特許第6759238号(P6759238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6759238スライドバネ、スライダー、スライド針、ガイド構造、及び少なくとも1個のスライドバネを作成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759238
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】スライドバネ、スライダー、スライド針、ガイド構造、及び少なくとも1個のスライドバネを作成する方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 35/06 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   D04B35/06
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-554376(P2017-554376)
(86)(22)【出願日】2016年4月6日
(65)【公表番号】特表2018-514657(P2018-514657A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2016057501
(87)【国際公開番号】WO2016165991
(87)【国際公開日】20161020
【審査請求日】2019年3月28日
(31)【優先権主張番号】102015105648.8
(32)【優先日】2015年4月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500564448
【氏名又は名称】グロツ−ベッケルト カーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ホルン,クノー
(72)【発明者】
【氏名】マッテス,ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】薗村 稔
【審査官】 住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−083033(JP,A)
【文献】 特開2015−074865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B35/02
D04B15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダーのためのスライドバネであって、フック開口を閉鎖する閉鎖部と、スライド本体に固着して取り付けられる接続部と、前記閉鎖部と前記接続部との間に形成された、針本体上でのガイドのためのガイド部とを備え、
スライドバネは、バネ長手方向、バネ幅方向及びバネ高さ方向に広がっているスライドバネであって、
前記ガイド部と前記接続部との間に位置し、すじ内側凹部とすじ外側凸部とを有する少なくとも1本の溝形状に形成されたすじ部を備えているスライドバネであって、
同形状の複数のスライドバネを揃えるために、前記すじ部は、前記すじ外側凸部が、別のスライドバネのすじ内側凹部の中に受け入れ可能であるように構成され、これにより、前記接続部が前記別のスライドバネの接続部に面接触するように構成され、かつ前記ガイド部が前記別のスライドバネのガイド部に面接触するように構成され、前記複数のスライドバネの相互の積み重ねを確実にすることを特徴とするスライドバネ。
【請求項2】
前記すじ内側凹部及び前記すじ外側凸部が、様の横断面の輪郭を有することを特徴とする請求項1記載のスライドバネ。
【請求項3】
前記すじ内側凹部及び前記すじ外側凸部がそれぞれ、円弧状の横断面の輪郭を有することを特徴とする請求項1及び2のいずれか1項に記載のスライドバネ。
【請求項4】
前記すじ内側凹部は、小さな半径の円弧状の横断面の輪郭を有し、前記すじ外側凸部は、前記すじ内側凹部よりも大きな半径の円弧状の横断面の輪郭を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスライドバネ。
【請求項5】
スライドバネが、前記バネ幅方向に、少なくとも1本のすじ部に沿って、少なくとも断面に関して、減少した材料厚みを有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスライドバネ。
【請求項6】
