(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態〕
(粘着シート)
図1には、本実施形態の粘着シート10の断面概略図が示されている。
粘着シート10は、基材11及び粘着剤層12を有する。粘着剤層12の上には、
図1に示されているように、剥離シートRLが積層されている。
基材11は、第一基材面11a、及び第一基材面11aとは反対側の第二基材面11bを有する。粘着シート10の形状は、例えば、シート状、テープ状、ラベル状などあらゆる形状をとり得る。
【0015】
(基材)
基材11は、粘着剤層12を支持する部材である。
基材11としては、例えば、合成樹脂フィルムなどのシート材料などを用いることができる。合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、及びフッ素樹脂フィルム等が挙げられる。その他、基材11としては、これらの架橋フィルム及び積層フィルム等が挙げられる。
【0016】
基材11は、ポリエステル系樹脂を含むことが好ましく、ポリエステル系樹脂を主成分とする材料からなることがより好ましい。本明細書において、ポリエステル系樹脂を主成分とする材料とは、基材を構成する材料全体の質量に占めるポリエステル系樹脂の質量の割合が50質量%以上であることを意味する。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート樹脂、及びこれらの樹脂の共重合樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。
基材11としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びポリエチレンナフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。ポリエステルフィルムに含有するオリゴマーとしては、ポリエステル形成性モノマー、ダイマー、及びトリマーなどに由来する。
【0017】
基材11の100℃での貯蔵弾性率の下限は、加工時の寸法安定性の観点から、1×10
7Pa以上が好ましく、1×10
8Pa以上であることがより好ましい。基材11の100℃での貯蔵弾性率の上限は、加工適性の観点から1×10
12Pa以下であることが好ましい。なお、本明細書において、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて、ねじりせん断法により周波数1Hzで測定した値である。
測定する基材を幅5mm、長さ20mmに切断し、粘弾性測定機器(ティー・エイ・インスツルメント社製、DMAQ800)を使用し、周波数11Hz、引張モードによる100℃の貯蔵粘弾性を測定した。
【0018】
第一基材面11aは、粘着剤層12との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、及びプラズマ処理等の少なくともいずれかの表面処理が施されてもよい。基材11の第一基材面11aには、粘着剤が塗布されて粘着処理が施されていてもよい。基材の粘着処理に用いられる粘着剤としては、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、及びウレタン系等の粘着剤が挙げられる。
【0019】
基材11の厚みは、10μm以上500μm以下であることが好ましく、15μm以上300μm以下であることがより好ましく、20μm以上250μm以下であることがさらに好ましい。
【0020】
(粘着剤層)
本実施形態においては、粘着剤層12の表面自由エネルギーが10mJ/m
2以上22mJ/m
2以下であることが必要である。粘着剤層12の表面自由エネルギーが10mJ/m
2以上22mJ/m
2以下であれば、粘着シート10上の半導体素子を封止する際のフィリング性に優れ、粘着シート10上の半導体素子を封止する際に、封止樹脂が半導体素子の段差部と粘着剤層との隙間を埋め込むことができる。
また、粘着剤層の表面自由エネルギーは、12mJ/m
2以上21.5mJ/m
2以下であることがより好ましい。
【0021】
粘着剤層12の表面自由エネルギーは、次に示す方法により測定できる。具体的には、まず、接触角測定装置(共和界面科学社製の「DM701」)を用いて、粘着剤層12に対する水、ジヨードメタン及び1−ブロモナフタレンの接触角を測定する。それぞれの液滴の量は2μLとした。そして、これらの測定値から、北崎・畑法により、表面自由エネルギーを算出できる。
【0022】
本実施形態においては、フィリング性の観点から、1−ブロモナフタレンの接触角は、65°以上であることが好ましく、67°以上であることが好ましく、68°以上であることがより好ましい。
【0023】
なお、これら表面自由エネルギー及び接触角の値を調整する方法としては、以下のような方法が挙げられる。例えば、粘着剤層12で用いる粘着剤組成物の組成を変更することで、表面自由エネルギー及び接触角の値を調整できる。
【0024】
本実施形態に係る粘着剤層12は、粘着剤組成物を含んでいる。この粘着剤組成物に含まれる粘着剤としては、特に限定されず、様々な種類の粘着剤を粘着剤層12に適用できる。粘着剤層12に含まれる粘着剤としては、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、及びウレタン系が挙げられる。なお、粘着剤の種類は、用途及び貼着される被着体の種類等を考慮して選択される。粘着剤層12は、アクリル系粘着剤組成物またはシリコーン系粘着剤組成物を含有することが好ましい。
【0025】
・アクリル系粘着剤組成物
粘着剤層12がアクリル系粘着剤組成物を含む場合、アクリル系粘着剤組成物は、アクリル酸2−エチルヘキシルを主たるモノマーとするアクリル系共重合体を含むことが好ましい。
また、粘着剤層12がアクリル系粘着剤組成物を含む場合、アクリル系共重合体と、粘着助剤と、を含んでいることが好ましい。アクリル系共重合体は、アクリル酸2−エチルヘキシルを主たるモノマーとする共重合体であることが好ましい。粘着助剤は、反応性基を有するゴム系材料を主成分として含むことが好ましい。
【0026】
本明細書において、アクリル酸2−エチルヘキシルを主たるモノマーとするとは、アクリル系共重合体全体の質量に占めるアクリル酸2−エチルヘキシル由来の共重合体成分の質量の割合が50質量%以上であることを意味する。本実施形態においては、アクリル系共重合体におけるアクリル酸2−エチルヘキシルに由来する共重合体成分の割合は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であることが好ましく、80質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上93質量%以下であることがさらに好ましい。アクリル酸2−エチルヘキシルに由来する共重合体成分の割合が50質量%以上であれば、加熱後に粘着力が高くなり過ぎず、被着体から粘着シートをより剥離し易くなり、80質量%以上であればさらに剥離し易くなる。アクリル酸2−エチルヘキシルに由来する共重合体成分の割合が95質量%以下であれば、初期密着力が不足して加熱時に基材が変形したり、その変形によって粘着シートが被着体から剥離したりすることを防止できる。
【0027】
アクリル系共重合体におけるアクリル酸2−エチルヘキシル以外の共重合体成分の種類及び数は、特に限定されない。例えば、第二の共重合体成分としては、反応性の官能基を有する官能基含有モノマーが好ましい。第二の共重合体成分の反応性官能基としては、後述する架橋剤を使用する場合には、当該架橋剤と反応し得る官能基であることが好ましい。この反応性官能基は、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくともいずれかの置換基であることが好ましく、カルボキシル基及び水酸基の少なくともいずれかの置換基であることがより好ましく、カルボキシル基であることが更に好ましい。
