特許第6759439号(P6759439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6759439
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】工作機械および表示装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20200910BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20200910BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   B23Q17/09 A
   B23Q17/09 G
   B23Q17/09 F
   B23Q17/09 D
   B23Q17/00 D
   G05B19/18 X
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-202984(P2019-202984)
(22)【出願日】2019年11月8日
【審査請求日】2020年4月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(74)【代理人】
【識別番号】100133639
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 卓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100198960
【弁理士】
【氏名又は名称】奥住 忍
(72)【発明者】
【氏名】石川 瑞恭
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 努
(72)【発明者】
【氏名】西川 静雄
(72)【発明者】
【氏名】飯山 浩司
(72)【発明者】
【氏名】大場 勇太
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−114960(JP,A)
【文献】 特開2018−049314(JP,A)
【文献】 特開平09−006432(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/186620(WO,A1)
【文献】 特開2019−020124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00 − 17/24
G05B 19/18
G05B 23/00 − 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工中に工具が取り付けられた工具主軸を駆動するために印加される電流値を、検知値として検知する検知部と、
前記検知値から第1特徴量と第2特徴量とを抽出する特徴量抽出部と、
前記第1特徴量に係る数値を第1軸とし前記第2特徴量に係る数値を第2軸とした平面上に、前記検知値をプロットした点と、前記加工中において前記工具に異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線と、を表示する表示部と、
を備えた工作機械。
【請求項2】
前記表示部に表示された前記境界線の形状を変更する補正部をさらに備えた請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記表示部は、前記プロットした点を選択すると、前記プロットした点に関連した情報を表示する請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
加工中に工具が取り付けられた工具主軸を駆動するために印加される電流値から第1特徴量と第2特徴量とを抽出する特徴量抽出部で抽出された前記第1特徴量に係る数値を第1軸とし、前記特徴量抽出部で抽出された前記第2特徴量に係る数値を第2軸とした平面上に、
前記電流値をプロットした点と、
前記加工中において前記工具に異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線と、
を表示する表示部を備えた表示装置。
【請求項5】
加工時の、前記加工のために投入される電流、振動、音、熱、およびうちの少なくともいずれか一つの検知値を検知する検知部を有する工作機械から検出された検知値から第1特徴量と第2特徴量とを抽出し、前記工作機械の加工の状態を表示する表示装置であって、
前記第1特徴量に係る数値を第1軸とし前記第2特徴量に係る数値を第2軸とした平面上に、前記検知値をプロットした点と、前記加工中において異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線と、を表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記境界線を選択し、選択された境界線の形状を変更する補正部と、
を備えた表示装置。
【請求項6】
加工時の、前記加工のために投入される電流、振動、音、熱、およびうちの少なくともいずれか一つの検知値を検知する検知部を有する工作機械から検出された検知値から、工具がワークと接触してワークの加工を開始後所定時間分の検知値を除いた後に、第1特徴量と第2特徴量とを抽出し、前記工作機械の加工の状態を表示する表示装置であって、