スライド針のためのスライダーであって、スライド本体を有し、スライダーは、スライダー長手方向、スライダー幅方向及びスライダー高さ方向に広がっているスライダーであって、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の第1のスライドバネと、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の第2のスライドバネとを備えていることを特徴とするスライダー。
【請求項7】
前記第1のスライドバネ及び前記第2のスライドバネが、像的に対称な形態に構成されていることを特徴とする請求項6記載のスライダー。
【請求項8】
編み目形成用の繊維機械のためのスライド針であって、フックを有する針本体と、スライドチャンネルとを備え、フックはフック開口を有し、スライド針は、針長手方向、針幅方向及び針高さ方向に広がっているスライド針であって、
請求項6及び7のいずれか1項に記載のスライダーを備え、
前記スライダーは、前記フック開口を開放、及び/又は閉鎖するために、前記針本体に対して前記針長手方向に変位可能であることを特徴とするスライド針。
【請求項9】
編み目形成用の繊維機械のためのガイド構造であって、ガイド構造は、スライド針のための少なくとも1本の針チャンネルを備え、少なくとも1本の針チャンネルは、チャンネル長手方向、チャンネル幅方向及びチャンネル高さ方向に広がっているガイド構造であって、
請求項8記載の少なくとも1本のスライド針を備え、
少なくとも1本のスライド針は、前記チャンネル長手方向に少なくとも1本の針チャンネル内でガイドされることを特徴とするガイド構造。
【請求項10】
少なくとも1本の針チャンネルは、前記チャンネル高さ方向に開口した頂部を有し、少なくとも1本のスライド針の前記すじ部は、前記頂部よりも下で、少なくとも1本の針チャンネル内に配置されることを特徴とする請求項9記載のガイド構造。
【請求項11】
スライドバネの前記すじ部を有する少なくとも1本のスライド針は、前記フック開口が開放されたときは、少なくとも1本の針チャンネル内で前記チャンネル幅方向に遊びをもってガイドされ、前記フック開口が閉鎖されたときには、前記針チャンネル内に前記チャンネル幅方向に前記すじ部とともにとどまることを特徴とする請求項9及び10のいずれか1項に記載のガイド構造。
【請求項12】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の少なくとも1個のスライドバネを作成する方法であって、複数個のスライドバネが、すじ内側凹部ですじ外側凸部をそれぞれ受け入れるように積み重ねられ、外向きに湾曲した凸面のじ部が、内向きに湾曲した凹面の曲りの中に、け入れられることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライダーのためのスライドバネに関する。スライドバネは、フック開口を閉鎖する閉鎖部と、スライド本体に接続する接続部と、針本体上でのガイドのためのガイド部とを備えている。スライドバネは、バネ長手方向、バネ幅方向及びバネ高さ方向に広がり、すじ内側凹部とすじ外側凸部とを有する少なくとも1本のすじ部を備えている。これに加えて、本発明は、スライド針のためのスライダーに関する。スライド針はスライド本体を有し、スライダーは、スライダー長手方向、スライダー幅方向、スライダー高さ方向に広がっている。これに加えて、本発明は、編み目形成用の繊維機械のためのスライド針に関する。スライド針は、フックを有する針本体と、スライドチャンネルとを備え、フックはフック開口を有し、スライド針は、針長手方向、針幅方向、針高さ方向に広がっている。これに加えて、本発明は、編み目形成用の繊維機械のためのガイド構造に関する。ガイド構造は、スライド針のための少なくとも1本の針チャンネルを備え、少なくとも1本の針チャンネルは、チャンネル長手方向、チャンネル幅方向、チャンネル高さ方向に広がっている。これに加えて、本発明は、この少なくとも1本のスライドバネを作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ特許DE 10130365 C1は、編み目形成用の繊維機械のためのスライド針を開示している。このスライド針は、末端を有するフックを軸の一端に保持する一つの針本体と、この軸に沿って互いに平行に設けられていて相互間に一つのスライドスリットを画定する二つのスリット壁と、このスライドスリット内にシフト可能に配置されていて少なくとも二つのスライドバネを備えた一つのスライダーとを備えている。このスライド針は、フックの方に向いた、両スライドバネの自由脚片が相互に離間する方向に湾曲されて、自由脚片の両バネ端が、接触部位を起点として、フックへ向かって開かれた漏斗体を形成すべく無接触状態を保ち、かつフックの方に向いた両自由脚片が、先細化域において、スリット壁に垂直に測ったスライドバネの厚みに関して各バネ端へ向かって先細にされ、スライド針を構成するように端に向けて減少し、低いスライド摩擦をもって高い操作安全性を供する。スライドバネは、その内部の傾斜部に、フックを受け入れる長手方向凹部を備えている。