【0028】
カルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、及びシトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。カルボキシル基含有モノマーの中でも、反応性及び共重合性の点から、アクリル酸が好ましい。カルボキシル基含有モノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。水酸基含有モノマーの中でも、水酸基の反応性及び共重合性の点から、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。水酸基含有モノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の双方を表す場合に用いる表記であり、他の類似用語についても同様である。
【0030】
エポキシ基を有するアクリル酸エステルとしては、例えば、グリシジルアクリレート、及びグリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0031】
アクリル系共重合体におけるその他の共重合体成分としては、アルキル基の炭素数が2〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が2〜4の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸n−ブチルがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
アクリル系共重合体におけるその他の共重合体成分としては、例えば、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、非架橋性のアクリルアミド、非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、及びスチレンからなる群から選択される少なくともいずれかのモノマーに由来する共重合体成分が挙げられる。
アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、及び(メタ)アクリル酸エトキシエチルが挙げられる。
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルが挙げられる。
非架橋性のアクリルアミドとしては、例えば、アクリルアミド、及びメタクリルアミドが挙げられる。
非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(N,N−ジメチルアミノ)エチル、及び(メタ)アクリル酸(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、4−(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。
これらのモノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本実施形態においては、第2の共重合体成分として、カルボキシル基含有モノマーまたは水酸基含有モノマーが好ましく、アクリル酸がより好ましい。アクリル系共重合体が、アクリル酸2−エチルヘキシル由来の共重合体成分、及びアクリル酸由来の共重合体成分を含む場合、アクリル系共重合体全体の質量に占めるアクリル酸由来の共重合体成分の質量の割合が1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。アクリル酸の割合が1質量%以下であれば、粘着剤組成物に架橋剤が含まれる場合にアクリル系共重合体の架橋が早く進行し過ぎることを防止できる。
【0034】
アクリル系共重合体は、2種類以上の官能基含有モノマー由来の共重合体成分を含んでいてもよい。例えば、アクリル系共重合体は、3元系共重合体であってもよく、アクリル酸2−エチルヘキシル、カルボキシル基含有モノマー及び水酸基含有モノマーを共重合して得られるアクリル系共重合体が好ましく、このカルボキシル基含有モノマーは、アクリル酸であることが好ましく、水酸基含有モノマーは、アクリル酸2−ヒドロキシエチルであることが好ましい。アクリル系共重合体におけるアクリル酸2−エチルヘキシルに由来する共重合体成分の割合が80質量%以上95質量%以下であり、アクリル酸由来の共重合体成分の質量の割合が1質量%以下であり、残部がアクリル酸2−ヒドロキシエチル由来の共重合体成分であることが好ましい。
【0035】
アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、30万以上200万以下であることが好ましく、60万以上150万以下であることがより好ましく、80万以上120万以下であることがさらに好ましい。アクリル系共重合体の重量平均分子量Mwが30万以上であれば、被着体への粘着剤の残渣なく剥離することができる。アクリル系共重合体の重量平均分子量Mwが200万以下であれば、被着体へ確実に貼り付けることができる。
アクリル系共重合体の重量平均分子量Mwは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算値である。
【0036】
アクリル系共重合体は、前述の各種原料モノマーを用いて、従来公知の方法に従って製造することができる。
【0037】
アクリル系共重合体の共重合の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、またはグラフト共重合体のいずれでもよい。
本実施形態において、粘着剤組成物中のアクリル系共重合体の含有率は、40質量%以上90質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
粘着助剤は、反応性基を有するゴム系材料を主成分として含むことが好ましい。粘着剤組成物が反応性粘着助剤を含んでいると、糊残りを減少させることができる。粘着剤組成物中の粘着助剤の含有率は、3質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。粘着剤組成物中の粘着助剤の含有率が3質量%以上であれば、糊残りの発生を抑制でき、50質量%以下であれば粘着力の低下を抑制できる。
本明細書において、反応性基を有するゴム系材料を主成分として含むとは、粘着助剤全体の質量に占める反応性基を有するゴム系材料の質量の割合が50質量%を超えることを意味する。本実施形態においては、粘着助剤における反応性基を有するゴム系材料の割合は、50質量%超であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。粘着助剤が実質的に反応性基を有するゴム系材料からなることも好ましい。
【0039】
反応性基としては、水酸基、イソシアネート基、アミノ基、オキシラン基、酸無水物基、アルコキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される一種以上の官能基であることが好ましく、水酸基であることが好ましい。ゴム系材料が有する反応性基は、1種類でも、2種類以上でもよい。水酸基を有するゴム系材料は、さらに前述の反応性基を有していてもよい。また、反応性基の数は、ゴム系材料を構成する1分子中に1つでも、2つ以上でもよい。
【0040】
ゴム系材料としては、特に限定されないが、ポリブタジエン系樹脂、及びポリブタジエン系樹脂の水素添加物が好ましく、ポリブタジエン系樹脂の水素添加物がより好ましい。
ポリブタジエン系樹脂としては、1,4−繰り返し単位を有する樹脂、1,2−繰り返し単位を有する樹脂、並びに1,4−繰り返し単位及び1,2−繰り返し単位の両方を有する樹脂が挙げられる。本実施形態のポリブタジエン系樹脂の水素添加物は、これらの繰り返し単位を有する樹脂の水素化物も含む。