前記第1特徴量に係る数値を第1軸とし前記第2特徴量に係る数値を第2軸とした平面上に、前記検知値をプロットした点と、前記加工中において異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線と、を表示する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、加工によって生じる工具近辺の切粉の飛散方向や飛散範囲、飛散速度などの動的情報を用いて機械学習を行って学習モデルを構築し、学習モデルから工具の摩耗や欠損などを推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−0138327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、加工時の状態判断を支援することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る工作機械は、
加工時の、前記加工のために投入されるエネルギー、振動、音、熱、光および加工時に発生する動力のうちの少なくともいずれか一つの検知値を検知する検知部と、
前記検知部で検知した前記検知値から第1特徴量と第2特徴量とを抽出する特徴量抽出部と、
前記第1特徴量に係る数値を第1軸とし前記第2特徴量に係る数値を第2軸とした平面上に、前記検知値をプロットした点と、前記加工中において異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線と、を表示する表示部と、を備えた。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る表示装置は、
加工時の、前記加工のために投入されるエネルギー、振動、音、熱、光および加工時に発生する動力のうちの少なくともいずれか一つの検知値を検知する検知部を有する工作機械から検出された検知値から第1特徴量と第2特徴量とを抽出し、前記工作機械の加工の状態を表示する表示装置であって、
前記第1特徴量に係る数値を第1軸とし前記第2特徴量に係る数値を第2軸とした平面上に、前記検知値をプロットした点と、前記加工中において異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線と、を表示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加工時の状態判断を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る工作機械の構成を示す図である。
図2】第2実施形態に係る工作機械の外観および工具保持部の概略構成を示す図である。
図3A】第2実施形態に係る工作機械の前提技術による1次元グラフの一例を示す図である。
図3B】第2実施形態に係る工作機械の前提技術による1次元グラフの一例を示す図である。
図3C】第2実施形態に係る工作機械の内部構成を示す図である。
図3D】第2実施形態に係る工作機械の補正部による補正前後の2次元マップの変化の様子を説明する図である。
図3E】第2実施形態に係る工作機械の特徴量抽出部による特徴量の抽出について説明するための図である。
図4】2次元マップの軌跡を説明するための図である。
図5】第2実施形態に係る工作機械が有するマッピング対象テーブルの一例を示す図である。
図6】第2実施形態に係る工作機械の処理手順を説明するフローチャートである。
図7】第3実施形態に係る工作機械の構成を説明する図である。
図8】第3実施形態に係る工作機械による食いつきデータ削除を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明記載する。ただし、以下の実施の形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る工作機械100について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る工作機械100の構成を説明するための図である。
【0012】
工作機械100は、検知部101、特徴量抽出部102および表示部103を備える。検知部101は、加工時の、加工のために投入されるエネルギー、振動、音、熱、光および加工時に発生する動力のうちの少なくともいずれか一つの検知値を検知する。特徴量抽出部102は、検知部101で検知した検知値から第1特徴量と第2特徴量とを抽出する。表示部103は、第1特徴量に係る数値を第1軸134とし第2特徴量に係る数値を第2軸135とした平面上に、検知値をプロットした点(図中、T1〜T16)と、加工中において異常が起こる可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線132,133と、を表示する。
【0013】
表示部103に表示された境界線132の内側に表示された点(図中、T1〜T10)は、工作機械100が正常に稼働していることを示している。また、境界線132および境界線133の間に表示された点(T11〜T14)は、正常に稼働しているが、加工に影響のない軽微な異常(折損の予兆と考えられる異常)が発生する可能性があることを示している。さらに、境界線133の外側に表示された点(T15〜T16)は、加工に影響のある異常(工具折損・欠け、加工ワークの損傷)が発生する可能性があることを示している。
【0014】
