(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759414
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】調節可能な視野表示を有する車両用視界システム
(51)【国際特許分類】
B60R 1/00 20060101AFI20200910BHJP
B60R 1/04 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
B60R1/00 A
B60R1/04 G
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-95436(P2019-95436)
(22)【出願日】2019年5月21日
(62)【分割の表示】特願2017-534956(P2017-534956)の分割
【原出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2019-131190(P2019-131190A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2019年5月30日
(31)【優先権主張番号】62/097,315
(32)【優先日】2014年12月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/978,635
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500115826
【氏名又は名称】ジェンテックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ベーム ニール ジェイ
【審査官】
高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−201146(JP,A)
【文献】
特開2014−093768(JP,A)
【文献】
特表2002−538470(JP,A)
【文献】
特開2002−264726(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0277203(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に関連付けられたカメラにより捕捉された画像を表示するための車両用表示システムであって、前記カメラは視野を有しており当該カメラの全体視野内の1シーンを表す画像データを出力し、
前記表示システムが、
後方視野アセンブリであって、
前記車両に取付けるように構成された取付構造、
前記取付構造に枢動自在に装着された可動ヘッド、
前記カメラの前記視野の一部を表示するための、前記可動ヘッドの内部に位置付けられた表示装置、
前記可動ヘッドの動きを検知するための動きセンサ、
前記可動ヘッド内に配置されたミラー要素、及び、
前記表示装置を選択的に起動及び停止するために前記可動ヘッドに配置されたスイッチ、を備える後方視野アセンブリと、
前記カメラからの前記画像データを受信すると共に前記動きセンサにより検知された前記可動ヘッドの動きに応答して前記表示装置上に表示すべき前記視野の前記一部を選択するように前記スイッチ、前記動きセンサ及び前記表示装置と通信する処理回路と、
を備え、
前記表示装置は、前記ミラー要素の後方に位置しており、
前記表示装置での表示のために前記処理回路によって選択される前記視野の前記一部は、前記画像データによって表される前記カメラの前記視野よりも小さく、
前記表示装置に表示されるべき前記視野の前記一部の不所望の調整が前記スイッチの操作中の前記可動ヘッドの動きによって引き起こされることを妨げるように、前記スイッチが操作されている時、検出される前記可動ヘッドの如何なる動きもオーバーライドされる、車両用表示システム。
【請求項2】
前記処理回路は、前記可動ヘッド内に配置されている、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項3】
前記処理回路は、前記可動ヘッドが水平方向に動かされたときに前記視野の前記一部を水平方向に移動させる、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項4】
前記処理回路は、前記可動ヘッドが垂直方向に動かされたときに前記視野の前記一部を垂直方向に移動させる、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項5】
前記取付構造は、前記可動ヘッドに取付けるためのボールを含み、
前記動きセンサは、前記ボールの他の周囲領域とは異なる視覚的特徴を有している、前記取付構造の前記ボールのある領域上に設けられたターゲットと、
前記ボール上に光を投射するための光源と、
