(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
レボノルゲストレル、ノルエチステロン等のプロゲスチン、及びその他のホルモン様作用を有する薬効成分を含む医薬組成物、特に緊急避妊等に用いる医薬組成物においては、初期溶出性の高さを担保するとともに、溶出遅延防止及び硬度維持等の安定性の担保が大変重要な課題である。
また、一般に、医薬組成物における薬効成分の溶出性向上のためには崩壊剤の添加を行うが、崩壊剤は多量に添加すると硬度低下を招く原因となること、また崩壊剤等の各種成分の添加量や、薬効成分との組み合わせによっては、溶出性能の不足や溶出遅延を引き起こすことがある。
本発明は、溶出性及び安定性、並びに硬度が更に改善されたプロゲスチン等を含む経口固形組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、デンプン類に加え、特定の量の、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、クロスポビドン、及びそれらの組み合わせから選択される成分を含む経口固形組成物が、溶出性及び安定性、並びに硬度の点で優れることを見出した。 また、薬効成分とアルコールとから成るアルコール懸濁液又は溶解液を、流動状態にある特定の第一添加剤等に噴霧して湿式造粒物を得、当該造粒物に特定の第二添加剤を添加することによって、溶出性及び安定性、並びに硬度に優れた経口固形組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
更に、本発明者らは、第一の崩壊剤としてデンプン類を含み、また、第二の崩壊剤として、特定の量のデンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、クロスポビドン、及びそれらの組み合わせから選択される成分を含む経口固形組成物が、溶出性及び安定性、並びに硬度に優れた経口固形組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1]
(a)プロゲスチンと、
(b)デンプン類と、
(c)デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、クロスポビドン、又はそれらの組み合わせ
とを含む、経口固形組成物であって、
(c)の含有量が経口固形組成物の総質量の0.1〜8質量%である、経口固形組成物。
[2]
錠剤の形態である、[1]に記載の経口固形組成物。
[3]
前記プロゲスチンが、レボノルゲストレル及びノルエチステロンから選択される、[1]又は[2]に記載の経口固形組成物。
[4]
前記(c)が、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、クロスポビドン、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の経口固形組成物。
[5]
前記(c)が、デンプングリコール酸ナトリウムである、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の経口固形組成物。
[6]
前記プロゲスチンの累積90%粒子径が15μm以下である、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の経口固形組成物。
[7]
前記プロゲスチンの累積90%粒子径が10μm以下である、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の経口固形組成物。
[8]
前記デンプン類がトウモロコシデンプンである、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の経口固形組成物。
[9]
(i)薬効成分とアルコールとから成るアルコール懸濁液又は溶解液を、流動状態にある第一添加剤に噴霧して、湿式造粒物を得る工程と、
(ii)得られた造粒物に第二添加剤を添加し、混合した後、打錠する工程と
を含む、経口固形組成物の製造方法であって、
前記第一添加剤が、デンプン類であり、かつ、前記第二添加剤が、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、クロスポビドン、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、経口固形組成物の製造方法。
[10]
前記第二添加剤が、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、クロスポビドン、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、[9]に記載の製造方法。
[11]
前記第二添加剤が、デンプングリコール酸ナトリウムである、[10]に記載の製造方法。
[12]