【0041】
ポリブタジエン系樹脂、及びポリブタジエン系樹脂の水素添加物は、両末端にそれぞれ反応性基を有することが好ましい。両末端の反応性基は、同一でも異なっていてもよい。両末端の反応性基は、水酸基、イソシアネート基、アミノ基、オキシラン基、酸無水物基、アルコキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される一種以上の官能基であることが好ましく、水酸基であることが好ましい。ポリブタジエン系樹脂、及びポリブタジエン系樹脂の水素添加物においては、両末端が水酸基であることがより好ましい。
【0042】
本実施形態に係る粘着剤組成物は、前述のアクリル系共重合体及び粘着助剤の他に、さらに架橋剤を配合した組成物を架橋させて得られる架橋物を含むことも好ましい。また、粘着剤組成物の固形分は、実質的に、前述のように前述のアクリル系共重合体と、粘着助剤と、架橋剤とを架橋させて得られる架橋物からなることも好ましい。ここで、実質的にとは、不可避的に粘着剤に混入してしまうような微量な不純物を除いて、粘着剤組成物の固形分が当該架橋物だけからなることを意味する。
【0043】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミン系架橋剤、及びアミノ樹脂系架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着剤組成物の耐熱性及び粘着力を向上させる観点から、これら架橋剤の中でも、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤(イソシアネート系架橋剤)が好ましい。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、及びリジンイソシアネート等の多価イソシアネート化合物が挙げられる。
また、多価イソシアネート化合物は、前述の化合物のトリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、またはイソシアヌレート環を有するイソシアヌレート型変性体であってもよい。
本明細書において、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤とは、架橋剤を構成する成分全体の質量に占めるイソシアネート基を有する化合物の質量の割合が50質量%以上であることを意味する。
【0044】
粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下、より好ましくは1質量部以上15質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上10質量部以下である。粘着剤組成物中の架橋剤の含有量がこのような範囲内であれば、粘着剤組成物を含む層(粘着剤層)と被着体(例えば、基材)との接着性を向上させることができ、粘着シートの製造後に粘着特性を安定化させるための養生期間を短縮できる。
【0045】
本実施形態においては、粘着剤組成物の耐熱性の観点から、イソシアネート系架橋剤は、イソシアヌレート環を有する化合物(イソシアヌレート型変性体)であることがさらに好ましい。イソシアヌレート環を有する化合物は、アクリル系共重合体の水酸基当量に対して、0.7当量以上1.5当量以下配合されていることが好ましい。イソシアヌレート環を有する化合物の配合量が0.7当量以上であれば、加熱後に粘着力が高くなり過ぎず、粘着シートを剥離し易くなり、糊残りを減少させることができる。イソシアヌレート環を有する化合物の配合量が1.5当量以下であれば、初期粘着力が低くなり過ぎることを防止ししたり、貼付性の低下を防止したりすることができる。
【0046】
本実施形態における粘着剤組成物が架橋剤を含む場合、粘着剤組成物は、架橋促進剤をさらに含むことが好ましい。架橋促進剤は、架橋剤の種類などに応じて、適宜選択して用いることが好ましい。例えば、粘着剤組成物が、架橋剤としてポリイソシアネート化合物を含む場合には、有機スズ化合物などの有機金属化合物系の架橋促進剤をさらに含むことが好ましい。
【0047】
・シリコーン系粘着剤組成物
粘着剤層12がシリコーン系粘着剤組成物を含む場合、シリコーン系粘着剤組成物は、付加重合型シリコーン樹脂を含むことが好ましい。本明細書において、付加重合型シリコーン樹脂を含むシリコーン系粘着剤組成物を付加反応型シリコーン系粘着剤組成物と称する。
【0048】
付加反応型シリコーン系粘着剤組成物は、主剤、及び架橋剤を含有する。付加反応型シリコーン系粘着剤組成物は、低温での一次硬化だけで使用することが可能で、高温での2次硬化を必要としないという利点がある。ちなみに、従来の過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤は150℃以上のような高温での2次硬化を必要とする。
したがって、付加反応型シリコーン系粘着剤組成物を用いることにより、比較的低温での粘着シートの製造が可能となり、エネルギー経済性に優れており、かつ、比較的耐熱性の低い基材11を用いて粘着シート10を製造することも可能となる。また、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤のように硬化時に副生物を生じないので、臭気及び腐食などの問題もない。
【0049】
付加反応型シリコーン系粘着剤組成物は、通常、シリコーン樹脂成分とシリコーンゴム成分との混合物からなる主剤、及びヒドロシリル基(SiH基)含有の架橋剤、並びに必要に応じて使用される硬化触媒からなる。
シリコーン樹脂成分は、オルガノクロルシラン及びオルガノアルコキシシランを加水分解した後、脱水縮合反応を行うことにより得られる網状構造のオルガノポリシロキサンである。
シリコーンゴム成分は、直鎖構造を有するジオルガノポリシロキサンである。
オルガノ基としては、シリコーン樹脂成分、及びシリコーンゴム成分ともに、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等である。前述のオルガノ基は、一部、ビニル基、ヘキセニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、オクテニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルメチル基、(メタ)アクリロイルプロピル基、及びシクロヘキセニル基のような不飽和基に置換されている。工業的に入手が容易なビニル基を有するオルガノ基が好ましい。付加反応型シリコーン系粘着剤組成物においては、不飽和基とヒドロシリル基との付加反応によって架橋が進行して網状の構造が形成され、粘着性が発現する。
ビニル基のような不飽和基の数は、オルガノ基100個に対して、通常0.05個以上3.0個以下、好ましくは、0.1個以上2.5個以下である。オルガノ基100個に対する不飽和基の数を0.05個以上とすることにより、ヒドロシリル基との反応性が低下して硬化しにくくなるのを防止して適度な粘着力を付与することができる。オルガノ基100個に対する不飽和基の数を3.0個以下とすることにより、粘着剤の架橋密度が高くなり粘着力及び凝集力が大きくなって被着面に悪影響を与えるのを防止する。
【0050】
前述のようなオルガノポリシロキサンとしては、具体的には、信越化学工業社製のKS−3703(ビニル基の数がメチル基100個に対して0.6個であるもの)、東レ・ダウコーニング社製のBY23−753(ビニル基の数がメチル基100個に対して0.1個であるもの)及びBY24−162(ビニル基の数がメチル基100個に対して1.4個であるもの)などがある。また、東レ・ダウコーニング社製のSD4560PSA、SD4570PSA、SD4580PSA、SD4584PSA、SD4585PSA、SD4587L、及びSD4592PSAなども使用することができる。