前記ボールから反射した光のレベルを検出するための光検出器と、を備え、
前記処理回路は、前記光検出器により検出された反射光のレベルが変化したときに前記可動ヘッドの動きを検知するように前記光検出器に連結されている、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項6】
前記ミラー要素は、半透過型であり、
前記表示装置からの表示画像は、前記表示装置が起動されている時、前記ミラー要素を介して視認可能であり、
前記表示装置は、停止されている時、隠されている、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項7】
前記処理回路は、前記可動ヘッド内に取付けられている、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項8】
車両のための視界システムであって、
カメラであって、視野内の画像を捕捉して当該カメラの全体視野内の1シーンを表す画像データを出力するためのカメラと、
前記カメラの前記視野の一部を表示するために前記車両に対して可動に取付けられた表示装置と、
前記表示装置の動きを検知するための動きセンサと、
前記表示装置を選択的に起動及び停止するために前記表示装置の近傍に配置されたスイッチと、
前記画像データを受信すると共に前記動きセンサにより検知された前記表示装置の動きに応答して前記表示装置上に表示すべき前記視野の前記一部を選択するように、前記スイッチ、前記動きセンサ、前記表示装置及び前記カメラと通信する処理回路と、
を備え、
前記表示装置での表示のために前記処理回路によって選択される前記視野の前記一部は、前記画像データによって表される前記カメラの前記視野よりも小さく、
前記表示装置に表示されるべき前記視野の前記一部の不所望の調整が前記スイッチの操作中の前記表示装置の動きによって引き起こされることを妨げるように、前記スイッチが操作されている時、検出される前記表示装置の如何なる動きもオーバーライドされる、視界システム。
【請求項9】
前記表示装置は、後方視野ミラーアセンブリのミラーハウジング内に配置されており、 前記動きセンサは、前記ミラーハウジングの動きを検知することにより前記表示装置の動きを検知する、請求項8に記載の視界システム。
【請求項10】
前記処理回路は、前記ミラーハウジング内に配置されている、請求項9に記載の視界システム。
【請求項11】
前記処理回路は、前記表示装置が水平方向に動かされたときに前記視野の前記一部を水平方向に移動させる、請求項8に記載の視界システム。
【請求項12】
前記処理回路は、前記表示装置が垂直方向に動かされたときに前記視野の前記一部を垂直方向に移動させる、請求項8に記載の視界システム。
【請求項13】
前記後方視野ミラーアセンブリは、車両に取付けるように構成された取付構造を備え、 前記取付構造は、前記ミラーハウジングに取付けるためのボールを含み、
前記動きセンサは、前記ボールの他の周囲領域とは異なる視覚的特徴を有している前記取付構造の前記ボールのある領域上に設けられたターゲットと、前記ボール上に光を投射するための光源と、前記ボールから反射した光のレベルを検出するための光検出器と、を備え、
前記処理回路は、前記光検出器により検出された反射光のレベルが変化したときに前記ミラーハウジングの動きを検知するように、前記光検出器に連結されている、請求項9に記載の視界システム。
【請求項14】
前記ミラーハウジング内に配置されたミラー要素を更に備え、
前記表示装置は、前記ミラー要素に隣接して位置付けられている、請求項9に記載の視界システム。
【請求項15】
前記カメラは、前記車両の後部に配置されたカメラモジュール内に取付けられている、請求項8に記載の視界システム。
【請求項16】
前記処理回路は、前記カメラモジュール内に配置されている、請求項15に記載の視界システム。
【請求項17】
前記動きセンサは、前記ミラーハウジング内に設けられた磁界センサを含む、請求項9に記載の視界システム。
【請求項18】
前記動きセンサは、前記ミラーハウジングの上部及び底部の位置に静電容量タッチセンサを含む、請求項9に記載の視界システム。
【請求項19】
車両に関連付けられたカメラにより捕捉された画像を表示するための車両用表示システムであって、前記カメラは視野を有しており当該カメラの全体視野内の1シーンを表す画像データを出力し、前記表示システムは、
ユーザ入力と、
前記カメラの前記視野の一部を表示するための表示装置と、
前記表示装置を選択的に起動及び停止するためのスイッチと、
前記カメラからの前記画像データを受信すると共に前記ユーザ入力に応答して前記表示装置上に表示すべき前記視野の前記一部を選択するように前記スイッチ、前記ユーザ入力及び前記表示装置と通信する処理回路と、
を備え、
前記表示装置での表示のために前記処理回路によって選択される前記視野の前記一部は、前記画像データによって表される前記カメラの前記視野よりも小さく、