前記アルコール懸濁液又は溶解液がエタノール懸濁液である、[9]〜[11]のいずれか1つに記載の製造方法。
[13]
前記薬効成分の累積90%粒子径が15μm以下である、[9]〜[12]のいずれか1つに記載の製造方法。
[14]
前記薬効成分の累積90%粒子径が10μm以下である、[9]〜[13]のいずれか1つに記載の製造方法。
[15]
経口固形組成物中の第二添加剤の含有量が0.1〜8質量%である、[9]〜[14]のいずれか1つに記載の製造方法。
[16]
前記薬効成分がプロゲスチンである、[9]〜[15]のいずれか1つに記載の製造方法。
[17]
前記薬効成分が、レボノルゲストレル及びノルエチステロンから選択される、[16]に記載の製造方法。
[18]
[9]〜[17]のいずれか1つに記載の製造方法によって得られた経口用錠剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、溶出性及び安定性に優れ、かつ良好な硬度を有する、経口固形組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態は、(a)プロゲスチンと、(b)デンプン類と、(c)デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、クロスポビドン、又はそれらの組み合わせとを含む、経口固形組成物であって、(c)の含有量が経口固形組成物の総質量の0.1〜8質量%である、経口固形組成物に関する。
【0016】
(a)プロゲスチンとしては、例えばレボノルゲストレル、ノルエチステロン、デゾゲストレル、ジエノゲスト、ドロスピレノン、酢酸クロルマジノン、ジドロゲステロン等が挙げられ、レボノルゲストレル及びノルエチステロンから選択されるプロゲスチンを含むことが特に望ましく、レボノルゲストレルを含むことが更に望ましい。プロゲスチンには、その塩、その水和物、その溶媒和物、そのプロドラッグ等も含まれる。また、2種類以上のプロゲスチンを組み合わせて用いてもよい。
更に、本発明の薬効成分として、プロゲスチン以外の薬効成分、例えばホルモン薬、ホルモン代用薬、抗ホルモン薬、オータコイド類等に分類される薬効成分も使用できる。薬効成分は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明において、経口固形組成物中の薬効成分の含有量は特に限定されないが、経口固形組成物の総質量の0.01〜8質量%とすることが好ましく、0.1〜6質量%とすることがより好ましく、1〜5質量%とすることが更に好ましい。
また、レボノルゲストレルを薬効成分として用いる場合、含有量は特に限定されないが、0.5mg〜2mgとすることが好ましい。レボノルゲストレルと異なるプロゲスチンを用いる場合には、相対的効力又は活性に基づいて当該値と等価な濃度に調節することができる(例えば、Kuhl, H., Drugs 51(2):188-215 (1996); Philibert, D., et al., Gynecol. Endocrinol. 13:316-326 (1999); Lundeen, S., et al., J. Steroid Biochem. Molec. Biol. 78:137-143 (2001); Dickey, R. P., "Contraceptive Therapy," OBG Management Supplement (October 2000), pp. 2-6参照)。
【0018】
本明細書では、本発明の経口固形組成物の製造方法においてアルコール懸濁液又は溶解液が噴霧されることになる流動状態の添加剤を便宜的に「第一添加剤」と称し、湿式造粒物が得られた後に、当該造粒物に添加されることになる添加剤を便宜的に「第二添加剤」と称する。
【0019】
本発明の成分(b)又は第一添加剤は、崩壊剤、賦形剤、結合剤等として用いられ、その用途を特に限定するものではないが、好ましくは崩壊剤として用いられる。
本発明の(b)成分又は第一添加剤であるデンプン類として、例えば、デンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン等が挙げられる。
【0020】
本発明の成分(c)又は第二添加剤は、崩壊剤、賦形剤、結合剤等として用いられ、その用途を特に限定するものではないが、好ましくは崩壊剤として用いられる。本発明の成分(c)又は第二添加剤としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、クロスポビドン、及びそれらの組み合わせが好ましく、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、クロスポビドン、及びそれらの組み合わせがより好ましく、デンプングリコール酸ナトリウムが更に好ましい。