【0003】
欧州特許公開EP 2581480 A1はスライド針を開示している。このスライド針は、相対して位置する二つの側壁を有し長手方向に延びる針本体を有し、底部で画定されるスライドチャンネルを有し、スライドチャンネルに配置され、スライド方向に沿って変位できるスライダーを有し、側壁の少なくとも一つは、ガイド領域を有するチャンネルガイド凹部を有し、少なくとも側壁に引き込まれた状態では、スライドバネは、カムフォロワ面を有する横に曲げられたカムフォロワ部を有し、カムフォロワ部は、チャンネルガイド凹部に相対し、カムフォロワ部は、2個以上の変形部分を有し、これは微小な分割を伴ってスライド針を作成することを可能にする。スライダーは、互いに対称な2個のスライドバネを有する。スライドバネはそれぞれ平坦であり、互いに接触し、フックに向かう向きになった捕捉部が端部に設けられている。
【0004】
ドイツ特許公開DE 102013105239 A1はスライド針を開示している。このスライド針は、長手方向で延在するシャンクを備える針本体を有し、シャンクは、その端で、編目形成のために配置される針フックに続いており、ここで、針フックは、フック先端に続いており、幅方向で互いに隔てて配置された二つの側方フック領域を有するフック末端を備え、ここで、幅方向は長手方向に垂直な向きである。このスライド針は、針フックに向かって、また針フックから離れるように移動可能に針本体上に支持されるスライダーを有し、ここで、スライダーは二つのスライドブレードを備え、二つのスライドブレードは上側に機械支持領域を有し、ここで、二つのスライドブレードの各々は、ブレード端に内部開口領域を有し、内部開口領域は一緒に、長手方向における前部に向かって開口して針フックと関連付けられているフック凹部の範囲を定め、針フックは、機械停止位置でフック凹部内に係合し、ここで、内部開口領域と、それぞれの関連する側方フック領域との間にギャップが形成され、ギャップは、高さ方向で変化する幅方向のギャップ幅を有し、ここで、高さ方向は、長手方向に垂直、かつ幅方向に垂直な向きである。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、冒頭に言及されたスライドバネを構造・機能に関して改良する目的を基礎とするものである。本発明は、冒頭に言及されたスライダーを構造・機能に関して改良する目的を基礎とするものである。さらに、本発明は、冒頭に言及されたスライド針を構造・機能に関して改良する目的を基礎とするものである。これに加え、本発明は、冒頭に言及されたガイド構造を構造・機能に関して改良する目的を基礎とするものである。さらに、本発明は、冒頭に言及された方法を改良する目的を基礎とするものである。特に、スライドバネの剛性を増加させることとする。特に、スライドバネの剛性を、バネ高さ方向に延びる曲げ軸の周りで、増加させることとする。特に、針チャンネル内でスライド針をガイドする性能を改善する。特に、針チャンネル内で、一層精度の高いガイドを可能にする。特に、針チャンネル内でスライドバネを支持することを可能にする。特に、フック開口が閉じているときに、針チャンネル内でスライドバネを支持することを可能にする。特に、一層精度の高い編み目形成を可能にする。特に、繊維加工品の製造を、より一層の細かさをもって可能にする。特に、荷重のピークを低減させる。特に、作動できる時間を長くする。特に、製造費用、取扱い費用、収納のための費用、運送費用、物流作業の費用などの費用を低減させる。特に、スライドバネを重ね合せることを、可能にし、又は容易にする。特に、スライドバネの積層体の安定性を増す。特に、スライドバネを積層体として分けて扱うことを、可能にし、又は容易にすることとする。
【0006】
この目的は、スライダーのためのスライドバネをもって、達成される。スライドバネは、フック開口を閉鎖する閉鎖部と、スライド本体に接続する接続部と、針本体上でのガイドのためのガイド部とを備え、スライドバネは、バネ長手方向、バネ幅方向及びバネ高さ方向に広がり、すじ内側凹部とすじ外側凸部とを有する少なくとも1本のすじ部(Sicke;bead,crimp)を備えているスライドバネであって、積み重ね可能である。
【0007】