本発明における工作機械100は、材料を付着することで加工する付加加工(Additive Manufacturing)の機械、材料を除去する除去加工(Subtractive Manufacturing)の機械、レーザなどの光を照射して加工する機械でもよい。具体的には、旋盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、歯切り盤、研削盤、多軸加工機、レーザ加工機、積層加工機等が含まれる。これらは、金属、木材、石材、樹脂等のワークに対して、旋削、切断、穿孔、研削、研磨、圧延、鍛造、折り曲げ、成形、微細加工、積層加工等の各種の加工を施すものである。これらの加工を組み合わせた複合機も含まれる。
【0015】
本実施形態によれば、加工の状態を2次元マップとして表示するので、加工時の状態判断を支援することができる。また、加工中の状態を的確に判断することができるので、工具の折損等を未然に防ぐことができ、例えば、工具が折れることにより加工時間が長くなるといった生産性の低下を防止できる。
【0016】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る工作機械200について、図2乃至図7を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る工作機械の外観および工具保持部の概略構成を示す図である。第2実施形態の工作機械200について、複合機を用いて説明する。工作機械200は、工具保持部201を有し、工具保持部201には工具202が取り付けられる。工具202は、テーブル204に載置されたワーク203を加工する。本実施形態では、工具202の折損を予め防止することを目的とする。
【0017】
図3Aは、本実施形態の前提技術としての1次元グラフの一例を示す図である。図3Aには、縦軸356に工具主軸へ印加された電流値、横軸357に時間T1〜T16を設定したグラフ351が表示されている。このようなグラフを用いる場合、折損のタイミングをT16とすると、実際にはT15のタイミングが、適正なアラートのタイミングである。しかし、T15のタイミングを検出しようとすると、閾値358をあらかじめ定める必要がある。そうすると、閾値358を超えたT9のタイミングで、工具202の交換を促すことになる。このため、まだ工具を使用できるのにも関わらず、工具202を交換することになり、T9〜T15の時間分だけ、無駄が生じてしまう。つまり、工具の交換頻度が多くなるため、全体の加工時間が長くなり、加工時間あたりの工具コストが上昇する。また、図3Bに示すように、小径工具では閾値方式での判別がしにくく、工具交換のタイミングを間違えやすいという問題もあった。例えば、主軸回転をさせただけでも電流値は20A程度になり、ばらつきが大きく、φ3.3の工具を回転させて電流値を測定しても、切削中かどうかの見分けがつかなかった。つまり、単純な閾値方式では、小径工具について折損の予兆を判定することはできなかった。なお、図3Bの下段の一次元グラフは、上段の一次元グラフの部分拡大図である。
【0018】
図3Cは、工作機械200の内部構成を示す図である。工作機械200は、検知部301、特徴量抽出部302、表示部303、補正部304、操作部305、境界データ保持部306、異常判定部308および境界データ生成部309を有する。工作機械200は、検知部301が検知した検知値に基づいて、表示部303において、工具の折損の可能性を判断するための2次元マップ331を表示する。
【0019】
検知部301は、加工のために工作機械200に印加されるエネルギーの一例として、工具202を回転させるために工具主軸に印加される電流値を検知し、検知値(sensed value)として出力する。検知部301は、三相交流のUVW相に設けられた電流センサと、電流センサで検知した電流値をデジタルデータに変換するADコンバータとを含む。例えば、ADコンバータにより、サンプリング周波数を2kHzとして、16bit、つまり、256点の時系列データを取得し、128msecごとの入力データとすることができる。
【0020】
検知部301は、ADコンバータから出力されたデジタル電流値に対し、以下の変換式(1)を用いて、Q軸電流iqとD軸電流idとを算出する。
【数1】
上の式において、Q軸電流iqは実効電流、D軸電流idは無効電流である。検知部301は、Q軸電流iqを検知値として特徴量抽出部302に送る。
【0021】
特徴量抽出部302は、周波数分解部321、正規化部322および次元圧縮部323を有する。周波数分解部321は、例えばフーリエ変換などを用いて、検知部301から受け取った検知値から周波数成分を抽出する。正規化部322は、周波数分解された後の周波数成分データを正規化する。次元圧縮部323は、正規化された周波数成分データの次元を圧縮して2次元の特徴量(第1特徴量成分と第2特徴量成分を有するデータ)を生成する。特徴量抽出部302は、所定のプログラムを実行するためのプロセッサである。
【0022】
表示部303は、次元圧縮部323で抽出した2次元の特徴量データに基づいて、工具の折損の可能性を表わす2次元マップ331を表示する。2次元マップ331は、次元圧縮部323で生成される第1特徴量を第1軸332とし、第2特徴量を第2軸333とした平面を含む。その平面上に、検知値の特徴量をプロットする(T1〜T16)。さらに表示部303は、加工中に異常が発生する可能性の違いを表すために等高線状に配置された境界線(この例では3つの境界線334〜336)を画面に表示する。本実施形態で「異常」とは、工具の折損を意味する。
【0023】
