【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、軽鎖(すなわち、カッパ(κ)鎖および/またはラムダ(λ)鎖)免疫グロブリン可変ドメインには由来するが、全長重鎖免疫グロブリン可変ドメインには由来しない免疫グロブリン可変ドメインを含む結合タンパク質が記載される。遺伝子改変マウスを含めた、結合タンパク質を作製するための方法および組成物もまた提供される。
【0006】
一態様では、ヒトλまたはκ軽鎖可変ドメインおよびヒトまたはマウス重鎖定常領域配列を含むタンパク質を含めた、1または複数のκ軽鎖および/またはλ軽鎖可変領域免疫グロブリン配列ならびに免疫グロブリン重鎖定常領域配列を含むタンパク質を作製するための核酸構築物、細胞、胚、マウス、および方法が提供される。
【0007】
一態様では、マウス内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座における1または複数の免疫グロブリン重鎖可変領域(V
H)遺伝子セグメント、重鎖多様性(D
H)遺伝子セグメント、および重鎖接合(J
H)遺伝子セグメントの、1または複数の軽鎖可変領域(V
L)遺伝子セグメントおよび1または複数の軽鎖接合領域(J
L)遺伝子セグメントによる置き換えを含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含むマウスが提供される。
【0008】
一態様では、内因性重鎖遺伝子座(VL
H遺伝子座)においてV
L遺伝子セグメント配列を形成するための、全てのまたは実質的に全てのV
H遺伝子セグメント、D
H遺伝子セグメント、およびJ
H遺伝子セグメントの、1または複数のV
L遺伝子セグメントおよび1または複数のJ
L遺伝子セグメントによる置き換えであって、上記VL
H遺伝子座が、マウス内因性C
H遺伝子と組み換えられて、V
L遺伝子セグメント、J
L遺伝子セグメント、およびマウス内因性C
H遺伝子に由来する再構成された遺伝子を形成することが可能である置き換えを含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含むマウスが提供される。
【0009】
一実施形態では、上記V
Lセグメントが、ヒトV
Lセグメントである。一実施形態では、上記J
Lセグメントが、ヒトJ
Lセグメントである。特定の実施形態では、上記V
LセグメントおよびJ
Lセグメントが、ヒトV
LセグメントおよびヒトJ
Lセグメントである。
【0010】
一実施形態では、全てのまたは実質的に全てのV
H遺伝子セグメント、D
H遺伝子セグメント、およびJ
H遺伝子セグメントを、少なくとも6つのヒトVκ遺伝子セグメントおよび少なくとも1つのJκ遺伝子セグメントで置き換える。一実施形態では、全てのまたは実質的に全てのV
H遺伝子セグメント、D
H遺伝子セグメント、およびJ
H遺伝子セグメントを、少なくとも16のヒトVκ遺伝子セグメント(ヒトVκ)および少なくとも1つのJκ遺伝子セグメントで置き換える。一実施形態では、全てのまたは実質的に全てのV
H遺伝子セグメント、D
H遺伝子セグメント、およびJ
H遺伝子セグメントを、少なくとも30のヒトVκ遺伝子セグメントおよび少なくとも1つのJκ遺伝子セグメントで置き換える。一実施形態では、全てのまたは実質的に全てのV
H遺伝子セグメント、D
H遺伝子セグメント、およびJ
H遺伝子セグメントを、少なくとも40のヒトVκ遺伝子セグメントおよび少なくとも1つのJκ遺伝子セグメントで置き換える。一実施形態では、少なくとも1つのJκ遺伝子セグメントが、2つ、3つ、4つ、または5つのヒトJκ遺伝子セグメントを含む。
【0011】
一実施形態では、上記V
Lセグメントが、ヒトVκセグメントである。一実施形態では、上記ヒトVκセグメントが、4−1、5−2、7−3、2−4、1−5、および1−6を含む。一実施形態では、上記κV
Lが、3−7、1−8、1−9、2−10、3−11、1−12、1−13、2−14、3−15、1−16を含む。一実施形態では、上記ヒトVκセグメントが、1−17、2−18、2−19、3−20、6−21、1−22、1−23、2−24、3−25、2−26、1−27、2−28、2−29、および2−30を含む。一実施形態では、上記ヒトVκセグメントが、3−31、1−32、1−33、3−34、1−35、2−36、1−37、2−38、1−39、および2−40を含む。
【0012】
一実施形態では、上記V
Lセグメントが、ヒトVκセグメントであり、4−1、5−2、7−3、2−4、1−5、1−6、3−7、1−8、1−9、2−10、3−11、1−12、1−13、2−14、3−15、および1−16を含む。一実施形態では、上記Vκセグメントが、1−17、2−18、2−19、3−20、6−21、1−22、1−23、2−24、3−25、2−26、1−27、2−28、2−29、および2−30をさらに含む。一実施形態では、上記Vκセグメントが、3−31、1−32、1−33、3−34、1−35、2−36、1−37、2−38、1−39、および2−40をさらに含む。
【0013】
一実施形態では、上記V
Lセグメントが、ヒトVλセグメントであり、ヒトλ軽鎖遺伝子座のクラスターAの断片を含む。特定の実施形態では、上記ヒトλ軽鎖遺伝子座のクラスターAの断片が、hVλ3−27〜hVλ3−1に及ぶ。
【0014】
一実施形態では、上記V
Lセグメントが、上記ヒトλ軽鎖遺伝子座のクラスターBの断片を含む。特定の実施形態では、上記ヒトλ軽鎖遺伝子座のクラスターBの断片が、hVλ5−52〜hVλ1−40に及ぶ。
【0015】
一実施形態では、上記V
Lセグメントが、クラスターAのゲノム断片およびクラスターBのゲノム断片を含むヒトλ軽鎖可変領域配列を含む。一実施形態では、上記ヒトλ軽鎖可変領域配列が、クラスターAの少なくとも1つの遺伝子セグメントおよびクラスターBの少なくとも1つの遺伝子セグメントを含む。
【0016】
一実施形態では、上記V
Lセグメントが、クラスターBの少なくとも1つの遺伝子セグメントおよびクラスターCの少なくとも1つの遺伝子セグメントを含む。
【0017】
一実施形態では、上記V
Lセグメントが、hVλ3−1、hVλ4−3、hVλ2−8、hVλ3−9、hVλ3−10、hVλ2−11、およびhVλ3−12を含む。特定の実施形態では、上記V
Lセグメントが、Vλ3−12〜Vλ3−1にわたる上記ヒトλ軽鎖遺伝子座の隣接配列を含む。一実施形態では、上記隣接配列が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12のhVλを含む。特定の実施形態では、上記hVλが、3−1、4−3、2−8、3−9、3−10、2−11、および3−12を包含する。特定の実施形態では、上記hVλが、Vλ3−12〜Vλ3−1にわたるヒトλ遺伝子座の隣接配列を含む。
【0018】
一実施形態では、上記hVλが、13〜28以上のhVλを含む。特定の実施形態では、上記hVλが、2−14、3−16、2−18、3−19、3−21、3−22、2−23、3−25、および3−27を包含する。特定の実施形態では、上記hVλが、Vλ3−27〜Vλ3−1にわたる上記ヒトλ遺伝子座の隣接配列を含む。
【0019】
一実施形態では、上記V
Lセグメントが、29〜40のhVλを含む。特定の実施形態では、上記V
Lセグメントが、Vλ3−29〜Vλ3−1にわたる上記ヒトλ遺伝子座の隣接配列、およびVλ5−52〜Vλ1−40にわたる上記ヒトλ遺伝子座の隣接配列を含む。特定の実施形態では、上記遺伝子改変マウスにおけるhVλ1−40〜hVλ3−29における全てのまたは実質的に全ての配列が、天然では(例えば、ヒト集団では)上記hVλ1−40遺伝子セグメントの下流(3’側非翻訳部分の下流)に見出される約959bpのヒトλ配列、制限酵素認識部位(例えば、PI−SceI部位)、これに後続する、天然では上記hVλ3−29遺伝子セグメントの上流に見出される約3,431bpのヒトλ配列から本質的になる。
【0020】
一実施形態では、上記Jκが、ヒトJκであり、Jκ1、Jκ2、Jκ3、Jκ4、Jκ5、およびこれらの組合せからなる群から選択される。特定の実施形態では、上記Jκが、Jκ1〜Jκ5を含む。
【0021】
一実施形態では、上記V
Lセグメントが、ヒトVλセグメントであり、上記Jκ遺伝子セグメントが、12マーのスペーサーを有するRSSであって、上記Jκ遺伝子セグメントの上流端で近接する(is juxtaposed)RSSを含む。一実施形態では、上記V
L遺伝子セグメントが、ヒトVλであり、上記VL
H遺伝子座が、2つ以上のJκ遺伝子セグメントを含み、各Jκ遺伝子セグメントが、12マーのスペーサーを有するRSSであって、各Jκ遺伝子セグメントの上流端で近接するRSSを含む。
【0022】
特定の実施形態では、上記V
Lセグメントが、上記ヒトκ遺伝子座Vκ4−1〜Vκ2−40にわたる隣接するヒトκ遺伝子セグメントを含み、上記J
Lセグメントが、上記ヒトκ遺伝子座Jκ1〜Jκ5にわたる隣接するヒトκ遺伝子セグメントを含む。
【0023】
上記V
LセグメントがVλセグメントであり、上記V
LセグメントとJセグメントとの間にD