前記表示装置に表示されるべき前記視野の前記一部の不所望の調整が前記スイッチの操作の結果として受容されるユーザ入力によって引き起こされることを妨げるように、前記スイッチが操作されている時、受容される如何なるユーザ入力もオーバーライドされる、車両用表示システム。
【請求項20】
前記処理回路は、前記ユーザ入力に応答して前記視野の前記一部を水平方向及び垂直方向の両方に移動させる、請求項19に記載の車両用表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に車両用視界システムに関し、より詳しくは、表示器が車両に対して可動である車両用視界システムに関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明の一態様によると、車両に関連付けられおり視野を有しているカメラにより捕捉された画像を表示するための車両用表示システムが提供される。その表示システムは、後方視野アセンブリと処理回路とを備える。後方視野アセンブリは、車両に取付けるように構成された取付構造と、取付構造に枢動自在に装着された可動ヘッドと、カメラの視野の一部を表示するために可動ヘッド内に配置された表示装置と、可動ヘッドの動きを検知するための動きセンサと、を備える。処理回路は、動きセンサにより検知された可動ヘッドの動きに応答して表示装置上に表示すべき視野の一部を選択するように動きセンサ及び表示装置と通信する。
【0003】
本発明の別の態様によると、視野内の画像を捕捉するためのカメラと、カメラの視野の一部を表示するために車両に対して可動に取付けられた表示装置と、表示装置の動きを検知するための動きセンサと、動きセンサにより検知された表示装置の動きに応答して表示装置上に表示すべき視野の一部を選択するように動きセンサ、表示装置及びカメラと通信する処理回路と、を備える車両用視界システムが提供される。
【0004】
本発明の別の態様によると、視野を有しているカメラであり車両に関連付けられたカメラにより捕捉された画像を表示するための車両用表示システムが提供される。その表示システムは、ユーザ入力と、カメラの視野の一部を表示するための表示装置と、ユーザ入力の動きに応答して表示装置に表示すべき視野の一部を選択するようにユーザ入力及び表示装置と通信する処理回路と、を備える。
【0005】
本発明のこれらの及び他の特徴、利点及び目的は、以下の明細書、特許請求の範囲及び添付の図面を参照することにより、当業者によって更に理解されかつ認識される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明は、詳細な説明及び添付の図面からより完全に理解される。
【0007】
【
図1】車両用視界システムのブロック形態の電気回路図である。
【0008】
【
図2A】1つの実施形態による、より詳細な車両用視界システムのブロック形態の電気回路図である。
【0009】
【
図2B】別の実施形態による、より詳細な車両用視界システムのブロック形態の電気回路図である。
【0010】
【
図3A】反転カメラ表示器を含む後方視野アセンブリの正面図である。
【0011】
【
図3B】全画面表示ミラーを含む後方視野アセンブリの正面図である。
【0012】
【
図4A】第1の位置に重畳された表示視野を有するカメラ視野のミラー画像の図である。
【0013】
【
図4B】第2の位置に重畳された表示視野を有するカメラ視野のミラー画像の図である。
【0014】
【
図4C】第3の位置に重畳された表示視野を有するカメラ視野のミラー画像の図である。
【0015】
【0016】
【
図6A】
図5の後方視野アセンブリに用いられる動きセンサの側方立面図である。
【0017】
【
図6B】
図6Aに示されている動きセンサの他の側方立面図である。
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
図示された本実施形態は、主として、車両用視界システム、特に車両用後方視野アセンブリに表示装置を有するもの、に関連する方法ステップないし装置部品の組合せに属している。したがって、装置部品ないし方法ステップは、本明細書の説明の利益を受ける当業者にとって容易に明らかとなる詳細によってこの開示を不明瞭にしないように、適切な場合には、本発明の実施形態の理解に関連する特定の詳細だけを示す図面中の従来のシンボルにより表されている。更に、明細書及び図面における類似の数字は、類似の要素を表している。
【0020】
本明細書における記述の目的のために、用語「上部の」、「下部の」、「右の」、「左の」、「後方の」、「前方の」、「垂直の」、「水平の」、およびそれについての派生語は、
図3A及び