2次元マップ331は、プロットされる検知値の特徴量が、最も内側の境界線334の中心から外側に遠ざかれば遠ざかるほど異常が発生する可能性が高くなることを示している。
【0024】
例えば、境界線334の内側にプロットされた検知値の特徴量(T1,T8,T9・・・)は、異常が発生する可能性が極めて低いため正常であると判断できる。つまり、ユーザが2次元マップ331を見たユーザは、境界線334の内部にのみ検知値の特徴量を表わす点が表示されていれば、安心して加工を続けることができる。
【0025】
検知値の特徴量を表わす点が、境界線334および境界線335の間にあれば、ユーザは異常が発生する可能性は低いが所定値以上あると判断し、注意深く加工を行なえばよい。例えば、工具202の回転数を折損の発生し難い回転数に設定し加工を継続することができる。また、ユーザは、境界線334および境界線335の間に検知値の特徴量があれば、工具202の交換などを検討し始めるべきである。
【0026】
例えば、2次元マップ331を参照すると、T11〜T14は境界線334の外側の点であるため、加工において異常が発生する予兆である可能性が高い。点T15は、境界線335の外側であるため、即座に工具202の交換が必要であることが分かる。このように、2次元マップ331を表示することにより、1次元グラフ351よりも正確に、工具202の交換のタイミングを判断できる。
【0027】
また、点の軌跡を見ることにより、工作機械200に長期的に発生する異常の兆候などを容易に把握することができるので、ユーザは工作機械200の中長期的なメンテナンス計画や消耗品の調達計画を立てることができる。
【0028】
さらに、例えば、検知値の特徴量が、境界線336の外側にプロットされていれば、即座に工具202の折損が発生する可能性が高いと考えられるため、工具202の交換を迅速に行なうべきである。
【0029】
表示部303は、検知部301が検知値を検知する度に、検知値の特徴をプロットした点を追加的に表示し、同時に正常異常の判定基準となる境界線を表示する。
【0030】
表示部303は、例えば工作機械200の一部として設けられたディスプレイでもよいし、工作機械200の外部にあるディスプレイでもよい。また、プロジェクタを用いてスクリーンに2次元マップ331を投影してもよい。この場合、表示装置は、機械加工時の検知値として検知された振動、音、光、工具202に負荷される電流、熱および動力値の少なくとも一つから抽出された特徴量に基づいて、機械加工の状態を2次元マップ331として表示する。2次元マップ331に関する情報は、表示装置側が保持していてもよい。
【0031】
補正部304は、ユーザからの指示に従い表示部303により表示された2次元マップの補正を行う。具体的には、図3Dに示したように、補正部304は、左下側に広げる方向に、2次元マップ331の境界線336の形状の補正を行う。ユーザは、境界線334を広げることにより、正常な検知値の範囲を広くすることができる。正常、異常の判定ができるベテランユーザなどが境界線334の形状を補正することにより、その機械を使う他のユーザが、ベテランユーザの判断に準ずることができる。図3Dでは、点T12〜T14が境界線334の内部に収まるように、境界線334を広げるように補正した例を示している。
【0032】
工作機械200の工場出荷時に取得した検知値と、工作機械200をユーザの工場などに配置した状態で取得した検知値とでは、描画される2次元マップ331の境界線334〜336に違いが生じる場合がある。すなわち、工作機械200による加工条件が常に同じになるとは限らない。
【0033】
境界線334〜336は、例えば、被削材の硬さはそれぞれ異なるため、どの被削材を用いたかにより、工具の折損可能性を示す2次元マップ331の境界線334〜336の形状が異なる。工具も、ワークごとに、異なる挙動を示す。そこで、描画された2次元マップ331の境界線334〜336の形状に補正を加えることができる構成とすることにより、ユーザの使用環境に合わせた2次元マップを表示できる。
【0034】
なお、補正の方法は、例えば、ユーザが、マウスなどの操作部305を用いて、境界線334〜336の一部をドラッグして、境界線334〜336の形状を変更させてもよい。また、キーボードなどの操作部305を用いて、数値を入力することにより境界線334〜336の形状を変更させてもよい。また、補正後の境界線に関するデータをクラウド上に保存して、他の工作機械と共有してもよい。
【0035】
異常判定部308は、特徴量抽出部302が抽出した検知値の特徴に基づいて、異常であるか否かを判定する。異常判定部308は、判定結果を境界データ生成部309に渡す。
【0036】
境界データ生成部309は、異常判定部308において、正常と判定された点と、異常と判定された点との間に境界線を生成する。
【0037】
境界データ保持部306は、表示部303に表示される2次元マップ331の境界線334〜336のデータを保持している。補正部304は、境界データ保持部306が保持する境界線334〜336のデータを変更することで、境界線334〜336の形状の補正を行う。
【0038】
(特徴量抽出処理)
ここで、図3Eを参照して、特徴量抽出部302による特徴量の抽出方法について詳細に説明する。周波数分解部(図中FFT)321は、工作機械200による加工中に検知部301が検知した電流値の周波数成分を抽出して、周波数スペクトルを生成する。周波数分解は、例えば、FFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)により行われるが、これには限定されない。