クロスポピドンとしては、コリドン(登録商標)CL、コリドン(登録商標)CL−SF(以上、BASFジャパン)、ポリプラスドン(登録商標)(ISPジャパン)、クロスポビドン(DSP五協フード&ケミカル)等の不溶性ポリビニルピロリドンが好ましい。L−HPCは、ヒドロキシプロポキシ基置換度が7〜16%であるものが好ましく、10〜13%であるものがより好ましい。
【0021】
成分(b)又は第一添加剤の含有量は、経口固形組成物の総質量の0.5〜30質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましく、4〜10質量%が更に好ましい。
また、成分(c)又は第二添加剤の含有量は、経口固形組成物の総質量の0.1〜8質量%であり、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%、より好ましくは1〜6質量%、より好ましくは1〜5質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。成分(c)又は第二添加剤の含有量が0.1質量%未満では崩壊性を発揮せず、一方、8質量%を超えると崩壊性、安定性等の錠剤特性が低下する場合がある。
【0022】
上記経口固形組成物は、上記成分(b)、成分(c)に加えて、上記成分(b)、成分(c)として挙げたもの以外の崩壊剤、賦形剤、結合剤等を更に含んでいてもよい。上記成分(b)、成分(c)として挙げたもの以外の崩壊剤としては、例えば、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルスターチ、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、タルク等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、結晶セルロース、D−マンニトール、白糖、ショ糖、ブドウ糖が挙げられる。
結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、粉末セルロース、結晶セルロース、カルメロースナトリウムが挙げられる。
これらの崩壊剤、賦形剤、結合剤等は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記経口固形組成物は、流動化剤、滑沢剤等を更に含んでいてもよい。
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素が挙げられる。
これらの流動化剤、滑沢剤等は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記経口固形組成物の形態は、好ましくは錠剤であり、より好ましくは素錠であるが、通常の剤皮を施した錠剤や、口腔内崩壊錠等でもよい。
【0025】
上記の本発明の経口固形組成物は、プロゲスチン等の薬効成分とアルコールとの混合物を、流動状態にある第一添加剤に噴霧して、湿式造粒物を得、次いで、得られた造粒物に第二添加剤を添加し、混合した後、常法により打錠機で打錠することによって製造される。
【0026】
湿式造粒法として、流動層造粒法、撹拌造粒法等の方法が挙げられる。特に、流動層造粒による湿式造粒法は、直打法に比べて安定した溶出性をもたらし、撹拌造粒に比べて造粒及び乾燥工程が同じ機械で実施できるという点で作業性に優れている。
【0027】
本発明の製造方法において使用される薬効成分は微粉体が望ましい。微粉体の粒子径は薬効成分の溶出に影響を与えるため、累積90%粒子径が15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。また、累積10%粒子径が5μm以下であり、累積50%粒子径が8μm以下であり、累積90%粒子径が15μm以下であることが好ましい。さらには、累積10%粒子径が3μm以下であり、累積50%粒子径が5μm以下であり、累積90%粒子径が10μm以下であることがより好ましい。本発明において「累積90%粒子径」とは、横軸に粒子径、縦軸に小粒子から順にその百分率を累積することで得られた曲線において、累積量が90%となる粒子径を言う。
【0028】
流動層造粒法においては、薬効成分を噴霧液に含有させる場合、薬効成分を溶解させた溶解液を噴霧液として用いるのが一般的である。しかし、薬効成分が難溶性である場合は、薬効成分を溶解するために大量の溶媒を必要とし、また場合によっては溶解に加温を必要とするため、作業が煩雑になる。また、溶媒がアルコール等の可燃性溶媒の場合には、加温操作により粉塵爆発を誘発する等、作業上の問題点が存在する。
一方、噴霧液として薬効成分を溶解せず懸濁液として用いる場合は、前処理が不要、溶媒量を低減できる等の利点があるが、その一方で、最終組成物中の薬効成分の含量均一性及び薬効成分の溶出性を担保できない等の問題が存在する。
【0029】