Hセグメントが存在しない一実施形態では、上記V
Lセグメントが、下流で23マーのRSSと隣接し(すなわち、その下流側で近接し)、存在する場合のJκセグメントまたは存在する場合のJλセグメントが、上流で12マーのRSSと隣接する(すなわち、その上流側で近接する)。
【0024】
V遺伝子セグメントがVκ遺伝子セグメントであり、上記V遺伝子セグメントとJ遺伝子セグメントとの間にD
H遺伝子セグメントが存在しない一実施形態では、上記Vκ遺伝子セグメントの各々が、下流側で、12マーのRSSで近接し、存在する場合のJκセグメントまたは存在する場合のJλセグメントの各々が、上流側で、23マーのRSSと近接する。
【0025】
一実施形態では、上記マウスが、V
L遺伝子セグメント、J
L遺伝子セグメント、およびマウス内因性C
H遺伝子に由来する再構成された遺伝子を含む。一実施形態では、上記再構成された遺伝子が、体細胞変異している。一実施形態では、上記再構成された遺伝子が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のN付加(N addition)を含む。一実施形態では、上記V
Lセグメントおよび上記J
Lセグメントに由来する再構成された遺伝子において観察される上記N付加および/または上記体細胞変異が、内因性軽鎖遺伝子座において再構成される、再構成された軽鎖可変ドメイン(同じV
L遺伝子セグメントおよび同じJ
L遺伝子セグメントに由来する)において観察されるN付加および/または体細胞変異の数の1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、または少なくとも5倍である。一実施形態では、上記再構成された遺伝子が、対象の抗原に特異的に結合するB細胞であって、対象の抗原に低ナノモル濃度範囲以下のK
D(例えば、10ナノモル濃度以下のK
D)で結合するB細胞内に存在する。特定の実施形態では、上記V
Lセグメント、上記J
Lセグメント、またはこれらの両方、が、ヒト遺伝子セグメントである。特定の実施形態では、上記V
LセグメントおよびJ
Lセグメントが、ヒトκ遺伝子セグメントである。一実施形態では、上記マウスのC
H遺伝子が、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEから選択される。特定の実施形態では、上記マウスのIgGが、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG2C、およびIgG3から選択される。別の特定の実施形態では、上記マウスのIgGが、IgG1である。
【0026】
一実施形態では、上記マウスが、B細胞を含み、ここで、上記B細胞が、上記B細胞の染色体における遺伝子座から、4つのポリペプチド鎖から本質的になる結合タンパク質を作製し、ここで、上記4つのポリペプチド鎖が、(a)V
L領域と融合しているマウス内因性C
H領域を含む、2つの同一のポリペプチドと、(b)上記マウスC
H領域と融合しており、かつ一実施形態ではヒト(例えば、ヒトκ)V
L領域であるV
L領域に関してコグネイトであるV
L領域と融合しているマウス内因性C
L領域を含む、2つの同一のポリペプチドとから本質的になる。一実施形態では、上記マウス内因性C
H領域と融合しているV
L領域が、ヒトV
L領域である。特定の実施形態では、上記マウスC
H領域と融合しているヒトV
L領域が、Vκ領域である。特定の実施形態では、上記マウスC
H領域と融合しているヒトV
L領域が、再構成されたヒト生殖系列軽鎖ヌクレオチド配列によりコードされるV領域と同一である。特定の実施形態では、上記マウスC
H領域に融合しているヒトV
L領域が、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ以上の体細胞超変異を含む。一実施形態では、上記マウスC
H領域に融合しているヒトV
L領域が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のN付加を含む再構成された遺伝子によりコードされる。
【0027】
一実施形態では、上記マウスにより作製される全てのIgG分子のうちの少なくとも50%が、IgGアイソタイプのC
H領域およびV
L領域を含むポリペプチドを含み、ここで、上記ポリペプチドの長さが、535、530、525、520、または515アミノ酸以下の長さである。一実施形態では、全てのIgG分子のうちの少なくとも75%が、本段落で列挙されるポリペプチドを含む。一実施形態では、全てのIgG分子のうちの少なくとも80%、85%、90%、または95%が、本段落で列挙されるポリペプチドを含む。特定の実施形態では、上記マウスにより作製される全てのIgG分子が、本段落で列挙されるポリペプチドの長さ以下であるポリペプチドを含む。
【0028】
一実施形態では、上記マウスにより、再構成されたヒトV遺伝子セグメントおよびJ遺伝子セグメントによりコードされるが、D
H遺伝子セグメントによってはコードされない可変ドメインと融合しているマウス内因性C
H領域を含む第1のポリペプチド、ならびに再構成されたヒトV遺伝子セグメントおよびJ遺伝子セグメントによりコードされるが、D
H遺伝子セグメントによってはコードされないVドメインと融合しているマウス内因性C
L領域を含む第2のポリペプチドを含む結合タンパク質を作製するが、この結合タンパク質は、マイクロモル濃度、ナノモル濃度、またはピコモル濃度の範囲のアフィニティーで抗原に特異的に結合する。一実施形態では、上記Jセグメントが、ヒトJセグメント(例えば、ヒトκ遺伝子セグメント)である。一実施形態では、ヒトVセグメントが、ヒトVκセグメントである。一実施形態では、上記マウス内因性C
H領域と融合している可変ドメインが、上記マウス内因性C
L領域と融合している可変領域より多数の体細胞超変異を含み、特定の実施形態では、上記マウス内因性C
H領域と融合している可変領域が、上記マウス内因性C
L領域に融合しているV領域の約1.5、2、3、4、または5倍以上の体細胞超変異を含み、特定の実施形態では、上記マウスC
H領域と融合しているV領域が、上記マウスC
L領域と融合しているV領域より少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15以上の体細胞超変異を含む。一実施形態では、上記マウスC
H領域と融合しているV領域が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のN付加を含む再構成された遺伝子によりコードされる。
【0029】
一実施形態では、上記マウスが、免疫グロブリン重鎖定常領域配列と融合している第1の軽鎖可変ドメイン(V
L1)、および免疫グロブリン軽鎖定常領域と融合している第2の軽鎖可変ドメイン(V
L2)を含む結合タンパク質を発現し、ここで、V
L1が、V
L2に存在する体細胞超変異の数の約1.5〜約5倍以上の数の体細胞超変異を含む。一実施形態では、V
L1における体細胞超変異の数が、V
L2における数の約2〜約4倍である。一実施形態では、V
L1における体細胞超変異の数が、V
L2における数の約2〜約3倍である。一実施形態では、V
L1が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のN付加を含む配列によりコードされる。
【0030】
一態様では、以下のポリペプチド:各々がV
L遺伝子セグメントおよびJ
L遺伝子セグメントから本質的になる遺伝子セグメントに由来する可変ドメインと融合しているC
H領域から本質的になる第1の2つの同一のポリペプチド、ならびに各々がV
LセグメントおよびJ
Lセグメントから本質的になる遺伝子セグメントに由来する可変ドメインと融合しているC
L領域から本質的になる第2の2つの同一のポリペプチドから本質的になる免疫グロブリンを発現する遺伝子改変マウスが提供される。
【0031】
特定の実施形態では、上記C
H領域を有する2つの同一のポリペプチドが、マウスC
H領域を有する。
【0032】
特定の実施形態では、上記C
L領域を有する2つの同一のポリペプチドが、マウスC
L領域を有する。
【0033】
一実施形態では、上記C
L領域と融合している可変ドメインが、上記C
H領域に融合している可変ドメインとコグネイトの可変ドメインである。
【0034】
一実施形態では、上記マウス内因性C
H領域と融合している可変ドメインが、上記マウス内因性C
L領域と融合している可変ドメインより多数の体細胞超変異を含み、特定の実施形態では、上記マウス内因性C
H領域と融合している可変ドメインが、上記マウス内因性C
L領域と融合している可変ドメインの約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、または5倍以上の体細胞超変異を含む。一実施形態では、上記マウス内因性C
L領域と融合している可変ドメインが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のN付加を含む遺伝子によりコードされる。
【0035】
