【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンタクト素子は、基板、少なくとも1つの導電層、および少なくとも1つのマスキング層を備えることによって、上記の問題を解決する。コンタクト素子のコンタクト側は、少なくとも1つのマスキング層および少なくとも1つの導電層によって少なくとも一部覆われる。少なくとも1つのマスキング層および少なくとも1つの導電層は、コンタクト面を形成し、コンタクト面は、少なくとも1つのマスキング層および少なくとも1つの導電層の交互領域を備える。
【0009】
また、コンタクト素子が、2つ以上のコンタクト面を備え、各コンタクト面が、少なくとも1つのマスキング層および少なくとも1つの導電層を備えることも考えられる。
【0010】
コンタクト側は、少なくとも1つのマスキング層および少なくとも1つの導電層によって、直接または間接的に少なくとも一部覆うことができる。
【0011】
少なくとも1つのマスキング層および少なくとも1つの導電層の交互領域は、コンタクト面における少なくとも1つの導電層の部分および少なくとも1つのマスキング層の部分の局所的な配置であると理解されたい。
【0012】
非限定的な例として、コンタクト素子は、たとえば縞、矩形、または別の幾何形状として具現化される特定の数の導電部分を備えることができる。これらの導電部分を、マスキング層によって取り囲むことができる。しかし、マスキング層を形成するマスキング部分を、導電層を形成する導電部分によって取り囲むことも可能である。
【0013】
層とは、堆積材料からなる薄い2次元の構造であり、薄いという表現は、基板の厚さよりはるかに薄い厚さに関すると理解されたい。概して、コンタクト素子の層厚さは、約1μmから最高100μm程度である。
【0014】
上述した本発明の方法は、基板をマスキング層でマスキングするステップと、マスキング層を部分的に除去することによって、少なくとも1つの非マスキング領域を形成するステップと、少なくとも1つの非マスキング領域の少なくとも一部に導電層を堆積させるステップとを含むことによって、問題を解決する。
【0015】
基板をマスキング層でマスキングするステップは、基板をマスキング材料の槽に浸漬することまたは基板にマスキング材料を噴霧することによって実行することができる。基板をマスキングするこれら2つの可能性は、単に非限定的な例示的なマスキングステップであると理解されたい。
【0016】
マスキング層は、上述した2つの例示的な技法によって基板に均質に堆積させることができ、または印刷技法を介して直接塗布することができる。基板にマスキング層を塗布可能な印刷技法は、たとえば、インクジェット印刷、ジェット印刷、またはグラビア印刷である。前述の印刷技法はまた、基板に均質のマスキング層を印刷するために適用することもできる。上述した印刷技法は、時間を節約しかつコストを削減する直接的なマスキング層の塗布を可能にし、分割レベル(resolution)は、使用される印刷技法および印刷機デバイスによってのみ制限される。
【0017】
マスキング層を部分的に除去することによって、少なくとも1つの非マスキング領域を形成するステップは、非限定的な例として、直接レーザアブレーションによって実行することができる。少なくとも1つの非マスキング領域を形成する別のアブレーション技法は、電子ビームアブレーションである。どちらのアブレーション技法も、材料の超高速加熱に基づいており、そのような加熱は、プラズマを生成し、加熱された材料の突然の蒸発をもたらす。レーザアブレーションの場合、材料は、レーザ放射によって加熱され、電子ビームアブレーションの場合、プラズマを生成するためのエネルギーは、電子ビームによって提供される。
【0018】
電子ビームアブレーションは、より高い分割レベルを得ることができるが、システムがより複雑になるという犠牲を伴う。
【0019】
以下の説明は、レーザアブレーションのみに焦点を当てるが、電子ビームアブレーションにも同様に適合することができる。
【0020】
レーザアブレーションは、概して、たとえば希土類ドープレーザ活性材料またはチタンサファイアに基づく固体レーザによって、またはエキシマレーザによって放出される短レーザパルスまたは超短レーザパルスを利用し、パルス持続時間は、ナノ秒またはフェムト秒の範囲である。
【0021】