前述のように、シリコーン樹脂成分であるオルガノポリシロキサンは、通常、シリコーンゴム成分と混合して使用されるが、シリコーンゴム成分としては、信越化学工業社製のKS−3800(ビニル基の数がメチル基100個に対して7.6個であるもの)、東レ・ダウコーニング社製のBY24−162(ビニル基の数がメチル基100個に対して1.4個であるもの)、BY24−843(不飽和基を有していない)及びSD−7292(ビニル基の数がメチル基100個に対して5.0個であるもの)などが挙げられる。
前述のような付加反応型シリコーンの具体例は、例えば、特開平10−219229号公報に記載されている。
【0051】
架橋剤は、シリコーン樹脂成分及びシリコーンゴム成分のビニル基のような不飽和基1個に対して、通常、ケイ素原子に結合した水素原子0.5個以上10個以下、好ましくは、1個以上2.5個以下になるように配合する。0.5個以上とすることにより、ビニル基のような不飽和基とヒドロシリル基との反応が完全には進行せずに硬化不良となるのを防止する。10個以下とすることにより、架橋剤が未反応で残存して被着面に悪影響を与えるのを防止する。
【0052】
付加反応型シリコーン系粘着剤組成物は、前述の付加反応型シリコーン成分(シリコーン樹脂成分とシリコーンゴム成分とからなる主剤)、及び架橋剤とともに、硬化触媒を含有していることも好ましい。
この硬化触媒は、シリコーン樹脂成分及びシリコーンゴム成分中の不飽和基と架橋剤中のSi−H基とのヒドロシリル化反応を促進させるために使用される。
硬化触媒としては、白金系の触媒、すなわち、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコール溶液との反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサン化合物との反応物、白金−オレフィン錯体、白金−ビニル基含有シロキサン錯体、及び白金−リン錯体等が挙げられる。前述のような硬化触媒の具体例は、例えば、特開2006−28311号公報及び特開平10−147758号公報に記載されている。
より具体的には、市販品として東レ・ダウコーニング社製のSRX-212、及び信越化学工業製のPL-50Tなどが挙げられる。
【0053】
硬化触媒の配合量は白金分として、シリコーン系樹脂成分とシリコーンゴム成分の合計量に対して、通常、5ppm以上2000ppm以下、好ましくは、10ppm以上500ppm以下である。5ppm以上とすることにより、硬化性が低下して架橋密度の低下、すなわち、粘着力及び凝集力(保持力)が低下するのを防ぎ、2000ppm以下とすることにより、コストアップを防ぐとともに粘着剤層の安定性を保持することができ、かつ、過剰に使用された硬化触媒が被着面に悪影響を与えるのを防止する。
【0054】
付加反応型シリコーン系粘着剤組成物においては、前述の各成分を配合することにより常温でも粘着力が発現するが、付加反応型シリコーン系粘着剤組成物を基材11または後記する剥離シートに塗布し、基材11と剥離シートとを貼り合わせた後、加熱または活性エネルギー線を照射してシリコーン樹脂成分とシリコーンゴム成分の架橋剤による架橋反応を促進させることが粘着力の安定性の面から好ましい。
【0055】
加熱で架橋反応を促進させる場合の加熱温度は通常は、60℃以上140℃以下、好ましくは、80℃以上130℃以下である。60℃以上で加熱することにより、シリコーン樹脂成分とシリコーンゴム成分の架橋が不足し、粘着力が不十分になるのを防止し、140℃以下で加熱することにより基材シートに熱収縮しわが生じたり、劣化したり、変色したりするのを防止することができる。
【0056】
活性エネルギー線を照射して架橋反応を促進させる場合、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有する活性エネルギー線、すなわち、紫外線などの活性光または電子線などを利用できる。電子線を照射して架橋させる場合、光重合開始剤を必要としないが、紫外線などの活性光を照射して架橋させる場合には、光重合開始剤を存在させることが好ましい。
紫外線照射させる場合の光重合開始剤としては、特に制限はなく、従来、紫外線硬化型樹脂に慣用されている光重合開始剤の中から、任意の光重合開始剤を適宜選択して用いることができる。この光重合開始剤としては、例えばベンゾイン類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、α−ジケトン類、α−ジケトンジアルキルアセタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、その他化合物などが挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、主剤として用いられる前記付加反応型シリコーン成分と架橋剤の合計量100質量部に対し、通常、0.01質量部以上30質量部以下、好ましくは0.05質量部以上20質量部以下の範囲で選定される。
加熱または活性エネルギー線を照射して架橋することにより、安定した粘着力を有する粘着シートが得られる。
【0057】
活性エネルギー線の一つである電子線を照射して架橋する場合の電子線の加速電圧は、一般的には、130kV以上300kV以下、好ましくは150kV以上250kV以下である。130kV以上の加速電圧で照射することにより、シリコーン樹脂成分とシリコーンゴム成分の架橋が不足し、粘着力が不十分になるのを防ぐことができ、300kV以下の加速電圧で照射することにより粘着剤層及び基材シートが劣化したり変色したりするのを防止することができる。ビーム電流の好ましい範囲は1mA以上100mA以下である。
照射される電子線の線量は1Mrad以上70Mrad以下が好ましく、2Mrad以上20Mrad以下がさらに好ましい。1Mrad以上の線量で照射することにより粘着剤層及び基材シートが劣化したり変色したりするのを防止し、架橋不足により粘着性が不十分になるのを防止することができる。70Mrad以下の線量で照射することにより、粘着剤層が劣化したり変色することによる凝集力の低下を防止し、基材シートが劣化したり収縮したりするのを防止することができる。
紫外線照射の場合の照射量としては、適宜選択されるが、光量は、100mJ/cm
2以上500mJ/cm
2以下、照度は、10mW/cm
2以上500mW/cm
2以下である。
加熱及び活性エネルギー線の照射は酸素による反応阻害を防止するため、窒素雰囲気下で行うのが好ましい。
【0058】
粘着剤層12の厚みは、粘着シート10の用途に応じて適宜決定される。本実施形態において、粘着剤層12の厚みは、5μm以上60μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。粘着剤層12の厚みが薄過ぎると、半導体チップの回路面の凹凸に粘着剤層12が追従できずに隙間が生じるおそれがある。その隙間に層間絶縁材及び封止樹脂等が入り込み、チップ回路面の配線接続用の電極パッドが塞がれるおそれがある。粘着剤層12の厚みが5μm以上であれば、チップ回路面の凹凸に粘着剤層12が追従し易くなり、隙間の発生を防止できる。また、粘着剤層12の厚みが厚過ぎると、半導体チップが粘着剤層に沈み込んでしまい、半導体チップ部分と、半導体チップを封止する樹脂部分との段差が生じるおそれがある。このような段差が生じると再配線の際に配線が断線するおそれがある。粘着剤層12の厚みが60μm以下であれば、段差が生じ難くなる。
【0059】
粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分が含まれていてもよい。粘着剤組成物に含まれ得るその他の成分としては、例えば、有機溶媒、難燃剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防腐剤、防黴剤、可塑剤、消泡剤、着色剤、フィラー、及び濡れ性調整剤などが挙げられる。