図3Bにおいて関連付けられた発明に関するものとする。別様に述べられない限り、用語「前方の」は、後方視野アセンブリを見ることを意図される者により近い要素の表面を指すものであり、用語「後方の」は後方視野アセンブリを見ることを意図された者から離れた要素の表面を指すものである。しかしながら、それとは逆に明確に特定されたもの以外は、発明はさまざまな代わりの配向をとってもよい、と理解されるべきである。添付図面に図示され、かつ以下の明細書に記述された特定のデバイスおよびプロセスは、添付された特許請求の範囲において定義された発明概念の単なる例示的な実施形態であることも理解されるべきである。したがって、本明細書に開示された実施形態に関する特定の寸法および他の物理的特性は、特許請求の範囲が明示的に別段に述べない限り、限定するものと見なされるべきではない。
【0021】
用語「including(含む)」、「comprises(備える)」、「comprising(備える)」、または任意の他の変形は、要素のリストを備えるプロセス、方法、物品、または装置が、それらの要素のみを含むのではなく、このようなプロセス、方法、物品、または装置に明示的に列挙されもせず、固有でもない他の要素を含んでもよいように、非排他的包括にわたるように意図される。「comprises a...」によって始められる要素は、さらなる制約を受けずに、その要素を備えるプロセス、方法、物品、または装置において、追加の同一要素の存在を妨げない。
【0022】
本明細書に記載される実施形態は、車両用視界システムに関する。車両の運転者による視認のために車両内に配置された表示装置上に表示する画像を捕捉するカメラが車両に取付けられている車両用視覚システムが既知である。これらの車両用視覚システムのうちのいくつかにおいては、表示器が内部後方視野ミラーアセンブリ内に配置されている。そのような表示器は、表示器が作動しているときにその表示器により生成される画像をミラー要素を通して見ることができるように、ミラー要素より寸法が小さくかつミラー要素の後方に配置され得る。更に、ミラー要素は、作動していない時の表示器を隠すように半透過型であり得る。そのような視覚システムにおいては、表示器の機能は、車両が後退状態に置かれたときに作動されて車両が後退状態にある間あるいはその後の設定された時間の間に後方を向いたカメラからの画像を表示する反転カメラ表示器(RCD)のそれである。これらのRCDは、典型的には、ミラー要素のそれより小さい可視領域を有している。RCDの実施例は、米国特許第8,339,526号及び米国特許出願公開第US2009/0096937A1号に記載されているが、それらの開示の全体はこの参照によって本明細書に援用されるものとする。
【0023】
いくつかの車両用視覚システムは、実質的にミラー要素に対応する領域を有した表示器を有するように設計されている。これらのシステムにおいては、表示器は、運転者により操作されたときにはいつでも、後方を向いたカメラからの画像を表示するように構成される。これらの「全画面表示器ミラー」(FDM)の実施例は、米国特許第8,339,526号、米国特許出願公開第US2009/0096937A1号、同第US2015/0266427A1号、及び同第US2015/0277203A1号に記載されているが、それらの開示の全体はこの参照によって本明細書に援用されるものとする。
【0024】
車両用視覚システムにおいては、受容性の観点から、表示される画像を、従来のミラーからの鏡映を誰かが見たときの画像を真似たものとすることが所望され得る。他方、安全の観点から、従来のミラーで見るものより大きい視野を表示することが望ましいことがあり得る。この後者の目的は、車両内の物体によってその視野が妨げられないようにカメラが車両の外側に設けられるか、又は、リアウインドに隣接する車両のリヤピラーにカメラが取付けられる限りにおいて、可能性がある。これらの両立しない目的を調停するために、本明細書に記載される実施形態は、表示すべき視野を運転者が選択できるようにする。以下に説明するように、このことは、運転者がミラーハウジングを動かしたときに又は運転者がユーザ入力を操作したときに視野を変更することによって、達成できる。視野の変更は、従来のミラーハウジングを動かしたときに運転者が経験する視野の変化を真似るやり方で、実行できる。
【0025】
車両用視界システム10の一実施例が
図1に示されている。図示されているように、車両用視界システム10は、カメラシステム20及び表示システム30を備える。カメラシステム20及び表示システム30は、それらが車両の別個の位置に位置決めされかつ異なる車両部品あるいはアクセサリ内に配置され得る限りにおいて、2つの分離したシステムとして示されている。例えば、更に後述するように、表示システム30は、後方視野アセンブリ100(
図3A、
図3B及び
図5)内に配置できるのに対し、カメラシステム20は車両の後部及び/又は側部に配置できる。
【0026】
図2A及び
図2Bは、本明細書に記載される実施形態のうちの2つ異なる実装を示している。