【0039】
一般に任意の周期的な時系列データytは、様々な周期の三角関数の和として考えることができる。これをフーリエ級数展開と呼び、基本周期がT0[s]の観測値ytのフーリエ級数は、複素数を用いると式(2)のように表せる。
【数2】
【0040】
ここで、ω0は、基本角周波数であり、ω0=2πf0[rad/s]であらわされる。f0は基本周波数であり、f0=1/T0[Hz]で表わされる。
【0041】
一方、複素フーリエ係数cnは、以下の式(3)で求められる。
【数3】
【0042】
電流データのサンプリングタイムをd、ウインドウ長さをnとしたとき、最大周波数fmaxと周波数分解能Δfは以下の式(4)および(5)で表される。
【数4】
【数5】
【0043】
例えば、サンプリング周波数が2kHzでウインドウ長さが256点の場合、FFT後の最大周波数fmaxは、1kHzとなり、周波数分解能Δfは、7.8125Hzとなる。つまり、256点の時系列データは、FFTすると128点のベクトルで表現することができ、このベクトルが次のオートエンコーダ(図中AE)に対する入力となる。なお、128点のベクトルは、正規化部322において、正規化され、次元圧縮部323へ送られる。
【0044】
次元圧縮部323は、オートエンコーダ361、PCA(Principal Component Analysis、主成分分析)362を用いて、次元圧縮を行う。オートエンコーダ361は、機械学習におけるニューラルネットワークを使用した次元圧縮のためのアルゴリズムであり、入力サンプルの次元数よりも圧倒的に少ない次元数の特徴を抽出することができるアルゴリズムである。
【0045】
本実施形態では、主軸電流値を周波数分解部321により、複数次元のベクトル(ここでは128次元)で表現したデータに周波数分解する。そして、周波数分解された複数次元のベクトル(128次元)を次元圧縮部323の入力としている。次元圧縮部のオートエンコーダ361の中間層を低次元に設定することで、複数次元のベクトル入力を低次元に次元圧縮している。オートエンコーダ361は、一般的に、3層ニューラルネットにおいて、入力層と出力層に同じデータを用いて、入力層から中間層に圧縮した後、出力層に復元することを繰り返し、再現率の高い中間層を導き出すものである。ここでは、中間層を64次元に設定している。つまり、次元圧縮部323に入力された128次元のベクトルは、特徴をできるだけ維持したまま64次元に圧縮される。例えば、FFT後のベクトルが128次元の場合、オートエンコーダ361により64次元や10次元にすることができる。以下にオートエンコーダ361の学習と学習済みのモデルとを用いた処理について説明する。
【0046】
(i)オートエンコーダの学習
実験番号βの主軸電流波形のFFTデータxβは、以下の式(6)のようにR次元のベクトルの集合で表わされる。
【数6】
ここで、
は、実験番号βのr番目の区間のベクトルを表わしており、Rは区間総数である。
【0047】
すると、エンコーダ部は、以下の式(7)で表わされる。
【数7】
また、デコーダ部は、以下の式(8)で表わされる。
【数8】
ここで、W’は、Wの転置行列であるため、求めるパラメータは、W、b、b’の3つとなる。
【0048】
このように、
は、元信号
に類似したものとなる。
【0049】
例えば、最適化手法にAdam(Adaptive moment estimation)を用いると、直前のステップt−1までの勾配の2乗の移動平均νt=E[g2tと勾配の移動平均mt=E[g]tは、以下の式(9)のように表わすことができる。
【数9】
ここで、β1、β2∈[0,1)はハイパーパラメータであり、例えば、Adamの推奨値である下記の値βを用いてもよいが、推奨値を基準に調整してもよい。
【0050】
β1=0.9
β2=0.999
【0051】
ここで、ν0=0で初期化したとすると、以下の式(10)が得られる。
【数10】
【0052】
つまり、2次モーメントνtの移動平均E[νt]と真の2次モーメントE[g2t]の関係性は、以下の式(11)で表わされる。
【数11】
ここで、ζ=0と近似できるようにハイパーパラメータの値を設定すれば、
【数12】
が求められる。以上より、
【数13】
がパラメータ更新式となる。バイアスのb、b’においても同様の手順で導出することが可能である。
【0053】
(ii)オートエンコーダの処理
学習したオートエンコーダのエンコーダを次元圧縮に用いる。
【数14】
例えば、FFT後のベクトルが128次元の場合で、中間層を64次元に設定してオートエンコーダを学習させた場合、128次元の入力
から次元圧縮された64次元の
が出力される。
【0054】
PCA(Principal Component Analysis;主成分分析)は、主成分を用いてデータをより低い次元で表現する手法である。入力の任意の次元数のデータに次元圧縮して出力することが可能である。
【0055】
(i)学習
入力のデータ行列をX、単一のデータ点を含む列ベクトルをxとする。データの分散最大化問題を定式化すると、
【数15】
と表される。この式(15)を行列とベクトルとの形式で書き直すと、
【数16】
となる。つまり、wのノルムが1となる拘束条件を満たした上で、出力Xwが最大になるwを求める。その答えはXの特異値分解にある。k次元の主成分をVk、w、データ行列をWとすると、
W=V
