装置。
【請求項10】
前記エアバッグは、前記乗員寄り突出部と前記外側寄り突出部とが向かい合う面の間に向けて排気可能な、少なくとも1個の排気開口を含む請求項5に記載の乗員保護装置。
【請求項11】
前記排気開口は、排出された空気が前記外側寄り突出部における乗員から遠い側の面と、前記外側寄り突出部における乗員に近い側の面との間に入るように配置された請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項12】
前記中央パネルの各面は、前記主パネルの前記乗員寄り突出部における乗員に近い側の面の一部と、前記外側寄り突出部における乗員から遠い側の面の一部にそれぞれ接続され、前記中央パネルは各面が向かい合うように畳まれ、これにより前記割れ目が形成される請求項5に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2014年12月24日に出願された米国仮出願第62/096,678号の利益を主張するものである。前記仮出願は、ここにその全体が参照として組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本出願は広く、側面衝突エアバッグの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
側面衝突エアバッグ(SAB)は、側面衝突事故における乗員の胴部及び/または頭部及び/または骨盤への衝撃を柔らげるために乗員の外側寄り面に展開される。現在、側面衝突事故の間の、改善されたエネルギー管理のために、サイドエアバッグにおける有効な膨らみ、すなわち厚さを増加させる2個の方策がある。
【0004】
2次元的なサイドエアバッグの標準的な前/後方向への展開において、エアバッグの有効な厚さは、クッションの全体の周辺領域を増し、その結果として全体の容積を増すことで増加させることができる。また、エアバッグの幾何学的形状は、膨張したエアバッグがより球形あるいは筒形状を有することを確実にすることで有効な厚さを増加させるように調整されるようにできる。車幅は、一旦十分に膨張したクッションの鉛直方向及び前方方向への収縮量によって制御及び/または制限されるであろう。しかしながら、そのようなエアバッグの増加した容積は、展開における所望の圧力を達成するために、より高いインフレータ出力を必要とする。
【0005】
他のエアバッグにおいて、膨らみすなわち厚さを増やすために、エアバッグの周辺縫い目は車幅方向に配置させることもできる。これは膨らみを増加させる有効な手段であるが、この場合展開の間の前方への到達範囲とクッションの軌道とは、SABは最初に横方向に展開し、前方への軌道は専らそれが展開された環境との相互作用によって制御されることを理由として妥協されうる。
【0006】
いずれの場合にも、車両の側面衝突事故の間のエネルギーはクッションの厚さとクッションの圧力とによって管理される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴、様相、及び有利な点は、以下の記載、添付された複数の請求項、及び図面内で示された代表的な実施形態から明確にされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、側面衝突エアバッグモジュールを含む車両座席の概略側面図である。
図2図2は、エアバッグが展開した状態の側面衝突エアバッグモジュールを示した車両座席の概略側面図である。
図3図3は、図2のエアバッグが膨張した状態の車両座席の側面図である。
図4図4は、図2のエアバッグが膨張した状態の車両座席の正面図である。
図5図5は、図2のエアバッグが膨張した状態の車両座席の平面図である。
図6図6は、図3のエアバッグの6−6線に沿って示した平断面図である。
図7図7は、図5のエアバッグの7−7線に沿って示した側断面図である。
図8図8は、エアバッグの主パネルの外側面の斜視図である。
図9図9は、図8に示した主パネルの内側面の斜視図である。
図10図10は、エアバッグ組み立て前のエアバッグの一対のセントラルパネルの斜視図である。