以下、本発明の様々な実施形態について、提示および説明する。各実施形態は単独で有利であり、異なる実施形態の技術的特徴を組み合わせることができ、またはその技術的特徴による技術的な作用が本発明にとって重要でない限り、そのような技術的特徴を省略することができる。
【0022】
本発明のコンタクト素子の第1の実施形態では、少なくとも1つの導電層は、コンタクト面の非マスキング領域に位置する。
【0023】
コンタクト面の非マスキング領域とは、マスキング層が欠けている領域である。
【0024】
少なくとも1つのマスキング層および少なくとも1つの導電層は、コンタクト面で互いに隣接して位置することができる。
【0025】
言い換えれば、少なくとも1つのマスキング層は、少なくとも1つの導電層の隣に継ぎ目なく位置することができる。したがって、基板は、少なくとも1つのマスキング層および少なくとも1つの導電層によって全体的に覆われて保護される。
【0026】
マスキング層の部分および導電層の部分の数、ならびにこれらの部分の形状に応じて、1つの部分(マスキングまたは導電)が、異なる数の他の部分(導電またはマスキング)に隣接して位置することができる。
【0027】
マスキング層の部分および導電層の部分は、初めに述べた交互領域に相当する。
【0028】
本発明のコンタクト素子の第2の実施形態では、マスキング層は、潤滑性充填媒体を含む。潤滑性充填媒体は、ポリマー内に含有することができる。
【0029】
ポリマーは、潤滑性充填媒体をさらに含むことができ、たとえば潤滑性充填媒体からなることができる。
【0030】
したがって、マスキング層は、マスキング層に隣接して位置する導電層に潤滑を提供する潤滑剤貯蔵部として作用することができる。
【0031】
潤滑性充填媒体は、湿式または乾式の潤滑剤、たとえばグリースまたはグラファイトから構成することができる。潤滑性充填媒体は、マスキング層の材料内に浸漬された潤滑性粒子から構成することができる。
【0032】
少なくとも1つのマスキング層および少なくとも1つの導電層が、コンタクト面を形成するため、潤滑性充填媒体は、導電層の少なくとも1つの部分に隣接して位置し、好ましくは多数の導電部分間に埋め込まれる。したがって、コンタクト面は、導電層によって差し込み動作中に相手側コンタクト面に機械的に当接する。
【0033】
マスキング層は、相手側コンタクト面に機械的に接触することができるが、コンタクト力は、それぞれコンタクト面の導電部分を通して加えられる。したがって、潤滑性充填媒体を含むマスキング層の材料は、相手側コンタクト面によって変位されないが、相手側コンタクト面に機械的に接触したままである。
【0034】
マスキング層に使用することができるポリマーは、異なる用途に合わせて設計することができ、たとえばコンタクト素子を適用することができる異なる温度範囲、ならびに湿度、電磁放射、または雰囲気のような周囲の条件に合わせて設計することができる。ポリマーは、潤滑性充填媒体を受け取るのに適した任意の市販のポリマー(たとえばPMMA、PE、PVC、PET、PC、PET、PUなど)とすることができる。
【0035】
本発明のコンタクト素子の別の実施形態では、コンタクト素子は、摺動コンタクトとして実施することができる。そのような摺動コンタクトでは、接触部分または接触点が、対応する静止位置付近で動く。
【0036】
摺動コンタクトとして特別に設計されていないプラグインコネクタの場合でも、それらの特性は、接触部分または接触点がその静止位置から動く間に、振動に対する安定性を増大させるという利点を有することができる。
【0037】
本発明のコンタクト素子の第3の実施形態では、マスキング層が、導電性充填媒体を含む。
【0038】
そのような導電性充填媒体は、粒子もしくはナノ粒子、たとえばグラファイトもしくはナノチューブのような炭素誘導体、または単に金属粒子から構成することができる。
【0039】
したがって、この実施形態のマスキング層は、2つの機能性を満たし、すなわち差し込み力を低減させるためにコンタクト面を潤滑し、かつコンタクト素子のコンタクト面と相手側コンタクト素子の相手側コンタクト面との間に追加の電気的接続を提供する。
【0040】
本発明のコンタクト素子の別の実施形態では、基板は、銅または銅合金のうちの1つから形成される。
【0041】