すじ内側凹部及びすじ外側凸部が、少なくともほぼ、同様の横断面の輪郭を有してもよい。この同様の横断面の輪郭は、同様の平坦な幾何学図形に基づいた横断面の輪郭から構成されてもよい。すじ内側凹部及びすじ外側凸部は、円弧に基づいた横断面の輪郭から構成されてもよい。円弧は、少なくとも断面に関して、一定の曲率を有してもよい。円弧は、断面に関して、複数の異なる曲率を有してもよい。すじ内側凹部及びすじ外側凸部がそれぞれ、円弧状の横断面の輪郭を有してもよい。すじ内側凹部は、小さな半径の円弧状の横断面の輪郭を有し、すじ外側凸部は、大きな半径の円弧状の横断面の輪郭を有してもよい。スライドバネが、バネ幅方向に、少なくとも1本のすじ部に沿って、少なくとも断面に関して、減少した材料厚みを有してもよい。
【0008】
すじ部を備えたスライドバネは、異なる横断面の輪郭を有するものの場合は、安全に、安定的に重ね合せ可能であるとは言えない。異なる横断面の輪郭は、平面上の異なる幾何学図形に基づいた横断面の輪郭でもあり得る。
【0009】
バネ長手方向、バネ幅方向、バネ高さ方向は、互いに垂直であってもよい。バネ長手方向、バネ幅方向、バネ高さ方向は、三次元直交座標系の座標軸の方向と一致したものであってもよい。
【0010】
スライドバネは、平らなバネ形状を有してもよい。スライドバネは、実質的に、平坦な形状を有してもよい。スライドバネは、実質的に、バネ長手方向及びバネ高さ方向に広がっていてもよい。
【0011】
スライドバネは、バネ長手方向に関して、フック方向先端を備え、また、フック方向先端と反対側で、接続側の端部を備えていてもよい。スライドバネは、バネ高さ方向における底部と、底部と反対側の頂部とを備えていてもよい。
【0012】
閉鎖部は、底部に位置していてもよい。閉鎖部は、フック方向先端に位置していてもよい。接続部は、接続側の端に位置していてもよい。接続部は、頂部に位置していてもよい。ガイド部は、底部に位置していてもよい。ガイド部は、接続側の端に位置していてもよい。ガイド部は、走行部の形状を有してもよい。
【0013】
フック方向先端は、フック末端に対応して働き、フック開口を閉鎖するための接触を供するようになっている。スライドバネは、そのフック方向先端で、先端の中腹部を有するようにカム形状に形成されていてもよい。スライドバネは、編み目支持部を有してもよい。編み目支持部は、先端の中腹部の隣に位置していてもよい。編み目支持部は、実質的には、バネ長手方向に延びていてもよい。スライドバネは、支持用の中腹部を有してもよい。支持用の中腹部は、編み目支持部の隣に位置していてもよい。支持用の中腹部は、実質的には、バネ高さ方向に延びていてもよい。スライドバネは、上縁を有してもよい。上縁は、支持用の中腹部の隣に位置していてもよい。上縁は、バネ高さ方向で閉鎖部から離れるように向いていてもよい。上縁は、実質的には、バネ長手方向に延びていてもよい。スライドバネは切り欠きを有してもよい。切り欠きは、上縁の隣に位置していてもよい。切り欠きは、バネ高さ方向に深く形成されてもよい。スライドバネは、傾斜部を有してもよい。傾斜部は、切り欠きの隣に位置していてもよい。編み目支持部の先端の中腹部、支持用の中腹部、上縁、切り欠き、及び/又は傾斜部は、頂部に配置されてもよい。スライドバネは、その接続部で、バネ高さ方向に下縁を有してもよい。下縁は、実質的には、バネ長手方向に延びていてもよい。スライドバネは、バネ幅方向でバネ内部とバネ外部とを備えていてもよい。スライドバネは、バネ幅方向で輪郭形成されたり、変形されたりしてもよい。
【0014】
少なくとも1本のすじ部は、溝状の形状に形成されていてもよい。少なくとも1本のすじ部が、すじ部長手方向、すじ部幅方向、すじ部高さ方向に広がっていてもよい。すじ部長手方向は、少なくともほぼ、バネ長手方向と一致してもよい。少なくとも1本のすじ部が、少なくともほぼ、上縁の領域内で、バネ高さ方向に配置されていてもよい。これが、少なくともほぼ、上縁の延長線上に配置されていてもよい。少なくとも1本のすじ部が、少なくともほぼ、上縁と平行に配置されていてもよい。これが、少なくともほぼ、上縁に対して同軸的な配置になっていてもよい。少なくとも1本のすじ部が、少なくともほぼ、下縁の領域内で、バネ高さ方向に配置されていてもよい。これが、少なくともほぼ、下縁の延長線上に配置されていてもよい。少なくとも1本のすじ部が、少なくともほぼ、下縁と平行に配置されていてもよい。これが、少なくともほぼ、下縁に対して同軸的な配置になっていてもよい。少なくとも1本のすじ部が、バネ高さ方向で切り欠きより上に位置していてもよい。すじ内側凹部は、バネ内部に付いていてもよい。すじ外側凸部は、バネ外部に付いていてもよい。
【0015】
バネ高さ方向で少なくとも1本のすじ部と隣り合うスライドバネの部分は、バネ幅方向で、少なくともほぼ、平行なレベルで配列されていてもよい。バネ高さ方向で少なくとも1本のすじ部と両隣であるスライドバネの領域は、バネ幅方向で、少なくともほぼ、同じレベルに揃っていてもよい。
【0016】