図11図11は、中央縫い目に沿って連結された後のエアバッグのセントラルパネルの斜視図である。
図12図12はパネルが連結される前の図9及び11の主パネルとセントラルパネルとを示した斜視図である。
図13図13はパネル全体を連結する組み立て工程における図12に示した主パネル及びセントラルパネルを示した斜視図である。
図14図14は、エアバッグの組み立て時のセントラルパネルと主パネルの並び具合を示した斜視図である。
図15図15は、両方のセントラルパネルを示すためにエアバッグの一部を折り返した状態の、連結された主パネル及びセントラルパネルを示した斜視図である。
図16図16は、エアバッグモジュール内への収納のために畳まれる前の江波の一方の外側面の斜視図である。
図17図17は、他の実施形態による一体に組み立てられたエアバッグの側面図である。
図18図18は、図17のエアバッグの主パネルの外側面の平面図である。
図19図19は、図17のエアバッグの主パネルの内側面の平面図である。
図20図20は、製造工程における図17のエアバッグの主パネルの内側面の平面図である。
図21図21は、テザーがパネルに連結された後の製造工程における図17のエアバッグの主パネルの内側面の平面図である。
図22図22は、エアバッグの中心寄り突出部と外側寄り突出部との間の割れ目を示した製造工程における図17のエアバッグの主パネルの外側面の平面図である。
図23図23は、製造工程における図17のエアバッグの主パネルの外側面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
エアバッグモジュールの種々の特徴は、図面を参照して説明される。同一番号は、同一あるいは類似した部位を参照するための図面を通じて、また以後説明される発明の各実施形態において使用される。
【0010】
エアバッグは、様々な衝突の事態において車両の乗員を保護するために車両内の様々な位置に備えられ得る。たとえば、エアバッグは、ダッシュボード内、ステアリングホイールの近接位置、車両座席内、ドアトリムパネル内、頭部ライナー内等に備えられ得る。図1を参照するに、車両用の車両座席10が乗員12とともに示されている。車両座席10は、概して水平な下部すなわち座部フレーム15を有する座部14と上部すなわち背もたれフレーム17を有する背もたれ16とを含む。座部14は車両に接合され、また背もたれ16は座部14の後端から上方へ延在する。座部14と背もたれ16は、いずれもフレームに接合された発泡パッドのようなクッションと、クッションを囲むトリムカバーとを含む。
【0011】
代表的な実施形態によれば、サイドエアバッグ(SAB)モジュール20は車両座席10内に備えられる。SABモジュール20は、側面衝突や転覆事故における車両乗員を保護するために構成するように備えられてもよい。代表的な実施形態において、SABモジュール20は、車両座席10の外側寄りに沿った背もたれ16内に設けられている。SABモジュール20は、側面衝突事故における乗員とトリムとの間のエネルギーを吸収するため、及び/または乗員12の車幅方向(たとえば、横方向、側方から側方)の動きを制限するために、エアバッグを展開するように構成されている。SABモジュール20は一般に運転手側の構成のために構成されているように示されているが、SABモジュール20は運転手側の構成及び助手側の構成の両方に使用可能である。SABモジュール20は車両の乗員区画の任意の座列(たとえば、第1、2,3)に位置する任意の乗員に保護を提供するように使用されてもよい。他の実施形態において、SABモジュール20は、ドアパネルやピラーのような、乗員区画の他の構造体から展開するようにしてもよい。
【0012】