である。ここで、kは、主成分Vに含まれる相関のない変数群の個数である。よって、次元圧縮後のベクトルをZとすると、射影座標のベクトルは、
Z=XVk
と表される。
【0056】
(ii)処理
学習により求めた主成分Vを用いて、次元圧縮を行う。例えば、オートエンコーダ処理後のベクトル次元が64次元の場合、64次元の入力X64を2次元のベクトルZ2に次元圧縮するように設定できる。
【0057】
2=X642
より、64次元のX64を入力すると主成分V2により2次元ベクトルZ2が出力される。ベクトルZ2の2つのベクトル成分が第1特徴量および第2特徴量に相当する。ベクトルZ2の2つの成分を第1軸および第2軸として2次元マップへプロットする。
【0058】
SVM(Support Vector Machine)363は、本来2クラス分類を目的としたパターン認識手法であり、SVM363ではマージンを最大化する最適な分離超平面を求める。ここで、マージンとは分離超平面に最も近いサンプルと分離超平面との距離である。最大化されたマージン(距離)は、f(x)で表わされる。
【0059】
SVM363は、One Class SVM(One Class SVM)であり、通常のSVMを拡張したもので、正常データを非負値に、異常データを負値に写像するモデルを構築する。すなわち、One Class SVMは、大多数が正常であるようなデータの集合をもとに学習をおこない、未知のデータが正常であるのか、異常であるのかを判定する手法である。一般には正常に作られた製品や正常な状態のデータは多く入手できても、異常な製品や異常な状態のデータはあまり入手できない。そのようなケースに対してOne Class SVMを適用することが可能である。
【0060】
(i)学習
モデル構築用データが線型分離不可能な場合、SVMでは非線形関数を用いてモデル構築用データを高次元空間に写像し、高次元空間内で分離超平面を求める。これは、オリジナルの低次元空間において、非線形な分離境界を求めることに等しい。高次元空間へはカーネル関数Kを用いて写像される。
【数17】
ここで、xiが第1特徴量であり、xjが第2特徴量である。また、φは非線形関数である。SVMモデルによって決まる距離f(x)は以下の式(18)で表される。
【数18】
【0061】
ここで、wは重みベクトルであり、bはバイアスである。ここで新しいサンプルxは、f(x)の符号によって識別することができる。One Class SVMにおけるモデル構築は、モデル構築用の正常データを同一クラスに、そして原点を他方のクラスとみなした場合のSVMとして定式化される。つまり、One Class SVMにおけるマージンとは、原点と原点に最も近いサンプルとの距離として定義され、そのマージン最大化問題は以下の式(19)のように定式化される。
【数19】
【0062】
ここでξi(i=1,・・・,N)は、スラック変数であり、ν∈(0,1)は構築したOne Class SVMモデルでモデル構築用データを識別した場合のエラー率である。ここで、Lagrange乗数αi≧0およびηi≧0を導入すると、この最適化問題は、以下の式(20)のように書き直される。
【数20】
Lagrangeの未定乗数法により、以下の式(21)を導くことができる。
【数21】
整理すると、この問題は以下のような双対形式の式(22)で表現できる。
【数22】
【0063】
この最適化問題は標準的な2次計画問題として解くことができる。最終的にOne Class SVMモデルによって決まる距離f(x)は、以下の式(23)で表わされる。
【数23】
通常、異常検知モデルのような識別モデルを構築するには、正常データと異常データとの両方が必要である。しかし、One Class SVMでは、上記式(23)で分かるとおり、正常データのみから識別モデルを構築できる。
【0064】
上述したようにOne Class SVMは、超平面との距離f(x)を出力する。距離f(x)に基づいて、正常、異常を判定できる。距離f(x)は異常なデータほど負に大きな値をとり、正常なデータほど正に大きな値をとる。
【0065】
ここで、境界データ生成部309は、距離f(x)が小さいデータ、つまり、異常なデータを外れ値とし、境界線を生成する。
【0066】
例えば、学習データの中に0.2%の異常値が含まれると仮定した場合、異常判定部308は、距離f(x)の小さい順に上位0.2%を外れ値とし、正常範囲を作成することができる。
【0067】
(ii)処理
学習させたOne Class SVMにPCAで次元圧縮したデータを入力することで、上記の式(23)より、出力f(x)が得られる。
【0068】
異常判定部308は、異常度スコアg(x)として、出力f(x)を正負逆転させたものを用いており、
g(x)=−f(x)
と表される。つまり、異常判定部308は、異常度スコアg(x)が負の値の場合は正常、0以上の場合は異常と判定する。
【0069】
境界データ生成部309は、異常度スコアg(x)により正常と判定された点と、異常と判定された点との間に境界線を生成し、境界データとして、境界データ保持部306に保存する。
【0070】
このように、本実施形態においては、検知した検知値の次元を一旦圧縮して(128次元→64次元→2次元)、正常か異常かを判断し易くして、正常と異常の線引きをしている。もちろんこれに限定されるものではなく、128次元のデータをもとにOne Class SVMを用いて、正常か異常かの判断をさせ、それとは別に次元の圧縮(128次元→64次元→2次元)をして2次元平面にプロットしてもよい。この場合、処理時間がかかるが正常か異常かの判断は、2次元データを用いるよりも精度がよくなる。