しかしながら、本発明では、薬効成分をアルコールに溶解させた溶解液だけでなく、薬効成分をアルコールに分散させた懸濁液を用いて湿式造粒物を製造した場合にも、最終的に得られる経口固形組成物において高い溶出性及び安定性を担保できることを本発明者らは初めて見出した。アルコール懸濁液が使用できることは、難溶性薬効成分の使用、溶媒量の低減、粉塵爆発の回避、作業工程の短縮等の点から、非常に有益である。
【0030】
本発明でいう「薬効成分とアルコールとから成るアルコール懸濁液又は溶解液」と は、薬効成分及びアルコールからなる懸濁液又は溶解液を意味する。薬効成分としては特に限定されないが、前述のプロゲスチン、例えばレボノルゲストレル、ノルエチステロン、デゾゲストレル、ジエノゲスト、ドロスピレノン、酢酸クロルマジノン、ジドロゲステロン等があげられ、プロゲスチンには、その塩、その水和物、その溶媒和物、そのプロドラッグ等も含まれる。また、薬効成分としては、アルコールに溶解性が高い薬効成分だけでなく、1gの溶質を溶解するのに要する溶媒量が30ml以上である薬効成分、すなわち、第17改正日本薬局方の通則にある「やや溶けにくい」、「溶けにくい」、「極めて溶けにくい」、「ほとんど溶けない」に属する薬効成分も用いることができる。
アルコールは、アルコールと水との混合物でもよく、その場合、アルコール濃度は70v/v%(アルコール/水=70/30)以上であり、90v/v%以上が好ましく、95v/v%以上がより好ましい。
【0031】
アルコールとしては、低級アルコールが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、又はそれらの混合物を挙げることができ、エタノール、イソプロパノールが好ましく、エタノールがより好ましい。
【0032】
アルコール懸濁液又は溶解液中の薬効成分の濃度は、好ましくは0
.01〜10質量%である。例えば、アルコール懸濁液又は溶解液中のレボノルゲストレルの濃度は、0.01〜8質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましく、0.5〜2質量%であることが更に好ましい。アルコール懸濁液又は溶解液中のノルエチステロンの濃度は、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.02〜5質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0033】
アルコール懸濁液又は溶解液を調製する際に、必要ならば、薬効成分の難溶性に応じて加温してもよい。ただし、粉塵爆発を避けるため、溶解温度に注意を払う必要がある。
【0034】
本発明において使用できる第一添加剤及び第二添加剤は、前述のとおりである。また、第一添加剤に加えて、当該第一添加剤に含まれない他の崩壊剤、賦形剤、結合剤等を更に添加してもよく、第二添加剤に加えて、前述の流動化剤、滑沢剤等を更に添加してもよい。
【0035】
本発明の製造方法によって得られた経口固形組成物は、優れた溶出性及び安定性を有する。
【0036】
また、本発明の製造方法によって得られた経口固形組成物は、優れた溶出性及び安定性に加えて、良好な硬度を維持することができる。
【0037】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
以下に錠剤の製造例を示す。また、これにより得られた錠剤の溶出性及び安定性、並びに硬度を試験した。
【0039】
I.錠剤の製造
実施例1〜4の錠剤を下記の製法により表1に示す処方で製造した。
(1)予備混合
表1の成分Bである乳糖水和物(200M)、成分Cであるトウモロコシデンプン(日本食品化工)、成分Dであるポビドン(K−30)をV型混合機(5L、株式会社徳寿工作所製)にて混合した。
(2)造粒・乾燥
(1)の予備混合で混合した粉体を、流動層造粒機(FD-MP-01D、株式会社パウレック製)に投入し、成分A1(レボノルゲストレル)と95%エタノールからなるエタノール懸濁液を風量0.3m/分、給気温度60℃、スプレー量14g/分、スプレーエア量55L/分で噴霧して造粒後、乾燥した。なお、成分A1(レボノルゲストレル)として、累積10%粒子径が1μm、累積50%粒子径が4μm、累積90%粒子径が7μmのものを用いた。
なお、乾燥した粉体の残留エタノール量については、第十七改正日本薬局方「残留溶媒」記載の濃度限度値以下であることを確認した。
(3)一次混合
(2)で乾燥した粉体と成分E、F、Gをロッキングミキサー(RM-10-2、愛知電機株式会社製)にて混合した。成分F1としてカルメロース(NS−300)(ニチリン化学工業株式会社)、F2としてデンプングリコール酸ナトリウム(プリモジェル(登録商標))(ディーエムヴイ・フォンテラ・イクシピエンツ(株))、F3として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH−11)(信越化学工業)、F4としてクロスポピドン(コリドン(登録商標)CL−SF)(BASF社)を用いた。
(4)二次混合
(3)の一次混合で混合した粉体と成分Hをロッキングミキサー(RM−10−2、愛知電機株式会社製)にて混合した。