付加反応型シリコーン系粘着剤組成物には、添加剤として、ポリジメチルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサンのような非反応性のポリオルガノシロキサンが含まれていてもよい。
【0060】
本実施形態に係る粘着剤組成物のより具体的な例としては、例えば、以下のような粘着材組成物の例が挙げられるが、本発明は、このような例に限定されない。
本実施形態に係る粘着剤組成物の一例として、アクリル系共重合体と、粘着助剤と、架橋剤とを含み、前記アクリル系共重合体が、少なくともアクリル酸2−エチルヘキシル、カルボキシル基含有モノマー及び水酸基含有モノマーを共重合して得られるアクリル系共重合体であり、前記粘着助剤が、反応性基を有するゴム系材料を主成分として含み、前記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤である粘着剤組成物が挙げられる。
本実施形態に係る粘着剤組成物の一例として、アクリル系共重合体と、粘着助剤と、架橋剤とを含み、前記アクリル系共重合体が、少なくともアクリル酸2−エチルヘキシル、カルボキシル基含有モノマー及び水酸基含有モノマーを共重合して得られるアクリル系共重合体であり、前記粘着助剤が、両末端水酸基水素化ポリブタジエンであり、前記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤である粘着剤組成物が挙げられる。
本実施形態に係る粘着剤組成物の一例として、アクリル系共重合体と、粘着助剤と、架橋剤とを含み、前記アクリル系共重合体が、少なくともアクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸及びアクリル酸2−ヒドロキシエチルを共重合して得られるアクリル系共重合体であり、前記粘着助剤が、反応性基を有するゴム系材料を主成分として含み、前記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤である粘着剤組成物が挙げられる。
本実施形態に係る粘着剤組成物の一例として、アクリル系共重合体と、粘着助剤と、架橋剤とを含み、前記アクリル系共重合体が、少なくともアクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸及びアクリル酸2−ヒドロキシエチルを共重合して得られるアクリル系共重合体であり、前記粘着助剤が、両末端水酸基水素化ポリブタジエンであり、前記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤である粘着剤組成物が挙げられる。
本実施形態に係る粘着剤組成物のこれらの例においては、前記アクリル系共重合体におけるアクリル酸2−エチルヘキシルに由来する共重合体成分の割合が80質量%以上95質量%以下であり、カルボキシル基含有モノマー由来の共重合体成分の質量の割合が1質量%以下であり、残部が他の共重合体成分であることが好ましく、他の共重合体成分としては、水酸基含有モノマー由来の共重合体成分を含むことが好ましい。
本実施形態に係る粘着剤組成物のこれらの例においては、この粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成した場合、この粘着剤層の表面自由エネルギーが10mJ/m
2以上22mJ/m
2以下である。
【0061】
(剥離シート)
剥離シートRLとしては、特に限定されない。例えば、取り扱い易さの観点から、剥離シートRLは、剥離基材と、剥離基材の上に剥離剤が塗布されて形成された剥離剤層とを備えることが好ましい。また、剥離シートRLは、剥離基材の片面のみに剥離剤層を備えていてもよいし、剥離基材の両面に剥離剤層を備えていてもよい。剥離基材としては、例えば、紙基材、この紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、並びにプラスチックフィルム等が挙げられる。紙基材としては、グラシン紙、コート紙、及びキャストコート紙等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、並びにポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等が挙げられる。剥離剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、ゴム系エラストマー(例えば、ブタジエン系樹脂、イソプレン系樹脂等)、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、及びシリコーン系樹脂が挙げられる。
【0062】
剥離シートRLの厚みは、特に限定されない。剥離シートRLの厚みは、通常、20μm以上200μm以下であり、25μm以上150μm以下であることが好ましい。
剥離剤層の厚みは、特に限定されない。剥離剤を含む溶液を塗布して剥離剤層を形成する場合、剥離剤層の厚みは、0.01μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.03μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。
剥離基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、当該プラスチックフィルムの厚みは、3μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上40μm以下であることがより好ましい。
【0063】
本実施形態に係る粘着シート10は、加熱後に、次のような粘着力を示すことが好ましい。まず、粘着シート10を被着体(銅箔またはポリイミドフィルム)に貼着させ、100℃及び30分間の条件で加熱し、続いて180℃及び30分間の条件で加熱し、さらに190℃及び1時間の条件で加熱した後、粘着剤層12の銅箔に対する室温での粘着力、及び粘着剤層12のポリイミドフィルムに対する室温での粘着力が、それぞれ0.7N/25mm以上2.0N/25mm以下であることが好ましい。このような加熱を行った後の粘着力が0.7N/25mm以上であれば、加熱によって基材または被着体が変形した場合に粘着シート10が被着体から剥離することを防止できる。また、加熱後の粘着力が2.0N/25mm以下であれば、剥離力が高くなり過ぎず、粘着シート10を被着体から剥離し易い。なお、本明細書において室温とは、22℃以上24℃以下の温度である。本明細書において、粘着力は、180°引き剥がし法により、引っ張り速度300mm/分、粘着シートの幅25mmにて測定した値である。
【0064】
(粘着シートの製造方法)
粘着シート10の製造方法は、特に限定されない。
例えば、粘着シート10は、次のような工程を経て製造される。まず、基材11の第一基材面11aの上に粘着剤組成物を塗布し、塗膜を形成する。次に、この塗膜を乾燥させて、粘着剤層12を形成する。その後、粘着剤層12を覆うように剥離シートRLを貼着する。
また、粘着シート10の別の製造方法としては、次のような工程を経て製造される。まず、剥離シートRLの上に粘着剤組成物を塗布し、塗膜を形成する。次に、塗膜を乾燥させて、粘着剤層12を形成し、この粘着剤層12に基材11の第一基材面11aを貼り合わせる。
【0065】
粘着剤組成物を塗布して粘着剤層12を形成する場合、有機溶媒で粘着剤組成物を希釈してコーティング液を調製して用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、及びメチルエチルケトン等が挙げられる。コーティング液を塗布する方法は、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、及びグラビアコート法等が挙げられる。