一実施形態では、上記Vセグメントおよび上記Jセグメントのうちの1または複数が、ヒト遺伝子セグメントである。特定の実施形態では、上記Vセグメントおよび上記Jセグメントの両方が、ヒトκ遺伝子セグメントである。別の特定の実施形態では、上記Vセグメントおよび上記Jセグメントの両方が、ヒトλ遺伝子セグメントである。一実施形態では、上記Vセグメントおよび上記Jセグメントが、ヒトκ遺伝子セグメントおよびヒトλ遺伝子セグメントから個別に選択される。特定の実施形態では、上記Vセグメントが、Vκセグメントであり、上記Jセグメントが、Jλセグメントである。別の特定の実施形態では、上記Vセグメントが、Vλセグメントであり、上記Jセグメントが、Jκセグメントである。
【0036】
一実施形態では、上記C
L領域と融合している可変ドメインおよび上記C
H領域と融合している可変ドメインのうちの1または複数が、ヒト可変ドメインである。特定の実施形態では、上記ヒト可変ドメインが、ヒトVκドメインである。別の特定の実施形態では、上記ヒト可変ドメインが、Vλドメインである。一実施形態では、上記ヒトドメインが、ヒトVκドメインおよびヒトVλドメインから個別に選択される。特定の実施形態では、上記C
L領域と融合しているヒト可変ドメインが、ヒトVλドメインであり、上記C
H領域と融合しているヒト可変ドメインが、ヒトVκドメインである。別の実施形態では、上記C
L領域と融合しているヒト可変ドメインが、ヒトVκドメインであり、上記C
H領域と融合しているヒト可変ドメインが、ヒトVλドメインである。
【0037】
一実施形態では、上記第1の2つの同一のポリペプチドのうちのV
L遺伝子セグメントが、ヒトVλセグメントおよびヒトVκセグメントから選択される。一実施形態では、上記第2の2つの同一のポリペプチドのうちのV
Lセグメントが、ヒトVλセグメントおよびヒトVκセグメントから選択される。特定の実施形態では、上記第1の2つの同一のポリペプチドのうちのV
Lセグメントが、ヒトVκセグメントであり、上記第2の2つの同一のポリペプチドのうちのV
Lセグメントが、ヒトVκセグメントおよびヒトVλセグメントから選択される。特定の実施形態では、上記第1の2つの同一のポリペプチドのうちのV
Lセグメントが、ヒトVλセグメントであり、上記第2の2つの同一のポリペプチドのうちのV
Lセグメントが、ヒトVλセグメントおよびヒトVκセグメントから選択される。特定の実施形態では、上記第1の2つの同一のポリペプチドのうちのヒトV
Lセグメントが、ヒトVκセグメントであり、上記第2の2つの同一のポリペプチドのうちのヒトV
Lセグメントが、ヒトVκセグメントである。
【0038】
一実施形態では、上記マウスのIgGが、抗原に対する反応により作製された結合タンパク質を含み、ここで、上記結合タンパク質が、可変ドメインおよびC
H領域から本質的になるポリペプチドを含み、ここで、上記可変ドメインが、再構成されたV
Lセグメントおよび再構成されたJセグメントから本質的になるヌクレオチド配列によりコードされ、ここで、上記結合タンパク質が、上記抗原のエピトープに、マイクロモル濃度、ナノモル濃度、またはピコモル濃度の範囲のK
Dで特異的に結合する。
【0039】
一態様では、抗原に対する反応によりマウスにより作製されるIgGのうちの全てのまたは実質的に全てが、可変ドメインを含む重鎖を含み、ここで、上記可変ドメインが、本質的にV遺伝子セグメントおよびJ遺伝子セグメントからなる遺伝子セグメントに由来する、再構成された遺伝子によりコードされるマウスが提供される。一実施形態では、上記再構成された遺伝子が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のN付加を含む。
【0040】
一実施形態では、上記Vセグメントが、軽鎖のVセグメントである。一実施形態では、上記軽鎖が、κ軽鎖およびλ軽鎖から選択される。特定の実施形態では、上記軽鎖がκ軽鎖である。特定の実施形態では、上記Vセグメントが、ヒトVセグメントである。特定の実施形態では、上記Vセグメントが、ヒトVκセグメントであり、Jセグメントが、ヒトJκセグメントである。
【0041】
一実施形態では、上記Jセグメントが軽鎖のJセグメントである。一実施形態では、上記軽鎖が、κ軽鎖およびλ軽鎖から選択される。特定の実施形態では、上記軽鎖がκ軽鎖である。特定の実施形態では、上記JセグメントがヒトJセグメントである。別の実施形態では、上記Jセグメントが重鎖のJセグメント(すなわち、J
Hセグメント)である。特定の実施形態では、上記重鎖がマウス起源のものである。別の特定の実施形態では、上記重鎖がヒト起源のものである。
【0042】
一実施形態では、VセグメントおよびJセグメントだけから作製される重鎖の可変ドメインが、体細胞変異している可変ドメインである。
【0043】
一実施形態では、VセグメントおよびJセグメントだけから作製される重鎖の可変ドメインがマウスC
H領域に融合している。
【0044】
特定の実施形態では、抗原に対する反応により上記マウスにより作製されるIgGのうちの全てまたは実質的に全てが、1つ以下のヒトVセグメントおよび1つ以下のヒトJセグメントに由来する可変ドメインを含み、上記可変ドメインが、マウスIgG定常領域に融合しており、上記IgGが、マウスC
L領域と融合しているヒトV
Lドメインを含む軽鎖をさらに含む。特定の実施形態では、上記マウスC
L領域と融合しているV
Lドメインが、ヒトVκセグメントおよびヒトJκセグメントに由来する。特定の実施形態では、上記マウスC
L領域と融合しているV
Lドメインが、ヒトVλセグメントおよびヒトJλセグメントに由来する。
【0045】
一態様では、C
H領域を含むポリペプチドにおける第1のCDR3およびC
L領域を含むポリペプチドにおける第2のCDR3を含むIgGを作製するマウスであって、ここで、上記第1のCDR3および上記第2のCDR3の両方が、各々個別に2つ以下の遺伝子セグメントに由来し、ここで、上記2つの遺伝子セグメントが、本質的にV
L遺伝子セグメントおよびJ
L遺伝子セグメントからなるマウスが提供される。一実施形態では、上記C
H領域を含むポリペプチドにおけるCDR3が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のN付加を含むCDR3のヌクレオチド配列に由来する配列を含む。
【0046】
一実施形態では、上記V
Lセグメントおよび上記J
Lセグメントが、ヒト遺伝子セグメントである。一実施形態では、上記V
Lセグメントおよび上記J
Lセグメントが、κ遺伝子セグメントである。一実施形態では、上記V
Lセグメントおよび上記J
Lセグメントが、λ遺伝子セグメントである。
【0047】
一態様では、C
H領域を含む第1のポリペプチドにおける第1のCDR3およびC
L領域を含む第2のポリペプチドにおける第2のCDR3を含むIgGを作製するマウスであって、ここで、上記第1のCDR3および上記第2のCDR3の両方が、各々アミノ酸の配列を含み、ここで、上記アミノ酸のうちの75%超がV遺伝子セグメントに由来するマウスが提供される。一実施形態では、上記C
H領域を含むポリペプチドにおけるCDR3が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のN付加を含むCDR3のヌクレオチド配列に由来する配列を含む。
【0048】
一実施形態では、上記第1のCDR3のアミノ酸のうちの80%超、90%超、または95%超、ならびに上記第2のCDR3のアミノ酸のうちの80%超、90%超、または95%超が、軽鎖Vセグメントに由来する。
【0049】
一実施形態では、上記第1のCDR3のうちの2つ以下のアミノ酸が、軽鎖Vセグメント以外の遺伝子セグメントに由来する。一実施形態では、上記第2のCDR3のうちの2つ以下のアミノ酸が、軽鎖Vセグメント以外の遺伝子セグメントに由来する。特定の実施形態では、上記第1のCDR3のうちの2つ以下のアミノ酸および上記第2のCDR3のうちの2つ以下のアミノ酸が、軽鎖Vセグメント以外の遺伝子セグメントに由来する。一実施形態では、上記IgGのCDR3が、D遺伝子セグメントに由来するアミノ酸配列を含まない。一実施形態では、第1のポリペプチドのCDR3が、Dセグメントに由来する配列を含まない。
【0050】
一実施形態では、上記Vセグメントが、ヒトV遺伝子セグメントである。特定の実施形態では、上記Vセグメントが、ヒトVκ遺伝子セグメントである。
【0051】
一実施形態では、上記第1および/または上記第2のCDR3が、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの体細胞超変異を有する。一実施形態では、上記第1のCDR3 が1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のN付加を含む核酸配列によりコードされる。
【0052】