スライドバネは、打ち抜かれ、変形された部品であってもよい。これは、熱処理されていてもよい。スライドバネは焼きなましされていてもよい。これは、焼き戻しされていてもよい。
【0017】
これに加え、本発明を基礎付ける目的の達成として、スライド針のためのスライダーが提供される。スライダーはスライド本体を有し、スライダーは、スライダー長手方向、スライダー幅方向、スライダー高さ方向に広がっているスライダーであって、上述の第1のスライドバネと、上述の第2のスライドバネとを備えている。第1及び第2のスライドバネが、互いに反対向きになってスライダー幅方向にすじ部のすじ外側凸部とともに配列されていてもよい。これらは、少なくともほぼ、鏡像的に対称な形態に構成されていてもよい。第1のスライドバネ及び第2のスライドバネは、互いに平行に、かつ互いに距離をおいてすじ部を位置させるように、配列されていてもよい。
【0018】
スライド本体は、スライダー長手方向に見て、スライドバネ側の端を備えていてもよい。スライドバネは、接続部によってスライドバネ側の端に接続されていてもよい。スライドバネとスライド本体は、摩擦力を利用した固着(kraftschluessig)、嵌め合いでの固着(formschluessig)、及び/又は、材料相互の接合によって、互いに固着してもよい。これらは、可塑的変形によって互いに接合してもよい。スライドバネとスライド本体は、かしめによって互いに接合してもよい。これらは、弾性変形によって互いに接合してもよい。スライドバネとスライド本体は、互いに挟み付けてもよい。
【0019】
スライドバネ側の端は、スライダー高さ方向に関して、針本体上でガイドするための下縁を備えていてもよい。スライドバネのすじ部は、少なくともほぼ、スライダー高さ方向で下縁の領域に位置していてもよい。これは、少なくともほぼ、下縁の延長線上に位置していてもよい。スライドバネのすじ部は、少なくともほぼ、下縁に対して平行に位置していてもよい。これは、少なくともほぼ、下縁と同軸に位置していてもよい。
【0020】
スライダーは、少なくとも1個のスライド基材を備えていてもよい。少なくとも1個のスライド基材は、スライド本体に位置していてもよい。これは、少なくともほぼ、スライダー高さ方向に向いていてもよい。少なくとも1個のスライド基材は、ロックのロックチャンネルと係合するように働いてもよい。
【0021】
これに加え、本発明を基礎付ける目的は、編み目形成用の繊維機械のためのスライド針で達成される。スライド針は、フックを有する針本体と、スライドチャンネルとを備え、フックはフック開口を有し、スライド針は、針長手方向、針幅方向及び針高さ方向に広がっているスライド針であって、上述のスライダーを備え、スライダーは、フック開口を開放、及び/又は閉鎖するために、針本体に対して針長手方向に変位可能である。
【0022】
編み目形成用の繊維機械は、繊維品の工業的製造のために用いられてもよい。編み目形成用の繊維機械は、(自動の)編み機(Strickmaschine)であってもよい。編み機は、丸編み機であってもよい。これは、平台型の編み機であってもよい。編み目形成用の繊維機械は、編み台の編み機(Wirkmaschine)であってもよい。これは、スライド針のための少なくとも1本の針チャンネルを備えていてもよい。少なくとも1本の針チャンネルは、針長手方向で変位可能にスライド針を受け入れるように構成されてもよい。編み目形成用の繊維機械は、少なくとも1個のカムを備えていてもよい。少なくとも1個のカムは、少なくとも1本のカム溝を有してもよい。少なくとも1個のカムは、動力で駆動されるものであってもよい。
【0023】
フックは湾曲していてもよい。フックは、フック末端を有してもよい。フック末端は、スライダーの第1及び第2スライドバネの間に介在するようにされ、フック開口を閉鎖してもよい。
【0024】
スライド針は、少なくとも1個の針基材を備えていてもよい。少なくとも1個の針基材が、針本体上に配置されていてもよい。これが、少なくともほぼ、針高さ方向に向いていてもよい。少なくとも1個の針基材が、ロックのロックチャンネルと係合する役割をしてもよい。
【0025】
スライドチャンネルは、フックに隣り合って位置していてもよい。スライダーは、針長手方向に、スライドチャンネル内でスライドバネのガイド部でガイドされてもよい。フック開口が閉鎖されたときに、フックはそのフック末端が、スライダーの第1及び第2スライドバネの間に介在することが可能であり、スライドバネを針幅方向に押し離すことが可能である。
【0026】