有機溶媒及び低沸点成分が粘着剤層12に残留することを防ぐため、コーティング液を基材11または剥離シートRLに塗布した後、塗膜を加熱して乾燥させることが好ましい。また、粘着剤組成物に架橋剤が配合されている場合には、架橋反応を進行させて凝集力を向上させるためにも、塗膜を加熱することが好ましい。
【0066】
(粘着シートの使用)
粘着シート10は、半導体素子を封止する際に使用される。粘着シート10は、金属製リードフレームに搭載されておらず、粘着シート10上に貼着された状態の半導体素子を封止する際に使用されることが好ましい。具体的には、粘着シート10は、金属製リードフレームに搭載された半導体素子を封止する際に使用されるのではなく、粘着剤層12に貼着された状態の半導体素子を封止する際に使用されることが好ましい。金属製リードフレームを用いずに半導体素子をパッケージングする形態としては、パネルスケールパッケージ(Panel Scale Package;PSP)及びウエハレベルパッケージ(Wafer Level Package;WLP)が挙げられる。
粘着シート10は、複数の開口部が形成された枠部材を粘着シート10に貼着させる工程と、前記枠部材の開口部にて露出する粘着剤層12に半導体チップを貼着させる工程と、前記半導体チップを封止樹脂で覆う工程と、前記封止樹脂を熱硬化させる工程と、を有するプロセスにおいて使用されることが好ましい。
【0067】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態に係る粘着シート10を用いて半導体装置を製造する方法を説明する。
図2A〜
図2Eには、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する概略図が示されている。なお、図面においては、説明を容易にするために拡大または縮小をして図示した部分がある。
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、粘着シート10に複数の開口部21が形成された枠部材20を貼着させる工程(粘着シート貼着工程)と、枠部材20の開口部21にて露出する粘着剤層12に半導体チップCPを貼着させる工程(ボンディング工程)と、半導体チップCPを封止樹脂30で覆う工程(封止工程)と、封止樹脂30を熱硬化させる工程(熱硬化工程)と、を実施する。必要に応じて、熱硬化工程の後に、封止樹脂30で封止された封止体50に補強部材40を貼着させる工程(補強部材貼着工程)を実施してもよい。
以下に各工程について説明する。
【0068】
・粘着シート貼着工程
図2Aには、粘着シート10の粘着剤層12に枠部材20を貼着させる工程を説明する概略図が示されている。
本実施形態に係る枠部材20は、格子状に形成され、複数の開口部21を有する。枠部材20は、耐熱性を有する材質で形成されていることが好ましい。枠部材20の材質としては、例えば、銅及びステンレス等の金属、並びに、ポリイミド樹脂及びガラスエポキシ樹脂等の耐熱性樹脂などが挙げられる。
開口部21は、枠部材20の表裏面を貫通する孔である。開口部21の形状は、半導体チップCPを枠内に収容可能であれば、特に限定されない。開口部21の孔の深さも、半導体チップCPを収容可能であれば、特に限定されない。
【0069】
・ボンディング工程
図2Bには、粘着剤層12に半導体チップCPを貼着させる工程を説明する概略図が示されている。
枠部材20に粘着シート10を貼着させると、それぞれの開口部21において開口部21の形状に応じて粘着剤層12が露出する。各開口部21の粘着剤層12に半導体チップCPを貼着させる。半導体チップCPを、その回路面を粘着剤層12で覆うように貼着させる。
【0070】
半導体チップCPの製造は、例えば、回路が形成された半導体ウエハの裏面を研削するバックグラインド工程及び、半導体ウエハを個片化するダイシング工程を実施することにより製造する。ダイシング工程では、半導体ウエハをダイシングシートの接着剤層に貼着させ、ダイシングソーなどの切断手段を用いて半導体ウエハを個片化することで半導体チップCP(半導体素子)が得られる。
ダイシング装置は、特に限定されず、公知のダイシング装置を用いることができる。また、ダイシングの条件についても、特に限定されない。なお、ダイシングブレードを用いてダイシングする方法に代えて、レーザーダイシング法またはステルスダイシング法などを用いてもよい。
【0071】
ダイシング工程の後、ダイシングシートを引き延ばして、複数の半導体チップCP間の間隔を拡げるエキスパンド工程を実施してもよい。エキスパンド工程を実施することで、コレット等の搬送手段を用いて半導体チップCPをピックアップすることができる。また、エキスパンド工程を実施することで、ダイシングシートの接着剤層の接着力が減少し、半導体チップCPがピックアップし易くなる。
ダイシングシートの接着剤組成物、または接着剤層にエネルギー線重合性化合物が配合されている場合には、ダイシングシートの基材側から接着剤層にエネルギー線を照射し、エネルギー線重合性化合物を硬化させる。エネルギー線重合性化合物を硬化させると、接着剤層の凝集力が高まり、接着剤層の接着力を低下させることができる。エネルギー線としては、例えば、紫外線(UV)及び電子線(EB)等が挙げられ、紫外線が好ましい。エネルギー線の照射は、半導体ウエハの貼付後、半導体チップの剥離(ピックアップ)前のいずれの段階で行ってもよい。例えば、ダイシングの前もしくは後にエネルギー線を照射してもよいし、エキスパンド工程の後にエネルギー線を照射してもよい。
【0072】
・封止工程及び熱硬化工程
図2Cには、粘着シート10に貼着された半導体チップCP及び枠部材20を封止する工程を説明する概略図が示されている。
封止樹脂30の材質は、熱硬化性樹脂であり、例えば、エポキシ樹脂などが挙げられる。封止樹脂30として用いられるエポキシ樹脂には、例えば、フェノール樹脂、エラストマー、無機充填材、及び硬化促進剤などが含まれていてもよい。
封止樹脂30で半導体チップCP及び枠部材20を覆う方法は、特に限定されない。
本実施形態では、シート状の封止樹脂30を用いた態様を例に挙げて説明する。シート状の封止樹脂30を半導体チップCP及び枠部材20を覆うように載置し、封止樹脂30を加熱硬化させて、封止樹脂層30Aを形成する。このようにして、半導体チップCP及び枠部材20が封止樹脂層30Aに埋め込まれる。シート状の封止樹脂30を用いる場合には、真空ラミネート法により半導体チップCP及び枠部材20を封止することが好ましい。この真空ラミネート法により、半導体チップCPと枠部材20との間に空隙が生じることを防止できる。真空ラミネート法による加熱硬化の温度条件範囲は、例えば、80℃以上120℃以下である。
【0073】
封止工程では、シート状の封止樹脂30がポリエチレンテレフタレート等の樹脂シートに支持された積層シートを用いてもよい。この場合、半導体チップCP及び枠部材20を覆うように積層シートを載置した後、樹脂シートを封止樹脂30から剥離して、封止樹脂30を加熱硬化させてもよい。このような積層シートとしては、例えば、ABFフィルム(味の素ファインテクノ(株)製)が挙げられる。
【0074】
半導体チップCP及び枠部材20を封止する方法としては、トランスファーモールド法を採用してもよい。この場合、例えば、封止装置の金型の内部に、粘着シート10に貼着された半導体チップCP及び枠部材20を収容する。この金型の内部に流動性の樹脂材料を注入し、樹脂材料を硬化させる。トランスファーモールド法の場合、加熱及び圧力の条件は、特に限定されない。トランスファーモールド法における通常の条件の一例として、150℃以上の温度と、4MPa以上15MPa以下の圧力を30秒以上300秒以下の間維持する。その後、加圧を解除し、封止装置から取り出してオーブン内に静置して、150℃以上を、2時間以上15時間以下、維持する。このようにして、半導体チップCP及び枠部材20を封止する。