図2に示されたように、代表的な実施形態によれば、SABモジュール20はエアバッグすなわちクッション22とインフレータ24とを含んでもよい。インフレータ24は膨張可能なクッション22のための高容積流量のガスを発生するように構成された火工装置あるいは他のエアバッグ膨張装置であってもよい。SABモジュール20はトリムカバーの下の背もたれ16内に備えられている。SABモジュール20は固定装置によって背もたれフレーム17に接合されている。車両を巻き込む側面衝突事故において、インフレータ24によって供給された膨張ガスは、クッション22を、背もたれ16の側面受け材から車両座席10に座る乗員12の上体と骨盤の側方と車両のドア(言い換えると乗員区画の他の外側構造体)とに沿った位置まで展開させるようにクッション22を膨らませながらクッション22内に充満する。エアバッグ22は、エアバッグ22がインフレータ24からの膨張ガスに直接曝されるのをやわらげるためにヒートシールドや部品(たとえば、ガスディフューザ)を含んでもよい。
【0013】
クッション22は、一般的に、複数の縫い目によって一体として接合された複数枚のパネルから形成されている。代表的な実施形態によれば、パネルはナイロン(登録商標)繊維材料である。他の実施形態において、クッション22は任意の好適な繊維材料で形成されてもよい。パネルは一体として縫い合わされ、あるいは熱接着や糊着けのような他の適当な方法によって固定されてもよい。パネルと連結縫い目とは膨張ガスの漏気を低減するためにシーラントでコーティングされてもよい。クッション22は2以上の区画(たとえば、チャンバー、筒状のトンネル等)に分割されてもよい。個々の区画間には、区画が互いに流体連通するように流路あるいは通気口が設けられてもよい。またクッション22は一般に区画を分離する非膨張部位のような複数の非膨張部位を含んでもよい。
【0014】
図6に示されたように、エアバッグ、すなわちクッション22は中心寄り突出部(lobe)30と外側寄り突出部32とを有するように示されている。各突出部は1個あるいは複数の膨張可能なチャンバーによって形成されてもよい。中心寄り突出部30は、エアバッグ22の背面すなわち後部36とインフレータ24に近接した割れ目(gap)38の基部に沿って突出部30,32間に延びる共有された鉛直縫い目34に沿う外側寄り突出部32に接合されている。共有された鉛直縫い目34は、標準的な2次元(たとえば、単一の突出した)サイドエアバッグと同様に展開の間に初期の前/後軌道を可能にする。突出部30,32は、流体的にクッションの後ろすなわち後部で連結されている。
【0015】
エアバッグの後部36の前方に向け、中心寄り突出部30と外側寄り突出部32とは、中央縫い目34に沿って中心寄り突出部30と外側寄り突出部32との間に凹部すなわち割れ目38を形成した状態で互いに離れるように広がる。割れ目38は中心寄りの半分のエアバッグと外側寄りの半分のエアバッグを形づくる。その結果、クッション22は、車両の前方に向けてクッション22が展開するにつれて、後部36の前方に向けて厚みが増加する。突出部30,32の合わせた厚みはクッション22の全体としての有効厚さを制御する。中心寄り突出部30と外側寄り突出部32とは、側面衝突の間における乗員と車両(たとえば、トリム)との間のエネルギーを、より効率的に吸収するために、クッション22に比較的高い膨らみ(loft)(すなわち、増加したクッション幅と荷重深さ(loading depth))を提供するように構成されている。突出部は流体的に連結されていない別々の半分のエアバッグとして構成されてもよい。たとえば、エアバッグは両突出部を分けるセンターパネルを含んでもよく、又、割れ目38はインフレータまで延びてもよい。インフレータ24は、各突出部に別々に膨張ガスを供給するように構成されてもよい。代わりに、図中に示したように、突出部はクッション22の後ろすなわち後部において流体的に連結された2つの半分のエアバッグとして構成されてもよい。
【0016】
中心寄り突出部30と外側寄り突出部32とは、側面衝突事故の間、乗員が中心寄り突出部30と外側寄り突出部32の両方に接触して荷重をかけるように乗員に対して位置決めされている。全体として、突出部30,32は単一チャンバータイプのサイドエアバッグに比べて乗員に対する増加した横方向抵抗を提供する。増加した横方向抵抗は、側面衝突事故の間、2個の突出部30,32が同様あるいは改善されたエネルギー管理を維持すると同時に、単一チャンバーよりも低い圧力に膨張させるようにできる。中心寄り突出部30は乗員による荷重がかけられると、それにより外側寄り突出部32内にガスが強制的に送り込まれ、その結果、単一チャンバーの場合より乗員に対する低い反力で、横方向衝突の間に持続される抵抗を生じさせる。