(5)打錠
(4)の二次混合で混合した粉体を打錠機(VIRGO 0512SS2AY、株式会社菊水製作所製)にて、打錠圧7kNで、錠径7.0mm、質量140mgとなるように打錠した。
【0040】
実施例5〜7
成分Fとして、デンプングリコール酸ナトリウムの含有量を変更する以外は、実施例2と同様にして表1に示す処方の錠剤を製造した。
【0041】
実施例8
上記(2)造粒・乾燥工程において、エタノール懸濁液の代わりにエタノール溶解液を用いる以外は、実施例2と同様にして表1に示す処方の錠剤を製造した。なお、成分A1(レボノルゲストレル)溶解液を製造する際に、適宜加温操作を行った。
【0042】
実施例2−2
上記(2)造粒・乾燥工程において、成分A1(レボノルゲストレル)の添加量を3.0mgとしたエタノール懸濁液を用いる以外は、実施例2と同様にして表1に示す処方の錠剤を製造した。
【0043】
実施例9
上記(2)造粒・乾燥工程において、成分A1(レボノルゲストレル)の代わりに成分A2(ノルエチステロン)の添加量を0.75mgとしたエタノール溶解液を用いる以外は、実施例2と同様にして、表1に示す処方の錠剤を製造した。なお、成分A2(ノルエチステロン)として、累積10%粒子径が0.4μm、累積50%粒子径が2.3μm、累積90%粒子径が6.3μmのものを用いた。
【0044】
実施例9−2
上記(2)造粒・乾燥工程において、成分A2(ノルエチステロン)の添加量を7.5mgとしたエタノール懸濁液を用いる以外は、実施例9と同様にして、表1に示す処方の錠剤を製造した。
【0045】
比較例1
成分Fを添加しない以外は実施例2と同様にして錠剤を製造した。
【0046】
参考例
参考例として、あすか製薬株式会社「ノルレボ錠1.5mg」(承認番号22700AMX01035、ロット番号LX082F)の錠剤を用いた。この錠剤は、1錠中にレボノルゲストレル1.5mg、添加物として乳糖水和物,トウモロコシデンプン、ポビドン、軽質無水ケイ酸、及びステアリン酸マグネシウムを含むが、本発明の(c)成分、又は第二添加剤である、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、又はクロスポビドンを含まない処方である。
【0047】
【表1】
【0048】
[総類縁物質・溶出性・硬度の試験方法]
(1)総類縁物質
・試験方法
・第十七改正日本薬局方「液体クロマトグラフィー」に準じて、液体クロマトグラフィー装置(HPLCシステム(e2695、日本ウォーターズ株式会社製)、UV/VIS検出器(2489、日本ウォーターズ株式会社製)、データ処理ソフト(Empower3、日本ウォーターズ株式会社製)を用いて、各試料1錠の総類縁物質量を測定した。
・安定性保存試験(温湿度苛酷試験)
開放したシャーレに入れた無包装の各試料を温度:60℃±2℃、湿度:80%RH±5%RHに設定した機器(LH21-15M、ナガノサイエンス株式会社製)で0.5ヶ月又は1ヶ月保管した。
【0049】
(2)溶出性
第十七改正日本薬局方の「溶出試験法」及び「液体クロマトグラフィー」に準じて、溶出試験装置(全自動溶出試験機(RT-3、株式会社大日本精機製))、データ処理ソフト(RT-3、株式会社大日本精機製)、液体クロマトグラフィー装置(HPLCシステム(e2695、日本ウォーターズ株式会社製)、UV/VIS検出器(2489、日本ウォーターズ株式会社製)又はPDA検出器(2998、日本ウォーターズ株式会社製)、及びデータ処理ソフト(Empower3、日本ウォーターズ株式会社製)を用いて、各試料6錠の溶出性の平均値を計算した。溶出試験は、日本薬局方一般試験法であるパドル法にて行った。サンプリングは、溶出試験開始直後(0分)から試験開始後360分まで行った。
液体クロマトグラフィーの分析条件:
カラム:Inertsil ODS-3 3mm×7.5cm 3μm(ジーエルサイエンス株式会社)
No. 154
流量:0.6 mL/分:移動相:70%メタノール
カラム温度:35℃、サンプルクーラー温度:25℃
検出波長:244 nm。
・安定性保存試験(湿度苛酷試験)
開放したシャーレに入れた無包装の各試料を温度:25℃±2℃、湿度:90%RH±5%RHに設定した機器(LH21-15M、ナガノサイエンス株式会社製)で0.5ヶ月又は1ヶ月保管した。
【0050】
(3)硬度
錠剤硬度計(KHT-20N、株式会社藤原製作所製)を用いて、各試料の錠剤硬度を測定し、その平均値を計算した。
・安定性保存試験(湿度苛酷試験)
開放したシャーレに入れた無包装の各試料を温度:25℃±2℃、湿度:90%RH±5%RHに設定した機器(LH21-15M、ナガノサイエンス株式会社製)で1ヶ月保管した。
【0051】
(4)結果
実施例1〜4、比較例1、及び参考例の各錠剤について、苛酷試験(25℃/90%RH)条件下0ヶ月(四角)及び苛酷試験(25℃/90%RH)条件下で1ヶ月保存後(三角)の、溶出試験開始(0分)から溶出試験開始後360分までの溶出率を表2〜7及び