一実施形態では、上記第1のCDR3が、ヒト軽鎖V遺伝子セグメントおよびヒト軽鎖J遺伝子セグメントに由来するアミノ酸から本質的になり、上記第2のCDR3が、ヒト軽鎖V遺伝子セグメントおよびヒト軽鎖J遺伝子セグメントに由来するアミノ酸から本質的になる。一実施形態では、上記第1のCDR3が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のN付加を含む核酸配列に由来する。一実施形態では、上記第1のCDR3が、2つ以下の遺伝子セグメントに由来し、ここで、上記2つ以下の遺伝子セグメントが、ヒトVκ遺伝子セグメントおよびヒトJκ遺伝子セグメントであり、かつ、上記第2のCDR3が、2つ以下の遺伝子セグメントに由来し、ここで、上記2つ以下の遺伝子セグメントが、ヒトJκセグメント、ヒトJλセグメント、およびヒトJ
Hセグメントから選択されるヒトVκ遺伝子セグメントおよびJ遺伝子セグメントである。一実施形態では、上記第1のCDR3が、2つ以下の遺伝子セグメントに由来し、ここで、上記2つ以下の遺伝子セグメントが、ヒトJκセグメント、ヒトJλセグメント、およびヒトJ
Hセグメントから選択されるヒトVλセグメントおよびJセグメントである。
【0053】
一態様では、D
H遺伝子セグメントに由来するアミノ酸配列を含有しないIgGであって、ここで、マウスC
L領域と融合している第1のV
Lドメインを有する第1のポリペプチド、およびマウスC
H領域と融合している第2のV
Lドメインを有する第2のポリペプチドを含み、ここで、上記第1のV
Lドメインおよび上記第2のV
Lドメインが同一ではないIgGを作製するマウスが提供される。一実施形態では、上記第1および第2のV
Lドメインが、異なるVセグメントに由来する。別の実施形態では、上記第1および第2のV
Lドメインが、異なるJセグメントに由来する。一実施形態では、上記第1および第2のV
Lドメインが、同一のVセグメントおよびJセグメントに由来し、ここで、上記第2のV
Lドメインが、上記第1のV
Lドメインと比較してより多数の体細胞超変異を含む。
【0054】
一実施形態では、上記第1および上記第2のV
Lドメインが、ヒトV
LドメインおよびマウスV
Lドメインから個別に選択される。一実施形態では、上記第1および第2のV
Lドメインが、VκドメインおよびVλドメインから個別に選択される。特定の実施形態では、上記第1のV
Lドメインが、VκドメインおよびVλドメインから選択され、上記第2のV
Lドメインが、Vκドメインである。別の特定の実施形態では、上記Vκドメインが、ヒトVκドメインである。
【0055】
一態様では、上記マウスにより作製されるIgGのうちの全てまたは実質的に全てが、マウスC
Lドメインと融合している第1のヒトV
Lドメインを有する軽鎖、およびマウスC
Hドメインと融合している第2のヒトV
Lドメインを有する重鎖から本質的になるマウスが提供される。
【0056】
一実施形態では、上記マウスC
Hドメインと融合させるヒトV
Lドメインが、ヒトVκドメインである。
【0057】
一実施形態では、上記第1および上記第2のヒトV
Lドメインが同一ではない。
【0058】
一態様では、マウスであって、ここで、上記マウスにより作製される免疫グロブリンGのうちの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または約100%が、(a)免疫グロブリンV
Lドメインおよび免疫グロブリンC
L領域から本質的になる第1のポリペプチドと、(b)535アミノ酸以下の長さの第2のポリペプチドであって、ここで、C
H領域およびD
H遺伝子セグメントに由来する配列を欠くVドメインから本質的になる上記第2のポリペプチドとの二量体から本質的になる、マウスが提供される。
【0059】
一実施形態では、上記第2のポリペプチドが、約435〜535アミノ酸の長さである。特定の実施形態では、上記第2のポリペプチドが、約435〜530アミノ酸の長さである。特定の実施形態では、上記第2のポリペプチドが、約435〜525アミノ酸の長さである。特定の実施形態では、上記第2のポリペプチドが、約435〜520 アミノ酸の長さである。特定の実施形態では、上記第2のポリペプチドが、約435〜515アミノ酸の長さである。
【0060】
一実施形態では、上記マウスにより作製されるIgGのうちの約90%以上において、上記第2のポリペプチドが、約535アミノ酸以下の長さである。
【0061】
一実施形態では、上記マウスにより作製されるIgGのうちの約50%以上において、上記第2のポリペプチドが、約535アミノ酸以下の長さである。一実施形態では、マウスにより作製される免疫グロブリンGのうちの約50%以上において、第2のポリペプチドが、約530、525、520、515、510、505、500、495、490、485、480、475、470、465、460、455、または450アミノ酸以下の長さである。一実施形態では、上記マウスにより作製されるIgGのうちの約60%、70%、80%、90%、または95%以上が、上記列挙される長さのIgGである。特定の実施形態では、上記マウスにより作製されるIgGのうちの全てまたは実質的に全てが、上記列挙される長さのIgGである。
【0062】
一実施形態では、上記第2のポリペプチドのVドメインが、V
Lドメインである。特定の実施形態では、上記第2のポリペプチドのVドメインが、VκドメインおよびVλドメインから選択される。特定の実施形態では、上記第2のポリペプチドのVドメインが、ヒトVκドメインまたはヒトVλドメインである。
【0063】
一態様では、マウスの生殖系列におけるヌクレオチド配列から、軽鎖可変配列(例えば、V配列および/またはJ配列)、D
H配列、および重鎖定常領域を含むポリペプチドを発現するマウスが提供される。
【0064】
一実施形態では、上記マウスが、全てのまたは実質的に全ての機能的なマウス内因性重鎖遺伝子座可変遺伝子セグメントの、マウス内因性重鎖遺伝子座における、複数のヒト遺伝子セグメントによる置き換えを含む、上記マウス内因性重鎖遺伝子座に由来するポリペプチドを発現する。
【0065】
一実施形態では、上記ポリペプチドが、Vλ遺伝子セグメントまたはVκ遺伝子セグメントに由来するV
L配列を含み、上記ポリペプチドが、D
H遺伝子セグメントに由来するCDR3を含み、上記ポリペプチドが、J
H遺伝子セグメントまたはJλ遺伝子セグメントもしくはJκ遺伝子セグメントに由来する配列を含む。
【0066】
一実施形態では、上記マウスは、マウス内因性重鎖免疫グロブリン遺伝子座を含み、その遺伝子座は、全ての機能的なV
H遺伝子セグメントの、1または複数のヒト軽鎖Vλ遺伝子セグメントによる置き換えを含み、ここで、1または複数のヒトVλセグメントの各々が、下流側で、23マーのスペースを置いた(23−mer spaced)組換えシグナル配列(RSS)を近接させており、ここで、上記Vλセグメントが、12マーのスペースを置いたRSSを上流および下流で近接させているヒトD
HセグメントまたはマウスD
Hセグメントに作動可能に連結されており、上記D
H遺伝子セグメントが、そのD
H遺伝子セグメントを近接させている上記12マーのスペースを置いたRSSで組み換える(recombining)のに適する、23マーのスペースを置いたRSSと上流で近接するJセグメントと作動可能に連結され、ここで、上記Vセグメント、D
Hセグメント、およびJセグメントが、重鎖定常領域をコードする核酸配列に作動可能に連結される。
【0067】
一実施形態では、上記マウスは、マウス内因性重鎖免疫グロブリン遺伝子座を含み、その遺伝子座は、全ての機能的なV
H遺伝子セグメントの、12マーのスペースを置いた組換えシグナル配列(RSS)と各々が下流側で近接する1または複数のヒトVκ遺伝子セグメントによる置き換えを含み、ここで、上記Vセグメントが、23マーのスペースを置いたRSSと上流および下流の両方で近接するヒトD
HセグメントまたはマウスD
Hセグメントに作動可能に連結され、上記D
Hセグメントが、上記D
Hセグメントを近接させる上記23マーのスペースを置いたRSSで組み換えるのに適する、12マーのスペースを置いたRSSと上流側で近接するJセグメントと作動可能に連結され、ここで、上記V遺伝子セグメント、D
H遺伝子セグメント、および遺伝子セグメントが、重鎖定常領域をコードする核酸配列に作動可能に連結される。
【0068】
一実施形態では、上記重鎖定常領域が、マウス内因性重鎖定常領域である。一実施形態では、その核酸配列が、C
H1配列、ヒンジ配列、C
H2配列、C
H3配列、およびこれらの組合せから選択される配列をコードする。一実施形態では、C
H1配列、ヒンジ配列、C
H2配列、およびC
H3配列のうちの1または複数が、ヒト配列である。
【0069】
一実施形態では、上記マウスは、マウス内因性重鎖免疫グロブリン遺伝子座を含み、その遺伝子座は、全ての機能的なV
H遺伝子セグメントの、23マーのスペースを置いたRSSと各々が下流で近接する複数のヒトVλ遺伝子セグメントまたはヒトVκ遺伝子セグメント、12マーのスペースを置いたRSSによって上流および下流の両方で近接させられた複数のヒトD
Hセグメント、23マーのスペースを置いたRSSと上流および下流の両方で近接する複数のヒトJセグメント(J
HセグメントまたはJλセグメントもしくはJκセグメント)による置き換えを含み、ここで、上記遺伝子座が、C
H1配列、ヒンジ配列、C
H2配列、C
H3配列、およびこれらの組合せから選択されるマウス内因性定常領域配列を含む。特定の実施形態では、上記マウスが、全てのまたは実質的に全ての機能的なヒトVλセグメントまたはヒトVκセグメント、全てのまたは実質的に全ての機能的なヒトD