これに加えて、本発明を基礎付ける目的は、編み目形成用の繊維機械のためのガイド構造で達成される。ガイド構造は、スライド針のための少なくとも1本の針チャンネルを備え、少なくとも1本の針チャンネルは、チャンネル長手方向、チャンネル幅方向及びチャンネル高さ方向に広がっているガイド構造であって、上述の少なくとも1本のスライド針を備え、少なくとも1本のスライド針は、チャンネル長手方向に少なくとも1本の針チャンネル内でガイドされる。
【0027】
少なくとも1本の針チャンネルは、また、ニッティングヘッド(Fonture)と呼ばれるものであってもよい。少なくとも1本のスライド針は、針長手方向に針チャンネル内でスライド可能であってもよい。少なくとも1本の針チャンネルは、チャンネル高さ方向に開口した頂部を有してもよい。少なくとも1本のスライド針のすじ部は、頂部よりも下で、少なくとも1本の針チャンネル内に配置されていてもよい。
【0028】
スライドバネのすじ部を有する少なくとも1本のスライド針は、フック開口が開放されたときは、少なくとも1本の針チャンネル内でチャンネル幅方向に遊びをもってガイドされてもよい。フック開口が閉鎖されたときには、チャンネル幅方向にすじ部とともにとどまっていてもよい。
【0029】
バネ長手方向、すじ部長手方向、スライダー長手方向、針長手方向、チャンネル長手方向は、少なくともほぼ、一致してよい。バネ幅方向、すじ部幅方向、スライダー幅方向、針幅方向、チャンネル幅方向は、少なくともほぼ、一致してよい。バネ高さ方向、すじ部高さ方向、スライダー高さ方向、針高さ方向、チャンネル高さ方向は、少なくともほぼ、一致してよい。
【0030】
これに加えて、本発明を基礎付ける目的は、上述の少なくとも1個のスライドバネを作成する方法で達成される。この方法では、複数個のスライドバネが、すじ内側凹部ですじ外側凸部をそれぞれ受け入れるように積み重ねられる。
【0031】
要約すれば、また言い換えれば、スライドバネのすじ部の実施形態はとりわけ、本発明によって提供可能なものである。このスライドバネを作成するには、尖った工具、例えばのみを用いて、圧力をスライドバネの片側にかけて、これにより、普通は針長手方向に延びている各側に、ほぼ三角形の刻み目を形成してもよい。反対側では、全体的に丸みがついた突出部が形成されていてもよい。ここでの溝状の形状の実施形態は、すじ部と呼ばれてもよい。溝状の形状であって、凹部が突出部と反対側にある、異なる実施形態も、すじ部と呼ばれてよい。組み付けられたスライドバネで、丸みのある突出部が常に針から離れて、即ち、「外側」に向けて、向いているように、すじ部は作成されてもよい。
【0032】
フック内部空間が開いているとき、即ち、フックが2個のスライドバネの間に介在していないときに、2個の相補的なスライドバネで外向きに向かう2本の丸みのある突出部のピーク同士の間で決まる距離が、各スライド針を考慮して形成された針チャンネルの幅より、小さくてもよい。
【0033】
フック内部空間が閉じられている場合に、つまり、フックが2個のスライドバネの間に介在して、スライドバネが押し離されているときには、2本の丸みのある突出部の距離は、針チャンネルの幅とほぼ等しくなっていてもよい。フック内部空間が閉じられている場合にのみ、針は、針チャンネルの側壁でスライドバネのすじ部とともにとどまっていてもよい。
【0034】
内向きに湾曲した凹面の曲りの中に全体的に嵌り込むように、ここに形成された、外向きに湾曲した凸面の曲り/突出部をもって、溝形状の曲り・すじ部が現れるように、すじ部は形成することが可能である。スライドバネは、ここに積み重ねることが可能である。
【0035】
「してもよい」“kann”という用語は、本発明の特に任意の特徴を意味するものである。従って、一つの特徴又は複数の各特徴を示す本発明の例示的な実施形態が存在することになる。
【0036】
本発明は、スライドバネの剛性を、バネ高さ方向に延びる曲げ軸の周りで、増加させる。針チャンネル内でスライド針をガイドする性能が改善される。針チャンネル内で、一層精度の高いスライド針のガイドが可能になる。フック開口が閉じているときに、針チャンネル内でスライドバネを支持することが可能になる。一層精度の高い編み目形成が可能になる。繊維加工品の製造が、より一層の細かさをもって可能になる。荷重のピークは低減される。作動できる時間は長くなる。製造費用、取扱い費用、収納のための費用、運送費用、物流作業の費用などの費用が低減される。スライドバネを重ね合せることが、可能になり、又は容易になる。スライドバネの積層体の安定性が増す。スライドバネを積層体として分けて扱うことが、可能になり、又は容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図面を参照して、本発明の例示的な実施形態を、下記のように詳細に説明する。その他の特徴や利点は、この説明と区別が可能なものである。これらの例示的な実施形態の具体的特徴は、本発明の全体的な特徴であってよい。他の特徴に関連するこの例示的な実施形態の特徴は、さらに、本発明の個々の特徴であってよい。