図1〜5に示す。本実施例において、苛酷試験(25℃/90%RH)条件下0ヶ月を「0ヶ月」、苛酷試験(25℃/90%RH)条件下1ヶ月保存後を「1ヶ月保存後」と言う。また、表8に、0ヶ月の錠剤の溶出率と1ヶ月保存後の錠剤の溶出率との差を溶出率変動値(%)として示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
【表8】
【0059】
図1〜5及び表2〜8より、成分Fを含む実施例1〜4の錠剤は、成分Fを含まない比較例1又は参考例の錠剤と比べて、特に溶出試験開始直後(溶出試験開始から30分まで)の溶出性が改善されていることが分かる。また、成分Fを添加した実施例の中でも、特に成分F2(デンプングリコール酸ナトリウム)を使用した実施例2の錠剤は、成分F1(カルメロース)、F3(L−HPC)、F4(クロスポビドン)を使用した錠剤と比べて、苛酷試験後の溶出率変化が低く、安定性が高いことがわかる。
【0060】
実施例1〜4、比較例1、及び参考例の錠剤の総類縁物質量の経時変化を表9に示す。
【0061】
【表9】
【0062】
成分Fとしてデンプングリコール酸ナトリウムの添加量を変えた、実施例2、5〜7で製造された錠剤の、0ヶ月錠剤の溶出率と1ヶ月保存後の錠剤の溶出率との差を溶出率変動値(%)として表10に示す。また、総類縁物質量の変化を表11に示す。
具体的には、表10は、比較例1(第二添加剤の添加なし)、実施例2(デンプングリコール酸ナトリウムの錠剤中添加量1%)、実施例5(デンプングリコール酸ナトリウムの錠剤中添加量0.5%)、実施例6(デンプングリコール酸ナトリウムの錠剤中添加量5%)、実施例7(デンプングリコール酸ナトリウムの錠剤中添加量20%)の錠剤についての溶出率変動値(%)を示すものである。また、表11は、比較例1及び実施例2、5〜7の錠剤における総類縁物質の増加量を示すものである。
【0063】
【表10】
【0064】
【表11】
【0065】
実施例1〜7の錠剤について、苛酷試験(25℃/90%RH)条件下1ヶ月保存後の錠剤外観を目視で確認した。実施例1〜6の錠剤について形状変化は見られなかったが、実施例7の錠剤は吸湿性が高いことにより、表面に真菌が発生し、形状変化を起していた(
図6)。対照として、形状変化がまったく見られなかった実施例2の錠剤の外観を併せて示す。
【0066】
段落[0039]の(2)造粒・乾燥工程において、有効成分と95%エタノールとからなる溶解液を用いた場合の、溶出率変動値(%)を表12に、総類縁物質量の変動を表13に示す。
具体的には、表12は、実施例8(レボノルゲストレル溶解液)、実施例9(ノルエチステロン溶解液)の各錠剤における、溶出率変動値(%)を示すものである。なお、実施例9の溶出率は95%に達したため、サンプリング開始後120分で測定を終了した。表13は、実施例8、9における総類縁物質の増加量を示すものである。
【0067】
【表12】
【0068】
【表13】
【0069】
実施例2−2(レボノルゲストレル懸濁液)、実施例9−2(ノルエチステロン懸濁液)の各錠剤における、溶出率変動値(%)を表14に、総類縁物質量の変動を表15に示す。
【0070】
【表14】
【0071】
【表15】
【0072】
実施例10
実施例2の製造方法に準じて、実施例10の錠剤を製造した。ただし、段落[0039]の(2)造粒・乾燥工程における流動層造粒機(FD-MP-01D、株式会社パウレック製)の設定条件として、風量0.5m/分、給気温度60℃、スプレー量9g/分、スプレーエア量34L/分とした。成分A1(レボノルゲストレル)として、実施例1〜8と同じ粒子径の原薬、即ち累積10%粒子径が1μm、累積50%粒子径が4μm、累積90%粒子径が7μmのものを用いた。
【0073】
実施例11
(2)造粒・乾燥工程において、実施例10と同様にして錠剤を製造した。ただし、成分A1−2(レボノルゲストレル)として、累積10%粒子径が1μm、累積50%粒子径が6μm、累積90%粒子径が17μmのものを用いた。
【0074】
参考として、実施例1〜11で使用した原薬における、累積10%粒子径(d(10))、累積50%粒子径(d(50))、累積90%粒子径(d(90))の測定値を表16に示す。
【0075】
【表16】
【0076】
実施例10、11の錠剤について、「0ヶ月」の溶出試験開始から溶出試験開始後360分までの溶出率(%)を表17に示す。
【0077】
【表17】
【0078】
表17及び
図7より、原薬粒子径(d(90))が15μm以下の微粉である場合、d(90)が17μmの場合と比べて、溶出性が向上することがわかる。
【0079】
実施例2、実施例2−2、実施例9−2及び実施例7、並びに参考例の錠剤の硬度の経時変化を表18に示す。なお、実施例7の苛酷試験1ヶ月後のサンプルは吸湿により硬度が保持できておらず、測定不可能であった。
【0080】
【表18】