Hセグメント、および全てのまたは実質的に全てのJ
HセグメントまたはJλセグメントもしくはJκセグメントを含む。
【0070】
一実施形態では、上記マウスが、(a)マウス配列を含む重鎖定常配列に連結されたヒト軽鎖配列を含むポリペプチドと、(b)ヒト軽鎖定常配列またはマウス軽鎖定常配列に連結されたヒト軽鎖可変領域を含むポリペプチドとを含む抗原結合タンパク質を発現する。特定の実施形態では、上記軽鎖配列が、ヒト軽鎖配列であり、抗体をFcおよびFabへと切断することが可能であるプロテアーゼに曝露されると、少なくとも4つの軽鎖CDRを含む完全ヒトFabが形成され、ここで、少なくとも4つの上記軽鎖CDRが、λ配列、κ配列、およびこれらの組合せから選択される。一実施形態では、上記Fabが、少なくとも5つの軽鎖CDRを含む。一実施形態では、上記Fabが、6つの軽鎖CDRを含む。一実施形態では、上記Fabの少なくとも1つのCDRが、VλセグメントまたはVκセグメントに由来する配列を含み、少なくとも1つのCDRが、Dセグメントに由来する配列をさらに含む。一実施形態では、少なくとも1つの上記CDRがCDR3であり、上記CDRがヒトVκセグメント、ヒトDセグメント、およびヒトJκセグメントに由来する。
【0071】
一実施形態では、上記ポリペプチドが、ヒトVλ遺伝子セグメントまたはヒトVκ遺伝子セグメント、ヒトD
H遺伝子セグメント、およびヒトJ
H遺伝子セグメントまたはヒトJλ遺伝子セグメントもしくはヒトJκ遺伝子セグメントに由来する可変領域を含む。特定の実施形態では、上記重鎖定常配列が、ヒトC
H1配列およびマウスC
H2配列およびマウスC
H3配列に由来する。
【0072】
一態様では、ヒトJ遺伝子セグメントおよび重鎖定常領域配列に作動可能に連結した、再構成されていないヒトVκ遺伝子セグメントまたはヒトVλ遺伝子セグメントをマウスの生殖系列に含むマウスであって、ここで、重鎖定常領域と融合しているヒトVκドメインを含むV
L結合タンパク質を発現し、移行B細胞(CD19
+IgM
hiIgD
int)、および成熟B細胞(CD19
+IgM
intIgD
hi)を含めたCD19
+B細胞においてV
L結合タンパク質を発現する脾性B細胞集団を呈示する、マウスが提供される。
【0073】
一態様では、ヒトJ遺伝子セグメントおよび重鎖定常領域配列に作動可能に連結した、再構成されていないヒトVκ遺伝子セグメントまたはヒトVλ遺伝子セグメントをマウスの生殖系列に含むマウスであって、ここで、B細胞において重鎖定常領域と融合している軽鎖可変ドメインを含む免疫グロブリンを発現し、マウスの骨髄中のリンパ球集団が、野生型マウスのプロ/プレB細胞集団(骨髄中のリンパ球)とほぼ同じ数であるプロ/プレB細胞集団を呈示する、マウスが提供される。
【0074】
一実施形態では、上記マウスが、少なくとも6つの再構成されていないhVκ遺伝子セグメントおよび1または複数の再構成されていないhJκ遺伝子セグメントを含み、上記マウスが、V
L結合タンパク質を発現する、リンパ球ゲーティングされ、かつIgM
+の脾細胞集団を含み、これらの集団が、野生型マウスの、リンパ球ゲーティングされ、かつIgM
+の脾細胞集団の少なくとも75%の大きさである。
【0075】
一実施形態では、上記マウスが、全体の約90%を占めるIgD
+細胞およびIgM
+細胞による、成熟B細胞ゲーティングされる(CD19
+)脾細胞集団を呈示し、一実施形態では、改変マウスのIgD
+細胞およびIgM
+細胞による、成熟B細胞ゲーティングされる(CD19
+)脾細胞集団が、成熟B細胞ゲーティングされる(CD19
+)脾細胞集団である、野生型マウスのIgD
+細胞およびIgM
+細胞の全体とほぼ同じ(例えば、10%以内、または5%以内)である。
【0076】
一態様では、マウスの生殖系列における改変された内因性重鎖遺伝子座に由来する免疫グロブリンタンパク質を発現するマウスであって、ここで、上記改変された内因性重鎖遺伝子座が、機能的なマウス重鎖V遺伝子セグメントを欠き、かつ上記遺伝子座が、再構成されていない軽鎖V遺伝子セグメントおよび再構成されていないJ遺伝子セグメントを含み、ここで、上記再構成されていない軽鎖V遺伝子セグメントおよび再構成されていないJ遺伝子セグメントが、重鎖定常領域配列と作動可能に連結され、ここで、上記免疫グロブリンタンパク質が、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドから本質的になり、ここで、上記第1のポリペプチドが、免疫グロブリン軽鎖配列および免疫グロブリン重鎖定常配列を含み、かつ、上記第2のポリペプチドが、免疫グロブリン軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常領域を含む、マウスが提供される。
【0077】
一態様では、免疫グロブリンタンパク質を発現するマウスであって、ここで、上記免疫グロブリンタンパク質が、重鎖免疫グロブリン可変ドメインを欠き、上記免疫グロブリンタンパク質が、軽鎖遺伝子に由来する第1の可変ドメイン、および軽鎖遺伝子に由来する第2の可変ドメインを含み、ここで、上記第1の可変ドメインおよび上記第2の可変ドメインが、互いに関してコグネイトであり、ここで、上記第1および上記第2の軽鎖可変ドメインが、同一ではなく、かつ、ここで、上記第1および上記第2の軽鎖可変ドメインが会合し、会合すると対象の抗原に特異的に結合する、マウスが提供される。
【0078】
一態様では、マウスの生殖系列における再構成されていない遺伝子セグメントから、再構成されていないヒト遺伝子セグメントから本質的になる遺伝子セグメントに完全に由来する可変領域を含む免疫グロブリンタンパク質を作製するマウスであって、ここで、上記免疫グロブリンタンパク質が、免疫グロブリン軽鎖定常配列およびC
H1配列、ヒンジ配列、C
H2配列、C
H3配列、およびこれらの組合せからなる群から選択される免疫グロブリン重鎖定常配列を含む、マウスが提供される。
【0079】
一態様では、マウスの生殖系列における再構成されていない遺伝子セグメントから、可変領域を含む、免疫グロブリンタンパク質を作製するマウスであって、ここで、全ての可変領域の全てのCDR3が、もっぱら軽鎖V遺伝子セグメントおよび軽鎖J遺伝子セグメント(必要に応じて、1または複数の体細胞超変異(例えば、1または複数のN付加)のある)から生成する、マウスが提供される。
【0080】
一態様では、再構成されていないヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域遺伝子セグメントに由来する、体細胞変異している免疫グロブリンタンパク質をマウスの生殖系列に作製するマウスであって、ここで上記免疫グロブリンタンパク質が、D遺伝子セグメントに由来する配列を含むCDRを欠き、ここで上記免疫グロブリンタンパク質が、軽鎖定常領域と融合している軽鎖可変ドメインにおける第1のCDR3を含み、重鎖定常領域と融合している軽鎖可変ドメインにおける第2のCDR3を含み、かつ、ここで上記第2のCDR3が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のN付加を含む、再構成された軽鎖可変領域配列に由来する、マウスが提供される。
【0081】
一態様では、本明細書で記載されるマウスであって、λ遺伝子座、κ遺伝子座、およびこれらの組合せから選択される、機能的にサイレンシングされた軽鎖遺伝子座を含むマウスが提供される。一実施形態では、λ遺伝子座および/またはκ遺伝子座が非機能性となるように、上記マウスが、全体的または部分的に、λ遺伝子座および/またはκ遺伝子座の欠失を含む。
【0082】
一態様では、本明細書で記載される改変された免疫グロブリン遺伝子座を含む細胞を含むマウス胚が提供される。一実施形態では、上記マウスが、キメラであり、その胚の細胞のうちの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%が、本明細書で記載される、改変された免疫グロブリン遺伝子座を含む。一実施形態では、上記胚の細胞のうちの少なくとも96%、97%、98%、99%、または99.8%が、本明細書で記載される、改変された免疫グロブリン遺伝子座を含む。一実施形態では、上記胚が、宿主細胞およびドナーES細胞に由来する細胞を含み、ここで、上記ドナーES細胞に由来する細胞が、本明細書で記載される改変された免疫グロブリン遺伝子座を含む。一実施形態では、上記胚が、2細胞期、4細胞期、8細胞期、16細胞期、32細胞期、または64細胞期の宿主胚、または胚盤胞であり、本明細書で記載される改変された免疫グロブリン遺伝子座を含むドナーES細胞をさらに含む。
【0083】
一態様では、本明細書で記載される核酸構築物を用いて作製されたマウスまたは細胞が提供される。
【0084】
一態様では、本明細書で記載される細胞を用いて作製されたマウスが提供される。一実施形態では、上記細胞が、マウスES細胞である。
【0085】
一態様では、第2のヒト軽鎖免疫グロブリン可変配列(V
L2)とコグネイトである、第1のヒト軽鎖免疫グロブリン可変配列(V