銅または銅合金は、概して、低いオーム抵抗、高い導電率をもたらし、容易に製造することができるため、電気的接触手段のために用いられる。しかし、銅は、周囲の空気中で酸化する傾向を示し、その硬度により、差し込み動作を繰り返すには適していない。特にこの理由で、銅または銅合金は、少なくとも1つのマスキング層および少なくとも1つの導電層によって少なくとも一部覆われる。
【0042】
本発明のコンタクト素子の別の実施形態では、導電層は、基板の材料とは異なるコンタクト材料から構成される。すなわち、基板のうち非マスキング部分、すなわちマスキング層によって覆われていない部分に、コンタクト材料が堆積される。
【0043】
基板とは異なる組成の銅合金はまた、導電層に対する材料として使用することもできる。
【0044】
導電層は、貴金属、たとえば金、銀、もしくはパラジウム、またはすずなどの毒性の低い重金属を含有することができる。したがって、導電層の材料は、基板の非マスキング領域を環境的条件から保護する。
【0045】
導電層に適用される材料は、前述の金属の合金をさらに含有することができる。
【0046】
本発明のコンタクト素子の別の実施形態では、基板と、少なくとも1つのマスキング層および少なくとも1つの導電層のうちの少なくとも1つとの間に、中間層が配置される。
【0047】
中間層は、基板のうちコンタクト面を形成する部分を全体的に覆うことができる。中間層は、好ましくは、基板とマスキング層との間、および、基板と導電層との間に位置することができる。中間層は、導電層を支持することができ、導電材料、好ましくは基板および/または導電層と類似の導電率を有する金属を含有することができる。
【0048】
本発明のコンタクト素子の別の実施形態では、中間層は、約1μm〜約3μmの厚さを有する。そのような中間層の厚さは、導電層の有効硬度を増大させるように適用することができる。
【0049】
上述した厚さで実施される中間層は、基板の可撓性および弾性に影響しないが、それでもなお環境の影響から基板を保護する。
【0050】
中間層の硬度は、基板の硬度より高くすることができ、したがって摩耗、たとえば差し込み動作を繰り返すことによる摩耗に対するコンタクト素子の耐性を増大させることができる。
【0051】
本発明のコンタクト素子の別の実施形態では、中間層は、ニッケルまたはニッケル合金のうちの1つを含有する。ニッケルまたはニッケル合金は、環境の影響から基板を保護する上述した利点を提供し、基板とは反対側で中間層に堆積させた導電層の有効硬度を増大させる。
【0052】
そのようなニッケルまたはニッケル合金、概して中間層は、加えられた差し込み力を導電層から中間層および基板へさらに伝達する。基板は、加えられた差し込み力が選択的または1点に印加された場合でも、全体的に撓みまたは弾性的に変形することができる。
【0053】
したがって、中間層は、導電層部分の面積より大きい面積にわたって、差し込み力を基板に分散させる。
【0054】
本発明の方法の第1の実施形態は、基板と、マスキング層および導電層のうちの少なくとも1つと、の間に中間層を提供するステップをさらに含む。
【0055】
好ましくは、中間層は、ニッケル層またはニッケル合金層のうちの1つを含有し、この層は、1μmから最高数マイクロメートル程度の厚さで実施される。
【0056】
中間層は、ガルバニック堆積、化学気相成長もしくは物理気相成長、イオンビーム堆積、スパッタリング、または類似の技法によって、基板に堆積させることができる。
【0057】
本発明の方法の第2の実施形態は、少なくともマスキング層に導電性充填媒体および潤滑性充填媒体のうちの少なくとも1つを提供するステップをさらに含む。
【0058】
導電性充填媒体には、コンタクト素子の導電層が相手側コンタクト素子に当接しない場合でも、コンタクト素子とそれに一致する相手側コンタクト素子との間の電気的接続を確立することができるという利点がある。さらに、導電性充填媒体は、コンタクト面を介して伝送可能な電流を増大させる。
【0059】
マスキング層内の潤滑性充填媒体は、マスキング層を潤滑剤貯蔵部に変え、潤滑剤貯蔵部は、導電層の潤滑を連続して保証することができる。さらに、マスキング層の非マスキング領域の少なくとも一部に導電層が堆積されるため、導電層が相手側コンタクト素子に当接するとき、マスキング層材料の一部である潤滑性充填媒体は変位しない。
【0060】
導電性充填媒体および/または潤滑性充填媒体は、基板をマスキング層でマスキングする前に、マスキング層材料内に提供することができる。すなわち、基板または中間層にマスキング層材料を塗布する前に、対応する充填媒体がマスキング層材料に組み込まれる。