【0017】
突出部30,32の間のクッション22の中央に沿った割れ目38は、動的な事故の間、より好ましいエネルギー管理のための適応性のある排気を実現するための空間を提供する。突出部30,32間に設けられた排気開口(たとえば、フラップ、開口、スリット、弱部など)を含む排気特徴部は、ガスを割れ目38内に排気することができるように、突出部30,32の間に設けられてもよい。排気特徴部は、乗員によってエアバッグ22へ伝えられたエネルギーを管理するために、動的事故の間に荷重が加わった際に、2つの突出部30,32の相互作用に基づいて開閉されるようにできる。たとえば、排気特徴部は、割れ目38の上部に備えられた順応性を有する受動的な特徴部であってもよい。比較的小さな乗員(たとえば、5%女性ダミー)は、乗員とクッションとの間の反力を弱めるために、排気特徴部を通じて膨張ガスを排気することができるように、肩が排気特徴部の下側でエアバッグ22と接触するようにしてもよい。比較的大きな乗員(たとえば、95%男性ダミー)は、任意の排気開口を覆い、その結果開口を閉じ、また膨張ガスの排気を制限し、その結果乗員とクッションとの間の反力を増加させるように、肩が排気特徴部と同じ位置あるいはその上方で、エアバッグ22と接触するようにしてもよい。
【0018】
図6−7を参照するに、内部テザー40は前/後方向に延び、内部縫い目42,44位置で外側パネルに接合されている。内部テザー40は展開の間、鉛直中央縫い目34の位置を制御する。内部縫い目42,44の位置と内部テザー40の幾何学的形状とはエアバッグ22の形状と展開特性とを変更するために調整されうる。また縫い目42,44の位置は、中心寄り突出部30と外側寄り突出部32とが展開時に相互に影響し、離れて広がる量を制御することにより、クッション22の全体の膨らみを設定する役割も果たすことができる。
【0019】
クッションの容積を中心寄り突出部30と外側寄り突出部32とに分けることで、同じ内部容積の単一のチャンバークッションに比べてクッション22の横方向の幅をより大きくすることが可能になる。クッション22は、クッション22の前/後の到達範囲と乗員の拘束とを減ずることなく、単一チャンバークッションに比べて増加した膨らみを有する。
【0020】
図8−16を参照するに、代表的な実施形態によるエアバッグ22の構造が示されている。エアバッグ22の構造は、製造の容易化を可能にするために、比較的簡易となるように構成されている。エアバッグ22は複数枚の外面パネルから形成されてもよい。図8に主パネル50が示されており、これが中心寄り突出部30と外側寄り突出部32の両方の外面を形成してもよい。代表的な一実施形態において、主パネル50は単一の繊維パネルでもよい。他の実施形態において、主パネル50は複数枚のパネル(たとえば、中心寄り突出部パネルと外側寄り突出部パネル)から形成されてもよい。図16に示されたように、インフレータ24を取り付けるために用いられる固定具が、主パネル50を貫通することができるように、主パネル50内に開口51が設けられてもよい。
【0021】
図9に示されたように、内部テザーパネル52とインフレータ補強パネル54とは縫い目42で主パネル50に連結されてもよい。内部テザーパネル52とインフレータ補強パネル54とは、示されたように、それぞれ単一のパネルから形成されてもよいし、複数のパネルから形成されてもよい。
【0022】