【0071】
また、次元圧縮の手法として、PCA362を用いたが、PCA362の代わりに、例えば、VAE(Variational AutoEncoder)を用いてもよい。また、PCA362を用いないでオートエンコーダ361のみを用いて2次元まで圧縮してもよい。
【0072】
なお、次元圧縮の手法はここに示した手法には限定されず、様々な手法を組み合わせて用いてもよい。また、ここに示した例は、工具202の折損についての2次元マップの作成についての例であるが、工具主軸のびびりについても、最初に取得する検知値が異なるだけで、その後の処理は、同様に行うことができ、同様の2次元マップを作成できる。例えば、びびりを検知したい場合には、機械加工時に発生する音や振動のデータを検知値として取得すればよい。
【0073】
ここで、びびりとは、工具と被削物との間で継続的に発生する振動である。びびりが発生すると、被削物上にびびりに対応した痕跡(びびりマーク)が残り、仕上げ面が悪くなる。また、この時異常な振動音が発生し、工具や工具を把持するホルダを損傷させたり、工作機械の一部を破損させたりすることがある。びびりは、発生原因から強制びびりと自励びびりとに大別される。強制びびりは、切削系のどこかに振動源があり、その影響を受けて発生する。振動源としては、工作機械内部にある駆動装置の振動、フライス加工における断続的な切削力、工作機械の外から伝わってくる振動などがある。一方、自励びびりは、特定の振動源がなくても工作機械の動特性と切削過程とが重なってある条件を満たしたときに発生する。例えば、重切削や高速切削のときに発生しやすい。
【0074】
図4は、2次元マップ331における点の軌跡を説明するための図である。上、中、下、いずれの2次元マップ331も、正常範囲内に点が存在しているが、軌跡411、421に比べて、軌跡431は、徐々に境界線の中心から離れる方向に移動しているため注意が必要である。
【0075】
すなわち、2次元マップ331によれば、従来の1次元の表示に比べて、加工状況の変化をより正確に把握することが可能となる。
【0076】
図5は、本実施形態に係る工作機械200が有するテーブル501の一例を示す図である。テーブル501は、2次元マップとしてマッピングしたいマッピング対象511に関連付けて検知値512を記憶する。マッピング対象511、工具折損、主軸びびり、切削状態のそれぞれについて、取得分析すべき検知値512として、主軸に印加される電流や、音や、振動や、トルクなどが記憶されている。工作機械200は、テーブル501を参照して2次元マップ331を表示するために取得すべきデータを判定する。
【0077】
以上説明したような工作機械200は、ハードウェアとして、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびストレージを有する。工作機械200は、RAMに本実施形態の実現に必要なデータを読み出し、CPUにより実行する。ストレージには、データベースや各種のパラメータ、データ、プログラム、モジュールが記憶される。
【0078】
図6は、本実施形態に係る工作機械200の処理手順を説明するフローチャートである。このフローチャートに従ったプログラムを、CPUが実行することにより、図3Cに示した各機能構成が実現される。
【0079】
ステップS601において、検知部301は、各種センサから検知値として、印加される電流値、振動、音、熱、光および加工時に発生する動力の少なくともいずれか一つの検知値を検知する。次に、ステップS603において、特徴量抽出部302は、検知した検知値の特徴量の次元を減らし、第1特徴量と第2特徴量を抽出する。ステップS605において、表示部303は、第1特徴量を第1軸332とし、第2特徴量を第2軸333とした平面上に、検知値をプロットした2次元マップ311の画面を生成する。さらに、表示部303は、加工において異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された3つの境界線334〜336を生成する。
【0080】
ステップS607において、表示部303は、作成された2次元マップ331をディスプレイに表示する。ステップS609において、補正部304は、境界線形状の補正を行うか否かを判断する。境界線形状の補正を行わない場合(ステップS609のNO)、工作機械200は、処理を終了する。境界線形状の補正を行う場合(ステップS609のYES)、ステップS611へ進む。ステップS611において、表示部303は、境界線形状を補正した2次元マップ331を表示する。
【0081】
なお、本実施形態の説明においては、検知部301が、電流値を検知する例で説明したが、検知部301が検知するのは電流値には限定されず、例えば、振動、音、熱、光および加工時に発生する動力のそれぞれの値であってもよい。
【0082】
本実施形態によれば、ユーザは、工具の折損やびびりの発生などの加工時の異常の予兆を直感的に把握することができる。それにより、工具202が折損する前に工作機械を停止させて、工具202を交換することができ、工具の折損等を未然に防ぐことができる。例えば、工具が折れることにより加工時間が長くなるといった生産性の低下を未然に防止できる。
【0083】