図2Aに示されている実装において、カメラシステム20は、視野の画像を捕捉するカメラ25を含む。表示システム30は、動きセンサ32、表示ドライバ34、表示装置35及び処理回路40を含む。表示装置35は、カメラにより捕捉された視野の一部を表示するように構成されている。表示システム30は、表示装置35が車両に対して可動に取付けられるように、全体的にあるいは部分的に車両内に配置できる。動きセンサ32は、表示装置35の動きを検知するために設けられている。以下に詳述するように、処理回路40は、動きセンサ32により検知された表示装置35の動きに応答して表示装置35上に表示すべき視野の一部を選択すべく、動きセンサ32、(表示ドライバ34を介して)表示装置35、及びカメラ25と通信している。
【0027】
図2Bに示されている実装は、処理回路40がカメラシステム20の一部であり、したがってカメラ25と同じ車両部品あるいはアクセサリ内に設置できる点において、
図2Aに示されている実装と異なっている。この実装において、処理回路40は、車両のバスあるいは別個の接続を介して動きセンサ32から出力を受信し、動きセンサ32により検知された表示装置35の動きに応答して表示装置35に表示される視野の一部を選択する。処理回路40との通信を容易にし、かつ表示システム30が配置されている部品の任意の他の処理機能を実行するために、オプションのプロセッサ42を表示システム30に設けることができる。例えば、後方視野アセンブリに設けられる場合、プロセッサ42は、コンパスセンサから機首方位を計算し、電気光学ミラー要素の調光を制御し、又は、ミラーハウジング内のプロセッサによって一般的に実行される任意の他の機能を実行するように構成することができる。カメラシステム20あるいは表示システム30の一部として示されているが、処理回路40は、いずれのシステムからも切り離して配置できる。
【0028】
上述したように、表示システム30は、後方視野アセンブリ100内に取付けることができる。
図3Aに示すように、後方視野アセンブリ100は、ミラーハウジング120内に配置されると共に、表示領域が当該後方視野アセンブリの全体的な可視領域よりも小さいRCDとして機能するように位置決めされかつ寸法決めされた表示装置35を含むことができる。当該後方視野アセンブリ100は、後方視野アセンブリ100が後方視野ミラーアセンブリとして機能するように、表示装置35の前方にあるいは後方においてミラーハウジング120内に配置されたミラー要素140を含むことができる。ミラー要素140は、表示装置35からの表示画像を当該ミラー要素140を介して見ることができるように、表示装置35の前方に透過窓141(
図5)を含むことができる。ミラー要素140は、表示装置35が起動されないときに隠れるように、その可視領域の全体にわたり又は窓141の範囲において、半透過型とすることができる。
【0029】
図3Bに示すように、後方視野アセンブリ100は、ミラーハウジング120内に配置されると共に、表示領域が当該後方視野アセンブリの全体的な可視領域と実質的に同じ寸法であるFDMとして機能するように位置決めされかつ寸法決めされた、表示装置35を含むことができる。ミラー要素140は、表示装置35が起動されないときには隠れるように、その全体の可視領域にわたって半透過型とすることができる。後方視野アセンブリ100のRCD及びFDMの両方のバージョンについては、米国特許出願公開第US2009/0096937A1号、同第US2015/0266427A1号、及び同第US2015/0277203A1号に開示されているようなやり方で表示装置35を作動させあるいは停止させるために、ユーザ作動スイッチ200を設けることができる。これらの文献の開示の全体が、この参照によって、本明細書に援用される。スイッチ200のユーザ操作が表示装置35の動きを生じさせ得る程度において、スイッチ200の操作が検出された場合、動きセンサ32により検知される如何なる動きもオーバーライドすることができる。なぜなら、そのような操作は、表示装置35を停止させあるいは以前の非作動状態からそれを作動させるものであるからである。
【0030】
図4Aは、カメラ25の視界80の鏡像の(又は反転された)視野の一例を示しており、視界80の一部82aが破線で示されている。当該一部82aは、表示装置35上に表示される視野の一部を示すことを意図したものである。図示のように、カメラの視界80は表示される一部82aより大きい。上述したように、特に表示器がFDMとして構成されるときには、それは後方視野ミラーを真似ることが望ましいことがあり得る。運転者か視認することになる鏡像とは対照的に後方を向くカメラは後方の画像を直接捕捉するので、ミラーに映されたときに表示された画像がそのようなものとして現れるように、カメラにより捕捉された画像を表示装置35上に表示する前に反転させることが望ましいことがあり得る。更に、ミラー要素だけの後方視野ミラーにおいては、ミラーハウジング120の動きは運転者により視認される視野を変化させる。しかしながら、従来のFDMにおいては、カメラが車両に対して静止したままであるので、ミラーハウジングの動きは表示される視野の変化を生じさせない。したがって、処理回路40は、動きセンサ32により検知されるあらゆる動きに応答して表示装置35に表示すべきカメラの視界80の一部82aを選択するために設けられかつ構成されている。したがって、例えば、ミラーハウジング120の水平方向の回動に応答して、処理回路40は、以前に表示されていた一部82a(