エアバッグ22の外側パネルは、突出部の内面を形成するために一体として連結される一対のセンターパネル56を含んでもよい。センターパネルはC字形状をなすように示されているが、パネルの形状はたとえば、個々の車両あるいは荷重の必要条件に適合するために変更されてもよい。代わりとして、センターパネル56は、割れ目38の基部を形成するためにつながれたり、留められたりする単一のセントラルパネルによって形成されてもよい。図10に示されたように、センターパネル56は内側方向に延びたフラップ58を含む。図11に示されたように、センターパネル56の内側縁57は、中央縫い目34の一部を形成するように縫い合わされてもよい。内部テザー52の両端部は、図12,13に示されたように、それぞれのフラップ58と一直線状にしてもよく、縫い目44で縫い合わされている。センターパネル56の外側縁59と主パネル50の外側縁53とは図14,15に示されたように、周縁縫い目45でクッション22の前方部を閉じるように縫い合わされている。センターパネル56の外側縁59と主パネル50の外側縁53とは、次いでクッション22の上部と底部とに沿って縫い目45を連続させるように縫い合わされ、エアバッグ22を閉じる。
【0023】
図17−23は、サイドエアバッグモジュールとして使用されるエアバッグの他の実施形態を示している。図17−23に示されたエアバッグ70は、2つの突出部76,78を含み、上述したエアバッグと同様に作用する。図17に示されたエアバッグ70は、単一体のエアバッグである。エアバッグ70は単一の主パネル71から形成されている。パネルは、膨張後に膨張ガスがエアバッグから排気できるように、1個以上の排気開口79を含んでもよい。図19に示されたように、排気開口はパッチ73で補強されてもよい。パネル71は、インフレータがエアバッグの内部に位置決めされ、エアバッグの外部のリテーナに連結できるように開口51を含んでもよい。
【0024】
図19に示されたように、エアバッグ71は内部テザー72を含んでもよい。単一のパネル72として示されているが、テザーは2枚の別々のパネルで形成されてもよい。テザー72は、テザーの端部がクッションの突出部間の割れ目77の基部でエアバッグに連結されるように延在している。テザー72の中間部は、インフレータに近接した主パネルに連結されてもよい。また、エアバッグは、インフレータが主パネルとリテーナとに連結されるかは問わず、その領域に主パネルを支持するパッチを含んでもよい。さらに、ヒートシールド75がインフレータに近接して備えられてもよい。図20−23は、エアバッグの組立体を示しており、このエアバッグは図20,21に示したように、「裏返し」形状に組み立てられている。主パネルは折り重ねられ、周辺部は図20に示したように、周辺縫い目81に沿ってともに連結されている。パネルは、次いで畳まれ(たとえば、巻かれ)あるいはテザー72の端部が部分的に長円形状をした縫い目82によってパネルに連結できるようにともに束ねられる。縫い目は繊維材料(テザー72と主パネル71)4層分を貫通する。
【0025】
図22に示されたように、製造の間、エアバッグは通常の位置に回転され、2つの突出部76,78の周辺部は縫い目83,84によって閉じられる。エアバッグの最終組立のために、主パネルは図17,23に示されたように、3箇所の追加の縫い目85,86,87によって一体的に連結される。出来上がったエアバッグは、上述した実施形態と本質的に同じように作用する単一体の2個の突出部を有するエアバッグである。
【0026】
以上の実施形態の多くの変形例は、エアバッグの様々な展開の様相と膨張したエアバッグの特性とを調整することが可能である。エアバッグの膨らみは、前/後方向の到達範囲を犠牲にすることなく、エネルギー管理の必要性に合致するように調整及び適合されるようにできる。同様に、エアバッグの前/後方向の到達範囲は、クッションの膨らみを犠牲にすることなく、エネルギー管理の必要性に合致するように容易に調整及び適合されるようにできる。たとえば、エアバッグの横方向の幅すなわち膨らみは、中央鉛直縫い目の位置、内部テザーの寸法、及び突出部間の割れ目の深さを変更することで調整してもよい。いくつかの実施形態において、突出部の底部及び/または頂部は、クリアランスが小さい車両プラットフォームに適合するため、ともに接合されてもよい。
【0027】