L1)をコードする核酸配列を作製するための、本明細書で記載されるマウスの使用であって、ここで、ヒト免疫グロブリン軽鎖定常領域(ポリペプチド1)と融合している上記V
L1が、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域(ポリペプチド2)と融合しているV
L2とともに、ポリペプチド1/ポリペプチド2の二量体として発現してV
L1−V
L2抗体を形成する。
【0086】
一態様では、ヒト免疫グロブリン重鎖配列と融合しているヒト免疫グロブリン軽鎖可変配列をコードする核酸配列を作製するための、本明細書で記載されるマウスの使用であって、ここで上記核酸配列がヒトV
L−C
Hポリペプチドをコードし、ここで上記ヒトV
L−C
Hポリペプチドが二量体として発現し、かつ、ここで上記二量体が免疫グロブリン軽鎖の非存在下において(例えば、ヒトλ軽鎖またはヒトκ軽鎖の非存在下において)発現する。一実施形態では、そのV
L−C
H二量体が、λ軽鎖の非存在下において、かつ、κ軽鎖の非存在下において、対象の抗原に特異的に結合する。
【0087】
一態様では、免疫グロブリン可変ドメインの全部または一部をコードする核酸配列を作製するための、本明細書で記載されるマウスの使用。一実施形態では、上記免疫グロブリン可変ドメインが、ヒトVλドメインまたはヒトVκドメインである。
【0088】
一態様では、完全ヒトFab(ヒト軽鎖定常領域と融合している第1のヒトV
L、およびヒト重鎖定常領域配列と融合している第2のヒトV
Lを含む)または完全ヒトF(ab)
2を作製するための、本明細書で記載されるマウスの使用が提供される。
【0089】
一態様では、不死化細胞系を作製するための、本明細書で記載されるマウスの使用が提供される。一実施形態では、上記不死化細胞系が、マウス定常領域核酸配列を含む核酸配列に作動可能に連結したヒトVλドメインまたはヒトVκドメインをコードする核酸配列を含む。
【0090】
一態様では、ハイブリドーマまたはクァドローマを作製するための、本明細書で記載されるマウスの使用が提供される。
【0091】
一態様では、本明細書で記載される改変された免疫グロブリン遺伝子座を含む細胞が提供される。一実施形態では、上記細胞が、全能性細胞、多能性細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、およびES細胞から選択される。特定の実施形態では、上記細胞が、マウス細胞、例えば、マウスES細胞である。一実施形態では、上記細胞が、上記改変された免疫グロブリン遺伝子座についてホモ接合性である。
【0092】
一態様では、ヒト重鎖定常領域配列に融合した、体細胞変異させた、第1のヒトVκ配列または第1のヒトVλ配列を含む第1のポリペプチドをコードする核酸配列を含む細胞が提供される。
【0093】
一実施形態では、上記細胞は、ヒト軽鎖定常領域配列と融合させた、体細胞変異させた、第2のヒトVκ配列または第2のヒトVλ配列を含む第2のポリペプチド鎖をさらに含む。
【0094】
一実施形態では、上記第1のポリペプチドの上記ヒトVκ配列または上記ヒトVλ配列が、上記第2のポリペプチドの上記ヒトVκ配列または上記ヒトVλ配列とコグネイトである。
【0095】
一実施形態では、上記第1のポリペプチドの上記Vκまたは上記Vλおよび上記第2のポリペプチドの上記ヒトVκまたは上記ヒトVλが、会合すると、対象の抗原に特異的に結合する。特定の実施形態では、上記第1のポリペプチドが、ヒトVκから本質的になる可変ドメインを含み、上記第2のポリペプチドが、上記第1のポリペプチドのヒトVκとコグネイトであるヒトVκからなる可変ドメインを含み、上記ヒト定常領域配列が、IgG配列である。
【0096】
一実施形態では、上記細胞が、CHO細胞、COS細胞、293細胞、HeLa細胞、およびウイルス核酸配列を発現するヒト網膜細胞(例えば、PERC.6(商標)細胞)から選択される。
【0097】
一態様では、本明細書で記載される遺伝子改変を含む染色体を含むマウス体細胞が提供される。
【0098】
一態様では、本明細書で記載される遺伝子改変を含む核酸配列を含むマウス胚細胞が提供される。
【0099】
一態様では、本明細書で記載されるマウスに由来する多能性細胞、人工多能性細胞、または全能性細胞が提供される。特定の実施形態では、上記細胞が、マウス胚性幹(ES)細胞である。
【0100】
一態様では、マウス、細胞、または治療用タンパク質(例えば、抗体または他の抗原結合タンパク質)を製造するための、本明細書で記載される細胞の使用が提供される。
【0101】
一態様では、23マーのスペースを置いたRSSと上流および下流で近接するヒトD
H遺伝子セグメントを含む核酸構築物が提供される。特定の実施形態では、上記核酸構築物が、ヒトVκ遺伝子セグメントを含むヒトゲノム配列に相同な相同性アームを含む。一実施形態では、ターゲティング構築物は、23マーのスペースを置いたRSSと上流および下流で各々が近接する、全てのまたは実質的に全てのヒトD
H遺伝子セグメントを含む。
【0102】
一態様では、12マーのスペースを置いたRSSと上流で近接するヒトJκ遺伝子セグメントを含む核酸構築物が提供される。特定の実施形態では、上記核酸構築物が、23マーのスペースを置いたRSSと上流および下流で近接するヒトゲノムD
H遺伝子配列に対する相同性を含有する第1の相同性アームを含む。一実施形態では、上記核酸構築物が、ヒトゲノムJ遺伝子配列に対する相同性を含有するか、またはマウス重鎖定常領域配列に対する相同性を含有するか、またはマウス定常領域重鎖配列の上流におけるJ−C遺伝子間配列に対する相同性を含有する第2の相同性アームを含む。
【0103】
一態様では、23マーのスペースを置いたRSSと下流で近接するヒトVλセグメント、12マーのスペースを置いたRSSと上流および下流で近接するヒトD
Hセグメント、ならびに23マーのスペースを置いたRSSと上流で近接するJκセグメント、23マーのスペースを置いたRSSと上流で近接するヒトJλセグメント、および、23マーのスペースを置いたRSSと上流で近接するヒトJ
Hセグメントから選択されるヒトJセグメントを含む核酸構築物が提供される。一実施形態では、上記構築物が、マウス定常領域配列、マウスJ−C遺伝子間配列、および/またはヒトVλ配列に対する相同性を含有する相同性アームを含む。
【0104】
一実施形態では、上記核酸構築物が、上記ヒトλ軽鎖遺伝子座のクラスターAの断片を含むヒトλ軽鎖可変領域配列を含む。特定の実施形態では、上記ヒトλ軽鎖遺伝子座のクラスターAの断片が、hVλ3−27〜hVλ3−1に及ぶ。
【0105】
一実施形態では、上記核酸構築物が、上記ヒトλ軽鎖遺伝子座のクラスターBの断片を含むヒトλ軽鎖可変領域配列を含む。特定の実施形態では、上記ヒトλ軽鎖遺伝子座のクラスターBの断片が、hVλ5−52〜hVλ1−40に及ぶ。
【0106】
一実施形態では、核酸構築物が、クラスターAのゲノム断片およびクラスターBのゲノム断片を含むヒトλ軽鎖可変領域配列を含む。一実施形態では、上記ヒトλ軽鎖可変領域配列が、クラスターAの少なくとも1つの遺伝子セグメントおよびクラスターBの少なくとも1つの遺伝子セグメントを含む。
【0107】
一実施形態では、上記ヒトλ軽鎖可変領域配列が、クラスターBの少なくとも1つの遺伝子セグメントおよびクラスターCの少なくとも1つの遺伝子セグメントを含む。
【0108】
一態様では、通常天然ではJκセグメント、J
Hセグメント、Vλセグメント、またはV
Hセグメントのいずれかと隣接して見出される、23マーのスペースを置いたRSSと上流および下流で近接するヒトD
Hセグメントを含む核酸構築物が提供される。一実施形態では、上記核酸構築物が、ヒトV−J遺伝子間領域に相同であるか、またはヒトV遺伝子セグメントを含むヒトゲノム配列に相同な、第1の相同性アームを含む。一実施形態では、上記核酸構築物が、ヒト重鎖定常領域配列またはマウス重鎖定常領域配列に相同な、第2の相同性アームを含む。特定の実施形態では、上記ヒト重鎖定常領域配列またはマウス重鎖定常領域配列が、C
H1配列、ヒンジ配列、C
H2配列、C
H3配列、およびこれらの組合せから選択される。一実施形態では、上記核酸構築物が、上流で12マーのRSSと隣接するヒトJ遺伝子セグメントを含む。一実施形態では、上記核酸構築物が、12マーのRSSと上流で隣接するJ遺伝子セグメントに対する相同性を含有する第2の相同性アームを含む。一実施形態では、上記J遺伝子セグメントが、ヒトJκセグメント、ヒトJλセグメント、およびヒトJ
Hセグメントから選択される。
【0109】
一態様では、23マーのスペースを置いたRSSと上流および下流で近接するヒトD
Hセグメント、ならびに部位特異的リコンビナーゼの認識配列、例えば、Creタンパク質、Flpタンパク質、またはDreタンパク質などの部位特異的リコンビナーゼにより認識される配列を含む核酸構築物が提供される。
【0110】
一態様では、ヒトVλセグメントまたはヒトVκセグメント、12マーまたは23マーのスペースを置いたRSSと上流および下流で近接するD