【0075】
前述の封止工程においてシート状の封止樹脂30を用いる場合、封止樹脂30を熱硬化させる工程(熱硬化工程)の前に、第一加熱プレス工程を実施してもよい。第一加熱プレス工程においては、封止樹脂30で被覆された半導体チップCP及び枠部材20付き粘着シート10を両面から板状部材で挟み込み、所定の温度、時間、及び圧力の条件下でプレスする。第一加熱プレス工程を実施することにより、封止樹脂30が半導体チップCPと枠部材20との空隙にも充填され易くなる。また、加熱プレス工程を実施することにより、封止樹脂30により構成される封止樹脂層30Aの凹凸を平坦化することもできる。板状部材としては、例えば、ステンレス等の金属板を用いることができる。
【0076】
熱硬化工程の後、粘着シート10を剥離すると、封止樹脂30で封止された半導体チップCP及び枠部材20が得られる。以下、これを封止体50と称する場合がある。
【0077】
・補強部材貼着工程
図2Dには、封止体50に補強部材40を貼着させる工程を説明する概略図が示されている。
粘着シート10を剥離した後、露出した半導体チップCPの回路面に対して再配線層を形成する再配線工程及びバンプ付け工程が実施される。このような再配線工程及びバンプ付け工程における封止体50の取り扱い性を向上させるため、必要に応じて、封止体50に補強部材40を貼着させる工程(補強部材貼着工程)を実施してもよい。補強部材貼着工程を実施する場合には、粘着シート10を剥離する前に実施することが好ましい。
図2Dに示すように、封止体50は、粘着シート10及び補強部材40によって挟まれた状態で支持されている。
【0078】
本実施形態では、補強部材40は、耐熱性の補強板41と、耐熱性の接着層42とを備える。
補強板41としては、例えば、ポリイミド樹脂及びガラスエポキシ樹脂等の耐熱性樹脂を含む板状の部材が挙げられる。
接着層42は、補強板41と封止体50とを接着させる。接着層42としては、補強板41及び封止樹脂層30Aの材質に応じて適宜選択される。例えば、封止樹脂層30Aがエポキシ系樹脂を含み、補強板41がガラスエポキシ樹脂を含んでいる場合には、接着層42としては、熱可塑性樹脂を含んだガラスクロスが好ましく、接着層42に含まれる熱可塑性樹脂としては、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)が好ましい。
【0079】
補強部材貼着工程では、封止体50の封止樹脂層30Aと補強板41との間に接着層42を挟み込み、さらに補強板41側及び粘着シート10側からそれぞれ板状部材で挟み込み、所定の温度、時間、及び圧力の条件下でプレスする第二加熱プレス工程を実施することが好ましい。第二加熱プレス工程により、封止体50と補強部材40とを仮固定する。第二加熱プレス工程の後に、接着層42を硬化させるために、仮固定された封止体50と補強部材40とを所定の温度及び時間の条件下で加熱することが好ましい。加熱硬化の条件は、接着層42の材質に応じて適宜設定され、例えば、185℃、80分間、及び2.4MPaの条件である。第二加熱プレス工程においても、板状部材としては、例えば、ステンレス等の金属板を用いることができる。
【0080】
・剥離工程
図2Eには、粘着シート10を剥離する工程を説明する概略図が示されている。
本実施形態では、粘着シート10の基材11が屈曲可能であるため、粘着シート10を屈曲させながら、枠部材20、半導体チップCPおよび封止樹脂層30Aから容易に剥離することができる。剥離角度θは、特に限定されないが、90度以上の剥離角度θで粘着シート10を剥離することが好ましい。剥離角度θが90度以上であれば、粘着シート10を、枠部材20、半導体チップCPおよび封止樹脂層30Aから容易に剥離することができる。剥離角度θは、90度以上180度以下が好ましく、135度以上180度以下がよりこのましい。このように粘着シート10を屈曲させながら剥離を行うことで、枠部材20、半導体チップCPおよび封止樹脂層30Aにかかる負荷を低減しながら剥離することができ、粘着シート10の剥離による、半導体チップCPおよび封止樹脂層30Aの損傷を抑制することができる。粘着シート10を剥離した後、前述の再配線工程及びバンプ付け工程等が実施される。粘着シート10の剥離後、再配線工程及びバンプ付け工程等の実施前に、必要に応じて、前述の補強部材貼着工程を実施してもよい。
【0081】
補強部材40を貼着させた場合、再配線工程及びバンプ付け工程等が実施された後、補強部材40による支持が不要になった段階で、補強部材40を封止体50から剥離する。
その後、封止体50を半導体チップCP単位で個片化する(個片化工程)。封止体50を個片化させる方法は特に限定されない。例えば、前述の半導体ウエハをダイシングする際に使用した方法と同様の方法で個片化させることができる。封止体50を個片化させる工程は、封止体50をダイシングシート等に貼着させた状態で実施してもよい。封止体50を個片化することで、半導体チップCP単位の半導体パッケージが製造され、この半導体パッケージは、実装工程においてプリント配線基板等に実装される。
【0082】
(本実施形態の効果)
本実施形態においては、表面自由エネルギーが10mJ/m
2以上、22mJ/m
2以下である粘着剤層12を備える粘着シート10を用いているため、粘着シート10上の半導体チップCPを封止する際のフィリング性が優れる。
そのため、本実施形態によれば、封止工程において、
図3に示すように、封止樹脂30が、半導体チップCPの回路面CPAにおける周縁部にある段差部CPBと、粘着剤層12との隙間Sを埋め込むことができる。
段差部CPBと回路面CPAとの段差の高さ寸法xは、通常、0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは、0.5μm以上5μm以下である。この高さ寸法xが小さいほど、封止樹脂30が隙間Sを埋め込み難くなるが、前記下限以上であれば、封止樹脂30が隙間Sを埋め込むことができる。
段差部CPBの幅寸法yは、通常、1μm以上100μm以下であり、好ましくは、5μm以上50μm以下である。この幅寸法yが大きいほど、封止樹脂30が隙間Sを埋め込み難くなるが、前記上限以下であれば、封止樹脂30が隙間Sを埋め込むことができる。
【0083】
〔実施形態の変形〕
本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形及び改良等は、本発明に含まれる。なお、以下の説明では、前記実施形態で説明した部材等と同一であれば、同一符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0084】
前記実施形態では、粘着シート10の粘着剤層12が剥離シートRLによって覆われている態様を例に挙げて説明したが、本発明は、このような態様に限定されない。
また、粘着シート10は、枚葉であってもよく、複数枚の粘着シート10が積層された状態で提供されてもよい。この場合、例えば、粘着剤層12は、積層される別の粘着シートの基材11によって覆われていてもよい。
また、粘着シート10は、長尺状のシートであってもよく、ロール状に巻き取られた状態で提供されてもよい。ロール状に巻き取られた粘着シート10は、ロールから繰り出されて所望のサイズに切断するなどして使用することができる。
【0085】
前記実施形態では、封止樹脂30の材質として熱硬化性樹脂である場合を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、封止樹脂30は、紫外線等のエネルギー線で硬化するエネルギー線硬化性樹脂でもよい。