【0038】
このことは、下記の図面に例として図式的に示される。
【0039】
図1】斜視図、側面図、C−C線における断面図に、編み機のためのスライド針を示す。
図2】すじ部を有するスライドバネを示す。
図3】断面図に、同様な横断面上の輪郭線を備えたスライドバネのすじ部を示す。
図4】積み重ねられたスライドバネを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1に、スライド針100を破断した状態で、斜視図、側面図、またC−C線における断面図で示す。スライド針100は編み機に用いられる。これは、針本体102及びスライダー104を備えている。
【0041】
針本体102は、フック106とスライドチャンネル108を有する。スライドチャンネル108は、二つの側壁、底部、開口した頂部を備えている。スライドチャンネル108は、フック106に向けて延びて形成されている。フック106は、フック開口とフック末端を備えている。フック106は約180°の円弧状の部分を有する。
【0042】
スライダー104は、スライド本体110、第1スライドバネ112及び第2スライドバネ114を備えている。これは、フック開口を開放、かつ/又は閉鎖するように作用する。スライダー104は、針本体102に対して長手方向lにスライド可能である。これは、長手方向lに針本体102上をスライド可能にガイドされている。スライダー104は、フック開口が開かれる第1端位置と、フック開口が閉ざされる第2端位置との間で、長手方向lにスライド可能である。
【0043】
図2に、単独の要素として破断した状態で、第1スライドバネ112を示している。下記の説明では、第1スライドバネ112は、例示として説明する。第1スライドバネ112の説明はさらに、第2スライドバネ114にも当てはまるものである。第1スライドバネ112及び第2スライドバネ114は、互いに鏡像的に対称になっている。
【0044】
スライドバネ112は、外周縁を有する板バネの形状に形成されている。スライドバネ112は、幅方向bに、バネ内側部116と、バネ内側部116の逆側のバネ外側部118とを備えている。高さ方向hには、スライドバネ112は、頂部と、頂部の逆側の底部とを備えている。長手方向lには、スライドバネ112はフック方向先端120を備えている。これは閉鎖部122を有する。閉鎖部122は、フック開口を閉じるように作用する。閉鎖部122はフック方向先端120に配置され、底部に沿って延びている。スライドバネ112は、接続部124を有する。接続部124は、スライドバネ112をスライド本体110に接続している。これは、長手方向lにフック方向先端120と反対側で、スライドバネ112の端に配置されている。スライドバネ112はガイド部126を有する。ガイド部126は、針本体102上でスライドバネ112をガイドする作用をする。これはスライドバネ112の下方に配置されている。ガイド部126は、走行部の形状になっている。これは閉鎖部122に隣り合って配置されている。
【0045】
第1スライドバネ112は、外周縁が形作られている。フック方向先端120では、第1スライドバネ112が、先端の中腹部128を有して鼻形状になっている。長手方向lに延びる縁に沿って、上側には、編み目支持部130、支持用の中腹部132、上縁134、切り欠き136、及び傾斜部138が配列されている。傾斜部138は接続部124へ続いている。
【0046】
第1スライドバネ112はすじ部140(Sicke;bead,crimp)を備えている。すじ部140は、すじ内側凹部142及びすじ外側凸部144を有する。すじ内側凹部142は、バネ内側部116に配置されている。すじ外側凸部144は、バネ外側部に配置されている。すじ部140は、高さ方向hでは上縁134の領域に位置する。すじ部140は上縁134の延長線上に配置されている。切り欠きが、上縁134とすじ部140との間に形成されている。すじ部140と高さ方向hに両隣になっているスライドバネ112の領域は、幅方向bでは同一平面上に揃っている。
【0047】
スライドバネ112は鋼鉄で作られている。スライドバネ112は、幅方向bに関してすじ部140の領域内で、減少した材料厚みを有する。第2スライドバネ114は、鏡像的に対称な配置で対応すじ部146を備えている。
【0048】