図4A)を水平方向に移動させた視界80の一部82b(
図4B)を選択することにより、表示される視野を移動させる。表示される一部は、ミラー要素を同様に移動させた場合の視野の変化を模倣するように、段階的にかつ連続的に移動させることができる。同様に、ミラーハウジング120の垂直方向の傾動に応答して、処理回路40は、以前の一部82a(
図4A)を垂直方向に移動させた視界80の一部82c(
図4C)を選択することにより、表示される視野を移動させる。
【0031】
単一のカメラの単一の視野が前述されているが、視界80は、1つのシームレスなパノラマ画像を形成するために画像を一体に結合させた、複数のカメラからの複合的な視野とすることができる。したがって、ミラーハウジング120の動きは、異なるカメラを使用可能あるいは使用不可にし、さもなければ特定のカメラの視野から選択して、ミラーハウジング120の動きが、表示装置35の視野を極めて大きいパノラマ視野の全体にわたって効率的に撮影できる(pan)ようにする。ここで留意されるべきことは、表示される視野を運転者がズームインしあるいはズームアウトできるようにするために、ユーザ選択可能な機構をも設け得ることである。
【0032】
ここで更に理解されるべきことは、そうすることができる場合には、カメラ25を左右方向にかつ上下方向に首振りさせる(pan and tilt)ことにより、ミラーハウジング120の動きを介して表示される視野を変化させ得ることである。
【0033】
図5は、例示的な後方視野アセンブリ100の分解立体図を示している。図示のように、後方視野アセンブリ100は、ミラーハウジング120と、当該ミラーハウジング120を車両に対して垂直方向にかつ水平方向に傾動させることができるように当該ミラーハウジング120を車両に枢動自在に取付けるための取付構造445と、を含む。
図5において、参照数字240は、取付構造445の取付足450をそれに固定し得る車両のフロントガラスを表している。これに代えて、取付構造445をフロントガラスより上方の車両の屋根構造に固定し得ることも、当業者に理解されるであろう。いくつかの用途においては、当該単一ボール上での回動位置の測定値が車両内のミラーの位置を正確に示すような、単一ボールのマウント(取り付け)が好ましい。取付構造445は、取付ボール501と、当該ボール501と取付足450との間に延びる取付ステム502と、を更に含む。
【0034】
ミラー要素140は、ミラーハウジング120内に取付けられている。オプションのコンパスセンサ320をミラーハウジング120内に配置して処理回路40(又はプロセッサ42)に連結できる。コンパスセンサ320は、一般的に、X軸磁界センサ440、Y軸磁界センサ460、及びオプションのZ軸センサ(図示せず)を含む。センサ440、460並びに処理回路40は、プリント基板160に取付できる。
【0035】
表示装置35は、ミラーハウジング120内に固定的に取付けられると共に、プリント基板160の前面上に、あるいはミラー要素140の反射面に設けられた窓部141を介して光を投射するためにミラー要素の後面に、取付できる。表示装置35は、代わりに、ドーター基板(図示せず)に取付できる。更に、表示装置35は、ミラー要素140の前方に取付できる。
【0036】
ミラー要素140は電気光学ミラーとすることができる。電気光学ミラー要素140の透過率、ひいては反射率を自動的に変更するためのセンサ及び回路を、プリント基板160に取付けることもできる。そのような回路は、任意の従来方法の配線142を介してミラー140に連結できる。
【0037】
上述したように、後方視野アセンブリ100は、ミラーハウジング120、ひいては表示装置35が以前の位置から動かされたときを検出するための動きセンサ32を更に含む。次いで、動きセンサ32は、動き検出信号を生成して処理回路40に送信し、表示するカメラの視野の一部を選択するときに、ミラーハウジング120、ひいては表示装置35が傾動されたという事実を処理回路40が考慮できるようにしている。
【0038】
動きセンサ32は、ミラーハウジング120の動きを検知できる任意の構成を有することができる。ミラーハウジングの動きを検知するための動きセンサの実施例は、米国特許第6,140,933号に開示されているが、その開示の全体がこの参照によって本明細書に援用される。米国特許第6,140,933号に開示されているそのような1つの動きセンサの実施例が、