前記実施形態では、半導体装置の製造方法の説明において、枠部材20を粘着シート10に貼着させる態様を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。粘着シート10は、枠部材20を用いずに半導体素子を封止する半導体装置の製造方法において使用されてもよい。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0087】
〔評価方法〕
粘着シートの評価は、以下に示す方法に従って行った。
【0088】
[表面自由エネルギー及び接触角]
粘着剤層の表面自由エネルギーは、次に示す方法により測定した。具体的には、まず、接触角測定装置(共和界面化学社製の「DM701」)を用いて、粘着剤層に対する水、ジヨードメタン及び1−ブロモナフタレンの接触角を測定した。それぞれの液滴の量は2μLとした。そして、これらの測定値から、北崎・畑法により、表面自由エネルギーを算出した。
【0089】
[フィリング性評価]
粘着シートの粘着面に半導体チップ(鏡面加工が施されたシリコンチップ、チップサイズ:2.3mm×1.7mm、チップ厚み:0.2mm、段差部と回路面との段差の高さ寸法x:1μm、段差部の幅寸法y:30μm)8000個を、粘着シートの粘着面と半導体チップの回路面とが接するように、5mm間隔で設置する。その後、封止樹脂(味の素ファインテクノ(株)製ABFフィルム、GX LE−T15B)で粘着シート上の半導体チップを、真空加熱加圧ラミネーター(ROHM and HAAS社製の「7024HP5」)を用いて封止した(封止工程)。封止条件は、下記の通りである。
・予熱温度:テーブル及びダイアフラムとも100℃
・真空引き:60秒間
・ダイナミックプレスモード:30秒間
・スタティックプレスモード:10秒間
そして、封止工程後の粘着シート上の半導体チップを顕微鏡にて観察し(それぞれの半導体チップの全周囲)、半導体チップの段差部と粘着剤層との隙間に封止樹脂が埋め込まれているか否かを確認した。隙間に封止樹脂が埋め込まれている場合を「A」と判定し、隙間に封止樹脂が埋め込まれていないか、或いは、隙間にボイドが発生した場合を「B」と判定した。
【0090】
〔粘着シートの作製〕
(実施例1)
【0091】
(1)粘着剤層の作製
以下の材料(ポリマー、粘着助剤、架橋剤、及び希釈溶剤)を配合し、十分に撹拌して、実施例1に係る塗布用粘着剤液(粘着剤組成物)を調製した。
【0092】
・ポリマー:アクリル酸エステル共重合体、40質量部(固形分)
アクリル酸エステル共重合体は、アクリル酸2−エチルヘキシル92.8質量%と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル7.0質量%と、アクリル酸0.2質量%とを共重合して調製した。
【0093】
・粘着助剤:両末端水酸基水素化ポリブタジエン〔日本曹達(株)製;GI−1000〕、5質量部
【0094】
・架橋剤:ヘキサメチレンジイソシアネートを有する脂肪族系イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型変性体)〔日本ポリウレタン工業(株)製;コロネートHX〕、3.5質量部(固形分)
【0095】
・希釈溶剤:メチルエチルケトンを用い、塗布用粘着剤液の固形分濃度は、30質量%に調製した。
【0096】
(2)粘着剤層の作製
調製した塗布用粘着剤液を、コンマコーター(登録商標)を用いて乾燥後の膜厚が50μmになるように、シリコーン系剥離層を設けた38μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルム剥離フィルム〔リンテック(株)製;SP−PET382150〕の剥離層面側に塗布し、90℃及び90秒間の加熱を行い、続いて115℃及び90秒間の加熱を行い、塗膜を乾燥させた。
【0097】
(3)粘着シートの作製
塗布用粘着剤液の塗膜を乾燥させた後、粘着剤層と、基材とを貼り合わせて実施例1に係る粘着シートを得た。なお、基材として、透明ポリエチレンテレフタレートフィルム〔帝人デュポンフィルム(株)製;PET50KFL12D、厚さ50μm、100℃における貯蔵弾性率3.1×10
9Pa〕を用い、基材の一方の面に粘着剤層を貼り合わせた。
【0098】
(実施例2)
実施例2に係る粘着シートは、粘着剤層の厚みが異なること以外は、実施例1と同様に作製した。
実施例2では、塗布用粘着剤液を、乾燥後の厚みが20μmとなるように基材に塗布及び乾燥して粘着剤層を作製した。
【0099】
(実施例3)
実施例3では、シリコーン系粘着剤を用いた。
実施例3においては、
シリコーン系粘着剤A(SD4580PSA)18質量部(固形分)、
シリコーン系粘着剤B(SD4587L)40質量部(固形分)、
触媒A(NC−25 CAT)0.3質量部(固形分)、
触媒B(CAT−SRX−212)0.65質量部(固形分)、及び
プライマー(BY24−712)5質量部(固形分)を配合し、希釈溶剤としてトルエンを用いて固形分が20重量%となるように希釈し、十分に撹拌して、塗布用粘着剤液(粘着剤組成物)を調製した。実施例3の粘着剤組成物に用いた材料は、いずれも東レ・ダウコーニング(株)製である。
実施例3に係る塗布用粘着剤液を、コンマコーター(登録商標)を用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように基材に塗布及び乾燥して粘着剤層を作製し、フッ素系剥離層を設けた38μmの透明ポリエチレンテレフタレートからなる剥離フィルム[リンテック(株)製:SP−PET38E−0010YCS]を貼りあわせた。乾燥条件は、130℃及び2分間とした。実施例2で用いた基材は、ポリイミドフィルム〔東レ・デュポン(株)製;カプトン100H、厚さ25μm、100℃における貯蔵弾性率3.1×10
9Pa〕を用いた。
【0100】
(比較例1)
比較例1に係る粘着シートは、粘着剤層に含まれるポリマーが実施例1と異なること以外は、実施例1と同様に作製した。
・ポリマー:アクリル酸エステル共重合体、40質量部(固形分)
アクリル酸エステル共重合体は、アクリル酸2−エチルヘキシル80.8質量%と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル7質量%と、4−アクリロイルモルホリン12質量%と、アクリル酸0.2質量%とを共重合して調製した。
【0101】
(比較例2)
比較例2に係る粘着シートは、粘着剤層の厚みが異なること以外は、比較例1と同様に作製した。
比較例2では、塗布用粘着剤液を、乾燥後の厚みが20μmとなるように基材に塗布及び乾燥して粘着剤層を作製した。
【0102】
(比較例3)
比較例1に係る粘着シートは、粘着剤組成物が実施例1と異なること以外は、実施例1と同様に作製した。
・ポリマー:アクリル酸エステル共重合体、40質量部(固形分)
アクリル酸エステル共重合体は、アクリル酸ラウリル92.8質量%と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル7質量%と、アクリル酸0.2質量%とを共重合して調製した。
粘着助剤:両末端水酸基水素化ポリブタジエン〔日本曹達(株)製;GI−1000〕、5質量部
・架橋剤:ヘキサメチレンジイソシアネートを有する脂肪族系イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型変性体)〔日本ポリウレタン工業(株)製;コロネートHX〕、9.9質量部(固形分)
・希釈溶剤:メチルエチルケトンを用い、塗布用粘着剤液の固形分濃度は、30質量%に調製した。
【0103】
表1に実施例1〜3、並びに比較例1〜3に係る粘着シートの評価結果を示す。また、実施例1〜3、並びに比較例1〜3で用いた粘着剤を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示す結果からも明らかなように、粘着剤層の表面自由エネルギーが10mJ/m
2以上22mJ/m
2以下である場合(実施例1〜3)には、粘着シート上の半導体素子を封止する際のフィリング性が優れることが確認された。