ここに用いられたような語である「約」、「およそ」、「ほぼ」及び類似した語は、本開示の主題に係わるような当業者によって共通の容認された使用と調和した広い意味を有するように意図される。これらの語は説明された所定の特徴の記載を許容するように意図され、また規定されたあらゆる明確な数的範囲に対するそれらの特徴の範囲を制限することなく要求されると、本開示を見直すような当業者によって理解されるべきである。したがって、これらの語は、説明されあるいは要求された主題の、実質的でなくあるいはとるに足らない変形や改変も添付された請求の範囲に列挙された発明の範囲内であると考えられているということを示していると解釈されるべきである。
【0028】
ここで種々の実施形態を説明するために用いられたような「代表的な」の語は、このような実施形態は、可能な実施形態の例、表現、及び/または図を示すことを意図し(また、このような語は、このような実施形態は必然的に尋常でなく最上の例であることを含むことを意図していない)ことに留意すべきである。
【0029】
「接合される(coupled)」、「連結される(connected)」、及びここに用いられた同様の語は、2個の構成部材が直接的にあるいは間接的に互いに結合することを意味する。そのような結合は、事実上静的(たとえば恒久的)あるいは事実上動的(たとえば、取り外し可能あるいは解除可能)であることが好ましい。そのような結合は、2個の構成部材が、また互いに、または2個の構成部材が相互に影響して、または2個の構成部材が単一体として一体的に形成されるようにした、いかなる付加的な中間部材、または互いに取り付けられるようになる、いかなる付加部材によって達成されることが好ましい。
【0030】
ここに要素の位置(「上面」、「底面」、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「中心寄り」、「外側寄り」等)に係る言及は、単に図内での各要素の方向付けを記述するために用いられる。各要素の方向付けは、異なる代表的な実施形態によって異なり、またそのような変形は本開示によって包含されるべきであることが意図されることに留意すべきである。
【0031】
様々な実施形態において示されたエアバッグモジュールの構造と配置とは、単に例示されたに過ぎないことに注意することが重要である。本開示では、わずかな実施形態のみが詳細に説明されたに過ぎないが、本開示を検討した当業者は、多くの変形例(たとえば、寸法、体積、構造、形状、及び各要素の比率、変数値、固定の配置、材料の使用、色彩、方向等)を、ここに開示された主題の新規な教示と利益とから逸脱することなく、容易に認識することができるであろう。たとえば、一体的に形成されたように示された要素は、複数の部品と要素とから構築してもよく、要素の位置は反対に、あるいは他の状態に変化させてもよく、別々の要素あるいは位置の性質や数は入れ替えたり変更してもよい。いかなる過程や方法手順の順序や連続性は、代替の実施形態にしたがって、変更したり、再度順序づけしてもよい。他の代用、改変、変更、及び省略は、本発明の範囲から逸脱することなく実施形態の設計、操作状況及び配列等において為されてもよい。
【0032】
(付記)
(付記1)
膨張可能なエアバッグと、
前記エアバッグを膨張させるための膨張ガスを生成するように構成されたインフレータと、
を備える、車両座席の乗員を保護するためのエアバッグモジュールであって、
前記エアバッグは、展開前に前記車両座席内に収容され、
前記エアバッグは、前記エアバッグの前方位置の割れ目によって分けられた中心寄りの膨張可能なチャンバーと外側寄りの膨張可能なチャンバーとを含み、
前記エアバッグは、前記車両座席の側方と前記乗員とに沿った位置に展開するように構成された、
エアバッグモジュール。
【0033】
(付記2)
前記中心寄りの膨張可能なチャンバーと前記外側寄りの膨張可能なチャンバーとは、前記エアバッグの後部で流体的に連結された付記1に記載のエアバッグモジュール。
【0034】
(付記3)
前記エアバッグは、一体的に連結された複数枚の繊維材料パネルを含む付記2に記載のエアバッグモジュール。
【0035】
(付記4)
前記複数枚の繊維材料パネルは、前記エアバッグの中心寄りの膨張可能なチャンバーと外側寄りの膨張可能なチャンバーと前記後部の外面を形成する、少なくとも1枚の主パネルを含む付記3に記載のエアバッグモジュール。