Hセグメント、ならびに12マーまたは23マーのスペースを置いたRSSを伴うヒトJセグメントを含み、ここで上記12マーまたは23マーのスペースを置いたRSSが、上記ヒトJセグメントに対して(すなわち、転写方向に対して )すぐの5’側に位置する核酸構築物が提供される。一実施形態では、上記構築物が、23マーのスペースを置いたRSSと3’側で近接するヒトVλセグメント、12マーのスペースを置いたRSSと上流および下流で近接するヒトD
Hセグメント、ならびに、23マーのスペースを置いたRSSと5’側で近接するヒトJκセグメントを含む。一実施形態では、上記構築物が、12マーのスペースを置いたRSSと3’側で近接するヒトVκ、23マーのスペースを置いたRSSと上流および下流で近接するヒトD
Hセグメント、ならびに、12マーのスペースを置いたRSSと5’側で近接するヒトJλセグメントを含む。
【0111】
一態様では、ターゲティングベクターであって、(a)ヒトターゲティングアームおよびマウスターゲティングアームから個別に選択され、そのベクターを、内因性免疫グロブリンV領域遺伝子の遺伝子座または改変された免疫グロブリンV領域遺伝子の遺伝子座へと方向付ける、第1のターゲティングアームおよび第2のターゲティングアームと、(b)(i)hVκ4−1〜hVκ1−6およびJκ1、(ii)hVκ4−1〜hVκ1−6およびJκ1〜Jκ2、(iii)hVκ4−1〜hVκ1−6およびJκ1〜Jκ3、(iv)hVκ4−1〜hVκ1−6およびJκ1〜Jκ4、(v)hVκ4−1〜hVκ1−6およびJκ1〜Jκ5、(vi)hVκ3−7〜hVκ1−16、(vii)hVκ1−17〜hVκ2−30、(viii)hVκ3−31〜hVκ2−40、および(ix)これらの組合せからなる群から選択される、ヒトV
L遺伝子セグメントの隣接配列、またはヒトV
L遺伝子セグメントおよび少なくとも1つのヒトJκ遺伝子セグメントの隣接配列を含むターゲティングベクターが提供される。
【0112】
一実施形態では、上記ベクターを、内因性免疫グロブリン遺伝子座または改変された免疫グロブリン遺伝子座へと方向付けるターゲティングアームが、上記内因性免疫グロブリン遺伝子座または改変された免疫グロブリン遺伝子座における配列と同一であるか、または実質的に同一である。
【0113】
一態様では、マウス、細胞、または治療用タンパク質(例えば、抗体または他の抗原結合タンパク質)を製造するための、本明細書で記載される核酸構築物の使用が提供される。
【0114】
一態様では、ヒト用治療剤を製造するための細胞系を作製するための、本明細書で記載されるマウス由来の核酸配列の使用が提供される。一実施形態では、上記ヒト用治療剤が、ヒト重鎖定常配列と融合しているヒト軽鎖可変配列(例えば、ヒトVλセグメントまたはヒトVκセグメントに由来するヒト軽鎖可変配列)を含む結合タンパク質である。一実施形態では、上記ヒト用治療剤が、ヒトλ免疫グロブリン軽鎖またはヒトκ免疫グロブリン軽鎖である第1のポリペプチド、およびヒト重鎖定常配列と融合しているヒトVλ可変配列またはヒトVκ可変配列を含む第2のポリペプチドを含む。
【0115】
一態様では、ヒトC
Hドメインと融合させた、体細胞変異させた、ヒトV
Lドメインを含むポリペプチドをコードするDNA構築物でトランスフェクトした、哺乳動物細胞を含む発現系が提供される。
【0116】
一実施形態では、上記発現系が、ヒトC
Lドメインと融合している免疫グロブリンV
Lドメインをコードするヌクレオチド配列をさらに含み、ここで上記ヒトC
Lドメインと融合している上記V
Lドメインが、上記ヒトC
Hドメインと融合している上記V
Lドメインとコグネイト軽鎖である。
【0117】
一実施形態では、上記哺乳動物細胞が、CHO細胞、COS細胞、Vero細胞、293細胞、およびウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)から選択される。
【0118】
一態様では、結合タンパク質を作製する方法であって、V
Lドメインをコードするヌクレオチド配列を、本明細書で記載されるマウスの細胞に由来するC
H領域に融合しているV
L領域をコードする遺伝子から得るステップと、ヒトC
H領域をコードする遺伝子とともにインフレームで上記V
L領域配列をコードするヌクレオチド配列をクローニングしてヒト結合タンパク質配列を形成し、適切な細胞において上記ヒト結合タンパク質配列を発現させるステップとを含む方法が提供される。
【0119】
一実施形態では、上記マウスを対象の抗原で免疫し、上記C
H領域に融合しているV
L領域が、対象の抗原エピトープに特異的に結合する(例えば、マイクロモル濃度、ナノモル濃度、またはピコモル濃度の範囲にあるK
Dで特異的に結合する)。一実施形態では、上記C
H領域に融合しているV
L領域をコードするヌクレオチド配列を、上記マウスにおいて体細胞変異させる。
【0120】
一実施形態では、上記適切な細胞が、B細胞、ハイブリドーマ、クァドローマ、CHO細胞、COS細胞、293細胞、HeLa細胞、およびウイルス核酸配列を発現するヒト網膜細胞(例えば、PERC.6(商標)細胞)から選択される。
【0121】
一実施形態では、上記C
H領域が、ヒトIgGアイソタイプを含む。特定の実施形態では、上記ヒトIgGが、IgG1、IgG2、およびIgG4から選択される。別の特定の実施形態では、上記ヒトIgGが、IgG1である。別の特定の実施形態では、上記ヒトIgGが、IgG4である。別の特定の実施形態では、上記ヒトIgG4が、改変されたIgG4である。一実施形態では、上記改変されたIgG4が、ヒンジ領域における置換を含む。特定の実施形態では、改変されたIgG4が、野生型ヒトIgG4と比べて、KabatのEU番号付け指標により番号付けされたアミノ酸残基228における置換を含む。特定の実施形態では、アミノ酸残基228における置換が、KabatのEU番号付け指標により番号付けされたS228P置換である。
【0122】
一実施形態では、上記細胞が、上記C
H領域に融合しているV
Lドメインとコグネイトである軽鎖に由来するV
Lドメインをコードするヌクレオチド配列をさらに含み、その方法が、ヒトCκドメインまたはヒトCλドメインに融合している上記コグネイトV
Lドメインをコードするヌクレオチド配列を発現するステップをさらに含む。
【0123】
一態様では、遺伝子改変マウスを作製するための方法であって、マウス内因性重鎖遺伝子座において、1または複数のマウス免疫グロブリン重鎖遺伝子セグメントを、1または複数のヒト免疫グロブリン軽鎖遺伝子セグメントで置き換えるステップを含む方法が提供される。一実施形態では、上記置き換えが、全てのまたは実質的に全ての機能的なマウス免疫グロブリン重鎖セグメント(すなわち、V
Hセグメント、D
Hセグメント、およびJ
Hセグメント)の、1または複数の機能的なヒト軽鎖セグメント(すなわち、V
LセグメントおよびJ
Lセグメント)による置き換えである。一実施形態では、上記置き換えが、全てのまたは実質的に全ての機能的なマウス重鎖V
Hセグメント、D
Hセグメント、およびJ
Hセグメントの、全てのまたは実質的に全てのヒトVλセグメントまたはヒトVκセグメントおよび少なくとも1つのJλセグメントまたはJκセグメントによる置き換えである。特定の実施形態では、上記置き換えが、全てのまたは実質的に全ての機能的なヒトJλセグメントまたはヒトJκセグメントを包含する。
【0124】
一態様では、マウス重鎖定常領域と融合しているヒト免疫グロブリンVλセグメントもしくはVκセグメントおよび/またはヒト免疫グロブリンJλセグメントもしくはJκセグメントに由来する配列を含むポリペプチドを発現するマウスを作製するための方法であって、マウス内因性重鎖免疫グロブリン可変セグメント(V
Hセグメント、D
Hセグメント、およびJ
Hセグメント)を、少なくとも1つのヒトVλセグメントまたはヒトVκセグメントおよび少なくとも1つのヒトJλセグメントまたはヒトJκセグメントで置き換えるステップを含み、ここで、上記置き換えを、遺伝子改変されたマウス前駆細胞を形成するための多能性マウス細胞、人工多能性マウス細胞、または全能性マウス細胞における置き換えとし、上記遺伝子改変されたマウス前駆細胞を、マウス宿主に導入し、上記遺伝子改変された前駆細胞を含む上記マウス宿主を懐胎させて、上記遺伝子改変されたマウス前駆細胞に由来するゲノムを含むマウスを形成する方法が提供される。一実施形態では、上記宿主が胚である。特定の実施形態では、上記宿主が、マウスの前桑実胚(pre−morula)(例えば、8細胞期または4細胞期)、四倍体胚、胚性細胞塊、または胚盤胞から選択される。
【0125】
一態様では、本明細書で記載される遺伝子改変マウスを作製するための方法であって、核移植によって本明細書で記載される改変を含有する核酸を細胞へと導入するステップと、適切な条件下で上記細胞を維持して、本明細書で記載されるマウスへと発生させるステップ(例えば、上記細胞を培養するステップ、および代理母体において上記細胞を含む胚を懐胎させるステップを含めた)とを含む方法が提供される。
【0126】