図6A〜
図6Cを参照して以下に説明される。
【0039】
図6A及び
図6Bには、単一ボールミラーマウント445のための枢動ボール501(
図5)、基板160の一部、及び、マウント上でのミラーハウジング120の位置を測定するために用いられる部品が示されている。ボール501は、取付ブラケット450(
図5)を介して、ステム502によって車両に装着されている。アセンブリは、側方から見られている。枢動ボール501には、ターゲット501aが設けられている。4つのLEDのうちの2つ506、507が
図6Aと
図6Bに示されており、かつ、センサ516の下方及び上方にそれぞれ配置されて、ミラーハウジング120の垂直方向の動きを検知するために用いられる。これらのLEDは、一時に1つが瞬間的に点灯することができ、かつ各LEDによるターゲット501aから個々に反射された光が、フォトダイオードとし得るセンサ516により測定される。
図6Cに示すように、動きセンサ32は、ミラーハウジング120の水平方向の動きを検知するために、センサ516の両側に横方向に配置されたLED508、509を更に含むことができる。
【0040】
ターゲット501aは、黒色あるいは暗色のボール501上に設けられた白点とすることができる。これとは反対に、ターゲットは、白色あるいは高い反射率のボール501上の黒点とすることもできる。基本的に、ターゲットは、ミラーボールとコントラストをなす任意の色とし得るが、その場合、「色」は用いられる光のスペクトルにおける反射率として定義される。一般に、測定されるものは、ターゲット領域501aと周囲領域との間のコントラストの差である。ターゲットは、ボール501上のペイント、別個のプラスチック部材、接着性のステッカー、又はボール501の表面組織の変化、とすることができる。加えて、照明された背景上の黒いターゲットとして見えるくぼみをボール501に成型してもよい。更に、ボール501は、金属から製造でき、かつ、ターゲット501aとしての役割をするように反射(鏡映)される一部を有することができる。
【0041】
動きセンサ32は、米国特許第6,928,366号に開示されているように、ミラーハウジング120に設けた3軸コンパスセンサのような磁界センサとして設けることもできる。当該特許の開示の全体はこの参照により本明細書に援用される。それを動かすために運転者がミラーハウジング120を握る可能性があるところである、ミラーハウジング120の上部及び底部の位置に、静電容量タッチセンサを設けることが望ましいこともあり得る。そのような静電容量タッチセンサは、ミラーハウジング120が運転者によって動かされたことを確認するために、処理回路40に付加的な情報をもたらす。
【0042】
車内の後方視野アセンブリと共に用いるために適合されたものとして実施形態が以上に説明されたが、表示装置は、車外の後方視野アセンブリにも同様に配置できる。この場合、ほとんどの車両は車外のミラー要素を物理的に移動させることを運転者に求めないので、動きセンサ32(
図1)は、ユーザ入力機構33の動きを検知するためのユーザ入力31の一部であってもよい。ユーザ入力機構33は、例えばミラー要素を右、左、上、下に動かすためのジョイスティックあるいは複数のスイッチといった、車外のミラーを動かすために用いられる任意の従来の機構の形態を取ることができる。したがって、動きセンサ32は、用いられるユーザ入力機構33の形態に応じて様々に構成され得て、従来のミラーポジションスイッチ用と同様に構成され得る。この構成と従来の構成との間の主要な相違は、処理回路40が、表示装置35上に表示すべき視野の一部を選択することによりユーザ入力31に反応する点にある。このことは、従来の車外ミラー要素を物理的に動かすために求められるモータパックの必要性を回避できる。
【0043】
そのような入力31の使用を車外ミラーアセンブリに関して説明してきたが、ユーザ入力31は、例えば上に説明した車内の後方視野アセンブリ100といった車内の場所に配置されるときに、表示装置35に表示される視野を調整するために設けることができる。更に、同じユーザ入力31は、その上の視野が調整されるべき表示器を選択するための選択スイッチを設けることにより、車内の後方視野アセンブリ100及び車外のアセンブリの両方のために用いることができる。
【0044】
以上の説明は、好ましい実施形態の説明にすぎないもの見なされる。当業者及び本発明をなすまたは用いる者であれば、本発明の変更を想起するであろう。したがって、図面に示されかつ上に説明された実施形態が単に例証を目的とするものであり、均等論を含む特許法の原則に従って解釈される特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定することを意図したものでないことが理解される。