スライドバネ112,114は、最初はスライド本体110と別体に作成され、後に、例えば、かしめ又は締め付けによって、スライド本体110に固着して取り付ける。スライドバネ112,114は、幅方向bに見て横並びに配置されている。スライドバネ112,114で、符号142に示すすじ内側凹部が、互いに対向している。スライドバネ112,114で、符号144に示すすじ外側凸部が、幅方向bに外向きに延びている。スライドバネ112,114は、符号126に示すガイド部によって、長手方向lにスライドチャンネル108内をガイドされる。
【0049】
スライド本体110は、針本体102上にガイドするための下縁148を有する。スライドバネ112,114のすじ部140,146は、下縁148の領域内で高さ方向hの側に配置されている。スライドバネ112,114のすじ部140,146は、下縁148の延長線上に配列されている。
【0050】
図1に示す第2端位置では、フック末端はスライドバネ112,114の間に介在し、介在するフック末端の幅に対応した介在領域で、スライドバネ112,114を幅方向bに弾性的に相互に離すように押す。スライドバネ112,114は、符号124に示す接続部でスライド本体110に挟まれ、符号126に示すガイド部でスライドチャンネル108内に収容されるので、スライドバネ112,114は、変化のある幅で、異なる領域で幅方向bに押して離される。第1端位置では、フック末端はスライドバネ112,114の間には介在せず、スライドバネ112,114は、条件によって付勢を行い、断面で見て互いに接触する。
【0051】
スライド針100を使用する編み機は、符号100で示すスライド針を受け入れる複数の針チャンネルを備えている。各針チャンネルは、長手方向lに延び、二つの横壁、底部、開口した頂部を有する。横壁は幅方向bに針チャンネルを画定し、底部は、高さ方向hに針チャンネルを画定する。スライド針100が針チャンネル内に配置されると、すじ部140,146は、開口した頂部よりも下で、高さ方向hに針チャンネル内に配列される。スライド針100は、長手方向lに針チャンネル内で変位可能である。スライド針100、及びスライド針100を収容した針チャンネルは、ガイド構造をなしている。フック開口が開いたときに、スライド針100は、遊びをもって幅方向bに針チャンネル内でガイドされる。フック開口が閉じられたときに、スライド針100は、幅方向bに針チャンネル内ですじ部140,146とともにとどまる。
【0052】
図3に、スライドバネ112,114のようなスライドバネのすじ部200を示す。スライドバネ112,114は、図1,2に示すように同じ横断面の輪郭を有する。すじ内側凹部202及びすじ外側凸部204は、同じ横断面の輪郭になっている。すじ内側凹部202とすじ外側凸部204とは、それぞれ円弧状の横断面を有する。すじ内側凹部202は、より小さな半径の円弧状の横断面を有する。すじ外側凸部204は、より大きな半径の円弧状の横断面を有する。さらに言えば、この補足として、特に図1,2とその関連する説明が参照される。
【0053】
図4に、符号300で示す積層したスライドバネ、即ち図1,2に係るスライドバネ112,114などのスライドバネを示す。スライドバネ300は、同様な横断面の輪郭線を有するすじ部302、例えば図3に係るすじ部200などのすじ部を備えている。同様な横断面の輪郭線を有するすじ部302により、スライドバネ300は、確実にかつ安定して積層することが可能になる。
【0054】
スライドバネ300は、積層体304を構成する。積層体304は第1スライドバネだけ、又は第2スライドバネだけから形成される。スライドバネ300は、その外周縁を互いに揃えるように重ねられる。また、そのすじ部を順に収容するように重ねられる。この場合、各すじ内側凹部は、すじ外側凸部を受ける形になる。
【0055】
幅方向bに減少した材料厚みによって、符号306で示す300本のチャンネルが、積層したスライドバネの間に形成される。各チャンネルは、横断面で見て鎌の形状になっている。スライドバネ300は、製造のための工程、例えば、洗浄、移送、及び/又は収納の工程を行うために積み重ねられる。スライドバネ300は、手作業で、又は自動操作で、積み重ねられる。
【符号の説明】
【0056】
100 スライド針
102 針本体
104 スライダー
106 フック
108 スライドチャンネル
110 スライド本体
112 第1スライドバネ
114 第2スライドバネ
116 バネ内側部
118 バネ外側部
120 フック方向先端
122 閉鎖部
124 接続部
126 ガイド部
128 先端の中腹部
130 編み目支持部
132 支持用の中腹部
134 上縁
136 切り欠き
138 傾斜部
140 すじ部
142 すじ内側凹部
144 すじ外側凸部
146 対応すじ部
148 下縁
200 すじ部
202 すじ内側凹部
204 すじ外側凸部
300 スライドバネ
302 すじ部
304 積層体
306 チャンネル
図1
図2
図3
図4