【0036】
(付記5)
前記エアバッグは、一対の内部テザーを含み、前記テザーの各々が前記エアバッグの後部から前記中心寄りの膨張可能なチャンバーと前記外側寄りの膨張可能なチャンバーの一方の外面を形成するパネルに向かって延びるように位置決めされた付記1に記載のエアバッグモジュール。
【0037】
(付記6)
前記内部テザーは、単一の繊維材料パネルで形成された付記5に記載のエアバッグモジュール。
【0038】
(付記7)
前記複数枚の繊維材料パネルは、前記中心寄りの膨張可能なチャンバーと外側寄りの膨張可能なチャンバーの内面を形成する少なくとも1枚のセントラルパネルをさらに含む付記3に記載のエアバッグモジュール。
【0039】
(付記8)
前記セントラルパネルは2枚のセンターパネルを含み、前記センターパネルの各々が前記外側寄りの膨張可能なチャンバーと前記中心寄りの膨張可能なチャンバーとの間の前記割れ目の基部を形成する中央縫い目によって、前記センターパネルの他方に連結される付記7に記載のエアバッグモジュール。
【0040】
(付記9)
前記中央縫い目は、前記エアバッグが膨張した際に、ほぼ鉛直に延びる付記8に記載のエアバッグモジュール。
【0041】
(付記10)
前記センターパネルの各々は、C字形状をなす付記9に記載のエアバッグモジュール。
【0042】
(付記11)
車両の乗員区画の乗員を、前記車両を巻き込む側面衝突から保護するための乗員保護装置であって、当該装置は、インフレータと膨張可能なクッションとを備え、前記クッションは、割れ目によって分けられた中心寄りの膨張可能なチャンバーと外側寄りの膨張可能なチャンバーとを含み、エアバッグは、前記乗員と前記車両の乗員区画の内側との間の位置に前方を向いて展開するように構成された、乗員保護装置。
【0043】
(付記12)
前記エアバッグは、左右の膨張可能なチャンバーに向けて前記クッションの後部から延びる一対の内部テザーを含む付記11に記載の乗員保護装置。
【0044】
(付記13)
前記テザーは、単一の繊維材料パネルで形成された付記12に記載の乗員保護装置。
【0045】
(付記14)
前記エアバッグは、前記中心寄りの膨張可能なチャンバーと前記外側寄りの膨張可能なチャンバーの一方に設けられた少なくとも1個の排気開口を含み、前記排気開口は前記インフレータで発生した膨張ガスが前記排気開口を通じて前記割れ目に排気できるように位置決めされた付記11に記載の乗員保護装置。
【0046】
(付記15)
前記エアバッグは、畳まれた単一の主パネルで形成され、前記主パネルの周辺部が一体的に連結された付記11に記載の乗員保護装置。
【0047】
(付記16)
前記エアバッグの内側に位置決めされ、前記割れ目の基部で前記主パネルの周辺部に延びるテザーパネルをさらに備える付記15に記載の乗員保護装置。
【0048】
(付記17)
前記テザーパネルは、2個の端部を含み、前記テザーパネルの両端部が前記割れ目の基部で前記主パネルの周辺部に連結された付記16に記載の乗員保護装置。
【0049】
(付記18)
前記テザーの中間部は、前記インフレータに近接する前記主パネルに連結された付記17に記載の乗員保護装置。
【0050】
(付記19)
割れ目で分けられた内側突出部と外側突出部とを含むエアバッグと、
前記エアバッグを膨張させるガスを供給するインフレータと、
を備える、車両座席の乗員を保護するためのエアバッグモジュールであって、
前記エアバッグは、前記インフレータに近接する位置から前記割れ目の基部まで延びる内部テザーを含み、
前記内側突出部と前記外側突出部とを含む前記エアバッグの外側は、単一のパネルで形成された、
エアバッグモジュール。
【0051】
(付記20)
前記テザーは、2つの端部を含む単一のパネルで形成され、前記テザーの両端は前記割れ目の基部で前記主パネルの周辺部に連結され、前記テザーの中間部は前記インフレータに近接する前記主パネルに連結された付記19に記載のエアバッグモジュール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
図20
図21
図22
図23