【0061】
基板をマスキング層でマスキングした後、導電性充填媒体および/または潤滑性充填媒体をマスキング層に組み込むことができることも考えられる。前記充填媒体の組み込みは、同化、注入、吸収、または吸着によって実行することができる。
【0062】
充填媒体は、マスキング層材料内にまたは単にマスキング層の上部に、均質に提供することができる。この上部は、マスキング層のうち基板から最も遠くに離れている部分であると理解されたい。
【0063】
本発明の方法の第3の実施形態は、マスキング層に感光性充填媒体を提供するステップをさらに含む。
【0064】
感光性充填媒体は特に、フォトレジストもしくは硬化ポリマーを含有することができ、またはフォトレジストもしくは硬化ポリマーからなることができる。
【0065】
感光性充填媒体とは、特定の波長範囲の光で照射されるとその物理的特性および/または機械的特性および/または化学的特性を変化させる材料であると理解されたい。可能な非限定的な例として、感光性充填媒体は、その耐薬品性を増大させることができ、すなわちその化学薬品への可溶性を減少させることができる。したがって、そのような感光性充填媒体の照射された区域は、その化学薬品に溶解しないで基板または中間層に留まる。
【0066】
本発明の方法の別の実施形態では、マスキング層を部分的に除去することは、変位部材によってマスキング層の部分を変位させることを含む。
【0067】
変位部材は、押し型(エンボス型)として実施することができ、押し型は、少なくとも1つの処理部分において基板または中間層を露出させるようにマスキング層材料を変位させることができ、この処理部分をさらに機械加工または処理することができる。
【0068】
変位部材は、感光性充填媒体に影響する波長範囲の光に対して透過性とすることができる。そのような透過性変位部材は、透過性変位部材を通してマスキング層に照射することを可能にし、たとえばその結果、マスキング層材料を硬化させることができる。
【0069】
本発明の方法の別の実施形態は、マスキング層に照射し、マスキング層の照射された部分または非照射部分のうちの1つを光化学的に現像して、少なくとも1つの非マスキング領域を形成するステップをさらに含む。
【0070】
好ましくは、マスキング層は、感光性媒体に影響を与える波長範囲の光で照射することができる。
【0071】
上述したように、感光性媒体に影響を与える波長範囲の光でマスキング層に照射することで、現像薬に対する耐性を変えるように、マスキング層の照射された部分の化学的特性を変えることができる。
【0072】
ポジティブフォトレジストの場合、照射されるとこの耐性は減少し、ネガティブフォトレジストの場合、この耐性は増大する。
【0073】
マスキングパターンは、この場合はレーザから放出される照射光の干渉を介して生成することができ、または入射光のいくつかの部分を阻止してマスキング層に光パターンを形成するマスクキャリアによって生成することができることに留意されたい。
【0074】
感光性充填媒体がポジティブフォトレジストであるか、それともネガティブフォトレジストであるかに応じて、マスキング層の照射された部分またはマスキング層の非照射部分のいずれかが、現像薬の影響を受ける。現像薬は、好ましくは液体の化学薬品とすることができ、この薬品を槽内に提供することができ、この槽を通ってコンタクト素子が移動することができる。
【0075】
好ましくは、従来のフォトレジストを使用することができ、従来のフォトレジストは、紫外線および/または紫色の電磁放射の影響を受ける。
【0076】
マスキング層のいくつかの部分を除去する別の可能性は、対応する処理部分、すなわち基板または中間層を露出させるためにマスキング層を除去すべき部分におけるマスキング層の直接アブレーションである。それらの処理部分には、導電層が堆積される。
【0077】
以下、本発明のコンタクト素子および方法について、添付の図を参照して説明する。これらの図は、コンタクト素子およびコンタクト素子を製造する本発明の方法の単独で有利な実施形態を示す。個々の実施形態の技術的特徴は、任意に組み合わせることができ、対応する技術的特徴による技術的な作用が重要でない場合、そのような技術的特徴を省略することができる。同じ技術的特徴または同じ技術的な作用を有する機構は、同じ参照番号で示されている。