一態様では、改変マウスを作製するための方法であって、マウスES細胞またはマウス多能性細胞もしくはマウス全能性細胞もしくはマウス人工多能性細胞を、本明細書で記載される通り、免疫グロブリン重鎖定常配列に作動可能に連結した、1または複数の、再構成されていない免疫グロブリン軽鎖可変遺伝子セグメントを包含するように改変するステップと、上記ES細胞を培養するステップと、その培養ES細胞を宿主胚へと導入してキメラ胚を形成するステップと、上記キメラ胚を適切な宿主マウスへと導入して改変マウスへと発生させるステップとを含む方法が提供される。一実施形態では、1または複数の、上記再構成されていない免疫グロブリン軽鎖可変領域遺伝子セグメントが、ヒトλ遺伝子セグメントまたはヒトκ遺伝子セグメントである。一実施形態では、1または複数の、再構成されていない免疫グロブリン軽鎖可変領域遺伝子セグメントが、ヒトVλセグメントまたはヒトVκセグメントおよび1または複数のJλセグメント、Jκセグメント、またはJ
Hセグメントを含む。一実施形態では、上記重鎖定常遺伝子配列が、C
H1配列、ヒンジ配列、C
H2配列、C
H3配列、およびこれらの組合せから選択されるヒト配列である。一実施形態では、1または複数の、上記再構成されていない免疫グロブリン軽鎖可変遺伝子セグメントにより、上記マウス内因性重鎖遺伝子座において、全てのまたは実質的に全ての機能的なマウス内因性重鎖可変領域遺伝子セグメントを置き換え、上記重鎖定常配列が、C
H1配列、ヒンジ配列、C
H2配列、およびC
H3配列を含むマウス配列である。
【0127】
一態様では、本明細書で記載されるマウスにおいて作製された免疫グロブリン可変領域(VR)(例えば、ヒトJ
L配列、またはヒトJ
H配列、またはヒトD
H配列およびヒトJ
H配列、またはヒトD
H配列およびヒトJ
L配列と融合しているヒトV
L配列を含む)が提供される。特定の実施形態では、上記免疫グロブリンVRが、VκセグメントおよびVλセグメントから選択される生殖系列のヒト遺伝子セグメントに由来し、ここで上記VRが上記マウスに由来する再構成された配列によりコードされ、ここで上記再構成された配列が体細胞超変異している。一実施形態では、上記再構成された配列が、1〜5カ所の体細胞超変異を含む。一実施形態では、上記再構成された配列が、少なくとも 6、7、8、9、または10カ所の体細胞超変異を含む。一実施形態では、上記再構成された配列が、10カ所を超える体細胞超変異を含む。一実施形態では、上記再構成された配列を、1または複数のヒト重鎖定常領域配列またはマウス重鎖定常領域配列(例えば、ヒトまたはマウスのC
H1配列、ヒンジ配列、C
H2配列、C
H3配列、およびこれらの組合せから選択される)と融合させる。
【0128】
一態様では、本明細書で記載されるマウスにおいて作製された結合タンパク質の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列が提供される。一実施形態では、上記VRを、1または複数のヒト重鎖定常領域配列またはマウス重鎖定常領域配列(例えば、ヒトまたはマウスのC
H1配列、ヒンジ配列、C
H2配列、C
H3配列、およびこれらの組合せから選択される)と融合させる。
【0129】
一態様では、本明細書で記載されるマウスに由来する核酸配列によりコードされる軽鎖可変ドメインが提供される。
【0130】
一態様では、本明細書で記載されるマウスにおいて作製されるか、または本明細書で記載されるマウスにおいて作製された配列に由来する、抗体またはその抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab)
2、scFv)が提供される。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
マウスであって、重鎖定常領域の核酸配列と作動可能に連結した、再構成されていない軽鎖Vセグメントおよび再構成されていないJセグメントを該マウスの生殖系列に含む、マウス。
(項目2)
上記再構成されていない軽鎖Vセグメントが、ヒトκセグメント、ヒトλセグメント、およびこれらの組合せから選択される、項目1に記載のマウス。
(項目3)
上記重鎖定常領域の核酸配列が、C
H1配列、ヒンジ配列、C
H2配列、C
H3配列、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目1に記載のマウス。
(項目4)
上記再構成されていない軽鎖Vセグメントおよび上記再構成されていないJセグメントにより、マウス内因性重鎖遺伝子座におけるマウス内因性重鎖Vセグメントおよびマウス内因性重鎖Jセグメントが置き換えられる、項目1に記載のマウス。
(項目5)
上記再構成されていない軽鎖Vセグメントにより、上記マウス内因性重鎖遺伝子座の、全てのまたは実質的に全ての機能的なマウス重鎖Vセグメントが置き換えられる、項目4に記載のマウス。
(項目6)
上記再構成されていないJセグメントが軽鎖Jセグメントを含み、該軽鎖Jセグメントにより、上記マウス内因性重鎖遺伝子座の、全てのまたは実質的に全ての機能的なマウス重鎖Jセグメントが置き換えられる、項目4に記載のマウス。
(項目7)
上記再構成されていない軽鎖Vセグメントと上記再構成されていない軽鎖Jセグメントとが作動可能に連結され、上記マウスが、上記再構成されていない軽鎖Vセグメントと上記再構成されていない軽鎖Jセグメントとの間で機能的なDセグメントを欠いている、項目6に記載のマウス。
(項目8)
上記再構成されていない軽鎖Vセグメントがヒトκセグメントであり、上記再構成されていない軽鎖Jセグメントがヒトκセグメントである、項目7に記載のマウス。
(項目9)
マウス定常領域遺伝子に作動可能に連結したヒトκ可変領域を含む再構成された免疫グロブリン遺伝子を上記マウスのゲノムに含むB細胞を含む、項目1に記載のマウス。
(項目10)
上記再構成された免疫グロブリン遺伝子が、マウス内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座に位置する、項目1に記載のマウス。
(項目11)
軽鎖定常遺伝子に作動可能に連結したヒト軽鎖Vセグメントおよびヒト軽鎖Jセグメントを上記マウスの生殖系列にさらに含む、項目1に記載のマウス。
(項目12)
上記軽鎖定常遺伝子が、マウス軽鎖定常遺伝子である、項目11に記載のマウス。
(項目13)
上記ヒト軽鎖Vセグメントが、ヒトκVセグメントである、項目12に記載のマウス。
(項目14)
上記マウス軽鎖定常遺伝子が、マウスκ軽鎖定常遺伝子である、項目13に記載のマウス。
(項目15)
マウスであって、免疫グロブリン重鎖定常領域と融合している第1のヒト軽鎖可変領域配列を含む第1のポリペプチドと、免疫グロブリン軽鎖定常領域と融合している第2のヒト軽鎖可変領域を含む第2のポリペプチドとを含む免疫グロブリンを該マウスの生殖系列から発現する、マウス。
(項目16)
上記第1のヒト軽鎖可変領域配列がヒトκ可変領域配列を含み、上記第2のヒト軽鎖可変領域がヒトκ可変領域およびヒトλ可変領域から選択される、項目15に記載のマウス。
(項目17)
上記免疫グロブリン重鎖定常領域が、ヒト重鎖定常領域およびマウス重鎖定常領域から選択される、項目16に記載のマウス。
(項目18)
上記免疫グロブリン軽鎖定常領域が、ヒト軽鎖定常領域およびマウス軽鎖定常領域から選択される、項目16に記載のマウス。
(項目19)
上記第1のポリペプチドを、機能的な内因性重鎖V遺伝子セグメントを欠く、改変されたマウス内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座から発現する、項目16に記載のマウス。
(項目20)
上記第2のポリペプチドを、機能的な内因性軽鎖V遺伝子セグメントを欠く、改変されたマウス内因性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座から発現する、項目19に記載のマウス。
(項目21)
マウスであって、該マウスの生殖系列におけるマウス内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座で、全てのまたは実質的に全ての機能的なマウス内因性重鎖可変遺伝子セグメントの、少なくとも6つ以上の再構成されていない軽鎖V遺伝子セグメントおよび1または複数の再構成されていないJ遺伝子セグメントによる置き換えを含み、ここで該再構成されていない軽鎖V遺伝子セグメントと該J遺伝子セグメントとが作動可能に連結されており、ここで該マウスは重鎖V遺伝子セグメントに由来する免疫グロブリン重鎖を発現することが不可能であり、ここで該マウスは野生型マウスの脾性B細胞集団(B220
+/IgM
+)の少なくとも約75%のサイズである脾性B細胞集団(B220
+/IgM
+)を含む、マウス。
(項目22)
ヒト軽鎖可変ドメインを含む結合タンパク質を生成させるための、上記項目のいずれかに記載のマウスの使用。
(項目23)
抗体を生成させるための、項目1から21のいずれかに記載のマウスの使用。
(項目24)
上記抗体がヒト抗体である、項目23に記載の使用。
(項目25)
二重特異性抗体を生成させるための、項目1から21のいずれか一項に記載のマウスの使用。
(項目26)
項目1から21のいずれか一項に記載のマウスに由来する細胞または組織。
(項目27)
ES細胞、B細胞、およびハイブリドーマから選択される、項目26に記載の細胞。