また、工作機械のユーザは、2次元マップを見ながら工具主軸の回転数を調整できる。さらに、びびりの発生しない工具主軸の回転数に調整できる。また、検知値を蓄積しておけば、将来的な主軸の折損などを予測することができる。また、工作機械のユーザは、リアルタイムに機械加工の状態を把握することができる。通常入手が困難な失敗(正常でない)データがなくても、正常(成功)データがあれば、精度の高い予測モデルを生成でき、精度の高い予測が可能となる。また、正常データ(教師データ)のない部分であっても、近傍の正常データがあれば、近傍の正常データを用いて精度の高い予測モデルを生成でき、精度の高い予測が可能となる。さらに、工作機械から一方的に異常の予兆や発生をユーザに知らせるのではなく、ユーザが、2次元マップを見て直感的に判断したり、考えたりする余地があり、何が原因で異常が報知されたのかの理由をユーザが判断できる。
【0084】
また、例えば、ユーザが、ある加工製品の量産に向けて、工具や工具主軸、ワークなどの組み合わせについて、どの組み合わせが効率的かについて試験を行うことを考える。試験結果について、複数の境界線を有する2次元マップを表示させることにより、ユーザは、境界線とマップ上の点との位置関係から、工具や工具主軸、ワークなどの組み合わせについて、どの程度まで負荷をかけられるかの判断ができる。これにより、ユーザは、効率よく、低コストで加工製品を量産できる。
【0085】
なお、表示部303は、1画面に複数の2次元マップを並列に表示してもよい。例えば、表示部303は、1つの画面に工具折損についての2次元マップおよび主軸のびびりについての2次元マップを同時に表示してもよい。そのように、複数の2次元マップを同時に表示すれば、各種の異常の発生の可能性を1つの画面上で確認することができる。
【0086】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係る工作機械700について、図7および図8を用いて説明する。本実施形態に係る工作機械は、上記第2実施形態と比べると、食いつきデータ削除部701を有する点で異なる。
【0087】
食いつきデータ削除部701は、検知した電流値などの検知値に食いつきデータがあるか否かを、カルマンフィルタを用いて判定する。そして、食いつきデータがあると判定した場合、食いつきデータ削除部701は、検知した検知値の加工開始点から数秒間のデータを削除し、食いつきデータを削除した検知値を特徴量抽出部302に送る。
【0088】
本実施形態での表示部703は、タッチスクリーンを備え、表示された2次元マップ331の点「T10」をタッチ(またはマウス等でクリック)すると、点T10に関する情報(日時、検知値、工具種、使用可能時間、加工条件など)が表示される。このように、検知値をプロットした点を選択することにより、その検知値に関連する情報をスクリーン上に表示して、より詳細な加工の状態を知ることができる。これにより、数秒前や数分前の加工状態を把握することができる。また、2次元マップにおける過去の加工状態を示す点の位置と、その点の検知値や加工条件などを参考にして、次の加工の加工条件を選択することができる。
【0089】
図8は、本実施形態に係る工作機械による食いつきデータ削除を説明する図である。グラフ801に示したように、工作機械による加工開始部分である食いつき時のデータが含まれた状態で、2次元マップを生成する場合には、2次元マップ生成の元となる検知値に食いつきによるノイズが含まれる。そのため、精度の高い2次元マップを生成することができない。そこで、グラフ802に示したように、検知した検知値の始めの何秒間かのデータを削除して、2次元マップを生成すると、ノイズを含まない検知値により2次元マップを生成できるので、精度の高い2次元マップを生成できる。
【0090】
ここでは、グラフ801の始めの部分に、検知した電流値に食いつき部分がみられ、大きな低周波が発生していることが分かる。そのため、この食いつき部分の存在が、異常の有無の検知を妨げる要因となる。そこで、グラフ802に示したように、工作機械による加工開始点から、例えば、600点分のデータ(1/2000×600=0.3[s])を削除する。なお、グラフ801に食いつきデータが含まれるか否かの判定は、カルマンフィルタを用いて行われる。
【0091】
本実施形態によれば、食いつき部分がある場合に食いつきデータを削除するので、余分なノイズの少ない検知値を用いて、精度の高い2次元マップを生成することができる。
【0092】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0093】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
【要約】      (修正有)
【課題】加工時の状態判断を支援することのできる工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械100であって、加工時の、加工のために投入されるエネルギー、振動、音、熱、光および加工時に発生する動力のうちの少なくともいずれか一つの検知値を検知する検知部101と、検知部で検知した検知値から第1特徴量と第2特徴量とを抽出する特徴量抽出部102と、第1特徴量に係る数値を第1軸とし第2特徴量に係る数値を第2軸として、加工中において異常が起こる可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線と、検知値をプロットした点と、を含む画面を表示する表示部103と、を備えた工作機械。
【選択図】図1
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8